車両用シート調整装置
【課題】第1シート部材及び第2シート部材間に介設される調整機構でシートの姿勢を調整・保持する車両用シート調整装置において、配置スペースの増大を抑制しながらも、第1シート部材側及び第2シート部材側に配設される第1操作部材及び第2操作部材にて調整機構をそれぞれ切替動作させることができる車両用シート調整装置を提供する。
【解決手段】操作部材84の解除操作に伴ってリンク部材81がヒンジピン70に対して回動することで、捩りコイルスプリング88の付勢力に抗して突部89に案内される切替ポール86のギヤ部86aが伝達ギヤ73に噛合し、これに伴いリンク部材81及び切替ポール86と共にヒンジピン70が回動することで、調整機構を解除するとともに、シートクッションに対するシートバックの所定角度を超えた回動に伴ってケーブルを介して連動用レバーと共にヒンジピン70が回動することで、調整機構を解除する。
【解決手段】操作部材84の解除操作に伴ってリンク部材81がヒンジピン70に対して回動することで、捩りコイルスプリング88の付勢力に抗して突部89に案内される切替ポール86のギヤ部86aが伝達ギヤ73に噛合し、これに伴いリンク部材81及び切替ポール86と共にヒンジピン70が回動することで、調整機構を解除するとともに、シートクッションに対するシートバックの所定角度を超えた回動に伴ってケーブルを介して連動用レバーと共にヒンジピン70が回動することで、調整機構を解除する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの姿勢を調整するための車両用シート調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用シート調整装置としては、例えば特許文献1に記載されたアームレスト装置が知られている。図12に示すように、この装置は、第1シート部材としてのシートフレームに対する第2シート部材としてのアームレスト本体の角度を、軸に固定されたカム部材111及び解除ブロック116の作用と、軸に巻回したいわゆるロックばね119の収縮とを利用して調整・保持するものである。すなわち、アームレスト本体をその使用状態から格納方向に回動させる際には、ロックばね119を拡径させて回動可能とする。そして、アームレスト本体の格納状態では、ロックばね119の拡径状態を保持する。一方、アームレスト本体をその使用状態から展開方向に回動させる際には、ロックばね119を縮径させて回動不能とする。以上により、シートフレームに対するアームレスト本体の角度が無段階で調整・保持可能となる。
【0003】
また、他の車両用シート調整装置として、例えば特許文献2に記載されたものが知られている。図13に示すように、この装置は、第1シート部材としてのシートクッション両側部の骨格をなす一対のシートクッションサイドフレーム121の後端部に、第2シート部材としてのシートバックの骨格をなすシートバックフレーム122の両下端部が、関節部123等を介して連結されている。
【0004】
関節部123は、シートクッションに対してシートバックが回動可能となるロック解除状態と、シートクッションに対してシートバックが回動不能となるロック状態とを切り替える周知のものである。この関節部123は、シートクッション側部に配置された第1解除操作レバー125に連結されており、該第1解除操作レバー125の解除操作によってロック解除状態に切り替わる。
【0005】
また、この関節部123は、シートバックフレーム122(シートバック)の上部に配置された第2解除操作レバー126にケーブル127を介して連結されており、該第2解除操作レバー126の解除操作によってもロック解除状態に切り替わる。
【0006】
これにより、例えば当該シートの着座者自身による第1解除操作レバー125の解除操作や、当該シートの後側の乗員による第2解除操作レバー126の解除操作によって関節部123をロック解除状態に切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−35862号公報
【特許文献2】特開2003−159140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献2では、シートバックから見たシートクッション(第1解除操作レバー125)の状態が、該シートクッションに対する回動に伴って変化するため、第2解除操作レバー126の解除操作力を関節部123に伝達するためのケーブル127をシートクッション側に一旦配索してその後に関節部123に連結することになる。このため、ケーブル127の配索レイアウトが制限されるとともに、該制限に起因した配置スペースの増大を招く要因となる。
【0009】
本発明の目的は、第1シート部材及び第2シート部材間に介設される調整機構でシートの姿勢を調整・保持する車両用シート調整装置において、配置スペースの増大を抑制しながらも、第1シート部材側及び第2シート部材側に配設される第1操作部材及び第2操作部材にて調整機構をそれぞれ切替動作させることができる車両用シート調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、第1シート部材に固定される第1ブラケットと、第2シート部材に固定され前記第1ブラケットに対する相対回動に伴ってシートの姿勢を調整可能な第2ブラケットと、前記第2ブラケットに設けられた内歯に係脱可能な外歯を有して前記第1ブラケットに設けられたガイド壁により径方向への移動が案内されるポールと、前記ポールに係合されて前記第1ブラケットに回動自在に設けられたカム体と、前記カム体を回動付勢して前記外歯及び前記内歯を噛合させる係止用付勢部材とを備える調整機構と、伝達ギヤを有して前記カム体に一体回動するように連結されたヒンジピンと、前記ヒンジピンに一体回動するように連結された第1操作部材と、前記第2シート部材に設けられる第2操作部材に連係され、前記ヒンジピンに軸支されたリンク部材と、前記リンク部材に回動自在に連結され、前記伝達ギヤに噛合可能なギヤ部を有する切替ポールと、前記リンク部材及び前記切替ポール間に介装され、前記ギヤ部及び前記伝達ギヤの噛合を解除する側の付勢力を発生する解除用付勢部材と、前記第2シート部材に固定され、前記解除用付勢部材に回動付勢される前記切替ポールを案内する突部とを備え、前記第2操作部材の解除操作に伴って前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動することで、前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤに噛合し、これに伴い前記リンク部材及び前記切替ポールと共に前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除するとともに、前記第1操作部材の解除操作に伴って前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除することを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、前記第2操作部材を解除操作した場合には、これに伴って前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動することで、前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤに噛合し、これに伴い前記リンク部材及び前記切替ポールと共に前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となってシート姿勢の調整が可能となる。
【0012】
その後、前記第2操作部材の解放に伴い前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動(戻り回動)すると、前記解除用付勢部材の付勢力で前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤとの噛合を解除する。これにより、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピンと共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときのシート姿勢が保持可能となる。
【0013】
このように、前記第2シート部材から見た前記第1シート部材の状態(ヒンジピンの回動位置)が、該第1シート部材に対する回動に伴って変化しても、例えば前記第2操作部材の解除操作により前記切替ポールの前記ギヤ部及び前記伝達ギヤを噛合させて前記ヒンジピンを回動させることで、前記調整機構を切替動作させることができる。このため、例えば前記第2操作部材の解除操作力を前記調整機構に伝達するためのケーブルなどを前記第1シート部材側に一旦配索してその後に前記調整機構に連結するといったことが不要になり、配置スペースの増大を抑制できる。
【0014】
一方、前記第1操作部材を解除操作した場合には、これに伴って前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となってシート姿勢の調整が可能となる。
【0015】
その後、前記第1操作部材を解放すると、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピン及び前記第1操作部材と共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときのシート姿勢が保持可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シート調整装置において、前記第1操作部材は、前記第1シート部材に対して回動可能な第3シート部材に一方の端末が係止されるケーブルの他方の端末が係止された連動用レバーであって、前記第3シート部材に対する前記第1シート部材の所定角度を超えた回動に伴って前記ケーブルを介して前記連動用レバーと共に前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除することを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、前記第3シート部材に対して前記第1シート部材を前記所定角度を超えて回動させた場合には、これに伴って前記ケーブルを介して前記連動用レバーと共に前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となってシート姿勢の調整が可能となる。つまり、前記第3シート部材に対する前記第1シート部材の前記所定角度を超えた回動に連動させて、シート姿勢を調整することができる。そして、前記第3シート部材に対して前記第1シート部材が前記所定角度を超えて回動する際に、例えば前記第3シート部材及び前記第2シート部材が干渉したとしても、該第2シート部材の調整範囲でこれを吸収することで、前記第1シート部材の当該回動動作が阻害されることを抑制できる。
【0018】
その後、前記第3シート部材に対して前記第1シート部材を前記所定角度内に回動(戻り回動)させると、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピン及び前記連動用レバーと共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときのシート姿勢が保持可能となる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シート調整装置において、前記第1操作部材は、解除操作レバーであることを要旨とする。
同構成によれば、前記解除操作レバーを解除操作した場合には、これに伴って前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となってシート姿勢の調整が可能となる。つまり、利用者が直に前記解除操作レバーを解除操作することで、シート姿勢を調整することができる。
【0020】
その後、前記解除操作レバーを解放すると、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピン及び前記解除操作レバーと共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときのシート姿勢が保持可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、第1シート部材及び第2シート部材間に介設される調整機構でシートの姿勢を調整・保持する車両用シート調整装置において、配置スペースの増大を抑制しながらも、第1シート部材側及び第2シート部材側に配設される第1操作部材及び第2操作部材にて調整機構をそれぞれ切替動作させることができる車両用シート調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が適用されるシートの斜視図。
【図2】本発明の一実施形態の動作を説明する側面図。
【図3】同実施形態の動作を説明する側面図。
【図4】同実施形態を示す分解斜視図。
【図5】調整機構を示す分解斜視図。
【図6】調整機構を示す横断面図。
【図7】同実施形態の前倒れ時の動作を示す側面図。
【図8】同実施形態を示す分解斜視図。
【図9】同実施形態の操作部材の非操作時の動作を示す説明図。
【図10】同実施形態の操作部材の操作開始時の動作を示す説明図。
【図11】同実施形態の操作部材の操作完了時の動作を示す説明図。
【図12】従来形態を示す模式図。
【図13】他の従来形態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図11を参照して本発明の一実施形態について説明する。図1に示すように、車両フロアには、乗員の着座部を形成するシート1が設置されている。このシート1は、座面を形成するシートクッション2と、該シートクッション2の後端部に傾動(回動)自在に支持されたシートバック3と、該シートバック3の上端部に支持されたヘッドレスト4と、シートバック3の高さ方向中間部においてそのシート幅方向両側に配設された一対のアームレスト5とを備えて構成される。そして、シート1は、シートクッション2に対するシートバック3の傾斜角度が調整可能であるとともに、該シートバック3に対する両アームレスト5の傾斜角度が調整可能である。これにより、当該シート1の着座者は、例えばその体格に合わせて目線の位置を調整可能である。あるいは、当該シート1の着座者は、例えばその求める快適性に合わせて着座姿勢を調整可能である。
【0024】
なお、シートバック3は、シートクッション2に対する傾斜角度が所定範囲に収まる通常の使用状態で、該傾斜角度を所定角度ごとに多段階で調整・保持可能となっている。また、シートバック3は、シートクッション2に対する傾斜角度が前記所定範囲を超えることでシートクッション2に対して回動自在となる。そして、図2に示すように、シートクッション2に対する傾動が係止されることなく、シートバック3の前倒れが可能となる。
【0025】
ここで、シートクッション2に対するシートバック3の傾斜角度が前記所定範囲に収まる通常の使用状態にあるものとして、シートバック3に対する各アームレスト5の傾斜角度について説明する。図3に示すように、シートバック3に対するアームレスト5の傾斜角度θには、アームレスト5が略前方に延在する所定の初期位置A0からアームレスト5が斜め上方に延在する所定の境界位置A1までの調整範囲Z1と、境界位置A1からアームレスト5が略上方に延在する所定の格納位置A2までの跳上げ範囲Z2とが設定されている。
【0026】
調整範囲Z1では、アームレスト5の傾斜角度θが、所定角度ごとに多段階で調整・保持可能となっている。一方、跳上げ範囲Z2では、アームレスト5の両方向の回動、即ちアームレスト5の上下動が許容される。そして、アームレスト5の傾斜角度θが格納位置A2に達すると、当該格納位置A2で保持可能となっている。
【0027】
なお、図2に示すように、シートバック3の傾斜角度が前記所定範囲を超えて前倒れすると、シートバック3に対してアームレスト5が回動自在となるようになっている。従って、シートバック3の前倒れに伴ってアームレスト5がシートクッション2と係合しても、アームレスト5によってシートバック3の前倒れが阻害されることはなく、アームレスト5は格納位置A2に向かって傾動する。
【0028】
次に、シート1の骨格構造について説明する。図4に示すように、シートクッション2両側部の骨格をなす一対のシートクッションサイドフレーム2aの後端部には、下方に開いた略U字形状を呈してシートバック3の骨格をなすシートバックフレーム3aが、その両下端部において回動自在に連結されている。なお、シートクッションサイドフレーム2aの後端部とシートバックフレーム3aの下端部との間には、周知のリクライナ10が介設されている。シートクッション2(シートクッションサイドフレーム2a)対するシートバック3(シートバックフレーム3a)の前述の傾動動作は、このリクライナ10による周知の動作によって実現されている。
【0029】
シートバックフレーム3aの高さ方向中間部には、シート幅方向両外側に突設された一対の略ドラム状のブラケット7が固着されている。一方、各アームレスト5の骨格をなすアームレスト本体11は、長箱状の一対のアームレストフレーム12,13がそれらの開口側同士の突き合わされた状態で結合されており、円盤状の調整機構20を介してシート幅方向に延びる軸線周りに前記ブラケット7に回動自在に連結されている。つまり、アームレスト本体11を内包するアームレスト5は、調整機構20を介することで、シートバック3に傾動(回動)自在に支持されている。
【0030】
次に、調整機構20について説明する。
調整機構20は、前記リクライナ10に準じた構造を有しており、図5に示すように、シート幅方向に中心線(軸線)O1の延びる円盤状の第1ブラケット21及び第2ブラケット31を備えている。第1ブラケット21は、例えばブラケット7(シートバック3側)に固定され、第2ブラケット31は、アームレストフレーム12(アームレスト5側)に固定される。
【0031】
第1ブラケット21は、例えば金属板の半抜き(ハーフブランキング)により成形されたもので、第2ブラケット31側に開口する円形の凹部22を有している。凹部22は、中心線O1(軸線)を中心とする内周面22aを有している。
【0032】
第1ブラケット21の凹部22内には、3つの略扇状の凸部23が円周上に等角度間隔に配置されている。各凸部23は、その周方向両側にガイド壁24を形成する。各隣り合う凸部23の周方向で対向するガイド壁24同士は、中心線O1を中心とする径方向に互いに平行に延びている。
【0033】
また、第1ブラケット21の中央部には、略円形の貫通孔25が形成されている。この貫通孔25は、所定角度位置で径方向外側に凹設された係止孔25aを有する。
第2ブラケット31は、例えば金属板の半抜きにより成形されたもので、第1ブラケット21の内周面22aの内径と同等の外径の外周面31aを有する。また、第2ブラケット31は、図6に示すように、第1ブラケット21側に開口する略円形の凹部32を有している。凹部32の内周面には、中心線O1を中心とする内歯33が全周に亘って形成されている。
【0034】
凹部32の内周側には、該凹部32と同心円上に略円形の凹部34が形成されている。この凹部34の内周面には、所定角度範囲で径方向外側に凹設された略円弧状の第1解放部34a及び第2解放部34bが形成されている。そして、凹部34の内周面は、これら第1及び第2解放部34a,34b間に略円弧状の規制部34c,34dを形成する。
【0035】
第2ブラケット31は、その外周面31aで、第1ブラケット21の内周面22aと摺接するように嵌合されている。そして、第1ブラケット21及び第2ブラケット31の外周部には、第1ブラケット21の内周面22aと第2ブラケット31の外周面31aとが嵌合された状態で、金属板からなるリング状の保持部材30が装着されている。第1ブラケット21及び第2ブラケット31は、この保持部材30によって相対回動が許容された状態で軸方向に抜け止めされている。
【0036】
図5に示すように、第1ブラケット21と第2ブラケット31との間には、第1ポール41Aと、一対の第2ポール41Bと、カム42と、レリーズプレート43と、係止用付勢部材としての渦巻きばね44とが配設されている。カム42及びレリーズプレート43はカム体を構成する。
【0037】
第1及び第2ポール41A,41Bは、隣り合う2つのガイド壁24の間に装着されて、中心線O1を中心とする円周上に等角度間隔に配置されている。
第1ポール41Aは、鋼材を鍛造加工するなどして作製され、互いに段違い形成された第1ブロック51と第2ブロック52とを備えている。第1ポール41Aは、第1ブロック51及び第2ブロック52がそれぞれ第2ブラケット31の内歯33側及び中心線O1側に配置されている。
【0038】
第1ブロック51の円弧状の外方端(第2ブラケット31の内歯33と対向する端面)には、第2ブラケット31の内歯33と噛合可能な外歯54が形成され、第1ブロック51の内方端(外方端とは逆向きの端面である背面)には、カム42の外周部に係合する内面カム部55が形成されている。一方、第2ブロック52の外方端(第2ブラケット31の凹部34と対向する端面)には、その中央部から径方向外側に円弧壁状の係合突部53が突設されている。この係合突部53の周方向の幅は、前記第2解放部34bの周方向の幅と同等に設定されている。また、第2ブロック52の略中央部には、板厚方向に貫通するポール側溝カム部56が透設されている。
【0039】
そして、第1ポール41Aは、その両幅端部を両ガイド壁24に摺接する態様で中心線O1を中心とする径方向への移動が案内されている。第1ポール41Aは、両ガイド壁24に沿って径方向に進退することで、その外歯54と内歯33とを噛合又は解除(係脱)する。
【0040】
第2ポール41Bは、板状の鋼板をプレス加工するなどして作製され、第1ポール41Aの第2ブロック52が切除され、第1ブロック51のみによって構成された形状に近似した段差をもたない平板形状をなしている。第2ポール41Bの円弧状の外方端(第2ブラケット31の内歯33と対向する端面)には、第2ブラケット31の内歯33と噛合可能な外歯57が形成され、第2ポール41Bの内方端(外方端とは逆向きの端面である背面)には、カム42の外周部に係合する内面カム部58が形成されている。さらに、第2ポール41Bには、幅方向の中央部に係合突起59が突設されている。
【0041】
そして、第2ポール41Bは、その両幅端部を両ガイド壁24に摺接する態様で中心線O1を中心とする径方向への移動が案内されている。第2ポール41Bは、両ガイド壁24に沿って径方向に進退することで、その外歯57と内歯33とを噛合又は解除(係脱)する。
【0042】
カム42は、第2ブラケット31の凹部32内となる第1及び第2ポール41A,41Bの内周側で、中心線O1上に回動可能に配置されている。
カム42は、板状の鋼板をプレス加工するなどして作製され、段差をもたない平板形状をなしている。そして、カム42の中央部には、略小判形の嵌合孔42aが形成されている。また、カム42は、その外周部に円周上に等角度間隔に3組のカム面65を有している。
【0043】
各カム面65は、該当の第1及び第2ポール41A,41Bの対向する内面カム部55,58に当接可能であり、カム42がロックする方向(以下、「ロック回動方向」ともいう)に回動されたときに該当の内面カム部55,58を押圧する。
【0044】
一方、カム42がロックを解除する方向(以下、「ロック解除回動方向」ともいう)に回動されると、各カム面65は、該当の第1及び第2ポール41A,41Bの内面カム部55,58から離隔される。
【0045】
カム42の側面には、円周上に間隔をおいて複数の係合突起67が突設され、これら係合突起67の1つが、第1ポール41Aのポール側溝カム部56に挿入・係合されている。ポール側溝カム部56及び係合突起67は、カム42のロック解除回動方向への回動によって第1ポール41Aを径方向内方へ移動させるように作用する。
【0046】
カム42の側面には、略半円薄板状のレリーズプレート43が係合突起67に係合されて一体的に取付けられている。レリーズプレート43は、第1ポール41Aの第2ブロック52と軸線方向に一致するようにカム42に取付けられており、両第2ポール41Bの端面に摺接可能に対接されている。これによって、両第2ポール41B及びレリーズプレート43が第1ポール41Aの厚みの範囲内に収められている。なお、レリーズプレート43は、第2ブラケット31に形成した規制部34c,34cと非接触になるようにその外径が設定されている。また、レリーズプレート43は、第1ポール41Aに対応する角度範囲を開放することで、カム42と一体でのレリーズプレート43の回動によって該レリーズプレート43が第1ポール41Aと干渉することを回避している。
【0047】
レリーズプレート43には、板厚方向に貫通する2つのレリーズプレート側溝カム部69が形成されている。これらレリーズプレート側溝カム部69には、両第2ポール41Bに突設された係合突起59がそれぞれ挿入・係合されている。レリーズプレート側溝カム部69及び係合突起59は、カム42及びレリーズプレート43のロック解除回動方向への回動によって第2ポール41Bを径方向内方へ移動させるように作用する。
【0048】
渦巻きばね44は、第1及び第2ポール41A,41Bを第2ブラケット31に係合する方向(ロック回動方向)にカム42を回動付勢するもので、第1ブラケット21の貫通孔25内に収納されている。渦巻きばね44は、例えば略矩形の扁平な線材を所定の渦巻き形状に曲成することにより形成されており、第1ブラケット21とカム42との間に配設されている。すなわち、渦巻きばね44の外側の脚部44aは、係止孔25aに係止され、内側の脚部44bは、カム42の端面に設けた図略の係止部に係止されている。
【0049】
かかる渦巻きばね44の付勢力によって、カム42は第1ブラケット21に対してロック回動方向に回転付勢され、そのカム面65によって第1及び第2ポール41A,41Bを径方向外方に押圧し、各々の外歯54,57を第2ブラケット31の内歯33に係合させるようになっている。
【0050】
ここで、前述の通常の使用状態にあるものとして、第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置と、アームレスト5の傾斜角度θとの関係について説明する。
図6に示すように、第1ポール41Aの係合突部53が第1解放部34aに配置されるときの第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置では、係合突部53によって第1ポール41Aの径方向外側への移動が係止されることはなく、その外歯54が第2ブラケット31の内歯33に噛合可能である。そして、レリーズプレート43を介して第1ポール41Aに連動する両第2ポール41Bも、その外歯57が第2ブラケット31の内歯33に噛合可能である。従って、カム42の回動に伴い、前述の第1及び第2ポール41A,41Bの外歯54,57と第2ブラケット31の内歯33との噛合又は解除(係脱)が可能になって、第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置が所定角度(隣り合う歯のなす角度)ごとに多段階で調整・保持可能となる。そして、アームレスト5の傾斜角度θが上記所定角度ごとに多段階で調整・保持可能となる。つまり、第1ポール41Aの係合突部53が第1解放部34aに配置されるときの第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置は、アームレスト5の調整範囲Z1に相当する。
【0051】
なお、係合突部53が第1解放部34a及び規制部34dの境界部に当接するときの図6に示す第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置が、アームレスト5の初期位置A0に相当し、係合突部53が第1解放部34a及び規制部34cの境界部に当接するときの第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置が、アームレスト5の境界位置A1に相当する。
【0052】
一方、係合突部53が第2解放部34bに嵌入するときの第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置が、アームレスト5の格納位置A2に相当する。そして、係合突部53が規制部34cに乗り上げている間の第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置が、アームレスト5の跳上げ範囲Z2に相当する。
【0053】
次に、カム42に対するロック解除操作力(ロック解除回動方向への操作力)の伝達構造について説明する。
図4に示すように、各調整機構20には、例えば金属棒からなるヒンジピン70が中心線O1に沿って挿通されている。このヒンジピン70は、前記カム42の嵌合孔42aに嵌挿される略小判柱状の嵌合軸部71を有するとともに、アームレスト本体11の片側(シート幅方向内側)のアームレストフレーム12を貫通してアームレスト本体11の形成する内部空間に配置される略円柱状の軸部72を有する。なお、嵌合軸部71及び軸部72の境界部には、平歯車からなる伝達ギヤ73が固着されている。この伝達ギヤ73も、アームレスト本体11の形成する内部空間に配置される。
【0054】
調整機構20を貫通する嵌合軸部71には、前記ブラケット7との間に配置された第1操作部材としてのアーム状の連動用レバー76が嵌挿されている。従って、連動用レバー76が回動すると、これと一体でヒンジピン70(及びカム42)が回動する。
【0055】
連動用レバー76の先端部には、シートクッションサイドフレーム2aの後端部に一方の端末77aが係止されたケーブル77の他方の端末77bが係止されている。このケーブル77は、シートバック3(シートバックフレーム3a)の傾斜角度が前記所定範囲を超えて前倒れすると、図7に示すように、連動用レバー76を引っ張ってこれを中心線O1周りに回動させる。このときの連動用レバー76(及びヒンジピン70)の回動方向は、カム42のロック解除回動方向に一致するように設定されている。従って、シートバック3の前倒れに連動して調整機構20を回動自在にすることができ、シートクッション2と係合するアームレスト5の前述の格納位置A2に向かう傾動を実現する。
【0056】
一方、図8に示すように、アームレストフレーム12,13(アームレスト本体11)の形成する内部空間に配置されるヒンジピン70の軸部72には、例えば金属板からなるリンク部材81が軸支されている。このリンク部材81は、軸部72を中心とする互いに異なる2方向(図示左上方向及び左下方向)の径方向に延在する第1レバー部82及び第2レバー部83を有して略L字形状を呈する。なお、第1レバー部82には、爪状の係止片82aが形成されている。この係止片82aには、アームレストフレーム12の後端に一方の脚部の係止された、例えば引っ張りコイルスプリングからなる復帰スプリング90の他方の脚部が係止されている。この復帰スプリング90は、リンク部材81が図示時計回りに回動する側の付勢力を発生する。
【0057】
アームレストフレーム12,13(アームレスト本体11)の先端部には、例えば金属板からなる第2操作部材としてのフック状の操作部材84が中心線O1と平行な軸線周りに回動自在に連結されている。この操作部材84は、アームレストフレーム12,13の外側で下方に延在する略杓文字状の操作部84aを有するとともに、アームレストフレーム12,13の内側で下方に延在するアーム状のレバー部84bを有する。
【0058】
そして、レバー部84bの先端部には、アームレストフレーム12,13の長手方向に略沿って延在する丸棒状の連結棒85の先端部が、中心線O1と平行な軸線周りに回動自在に連結されている。なお、連結棒85の基端部は、第1レバー部82の先端部に、中心線O1と平行な軸線周りに回動自在に連結されている。
【0059】
従って、操作部84aを引き上げて操作部材84を図示時計回りに回動させると、連結棒85を介して引っ張られるリンク部材81が、復帰スプリング90の付勢力に抗して図示反時計回りに回動する。また、操作部84aを解放すると、復帰スプリング90に付勢されてリンク部材81が図示時計回りに回動する。これにより、連結棒85を介して押し出される操作部材84が図示反時計回りに回動(戻り回動)し、操作部84aが元位置へと下動する。
【0060】
第2レバー部83の先端部には、例えば金属板からなるアーム状の切替ポール86の基端部が、それらを中心線O1と平行に貫通する支持ピン87により相対回動自在に連結されている。この切替ポール86の先端部には、中心線O1等における軸線方向の位置で前記伝達ギヤ73に合致するギヤ部86aが形成されている。また、支持ピン87周りには、第2レバー部83及び切替ポール86に両脚部がそれぞれ係止された解除用付勢部材としての捩りコイルスプリング88が巻回されている。このコイルスプリング88は、支持ピン87を中心とするこれら第2レバー部83及び切替ポール86のなす角度を増加する側の付勢力を発生する。
【0061】
また、アームレストフレーム12には、切替ポール86の図示反時計回りの回動軌跡を遮る略円柱状の突部89が突設されている。従って、捩りコイルスプリング88により第2レバー部83に対してそれとのなす角度を増加する側に付勢される切替ポール86の回動位置は、突部89に係止されるまでの一定範囲に制限されている。そして、リンク部材81は、突部89により回動係止される切替ポール86に対して捩りコイルスプリング88により回動付勢されることで、中心線O1周りに図示反時計回りに回動しようとする。つまり、リンク部材81は、捩りコイルスプリング88による図示反時計回りに回動させようとする付勢力と、復帰スプリング90による図示時計回りに回動させようとする付勢力とが均衡するときの回動位置(以下、「初期位置」ともいう)に保持される。
【0062】
ここで、図9に示すように、操作部材84(操作部84a)が非操作状態にあるとき、初期位置にあるリンク部材81に対して捩りコイルスプリング88により図示反時計回りに回動付勢される切替ポール86は、突部89が当接する所定位置に保持されている。このとき、切替ポール86のギヤ部86aは、ヒンジピン70の伝達ギヤ73から離隔しており、例えばヒンジピン70及び切替ポール86間で回動伝達されることはない。また、軸部72に軸支されるリンク部材81には、当然ながらヒンジピン70の回動が直に伝達されることはない。
【0063】
そして、図10に示すように、操作部材84(操作部84a)の操作を開始すると、連結棒85を介して引っ張られるリンク部材81が図示反時計回りに回動するとともに、突部89に案内されつつリンク部材81と一体回動する切替ポール86が捩りコイルスプリング88の付勢力に抗して図示時計回りに回動し、そのギヤ部86aをヒンジピン70の伝達ギヤ73に噛合する。これにより、リンク部材81は、伝達ギヤ73において切替ポール86と噛合するヒンジピン70と一体回動可能となる。
【0064】
この状態で、図11に示すように、操作部材84(操作部84a)の操作を更に続けると、切替ポール86を介してヒンジピン70がリンク部材81と一体回動する。このときのヒンジピン70の回動方向は、カム42のロック解除回動方向に一致するように設定されている。従って、操作部材84(操作部84a)の操作に連動して調整機構20を回動自在にすることができ、アームレスト5の傾斜角度θの前述の調整が可能となる。
【0065】
その後、例えばアームレスト5の傾斜角度θが調整範囲Z1又は格納位置A2にあるとして、操作部材84(操作部84a)の操作を解放すると、復帰スプリング90に回動付勢されるリンク部材81が図示時計回りに初期位置に向かって回動(戻り回動)する。これとともに、連結棒85を介して押し出される操作部材84が図示反時計回りに回動し、操作部84aが元位置へと下動する。
【0066】
この際、突部89に案内されつつリンク部材81と一体回動する切替ポール86は、捩りコイルスプリング88に付勢されて図示反時計回りに回動し、そのギヤ部86aをヒンジピン70の伝達ギヤ73から外す。このとき、切替ポール86から解放されたヒンジピン70は、渦巻きばね44に回動付勢されるカム42と共にそのロック回動方向に回動する。これに伴い、アームレスト5の傾斜角度θが保持されることは既述のとおりである。
【0067】
以上により、調整範囲Z1又は格納位置A2にあるときの、操作部材84(操作部84a)の操作を通じたアームレスト5の傾斜角度θの調整・保持が可能となる。
なお、操作部材84(操作部84a)の操作を解放した際、アームレスト5の傾斜角度θが跳上げ範囲Z2にあれば、ヒンジピン70は、カム42と共にそのロック回動方向への回動が係止され、調整機構20は回動自在な状態を維持する。ただし、ヒンジピン70に対するリンク部材81の揺動分で切替ポール86のギヤ部86aが伝達ギヤ73から外れるのであれば、前述の態様で操作部84aが元位置へと下動する。
【0068】
ところで、シートバック3の通常の使用状態でこれを前倒しすると、ケーブル77に引っ張られる連動用レバー76及びヒンジピン70と共にカム42がロック解除回動方向に回動することで、調整機構20が回動自在となる。この際、切替ポール86は、ヒンジピン70(伝達ギヤ73)との噛合を解除したままであり、切替ポール86に連結されたリンク部材81は、ヒンジピン70(軸部72)に軸支されることでアームレスト本体11内では図9に示す初期位置のままである。つまり、シートバック3の前倒しに伴ってヒンジピン70が回動することになっても、これによってリンク部材81等が揺動したりすることはない。
【0069】
次に、シートバック3の通常の使用状態で、アームレスト5の傾斜角度θが調整範囲Z1にあるとして、その動作を説明する。この状態で、操作部材84を解除操作すると、その操作力が連結棒85、リンク部材81及び切替ポール86を介して該切替ポール86に噛合する伝達ギヤ73(ヒンジピン70)に伝達される。これにより、ヒンジピン70と一体回動するカム42がレリーズプレート43と共にロック解除回動方向に回動することで、調整機構20が回動自在となり、アームレスト5の傾斜角度θの前述の調整が可能となる。
【0070】
その後、操作部材84の解除操作を解放すると、アームレスト5の傾斜角度θが調整範囲Z1又は格納位置A2にあれば、復帰スプリング90に付勢されるリンク部材81が初期位置に復帰するととともに切替ポール86が伝達ギヤ73との噛合を解除し、連結棒85を介して押し出される操作部材84(操作部84a)が元位置に復帰する。この際、渦巻きばね44に回動付勢されるカム42がヒンジピン70と共にロック回動方向に回動することで、調整機構20が回動不能となり、アームレスト5がそのときの傾斜角度θで保持される。
【0071】
また、操作部材84の解除操作を解放した際、アームレスト5の傾斜角度θが跳上げ範囲Z2にあれば、調整機構20が回動自在な状態を維持することで、例えば調整範囲Z1及び格納位置A2間でアームレスト5が傾動自在となる。
【0072】
一方、シートバック3の通常の使用状態でこれを前倒しすると、ケーブル77に引っ張られる連動用レバー76及びヒンジピン70と共にカム42(及びレリーズプレート43)がロック解除回動方向に回動することで、調整機構20が回動自在となり、アームレスト5が傾動自在となる。これにより、シートバック3の前倒れに伴ってシートクッション2と係合するアームレスト5が、シートバック3の前倒れ動作を阻害することはない。
【0073】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、アームレスト5から見たシートバック3の状態(ヒンジピン70の回動位置)が、該シートバック3に対する回動に伴って変化しても、例えば操作部材84の解除操作により切替ポール86のギヤ部86a及び伝達ギヤ73を噛合させてヒンジピン70を回動させることで、調整機構20を切替動作させることができる。このため、例えば特許文献2のように操作部材の解除操作力を調整機構20に伝達するためのケーブルなどをシートバック3側に一旦配索してその後に調整機構20に連結するといったことが不要になり、配置スペースの増大を抑制できる。
【0074】
(2)本実施形態では、シートクッション2に対してシートバック3を所定角度を超えて回動(前倒し)させた場合には、これに伴ってケーブル77を介して連動用レバー76と共にヒンジピン70が回動する。これにより、カム42及びレリーズプレート43(カム体)が渦巻きばね44の付勢力に抗して回動することで、外歯54,57及び内歯33の噛合が解除される。従って、第1及び第2ブラケット21,31が相対回動可能となってアームレスト5の傾斜角度θの調整が可能となる。つまり、シートクッション2に対するシートバック3の前倒しに連動させて、アームレスト5の傾斜角度θを調整することができる。そして、シートクッション2に対してシートバック3が前倒れする際に、例えばシートクッション2及びアームレスト5が干渉したとしても、該アームレスト5の調整範囲でこれを吸収することで、シートバック3の当該前倒れ動作が阻害されることを抑制できる。
【0075】
この際、ヒンジピン70に軸支されたリンク部材81は、ヒンジピン70(軸部72)が空転することでアームレスト5に対して停止したままであり、リンク部材81に連係される操作部材84がこれに従動することはない。
【0076】
(3)本実施形態では、リンク部材81の初期位置を、捩りコイルスプリング88の付勢力と復帰スプリング90の付勢力との均衡で保持することができる。そして、例えば操作部材84の解除操作を解放した際には、復帰スプリング90の付勢力にて第1レバー部82を回動付勢することで、操作部84aを元位置へと下動(復帰)させることができる。
【0077】
(4)本実施形態では、シートクッション2に対するシートバック3の前倒し(例えば乗降時の格納など)に連動させて、調整機構20を解除してアームレスト5を畳むことができる。
【0078】
(5)本実施形態では、アームレスト5の傾斜角度θに跳上げ範囲Z2が設定されていることで、例えば操作部材84の操作力を解放した状態であっても、アームレスト5を速やかに回動させることができる。
【0079】
(6)本実施形態では、操作部材84の解除操作を通じてアームレスト5の傾斜角度θの調整を行うため、例えばアームレスト5を掴んで行う場合に比べて高級感を付与できる。
【0080】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態では、操作部材84を連結棒85を介してリンク部材81に連係したが、例えばケーブル(ワイヤ)やその他の伝達機構を介してリンク部材81に連係してもよい。また、操作部材84をリンク部材81に直結してもよい。
【0081】
・前記実施形態では、解除用付勢部材として捩りコイルスプリング88を採用したが、例えば板ばねや圧縮コイルスプリングなどであってもよい。
・前記実施形態において、解除操作後に操作部84aを手動で元位置へと下動(復帰)させる場合には、復帰スプリング90を割愛してもよい。
【0082】
・前記実施形態において、カム42及びヒンジピン70の嵌合形状は一例であって、例えばD字形状や多角形状、セレーションなどで嵌合させてもよい。
・前記実施形態において、第1ブラケット21内に配設されるポール(41A,41B)の個数は任意である。また、複数のポールが配設される場合、これらの動作が連動するのであれば互いに異なる形状であってもよいし、同一形状であってもよい。特に、全てのポールを第1ポール41Aの形状にする場合には、レリーズプレート43を割愛すればよい。
【0083】
・前記実施形態において、第1ブラケット21及び第2ブラケット31と、シートバック3(シートバックフレーム3a)及びアームレスト5(アームレストフレーム12)との固定関係は逆であってもよい。
【0084】
・本発明は、図12に示した特許文献2に準じたリクライニング装置に適用してもよい。本発明をこのようなタイプのリクライニング装置に適用する場合には、連動用レバー76をシート側面配置の第1解除操作レバー125(解除操作レバー)と見なし、操作部材84をシートバック3上面配置の第2解除操作レバー126(肩口レバー)と見なし、調整機構20を関節部123と見なし、連結棒85を肩口レバー及びリンク部材81(調整機構20)を連結する適宜の部材と見なせばよい。
【0085】
この場合、シートバック3から見たシートクッション2の状態(ヒンジピン70の回動位置)が、該シートクッション2に対する回動に伴って変化しても、例えば肩口レバーの解除操作により切替ポール86のギヤ部86a及び伝達ギヤ73を噛合させてヒンジピン70を回動させることで、調整機構20を切替動作させることができる。このため、例えば特許文献2のように肩口レバーの解除操作を調整機構20に伝達するためのケーブルなどをシートクッション2側に一旦配索してその後に調整機構20に連結するといったことが不要になる。
【0086】
また、シート側面配置の解除操作レバーは、シートクッション2側(固定側)に設けられることで、操作の解放した状態ではシートバック3の傾斜角度に関わらず定位置を維持することになり、解除操作レバーの移動に伴う違和感や周辺部品との干渉を解消することができる。
【0087】
・本発明は、その他の車両用シート調整装置(例えばシートリフタ装置、シートチルト装置、オットマン装置など)に適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0088】
(イ)シートバック及びアームレストのいずれか一方に固定される第1ブラケットと、前記シートバック及び前記アームレストのいずれか他方に固定され前記第1ブラケットに対する相対回動に伴って前記アームレストの傾斜角度を調整可能な第2ブラケットと、前記第2ブラケットに設けられた内歯に係脱可能な外歯を有して前記第1ブラケットに設けられたガイド壁により径方向への移動が案内されるポールと、前記ポールに係合されて前記第1ブラケットに回動自在に設けられたカム体と、前記カム体を回動付勢して前記外歯及び前記内歯を噛合させる係止用付勢部材とを備える調整機構と、
伝達ギヤを有して前記カム体に一体回動するように連結されたヒンジピンと、
前記第2ブラケットが固定される前記シートバック又は前記アームレストに設けられる操作部材に連係され、前記ヒンジピンに軸支されたリンク部材と、
前記リンク部材に回動自在に連結され、前記伝達ギヤに噛合可能なギヤ部を有する切替ポールと、
前記リンク部材及び前記切替ポール間に介装され、前記ギヤ部及び前記伝達ギヤの噛合を解除する側の付勢力を発生する解除用付勢部材と、
前記第2ブラケットが固定される前記シートバック又は前記アームレストに固定され、前記解除用付勢部材に回動付勢される前記切替ポールを案内する突部と、
前記シートバックに対して回動可能なシートクッションに一方の端末が係止されるケーブルの他方の端末が係止され、前記ヒンジピンに一体回動するように連結された連動用レバーとを備え、
前記操作部材の解除操作に伴って前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動することで、前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤに噛合し、これに伴い前記リンク部材及び前記切替ポールと共に前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除するとともに、
前記シートクッションに対する前記シートバックの所定角度を超えた回動に伴って前記ケーブルを介して前記連動用レバーと共に前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除することを特徴とする車両用シート調整装置。
【0089】
同構成によれば、前記操作部材を解除操作した場合には、これに伴って前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動することで、前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤに噛合し、これに伴い前記リンク部材及び前記切替ポールと共に前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となって前記アームレストの傾斜角度の調整が可能となる。
【0090】
その後、前記操作部材の解放に伴い前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動(戻り回動)すると、前記解除用付勢部材の付勢力で前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤとの噛合を解除する。これにより、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピンと共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときの前記アームレストの傾斜角度が保持可能となる。
【0091】
一方、前記シートクッションに対して前記シートバックを前記所定角度を超えて回動させた場合には、これに伴って前記ケーブルを介して前記連動用レバーと共に前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となって前記アームレストの傾斜角度の調整が可能となる。つまり、前記シートクッションに対する前記シートバックの前記所定角度を超えた回動に連動させて、前記アームレストの傾斜角度を調整することができる。そして、前記シートクッションに対して前記シートバックが前記所定角度を超えて回動する際に、例えば前記シートクッション及び前記アームレストが干渉したとしても、該アームレストの調整範囲でこれを吸収することで、前記シートクッションの当該回動動作が阻害されることを抑制できる。
【0092】
その後、前記シートクッションに対して前記シートバックを前記所定角度内に回動(戻り回動)させると、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピン及び前記連動用レバーと共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときの前記アームレストの傾斜角度が保持可能となる。
【0093】
(ロ)シートクッションに固定される第1ブラケットと、シートバックに固定され前記第1ブラケットに対する相対回動に伴って前記シートバックの傾斜角度を調整可能な第2ブラケットと、前記第2ブラケットに設けられた内歯に係脱可能な外歯を有して前記第1ブラケットに設けられたガイド壁により径方向への移動が案内されるポールと、前記ポールに係合されて前記第1ブラケットに回動自在に設けられたカム体と、前記カム体を回動付勢して前記外歯及び前記内歯を噛合させる係止用付勢部材とを備える調整機構と、
伝達ギヤを有して前記カム体に一体回動するように連結されたヒンジピンと、
前記ヒンジピンに一体回動するように連結された第1操作部材(解除操作レバー)と、
前記シートバックに設けられる第2操作部材(肩口レバー)にケーブルを介して連結され、前記ヒンジピンに軸支されたリンク部材と、
前記リンク部材に回動自在に連結され、前記伝達ギヤに噛合可能なギヤ部を有する切替ポールと、
前記リンク部材及び前記切替ポール間に介装され、前記ギヤ部及び前記伝達ギヤの噛合を解除する側の付勢力を発生する解除用付勢部材と、
前記シートバックに固定され、前記解除用付勢部材に回動付勢される前記切替ポールを案内する突部とを備え、
前記第1操作部材の解除操作に伴って前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除するとともに、
前記第2操作部材の解除操作に伴って前記ケーブルを介して前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動することで、前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤに噛合し、これに伴い前記リンク部材及び前記切替ポールと共に前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除することを特徴とする車両用シート調整装置。
【0094】
同構成によれば、前記第1操作部材を解除操作した場合には、これに伴って前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となって前記シートバックの傾斜角度の調整が可能となる。この際、前記ヒンジピンに軸支された前記リンク部材は、前記ヒンジピンが空転することで前記シートバックに対して停止したままであり、前記リンク部材に連係される前記第2操作部材がこれに従動することはない。
【0095】
その後、前記第1操作部材を解放すると、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピンと共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときの前記シートバックの傾斜角度が保持可能となる。
【0096】
一方、前記第2操作部材を解除操作した場合には、これに伴って前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動することで、前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤに噛合し、これに伴い前記リンク部材及び前記切替ポールと共に前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となって前記シートバックの傾斜角度の調整が可能となる。
【0097】
その後、前記第2操作部材の解放に伴い前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動(戻り回動)すると、前記解除用付勢部材の付勢力で前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤとの噛合を解除する。これにより、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピンと共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときの前記シートバックの傾斜角度が保持可能となる。
【0098】
ところで、前記第1及び第2ブラケットの相対回動に伴い前記シートバックの傾斜角度が変化すると、前記第1ブラケットに設けられる前記カム体及び前記ヒンジピンは、前記第2ブラケットから見て周方向の位置が変化する。しかしながら、前記第2操作部材を解除操作した場合には、前記シートバックの傾斜角度に関わらず前述の態様で前記外歯及び前記内歯の噛合を解除できる。
【0099】
特に、前記シートバックから見た前記シートクッションの状態(ヒンジピンの回動位置)が、該シートクッションに対する回動に伴って変化しても、例えば前記第2操作部材の解除操作により前記切替ポールの前記ギヤ部及び前記伝達ギヤを噛合させて前記ヒンジピンを回動させることで、前記調整機構を切替動作させることができる。このため、例えば特許文献2のように前記第2操作部材の解除操作を前記調整機構に伝達するためのケーブルなどを前記シートクッション2側に一旦配索してその後に前記調整機構に連結するといったことが不要になり、配置スペースの増大を抑制できる。
【符号の説明】
【0100】
1…シート、2…シートクッション(第3シート部材)、3…シートバック(第1シート部材)、5…アームレスト(第2シート部材)、20…調整機構、21…第1ブラケット、24…ガイド壁、31…第2ブラケット、33…内歯、41A…第1ポール(ポール)、41B…第2ポール(ポール)、42…カム(カム体)、43…レリーズプレート(カム体)、44…渦巻きばね(係止用付勢部材)、54,57、…外歯、70…ヒンジピン、73…伝達ギヤ、76…連動用レバー(第1操作部材)、77…ケーブル、77a,77b…端末、81…リンク部材、84…操作部材(第2操作部材)、86…切替ポール、86a…ギヤ部、88…捩りコイルスプリング(解除用付勢部材)、89…突部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの姿勢を調整するための車両用シート調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用シート調整装置としては、例えば特許文献1に記載されたアームレスト装置が知られている。図12に示すように、この装置は、第1シート部材としてのシートフレームに対する第2シート部材としてのアームレスト本体の角度を、軸に固定されたカム部材111及び解除ブロック116の作用と、軸に巻回したいわゆるロックばね119の収縮とを利用して調整・保持するものである。すなわち、アームレスト本体をその使用状態から格納方向に回動させる際には、ロックばね119を拡径させて回動可能とする。そして、アームレスト本体の格納状態では、ロックばね119の拡径状態を保持する。一方、アームレスト本体をその使用状態から展開方向に回動させる際には、ロックばね119を縮径させて回動不能とする。以上により、シートフレームに対するアームレスト本体の角度が無段階で調整・保持可能となる。
【0003】
また、他の車両用シート調整装置として、例えば特許文献2に記載されたものが知られている。図13に示すように、この装置は、第1シート部材としてのシートクッション両側部の骨格をなす一対のシートクッションサイドフレーム121の後端部に、第2シート部材としてのシートバックの骨格をなすシートバックフレーム122の両下端部が、関節部123等を介して連結されている。
【0004】
関節部123は、シートクッションに対してシートバックが回動可能となるロック解除状態と、シートクッションに対してシートバックが回動不能となるロック状態とを切り替える周知のものである。この関節部123は、シートクッション側部に配置された第1解除操作レバー125に連結されており、該第1解除操作レバー125の解除操作によってロック解除状態に切り替わる。
【0005】
また、この関節部123は、シートバックフレーム122(シートバック)の上部に配置された第2解除操作レバー126にケーブル127を介して連結されており、該第2解除操作レバー126の解除操作によってもロック解除状態に切り替わる。
【0006】
これにより、例えば当該シートの着座者自身による第1解除操作レバー125の解除操作や、当該シートの後側の乗員による第2解除操作レバー126の解除操作によって関節部123をロック解除状態に切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−35862号公報
【特許文献2】特開2003−159140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献2では、シートバックから見たシートクッション(第1解除操作レバー125)の状態が、該シートクッションに対する回動に伴って変化するため、第2解除操作レバー126の解除操作力を関節部123に伝達するためのケーブル127をシートクッション側に一旦配索してその後に関節部123に連結することになる。このため、ケーブル127の配索レイアウトが制限されるとともに、該制限に起因した配置スペースの増大を招く要因となる。
【0009】
本発明の目的は、第1シート部材及び第2シート部材間に介設される調整機構でシートの姿勢を調整・保持する車両用シート調整装置において、配置スペースの増大を抑制しながらも、第1シート部材側及び第2シート部材側に配設される第1操作部材及び第2操作部材にて調整機構をそれぞれ切替動作させることができる車両用シート調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、第1シート部材に固定される第1ブラケットと、第2シート部材に固定され前記第1ブラケットに対する相対回動に伴ってシートの姿勢を調整可能な第2ブラケットと、前記第2ブラケットに設けられた内歯に係脱可能な外歯を有して前記第1ブラケットに設けられたガイド壁により径方向への移動が案内されるポールと、前記ポールに係合されて前記第1ブラケットに回動自在に設けられたカム体と、前記カム体を回動付勢して前記外歯及び前記内歯を噛合させる係止用付勢部材とを備える調整機構と、伝達ギヤを有して前記カム体に一体回動するように連結されたヒンジピンと、前記ヒンジピンに一体回動するように連結された第1操作部材と、前記第2シート部材に設けられる第2操作部材に連係され、前記ヒンジピンに軸支されたリンク部材と、前記リンク部材に回動自在に連結され、前記伝達ギヤに噛合可能なギヤ部を有する切替ポールと、前記リンク部材及び前記切替ポール間に介装され、前記ギヤ部及び前記伝達ギヤの噛合を解除する側の付勢力を発生する解除用付勢部材と、前記第2シート部材に固定され、前記解除用付勢部材に回動付勢される前記切替ポールを案内する突部とを備え、前記第2操作部材の解除操作に伴って前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動することで、前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤに噛合し、これに伴い前記リンク部材及び前記切替ポールと共に前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除するとともに、前記第1操作部材の解除操作に伴って前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除することを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、前記第2操作部材を解除操作した場合には、これに伴って前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動することで、前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤに噛合し、これに伴い前記リンク部材及び前記切替ポールと共に前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となってシート姿勢の調整が可能となる。
【0012】
その後、前記第2操作部材の解放に伴い前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動(戻り回動)すると、前記解除用付勢部材の付勢力で前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤとの噛合を解除する。これにより、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピンと共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときのシート姿勢が保持可能となる。
【0013】
このように、前記第2シート部材から見た前記第1シート部材の状態(ヒンジピンの回動位置)が、該第1シート部材に対する回動に伴って変化しても、例えば前記第2操作部材の解除操作により前記切替ポールの前記ギヤ部及び前記伝達ギヤを噛合させて前記ヒンジピンを回動させることで、前記調整機構を切替動作させることができる。このため、例えば前記第2操作部材の解除操作力を前記調整機構に伝達するためのケーブルなどを前記第1シート部材側に一旦配索してその後に前記調整機構に連結するといったことが不要になり、配置スペースの増大を抑制できる。
【0014】
一方、前記第1操作部材を解除操作した場合には、これに伴って前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となってシート姿勢の調整が可能となる。
【0015】
その後、前記第1操作部材を解放すると、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピン及び前記第1操作部材と共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときのシート姿勢が保持可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シート調整装置において、前記第1操作部材は、前記第1シート部材に対して回動可能な第3シート部材に一方の端末が係止されるケーブルの他方の端末が係止された連動用レバーであって、前記第3シート部材に対する前記第1シート部材の所定角度を超えた回動に伴って前記ケーブルを介して前記連動用レバーと共に前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除することを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、前記第3シート部材に対して前記第1シート部材を前記所定角度を超えて回動させた場合には、これに伴って前記ケーブルを介して前記連動用レバーと共に前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となってシート姿勢の調整が可能となる。つまり、前記第3シート部材に対する前記第1シート部材の前記所定角度を超えた回動に連動させて、シート姿勢を調整することができる。そして、前記第3シート部材に対して前記第1シート部材が前記所定角度を超えて回動する際に、例えば前記第3シート部材及び前記第2シート部材が干渉したとしても、該第2シート部材の調整範囲でこれを吸収することで、前記第1シート部材の当該回動動作が阻害されることを抑制できる。
【0018】
その後、前記第3シート部材に対して前記第1シート部材を前記所定角度内に回動(戻り回動)させると、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピン及び前記連動用レバーと共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときのシート姿勢が保持可能となる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シート調整装置において、前記第1操作部材は、解除操作レバーであることを要旨とする。
同構成によれば、前記解除操作レバーを解除操作した場合には、これに伴って前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となってシート姿勢の調整が可能となる。つまり、利用者が直に前記解除操作レバーを解除操作することで、シート姿勢を調整することができる。
【0020】
その後、前記解除操作レバーを解放すると、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピン及び前記解除操作レバーと共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときのシート姿勢が保持可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、第1シート部材及び第2シート部材間に介設される調整機構でシートの姿勢を調整・保持する車両用シート調整装置において、配置スペースの増大を抑制しながらも、第1シート部材側及び第2シート部材側に配設される第1操作部材及び第2操作部材にて調整機構をそれぞれ切替動作させることができる車両用シート調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が適用されるシートの斜視図。
【図2】本発明の一実施形態の動作を説明する側面図。
【図3】同実施形態の動作を説明する側面図。
【図4】同実施形態を示す分解斜視図。
【図5】調整機構を示す分解斜視図。
【図6】調整機構を示す横断面図。
【図7】同実施形態の前倒れ時の動作を示す側面図。
【図8】同実施形態を示す分解斜視図。
【図9】同実施形態の操作部材の非操作時の動作を示す説明図。
【図10】同実施形態の操作部材の操作開始時の動作を示す説明図。
【図11】同実施形態の操作部材の操作完了時の動作を示す説明図。
【図12】従来形態を示す模式図。
【図13】他の従来形態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図11を参照して本発明の一実施形態について説明する。図1に示すように、車両フロアには、乗員の着座部を形成するシート1が設置されている。このシート1は、座面を形成するシートクッション2と、該シートクッション2の後端部に傾動(回動)自在に支持されたシートバック3と、該シートバック3の上端部に支持されたヘッドレスト4と、シートバック3の高さ方向中間部においてそのシート幅方向両側に配設された一対のアームレスト5とを備えて構成される。そして、シート1は、シートクッション2に対するシートバック3の傾斜角度が調整可能であるとともに、該シートバック3に対する両アームレスト5の傾斜角度が調整可能である。これにより、当該シート1の着座者は、例えばその体格に合わせて目線の位置を調整可能である。あるいは、当該シート1の着座者は、例えばその求める快適性に合わせて着座姿勢を調整可能である。
【0024】
なお、シートバック3は、シートクッション2に対する傾斜角度が所定範囲に収まる通常の使用状態で、該傾斜角度を所定角度ごとに多段階で調整・保持可能となっている。また、シートバック3は、シートクッション2に対する傾斜角度が前記所定範囲を超えることでシートクッション2に対して回動自在となる。そして、図2に示すように、シートクッション2に対する傾動が係止されることなく、シートバック3の前倒れが可能となる。
【0025】
ここで、シートクッション2に対するシートバック3の傾斜角度が前記所定範囲に収まる通常の使用状態にあるものとして、シートバック3に対する各アームレスト5の傾斜角度について説明する。図3に示すように、シートバック3に対するアームレスト5の傾斜角度θには、アームレスト5が略前方に延在する所定の初期位置A0からアームレスト5が斜め上方に延在する所定の境界位置A1までの調整範囲Z1と、境界位置A1からアームレスト5が略上方に延在する所定の格納位置A2までの跳上げ範囲Z2とが設定されている。
【0026】
調整範囲Z1では、アームレスト5の傾斜角度θが、所定角度ごとに多段階で調整・保持可能となっている。一方、跳上げ範囲Z2では、アームレスト5の両方向の回動、即ちアームレスト5の上下動が許容される。そして、アームレスト5の傾斜角度θが格納位置A2に達すると、当該格納位置A2で保持可能となっている。
【0027】
なお、図2に示すように、シートバック3の傾斜角度が前記所定範囲を超えて前倒れすると、シートバック3に対してアームレスト5が回動自在となるようになっている。従って、シートバック3の前倒れに伴ってアームレスト5がシートクッション2と係合しても、アームレスト5によってシートバック3の前倒れが阻害されることはなく、アームレスト5は格納位置A2に向かって傾動する。
【0028】
次に、シート1の骨格構造について説明する。図4に示すように、シートクッション2両側部の骨格をなす一対のシートクッションサイドフレーム2aの後端部には、下方に開いた略U字形状を呈してシートバック3の骨格をなすシートバックフレーム3aが、その両下端部において回動自在に連結されている。なお、シートクッションサイドフレーム2aの後端部とシートバックフレーム3aの下端部との間には、周知のリクライナ10が介設されている。シートクッション2(シートクッションサイドフレーム2a)対するシートバック3(シートバックフレーム3a)の前述の傾動動作は、このリクライナ10による周知の動作によって実現されている。
【0029】
シートバックフレーム3aの高さ方向中間部には、シート幅方向両外側に突設された一対の略ドラム状のブラケット7が固着されている。一方、各アームレスト5の骨格をなすアームレスト本体11は、長箱状の一対のアームレストフレーム12,13がそれらの開口側同士の突き合わされた状態で結合されており、円盤状の調整機構20を介してシート幅方向に延びる軸線周りに前記ブラケット7に回動自在に連結されている。つまり、アームレスト本体11を内包するアームレスト5は、調整機構20を介することで、シートバック3に傾動(回動)自在に支持されている。
【0030】
次に、調整機構20について説明する。
調整機構20は、前記リクライナ10に準じた構造を有しており、図5に示すように、シート幅方向に中心線(軸線)O1の延びる円盤状の第1ブラケット21及び第2ブラケット31を備えている。第1ブラケット21は、例えばブラケット7(シートバック3側)に固定され、第2ブラケット31は、アームレストフレーム12(アームレスト5側)に固定される。
【0031】
第1ブラケット21は、例えば金属板の半抜き(ハーフブランキング)により成形されたもので、第2ブラケット31側に開口する円形の凹部22を有している。凹部22は、中心線O1(軸線)を中心とする内周面22aを有している。
【0032】
第1ブラケット21の凹部22内には、3つの略扇状の凸部23が円周上に等角度間隔に配置されている。各凸部23は、その周方向両側にガイド壁24を形成する。各隣り合う凸部23の周方向で対向するガイド壁24同士は、中心線O1を中心とする径方向に互いに平行に延びている。
【0033】
また、第1ブラケット21の中央部には、略円形の貫通孔25が形成されている。この貫通孔25は、所定角度位置で径方向外側に凹設された係止孔25aを有する。
第2ブラケット31は、例えば金属板の半抜きにより成形されたもので、第1ブラケット21の内周面22aの内径と同等の外径の外周面31aを有する。また、第2ブラケット31は、図6に示すように、第1ブラケット21側に開口する略円形の凹部32を有している。凹部32の内周面には、中心線O1を中心とする内歯33が全周に亘って形成されている。
【0034】
凹部32の内周側には、該凹部32と同心円上に略円形の凹部34が形成されている。この凹部34の内周面には、所定角度範囲で径方向外側に凹設された略円弧状の第1解放部34a及び第2解放部34bが形成されている。そして、凹部34の内周面は、これら第1及び第2解放部34a,34b間に略円弧状の規制部34c,34dを形成する。
【0035】
第2ブラケット31は、その外周面31aで、第1ブラケット21の内周面22aと摺接するように嵌合されている。そして、第1ブラケット21及び第2ブラケット31の外周部には、第1ブラケット21の内周面22aと第2ブラケット31の外周面31aとが嵌合された状態で、金属板からなるリング状の保持部材30が装着されている。第1ブラケット21及び第2ブラケット31は、この保持部材30によって相対回動が許容された状態で軸方向に抜け止めされている。
【0036】
図5に示すように、第1ブラケット21と第2ブラケット31との間には、第1ポール41Aと、一対の第2ポール41Bと、カム42と、レリーズプレート43と、係止用付勢部材としての渦巻きばね44とが配設されている。カム42及びレリーズプレート43はカム体を構成する。
【0037】
第1及び第2ポール41A,41Bは、隣り合う2つのガイド壁24の間に装着されて、中心線O1を中心とする円周上に等角度間隔に配置されている。
第1ポール41Aは、鋼材を鍛造加工するなどして作製され、互いに段違い形成された第1ブロック51と第2ブロック52とを備えている。第1ポール41Aは、第1ブロック51及び第2ブロック52がそれぞれ第2ブラケット31の内歯33側及び中心線O1側に配置されている。
【0038】
第1ブロック51の円弧状の外方端(第2ブラケット31の内歯33と対向する端面)には、第2ブラケット31の内歯33と噛合可能な外歯54が形成され、第1ブロック51の内方端(外方端とは逆向きの端面である背面)には、カム42の外周部に係合する内面カム部55が形成されている。一方、第2ブロック52の外方端(第2ブラケット31の凹部34と対向する端面)には、その中央部から径方向外側に円弧壁状の係合突部53が突設されている。この係合突部53の周方向の幅は、前記第2解放部34bの周方向の幅と同等に設定されている。また、第2ブロック52の略中央部には、板厚方向に貫通するポール側溝カム部56が透設されている。
【0039】
そして、第1ポール41Aは、その両幅端部を両ガイド壁24に摺接する態様で中心線O1を中心とする径方向への移動が案内されている。第1ポール41Aは、両ガイド壁24に沿って径方向に進退することで、その外歯54と内歯33とを噛合又は解除(係脱)する。
【0040】
第2ポール41Bは、板状の鋼板をプレス加工するなどして作製され、第1ポール41Aの第2ブロック52が切除され、第1ブロック51のみによって構成された形状に近似した段差をもたない平板形状をなしている。第2ポール41Bの円弧状の外方端(第2ブラケット31の内歯33と対向する端面)には、第2ブラケット31の内歯33と噛合可能な外歯57が形成され、第2ポール41Bの内方端(外方端とは逆向きの端面である背面)には、カム42の外周部に係合する内面カム部58が形成されている。さらに、第2ポール41Bには、幅方向の中央部に係合突起59が突設されている。
【0041】
そして、第2ポール41Bは、その両幅端部を両ガイド壁24に摺接する態様で中心線O1を中心とする径方向への移動が案内されている。第2ポール41Bは、両ガイド壁24に沿って径方向に進退することで、その外歯57と内歯33とを噛合又は解除(係脱)する。
【0042】
カム42は、第2ブラケット31の凹部32内となる第1及び第2ポール41A,41Bの内周側で、中心線O1上に回動可能に配置されている。
カム42は、板状の鋼板をプレス加工するなどして作製され、段差をもたない平板形状をなしている。そして、カム42の中央部には、略小判形の嵌合孔42aが形成されている。また、カム42は、その外周部に円周上に等角度間隔に3組のカム面65を有している。
【0043】
各カム面65は、該当の第1及び第2ポール41A,41Bの対向する内面カム部55,58に当接可能であり、カム42がロックする方向(以下、「ロック回動方向」ともいう)に回動されたときに該当の内面カム部55,58を押圧する。
【0044】
一方、カム42がロックを解除する方向(以下、「ロック解除回動方向」ともいう)に回動されると、各カム面65は、該当の第1及び第2ポール41A,41Bの内面カム部55,58から離隔される。
【0045】
カム42の側面には、円周上に間隔をおいて複数の係合突起67が突設され、これら係合突起67の1つが、第1ポール41Aのポール側溝カム部56に挿入・係合されている。ポール側溝カム部56及び係合突起67は、カム42のロック解除回動方向への回動によって第1ポール41Aを径方向内方へ移動させるように作用する。
【0046】
カム42の側面には、略半円薄板状のレリーズプレート43が係合突起67に係合されて一体的に取付けられている。レリーズプレート43は、第1ポール41Aの第2ブロック52と軸線方向に一致するようにカム42に取付けられており、両第2ポール41Bの端面に摺接可能に対接されている。これによって、両第2ポール41B及びレリーズプレート43が第1ポール41Aの厚みの範囲内に収められている。なお、レリーズプレート43は、第2ブラケット31に形成した規制部34c,34cと非接触になるようにその外径が設定されている。また、レリーズプレート43は、第1ポール41Aに対応する角度範囲を開放することで、カム42と一体でのレリーズプレート43の回動によって該レリーズプレート43が第1ポール41Aと干渉することを回避している。
【0047】
レリーズプレート43には、板厚方向に貫通する2つのレリーズプレート側溝カム部69が形成されている。これらレリーズプレート側溝カム部69には、両第2ポール41Bに突設された係合突起59がそれぞれ挿入・係合されている。レリーズプレート側溝カム部69及び係合突起59は、カム42及びレリーズプレート43のロック解除回動方向への回動によって第2ポール41Bを径方向内方へ移動させるように作用する。
【0048】
渦巻きばね44は、第1及び第2ポール41A,41Bを第2ブラケット31に係合する方向(ロック回動方向)にカム42を回動付勢するもので、第1ブラケット21の貫通孔25内に収納されている。渦巻きばね44は、例えば略矩形の扁平な線材を所定の渦巻き形状に曲成することにより形成されており、第1ブラケット21とカム42との間に配設されている。すなわち、渦巻きばね44の外側の脚部44aは、係止孔25aに係止され、内側の脚部44bは、カム42の端面に設けた図略の係止部に係止されている。
【0049】
かかる渦巻きばね44の付勢力によって、カム42は第1ブラケット21に対してロック回動方向に回転付勢され、そのカム面65によって第1及び第2ポール41A,41Bを径方向外方に押圧し、各々の外歯54,57を第2ブラケット31の内歯33に係合させるようになっている。
【0050】
ここで、前述の通常の使用状態にあるものとして、第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置と、アームレスト5の傾斜角度θとの関係について説明する。
図6に示すように、第1ポール41Aの係合突部53が第1解放部34aに配置されるときの第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置では、係合突部53によって第1ポール41Aの径方向外側への移動が係止されることはなく、その外歯54が第2ブラケット31の内歯33に噛合可能である。そして、レリーズプレート43を介して第1ポール41Aに連動する両第2ポール41Bも、その外歯57が第2ブラケット31の内歯33に噛合可能である。従って、カム42の回動に伴い、前述の第1及び第2ポール41A,41Bの外歯54,57と第2ブラケット31の内歯33との噛合又は解除(係脱)が可能になって、第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置が所定角度(隣り合う歯のなす角度)ごとに多段階で調整・保持可能となる。そして、アームレスト5の傾斜角度θが上記所定角度ごとに多段階で調整・保持可能となる。つまり、第1ポール41Aの係合突部53が第1解放部34aに配置されるときの第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置は、アームレスト5の調整範囲Z1に相当する。
【0051】
なお、係合突部53が第1解放部34a及び規制部34dの境界部に当接するときの図6に示す第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置が、アームレスト5の初期位置A0に相当し、係合突部53が第1解放部34a及び規制部34cの境界部に当接するときの第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置が、アームレスト5の境界位置A1に相当する。
【0052】
一方、係合突部53が第2解放部34bに嵌入するときの第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置が、アームレスト5の格納位置A2に相当する。そして、係合突部53が規制部34cに乗り上げている間の第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置が、アームレスト5の跳上げ範囲Z2に相当する。
【0053】
次に、カム42に対するロック解除操作力(ロック解除回動方向への操作力)の伝達構造について説明する。
図4に示すように、各調整機構20には、例えば金属棒からなるヒンジピン70が中心線O1に沿って挿通されている。このヒンジピン70は、前記カム42の嵌合孔42aに嵌挿される略小判柱状の嵌合軸部71を有するとともに、アームレスト本体11の片側(シート幅方向内側)のアームレストフレーム12を貫通してアームレスト本体11の形成する内部空間に配置される略円柱状の軸部72を有する。なお、嵌合軸部71及び軸部72の境界部には、平歯車からなる伝達ギヤ73が固着されている。この伝達ギヤ73も、アームレスト本体11の形成する内部空間に配置される。
【0054】
調整機構20を貫通する嵌合軸部71には、前記ブラケット7との間に配置された第1操作部材としてのアーム状の連動用レバー76が嵌挿されている。従って、連動用レバー76が回動すると、これと一体でヒンジピン70(及びカム42)が回動する。
【0055】
連動用レバー76の先端部には、シートクッションサイドフレーム2aの後端部に一方の端末77aが係止されたケーブル77の他方の端末77bが係止されている。このケーブル77は、シートバック3(シートバックフレーム3a)の傾斜角度が前記所定範囲を超えて前倒れすると、図7に示すように、連動用レバー76を引っ張ってこれを中心線O1周りに回動させる。このときの連動用レバー76(及びヒンジピン70)の回動方向は、カム42のロック解除回動方向に一致するように設定されている。従って、シートバック3の前倒れに連動して調整機構20を回動自在にすることができ、シートクッション2と係合するアームレスト5の前述の格納位置A2に向かう傾動を実現する。
【0056】
一方、図8に示すように、アームレストフレーム12,13(アームレスト本体11)の形成する内部空間に配置されるヒンジピン70の軸部72には、例えば金属板からなるリンク部材81が軸支されている。このリンク部材81は、軸部72を中心とする互いに異なる2方向(図示左上方向及び左下方向)の径方向に延在する第1レバー部82及び第2レバー部83を有して略L字形状を呈する。なお、第1レバー部82には、爪状の係止片82aが形成されている。この係止片82aには、アームレストフレーム12の後端に一方の脚部の係止された、例えば引っ張りコイルスプリングからなる復帰スプリング90の他方の脚部が係止されている。この復帰スプリング90は、リンク部材81が図示時計回りに回動する側の付勢力を発生する。
【0057】
アームレストフレーム12,13(アームレスト本体11)の先端部には、例えば金属板からなる第2操作部材としてのフック状の操作部材84が中心線O1と平行な軸線周りに回動自在に連結されている。この操作部材84は、アームレストフレーム12,13の外側で下方に延在する略杓文字状の操作部84aを有するとともに、アームレストフレーム12,13の内側で下方に延在するアーム状のレバー部84bを有する。
【0058】
そして、レバー部84bの先端部には、アームレストフレーム12,13の長手方向に略沿って延在する丸棒状の連結棒85の先端部が、中心線O1と平行な軸線周りに回動自在に連結されている。なお、連結棒85の基端部は、第1レバー部82の先端部に、中心線O1と平行な軸線周りに回動自在に連結されている。
【0059】
従って、操作部84aを引き上げて操作部材84を図示時計回りに回動させると、連結棒85を介して引っ張られるリンク部材81が、復帰スプリング90の付勢力に抗して図示反時計回りに回動する。また、操作部84aを解放すると、復帰スプリング90に付勢されてリンク部材81が図示時計回りに回動する。これにより、連結棒85を介して押し出される操作部材84が図示反時計回りに回動(戻り回動)し、操作部84aが元位置へと下動する。
【0060】
第2レバー部83の先端部には、例えば金属板からなるアーム状の切替ポール86の基端部が、それらを中心線O1と平行に貫通する支持ピン87により相対回動自在に連結されている。この切替ポール86の先端部には、中心線O1等における軸線方向の位置で前記伝達ギヤ73に合致するギヤ部86aが形成されている。また、支持ピン87周りには、第2レバー部83及び切替ポール86に両脚部がそれぞれ係止された解除用付勢部材としての捩りコイルスプリング88が巻回されている。このコイルスプリング88は、支持ピン87を中心とするこれら第2レバー部83及び切替ポール86のなす角度を増加する側の付勢力を発生する。
【0061】
また、アームレストフレーム12には、切替ポール86の図示反時計回りの回動軌跡を遮る略円柱状の突部89が突設されている。従って、捩りコイルスプリング88により第2レバー部83に対してそれとのなす角度を増加する側に付勢される切替ポール86の回動位置は、突部89に係止されるまでの一定範囲に制限されている。そして、リンク部材81は、突部89により回動係止される切替ポール86に対して捩りコイルスプリング88により回動付勢されることで、中心線O1周りに図示反時計回りに回動しようとする。つまり、リンク部材81は、捩りコイルスプリング88による図示反時計回りに回動させようとする付勢力と、復帰スプリング90による図示時計回りに回動させようとする付勢力とが均衡するときの回動位置(以下、「初期位置」ともいう)に保持される。
【0062】
ここで、図9に示すように、操作部材84(操作部84a)が非操作状態にあるとき、初期位置にあるリンク部材81に対して捩りコイルスプリング88により図示反時計回りに回動付勢される切替ポール86は、突部89が当接する所定位置に保持されている。このとき、切替ポール86のギヤ部86aは、ヒンジピン70の伝達ギヤ73から離隔しており、例えばヒンジピン70及び切替ポール86間で回動伝達されることはない。また、軸部72に軸支されるリンク部材81には、当然ながらヒンジピン70の回動が直に伝達されることはない。
【0063】
そして、図10に示すように、操作部材84(操作部84a)の操作を開始すると、連結棒85を介して引っ張られるリンク部材81が図示反時計回りに回動するとともに、突部89に案内されつつリンク部材81と一体回動する切替ポール86が捩りコイルスプリング88の付勢力に抗して図示時計回りに回動し、そのギヤ部86aをヒンジピン70の伝達ギヤ73に噛合する。これにより、リンク部材81は、伝達ギヤ73において切替ポール86と噛合するヒンジピン70と一体回動可能となる。
【0064】
この状態で、図11に示すように、操作部材84(操作部84a)の操作を更に続けると、切替ポール86を介してヒンジピン70がリンク部材81と一体回動する。このときのヒンジピン70の回動方向は、カム42のロック解除回動方向に一致するように設定されている。従って、操作部材84(操作部84a)の操作に連動して調整機構20を回動自在にすることができ、アームレスト5の傾斜角度θの前述の調整が可能となる。
【0065】
その後、例えばアームレスト5の傾斜角度θが調整範囲Z1又は格納位置A2にあるとして、操作部材84(操作部84a)の操作を解放すると、復帰スプリング90に回動付勢されるリンク部材81が図示時計回りに初期位置に向かって回動(戻り回動)する。これとともに、連結棒85を介して押し出される操作部材84が図示反時計回りに回動し、操作部84aが元位置へと下動する。
【0066】
この際、突部89に案内されつつリンク部材81と一体回動する切替ポール86は、捩りコイルスプリング88に付勢されて図示反時計回りに回動し、そのギヤ部86aをヒンジピン70の伝達ギヤ73から外す。このとき、切替ポール86から解放されたヒンジピン70は、渦巻きばね44に回動付勢されるカム42と共にそのロック回動方向に回動する。これに伴い、アームレスト5の傾斜角度θが保持されることは既述のとおりである。
【0067】
以上により、調整範囲Z1又は格納位置A2にあるときの、操作部材84(操作部84a)の操作を通じたアームレスト5の傾斜角度θの調整・保持が可能となる。
なお、操作部材84(操作部84a)の操作を解放した際、アームレスト5の傾斜角度θが跳上げ範囲Z2にあれば、ヒンジピン70は、カム42と共にそのロック回動方向への回動が係止され、調整機構20は回動自在な状態を維持する。ただし、ヒンジピン70に対するリンク部材81の揺動分で切替ポール86のギヤ部86aが伝達ギヤ73から外れるのであれば、前述の態様で操作部84aが元位置へと下動する。
【0068】
ところで、シートバック3の通常の使用状態でこれを前倒しすると、ケーブル77に引っ張られる連動用レバー76及びヒンジピン70と共にカム42がロック解除回動方向に回動することで、調整機構20が回動自在となる。この際、切替ポール86は、ヒンジピン70(伝達ギヤ73)との噛合を解除したままであり、切替ポール86に連結されたリンク部材81は、ヒンジピン70(軸部72)に軸支されることでアームレスト本体11内では図9に示す初期位置のままである。つまり、シートバック3の前倒しに伴ってヒンジピン70が回動することになっても、これによってリンク部材81等が揺動したりすることはない。
【0069】
次に、シートバック3の通常の使用状態で、アームレスト5の傾斜角度θが調整範囲Z1にあるとして、その動作を説明する。この状態で、操作部材84を解除操作すると、その操作力が連結棒85、リンク部材81及び切替ポール86を介して該切替ポール86に噛合する伝達ギヤ73(ヒンジピン70)に伝達される。これにより、ヒンジピン70と一体回動するカム42がレリーズプレート43と共にロック解除回動方向に回動することで、調整機構20が回動自在となり、アームレスト5の傾斜角度θの前述の調整が可能となる。
【0070】
その後、操作部材84の解除操作を解放すると、アームレスト5の傾斜角度θが調整範囲Z1又は格納位置A2にあれば、復帰スプリング90に付勢されるリンク部材81が初期位置に復帰するととともに切替ポール86が伝達ギヤ73との噛合を解除し、連結棒85を介して押し出される操作部材84(操作部84a)が元位置に復帰する。この際、渦巻きばね44に回動付勢されるカム42がヒンジピン70と共にロック回動方向に回動することで、調整機構20が回動不能となり、アームレスト5がそのときの傾斜角度θで保持される。
【0071】
また、操作部材84の解除操作を解放した際、アームレスト5の傾斜角度θが跳上げ範囲Z2にあれば、調整機構20が回動自在な状態を維持することで、例えば調整範囲Z1及び格納位置A2間でアームレスト5が傾動自在となる。
【0072】
一方、シートバック3の通常の使用状態でこれを前倒しすると、ケーブル77に引っ張られる連動用レバー76及びヒンジピン70と共にカム42(及びレリーズプレート43)がロック解除回動方向に回動することで、調整機構20が回動自在となり、アームレスト5が傾動自在となる。これにより、シートバック3の前倒れに伴ってシートクッション2と係合するアームレスト5が、シートバック3の前倒れ動作を阻害することはない。
【0073】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、アームレスト5から見たシートバック3の状態(ヒンジピン70の回動位置)が、該シートバック3に対する回動に伴って変化しても、例えば操作部材84の解除操作により切替ポール86のギヤ部86a及び伝達ギヤ73を噛合させてヒンジピン70を回動させることで、調整機構20を切替動作させることができる。このため、例えば特許文献2のように操作部材の解除操作力を調整機構20に伝達するためのケーブルなどをシートバック3側に一旦配索してその後に調整機構20に連結するといったことが不要になり、配置スペースの増大を抑制できる。
【0074】
(2)本実施形態では、シートクッション2に対してシートバック3を所定角度を超えて回動(前倒し)させた場合には、これに伴ってケーブル77を介して連動用レバー76と共にヒンジピン70が回動する。これにより、カム42及びレリーズプレート43(カム体)が渦巻きばね44の付勢力に抗して回動することで、外歯54,57及び内歯33の噛合が解除される。従って、第1及び第2ブラケット21,31が相対回動可能となってアームレスト5の傾斜角度θの調整が可能となる。つまり、シートクッション2に対するシートバック3の前倒しに連動させて、アームレスト5の傾斜角度θを調整することができる。そして、シートクッション2に対してシートバック3が前倒れする際に、例えばシートクッション2及びアームレスト5が干渉したとしても、該アームレスト5の調整範囲でこれを吸収することで、シートバック3の当該前倒れ動作が阻害されることを抑制できる。
【0075】
この際、ヒンジピン70に軸支されたリンク部材81は、ヒンジピン70(軸部72)が空転することでアームレスト5に対して停止したままであり、リンク部材81に連係される操作部材84がこれに従動することはない。
【0076】
(3)本実施形態では、リンク部材81の初期位置を、捩りコイルスプリング88の付勢力と復帰スプリング90の付勢力との均衡で保持することができる。そして、例えば操作部材84の解除操作を解放した際には、復帰スプリング90の付勢力にて第1レバー部82を回動付勢することで、操作部84aを元位置へと下動(復帰)させることができる。
【0077】
(4)本実施形態では、シートクッション2に対するシートバック3の前倒し(例えば乗降時の格納など)に連動させて、調整機構20を解除してアームレスト5を畳むことができる。
【0078】
(5)本実施形態では、アームレスト5の傾斜角度θに跳上げ範囲Z2が設定されていることで、例えば操作部材84の操作力を解放した状態であっても、アームレスト5を速やかに回動させることができる。
【0079】
(6)本実施形態では、操作部材84の解除操作を通じてアームレスト5の傾斜角度θの調整を行うため、例えばアームレスト5を掴んで行う場合に比べて高級感を付与できる。
【0080】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態では、操作部材84を連結棒85を介してリンク部材81に連係したが、例えばケーブル(ワイヤ)やその他の伝達機構を介してリンク部材81に連係してもよい。また、操作部材84をリンク部材81に直結してもよい。
【0081】
・前記実施形態では、解除用付勢部材として捩りコイルスプリング88を採用したが、例えば板ばねや圧縮コイルスプリングなどであってもよい。
・前記実施形態において、解除操作後に操作部84aを手動で元位置へと下動(復帰)させる場合には、復帰スプリング90を割愛してもよい。
【0082】
・前記実施形態において、カム42及びヒンジピン70の嵌合形状は一例であって、例えばD字形状や多角形状、セレーションなどで嵌合させてもよい。
・前記実施形態において、第1ブラケット21内に配設されるポール(41A,41B)の個数は任意である。また、複数のポールが配設される場合、これらの動作が連動するのであれば互いに異なる形状であってもよいし、同一形状であってもよい。特に、全てのポールを第1ポール41Aの形状にする場合には、レリーズプレート43を割愛すればよい。
【0083】
・前記実施形態において、第1ブラケット21及び第2ブラケット31と、シートバック3(シートバックフレーム3a)及びアームレスト5(アームレストフレーム12)との固定関係は逆であってもよい。
【0084】
・本発明は、図12に示した特許文献2に準じたリクライニング装置に適用してもよい。本発明をこのようなタイプのリクライニング装置に適用する場合には、連動用レバー76をシート側面配置の第1解除操作レバー125(解除操作レバー)と見なし、操作部材84をシートバック3上面配置の第2解除操作レバー126(肩口レバー)と見なし、調整機構20を関節部123と見なし、連結棒85を肩口レバー及びリンク部材81(調整機構20)を連結する適宜の部材と見なせばよい。
【0085】
この場合、シートバック3から見たシートクッション2の状態(ヒンジピン70の回動位置)が、該シートクッション2に対する回動に伴って変化しても、例えば肩口レバーの解除操作により切替ポール86のギヤ部86a及び伝達ギヤ73を噛合させてヒンジピン70を回動させることで、調整機構20を切替動作させることができる。このため、例えば特許文献2のように肩口レバーの解除操作を調整機構20に伝達するためのケーブルなどをシートクッション2側に一旦配索してその後に調整機構20に連結するといったことが不要になる。
【0086】
また、シート側面配置の解除操作レバーは、シートクッション2側(固定側)に設けられることで、操作の解放した状態ではシートバック3の傾斜角度に関わらず定位置を維持することになり、解除操作レバーの移動に伴う違和感や周辺部品との干渉を解消することができる。
【0087】
・本発明は、その他の車両用シート調整装置(例えばシートリフタ装置、シートチルト装置、オットマン装置など)に適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0088】
(イ)シートバック及びアームレストのいずれか一方に固定される第1ブラケットと、前記シートバック及び前記アームレストのいずれか他方に固定され前記第1ブラケットに対する相対回動に伴って前記アームレストの傾斜角度を調整可能な第2ブラケットと、前記第2ブラケットに設けられた内歯に係脱可能な外歯を有して前記第1ブラケットに設けられたガイド壁により径方向への移動が案内されるポールと、前記ポールに係合されて前記第1ブラケットに回動自在に設けられたカム体と、前記カム体を回動付勢して前記外歯及び前記内歯を噛合させる係止用付勢部材とを備える調整機構と、
伝達ギヤを有して前記カム体に一体回動するように連結されたヒンジピンと、
前記第2ブラケットが固定される前記シートバック又は前記アームレストに設けられる操作部材に連係され、前記ヒンジピンに軸支されたリンク部材と、
前記リンク部材に回動自在に連結され、前記伝達ギヤに噛合可能なギヤ部を有する切替ポールと、
前記リンク部材及び前記切替ポール間に介装され、前記ギヤ部及び前記伝達ギヤの噛合を解除する側の付勢力を発生する解除用付勢部材と、
前記第2ブラケットが固定される前記シートバック又は前記アームレストに固定され、前記解除用付勢部材に回動付勢される前記切替ポールを案内する突部と、
前記シートバックに対して回動可能なシートクッションに一方の端末が係止されるケーブルの他方の端末が係止され、前記ヒンジピンに一体回動するように連結された連動用レバーとを備え、
前記操作部材の解除操作に伴って前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動することで、前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤに噛合し、これに伴い前記リンク部材及び前記切替ポールと共に前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除するとともに、
前記シートクッションに対する前記シートバックの所定角度を超えた回動に伴って前記ケーブルを介して前記連動用レバーと共に前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除することを特徴とする車両用シート調整装置。
【0089】
同構成によれば、前記操作部材を解除操作した場合には、これに伴って前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動することで、前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤに噛合し、これに伴い前記リンク部材及び前記切替ポールと共に前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となって前記アームレストの傾斜角度の調整が可能となる。
【0090】
その後、前記操作部材の解放に伴い前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動(戻り回動)すると、前記解除用付勢部材の付勢力で前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤとの噛合を解除する。これにより、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピンと共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときの前記アームレストの傾斜角度が保持可能となる。
【0091】
一方、前記シートクッションに対して前記シートバックを前記所定角度を超えて回動させた場合には、これに伴って前記ケーブルを介して前記連動用レバーと共に前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となって前記アームレストの傾斜角度の調整が可能となる。つまり、前記シートクッションに対する前記シートバックの前記所定角度を超えた回動に連動させて、前記アームレストの傾斜角度を調整することができる。そして、前記シートクッションに対して前記シートバックが前記所定角度を超えて回動する際に、例えば前記シートクッション及び前記アームレストが干渉したとしても、該アームレストの調整範囲でこれを吸収することで、前記シートクッションの当該回動動作が阻害されることを抑制できる。
【0092】
その後、前記シートクッションに対して前記シートバックを前記所定角度内に回動(戻り回動)させると、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピン及び前記連動用レバーと共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときの前記アームレストの傾斜角度が保持可能となる。
【0093】
(ロ)シートクッションに固定される第1ブラケットと、シートバックに固定され前記第1ブラケットに対する相対回動に伴って前記シートバックの傾斜角度を調整可能な第2ブラケットと、前記第2ブラケットに設けられた内歯に係脱可能な外歯を有して前記第1ブラケットに設けられたガイド壁により径方向への移動が案内されるポールと、前記ポールに係合されて前記第1ブラケットに回動自在に設けられたカム体と、前記カム体を回動付勢して前記外歯及び前記内歯を噛合させる係止用付勢部材とを備える調整機構と、
伝達ギヤを有して前記カム体に一体回動するように連結されたヒンジピンと、
前記ヒンジピンに一体回動するように連結された第1操作部材(解除操作レバー)と、
前記シートバックに設けられる第2操作部材(肩口レバー)にケーブルを介して連結され、前記ヒンジピンに軸支されたリンク部材と、
前記リンク部材に回動自在に連結され、前記伝達ギヤに噛合可能なギヤ部を有する切替ポールと、
前記リンク部材及び前記切替ポール間に介装され、前記ギヤ部及び前記伝達ギヤの噛合を解除する側の付勢力を発生する解除用付勢部材と、
前記シートバックに固定され、前記解除用付勢部材に回動付勢される前記切替ポールを案内する突部とを備え、
前記第1操作部材の解除操作に伴って前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除するとともに、
前記第2操作部材の解除操作に伴って前記ケーブルを介して前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動することで、前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤに噛合し、これに伴い前記リンク部材及び前記切替ポールと共に前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除することを特徴とする車両用シート調整装置。
【0094】
同構成によれば、前記第1操作部材を解除操作した場合には、これに伴って前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となって前記シートバックの傾斜角度の調整が可能となる。この際、前記ヒンジピンに軸支された前記リンク部材は、前記ヒンジピンが空転することで前記シートバックに対して停止したままであり、前記リンク部材に連係される前記第2操作部材がこれに従動することはない。
【0095】
その後、前記第1操作部材を解放すると、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピンと共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときの前記シートバックの傾斜角度が保持可能となる。
【0096】
一方、前記第2操作部材を解除操作した場合には、これに伴って前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動することで、前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤに噛合し、これに伴い前記リンク部材及び前記切替ポールと共に前記ヒンジピンが回動する。これにより、前記カム体が前記係止用付勢部材の付勢力に抗して回動することで、前記外歯及び前記内歯の噛合が解除される。従って、前記第1及び第2ブラケットが相対回動可能となって前記シートバックの傾斜角度の調整が可能となる。
【0097】
その後、前記第2操作部材の解放に伴い前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動(戻り回動)すると、前記解除用付勢部材の付勢力で前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤとの噛合を解除する。これにより、前記係止用付勢部材に付勢される前記カム体が前記ヒンジピンと共に回動(戻り回動)することで、前記外歯及び前記内歯が噛合される。従って、前記第1及び第2ブラケットの相対回動が不能となってそのときの前記シートバックの傾斜角度が保持可能となる。
【0098】
ところで、前記第1及び第2ブラケットの相対回動に伴い前記シートバックの傾斜角度が変化すると、前記第1ブラケットに設けられる前記カム体及び前記ヒンジピンは、前記第2ブラケットから見て周方向の位置が変化する。しかしながら、前記第2操作部材を解除操作した場合には、前記シートバックの傾斜角度に関わらず前述の態様で前記外歯及び前記内歯の噛合を解除できる。
【0099】
特に、前記シートバックから見た前記シートクッションの状態(ヒンジピンの回動位置)が、該シートクッションに対する回動に伴って変化しても、例えば前記第2操作部材の解除操作により前記切替ポールの前記ギヤ部及び前記伝達ギヤを噛合させて前記ヒンジピンを回動させることで、前記調整機構を切替動作させることができる。このため、例えば特許文献2のように前記第2操作部材の解除操作を前記調整機構に伝達するためのケーブルなどを前記シートクッション2側に一旦配索してその後に前記調整機構に連結するといったことが不要になり、配置スペースの増大を抑制できる。
【符号の説明】
【0100】
1…シート、2…シートクッション(第3シート部材)、3…シートバック(第1シート部材)、5…アームレスト(第2シート部材)、20…調整機構、21…第1ブラケット、24…ガイド壁、31…第2ブラケット、33…内歯、41A…第1ポール(ポール)、41B…第2ポール(ポール)、42…カム(カム体)、43…レリーズプレート(カム体)、44…渦巻きばね(係止用付勢部材)、54,57、…外歯、70…ヒンジピン、73…伝達ギヤ、76…連動用レバー(第1操作部材)、77…ケーブル、77a,77b…端末、81…リンク部材、84…操作部材(第2操作部材)、86…切替ポール、86a…ギヤ部、88…捩りコイルスプリング(解除用付勢部材)、89…突部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シート部材に固定される第1ブラケットと、第2シート部材に固定され前記第1ブラケットに対する相対回動に伴ってシートの姿勢を調整可能な第2ブラケットと、前記第2ブラケットに設けられた内歯に係脱可能な外歯を有して前記第1ブラケットに設けられたガイド壁により径方向への移動が案内されるポールと、前記ポールに係合されて前記第1ブラケットに回動自在に設けられたカム体と、前記カム体を回動付勢して前記外歯及び前記内歯を噛合させる係止用付勢部材とを備える調整機構と、
伝達ギヤを有して前記カム体に一体回動するように連結されたヒンジピンと、
前記ヒンジピンに一体回動するように連結された第1操作部材と、
前記第2シート部材に設けられる第2操作部材に連係され、前記ヒンジピンに軸支されたリンク部材と、
前記リンク部材に回動自在に連結され、前記伝達ギヤに噛合可能なギヤ部を有する切替ポールと、
前記リンク部材及び前記切替ポール間に介装され、前記ギヤ部及び前記伝達ギヤの噛合を解除する側の付勢力を発生する解除用付勢部材と、
前記第2シート部材に固定され、前記解除用付勢部材に回動付勢される前記切替ポールを案内する突部とを備え、
前記第2操作部材の解除操作に伴って前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動することで、前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤに噛合し、これに伴い前記リンク部材及び前記切替ポールと共に前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除するとともに、
前記第1操作部材の解除操作に伴って前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除することを特徴とする車両用シート調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シート調整装置において、
前記第1操作部材は、前記第1シート部材に対して回動可能な第3シート部材に一方の端末が係止されるケーブルの他方の端末が係止された連動用レバーであって、
前記第3シート部材に対する前記第1シート部材の所定角度を超えた回動に伴って前記ケーブルを介して前記連動用レバーと共に前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除することを特徴とする車両用シート調整装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用シート調整装置において、
前記第1操作部材は、解除操作レバーであることを特徴とする車両用シート調整装置。
【請求項1】
第1シート部材に固定される第1ブラケットと、第2シート部材に固定され前記第1ブラケットに対する相対回動に伴ってシートの姿勢を調整可能な第2ブラケットと、前記第2ブラケットに設けられた内歯に係脱可能な外歯を有して前記第1ブラケットに設けられたガイド壁により径方向への移動が案内されるポールと、前記ポールに係合されて前記第1ブラケットに回動自在に設けられたカム体と、前記カム体を回動付勢して前記外歯及び前記内歯を噛合させる係止用付勢部材とを備える調整機構と、
伝達ギヤを有して前記カム体に一体回動するように連結されたヒンジピンと、
前記ヒンジピンに一体回動するように連結された第1操作部材と、
前記第2シート部材に設けられる第2操作部材に連係され、前記ヒンジピンに軸支されたリンク部材と、
前記リンク部材に回動自在に連結され、前記伝達ギヤに噛合可能なギヤ部を有する切替ポールと、
前記リンク部材及び前記切替ポール間に介装され、前記ギヤ部及び前記伝達ギヤの噛合を解除する側の付勢力を発生する解除用付勢部材と、
前記第2シート部材に固定され、前記解除用付勢部材に回動付勢される前記切替ポールを案内する突部とを備え、
前記第2操作部材の解除操作に伴って前記リンク部材が前記ヒンジピンに対して回動することで、前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記突部に案内される前記切替ポールの前記ギヤ部が前記伝達ギヤに噛合し、これに伴い前記リンク部材及び前記切替ポールと共に前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除するとともに、
前記第1操作部材の解除操作に伴って前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除することを特徴とする車両用シート調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シート調整装置において、
前記第1操作部材は、前記第1シート部材に対して回動可能な第3シート部材に一方の端末が係止されるケーブルの他方の端末が係止された連動用レバーであって、
前記第3シート部材に対する前記第1シート部材の所定角度を超えた回動に伴って前記ケーブルを介して前記連動用レバーと共に前記ヒンジピンが回動することで、前記係止用付勢部材の付勢力に抗して前記外歯及び前記内歯の噛合を解除することを特徴とする車両用シート調整装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用シート調整装置において、
前記第1操作部材は、解除操作レバーであることを特徴とする車両用シート調整装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−103605(P2013−103605A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248539(P2011−248539)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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