説明

車両用シート

【課題】車両用シートに備えるエアークッションとサイドエアバックとを面状の編織物により一体的に形成してコストを安くする。
【解決手段】着座者を支える箇所が袋状のエアークッション10で形成され、該エアークッション10の側部位置にサイドエアーバック30が配置されている。そして、エアークッション10の袋状構成とサイドエアーバック30の袋状構成とは面着部36を介して一体的に連続形成されている。なお、サイドエアーバック30には、インフレータ収納部34も一体的に形成されている。インフレータ収納部34に収納されるリテーナ40には締着ボルト50が一体的に固定されており、該締着ボルト50が挿通する挿通孔52,54がインフレータ収納部34及び面着部36に形成されており、リテーナ40に固定された締着ボルト50が前記インフレータ収納部34及び面着部36に形成された挿通孔を通じてシートのフレーム体に締着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。詳しくは、面状の編織物を基材とし、流動体の封入により袋状に膨張するエアークッションと、このエアークッションの窓側の側部に一体的にサイドエアーバックを備える車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、シートバックやシートクッションのクッション構造体として、エアークッションが採用されているものがある。ここで、下記特許文献1には、上記エアークッションの具体的な構成が開示されている。このエアークッションは、その袋内に空気を送入することで膨張するようになっている。
また、車両用シートには、いわゆる側突対応として車両用シートの窓側の側部位置にサイドエアーバックを備えるものがある。これにより車両の側突時にサイドエアバックをインフレータにより膨張させることにより車両用シートへの着座者の保護を図ろうとするものである。
上記エアークッションとサイドエアバックは通常別々に構成されて、それぞれ車両用シートに装備されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−300393号公報
【特許文献2】特開2010−143356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようにエアークッションとサイドエアバックとを別々に構成して車両用シートとして組付けるものにあっては、構成部品点数の増加を招くと共に、それに伴う組付け工数も増加し、コストが高くなるという問題がある。
【0005】
而して、本発明は上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、車両用シートに備えるエアークッションとサイドエアバックとを面状の編織物により一体的に連続形成することによりコストを安くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次の手段をとる。すなわち、本発明に係る車両用シートの基本的構成は、着座者を支える箇所が面状の編織物を基材とした袋状のエアークッションで形成され、該エアークッションの着座者が位置する側部位置にサイドエアーバックが配置される構成である。そして、かかる構成において、エアークッションの袋状構成とエアーバックの袋状構成とは面着部を介して面状の編織物により一体的に連続形成されている構成であることを特徴とする。
上記発明によれば、エアークッションとサイドエアバックとが面状の編織物により一体的に連続形成されるため、車両用シートを構成する部品点数の減少を図ることができると共に、その組み付け工数の低減を図ることができ、コストダウンを図ることができる。
【0007】
上記本発明の車両用シートの手段においては、前記面状の編織物により形成されるサイドエアーバックには、インフレータ収納部も一体的に形成されており、インフレータ収納部とエアーバック袋本体とは気流通路が形成されて連通されている構成とするのが好ましい。
上記のようにインフレータ収納部もサイドエアバックに一体的に形成されて構成されることにより一層コストダウンを図ることができる。
【0008】
更に、上記本発明の車両用シートの手段においては、面状の編織物により形成されるインフレータ収納部に収納されるリテーナには締着ボルトが一体的に固定されており、該締着ボルトが挿通する挿通孔がインフレータ収納部及び面着部に形成されており、リテーナに固定された締着ボルトが前記インフレータ収納部及び面着部に形成された挿通孔を通じてシートのフレーム体に締着されることによりエアーバックがシートの取付けられる構成とするのが好ましい。
上記手段よれば、サイドエアーバックに一体的に形成されたインフレータ収納部に収納されるリテーナを用いてサイドエアーバックを車両用シートのフレーム体に取付けることができ、その取付を容易に行いことができると共に、サイドエアーバックを確実にフレーム体に取付けることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上述の手段とすることにより次のような効果を得る。先ず、車両用シートに備えるエアークッションとサイドエアーバックとを編織物により一体的に連続形成することによりコストを安くすることができる。
更に、インフレータ収納部もサイドエアーバックに一体的に形成することにより一層コストダウンを図ることができる。
更に、サイドエアーバックに一体的に形成されたインフレータ収納部に収納されるリテーナを用いてサイドエアーバックを車両用シートのフレーム体にボルトによる締着により取付けることにより、確実かつ比較的簡単な構成で取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の車両用シートの外観斜視図である。
【図2】車両用シートの分解斜視図である。
【図3】エアークッション単体の拡大斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線断面展開図である。
【図5】図3のV−V線断面で示す図であり、(A)は断面展開図、(B)は平面図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図である。
【図7】図3のVII−VII線断面図である。
【図8】表皮材のエアークッションに対する吊り込み構造を示した分解斜視図である。
【図9】図1のIX−IX線断面図である。
【図10】図1のX−X線断面図である。
【図11】図1のXI−XI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
先ず、実施例1の車両用シート1の基本的構成を説明する。図1に示されるように、本実施形態にかかる車両用シート1は、自動車等の車両に設置される。車両用シート1は、運転席、助手席、2列目や3列目に配設される後部座席のいずれにも適用できるものである。本実施例の場合は、運転席の車両用シート1である。
図1に示すように、本実施例の車両用シート1は、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭部の支えとなるヘッドレスト4と、を備えて構成されている。上記シートバック2は、図2に示すように、その左右両サイドの下端部が、それぞれ、回転止め可能な回転軸装置として機能するリクライニング装置5を介してシートクッション3の左右両サイドの後端部に連結されており、シートクッション3に対する背凭れ角度の調整が可能とされている。ヘッドレスト4は、その左右両サイドの下部に立設された2本の棒状のステー4Aが、シートバック2の上部にそれぞれ差し込まれることにより、シートバック2の上部に固定されて設けられている。
【0013】
上記シートバック2は、その骨格を成す枠型に組まれたバックフレーム2Fの前面に、クッション体となるマット型のエアークッション10が配設され、更に、その前面に通気性を有する布製面状の表皮材SBが被覆されて張設された構成となっている。ここで、上記バックフレーム2Fは、シートバック2の両サイド部2Bの骨格を成す縦長状の鋼板部材より成るサイドフレーム2Faと、両サイドフレーム2Faの上部間を繋ぐように設けられる逆U字状に折り曲げられた鋼管部材より成るアッパフレーム2Fbと、両サイドフレーム2Fa間に架け渡されて両サイドフレーム2Fa間にエアークッション10を後面側から支える支持面を構成する横長状の鋼板部材より成る複数の支持板2Fcと、が一体的に組み付けられて構成されている。
【0014】
上記アッパフレーム2Fbには、その中央の左右2ヶ所の前面部位に、角筒状のホルダー2Fdが一体的に溶着されて固定されている。これらホルダー2Fdには、前述したヘッドレスト4の各ステー4Aを差し込んで装着できるようにする円筒状のサポートが差し込まれて装着されている。前述したバックフレーム2Fの両サイドフレーム2Fa間に架け渡された複数の支持板2Fcは、それぞれ、互いに高さ方向に一定間隔毎の隙間2Tを空けて並べ設けられている。この隙間2Tによりシートバック2内に設けられた図示を省略した空調装置の送風機から送風される空気Aiが、各支持板2Fcの裏面側(後面側)から表面側(前面側)へと通されるようになっている。
【0015】
サイドエアーバック30は、図1にその装着される位置を仮想線で示すように、シートバック2の右側の位置に配置されて装着されている。図1にはサイドエアーバック30の配置関係を示すものとして図示されている。この実施例の車両用シート1は運転席用のシートであり、サイドエアーバック30が配置される側が乗降用のドアが配置される位置関係にある。なお、サイドエアーバック30が配置される布製面状の表皮材SBの箇所は破断が容易な脆弱部として構成されている。これによりエアーバックが作動したときに容易に破断してエアーバックが膨張できるようになっている。
【0016】
上記エアークッション10とサイドエアーバック30は、図5に良く示されるように、面状の編織物の構成により面着部36を通じて連続して一体的に形成されている。サイドエアーバック30が配置されない箇所、すなわち、サイドエアーバックの上下の位置には、図4に示されるように、エアークッション10の側板袋部13と背板袋部14がサイド袋部12から一体的に連続形成されている。
エアーバック30は、図2の図示では見えない位置であるが右側のサイド部2Bの位置において、サイド袋部12に面着部36を介して連続して接続された形態として配設される。なお、サイドエアーバック30は車両用シート1の一側のみに設けられるのを普通としているため、この実施例では左側の位置には配設されていない。
【0017】
エアークッション10は、図3及び図4に良く示されるように、センター袋部11、サイド袋部12、側板袋部13、背板袋部14、及び天板袋部15とから成っている。これら各袋部は面状に形成された3枚の立体編織物10A〜10Cを基材として形成されており、空気(流動体)の封入により波打ち状の袋形状に膨張するように構成されている。詳しくは、図4及び図6〜図8に示すように、上記エアークッション10は、表面に合成樹脂又はゴムの不通気性層(図示省略)が形成された表裏2枚の立体編織物10A,10Bの間に、通気性を有する1枚の立体編織物10Cが介在して設けられた3層構造から成る。そして、上記エアークッション10は、その面方向の所々の部位に、上記3枚の立体編織物10A〜10Cが空気が漏出しないように密着した状態に結合された膨張不能な密着部16が形成されており、この密着部16により、その波打ち状の袋形状に膨張する区域が、センター袋部11と、サイド袋部12と、側板袋部13と、背板袋部14と、天板袋部15と、にそれぞれ区画されており、それぞれが独立して膨張するように密封された状態となっている(図3参照)。
【0018】
上記センター袋部11は、図2〜図3に示すように、着座乗員の背部を支えるシートバック2の幅方向の中央部2Aの全域に亘って配設され、サイド袋部12は、上記センター袋部11の両サイド部2Bに隣接して形成されて、上記シートバック2の中央部2Aに隣接する突出形状のサイドサポート部を形成する両サイド部2Bに配設される。また、側板袋部13は、上記各サイド袋部12の外側部にそれぞれ隣接して形成されて、上記シートバック2の両サイド部2Bの外側面部に回し込まれて配設される。また、背板袋部14は、上記各側板袋部13の外側部にそれぞれ隣接して形成されて、上記シートバック2の両サイド部2Bの背面部に回し込まれて配設される。なお、この側板袋部13と背板袋部14は、サイドエアーバック30が配設される車両用シート一の右側側部の中ほど位置には配設されていない。天板袋部15は、上記センター袋部11の上側部に隣接して形成されて、上記シートバック2の上面部に回し込まれて配設される。
【0019】
上記各サイド袋部12は、それぞれ、高さ方向に線条に延びる第1の密着部16Aにより上記センター袋部11と幅方向に分断されており、これら第1の密着部16Aを基点にして蝶番のようにセンター袋部11に対して前後に屈曲させられるようになっている。また、各側板袋部13は、それぞれ、高さ方向に線条に延びる第2の密着部16Bにより上記各サイド袋部12と幅方向に分断されており、これら第2の密着部16Bを基点にして蝶番のように各側板袋部13に対して前後に屈曲させられるようになっている。また、各背板袋部14は、それぞれ、高さ方向に線条に延びる第3の密着部16Cにより上記各側板袋部13と幅方向に分断されており、これら第3の密着部16Cを基点にして蝶番のように各側板袋部13に対して前後に屈曲させられるようになっている。また、天板袋部15は、幅方向に線条に延びる第4の密着部16Dにより上記センター袋部11と高さ方向に分断されており、この第4の密着部16Dを基点にして蝶番のようにセンター袋部11に対して前後に屈曲させられるようになっている。
【0020】
上記の構成により、エアークッション10は、前述したバックフレーム2Fの両サイドフレーム2Fa間に架け渡された支持板2Fc、両サイドフレーム2Fa及びアッパフレーム2Fbの形状に即して、両サイド袋部12をサイドサポート部を形成するためにセンター袋部11に対して前方側へ突出させるように斜めに屈曲させたり、両側板袋部13を両サイド袋部12に対して後方側へ曲げ返すように大きく屈曲させたり、両背板袋部14を両側板袋部13に対して更に同じ方向(内方側)に曲げ返すように大きく屈曲させたり、天板袋部15をセンター袋部11に対して後方側へ曲げ返すように大きく屈曲させたりできるようになっている。ここで、上記エアークッション10に形成された各袋部(センター袋部11〜天板袋部15:以下、各袋部11〜15とする。)のうち、着座乗員の背部を支持するシートバック2の前面部に配されるセンター袋部11及び両サイド袋部12には、この両者に跨るように更に幅方向に線条に延びる第5の密着部16Eが形成されている。この第5の密着部16Eも、他の密着部(第1の密着部16A〜第4の密着部16D)と同じように、前述した3枚の立体編織物10A〜10Cが空気が漏出しないように密着した状態に結合されて形成されている。
【0021】
そして、上記密着部16のうち、着座乗員の背部を支持するシートバック2の前面部に配される各第1の密着部16A及び第5の密着部16Eには、その線条に延びる長さ方向に沿って、複数の差込孔17A及び通気孔17Cが形成されている。上記各差込孔17Aは、図8〜図9に示すように、後述する表皮材SBの裏面部に設けられた各吊り込み部SBaを差し込んで吊り込んだ状態にして保持するための機能部となっている。具体的には、各吊り込み部SBaは、表皮材SBの吊り込み線SBbに沿って、その裏面部に袋状に曲げ返されて縫合された帯状の布片が断続的に複数並んで設けられた構成となっており、これら吊り込み部SBaを上記各差込孔17A内に差し込んで、その差し込んだ先で、それらの袋状の曲げ返された内部に貫通する各貫通孔SBa1内に貫通するように、長尺状の抜け止め用のファースンゴムSBa2を挿通することにより、各吊り込み部SBaが第1の密着部16Aや第5の密着部16Eに対して吊り込まれて抜け止めされた状態となって保持されるようになっている(図9参照)。
【0022】
また、各通気孔17Cは、シートバック2の内部に配設された空調装置の送風機から送風される空気Aiを、エアークッション10の裏面側(後面側)から表面側(前面側)へと通風させられるようにする機能部となっている。また、同じ目的で、図3に示した第4の密着部16Dにも、その裏面側(下面側)から送風される空気Aiを表面側(上面側)へと通風させられるようにする通気孔17Cが、複数貫通して形成されている。
【0023】
また、図3に示すように、上記第4の密着部16Dには、更に、前述したヘッドレスト4のステー4Aをその表面側から裏面側へと貫通して差し込めるようにする差込孔17Bが形成されている。上述した各差込孔17A,17B及び各通気孔17Cは、図7において前述したように、3枚の立体編織物10A〜10Cが空気が漏出しないように密着した状態に結合された密着部16にそれぞれ形成されているため、上述した各袋部11〜15の密封状態を保ちつつ、それぞれを通し孔として機能させられるようになっている。
【0024】
ところで、図2に示すように、前述したシートバック2の前面部に配される第1の密着部16Aは、シートバック2の中央部2Aとその両側部に突出してサイドサポート部を形成する両側のサイド部2Bとの境界線に沿って形成されており、隣接するセンター袋部11とサイド袋部12との間に、これらの膨張に伴う配置高さの違いによる段差の空間(第1の空間18A)が形成されている(図8参照)。この第1の空間18Aは、図8に示すように、エアークッション10の表面に被覆される表皮材SBの上記中央部2Aと各サイド部2Bとの境界に沿って設定された吊り込み線SBbの裏面部に設けられた吊り込み部SBaを吊り込めるようにするスペースとして機能するものとなっている。
【0025】
また、同じく、図2に示すように、エアークッション10のセンター袋部11を高さ方向に分割する第5の密着部16Eも、シートバック2の中央部2Aに設定された幅方向に延びる表皮材SBの吊り込み線SBbに沿って形成されており、高さ方向に隣接する両センター袋部11との間に、これらの膨張に伴う配置高さの違いによる段差の空間(第1の空間18A)が形成されている。この第1の空間18Aも、表皮材SBの上記中央部2Aに設定された吊り込み線SBbの裏面部に設けられた吊り込み部SBaを吊り込めるようにするスペースとして機能するものとなっている。上記各第1の空間18Aは、それぞれ、前述した第1の密着部16A及び第5の密着部16Eに形成された通気孔17Cと連通している。
【0026】
ところで、図6〜図7に示すように、上記エアークッション10を構成する各袋部11〜15は、前述したように、不通気性の表裏2枚の立体編織物10A,10Bの間に、通気性を有する1枚の立体編織物10Cが介在して設けられた3層構造から成り、この介在する通気性を有する立体編織物10Cが、表側の立体編織物10Aの内面に一体的に結合されたり裏側の立体編織物10Bの内面に一体的に結合されたりして、その結合される対象が一定間隔を置いて交互に変えられて結合されていることにより、膨張時に波打ち状の袋形状に膨張するように形成されている。詳しくは、上記各袋部11〜15は、上記通気性を有する立体編織物10Cが表側の立体編織物10A或いは裏側の立体編織物10Bと結合されることで面が重合された領域部(低膨張部11B〜15B)では、その対面側となる表側の立体編織物10A或いは裏側の立体編織物10Bが1枚で構成されている単層の領域部(高膨張部11A〜15A)と比べて厚みがあるため、引張強度が高く、膨張高さが低くなる構成となっている。ここで、上記各袋部11〜15は、各袋部11〜15に図示しない空気の供給口からそれぞれ空気が送り込まれることにより、この送り込まれた空気が、上記表側の立体編織物10Aと裏側の立体編織物10Bとの間を単体で繋いでいる通気性を有する立体編織物10Cを通過することで、各袋部11〜15内に広く行き渡って充填されるようになっている。
【0027】
このように、上記各袋部11〜15に、上記低膨張部11B〜15Bと高膨張部11A〜15Aとがシートバック2の高さ方向に交互に繰り返すように形成されていることにより、各袋部11〜15は、各低膨張部11B〜15Bと高膨張部11A〜15Aとの間に、互いの膨張高さの違いによる段差の空間(第2の空間18B)を有する波打ち状の袋形状に膨張する構成とされる。この第2の空間18Bは、前述した第1の密着部16A及び第5の密着部16E(図2参照)の形成された第1の空間18Aと連通しており、前述した各通気孔17Cを通って第1の空間18A内に送り込まれた空気Aiを、各第2の空間18B内を通してシート幅方向に広く配風させられるように機能するものとなっている。このように、シートバック2の前面部に配される表皮材SBの裏面に位置するセンター袋部11及び両サイド袋部12の表面上に、互いに表面側に開口して連通した第1の空間18Aと第2の空間18Bとが網の目状に廻る形に形成されていることにより、シートバック2内の送風機から送風された空気Aiを、上記第1の空間18Aと第2の空間18Bとによってシートバック2の前面部に広く行き渡るように表皮材SBとの間で面内方向に広く配風させてから、表皮材SBを通過させて着座乗員の背部に広く当てるようにすることができる。なお、表皮材SBのシートバック2の背後側に回し込まれた各縁部は、それぞれ、バックフレーム2Fの背部に固定されたバックボード2Ffに結合されて固定されている。
【0028】
ところで、上述したエアークッション10を構成するセンター袋部11及び各サイド袋部12は、その高膨張部11A,12Aと低膨張部11B,12Bとが交互に繰り返される各袋部分の高さ方向の幅が40mmに設定されているのに対し、各側板袋部13及び各背板袋部14は、その高膨張部13A,14Aと低膨張部13B,14Bとが交互に繰り返される各袋部分の高さ方向の幅が、半分の20mmに設定されている。この各袋部分の高さ方向の幅を互いに異ならせる構成は、図6〜図7において前述した中間層の立体編織物10Cを表側の立体編織物10Aと裏側の立体編織物10Bとにそれぞれ結合させる間隔の広狭を変えることによって行われている。この間隔の広狭の違いにより、センター袋部11及び各サイド袋部12は、各側板袋部13及び各背板袋部14に比して、その一つ一つの袋部分(高膨張部11A,12A及び低膨張部11B,12B)を構成する内周面の周長も長くなっており、その分、大きく膨張することができるようになっている。これにより、センター袋部11及び各サイド袋部12は、各側板袋部13及び各背板袋部14よりも膨張高さが高くなっており、これらの高膨張部11A,12Aと低膨張部11B,12Bとの間に形成される段差による空間(第2の空間18B)や密着部16との間に形成される段差による空間(第1の空間18A)も広く形成されて、前述した送風された空気Aiを配風するための風道が広く形成されたものとなっている。
【0029】
続いて、図2に戻って、シートクッション3は、その骨格を成す枠型に組まれたクッションフレーム3Fの上面に、クッション体となるマット型のエアークッション20が配設され、更にその上面に通気性を有した布製面状の表皮材SCが被覆されて張設された構成となっている。ここで、上記クッションフレーム3Fは、シートクッション3の両サイド部3Bの骨格を成す前後方向に長尺な鋼板部材より成るサイドフレーム3Faと、両サイドフレーム3Faの前部間を繋ぐように設けられる鋼板部材より成るフロントフレーム3Fbと、両サイドフレーム3Fa間に架け渡されて両サイドフレーム3Fa間にエアークッション20を下面側から支える支持面を構成する横長状の鋼板部材より成る複数の支持板3Fcと、が一体的に組み付けられて構成されている。これら支持板3Fcは、それぞれ、互いに前後方向に一定間隔毎の隙間3Tを空けて並べ設けられている。この隙間3Tにより、図示は省略するが、シートクッション3内に設けられた空調装置の送風機から送風される空気Aiが、各支持板3Fcの裏面側(下面側)から表面側(上面側)へと通されるようになっている。
【0030】
エアークッション20は、図2〜図3に示すように、前述したシートバック2に配されるエアークッション10とその基本的構成は同じものとなっている。したがって、以下では、エアークッション10と基本的構成が同じ箇所については簡潔に説明をし、異なる箇所について詳しく説明していくこととする。エアークッション20も、図11に示すように、表面に合成樹脂又はゴムの不通気性層(図示省略)が形成された表裏2枚の立体編織物20A,20Bの間に、通気性を有する1枚の立体編織物20Cが介在して設けられた3層構造から成る。そして、図3に示すように、このエアークッション20にも、その面方向の所々の部位に、上記3枚の立体編織物20A〜20Cが空気が漏出しないように密着した状態に結合された膨張不能な密着部24が形成されており、この密着部24により、その波打ち状の袋形状に膨張する区域が、センター袋部21と、サイド袋部22と、側板袋部23と、にそれぞれ区画されており、それぞれが独立して膨張するように密封された状態となっている。
【0031】
上記センター袋部21は、図2〜図3に示すように、着座乗員の尻部や大腿部を支えるシートクッション3の幅方向の中央部3Aの全域に亘って配設され、サイド袋部22は、上記センター袋部21の両サイド部3Bに隣接して形成されて、上記シートクッション3の中央部3Aに隣接する突出形状のサイドサポート部を形成する両サイド部3Bに配設される。また、側板袋部23は、上記各サイド袋部22の外側部にそれぞれ隣接して形成されて、上記シートクッション3の両サイド部3Bの外側面部に回し込まれて配設される。
【0032】
上記各サイド袋部22は、それぞれ、前後方向に線条に延びる第1の密着部24Aにより上記センター袋部21と幅方向に分断されており、これら第1の密着部24Aを基点にして蝶番のようにセンター袋部21に対して上下に屈曲させられるようになっている。また、各側板袋部23は、それぞれ、前後方向に線条に延びる第2の密着部24Bにより上記各サイド袋部22と幅方向に分断されており、これら第2の密着部24Bを基点にして蝶番のように各側板袋部23に対して上下に屈曲させられるようになっている。
【0033】
上記の構成により、エアークッション20は、前述したクッションフレーム3Fの両サイドフレーム3Fa間に架け渡された支持板3Fc、両サイドフレーム3Fa及びフロントフレーム3Fbの形状に即して、両サイド袋部22をサイドサポート部を形成するためにセンター袋部21に対して上方側へ突出させるように斜めに屈曲させたり、両側板袋部23を両サイド袋部22に対して下方側へ曲げ返すように大きく屈曲させたりできるようになっている。ここで、上記エアークッション20に形成された各袋部(センター袋部21〜側板袋部23:以下、各袋部21〜23とする。)のうち、着座乗員の尻部や大腿部を支持するシートクッション3の上面部に配されるセンター袋部21及び両サイド袋部22には、この両者に跨るように更に幅方向に線条に延びる第3の密着部24Cが形成されている。この第3の密着部24Cも、他の密着部(第1の密着部24A〜第2の密着部24B)と同じように、前述した3枚の立体編織物20A〜20Cが空気が漏出しないように密着した状態に結合されて形成されている。
【0034】
そして、上記密着部24のうち、着座乗員の尻部や大腿部を支持するシートクッション3の上面部に配される各第1の密着部24A及び第3の密着部24Cには、その線条に延びる長さ方向に沿って、複数の差込孔25A及び通気孔25Bが形成されている。上記各差込孔25Aは、図11に示すように、後述する表皮材SCの裏面部に設けられた各吊り込み部SCaを差し込んで吊り込んだ状態にして保持するための機能部となっている。具体的には、各吊り込み部SCaは、表皮材SCの吊り込み線SCbに沿って、その裏面部に袋状に曲げ返されて縫合された帯状の布片が断続的に複数並んで設けられた構成となっており、これら吊り込み部SCaを上記各差込孔25A内に差し込んで、その差し込んだ先で、それらの袋状の曲げ返された内部に貫通する各貫通孔SCa1内に貫通するように、長尺状の抜け止め用のファースンゴムSCa2を挿通することにより、各吊り込み部SCaが第1の密着部24Aや第3の密着部24C(図3参照)に対して吊り込まれて抜け止めされた状態となって保持されるようになっている。
【0035】
また、各通気孔25Bは、図2〜図3に示すように、シートクッション3の内部に配設された図示しない空調装置の送風機から送風される空気Aiを、エアークッション20の裏面側(下面側)から表面側(上面側)へと通風させられるようにする機能部となっている。上述した各差込孔25A及び各通気孔25Bは、3枚の立体編織物20A〜20Cが空気が漏出しないように密着した状態に結合された密着部24にそれぞれ形成されているため、上述した各袋部21〜23の密封状態を保ちつつ、それぞれを通し孔として機能させられるようになっている。
【0036】
ところで、図2に示すように、前述したシートクッション3の上面部に配される第1の密着部24Aは、シートクッション3の中央部3Aとその両側部に突出してサイドサポート部を形成する両側のサイド部3Bとの境界線に沿って形成されており、隣接するセンター袋部21とサイド袋部22との間に、これらの膨張に伴う配置高さの違いによる段差の空間(第1の空間26A)が形成されている(図11参照)。この第1の空間26Aは、エアークッション20の表面に被覆される表皮材SCの上記中央部3Aと各サイド部3Bとの境界に沿って設定された吊り込み線SCbの裏面部に設けられた吊り込み部SCaを吊り込めるようにするスペースとして機能するものとなっている。また、同じく、図2に示すように、エアークッション20のセンター袋部21を前後方向に分割する第3の密着部24Cも、シートクッション3の中央部3Aに設定された幅方向に延びる表皮材SCの吊り込み線SCbに沿って形成されており、前後方向に隣接する両センター袋部21との間に、これらの膨張に伴う配置高さの違いによる段差の空間(第1の空間26A)が形成されている。この第1の空間26Aも、表皮材SCの上記中央部3Aに設定された吊り込み線SCbの裏面部に設けられた吊り込み部SCa(図11参照)を吊り込めるようにするスペースとして機能するものとなっている。上記各第1の空間26Aは、それぞれ、前述した第1の密着部24A及び第3の密着部24Cに形成された通気孔25Bと連通している。
【0037】
ところで、上記エアークッション20を構成する各袋部21〜23は、前述したように、不通気性の表裏2枚の立体編織物20A,20Bの間に、通気性を有する1枚の立体編織物20Cが介在して設けられた3層構造から成り、この介在する通気性を有する立体編織物20Cが、表側の立体編織物20Aの内面に一体的に結合されたり裏側の立体編織物20Bの内面に一体的に結合されたりして、その結合される対象が一定間隔を置いて交互に変えられて結合されていることにより、膨張時に波打ち状の袋形状に膨張するように形成されている。詳しくは、上記各袋部21〜23は、上記通気性を有する立体編織物20Cが表側の立体編織物20A或いは裏側の立体編織物20Bと結合されることで面が重合された領域部(低膨張部21B〜23B)では、その対面側となる表側の立体編織物20A或いは裏側の立体編織物20Bが1枚で構成されている単層の領域部(高膨張部21A〜23A)と比べて厚みがあるために引張強度が高く、膨張高さが低くなる構成となっている。ここで、上記各袋部21〜23は、各袋部21〜23に図示しない空気の供給口からそれぞれ空気が送り込まれることにより、この送り込まれた空気が、上記表側の立体編織物20Aと裏側の立体編織物20Bとの間を単体で繋いでいる通気性を有する立体編織物20Cを通過することで、各袋部21〜23内に広く行き渡って充填されるようになっている。
【0038】
このように、図2〜図3に示すように、上記各袋部21〜23に、上記低膨張部21B〜23Bと高膨張部21A〜23Aとがシートクッション3の前後方向に交互に繰り返すように形成されていることにより、各袋部21〜23は、各低膨張部21B〜23Bと高膨張部21A〜23Aとの間に、互いの膨張高さの違いによる段差の空間(第2の空間26B)を有する波打ち状の袋形状に膨張する構成とされている。この第2の空間26Bは、前述した第1の密着部24A及び第3の密着部24Cの形成された第1の空間26Aと連通しており、前述した各通気孔25Bを通って第1の空間26A内に送り込まれた空気Aiを、各第2の空間26B内を通してシート幅方向に広く配風させられるように機能するものとなっている。このように、シートクッション3の上面部に配される表皮材SCの裏面に位置するセンター袋部21及び両サイド袋部22の表面上に、互いに表面側に開口して連通した第1の空間26Aと第2の空間26Bとが網の目状に廻る形に形成されていることにより、シートクッション3内の送風機(図示省略)から送風された空気Aiを、上記第1の空間26Aと第2の空間26Bとによってシートクッション3の上面部に広く行き渡るように表皮材SCとの間で面内方向に広く配風させてから、表皮材SCを通過させて着座乗員の尻部や大腿部に広く当てるようにすることができる。
【0039】
ところで、上述したエアークッション20を構成するセンター袋部21及び各サイド袋部22は、その高膨張部21A,22Aと低膨張部21B,22Bとが交互に繰り返される各袋部分の前後方向の幅が40mmに設定されているのに対し、各側板袋部23は、その高膨張部23Aと低膨張部23Bとが交互に繰り返される各袋部分の前後方向の幅が、半分の20mmに設定されている。この各袋部分の前後方向の幅を互いに異ならせる構成は、前述した中間層の立体編織物20Cを表側の立体編織物20Aと裏側の立体編織物20Bとにそれぞれ結合させる間隔の広狭を変えることによって行われている。この間隔の広狭の違いにより、センター袋部21及び各サイド袋部22は、各側板袋部23に比して、その一つ一つの袋部分(高膨張部21A,22A及び低膨張部21B,22B)を構成する内周面の周長も長くなっており、その分、大きく膨張することができるようになっている。これにより、センター袋部21及び各サイド袋部22は、各側板袋部23よりも膨張高さが高くなっており、これらの高膨張部21A,22Aと低膨張部21B,22Bとの間に形成される段差による空間(第2の空間26B)や密着部24との間に形成される段差による空間(第1の空間26A)も広く形成されて、前述した送風された空気Aiを配風するための風道が広く形成されたものとなっている。
【0040】
従来の一般的なエアークッションでは、エアークッションは面状に広がって膨張するようにはなっているが、平面状にしか膨張せず、クッション構造部の意匠面と意匠面との間に吊り込み溝を形成できるように部分的に凹ませたり、サイドサポート機能を備えたシートバックやシートクッションのサイド部をセンター部に対して膨らませるように屈曲させた形に膨張させたりすることができなかった。
しかし、上述した本実施例の車両用シート1によれば、エアークッション10(20)を構成する袋部を分断するように密着部16(24)が形成されることにより、膨張する袋部11〜15(21〜23)と膨張しない密着部16(24)との間で凹凸を形作ったり、密着部16(24)を基点に袋部11〜15(21〜23)を屈曲させたりできるようになる。これにより、エアークッション10(20)に部分的な凹凸形状や屈曲したサイドサポート部などの突出した膨張形状を形成することができる。また、エアークッション10(20)は、密着部16(24)によって区画された各袋部11〜15(21〜23)が、それぞれ独立して膨張することができるように密封された状態で形成されていることにより、その空気の封入圧の調節により、センター袋部11(21)を柔らかくして耐圧分散性を高め、両サイド袋部12(22)を硬くしてサイドサポート性を高めるなどの調節を自由かつ簡便に行うことができる。
【0041】
また、密着部16(24)が、シートバック2(シートクッション3)の幅方向の中央部2A(3A)とその両側のサイド部2B(3B)との境界線(吊り込み線SBb(SCb))に沿って形成されて、袋部11,12(21,22)の膨張高さよりも低い位置に配置されていることにより、この密着部16(24)の上部に第1の空間18A(26A)が形成される。したがって、この第1の空間18A(26A)により、エアークッション10(20)の表面に被せ付けられる表皮材SB(SC)の、上記中央部2A(3A)とサイド部2B(3B)との境界の吊り込み部SBa(SCa)を吊り込むことのできるスペースを確保することができる。また、上記密着部16(24)によって、上記袋部が上記中央部2A(3A)に配される部分(センター袋部11(21))とサイド部2B(3B)に配される部分(サイド袋部12(22))とに分断されることにより、サイド部2B(3B)に配される部分(サイド袋部12(22))を、密着部16(24)を基点に屈曲させて、中央部2A(3A)に配される部分(センター袋部11(21))よりも大きく膨出させることで、サイドサポート部を形成することができる。また、密着部16(24)に表皮材SB(SC)の吊り込み部SBa(SCa)を吊り込んで連結する構成とすることにより、密着部16(24)の構成を利用して、吊り込み部SBa(SCa)を吊り込んで連結する構成を簡素にすることができる。
【0042】
本実施例では、上述したように、シートバック2及びシートクッション3の各エアクッション10、20の各袋部11〜15、21〜23を立体編織物で一体的に形成することに特徴を有する。更に、本実施例では、シートバック2に備えるサイドエアーバック30をシートバック2のエアクッション10と立体編織物で一体的に形成することを特徴とするものである。その構成の詳細を、図5及び図10を中心に以下に説明する。
図5は図3に示すシートバック2のエアークッション10のサイドエアーバック30を配設した箇所の断面線箇所を示すものであり、(A)図は断面図を示し、(B)図は平面図を示す。図10はサイドエアーバック30がエアークッション10と一体に形成されてシートバック2に組み込まれた状態を示す断面図である。
【0043】
図5に良く示されるように、サイドエアーバック30は、エアーバック袋本体32とインフレータ収納部34とから成っている。このサイドエアーバック30は面着部36を介して一体的に連続して面状の立体編織物10A〜10Cにより形成されている。面着部36はエアークッション10とサイドエアーバック30を連続して一体的に織り形成するための繋ぎ部位であって、エアークッション10を構成した面状の3枚の立体編織物10A〜10Cが重ね合わされて形成されている。
なお、2枚の立体編織物10A、10B間に介挿された立体編織物10Cは、サイドエアーバック30を形成するに当たっては、一方の立体編織物10Aの内面に沿わせて配設されている。したがって、一方の立体編織物10Aは介挿される中間の立体編織物10Bと重ね合わされて配設された2枚重ね構成となっている。これに対して他方の立体織編物10Cは1枚構成で配設されている。そして、2枚重ねで構成される立体織編物10A、10Bをシートバック2に組み込むに当たって配設される位置関係は、サイドエアーバック30が膨張展開した際に2枚重ね側が車両の窓側位置となるように配設されている。これにより車両の側突時にサイドエアーバック30が膨張展開して車両の窓側構成部材と接触した際の強度に耐え得るようにしている。
【0044】
面着部36は、図10に良く示されるように、シートバック2に組み込まれる際にはサイドフレーム2Faに沿って配設される関係から、比較的長尺に形成されている。この面着部36は、前述もしたように、3枚の立体編織物10A、10B、10Cが重ね合わされて形成されている。そして、この面着部36は非通気性構造となっており、前述の密着部16と同様にサイド袋部12の空気がサイドエアーバック30に漏出しない構成となっている。
【0045】
サイドエアーバック30を構成するエアーバック袋本体32とインフレータ収納部34は、面状に形成された3枚の立体編織物10A、10B、10Cを基材としていわゆる袋織りにより一体的に連続形成されている。織り構成自体は前述のエアクッション10,20と同じ構成であるが、サイドエアーバック30はその機能上の必要性から、通気性を有する構成とされている。この点がエアークッション10,20と異なる構成である。すなわち、前述のエアクッション10,20のように、面状に形成された2枚の立体編織物10A、10Bの表面には合成樹脂又はゴムの不通気性層は形成されていない。これはサイドエアーバック30は一旦膨張させた袋体の空気を抜いて衝撃を緩和させる必要があるためである。
【0046】
図5(B)に示されるように、インフレータ収納部34には円筒形状のリテーナ40が収納されるようになっている。そして、リテーナ40には火薬42が挿入される構成となっている。リテーナ40に挿入される火薬42は車両の側突した際の検知信号に基づいて発火してエアーバック袋本体32を空気膨張させる機能をさせるものである。このため、図5(A)で示されるように、インフレータ収納部34とエアバック袋本体32とは空気が流通できる気流通路44が設けられて形成されている。これによりリテーナ40内の火薬42の発火により空気が膨張してエアーバック袋本体32を膨張させる。
なお、リテーナ40には、このリテーナ40をサイドフレーム2Faに組付けるための2本の締着ボルト50が植え付けられて固定されている。リテーナ40がインフレータ収納部34に収納された際の締着ボルト50の位置には第1ボルト挿通孔52が形成されている。同様に面着部36には第2ボルト挿通孔54が形成されている。この第2ボルト挿通孔54は取付誤差の吸収と取付の容易化のため長孔形状に形成されている。
【0047】
上述した図5に示されるエアークッション10と一体的に形成したサイドエアーバック30は、図10に示すようにしてシートバック2に組み込まれる。先ず、火薬42を入れたリテーナ40をインフレータ収納部34に収納し、締着ボルト50をリテーナ40に植設するために、インフレータ収納部34の第1ボルト挿通孔52と位置合わせして締着ボルト50をリテーナ40に植設してインフレータ収納部34に収納した状態とする。なお、エアーバック袋本体部32は、図10に示すように、折畳んだ状態としてインフレータ収納部34とアッセンブリ状態とする。
上記のようにアッセンブリ状態とされたサイドエアーバック30はシートバック2のサイドフレーム2Faの側部に配置されて設置される。この際、図10に示されるように、インフレータ収納部34はサイドフレーム2Faの後方位置にあり、バックフレーム2F上に設置されるエアクッション10のサイド袋部12と、サイドフレーム2Faの側部に配設される面着部36を通じて一体的に接続されて配置された状態にある。すなわち、サイドフレーム2Faの側部には先ず面着部36が配置され、その外側にインフレータ収納部34とエアーバック袋本体32のアッセンブリ体が配置された状態にある。
【0048】
上記サイドエアーバック30の配置状態において、リテーナ40に植設された締着ボルト50は、インフレータ収納部34に形成された第1ボルト挿通孔52及び面着部36に形成された第2ボルト挿通孔54を挿通して配設され、サイドフレーム2Faに穿設された取付孔60に嵌合してナット62により締着して、アッセンブリ体をサイドフレーム2Faに取付ける。表皮材SBはこれらを被覆するものとして図9に示す側版袋部13及び背板袋部14を被覆する構成の延長線上の構成として構成されている。但し、表皮材SBのエアーバック袋本体が膨張して展開する位置の前方箇所は破断しやすい脆弱な構成とされている。
【0049】
上述した本実施例によれば、サイドエアーバック30はエアークッション10と面状の立体編織物により一体に連続して形成されている。このため、構成部品点数の削減を図ることが可能となり、コストダウンを図ることができる。特に、本実施例の場合には、サイドエアーバック30を構成するインフレータ収納部34もエアーバック袋本体32と一体に形成するものであるため、より一層コストダウンを図ることができる。更には、本実施例においては、リテーナ40に固定した締着ボルト50によりサイドフレーム2Faに取付けることによりサイドエアーバックアッセンブリー体を組付けることができるため、サイドエアーバックをシートバック2に容易に組付けることが可能となる。
【0050】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。
例えば、上記実施例では、サイドエアーバックは車両の窓側の車両用シート側部に設けた場合について説明した。しかし、必要があれば、エアーバックは車両用シートの両側に設けても良い。
また、例えば、エアークッションの袋部は、面状の編織物が複数枚重ねられて袋状に結合された構成となっていればよく、その編織物の構成枚数は特に限定されるものではない。
また、表皮材の吊り込み部をエアークッションの密着部に向けて吊り込んで係止させる手段は、上記実施例で示した手段(吊り込み部を密着部に形成された差込孔内に差し込んでファースンゴムを挿通させて抜け止めする構成)に限定されることなく、公知のホグリング式やホグリングレス式などの種々の手段を用いることができるものである。また、上記ファースンゴム等の抜止部材は、各吊り込み部に対して個々に設けられるものであってもよい。そうすることにより、密着部に形成された通気孔にファースンゴム等の抜止部材が跨がないようにすることができる。また、表皮材の吊り込み部を、エアークッションの密着部を貫通させてシートフレームに吊り込んで係止させる構成であってもよい。
【0051】
また、エアークッション内に封入される流動体は、空気の他、ヘリウムなどの気体、水などの流体又は粉体などを用いることもできる。
また、エアークッションを構成する編織物の糸としては、綿繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の天然繊維又は合成繊維からなる糸を用いることができる。なお、化学繊維のモノフィラメント糸を用いると、製品としたときに、毛細管現象によって糸を伝って流動体が漏れるのを容易に防止することができる。
また、エアークッションを構成する各袋部は、互いに内部が連通して形成されていてもよい。すなわち、各袋部は、密着部によって全体として形が分断されるように区画されていればよく、互いに内部が連通するようになっていても構わない。
【符号の説明】
【0052】
1 車両用シート
2 シートバック
2A 中央部
2B サイド部
2F バックフレーム
2Fa サイドフレーム
2Fb アッパフレーム
2Fc 支持板
2Fd ホルダー
2Fe サポート
2Ff バックボード
2T 隙間
3 シートクッション
3A 中央部
3B サイド部
3F クッションフレーム
3Fa サイドフレーム
3Fb フロントフレーム
3Fc 支持板
3T 隙間
4 ヘッドレスト
4A ステー
5 リクライニング装置
10 エアークッション
10A〜10C 立体編織物
11 センター袋部
11A 高膨張部
11B 低膨張部
12 サイド袋部
12A 高膨張部
12B 低膨張部
13 側板袋部
13A 高膨張部
13B 低膨張部
14 背板袋部
14A 高膨張部
14B 低膨張部
15 天板袋部
15A 高膨張部
15B 低膨張部
16 密着部
16A〜16E 第1〜第5の密着部
17A,17B 差込孔
17C 通気孔
18A 第1の空間
18B 第2の空間
20 エアークッション
20A〜20C 立体編織物
21 センター袋部
21A 高膨張部
21B 低膨張部
22 サイド袋部
22A 高膨張部
22B 低膨張部
23 側板袋部
23A 高膨張部
23B 低膨張部
24 密着部
24A〜24C 第1〜第3の密着部
25A 差込孔
25B 通気孔
26A 第1の空間
26B 第2の空間
30 サイドエアーバック
32 エアーバック袋本体
34 インフレータ収納部
36 面着部
40 リテーナ
42 火薬
44 気流通路
50 締着ボルト
52 第1ボルト挿通孔
54 第2ボルト挿通孔
60 取付孔
62 ナット
SB 表皮材
SBa 吊り込み部
SBa1 貫通孔
SBa2 ファースンゴム
SBb 吊り込み線
SC 表皮材
SCa 吊り込み部
SCa1 貫通孔
SCa2 ファースンゴム
SCb 吊り込み線
Ai 空気


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者を支える箇所が面状の編織物を基材とした袋状のエアークッションで形成され、該エアークッションの着座者が位置する側部位置にサイドエアーバックが配置されて成る車両用シートであって、
前記エアークッションの袋状構成とサイドエアーバックの袋状構成とは面着部を介して面状の編織物により一体的に連続形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記面状の編織物により形成されるサイドエアーバックには、インフレータ収納部も一体的に形成されており、該インフレータ収納部とエアーバック袋本体とは気流通路が形成されて連通されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートであって、
前記面状の編織物より形成されるインフレータ収納部に収納されるリテーナには締着ボルトが一体的に固定されており、該締着ボルトが挿通する挿通孔がインフレータ収納部及び面着部に形成されており、リテーナに固定された締着ボルトが前記インフレータ収納部及び面着部に形成された挿通孔を通じてシートのフレーム体に締着されることによりサイドエアーバックがシートの取付けられることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−218612(P2012−218612A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87494(P2011−87494)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】