説明

車両用シート

【課題】よりシンプルな構成によって、車両床面の障害物を避けつつ、車両用シートのポジション変位を行うことにある。
【解決手段】一方リンクアーム20f,20bと他方リンクアーム26の連携回転によって、車両用シート2一側を車両用シート2他側よりも下方に配置した状態で車両一側又は他側に移動させる変位動作と、他方リンクアーム26の一側への回転によって、車両用シート2一側の高さ位置に車両用シート2他側の高さ位置を対応させる位置合わせ動作を行うことにより、車両用シート2を、上段面UP上に配置する他方ポジションと、車両一側に張出す一方ポジションの間で変位させる構成とし、一方リンクアーム20,20bと他方リンクアーム26を、車両用シート2に対して傾斜状に配置して、変位動作時の車両用シート2を、障害物Hを斜めに跨ぎつつ一方ポジションと他方ポジションの間で変位させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、より詳しくは、障害物のある車室床面に、リンク機構を介して配設される車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両では、車室床面に段差部が形成されることが多く、車両前側の床面(下段面)よりも車両後側の床面(上段面)が一段高くされている。下段面と上段面は、傾斜面(立ち上がり面)によってつながっている。そして車両後側の上段面には、車両用シートが配設されるとともに、ホイールハウス(障害物の一例)が配設される。
そして上段面上に配設された車両用シートを、乗員の使い勝手などを考慮して、車両一側(下段面側)に張り出すポジションに変位させることが好ましいが、このとき上述のホイールハウスが邪魔となることがあった。
【0003】
そこで特許文献1に開示の技術では、車両用シートの側方に、略矩形のホイールハウス(障害物)が配置しており、車室床面には、このホイールハウスを避けるように略L字状のスライドレールが配設されている。このスライドレールは、車両用シートを前方に移動させる第一スライドレールと、車両用シートを側方に移動させる第二スライドレールからなる。そして車両用シートは、これら第一スライドレール及び第二スライドレールによって、ホイールハウスを避けつつ車室内を移動することができる。
【特許文献1】特開2000−264109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述の公知技術では、車両用シートを所望の位置に移動させるために複数のスライドレール(上段面、下段面及び立ち上がり面のスライドレール)が必要となり、シート構成がことのほか複雑となる。
そこでホイールハウス近傍にスライドレール(単数)を斜めに配設するとともに、車両用シートの一部(障害物と干渉するシート構成)を削除する。こうすればスライドレールの配設数を極力低減できるのであるが、そうするとシート構成の削除に伴う車両用シートの性能低下や意匠性の悪化が懸念される。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、よりシンプルな構成によって、車両床面の障害物を避けつつ、車両用シートのポジション変位を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、本発明の車両用シートは、リンク機構を介して車室床面に配設される。この車両床面は、車両一側の下段面と、下段面よりも高くされた車両他側の上段面と、上段面に配置の障害物を有する。
そして車両用シートを、上段面上に配置する他方ポジションと、車両一側(下段面側)に張り出す一方ポジションの間を変位させるのであるが、このとき極力シンプルな構成で、障害物を避けつつポジション変位できることが望ましい。
【0006】
そこで本発明では、上述のリンク機構に、車両用シートと下段面を連結する一方リンクアームと、下段面よりも高い位置にある車室床面(上段面又は立ち上がり面)と車両用シートを連結する他方リンクアームとを設ける。そして一方リンクアームの回転半径を、他方リンクアームの回転半径よりも大きく設定した。
そして一方リンクアームと他方リンクアームの連携回転によって、車両用シート一側を車両用シート他側よりも下方に配置した状態で車両一側又は他側に変位させる(変位動作)。そして他方リンクアームの一側への回転によって、車両用シート一側の高さ位置に車両用シート他側の高さ位置を対応させる(位置合わせ動作)。そして車両用シートを、これら両動作によって、上段面上に配置する他方ポジションと、車両一側に張り出す一方ポジションの間で変位させる構成とする。
【0007】
そして本発明では、一方リンクアームと他方リンクアームを、車両用シートに対して傾斜状に配置する。そして変位動作時の車両用シートが、障害物を斜めに跨ぎつつ、一方ポジションと他方ポジションの間で変位する構成とした。
このように本発明では、比較的シンプルな構成のリンク機構の回転を利用して、車両床面の障害物を避けつつ、車両用シートのポジション変位を行う構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、よりシンプルな構成によって、車両床面の障害物を避けつつ、車両用シートのポジション変位を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図6を参照して説明する。なお各図には、車両用シート前方に符号F、車両用シート後方に符号Bを適宜付す。なお図2では、便宜上ホイールハウスを省略する。
図1を参照して、本実施例の車室床面には段差部が形成されており、車両前側の床面(下段面DP)よりも車両後側の床面(上段面UP)が一段高くされている。
【0010】
そして下段面DPには、複数のストライカ部(第一ストライカ部32、第二ストライカ部34)が車両前後に並列して配設されている(各ストライカ部の詳細な配設位置は後述する)。これらストライカ部は、いずれも棒状部材(断面円状)であり、下段面DPに形成された凹状部(D1,D2)に配置する。
また上段面UPには、複数のキャッチ部(第一キャッチ部36、第二キャッチ部38)が車両前後に並列して配設されている。これらキャッチ部は、いずれも棒状部材(断面円状)であり、上段面UPに形成された凹状部(D3,D4)に配置する。
【0011】
(障害物)
そして上段面UPには、図1及び図5を参照して、略矩形のホイールハウスH(障害物の一例)が配設されている。このホイールハウスHは、後述の車両用シート2の側方に配設されており、同シート2よりも若干高い高さ寸法を有する(高さ寸法h)。
そしてホイールハウスHには切欠き状のテーパ面(側部テーパ面LT、前部テーパ面FT)が形成されている(図5を参照)。そしてこれらテーパ面は、後述するように、車両用シート2の変位動作時の変位軌跡に対応した形状(傾斜角度)を有している。
【0012】
[実施例1]
そして車両用シート2は、図1を参照して、シートクッション4及びシートバック6を有する。シートクッション4下部の後側にはロック部8が設けてある。このロック部8の下部は凹状とされており、棒状の第二キャッチ部38又は第一キャッチ部36が嵌り込み状に係合する構成である。
またシートクッション4下部の前端にはフック部10が設けてある。フック部10の下方は、各ストライカ部(棒状)と係合可能な爪状である。
【0013】
そして本実施例では、シートクッション4下部の前端から車室床面に向かってフック部10を延設する(延設長さ寸法E1)。そして車両用シート2が略水平の時(前方ポジション時又は後方ポジション時)には、フック部10の先端を、シートクッション4前端から車両前側に向かって傾斜させる。
また車両用シート2が下方傾斜状の時(車両用シート2の変位時)には、フック部10の先端を車両後側に向かって傾斜させる。そして後述する位置合わせ動作によって、フック部10の先端が、シートクッション4前端を回転中心(C1)とする半径E1の回転軌跡を描く構成とする(図2、図3の破線T1を参照)。
【0014】
(ストライカ部の配設位置)
そして本実施例では、第一ストライカ部32を、下段面DP前側の凹状部D1内に配置する。このとき第一ストライカ部32を、前方ポジション時のフック部10の回転軌跡(図4の破線T1を参照)の途中に設ける。
また第二ストライカ部34を、下段面DP後側(段差部近傍)の凹状部D2内に配置する。このとき第二ストライカ部34を、後方ポジション時のフック部10の回転軌跡(図2の破線T1を参照)の途中に設ける。
【0015】
そして本実施例の車両用シート2は、リンク機構L(詳細は後述)を介して段差部に配設される(図1及び図4を参照)。この車両用シート2は、リンク機構Lによって、上段面UP上のホイールハウスHを避けつつ、後方ポジションと前方ポジションの間を変位するのであるが、この種の構成は極力シンプルであることが望ましい。
そこで本実施例では、比較的シンプルな構成(リンク機構L)によって、ホイールハウスHを避けつつ、車両用シート2のポジション変位を行うこととした。以下、各構成について詳述する。
【0016】
(リンク機構)
リンク機構Lは、一対の前方リンクアーム20f,20b(一方リンクアームの一例)と、後方リンクアーム26(他方リンクアームの一例)を有する(図1及び図2を参照)。これら両リンクアーム20f(20b),26の配設位置は後述する。
そして一対の前方リンクアーム20f,20bは、共にL字状(側面視)の平板部材であり、上部アーム22と下部アーム24を有する(便宜上、20fにのみ詳細な符号を付す)。この上部アーム22を、シートクッション4の前端部に回転可能に軸支する。また下部アーム24を、下段面DPのブラケットBに傾倒可能に軸支することで、前方リンクアーム20f,20bをシートクッション4前側の両側に配設する。
そして一対の前方リンクアーム20f,20bを、ポジション変位時において、下段面DPのブラケットBを回転中心(C3)として車両前後に回転する構成とする。このとき前方リンクアームf(20b)の回転半径E3を、後方リンクアーム26の回転半径E2よりも大きく設定して、比較的緩やかな回転軌跡を描く構成とする(図2の破線T3を参照)。
【0017】
また後方リンクアーム26はI字状(側面視)の平板部材である。この後方リンクアーム26の上端を、シートクッション4下部の中央部(ブラケットB)に回転可能に軸支する。また後方リンクアーム26の下端を、上段面UPのブラケットBに傾倒可能に軸支することで、後方リンクアーム26をシートクッション4の中央に配設する。
そして後方リンクアーム26を、後述のポジション変位時において、上段面UPのブラケットBを回転中心(C2)として車両前後に傾倒回転する構成とする(図2の破線T2を参照)。
【0018】
また本実施例では、後方リンクアーム26が上段面UP上で回転するため、後述する下段面DPの前方リンクアームf(20b)よりも高い位置で回転する。
このため後述する変位動作時には、後方リンクアーム26で支持された車両用シート2の後側が、前方リンクアームf(20b)で支持された車両用シート2の前側よりも上方に配置する(図2及び図3を参照)。
すなわち本実施例では、上述の両リンクアーム20f(20b),26の連携回転によって、シートクッション4の下部(ロック部8)を上下動させる構成である(図3の破線T4を参照)。より詳しくは、後方ポジション時のロック部8が位置合わせ動作によって上方に変位する(高さ位置a)。さらにロック部8は、変位動作によって上方位置(位置b)に変位することにより、ホイールハウスH(高さ寸法h)を超える高さ位置に上昇する。そしてロック部8が、ホイールハウスHを超えたまま前側に移動したのち(位置b〜c〜d)、下段面DP近くでホイールハウスHよりも低くなる(位置e〜f)。そして後述の位置合わせ動作によって、前方ポジションに変位する。
【0019】
(リンクアームの配設位置)
そこで本発明では、上述の両リンクアームf(20b),26をシートクッション4に対して傾斜状に配設する(図5の傾斜角度θ)。これにより車両用シート2の着座面を前方に向けた状態で、上段面UPと下段面DPの間で変位させる構成とする。
そして本実施例では、後方ポジションの車両用シート2をホイールハウスHの側方(側部テーパ面LTを臨む側)に配置する。また前方ポジションの車両用シート2をホイールハウスHの前面側(前部テーパ面FTを臨む側)に配置する。このとき後方ポジションの車両用シート後部(ロック部8)と、前方ポジションの車両用シート後部(ロック部8)を結んだ線がホイールハウスHを横切るように車両用シート2を配置する。より詳しくはロック部8が、ホイールハウスHの部分を超える高さ位置にあるとき(位置b〜位置d)、両テーパ面を除くホイールハウスHを横切るように車両用シート2を配置する。
【0020】
(前方ポジションへの変位)
そして車両用シート2を前方ポジションに変位させる(図3及び図4を参照)。
このとき両リンクアームf(20b),26の車両前側への連携回転によって、車両用シート2前側が、車両用シート2後側よりも下方に配置した状態となり、車両前側に移動する(変位動作)。そして前方ポジションにおいて、後方リンクアーム26を前倒しして、車両用シート2前側の高さ位置に車両用シート2後側の高さ位置を合わせる(位置合わせ動作)。こうすることで車両用シート2が略水平となり、下段面DP側に張り出す前方ポジションに変位する。
【0021】
そしてフック部10は、変位動作時の両リンクアームf(20b),26の連係回転によって、車両前方に移動する。そしてフック部10は、位置合わせ動作時の後方リンクアーム26の前倒し(変位動作時と同方向の回転)によって、比較的スムーズに第一ストライカ部32に係合する(図3の破線T1を参照)。
【0022】
そして上述のロック部8は、図3及び図5を参照して、位置合わせ動作によって上方に移動したのち(位置a)、変位動作によってさらに上方に移動する(位置b)。このとき位置a〜bまでのロック部8は、ホイールハウスHの側部テーパ面LT(切欠き状)に沿って変位する。そしてロック部8は、ホイールハウスHを超える高さ位置のまま(位置b〜c〜d)、ホイールハウスHを跨ぎつつポジション変位する。
そして車両用シート2が、ホイールハウスHを乗り越えたのち(前方ポジションに配置したのち)、下段面DP近くにおいて、ホイールハウスHよりもロック部8が低くなる(位置e〜f)。そしてロック部8を、位置合わせ動作によって上段面UPの第一キャッチ部36に係合することで、前方ポジションの車両用シート2を固定することができる。
【0023】
(後方ポジションへの変位)
そしてリンク解除レバーを操作してリンク機構Lの回転動作を行い、車両用シート2を後方ポジションに変位させる(図1及び図2を参照)。
このとき前方リンクアームf(20b)と後方リンクアーム26の車両後側への連携回転によって、車両用シート2前側が、車両用シート2後側よりも下方に配置した状態となり、車両後側に移動する(変位動作)。そして後方ポジションにおいて、後方リンクアーム26を後倒しして、車両用シート2前側の高さ位置に車両用シート2後側の高さ位置を合わせる(位置合わせ動作)。こうすることで車両用シート2が略水平となり、上段面UP上の後方ポジションに変位する。
【0024】
そしてフック部10は、変位動作時の両リンクアームf(20b),26の連係回転によって後方に移動するとともに、一旦第二ストライカ部34上を通過する。そしてフック部10が、位置合わせ動作時の後方リンクアーム26の後倒し(変位動作時と逆方向の回転)によって、逆戻りしつつ第二ストライカ部34に係合する(図2の破線T1を参照)。
【0025】
そして上述のロック部8は、図3及び図5を参照して、位置合わせ動作によって上方に移動したのち(位置f)、変位動作によってさらに上方に移動する(位置e)。このとき位置f〜eまでのロック部8は、ホイールハウスHの前部テーパ面FT(切欠き状)に沿って変位する。そしてロック部8は、ホイールハウスHを超える高さ位置のまま(位置d〜c〜b)、ホイールハウスHを跨ぎつつポジション変位する。
そして車両用シート2が、ホイールハウスHを乗り越えたのち(後方ポジションに配置したのち)、ホイールハウスHよりもロック部8が低くなる(位置b〜a)。そしてロック部8を、位置合わせ動作によって上段面UPの第二キャッチ部38に係合することで、後方ポジションの車両用シート2を上段面UPに固定することができる。
【0026】
このように本実施例では、リンク機構L(比較的シンプルな構成)の回転を利用して、車両床面の障害物を避けつつ、車両用シート2のポジション変位を行うことができる。
また本実施例では、ホイールハウスHの上部に側部テーパ面LTと前部テーパ面FTを設けた。これらテーパ面によって、ホイールハウスHの意匠性が向上する。
また側部テーパ面LTを、車両用シート2の変位軌跡(ロック部8の位置a〜bまでの移動軌跡)に対応する形状としたことで、ホイールハウスHの最大の容積を確保しつつ、車両用シート2を最短距離で前方ポジションに変位させることができる。そして前部テーパ面FTを、車両用シート2の変位軌跡(ロック部8の位置f〜eまでの移動軌跡)に対応する形状としたことで、ホイールハウスHの最大の容積を確保しつつ、車両用シート2を最短距離で後方ポジションに変位させることができる。
【0027】
また本実施例では、前倒し状態の後方リンクアーム26と、後倒し状態の後方リンクアーム26が同位置高さに配置する(後方リンクアーム26が上段面上で180°回転する)。このため前方ポジションの車両用シート2と、後方ポジションの車両用シート2は、略同一の高さ位置に配置することとなる。
よって本実施例の車両用シート2は、いずれのポジション時においても、乗員に違和感を極力生じさせることなく使用することができる。
【0028】
[実施例2]
実施例2の基本構造は、実施例1とほぼ同一であるため、共通の構造等については対応する符号を付すことで詳細な説明を省略する。
本実施例では、前方ポジションの車両用シート2が、後方ポジションの車両用シート2よりも下方に配置する例を説明する(図5を参照)。本実施例では、第二ストライカ部34を、下段面DPよりも一段高い中段面に設ける。
また第一キャッチ部36を、一対の後方リンクアーム26aの間に橋渡し状として溶接固定する(二点の溶接個所にて固定する)。より詳しくは、前倒し状態の後方リンクアーム26aの張出し部位E(下段面DP側に張り出す部位)に第一キャッチ部36を固定する。
【0029】
そして本実施例の後方リンクアーム26aは、車室床面形状に対応の略L字状(側面視)であり、その上部が直線状であり、下部が屈曲状である。
この後方リンクアーム26aの上部(直線部分)を、シートクッション4下部の中央部(ブラケットB)に回転可能に軸支する。また後方リンクアーム26aの下部(屈曲部分)を、立ち上がり面RPのブラケットBに傾倒(回転)可能に軸支する。
後方ポジションの車両用シート2は、上段面UP上に配置する。このとき後方リンクアーム26aは、その上部(直線部分)が上段面UP上に後倒し状態となる。
【0030】
(ポジション変位)
そして車両用シート2を前方ポジションに変位させる(図5の破線状態を参照)。
このとき後方リンクアーム26a(略L字状)を、立ち上がり面RPのブラケットBを中心に車両前側に前倒したのち、車両用シート2を略水平とする。このように本実施例では、後方リンクアーム26aが、立ち上がり面RPのブラケットB(上段面UPよりも下方)で前倒し状態となることから、上段面UPよりも下方位置で略水平状態となる。
このため本実施例では、前方ポジションの車両用シート2と、後方ポジションの車両用シート2の高さ位置を異ならせることで、車室空間を前後上下に有効利用することができる。
【0031】
[変形例]
また上述の第一キャッチ部36を、段差部の立ち上がり面RPに配設する構成としてもよい。そして前方ポジションへの変位動作によって、シートクッション4のロック部8を、立ち上がり面RPの第一キャッチ部36に係合する構成とする。
【0032】
本実施形態に係る車両用シートは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施例では、車両前側に下段面DPを形成するとともに、車両後側に上段面UPを形成したが、車両床面の形状を限定する趣旨ではない。すなわち車両前側に上段面UPを形成するとともに、車両後側に下段面DPを形成してもよい。また車両左側に上段面UPを形成するとともに、車両右側に下段面DPを形成してもよい。
なお本実施例では、着座側が前方を臨むように車両用シートを配置したが、車両用シートの向きは特に限定しない。すなわち着座側が後方や側方を臨むように車両用シートを配置してもよい。
(2)また実施例では、ホイールハウスHを障害物の一例として例示した。本実施例の構成は、上段面に配設される各種の障害物(例えば他の車両用シートや収納部など)を乗り越える際にも適用可能な技術である。
【0033】
(3)また実施例1では、前方リンクアームを一対設けるとともに、後方リンクアームを一つ設ける構成を説明したが、これらリンクアームの数を限定する趣旨ではない。すなわち前方リンクアームは、単数であってもよく、二本以上の複数であってもよい。また同様に後方リンクアームも、単数であってもよく、複数であってもよい。
なお後方リンクアームは、専ら車両用シートを変位させるための部材であるため、例えばシートクッションの中央部に一つだけ設ける構成(よりシンプルな構成)としてもよい。また前方リンクアームは、車両用シートを支持する部材でもあるため、シートクッションに複数設ける構成が好ましい。
【0034】
(4)また本実施例では、前方リンクアーム20f(20b)の下部アーム24を、後方ポジション時に凹状部D2内に収納する構成(コンパクトな構成)を説明した。これとは異なり、前方リンクアーム(下部アーム)を下段面DP上に配設する構成としてもよい。
また同様に後方リンクアーム26も、凹状部D3内に収納する構成としてもよく、上段面上に配設する構成としてもよい。
【0035】
(5)また本実施例では、車両用シート2を固定するための構成として、キャッチ部及びロック部、フック部及びストライカ部を例示した。このほかにも車両用シート2を固定可能であれば各種の構成を採用することができる。
(6)また本実施例の車両用シート2には、スライド機構を設けることもできる。そしてスライド機構によって、各ポジションの車両用シート2を車両前後にスライド移動させることができる。
【0036】
(7)また本実施例の技術は、段差部のない車室床面(例えばフラットな車室床面)に配置される車両用シートにも適用できる。この場合には、下記の構成を備える車両用シートであることが望ましい。
(a)障害物を有する車室床面に、リンク機構を介して配設される。
(b)リンク機構に、車両用シートと車室床面を連結するリンクアームを設ける。
(c)リンクアームの回転によって、車両用シートを車両一側又は他側に移動させる変位動作を行うことにより、車両用シートを、障害物の側方位置に配置する他方ポジションと、障害物の別の側方位置に配置する一方ポジションの間で変位させる。
(d)リンクアームを、車両用シートに対して傾斜状に配置して、変位動作時の車両用シートを、障害物を斜めに跨ぎつつ一方ポジションと他方ポジションの間で変位させる構成とする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】後方ポジションの車両用シートの側面図である。
【図2】後側への変位途中の車両用シートの側面図である。
【図3】前側への変位途中の車両用シートの側面図である。
【図4】前方ポジションの車両用シートの側面図である。
【図5】車両用シートの上方正面図である。
【図6】実施例2の車両用シートの側面図である。
【符号の説明】
【0038】
2 車両用シート
4 シートクッション
6 シートバック
8 ロック部
10 フック部
20f,20b 前方リンクアーム
22 上部アーム
24 下部アーム
26 後方リンクアーム
32 第一ストライカ部
34 第二ストライカ部
36 第一キャッチ部
38 第二キャッチ部
L リンク機構
DP 下段面
UP 上段面
H ホイールハウス
RP 立ち上がり面
FT 前部テーパ面
LT 側部テーパ面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両一側の下段面と、前記下段面よりも高くされた車両他側の上段面と、前記上段面に配置の障害物を有する車室床面に、リンク機構を介して配設される車両用シートにおいて、
前記リンク機構に、前記車両用シートと前記下段面を連結する一方リンクアームと、前記下段面よりも高い位置にある車室床面と前記車両用シートを連結する他方リンクアームとを設けるとともに、前記一方リンクアームの回転半径を、前記他方リンクアームの回転半径よりも大きく設定して、
前記一方リンクアームと他方リンクアームの連携回転によって、前記車両用シート一側を前記車両用シート他側よりも下方に配置した状態で車両一側又は他側に移動させる変位動作と、前記他方リンクアームの一側への回転によって、前記車両用シート一側の高さ位置に前記車両用シート他側の高さ位置を対応させる位置合わせ動作を行うことにより、前記車両用シートを、前記上段面上で前記障害物の側方位置に配置する他方ポジションと、車両一側に張出して前記障害物の別の側方位置に配置する一方ポジションの間で変位させる構成とし、
前記一方リンクアームと前記他方リンクアームを、前記車両用シートに対して傾斜状に配置して、前記変位動作時の車両用シートを、前記障害物を斜めに跨ぎつつ前記一方ポジションと前記他方ポジションの間で変位させる構成とした車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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