車両用シート

【課題】高さ及び傾斜角度を無段階に連続して調節することができる車両用シートを提供する。
【解決手段】右前可動部材2A及び左前可動部材2Cには、調節リンク3A,3Bの上下端部には、第1前側リンク5A及び第1後側リンク5Bを回動可能に設ける。左前可動部材2C及び左後可動部材2Dには、第2前側リンク5C及び第2後側リンク5Dの各下端部をそれぞれ回動可能に設ける。リンク5A,5B及びリンク5C、5Dの各上端部を左右支持部材13A,13Bに回動可能に設ける。左右支持部材13A,13Bには、第1、第2ラック18,24を移動可能に設けるとともに、第1、第2ラック18,24とそれぞれ噛み合う第1、第2ピニオン22,28を設ける。第1連結リンク19の前後端部を、第1前リンク5A及び第1ラック18に回動可能に設ける。第2連結リンク25の前端部及び後端部を、第2ラック24及び第2後リンク5Dに回動可能に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高さ及び/又は傾斜角度が調節可能である車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の車両用シートは、下記特許文献1に記載されているように、車両のフレームに支持されたロアフレームと、このロアフレームの上方に移動可能に配置されたアッパーフレームと、前後方向に離間して配置され、各下端部がロアフレームに、各上端部がアッパーフレームにそれぞれ回動可能に連結された前側リンク及び後側リンクとを備えている。アッパーフレームの上には、乗員が腰掛けるシートクッションが設けられる。
【0003】
アッパーフレームには、前後方向に延びる第1及び第2のロック部材が設けられている。各ロック部材の下面には、複数の係合凹部が前後方向へ互いに離間して設けられている。一方、前側及び後側リンクの上端部には、係合軸がそれぞれ設けられている。各係合軸が第1及び第2ロック部材の各係合凹部にそれぞれ回動可能に挿入されことにより、前側及び後側リンクがアッパーフレームに回動可能に連結されている。しかも、各係合軸が係合する係合凹部を適宜に選択することにより、アッパーフレームの高さ及び/又は傾斜角度を調節することができるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開平3−213441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の車両用シートにおいては、アッパーフレームの高さ及び/又は傾斜角度を係合凹部の間隔毎にしか調節することができず、連続して調節することができない。このため、使用者の体格に応じて微調整することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するために、ロアフレームと、このロアフレームの上側に移動可能に配置されたアッパーフレームと、前後方向へ互いに離間して配置され、各下端部が上記ロアフレームに、各上端部が上記アッパーフレームにそれぞれ回動可能に連結された前側リンク及び後側リンクとを備えた車両用シートにおいて、上記ロアフレームと上記アッパーフレームとのいずれか一方のフレームには、第1ラックが前後方向へ移動可能に設けられ、この第1ラックと噛み合う第1ピニオンが回動可能に、かつ位置固定して設けられ、上記第1ラックの移動による上記第1ピニオンの回動を阻止する第1回動阻止手段が設けられ、上記前側リンクと上記後側リンクとのいずれか一方のリンクと上記第1ラックとの間には、上記一方のリンクが上記第1ラックの前後方向への移動に伴って回動するよう、一端部が上記一方のリンクに回動可能に連結され、他端部が上記第1ラックに回動可能に連結された第1連結リンクが設けられていることを特徴としている。
上記前側リンクの上記ロアフレーム及び上記アッパーフレームとの回動中心間の距離と、上記後側リンクの上記ロアフレーム及び上記アッパーフレームとの回動中心間の距離とが同一に設定されていることが望ましい。
上記一方のフレームには、第2ラックが前後方向へ移動可能に設けられ、この第2ラックと噛み合う第2ピニオンが回動可能に、かつ位置固定して設けられ、上記第2ラックの移動による上記第2ピニオンの回動を阻止する第2回動阻止手段が設けられ、上記前側リンクと上記後側リンクとのいずれか他方のリンクと上記第2ラックとの間には、上記他方のリンクが上記第2ラックの前後方向への移動に伴って回動するよう、一端部が上記他方のリンクに回動可能に連結され、他端部が上記第2ラックに回動可能に連結された第2連結リンクが設けられ、上記ロアフレームと上記アッパーフレームとのいずれか他方のフレームと、上記前側リンクと上記後側リンクとのいずれか一方のリンクとの間には、一端が上記他方のフレームに回動可能に連結され、他端が上記一方のリンクに回動可能に連結された調節リンクが設けられ、上記一方のリンクが上記他方のフレームに上記調節リンクを介して回動可能に連結されていることが望ましい。
上記一方のリンクと上記調節リンクとの回動中心と上記一方のリンクと上記一方のフレームとの回動中心との間の距離が、上記他方のリンクと上記ロアフレームとの回動中心と上記他方のリンクと上記アッパーフレームとの回動中心との間の距離と同一に設定されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、ピニオンを回転させると、ラックが前後方向へ移動する。すると、前側及び後側リンクのうちの一方のリンクが連結リンクによって回動させられる。この結果、アッパーフレームの高さ及び/又は傾斜角度が変化する。ここで、アッパーフレームの高さ及び/又は傾斜角度は、ピニオンの回転量に応じて連続的に変化する。したがって、アッパーフレームの高さ及び/又は傾斜角度を使用者の体格に応じて微調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図10は、この発明の一実施の形態を示す。図1及び図4に示すように、車両用シートAは、右側及び左側レール部材1A,1Bを有している。左側及び右側レール部材1A,1Bは、その長手方向を前後方向(車両の前後方向)に向けた状態で車両のフレーム(図示せず)に固定されている。しかも、レール部材1A,1Bは、前後方向及び上下方向には同一位置に、左右方向には互いに所定距離だけ離間して配置されている。
【0009】
図2、図5、図7及び図9に示すように、右側レール部材(車両の前方から見て、右側に配置されたレール部材)1Aには、右前可動部材(ロアフレーム)2A及び右後可動部材(ロアフレーム)2Bが設けられている。右前可動部材2Aは、レール1Aの前端部(各図において左端部)にレール部材1Aの長手方向へ移動可能に設けられている。右後可動部材2Bは、レール部材1Aの後端部にその長手方向へ移動可能に設けられている。右前可動部材2A及び右後可動部材2Bは、レール部材1Aに対して独立して移動可能であるが、車両用シートAの組立完了後は一体に移動する。したがって、両者は一体に形成したてもよく、連結部材(図示せず)等によって互いに一体に挙動するように連結してもよい。
【0010】
図3、図6、図8及び図10に示すように、左側レール部材1Bには、左前可動部材(ロアフレーム)2C及び左後可動部材(ロアフレーム)2Dが左側レール部材1Bの長手方向へ移動可能に設けられている。左前可動部材2C及び左後可動部材2Dは、車両用シートAの組立完了後は一体に移動する。したがって、両者は一体に形成してもよく、あるいは連結部材(図示せず)によって連結してもよい。しかも、両可動部材2C,2Dは、可動部材2A,2Bと一体に移動する。よって、両可動部材2C,2Dは、可動部材2A,2Bと一体に形成してもよく、連結部材(図示せず)を介して連結してもよい。
【0011】
図2、図5、図7及び図9に示すように、右前可動部材2Aには、調節リンク3Aの下端部が左右方向に延びる水平な軸4を介して回動可能に連結されている。調節リンク3Aの上端部には、第1前側リンク(前側リンク)5Aの下端部が左右方向に延びる水平な軸6を介して回動可能に連結されている。右後可動部材2Bには、第1後側リンク5Bの下端部が左右方向に延びる水平な軸7を介して回動可能に連結されている。軸6が軸4の真上に位置しているとき、軸6の高さと軸7の高さが同一になっている。
【0012】
図3、図6、図8及び図10に示すように、左前可動部材2Cには、調節リンク3Bの下端部が軸8を介して回動可能に連結されている。軸8は、その軸線を軸4の軸線と一致させて配置されている。調節リンク3Bの上端部には、第2前側リンク5Cの下端部が軸9を介して回動可能に連結されている。軸9は、その軸線を軸6の軸線と一致させて配置されている。右後可動部材2Dには、第2後側リンク(後側リンク)5Dの下端部が軸10を介して回動可能に連結されている。軸10は、その軸線を軸7の軸線と一致させて配置されている。
【0013】
各図に示すように、第1前側リンク5Aと第2前側リンク5Cとは、左右方向へ延びる水平な連結ロッド11によって連結されている。したがって、第1及び第2前側リンク5A,5Cは、一体に回動する。しかも、第1及び第2前側リンク5A,5Cは、同一形状に形成されており、同一位相に配置されている。同様に、第1後側リンク5Bと第2後側リンク5Dとは、左右方向へ延びる水平な連結ロッド12によって連結されており、両者は一体に回動する。しかも、第1及び第2後側リンク5B,5Dは、同一形状に形成されており、同一位相に配置されている。
【0014】
右側レール部材1Aの上側及び左側レール部材1Bの上側には、右側支持部材(アッパーフレーム)13A及び左側支持部材(アッパーフレーム)13Bが前後方向及び上下方向へ移動可能に設けられている。右側及び左側支持部材13A,13Bは、それぞれの長手方向を前後方向に向け、かつ左右方向へ互いに離間して配置されている。しかも、右側及び左側支持部材13A,13Bは、前後方向及び上下方向には同一位置に位置するように配置されている。両支持部材13A,13Bは、前後方向及び上下方向へ互いに一体に挙動するよう、連結部材(図示せず)によって連結されている。右側支持部材13A、左側支持部材13B及び連結部材は、アッパーフレームを構成しており、それらの上には使用者が腰掛けるシートクッション(図示せず)が設けられる。
【0015】
図2、図5、図7及び図9に示すように、右側支持部材13Aの前端部には、第1前側リンク5Aの上端部が左右方向に延びる水平な軸14を介して回動可能に連結されている。右側支持部材13Aの後端部には、第1後側リンク5Bの上端部が左右方向に延びる水平な軸15を介して回動可能に連結されている。ここで、軸6,14の中心間距離と軸7,15の中心間距離とは、互いに同一の大きさに設定され、軸6,7の中心間距離と軸14,15の中心間距離とは、同一の大きさに設定されている。
【0016】
図3、図6、図8及び図10に示すように、左側支持部材13Bの前端部には、第2前側リンク5Cの上端部が軸16を介して回動可能に連結され、左側支持部材13Bの後端部には、第2後側リンク5Dの上端部が軸17を介して回動可能に連結されている。軸16は、その軸線を軸14の軸線と一致させて配置されており、軸17はその軸線を軸15の軸線と一致させて配置されている。
【0017】
上記の内容から明らかなように、仮に調節リンク3A,3Bが可動部材2A,2Bに固定されているものとすると、右前可動部材2A(調節リンク3Aを含む)及び右後可動部材2B、第1前側リンク5A、第1後側リンク5B並びに右側支持部材13Aによって平行リンク機構が構成され、左前可動部材2C(調節リンク3Bを含む)及び左後可動部材2D、第2前側リンク5C、第2後側リンク5D並びに左側支持部材13Bとによって平行リンク機構が構成される。この二つの平行リンクは、互いに同一形状、同一寸法である。しかも、第1及び第2前側リンク5A,5Cが連結ロッド11によって一体に回動するように連結されるとともに、第1及び第2後側リンク4B、5Dが連結ロッド12によって一体に回動するように連結されているので、二つの平行リンクは、一体に挙動する。ただし、それらは必ずしも平行リンクを構成する必要がない。つまり、軸6(9),14(16)の中心間距離と軸7(10),15(17)の中心間距離とを互いに異なる大きさに設定するとともに、軸6(9),7(10)の中心間距離と軸14(16),15(17)の中心間距離とを異なる大きさに設定してもよい。
【0018】
図2、図5、図7及び図9に示すように、右側支持部材13Aの前端部には、第1ラック18が右側支持部材13Aの長手方向(車両の前後方向)へは移動可能に、上下方向及び左右方向へは移動不能に設けられている。右側支持部材13Aの長手方向の中央側に位置する第1ラック18の一端部(後端部)には、第1連結リンク19の一端部(後端部)が左右方向に延びる水平な軸20を介して回動可能に連結されている。この第1連結リンク19の他端部(前端部)は、第1前側リンク5Aに左右方向に延びる水平な軸21を介して回動可能に連結されている。したがって、第1ラック18が右側支持部材13Aの長手方向へ移動すると、その移動に伴って第1前側リンク5Aが軸6を中心として回動するとともに、右側支持部材13Aの前端部が第1前側リンク5Aに対し軸14を中心として相対的に回動する。
【0019】
右側支持部材13Aには、その長手方向に沿って延びる長孔13aが形成されている。この長孔13aには、軸20が長孔13aの長手方向へ移動可能に挿入されている。軸20が長孔13aの前端部と後端部とに突き当たることにより、右側支持部材13Aの長手方向における第1ラック18の移動範囲が規制されている。この移動範囲内において、第1ラック18が前方へ移動するときには、第1前側リンク5Aが軸6を中心として反時計方向へ回動する。第1前側リンク5Aが反時計方向へ回動すると、右側支持部材13Aの前端部が斜め下前方へ移動する。逆に、第1ラック18が後方へ移動するときには、第1前側リンク5Aが時計方向へ回動する。第1前側リンク5Aが時計方向へ回動すると、右側支持部材13Aが斜め上後方へ移動する。なお、第1ラック18が前方へ移動すると第1前側リンク5Aが時計方向へ回動し、第1ラック18が後方へ移動すると第1前側リンク5Aが反時計方向へ回動するようにしてもよい。
【0020】
右側支持部材13Aには、第1ピニオン22が回転可能に、かつ位置固定して設けられている。この第1ピニオン22は、第1ラック18の他端部に形成された歯部18aと噛み合っている。したがって、第1ピニオン22をハンドルその他の操作部材(図示せず)によって回転させると、第1ラック18が右側支持部材13Aの長手方向へ移動する。第1ピニオン22は、モータ等の回転駆動源によって回転させてもよい。
【0021】
右側支持部材13Aには、第1回動阻止手段23が設けられている。この第1回動阻止手段23は、操作部材によって第1ピニオン22を回転させる場合には、第1ピニオン22が回転することを許容するが、第1ピニオン22が自ら回転することは阻止する。つまり、第1回動阻止手段23は、第1ピニオン22に直接に、又は第1ラック18を介して外力が作用したとき、その外力によって第1ピニオン22が回動させられることを阻止する。したがって、第1ピニオン22は、操作部材を回動させない限り停止状態を維持し、それに対応して第1前側リンク5Aが停止状態を維持し、ひいては右側支持部材13Aが停止状態を維持する。第1回動阻止手段23は、このような機能を有するものであれば、その構造はどのようなものでもよく、公知の回動阻止手段を用いることができる。また、その構造は、この発明に直接関係がないので、説明を省略する。
【0022】
図3、図6、図8及び図10に示すように、左側支持部材13Bの前端部には、第2ラック24が左側支持部材13Bの長手方向へは移動可能に、上下方向及び左右方向へは移動不能に設けられている。左側支持部材13Bの長手方向の中央側に位置する第2ラック24の一端部(後端部)には、第2連結リンク25の一端部(後端部)が左右方向に延びる水平な軸26を介して回動可能に連結されている。この第2連結リンク25の他端部(前端部)は、第2後側リンク5Dに左右方向に延びる水平な軸27を介して回動可能に連結されている。したがって、第2ラック24が左側支持部材13Bの長手方向へ移動すると、その移動に伴って第2後側リンク5Dが軸10を中心として回動する。
【0023】
左側支持部材13Bには、その長手方向に沿って延びる長孔13bが形成されている。この長孔13bには、軸26が長孔13bの長手方向へ移動可能に挿入されている。軸26が長孔13bの前端部と後端部に突き当たることにより、左側支持部材13Bの長手方向における第2ラック22移動範囲が規制されている。この移動範囲内において、第2ラック24が前方へ移動すると、第2後側リンク5Dが各図において反時計方向へ回動し、第2ラック24が後方へ移動すると、第2後側リンク5Dが各図において時計方向へ回動する。第2後側リンク5Dが反時計方向へ回動すると、左側支持部材13Bの後端部が斜め下前方へ移動し、第2後側リンク5Dが時計方向へ回動すると、左側支持部材13Bの後端部が斜め上後方へ移動する。なお、第2ラック24が前方へ移動すると第2後側リンク5Dが時計方向へ回動し、第2ラック24が後方へ移動すると第2後側リンク5Dが反時計方向へ回動するようにしてもよい。
【0024】
左側支持部材13Bには、第2ピニオン28が回転可能に、かつ位置固定して設けられている。この第2ピニオン28は、第2ラック24の他端部に形成された歯部24aと噛み合っている。したがって、第2ピニオン28をハンドルその他の操作部材(図示せず)によって回転させると、第2ラック24が左側支持部材13Bの長手方向へ移動する。第2ピニオン28は、モータ等の回転駆動源によって回転させてもよい。
【0025】
左側支持部材13Bには、第2回動阻止手段29が設けられている。この第2回動阻止手段29は、操作部材によって第2ピニオン28を回転させる場合には、第2ピニオン28が回転することを許容するが、第2ピニオン28が自ら回転することは阻止する。つまり、第2回動阻止手段29は、第2ピニオン28に直接に又は第2ラック24を介して外力が作用したとき、その外力によって第2ピニオン28が回動させられることを阻止する。したがって、第2ピニオン28は、操作部材を回動させない限り停止状態を維持し、それに対応して第2後側リンク5Dが停止状態を維持し、ひいては左側支持部材13Bが停止状態を維持する。第2回動阻止手段29は、このような機能を有するものであれば、その構造はどのようなものでもよく、公知の回動阻止手段を用いることができる。また、その構造は、この発明に直接関係がないので、説明を省略する。
【0026】
右側及び左側支持部材13A,13Bのうちの一方の支持部材の後端部には、車両用シートAのシートバックフレームの右側又は左側の下端部がリクライニングヒンジ(図示せず)を介して回動可能に連結されており、他方の支持部材の後端部にはシートバックフレームの左側又は右側の下端部がヒンジ(図示せず)を介して回動可能に連結されている。
【0027】
上記構成の車両用シートAにおいて、いま右側及び左側支持部材13A,13Bが水平になっているものとする。このときには、調節リンク3A,3Bが上下に起立し、調節リンク3A(3B)の二つの軸4,6(8,9)が鉛直線上に位置している。この状態において、第1、第2ピニオン22,28を回転させると、第1及び第2ラック18,24が移動し、それに伴って第1及び第2前側リンク5A,5C並びに第1及び第2後側リンク5B、5Dが回動する。その結果、右側及び左側支持部材13A,13Bが移動する。勿論、右側及び左側支持部材13A,13Bは、一体に移動する。
【0028】
第1及び第2前側リンク5A,5Cと第1及び第2後側リンク5B、5Dとを同一方向へ同一角度だけ回動させた場合には、調節リンク3A,3Bが停止状態を維持する。したがって、右側及び左側支持部材13A,13Bは、水平な状態を維持しつつ前後方向及び上下方向へ移動する。つまり、平行移動する。特にこの実施の形態においては、第1及び第2ラック18,24が前方へ移動すると、第1及び第2前側リンク5A,5Cが軸6,9を中心として反時計方向へ回動するとともに、第1及び第2後側リンク5B,5Dが軸7,10を中心として反時計方向へ回動する。その結果、右側及び左側支持部材13A,13Bが後方及び上方へ平行移動する。逆に、第1及び第2ラック18,24が後方へ移動すると、第1及び第2前側リンク5A,5C並びに第1及び第2後側リンク5B,5Dが時計方向へ回動し、右側及び左側支持部材13A,13Bが前方及び下方へ平行移動する。このようにして、右側及び左側支持部材(アッパーフレーム)13A,13Bの高さが調節される。
【0029】
図1〜図3、図8及び図9に示すように、軸20,26が長孔13a,13bの前端部に突き当たると、それ以上第1、第2ラック18,24が前方へ移動することができなくなり、第1及び第2前側リンク5A,5C並びに第1及び第2後側リンク5B、5Dが反時計方向へ回動することができなくなる。この結果、右側及び左側支持部材13A,13Bがそれ以上上方へ移動することができなくなる。このときの右側及び左側支持部材13A,13Bの位置が上限界位置である。右側及び左側支持部材13A,13Bは、上限界位置に位置しているときには水平になっている。
【0030】
図4〜図7及び図10に示すように、第1及び第2ラック18,24が後方へ移動して、軸20,26が長孔13a,13bの後端部に突き当たると、それ以上第1、第2ラック18,24が後方へ移動することができなくなり、第1及び第2前側リンク5A,5C並びに第1及び第2後側リンク5B、5Dが時計方向へ回動することができなくなる。この結果、右側及び左側支持部材13A,13Bがそれ以上下方へ移動することができなくなる。このときの右側及び左側支持部材13A,13Bの位置が下限界位置である。
【0031】
ここで、右側及び左側支持部材13A,13Bが上限界位置から下限界位置まで移動したとき、第1及び第2前側リンク5A,5Cと第1及び第2後側リンク5B、5Dとが同一角度だけ回動しているならば、右側及び左側支持部材13A,13Bは、下限界位置においても水平になっているはずである。しかし、この実施の形態では、第1及び第2後側リンク5B,5Dの回動角度が第1及び第2前側リンク5A,5Cの回動角度より若干大きくなっている。このため、下限界位置では、右側及び左側支持部材13A,13Bが前方へ向って下り勾配となるように若干傾斜(以下、このような傾斜を前傾という。)している。これに対応して、調節リンク3A,3Bが鉛直線に対して僅かに傾斜している。勿論、右側及び左側支持部材13A,13Bは、上限界位置から下限界位置に達するまで水平になっているようにしてもよい。
【0032】
右側及び左側支持部材13A,13Bが水平になっている状態において、第1及び第2ラック18,24を相対的に移動させた場合、つまり第1及び第2ラック18,24のいずれか一方を停止させ、他方だけを移動させた場合、第1及び第2ラック18,24を同一方向へ移動させるが、移動距離を異ならせた場合、又は第1及び第2ラック18,24を互いに逆方向へ移動させた場合には、第1、第2前側リンク5A,5C及び第1、第2後側リンク5B、5Dが回動するのみならず、調節リンク3A,3Bが軸4,8を中心として回動する。この結果、右側及び左側支持部材13A,13Bが傾斜する。
【0033】
この場合において、第1ラック18を第2ラック24に対して後方へ移動させると、図7及び図8に示すように、第1及び第2前側リンク5A,5Cが、第1及び第2前側リンク5B、5Dより大きく反時計方向へ回動する。この結果、右側及び左側支持部材13A,13Bの前端部が後端部より下方へ移動し、右側及び左側支持部材13A,13Bが前傾する。右側及び左側支持部材13A,13Bの前傾角度は、第1ラック18を後方への限界位置に位置させ、第2ラック24を前方への限界位置に位置させたときに最大になる。
【0034】
第1ラック18を第2ラック24に対して後方へ移動させると、図9及び図10に示すように、第1及び第2前側リンク5A,5Cが、第1及び第2前側リンク5B、5Dより大きく時計方向へ回動する。この結果、右側及び左側支持部材13A,13Bの後端部が前端部より下方へ移動し、右側及び左側支持部材13A,13Bが後傾する。右側及び左側支持部材13A,13Bの後傾角度は、第1ラック18を前方への限界位置に位置させ、第2ラック24を後方への限界位置に位置させたときに最大になる。
【0035】
上記のように、車両用シートAにおいては、第1及び第2ピニオン22,28を回動させることにより、右側及び左側支持部材13A,13Bの高さ及び傾斜角度を変化させているから、当該高さ及び傾斜角度を第1及び第2ピニオン22,28の回動角度に応じて連続的に変化させることができる。したがって、シートAの使用者は、右側及び左側支持部材(アッパーフレーム)13A,13Bの高さ及び傾斜角度を自己の体格や作業の種類に応じて微調整することができる。
【0036】
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、アッパーフレームたる右側支持部材13A及び左側支持部材13Bに第1、第2ラック18,24をそれぞれ設けているが、ロアフレームたる右前可動部材2A及び右後可動部材2Bを一体に形成して、これに第1ラック18を設け、左前可動部材2C及び左後可動部材2C,2Dを一体に形成して、これに第2ラック24を設けてもよい。
また、上記の実施の形態においては、第1、第2前側リンク5A,5Cの各下端部を、調節リンク3A,3Bに回動可能に設け、調節リンク3A,3Bの下端部を前可動部材2A,2Cにそれぞれ回動可能に設けているが、調節リンク3A,3Bを前可動部材2A,2Bに回動不能に設けてもよい。換言すれば、調節リンク3A,3Bに相当する部分を前可動部材2A,2Cに一体に設け、各部分に第1、第2前側リンク5A,5Cの各下端部をそれぞれ直接回動可能に連結してもよい。ただし、そのようにした場合において、可動部材2A〜2D、リンク5A〜5D、及び支持部材13A,13Bによって構成されるリンク機構が平行リンク機構であるときには、右側及び左側支持部材13A,13Bは、傾斜させることができず、平行移動させることができるだけである。つまり、右側及び左側支持部材13A,13Bは、上下方向へ位置調節することができるだけである。それらのリンク機構が平行リンク機構でない四節リンク機構であるときには、右側及び左側支持部材13A,13Bは、高さが変わりつつ傾斜角度が変わる。
また、上記の実施の形態においては、第1、第2ラック18,24が前方へ移動したときに、第1及び第2前側リンク5A,5C並びに第1及び第2後側リンク5B、5Dが時計方向へ回動するとともに、右側及び左側支持部材13A,13Bが前方及び下方へ平行移動するようになっているが、第1、第2ラック18,24が後方へ移動したときに、第1及び第2前側リンク5A,5C並びに第1及び第2後側リンク5B、5Dが時計方向へ回動するとともに、右側及び左側支持部材13A,13Bが前方及び下方へ平行移動するようにしてもよく、それらの関係は種々に設計変更可能である。
さらに、上記の実施の形態においては、前側リンクとして第1及び第2の二つの前側リンク5A,5Cが設けられ、後側リンクとして第1及び第2の二つの後側リンク5B,5Dが設けられているが、第2前側リンク5C及び第1後側リンク5Cについては、設けなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の一実施の形態を、左右の支持部材を最も高い位置に位置させた状態で示す側面図である。
【図2】同実施の形態の右側の部分を、左右の支持部材を最も高い位置に位置させた状態で示す一部省略側面図である。
【図3】同実施の形態の左側の部分を、左右の支持部材を最も高い位置に位置させた状態で示す側面図である。
【図4】同実施の形態を、左右の支持部材を最も低い位置に位置させた状態で示す側面図である。
【図5】同実施の形態の右側の部分を、左右の支持部材を最も低い位置に位置させた状態で示す一部省略側面図である。
【図6】同実施の形態の左側の部分を、左右の支持部材を最も低い位置に位置させた状態で示す側面図である。
【図7】同実施の形態の右側の部分を、左右の支持部材を最大に前傾させた状態で示す一部省略側面図である。
【図8】同実施の形態の右側の部分を、左右の支持部材を最大に前傾させた状態で示す側面図である。
【図9】同実施の形態の右側の部分を、左右の支持部材を最大に後傾させた状態で示す一部省略側面図である。
【図10】同実施の形態の左側の部分を、左右の支持部材を最大に後傾させた状態で示す側面図である。
【符号の説明】
【0038】
A 車両用シート
2A 右前可動部材(ロアフレーム)
2B 右後可動部材(ロアフレーム)
2C 左前可動部材(ロアフレーム)
2D 左後可動部材(ロアフレーム)
3A 調節リンク
3B 調節リンク
5A 第1前側リンク(前側リンク)
5D 第2後側リンク(後側リンク)
13A 右側支持部材(アッパーフレーム)
13B 左側支持部材(アッパーフレーム)
18 第1ラック
19 第1連結リンク
22 第1ピニオン
23 第1回動阻止手段
24 第2ラック
25 第2連結リンク
28 第2ピニオン
29 第2回動阻止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアフレームと、このロアフレームの上側に移動可能に配置されたアッパーフレームと、前後方向へ互いに離間して配置され、各下端部が上記ロアフレームに、各上端部が上記アッパーフレームにそれぞれ回動可能に連結された前側リンク及び後側リンクとを備えた車両用シートにおいて、
上記ロアフレームと上記アッパーフレームとのいずれか一方のフレームには、第1ラックが前後方向へ移動可能に設けられ、この第1ラックと噛み合う第1ピニオンが回動可能に、かつ位置固定して設けられ、上記第1ラックの移動による上記第1ピニオンの回動を阻止する第1回動阻止手段が設けられ、
上記前側リンクと上記後側リンクとのいずれか一方のリンクと上記第1ラックとの間には、上記一方のリンクが上記第1ラックの前後方向への移動に伴って回動するよう、一端部が上記一方のリンクに回動可能に連結され、他端部が上記第1ラックに回動可能に連結された第1連結リンクが設けられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
上記前側リンクの上記ロアフレーム及び上記アッパーフレームとの回動中心間の距離と、上記後側リンクの上記ロアフレーム及び上記アッパーフレームとの回動中心間の距離とが同一に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
上記一方のフレームには、第2ラックが前後方向へ移動可能に設けられ、この第2ラックと噛み合う第2ピニオンが回動可能に、かつ位置固定して設けられ、上記第2ラックの移動による上記第2ピニオンの回動を阻止する第2回動阻止手段が設けられ、
上記前側リンクと上記後側リンクとのいずれか他方のリンクと上記第2ラックとの間には、上記他方のリンクが上記第2ラックの前後方向への移動に伴って回動するよう、一端部が上記他方のリンクに回動可能に連結され、他端部が上記第2ラックに回動可能に連結された第2連結リンクが設けられ、
上記ロアフレームと上記アッパーフレームとのいずれか他方のフレームと、上記前側リンクと上記後側リンクとのいずれか一方のリンクとの間には、一端が上記他方のフレームに回動可能に連結され、他端が上記一方のリンクに回動可能に連結された調節リンクが設けられ、上記一方のリンクが上記他方のフレームに上記調節リンクを介して回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項4】
上記一方のリンクと上記調節リンクとの回動中心と上記一方のリンクと上記一方のフレームとの回動中心との間の距離が、上記他方のリンクと上記ロアフレームとの回動中心と上記他方のリンクと上記アッパーフレームとの回動中心との間の距離と同一に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−13071(P2010−13071A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177224(P2008−177224)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】