説明

車両用シート

【課題】 ダイナミックダンパをシートバック内にコンパクトに設置する。
【解決手段】 シートバックフレーム4の上端部に位置する中空の横枠部42内にダイナミックダンパ5を収納する。横枠部42の一端を開放して開口41を形成し、当該開口41から横枠部42内にダイナミックダンパ5を挿入設置する。ダイナミックダンパ5は、横枠部42内に挿入保持される枠体51と、質量体54と、質量体54と枠体51との間に介設されて質量体54を支持する弾性体6とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振抑制用のダイナミックダンパを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
図9には従来の車両用シートの分解斜視図を示す。図9において、シートバックのフレーム71は全体として逆U字形に成形されており、当該フレーム71の上辺中央に板状の取付ブラケット72の上縁が固定されている。取付ブラケット72の板面には左右位置にスタッドボルト73が立設されて、これにダイナミックダンパ8が取り付けられている。ダイナミックダンパ8は板材をU字形に屈曲成形した保持板81を備えており、保持板81の左右の脚部811間にゴム体82を介して質量体83が支持されている。上記保持板8は、脚部811の、外方へ屈曲させた先端の取付孔812が上記スタッドボルト73に嵌装されて、ナット74によって固定される。また、取付ブラケット72には上記ダイナミックダンパ8を覆うカバー体75が取り付けられる。なお、特許文献1にはシートバックのパッド内に質量体を埋設してダイナミックダンパとした車両用シートが示されている。
【特許文献1】特開2001−161489
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の車両用シートでは、ダイナミックダンパを設置するために、シートバック内に比較的大きな設置スペースを確保する必要がある。このためスペース上の制約からダイナミックダンパを設けることができない場合があるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、ダイナミックダンパをコンパクトに設置することができる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本第1発明の車両用シートでは、少なくとも一部が筒状のフレーム(4)を備えた車両用シートであって、前記フレーム(4)の筒状部(42)内にダイナミックダンパ(5)を収納する。
【0006】
本第1発明においては、ダイナミックダンパをフレーム内に設けるから、シートに十分な設置スペースを確保できない場合でも、ダイナミックダンパをコンパクトに設置することができる。
【0007】
本第2発明の車両用シートでは、シートバックフレーム(4)を上下方向に延びる左右の縦枠部(44)と、両縦枠部(44)の上端を連結する横枠部(42)とで構成し、横枠部(42)を筒状とし、ダイナミックダンパ(5)を横枠部(42)内に収納する。本第2発明においては、下端を中心に揺動共振するシートバックに対して、ダイナミックダンパの反共振力を効果的に作用させることができるから、ダイナミックダンパの質量体を軽量化することができる。
【0008】
本第3発明の車両用シートでは、フレーム(4)の筒状部(42)の一端にその軸線方向に開放する開口(41)を形成し、当該開口(41)からフレーム(4)内にダイナミックダンパ(5)を挿入設置する。本第3発明においては、フレーム内へのダイナミックダンパの設置を容易に行うことができる。
【0009】
本第4発明の車両用シートでは、ダイナミックダンパ(5)を、フレーム(4)の内周面に当接して保持される枠体(51)と、質量体(54)と、弾性材より形成され質量体(54)と枠体(51)との間に介設されて質量体(54)を支持する弾性体(6)とで構成する。本第4発明においては、ダイナミックダンパが直接フレームに保持されるから、ダイナミックダンパを保持するための部品を設ける必要がない。
【0010】
本第5発明の車両用シートでは、枠体(51)を、筒状部(42)の軸線方向の両端に位置する支持部(511)とこれら両支持部(511)を連結する連結部(512)とで構成し、各支持部(511)とこれらと対向する質量体(54)の両端部との間に弾性体(6)を介設する。
【0011】
本第5発明においては、フレーム内に設置する際にシート毎にダイナミックダンパの姿勢が周方向で異なっていても、シートの振動に対して、ダイナミックダンパは方向性を生じることなく同一の振動抑制効果を発揮する。
【0012】
本第6発明の車両用シートでは、弾性体(6)に、枠体(51)の外周面上に延出してフレーム(4)の内周面に弾接し枠体(51)をフレーム(4)内に保持する保持部(55)を形成する。本第6発明においては、シートの振動に対し、ダイナミックダンパを、位置ずれを生じることなく確実に位置決めすることができる。
【0013】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両用シートによれば、ダイナミックダンパをコンパクトに設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1には本発明が適用された車両用シートの概観を示す。車両用シート1はシートバック11、シートクッション12、及びシートベルト装置2を備えている。図2には上記車両用シートのシートバックフレーム(以下、フレームという)4の概観を示す。フレーム4は左右の縦枠部44とその上端を連結する横枠部42を備えており、縦枠部44の下端は公知のリクライニング機構(図示略)を内設したヒンジ13を介してシートクッション12の後端に結合されている。ここで、上記横枠部42は一端が開放する円形の筒状に成形されており、水平に配置されている。また、横枠部42の下方には、左右の縦枠部44間に水平姿勢の支持棒451が上下位置で平行に架設されて、これら支持棒451間に、シートバック11を引き起すハンドルを取り付けるための取付用ブラケット45が固定されている。シートベルト装置2は、シートクッション12の後端部内に設けられたリトラクタと、一端がリトラクタに引出し・巻取り可能に結合され、シートバック11(図1)内を通って上方へ延び、横枠部42に設けたガイド43を経てシートバック11の上端一側部からシートバック11の外へ引き出されて他端がシートクッション12の一側部に結合されたウェビング21と、シートバック11の外においてウェビング21(図1)に摺動可能に挿通されたタングプレート22と、シートクッション12の他側縁に設けられ、タングプレート22を結合・分離可能なバックル23とで構成されている。タングプレート22をバックル23に結合すると、ウェビング21が図1に示すようにシートバック11の前方を横切ってく字形に張設されて、着座した乗員の身体を保持する。
【0016】
上記ガイド43が位置するシートバック11の上端一側部にはカバー体3が設けられている。図3にはカバー体設置部(図1のA部)の分解斜視図を示す。図略のリトラクタからシートバック11内を通って上方へ引き出されたウェビング21は、フレーム4の横枠部42の後側外周面に沿ってガイド43内を上方へ延びており、カバー体3の頂面に形成されたスリット31に挿通されてシートバック11の前方へ引き出されている。車両の急減速時等には、乗員の身体を保持したウェビング21から上記フレーム4に大きな荷重が作用するため、横枠部42は既述のように比較的大径の中空筒状に成形されてその剛性が高められている。そして、この横枠部42内に車両走行寺に床から伝わる振動によってシートバック11が共振するのを抑制するためのダイナミックダンパ5が収納されている。フレーム4の一端にはその軸線方向であるシート外側方へ開放する開口41が形成されており、この開口41から筒状部としての横枠部42内へダイナミックダンパ5が挿入される。なお、上記開口41やガイド42は通常はカバー体3で覆われており、カバー体3を取り外すと図3に示すように露出する。
【0017】
図4にはダイナミックダンパ5の側面図を示し、図5にはその平面図を示す。また、図6にはダイナミックダンパ5の縦断面図を示す。ダイナミックダンパ5は枠体51と、質量体54と、枠体51と質量体54との間に介設されて質量体を支持する弾性体としてのゴム体6とを備えている。枠体51は金属板を成形したもので支持部511と連結部512を備えている。支持部511は枠体51の両端に位置して、軸線Lに中心を位置させた円筒状に成形されている(図7参照)。連結部512は一定幅の帯状で、両支持部511を周方向の180度離れた二箇所で連結している。上記支持部511はその外径が横枠部42の筒内径にほぼ等しくなっている。質量体54は中心軸が軸線Lと重なるように両支持部511間に配置された円柱状の金属塊である。ゴム体6は、支持部511の筒内空間に充填された(図6)円板状の基部52と、基部52の中心から軸線Lに沿って対向方向内方へ棒状に延びる支持部53と、上記各支持部53から延出して質量体54の端面および端部外周面を覆うように質量体54に接合された接合部531とを備えている。このように、所定質量の質量体54が所定のばね力を発揮するゴム体6によって支持されて、所望の固有振動数を有する振動系が構成されている。
【0018】
さらにゴム体6は基部52から枠体51の支持部511外周面の全周に延在させられて、枠体51の径方向外方へ山形断面をなして突出する環状の保持部55を備えている。これによりダイナミックダンパ5を図8に示すようにフレーム4の横枠部42内に挿入した際に、支持部511外周面の上記保持部55がフレーム4の内周面に弾接した状態となり、枠体51が保持部55の弾性復元力によって位置ずれを生じることなくフレーム4内に確実に保持される。
【0019】
このようにダイナミックダンパ5をフレーム4の上端部に位置する横枠部42内に設置したから、シートバック11内にハンドル取付用ブラケット45やウェビング21が設けられていても、ダイナミックダンパ5をシートバック11内にさらに設置することができる。また弾性体5の保持部55を介して枠体51を横枠部42の内周面に当接させることにより、ダイナミックダンパ5をフレーム4内に保持するので容易に組付けることができる。そして、車体振動等に伴ってシートバック11がその下端を中心に揺動共振を生じようとしても、当該揺動共振はダイナミックダンパ5の質量体54の反共振によって小さく抑えられる。また、ダイナミックダンパのゴム体6と質量体は軸線に対して対称となっているから、シートバックの傾倒角度を変えても、軸線に直交する方向から入力するシートバックの揺動振動に対して常に一定の振動抑制効果を発揮する。なお、上記実施形態ではダイナミックダンパをシートバックのフレーム内に設けた例を説明したが、シートバック以外のフレーム内に設けることもできる。また、弾性体は必ずしもゴム体である必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明が適用された車両用シートの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す、シートバックフレームを露出させた車両用シートを後方より見た斜視図である。
【図3】ダイナミックダンパ設置部の分解斜視図である。
【図4】ダイナミックダンパの側面図である。
【図5】ダイナミックダンパの平面図である。
【図6】ダイナミックダンパの縦断面図である。
【図7】枠体の斜視図である。
【図8】ダイナミックダンパ設置部の分解斜視図である。
【図9】従来の車両用シートの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1...車両用シート、11...シートバック、4...フレーム、41...開口、5...ダイナミックダンパ、51...枠体、511...端部、52...基部、53...延出部、54...質量体、55...保持部、6...ゴム体(弾性体)、L...軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が筒状のフレームを備えた車両用シートであって、前記フレームの筒状部内にダイナミックダンパを収納したことを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
シートバックフレームを上下方向に延びる左右の縦枠部と、両縦枠部の上端を連結する横枠部とで構成し、前記横枠部を筒状とし、前記ダイナミックダンパを前記横枠部内に収納した請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記フレームの筒状部の一端にその軸線方向に開放する開口を形成し、当該開口から前記フレーム内に前記ダイナミックダンパを挿入設置した請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記ダイナミックダンパを、前記フレームの内周面に当接して保持される枠体と、質量体と、弾性材より形成され前記質量体と前記枠体との間に介設されて前記質量体を支持する弾性体とで構成した請求項1ないし3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記枠体を、前記筒状部の軸線方向の両端に位置する支持部とこれら両支持部を連結する連結部とで構成し、前記各支持部とこれらと対向する前記質量体の両端部との間に前記弾性体を介設した請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記弾性体に、前記枠体の外周面上に延出して前記フレームの内周面に弾接し前記枠体を前記フレーム内に保持する保持部を形成した請求項4又は5に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−34326(P2006−34326A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214226(P2004−214226)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】