説明

車両用シート

【課題】シート部の高さを遮蔽部材に設けた観察窓から変位部材を見ることによって確認するようにした車両において、シート部が前方へ移動させられたときにも観察窓がシート部によって覆われることがないようにする。
【解決手段】アッパーフレーム3に下ラック26を、アッパーレール20に上ラック27をそれぞれ取り付ける。上下のラック26,27に前後方向へ移動可能なピニオン28をかみ合わせる。表示テープ29の一端部29aを上ラック29の後端部に引っ張りコイルばね31を介して連結する。表示テープ29の他端部29bを、上ラック27の先端部において後方へ折り返し、ピニオン28において前方へ折り返し、下ラック26の先端部において後方へ折り返し、リンク4に連結する。アッパーレール20には、遮蔽部材30を設ける。遮蔽部材30には、表示テープ29のうちの一端部29aと上ラック27の先端部との間に位置する部位と対向する観察窓30aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業機械や建設機械等の車両に用いるのに好適な車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の車両用シートは、下記特許文献1に記載されているように、車体に設けられたロアフレームと、このロアフレームの上方に上限位置と下限位置との間を上下方向へ移動可能に配置されたアッパーフレームと、このアッパーフレームを上方へ向かって付勢するサスペンションばねと、ロアフレーム及びアッパーフレームの左右の両側部間にそれぞれ設けられ、アッパーフレームをロアフレームに対して上下方向へ移動可能に連結する左右一対の連結リンクとを有している。
【0003】
アッパーフレームには、乗員が腰掛けるためのシート部が前後方向へ位置調節可能に設けられている。シート部の後端部には、乗員の背中を支えるシートバック部が設けられている。
【0004】
シート部に乗員が腰掛けると、乗員の体重によりアッパーフレームがサスペンションばねの付勢力に抗して下方へ移動する。そして、体重とサスペンションばねの付勢力が釣り合った位置において停止する。この場合、乗員の体重が所定の標準体重より軽いと、アッパーフレームが上限位置に近接して位置する。このため、アッパーフレームが車両の振動に伴って上方へ移動したときに、上限位置に達して急激に止まるという上突き現象が生じやすい。逆に、乗員の体重が標準体重より重いと、アッパーフレームが下限位置に近接して位置するため、アッパーフレームが下方へ移動したときに、下限位置に達して急激に止まるという下突き現象が生じやすい。
【0005】
上突き及び下突き現象を防止するために、従来の車両用シートにおいては、付勢力調節機構及び位置表示機構が設けられている。付勢力調節機構は、サスペンションばねの付勢力を調節するためのものであり、サスペンションばねの付勢力は、乗員の体重が重い場合には強くなるように調節され、乗員の体重が軽い場合には弱くなるように調節される。この結果、乗員がシート部に腰掛けたとき、アッパーフレームが乗員の体重に拘わらず上限位置と下限位置との間のほぼ中央にな位置する。
【0006】
一方、位置表示機構は、アッパーフレームの上下方向の位置を表示するためのものであり、アッパーフレームの上下方向の位置に対応して変位する変位部材と、美観の向上を図るために、変位部材を乗員側から見えないように遮蔽する遮蔽部材とを有している。遮蔽部材には、観察窓が設けられている。観察窓は、変位部材の一部と対向するように配置されており、変位部材の所定の部位が観察窓と対向するとき、アッパーフレームが上限位置と下限位置との間のほぼ中央に位置するようになっている。そこで、シート部に腰掛けた乗員は、変位部材の所定の部位が観察窓から見えるようにサスペンションばねの付勢力を調節する。この結果、アッパーフレームが上限位置と下限位置との間のほぼ中央に位置し、上突きや下突きの発生が極力防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−233091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の車両用シートにおいては、遮蔽部材がアッパーフレームに設けられている。このため、シート部を前方へ移動させると、シート部が遮蔽部材に対して前方へ移動する。この結果、観察窓がシート部によって覆われてしまい、観察窓から変位部材を目視し難くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記の問題を解決するために、 ロアフレームと、このロアフレームの上方に上限位置と下限位置との間を上下方向へ移動可能に配置されたアッパーフレームと、このアッパーフレームに前後方向へ位置調節可能に設けられたシート部と、上記アッパーフレームを上方へ付勢するサスペンションばねと、このサスペンションばねの付勢力を調節するための付勢力調節機構と、上記アッパーフレームの上下方向の位置を表示する位置表示機構とを備え、上記位置表示機構が、上記アッパーフレームの上下方向への移動に伴って変位する変位部材と、この変位部材を覆う遮蔽部材とを有し、上記遮蔽部材には上記変位部材の一部を目視するための観察窓が設けられた車両用シートにおいて、上記遮蔽部材が上記シート部と一緒に前後方向へ移動するよう、上記遮蔽部材が上記シート部に設けられ、上記変位部材の上記観察窓との対向部分が上記遮蔽部材の前後方向への移動によって変化することを防止するために、上記変位部材の上記観察窓と対向した部分を上記遮蔽部材の前後方向への移動に連動して同一方向へ同一距離だけ前後方向へ移動させる連動機構が設けられていることを特徴している。
この場合、上記変位部材が帯状体や紐状体等の長尺体からなり、上記変位部材の長手方向の一端部が上記シート部に連結され、他端部が上記アッパーフレームの上下方向への移動に伴って上記アッパーフレームに対して変位する相対変位部材に連結され、上記変位部材の中間部が上記観察窓と対向するように配置され、上記変位部材の長手方向への変位を許容するために、上記変位部材の一端部と上記シート部との間には引っ張りばねが設けられていることが望ましい。
上記連動機構が、上記アッパーフレームに長手方向を前後方向に向けて設けられた第1ラックと、上記シートフレームに長手方向を前後方向に向け、かつ上記第1ラックと対向して設けられた第2ラックと、前後方向へ移動可能に配置され、上記第1及び第2ラックと噛み合うピニオンとを有し、上記変位部材の一端部が上記第2ラックの後端側において上記シート部に連結され、上記変位部材の他端部が、第2ラックに沿って前方へ延びてその先端部において後方に折り返され、上記ピニオンにおいて前方に折り返され、さらに上記第1ラックの先端部において後方へ折り返されて上記相対変位部材に連結されていることが望ましい。
上記ロアフレームと上記アッパーフレームとの間に、上記アッパーフレームの上下方向への移動に伴って回転するリンクが設けられ、このリンクが上記相対変位部材とされていることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、遮蔽部材がシート部と一緒に前後方向へ移動するので、遮蔽部材に形成された観察窓がシート部によって覆われることがない。つまり、シート部の位置に拘わらず観察窓から変位部材の位置を目視することができ、それによってシート部の高さが適正であるか否かを確認することができる。また、遮蔽部材が前後方向へ移動したとしても、変位部材の観察窓との対向箇所が変わることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1はこの発明の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】図2は同実施の形態の一部を省略して示す側面図である。
【図3】図3は同実施の形態の一部を、アッパーフレームを上限位置に位置させた状態で示す側断面図である。
【図4】図4は同実施の形態の一部を、アッパーフレームを下限位置に位置させた状態で示す側断面図である。
【図5】図5は同実施の形態の要部を示す側断面図である。
【図6】図6は同実施の形態の遮蔽部材の観察窓と表示テープとの関係を示す図であって、図6(A)はアッパーフレームが上限位置と下限位置との間の中央に位置しているときの関係を示し、図6(B)はアッパーフレームが上限位置に位置しているときの関係を示し、図6(C)はアッパーフレームが下限位置に位置しているときの関係を示している。
【図7】図7は同実施の形態の遮蔽部材の観察窓と表示テープとの関係を、アッパーフレームを前方への限界位置まで移動させたとき状態で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
添付の図1〜図7は、この発明に係る車両用シートの一実施の形態を示す。この実施の形態の車両用シート1は、ロアフレーム2及びアッパーフレーム3を有している。
【0013】
ロアフレーム2は、金属製の板体からなるものであり、車両のボディ(図示せず)の床部を構成する部分に固定されている。ロアフレーム2は、車両のボディに一体に形成してもよい。つまり、ボディの一部をロアフレームとして兼用してもよい。
【0014】
アッパーフレーム3は、金属製の板材を深さが浅い四角形の箱状に形成してなるものであり、その開口部を下方に向けた状態でロアフレーム2の上方に配置されている。アッパーフレーム3は、図3に示す上限位置と図4に示す下限位置との間を上下方向へ移動可能である。
【0015】
ロアフレーム2とアッパーフレーム3との左右方向の一側部間及び他側部間には、それぞれ一対のリンク4,5が設けられている。一方のリンク4は、前上がり(図1において左上がり)に傾斜した状態で配置されている。リンク4の後端部は、ロアフレーム2の後端部に回転可能に、かつ位置固定して連結されている。リンク4の前端部は、アッパーフレーム3の前端部に回転可能に、かつ前後方向へ移動可能に連結されている。他方のリンク5は、後上がり(図1において右上がり)に傾斜した状態で配置されている。リンク5の後端部は、アッパーフレーム3の後端部に回転可能に、かつ位置固定して連結されている。リンク5の前端部は、ロアフレーム2の前端部に回転可能に、かつ前後方向へ移動可能に連結されている。リンク4,5がロアフレーム2及びアッパーフレーム3に上記のように連結されることにより、アッパーフレーム3がロアフレーム2に上下方向へ移動可能に連結されている。
【0016】
なお、リンク4,5は、側面視したとき、それぞれの中間部が互いに交差するように配置されている。そして、その交差部が回転可能に連結されている。しかし、リンク4,5は、前後方向へ互いに離して配置してもよい。勿論、その場合には、リンク4,5の中間部が回転可能に連結されることがなく、リンク4,5は互いに独立した関係になる。また、リンク4,5を前後方向へ互いに離して配置する場合には、リンク4,5を互いに同一向きに傾斜させてもよく、またリンク4,5の長さ(回転中心間の距離)は、互いに同一長さにしてもよく、互いに異なる長さにしてもよい。
【0017】
図3及び図4に示すように、ロアフレーム2とアッパーフレーム3との間には、サスペンション機構6が設けられている。サスペンション機構6は、アッパーフレーム3に作用する下方への荷重を支持するとともに、その荷重の大きさに応じてアッパーフレーム3の位置を上下方向に変えるものであり、駆動リンク7を有している。駆動リンク7は、後上がりに傾斜した状態で配置されている。駆動リンク7の後端部は、アッパーリンク3の後端部に回転可能に、かつ位置固定して連結されている。駆動リンク7の前端部は、ロアフレーム2に前後方向へ移動可能に支持されている。したがって、駆動リンク7の傾斜角度が大きくなるように駆動リンク7が回転すると、つまり駆動リンク7がその後端部を中心として反時計方向へ回転すると、アッパーフレーム3が上方へ移動する。逆に、駆動リンク7の傾斜角度が小さくなるように駆動リンク7が時計方向へ回転するとアッパーフレーム3が下方へ移動する。
【0018】
サスペンション機構6は、可動部材8、サスペンションばね9及びローラ受け10をさらに有している。可動部材8は、アッパーフレーム3の下面に隣接して配置されており、アッパーフレーム3に前後方向へ移動可能に、かつ回転不能に設けられている。可動部材8には、これを前後方向に貫通する貫通孔8aが形成されている。
【0019】
サスペンションばね9は、引っ張りコイルばねからなるものであり、可動部材8とアッパーフレーム3の後端部との間に配置されている。サスペンションばね9の前端部は、可動部材8に連結されており、その後端部はアッパーフレーム3の後端部に連結されている。したがって、サスペンションばね9は可動部材8を常時後方へ向かって付勢している。
【0020】
ローラ受け10は、前部にねじ軸部11を有し、後部に受け部12を有している。ねじ軸部11は、その長手方向を前後方向に向けて配置されており、その前端部が可動部材8の貫通孔8aに螺合されている。したがって、ねじ軸部11を回転させると、可動部材8がねじ軸部11に対して前後方向へ移動する。ねじ軸部11の後端部には、受け部12の前端部が前後方向へ移動不能に連結されている。したがって、受け部12は、ねじ軸部11と一体に前後方向へ移動する。つまり、ローラ受け10全体が前後方向へ一体に移動する。受け部12は、ねじ軸部11に対して回転可能に連結されている。したがって、受け部12は、ねじ軸部11が回転しても回転することがない。受け部12の後端部には、ローラ13が回転可能に設けられている。ローラ13の外周面は、アッパーフレーム3の下面に突き当たるとともに、駆動リンク7に設けられたカム部14に突き当たっている。なお、ローラ13がカム部14に突き当たることにより、受け部12の回転、つまりねじ軸部11の軸線を中心とする回転が阻止されている。勿論、受け部12は、アッパーフレーム3に係合させることによって回転不能にしてもよい。
【0021】
サスペンションばね9の付勢力は、可動部材8及びローラ受け10を介してローラ13に伝達され、ローラ13がカム部14に突き当てられている。ローラ13及びカム部14は、サスペンションばね9の付勢力を回転付勢力に変換する。この回転付勢力は、駆動リンク7の傾斜角度が大きくなるよう、常時駆動リンク7を時計方向へ回転するように付勢している。したがって、アッパーフレーム3に所定の大きさを越える荷重が作用していないときには、アッパーフレーム3は上限位置に位置させられている。その一方、アッパーフレーム3に所定の大きさを越える荷重が作用すると、アッパーフレーム3は下方へ移動し、アッパーフレーム3に作用する荷重とサスペンションばね9の付勢力が釣り合う位置において停止する。
【0022】
サスペンションばね9の付勢力を調節するために、アッパーフレーム3には、付勢力調節機構15が設けられている。付勢力調節機構15は、調節軸16を有している。調節軸16は、その長手方向を前後方向に向けて配置されており、アッパーフレーム3の前端部に回転可能に、かつ前後方向へ移動不能に設けられている。調節軸16のアッパーフレーム3から前方へ突出した前端部には、ハンドル17が設けられている。このハンドル17によって調節軸16を手動で正逆方向へ回転させることができる。勿論、調節軸16は、モータ等の回転駆動源によって回転駆動してもよい。調節軸16の後端部は、貫通孔8a内に挿入され、さらにねじ軸部11の係合孔11aに前後方向へ移動可能に、かつ回転不能に挿入されている。したがって、調節軸16を正逆方向へ回転させると、それに伴ってねじ軸部11が正逆方向へ回転し、可動部材8が前後方向へ移動する。これによって、サスペンションばね9の付勢力が調節される。なお、この実施の形態では、前方から見て調節軸16を時計方向へ回転させると、サスペンションばね9の付勢力が増大し、反時計方向へ回転させると、サスペンションばね9の付勢力が減少するようになっている。
【0023】
アッパーフレーム3の上面には、スライドレール18が二つ設けられている。二つのスライドレール18は、左右方向へ互いに離間して配置されている。スライドレール18は、ロアレール19及びアッパーレール20を有している。ロアレール19は、その長手方向を前後方向に向けた状態でアッパーフレーム3の上面に固定されている。アッパーレール20は、その長手方向を前後方向に向けた状態で配置されており、ロアレール19に前限界位置と後限界位置との間を前後方向へ移動可能に支持されている。ロアレール19又はアッパーフレーム3とアッパーレール20との間には、係止機構(図示せず)が設けられている。この係止機構により、アッパーレール20が前限界位置と後限界位置との間において任意の位置又は所定の間隔毎に位置固定することができるようになっている。
【0024】
アッパーレール20,20の上には、シート部21が設けられている。シート部21は、周知のように、シートフレーム及びシートクッション(いずれも図示せず)を有しており、シートフレームがアッパーレール20,20に取り付けられている。したがって、シート部21は、アッパーフレーム3と一体に上下方向へ移動する。シート部21の後端部には、シートバック部22が設けられている。シートバック部22は、シートバックフレーム23とシートバッククッション(図示せず)とを有しており、シートバックフレーム23がシートフレームに取り付けられている。シートバック部22の上端部には、ヘッドレスト24部が設けられている。
【0025】
図5に示すように、アッパーフレーム3とアッパーレール20との間には、位置表示機構25が設けられている。位置表示機構25は、アッパーフレーム3が上限位置と下限位置との間のいずれの位置に位置しているかを示すものであり、下ラック(第1ラック)26、上ラック(第2ラック)27、ピニオン28、表示テープ(変位部材)29及び遮蔽部材30を有している。
【0026】
下ラック26は、その長手方向を前後方向に向けた状態でアッパーフレーム3に固定されている。上ラック27は、その長手方向を前後方向に向けた状態で、つまり下ラック26と平行に配置されている。しかも、上ラック27は、下ラック26の上方にこれと対向して配置されている。上ラック27は、下ラック26と左右方向に対向するように配置してもよい。上ラック27は、アッパーレール20に固定されている。したがって、上ラック27は、アッパーレール20(及びシート部21)と一体に前後方向へ移動する。
【0027】
ピニオン28は、その軸線を左右方向に向けた状態でアッパーフレーム3に前後方向へ移動可能に、かつ回転可能に設けられている。しかも、ピニオン28は、下ラック26及び上ラック27と噛み合っている。したがって、ピニオン28は、上ラック27が前後方向へ移動すると、回転しながら前後方向へ移動する。ピニオン28の前後方向への移動距離は、上ラック27の移動距離の半分である。
【0028】
表示テープ29は、上ラック27とリンク4との間に設けられている。表示テープ29の一端部29aは、引っ張りコイルばね(引っ張りばね)31を介して上ラック27の後端部に連結固定されている。したがって、表示テープ29の一端部29aは、引っ張りコイルばね31により常時後方へ付勢されている。しかも、表示テープ29の一端部29aは、引張りコイルばね31が伸縮することにより、前後方向へ移動可能である。表示テープ29の他端部29bは、上ラック27の上面に沿って前方へ延び、上ラック27の前端部に回転可能に設けられた第1ガイドロール32において折り返して後方へ向かい、ピニオン28に同軸に、かつ回転可能に設けられた第2ガイドロール33において折り返して再度前方へ向かい、下ラック26の前端部に回転可能に設けられた第3ガイドロール34において折り返して再度後方へ向かい、下ラック26の下面に沿って後方へ延びてリンク4の上端部に連結されている。表示テープ29一端部29aが引っ張りコイルばね31に連結されるとともに、他端部29bが固定されているので、表示テープ29は、引っ張りコイルばね31が伸縮することによって長手方向へ移動可能である。しかも、表示テープ2は弛むことがない。
【0029】
表示テープ29の他端部29bのリンク4に対する連結箇所は、リンク4のロアフレーム2及びアッパーフレーム3との回転連結箇所に対してリンク4の長手方向へ離間した箇所に設定されている。したがって、リンク4が回転すると、表示テープ29の他端部29bが前後方向へ移動する。この場合、アッパーフレーム3が下方へ移動するよう、リンク4がその下端部を中心として図5において反時計方向へ回転すると、表示テープ29の他端部29bが前方へ移動し、アッパーフレーム3が上方へ移動するよう、リンク4が時計方向へ回転すると、表示テープ29の他端部29bが後方へ移動する。表示テープ29の他端部29bが前後方向へ移動すると、それに応じて表示テープ29の各部がその長手方向へ移動し、引っ張りコイルばね31が伸縮する。勿論、引っ張りコイルばね31は、表示テープ29の他端部29bが後方へ移動するときには伸張し、表示テープ29の他端部29bが前方へ移動するときには短縮する。なお、表示テープ29の他端部29bは、リンク4に連結することなく、後方へさらに延長してリンク5に連結してもよい。その場合には、アッパーフレーム3が下方へ移動すると、表示テープ29の他端部29bが後方へ移動し、アッパーフレーム3が上方へ移動すると、表示テープ29の他端部29bが前方へ移動する。
【0030】
遮蔽部材30は、下ラック26、上ラック27及び表示テープ29を上方及び前方から見えないように遮蔽し、それによって美観の向上を図るものであり、アッパーレール20に固定されている。したがって、遮蔽部材30は、アッパーレール20と一体に前後方向へ移動する。なお、アッパーフレーム3には、補助遮蔽部材35が設けられており、補助遮蔽部材35は下ラック26の下側に配置されている。これにより、下ラック26が下方から見えないように覆われている。
【0031】
遮蔽部材30の上部の前端部には、観察窓30aが形成されている。この観察窓30aは、表示テープ29の一部と対向するように配置されている。特に、この実施の形態では、表示テープ29のうちの第1ガイドロール32の上部に接触する部分と対向するように配置されている。
【0032】
ここで、表示テープ29の各部がリンク4の回転に伴って、つまりアッパーフレーム3の上下方向への移動に伴って移動するので、表示テープ29の観察窓30aとの対向部位は、図6(A)、(B)、(C)に示すように、アッパーフレーム3の上下方向への移動に伴って変化する。いま、アッパーフレーム3が上限位置と下限位置との間の中央の位置に位置しているときに観察窓30aと対向する表示テープ29の対向部位を中央表示部位29cとすると、この中央表示部位29cの観察窓30aに臨む面(上面)には目印が付されている。この実施の形態では、観察窓30aと対向する中央表示部位29cの上面全体に所定の色、例えば緑色が付されている。したがって、表示テープ29の観察窓30aから見える部位全体が緑色であるときには、アッパーフレーム3が上限位置と下限位置との間の中央に位置していることが分る。中央表示部位29cに対し表示テープ29の長手方向に隣接する二箇所には、中央表示部位29cに付された目印と異なる目印、例えば異なる色が付されている。この実施の形態では、中央表示部位29cに対し一端部29a側において隣接する部位には黄色が付され、他端部29b側において隣接する部位には赤色が付されている。勿論、目印は、色彩だけでなく、「適正」、「上過ぎ」、「下過ぎ」等の文字、中央位置からの距離を示すように、「0」、「+1cm」、「−1cm」等の数字や目盛り等であってもよい。
【0033】
アッパーレール20が前後方向へ移動したとしても表示テープ29の観察窓30aとの対向箇所が変化することがないようにするために、観察窓30aが表示テープ29のうちの第1ガイドロール32と一端部29aとの間に位置する部位と対向するように配置されるとともに、表示テープ29が前後方向へ二回にわたって折り返されている。すなわち、上ラック27及び遮蔽部材30がアッパーレール20に固定されているから、表示テープ29のうちの一端部29aから第1ガイドロール32までの間に位置する部分は、遮蔽部材30が前後方向へ移動すると、遮蔽部材30と同一方向へ同一距離だけ前後方向へ移動する。したがって、当該部分は、遮蔽部材30が前後方向へ移動したとしても、表示テープ29の他の部分がその長手方向へ移動しない限り、遮蔽部材30に対して前後方向へ移動することがない。よって、当該部分では、観察窓30aと表示テープ29との対向箇所が遮蔽部材30の前後方向への移動前後において変化することがない。
【0034】
したがって、遮蔽部材30(アッパーレール20)が前後方向へ移動したとしても、表示テープ29のうちの一端部29aから第1ガイドロール32までの間に位置する部分を除く表示テープ29の他の部分が実質的に移動しなければ、観察窓30aと表示テープ29との対向箇所は、遮蔽部材30の前後方向への移動前後において変化することがない。そこで、表示テープ29の他の部分が遮蔽部材30(アッパーレール20)の移動に伴って移動するか否かについて検討するに、まず表示テープ29のうちの他端部29bと第3ガイドロール34との間の部分について検討すると、当該部分は、アッパーレール3が移動したとしても一定の位置を維持する。他端部29b及び第3ガイドレール34がアッパーフレーム3に連結されており、アッパーフレーム3はアッパーレール20が前後方向へ移動したとしても前後方向へ移動することがないからである。
【0035】
表示テープ29の残りの部分である、第1ガイドロール32と第3ガイドロール34との間の部分は、第1ガイドロール32がアッパーレール20に固定され、第3ガイドロール34がアッパーフレーム3に固定されているので、アッパーレール20が前後方向へ移動すると、それに伴って移動するはずである。しかし、第1ガイドロール32と第3ガイドロール34との間の部分の各部は、アッパーレール20の前後方向への移動に伴って移動するが、当該部分全体としては停止状態と同様な状況を呈する。すなわち、いまアッパーレール20が前後方向においていずれかの位置に位置しているときの第1ガイドロール32と第2ガイドロール33との間の距離をL1とし、第2ガイドロール33と第3ガイドロール34との間の距離をL2とする。そして、その状態からアッパーレール20が前方へ距離Dだけ移動したものとする。アッパーレール20(上ラック27)が距離Dだけ移動すると、ピニオン28が距離D/2だけ移動する。したがって、アッパーレール20の移動後における第1ガイドロール32と第2ガイドロール33との間の距離は、L1から(L1+D/2)に変化する。一方、第2ガイドロール33と第3ガイドロール34との間の距離は、L2から(L2−D/2)に変化する。つまり、前者の距離が長くなった分だけ後者の距離が短くなっており、第1ガイドロール32から第3ガイドロール34まで距離は一定である。このことを換言すれば、第1ガイドロール32と第3ガイドロール34との間の部分の各部は、アッパーレール20の前後方向への移動に伴って移動するが、当該部分全体としては停止状態を維持する。
【0036】
このように、遮蔽部材30をアッパーレール20に取り付けたので、遮蔽部材30はアッパーレール20の前後方向への移動に伴って移動するが、表示テープ29の観察窓30aとの対向箇所は、アッパーレール20の移動前後において一定にすることができる。これから明らかなように、下ラック26、上ラック27、ピニオン28並びに第1、第2及び第3ガイドロール32,33,34によって連動機構36が構成されている。
【0037】
上記構成の車両用シート1においては、遮蔽部材30がアッパーレール20に取り付けられているから、シート部21(アッパーレール20)が前方へ移動したとしても、遮蔽部材30の観察窓30aがシート部21によって遮蔽されることがない。したがって、乗員は、シート部21の前後方向の位置に拘わらず、シート部21の高さが適正であるか否かを観察窓30aを通して容易に確認することができる。また、遮蔽部材30がシート部21と一緒に前後方向へ移動するとき、表示テープ29の観察窓30aとの対向箇所が遮蔽部材30と同一方向へ同一距離だけ移動するから、表示シート29の観察窓30aとの対向箇所がシート部21の移動に伴って変わってしまうような事態を防止することができる。
【0038】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の形態を採用可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、上ラック27及び遮蔽部材30をアッパーレール20に固定しているが、シート部21のシートフレームに固定してもよい。シートフレームがアッパーレール20に固定されているからである。換言すれば、シートフレームにアッパーレール20を一体に設けてもよい。
また、上記の実施の形態においては、相対変位部材としてリンク4又はリンク5が採用されているが、ロアフレーム2を相対変位部材としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明は、シート部をサスペンションばねによって支持している車両、特に車体の振動が大きく、それに伴ってシート部が大きく振動するような車両に設けられる車両用シートに利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 車両用シート
2 ロアフレーム
3 アッパーフレーム
4 リンク(相対変位部材)
9 サスペンションばね
15 付勢力調節機構
21 シート部
25 位置表示機構
26 下ラック(第1ラック)
27 上ラック(第2ラック)
28 ピニオン
29 表示テープ(変位部材)
29a 一端部
29b 他端部
30 遮蔽部材
30a 観察窓
31 引っ張りコイルばね(引っ張りばね)
36 連動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアフレームと、このロアフレームの上方に上限位置と下限位置との間を上下方向へ移動可能に配置されたアッパーフレームと、このアッパーフレームに前後方向へ位置調節可能に設けられたシート部と、上記アッパーフレームを上方へ付勢するサスペンションばねと、このサスペンションばねの付勢力を調節するための付勢力調節機構と、上記アッパーフレームの上下方向の位置を表示する位置表示機構とを備え、上記位置表示機構が、上記アッパーフレームの上下方向への移動に伴って変位する変位部材と、この変位部材を覆う遮蔽部材とを有し、上記遮蔽部材には上記変位部材の一部を目視するための観察窓が設けられた車両用シートにおいて、
上記遮蔽部材が上記シート部と一緒に前後方向へ移動するよう、上記遮蔽部材が上記シート部に設けられ、上記変位部材の上記観察窓との対向部分が上記遮蔽部材の前後方向への移動によって変化することを防止するために、上記変位部材の上記観察窓と対向した部分を上記遮蔽部材の前後方向への移動に連動して同一方向へ同一距離だけ前後方向へ移動させる連動機構が設けられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
上記変位部材が帯状体や紐状体等の長尺体からなり、上記変位部材の長手方向の一端部が上記シート部に連結され、他端部が上記アッパーフレームの上下方向への移動に伴って上記アッパーフレームに対して変位する相対変位部材に連結され、上記変位部材の中間部が上記観察窓と対向するように配置され、上記変位部材の長手方向への変位を許容するために、上記変位部材の一端部と上記シート部との間には引っ張りばねが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
上記連動機構が、上記アッパーフレームに長手方向を前後方向に向けて設けられた第1ラックと、上記シートフレームに長手方向を前後方向に向け、かつ上記第1ラックと対向して設けられた第2ラックと、前後方向へ移動可能に配置され、上記第1及び第2ラックと噛み合うピニオンとを有し、上記変位部材の一端部が上記第2ラックの後端側において上記シート部に連結され、上記変位部材の他端部が、第2ラックに沿って前方へ延びてその先端部において後方に折り返され、上記ピニオンにおいて前方に折り返され、さらに上記第1ラックの先端部において後方へ折り返されて上記相対変位部材に連結されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
上記ロアフレームと上記アッパーフレームとの間に、上記アッパーフレームの上下方向への移動に伴って回転するリンクが設けられ、このリンクが上記相対変位部材とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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