説明

車両用シート

【課題】車室内スペース効率の向上を可能にするとともに、シート動作時のシートの座り心地の向上を可能にする。
【解決手段】乗員が着座するシートクッション13と、乗員の背中を支持するシートバック14と、これらのシートクッション13及びシートバック14を載置する台座16とを備えた車両用シート10であって、台座16の幅方向の外側端部24を、センタピラー19に支持した。さらに、台座16の外側端部24を、センタピラー19側に弾性的に支持する弾性部材27,28を設け、台座16の外側端部24を、センタピラー19に対し水平回動可能に支持し、台座16に、シートクッション13を車両前後方向に摺動可能に支持するスライドレール22,22を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護車両等に利用可能な車両用シートであり、乗降の利便性を向上させた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートとして、シートが回転してドア開口からせり出すものが知られている。この種の車両用シートは、介護車両等に採用されるものであって、一般的に、ウェルカムシートと呼ばれている。
このような、車両用シートとして、車室内に支柱を立て、この支柱のシートを回転可能に取付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の車両用シートは、ドア開口近傍に正逆転可能な支柱が立てられ、この支柱を駆動するボールネジ式の回動装置が設けられ、支柱に昇降可能なスライダが設けられ、このスライダを昇降させるボールネジ式の昇降装置が設けられ、スライダにシートが支持されたものである。すなわち、上記の車両用シートは、車室外方に回転し、車室外方で下降させて乗員の乗降の利便性を向上させるものである。
【0004】
しかし、特許文献1の車両用シートでは、ドア開口近傍にシートを回転可能に且つ昇降可能に支持する支柱を設けるものなので、車室内スペース効率の悪化を招くという課題があった。
また、特許文献1の車両用シートでは、回転可能な支柱に昇降可能なスライダが設けられ、このスライダに直接シートが支持されているので、回転動作や昇降動作のときに、シートに振動が伝達され、回転や昇降時のシートの座り心地が損なわれるという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−150175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、車室内スペース効率の向上を図ることができるとともに、シート動作時のシートの座り心地の向上を図ることができる車両用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、乗員が着座するシートクッションと、乗員の背中を支持するシートバックと、これらのシートクッション及びシートバックを載置する台座とを備えた車両用シートであって、台座の幅方向の外側端部を、車体ピラーに支持したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、台座の外側端部を、車体ピラー側に弾性的に支持する弾性部材を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、台座の外側端部を、車体ピラーに対し水平回動可能に支持したことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、台座に、シートクッションを車両前後方向に摺動可能に支持するスライドレールを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車両用シートに、乗員が着座するシートクッションと、乗員の背中を支持するシートバックと、これらのシートクッション及びシートバックを載置する台座とを備える。
台座の幅方向の外側端部を、車体ピラーに支持したので、例えば、台座の幅方向の外側端部を支持するために、新たな支柱を必要としない。従って、新たに支柱を設けて台座の幅方向の外側端部を支柱に支持する場合に比べ、車室内スペース効率の向上を図ることができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、台座の外側端部を、車体ピラー側に弾性的に支持する弾性部材を設けたので、例えば、シート動作させるときの振動等がシート側に伝達されない。従って、シートの座り心地の向上を図ることができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、台座の外側端部を、車体ピラーに対し水平回動可能に支持したので、例えば、シートを水平回動(水平旋回)させてシートをドア開口からせり出すことができる。これにより、乗員の乗降の利便性の向上を図ることができる。
【0014】
請求項4に係る発明では、台座に、シートクッションを車両前後方向に摺動可能に支持するスライドレールを備えた。これにより、シートの前後スライドが可能になる。さらに、シートを水平回動(水平旋回)させてシートをドア開口からせり出すときに、大きくシートをせり出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る車両用シートの斜視図である。
【図2】図1に示された車両用シートの分解斜視図である。
【図3】図1に示された車両用シートの台座支持機構の断面図である。
【図4】図1に示された車両用シートの動きを示す説明図である。
【図5】本発明に係る第2実施例の車両用シートの斜視図である。
【図6】図5に示された車両用シートの台座支持機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0017】
図1〜図3に示されるように、車両用シート10は、車室12に設けられ、乗員が着座するシートクッション13と、このシートクッション13にリクライニング自在に取付けられ、乗員の背中を支持するシートバック14と、このシートバック14に昇降自在に取付けられ、乗員の頭部を支持するピロー15と、シートクッション13をスライド可能に載置する台座16と、センタピラー(車体ピラー)19に設けられ、台座16を支持する台座支持機構17とからなる。
【0018】
台座16は、台座支持機構17でセンタピラー19側に支持される台座本体21と、この台座本体21に設けられ、シートクッション13をスライド自在に支持する一対のスライドレール(シートレール)22,22とからなる。
シートクッション13には、スライドレール22,22にスライド可能に取付けられ、スライドレール22,22をスライドするためのシート側駆動部(モータ)23が配置されている。
【0019】
台座支持機構17は、センタピラー19の車室12側に設けられた筐体26と、筐体26内の上方に設けられた第1の弾性部材27と、筐体26内の下方に設けられた第2の弾性部材28と、筐体26内の下方に設けられたダンパ29と、筐体26の上部26aを貫通して設けられ、台座本体21の外側端部24を回転自在に支持する支軸31と、センタピラー19の車室12側上方に設けられ且つ支軸31に連結され、台座本体21を回転する駆動部(モータ)32とからなる。
【0020】
筐体26は、センタピラー19の一部として一体的に形成されるとともに、略筒形に形成される。さらに、筐体26は、上部26aに支軸31を貫通させる貫通孔35が設けられ、側部26cに台座本体21を筐体26内に臨ます開口36が設けられる。
第1及び第2の弾性部材27,28は、具体的には圧縮ばねである。台座本体21は、第1及び第2の弾性部材27,28の間に挟み込まれて支持される。
【0021】
ダンパ29は、台座本体21の下面21bを支持し、台座本体21の滑らかな上下動を可能にする。
支軸31は、一端31aが台座本体21にスプライン結合され、他端31bが駆動部32に連結されている。これにより、駆動部32で台座本体21を水平旋回を可能とするとともに、支軸31に対して台座本体21の上下動を可能にする。
【0022】
図4(a)に示されたように、車両用シート10では、シートクッション13は、ダンパ29(図3参照)で台座本体21の下面21bが支持され、第1及び第2の弾性部材27,28間に挟み込まれて支持されているので、車体11に矢印a1の如く上下振動が加わる場合にも、シートクッション13は、振動を吸収しつつ収束される。これにより、車両用シート10の乗り心地の向上が図られる。
【0023】
図4(b)に示されたように、車両用シート10では、シートクッション13がセンタピラー19に対して回転自在に支持され、センタピラー19側にシートクッション13を回転する駆動部32(図3参照)が設けられたので、シートクッション13を矢印a2の如く回転し、ドア開口39に臨ますことができる。この結果、乗員の乗降の利便性の向上を図ることができる。これにより、車両用シート10は、介護用車両などのシートにも適用することができる。
【0024】
さらに、図4(c)に示されたように、車両用シート10では、シートクッション13が台座16にスライド可能に取付けられ、シートクッション13にスライドするためのシート側駆動部(図2参照)23が配置されたので、シートクッション13をドア開口39から外方にせり出すことができる。この結果、さらなる乗員の利便性の向上を図ることができる。
【0025】
すなわち、図1〜図4に示されたように、車両用シート10は、乗員が着座するシートクッション13と、乗員の背中を支持するシートバック14と、これらのシートクッション13及びシートバック14を載置する台座16とを備える。
【0026】
台座16の幅方向の外側端部24を、センタピラー19に支持したので、例えば、台座16の幅方向の外側端部24を支持するために、新たな支柱を必要としない。従って、新たに支柱を設けて台座16の幅方向の外側端部24を支柱に支持する場合に比べ、車室内スペース効率の向上を図ることができる。
【0027】
車両用シート10では、台座16の外側端部24を、センタピラー19側に弾性的に支持する弾性部材27,28を設けたので、例えば、シート動作させるときの振動等がシート側に伝達されない。従って、シートクッション(シート)13の座り心地の向上を図ることができる。
【0028】
車両用シート10では、台座16の外側端部24を、センタピラー19に対し水平回動可能に支持したので、例えば、シートクッション(シート)13を水平回動(水平旋回)させてシートクッション13をドア開口39からせり出すことができる。これにより、乗員の乗降の利便性の向上を図ることができる。
【0029】
車両用シート10では、台座16に、シートクッション13を車両前後方向に摺動可能に支持するスライドレール22,22を備えた。これにより、シートクッション(シート)13の前後スライドが可能になる。さらに、シートクッション13を水平回動(水平旋回)させてシートクッション13をドア開口39からせり出すときに、大きくシートクッション13をせり出すことができる。
【実施例2】
【0030】
図5及び図6に示されるように、車両用シート50は、車室52に設けられ、乗員が着座するシートクッション53と、このシートクッション53にリクライニング自在に取付けられ、乗員の背中を支持するシートバック54と、このシートバック54に昇降自在に取付けられ、乗員の頭部を支持するピロー55と、シートクッション53をスライド可能に載置する台座56と、センタピラー(車体ピラー)59に設けられ、台座56を支持する台座支持機構57とからなる。
【0031】
センタピラー59には、台座支持機構57を支持する上部フランジ部85及び下部フランジ部86が設けられる。
上部フランジ部85は、後述するシャフト82を貫通する逃げ孔85aが設けられ、下部フランジ部86は、後述する支軸71の他端71bを貫通する逃げ孔86aが設けられる。
【0032】
台座56は、台座支持機構57でセンタピラー59側に支持される台座本体61と、この台座本体61に設けられ、シートクッション53をスライド自在に支持する一対のスライドレール(不図示)とからなる。
シートクッション53には、スライドレールにスライド可能に取付けられ、スライドレールをスライドするためのシート側駆動部(モータ)63が配置されている。
【0033】
台座支持機構57は、センタピラー59の車室52側に設けられた筐体66と、筐体66内の上方に設けられた第1の弾性部材67と、筐体66内の下方に設けられた第2の弾性部材68と、筐体66内の下方に設けられたダンパ69と、筐体66の下部66b及びダンパ69を貫通して設けられ、台座本体61の外側端部64を回転自在に支持する支軸71と、センタピラー59の車室52側上方に設けられ且つ支軸71に連結され、台座本体61を回転する駆動部(モータ)72と、台座本体61の高さを調節する高さ調整部(ハイトアジャスタ)73とからなる。
【0034】
筐体66は、センタピラー59側に取付けられるとともに、略筒形に形成される。さらに、筐体66は、下部66bに支軸71を貫通させる貫通孔75が設けられ、側部66cに台座本体61を筐体66内に臨ます開口76が設けられる。
第1及び第2の弾性部材67,68は、具体的には圧縮ばねである。台座本体61は、第1及び第2の弾性部材67,68の間に挟み込まれて支持される。
【0035】
ダンパ69は、台座本体61の下面61bを支持し、台座本体61の滑らかな上下動を可能にする。ダンパ69は、支軸71を貫通する貫通部77が形成されている。
支軸71は、一端71aが台座本体61にスプライン結合され、他端71bが駆動部72に連結されている。これにより、駆動部72で台座本体61を水平旋回を可能とするとともに、支軸71に対して台座本体61の上下動を可能にする。
【0036】
高さ調整部(ハイトアジャスタ)73は、筐体66の上部に形成された雌ねじ部81と、この雌ねじ部81にねじ込まれるねじシャフト82と、このねじシャフト82の一端82aに回転可能に設けられ、第1の弾性部材67に当接させた当接部83と、ねじシャフト82の他端82bに設けられ、ねじシャフト82を回転するノブ84とからなる。
【0037】
すなわち、高さ調整部73のノブを矢印b1の如く回転することで、台座56を矢印b2の如く昇降することができる。
車両用シート50では、台座本体61の高さを調節する高さ調整部(ハイトアジャスタ)73が設けられたので、シート高さ調整をすることができる。
【0038】
尚、本発明に係る車両用シートでは、センタピラー19,59に車両用シート10,50が支持されたが、これに限るものではなく、リヤピラーなどの車体ピラーに支持されるものであればよい。
また、本発明に係る車両用シートでは、第1実施例及び第2実施例の車両用シート10,50を組み合わせるものであってもよい。
【0039】
本発明に係る第2実施例の車両用シート50では、高さ調整部(ハイトアジャスタ)73にノブ84を回転させる駆動部72を設けたものであってもよい。
【0040】
これにより、シート高さ調整を自動で行うことができる。この結果、車両用シート50を回転させて車体51側のドア開口79に臨まし、シートクッション53を外方にせり出したときに、シートクッション53を下降させることができる。すなわち、さらなる乗員の乗降の利便性の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る車両用シートは、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0042】
10,50…車両用シート、13…シートクッション、14…シートバック、16…台座、19…車体ピラー(センタピラー)、22…スライドレール、24…外側端部、27,28…弾性部材(第1及び第2の弾性部材)、39…ドア開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシートクッションと、乗員の背中を支持するシートバックと、これらのシートクッション及びシートバックを載置する台座とを備えた車両用シートであって、
前記台座の幅方向の外側端部を、車体ピラーに支持したことを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記台座の外側端部を、前記車体ピラー側に弾性的に支持する弾性部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記台座の外側端部を、前記車体ピラーに対し水平回動可能に支持したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用シート。
【請求項4】
前記台座に、前記シートクッションを車両前後方向に摺動可能に支持するスライドレールを備えた請求項1、請求項2又は請求項3記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−202037(P2010−202037A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49504(P2009−49504)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】