説明

車両用シート

【課題】モバイル機器の取り付け装置を簡単な作業にて使用可能とする。
【解決手段】シートバック14の背面において、表皮材26のうち上下に延びる帯状部26Bの下部が上方に折り返し可能とされており、折り返し部分26Bbにはモバイル装置90の取り付け装置60が固定されている。帯状部26Bの上下方向の中間部分には、帯状部26Bよりも剛性の大きい樹脂板30A,30Bが張られて設けられている。帯状部26Bは折り返す際に樹脂板30A,30Bが張られた箇所の折り曲げは規制されてその前後両側位置で折れ曲がり、側面視において三角形をなすような規定の立体的形状に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックの後側にモバイル機器の保持装置を有する車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
着座者の背凭れ部分となるシートバックの後側に、タブレットコンピュータや電子ブックリーダ等のモバイル機器を取り付けるの装置を備える車両用シートが従来知られている。このような車両用シートによれば、当該シートの背後のシートの着座者がモバイル機器を手に持つことなく当該シートバックの後側に取り付けられた状態のまま使用することができる。これに関連する技術として、下記特許文献1にはモバイル機器として小型のテレビ受像機を取り付け可能としたシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−128007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているモバイル機器の取り付け装置は、ヘッドレストをシートバックから取り外した上で、ヘッドレスト又はシートバックに取り付けて使用するものであったため、取り付け作業が煩雑であった。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、モバイル機器の取り付け装置を簡単な作業にて使用可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る車両用シートは次の手段をとる。
本発明の第1の発明に係る車両用シートは、着座者の背凭れとなるシートバックと、該シートバックの後側にモバイル機器の保持手段とを備える車両用シートであって、前記保持手段は、シートバックの後側に上下方向に延設される帯状部材と、該帯状部材の下部を上方へ折り返し下端をシートバック上部に固定する固定部材と、前記帯状部材の折り返された部分に取り付けられたモバイル機器の取り付け装置と、前記取り付け装置の取り付け角度を規定する角度規定部材とを有することを特徴とする。
この構成によれば、上下方向に延設される帯状部材の下部を上方に折り返し、固定部材により下端をシートバックの上部に固定する簡単な作業により、モバイル機器の取り付け装置が使用可能となる。また、角度規定部材が取り付け装置の取り付け角度を規定するため、モバイル機器の向きを最適な向きに設定することができ使用性が向上する。
【0007】
本発明の第2の発明に係る車両用シートは、本発明の第1の発明に係る車両用シートであって、前記角度規定部材は前記帯状部材に設けられた板状の剛性部材であることを特徴とする。
この構成によれば、角度規定部材が板状の剛性部材であり、本発明を簡素な部材で構成することができる。
【0008】
本発明の第1の発明に係る車両用シートは、本発明の第2の発明に係る車両用シートであって、前記板状の剛性部材は前記帯状部材の上下方向の中間部分に張られて設けられており、前記帯状部材は折り返されたとき前記剛性部材が張られた箇所の前後位置で折れ曲がった状態となることを特徴とする。
この構成によれば、板状の剛性部材は帯状部材の上下方向の中間部分に張られて、帯状部材は折り返されたとき剛性部材が張られた箇所の前後位置で折れ曲がった状態となる。このため、角度規定部材が簡素な板状部材であっても帯状部材の形状を自由度の高い規定の立体的形状とすることができるため、モバイル機器の向きをより最適な向きに設定することができる。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明によれば、簡単な作業によりモバイル機器の取り付け装置が使用可能となるとともに、モバイル機器の向きを最適な向きに設定することができ使用性が向上する。
第2の発明によれば、本発明を簡素な部材で構成することができる。
第3の発明によれば、モバイル機器の向きをより最適な向きに設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る車両用シートを示す断面図である。
【図2】図1のシートにおいて、表皮材の帯状部を折り返してモバイル機器を取り付けた状態を示す断面図である。
【図3】取り付け装置のシート側構造を示す部分拡大図である。
【図4】取り付け装置のモバイル機器側構造を示す部分断面図である。
【図5】図4の構造における把持金具の作用を示す部分拡大図である。
【図6】図2のシートを示す斜視図である。
【図7】折り返しを通常の状態に戻し、モバイル機器を収納した状態を示す断面図である。
【図8】第1の実施形態の変形例において、主要部を示す断面図である。
【図9】第2の実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
【図10】シートバック背面の表皮材の帯状部を上方に折り返した状態を示す側面図である。
【図11】モバイル機器の取り付け装置周辺を示す部分断面図である。
【図12】モバイル機器の取り付け装置の分解斜視図である。
【図13】モバイル機器が90度回転可能であることを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための第1の形態を説明する。
車両に備えられて乗員が使用するシート10において、図1には着座部であるシートクッション12のフレームの一部と、シートバック14とが示されている。本実施形態のシートバック14は、着座者の後頭部を支持するヘッドレスト部14Hが、背面を支持する背凭れ部14Bから取り外し不可能に一体的に形成されている。シートバック14は、シートクッション12の後端部に連結されている(図6参照)。この連結部にはリクライニング装置が設けられ、シートバック14のシートクッション12に対する固定角度を調節可能としている。
シートバック14は、その骨格を成す部材としてシートバックフレーム20を備える。シートバックフレーム20は、概してサイドフレーム21,21とアッパフレーム22とヘッドレストフレーム23とにより構成される。このうち、サイドフレーム21,21とアッパフレーム22は背凭れ部14Bの骨格を成し、ヘッドレストフレーム23はヘッドレスト部14Hの骨格を成す。サイドフレーム21,21は、金属板を加工した長手の部材であり、左右両側において上下方向に延びるように配設されている。アッパフレーム22は、金属製の丸パイプ部材であり、両端が下方に曲げ加工されて、左右の両サイドフレーム21,21の上端部を繋ぐように固定されている。ヘッドレストフレーム23は、金属製の丸棒部材であり、上辺と左右側辺とを有するコの字状に曲げ加工されて、両側辺下部がシートバック14のアッパフレーム22に固定されている。
シートバックフレーム20の後側には、車内で使用するモバイル機器90等の各種物品を収納可能な収納ケース40が設けられている。収納ケース40は、シート10の後方に向けた開口を有する広く浅い容器であり、その底部に設けられたクリップ42をサイドフレーム21,21の後端部に係止させることにより固定されている。
シートバック14には、シートバック14の外形を形成する部材として、パッド材24と表皮材26とを備える。パッド材24は、、着座者の背部や後頭部を受ける面等、クッション性が必要な箇所に設けられるクッション部材であり、シートバックフレーム20に被せるようにして取り付けられている。表皮材26は、上記シートバックフレーム20、パッド材24、収納ケース40を覆うように設けられた織物であり、シートバック14の外表面を構成している。
【0012】
表皮材26は、シートバック14の背面の一部を構成する上下に長い長方形部分が、以下に説明するような帯状部26Bとされている。本発明でいう帯状部材は、本実施形態におけるこの帯状部26Bが相当する。以下の説明中において、帯状部26Bの上側に隣接する部分を背面上部26U、下側に隣接する部分を背面下部26Lという。
表皮材26の帯状部26Bは、下側の約半分の部分が折り返し部分26Bbとして上方に折り返し可能となっている。すなわち折り返し部分26Bbは、左右の側辺と下辺とが周囲の表皮材26から切り離された端部となっている。帯状部26Bが上方に折り返されると、折り返す前の通常の状態においてシートバック14の内側となっていた面(裏面)が外側に露出する。一方、帯状部26Bの上側の残りの部分は、折り返されずに周囲の表皮材26と共にシートバック14の背面の一部として留まる固定部分26Baであり、上記の折り返し部分26Bbの折り返しはこの固定部分26Baの上(後側)に重ねられるようにしてなされる。固定部分26Baのうちパッド材24と接している上側の部分はパッド材24に対して一体的に固定されている。
折り返し部分26Bbは、折り返されないままシートバック14の外表面を成す通常の状態と、上方に折り返されて固定部分26Baの後側に重ねられた状態とに、線ファスナーを用いて保持可能となっている。線ファスナーは、端縁に沿って複数の歯が一列に並べられたテープと、この歯の噛み合わせ及び解除が可能なスライダとを有し、対向配置された一対のテープの端縁同士をスライダの操作により接合及び脱離可能とした公知の機構である。線ファスナーのテープ50U,50L,50Bは、表皮材26の背面上部26Uと、背面下部26Lと、帯状部26Bの折り返し部分26Bbの下端部の3箇所において、それぞれシート10の幅方向に延びるように縫い付けられている。背面上部26U及び背面下部26Lのテープ50U,50Lには、それぞれ線ファスナーのスライダ52U,52Lが取り付けられている。このようにして、折り返し部分26Bbのテープ50Bは、スライダ52Lの操作により背面下部26Lのテープ50Lに、またスライダ52Uの操作により背面上部26Uのテープ50Uに、それぞれ留めることが可能となっている。
なお、シートバック14のサイドフレーム21に固定された前記の収納ケース40は、図1に示される通常の状態において、帯状部26Bの固定部分26Baの下部から折り返し部分26Bbの下端までの範囲で開口するように配設されており、折り返し部分26Bbにより開閉される。
【0013】
帯状部26Bには、図1に示されるように2枚の樹脂板30A,30Bが張られている。この樹脂板30A,30Bが本発明でいう角度規定部材に相当する。2枚の樹脂板30A,30Bの張られる箇所は、帯状部26Bの裏面側における長手方向の中間部分であって互いに長手方向に隣接する2箇所である。以下、図1に示される通常の状態において、上に位置するものから順に第1の樹脂板30A、第2の樹脂板30Bという。第1及び第2の樹脂板30A,30Bの形状は、いずれも帯状部26Bの幅方向全体に亘る矩形板形状である。これらの樹脂板30A,30Bは布製の保持袋32の中に並べた状態で入れられて、この保持袋32の縁を帯状部26Bに縫い付けることにより帯状部26Bに固定されている。
樹脂板30A,30Bはいずれも樹脂製であって、織物である帯状部26Bよりも高い剛性を有する。このため、帯状部26Bのうち各樹脂板30A,30Bが張られた箇所の折り曲げは規制される。特に第2の樹脂板30Bは帯状部26Bの長手方向におけるちょうど中間位置を跨ぐように張られている。このため、帯状部26Bは上方に折り返されると第2の樹脂板30Bが張られた前後(通常の状態における上下)両側の位置で折れ曲がる。一方で第1の樹脂板30Aは帯状部26Bの上記中間位置から外れた位置に張られている。このため、帯状部26Bはこの第1の樹脂板30Aが張られた上側では折れ曲がらず、前記固定部分26Baの一部としてシートバック14の背面を成したままの状態に留まる。
また前記の収納ケース40の上部には、その上壁部から内側(下側)に分岐して開口内にて第1の樹脂板30Aと当接する当接部44が設けられている。第1の樹脂板30Aは収納ケース40の上開口縁とこの当接部44の上下2箇所に対し常に接触しており、帯状部26Bを上方に折り返す際においても第1の樹脂板30Aは収納ケース40内に落ち込むことがない。
【0014】
帯状部26Bの折り返し部分26Bbの露出側の面(通常の状態における裏面)には、モバイル機器90の取り付け装置60が固定されている。取り付け装置60の固定位置は、、折り返し部分26Bbのうち第2の樹脂板30Bが張られていない部分の中央部に設定されている。この取り付け装置60は、モバイル機器90をシートバック14に着脱可能とし、これにより当該シート10の背後のシートの着座者がモバイル機器90を手に持つことなく使用できるようにしたものである。図6には、この使用状態が示されている。
【0015】
取り付け装置60は、図3及び図4に示されるように、シート側構造60Sとモバイル機器側構造60Mとから構成される。
シート側構造60Sは、図3に示されるように、概して基板61、棒状金具62、及び支持板63を備える。基板61は、矩形板形状の樹脂製部材であり、棒状金具62と半円板形状の支持板63は、一体的に成形された金属製部材である。また基板61は、その縁部が帯状部26Bの取り付け面に直接縫い付けられることにより固定されており、支持板63は、基板61に埋め込まれて固定されている。棒状金具62は、支持板63によりその両端を支持されて、基板61から所定の距離に浮いた状態となっている。
モバイル機器側構造60Mは、図4に示されるように、アーム部材64、把持金具66、把持金具の保持部65、ねじ67、及びねじを回すつまみ68を備える。アーム部材64と保持部65とは一体的に成形されている。このうちアーム部材64は、上下に延びる部分であり、モバイル機器90を保持する保持具70の背面と固定されて保持具70を支持している。また保持部65は、アーム部材64の下端に設けられた部分であり、シート10側に向かって開口する空間を内部に有しており、この空間内に把持金具66を掴むようにして保持している。把持金具66は、略C字形状の断面を有する金属製部材であり、略C字形状の切れ目からその内側に棒状金具62を入れることが可能である。把持金具66は、図5に示されるように、内側に撓んで内径を小さくすることが可能であり、内側に棒状金具62が入った状態で内側に撓むことにより、摩擦により棒状金具62を把持固定することができる。ねじ67は、保持部65の下側から内部の空間までを貫通するように保持部65と螺合されており、回転により保持部65に対して上下に移動可能である。ねじ67の上端は保持部65の内部において把持金具66の外周面と接触しており、ねじ67が上に移動すると把持金具66を内側に撓ませる。ねじ67の下端にはつまみ68が設けられており、ねじ67の回転はこのつまみ68により操作される。
以上の構造により、シート側構造60Sとモバイル機器側構造60Mとを互いに固定することができる。なお把持金具66の内側に棒状金具62を入れる際のシート側構造60Sとモバイル機器側構造60Mの相対角度は変更可能である。
【0016】
取り付け装置60は、モバイル機器90の機種の形状に特化した専用の保持具70を備えている。なお本実施形態におけるモバイル機器90は、表示部兼入力部であるタッチパネル92を備えたタブレットコンピュータが想定されている。
保持具70は、図6に示されるように、モバイル機器90を立てた状態でその左右と下の縁を保持している。図4に示されるように、モバイル機器90の左右の縁に沿ってスリット94が設けられており、一方で保持具70側には左右の保持部の内側にガイドレール72が設けられている。モバイル機器90は、スリット94がガイドレール72にガイドされながら上方から保持具70に差し込まれることによって保持具70に装着される。
【0017】
以上のように構成される第1の実施形態は、以下のような作用効果を奏する。
この構成によれば、シートバック14背面の表皮材26のうち帯状部26を上方に折り返すことができ、その帯状部26Bの折り返し部分26Bbの裏面側にモバイル機器90の取り付け装置60が設けられている。このため、帯状部26を折り返す簡単な操作により取り付け装置60を取り出すことができ、よってモバイル機器90を簡単に取り付けることができる。
この構成によれば、帯状部26にこれより剛性の大きい樹脂板30A,30Bが張られて設けられており、樹脂板30A,30Bが張られた部分の帯状部26の折り曲げが規制される。特に、第2の樹脂板30Bは帯状部26Bの中間位置を跨ぐように張られており、折り返しの際にこの第2の樹脂板30Bが張られた部分の前後の位置で折れ曲がる。これにより、折り返し部分26Bbはファスナーにより背面上部26Uに留められると、残りの固定部分26Baに完全に重なり合うことなく後方に浮いた状態となり、帯状部26Bは全体として側面視において三角形の辺を成すような規定の立体的形状となる。したがって、折り返し部分26Bbのうち取り付け装置60が固定された部分の角度が規定された向きに保たれる。これにより、取り付け装置60の角度をモバイル機器90の使用に適した向きに設定することができ、使用性が向上する。
この構成によれば、物品を収納可能な収納ケース40がシートバック14内に設けられており、収納ケース40は帯状部26Bの折り返し部分26Bbの位置に合わせて開口している。このため、折り返し部分26Bbの裏面側に設けられた取り付け装置60は、折り返しを通常の状態に戻すことにより、使用しないときにはシートバック14内に収納することができる。また折り返し部分26Bbの表側の面には余分な構成が設けられていないため、折り返しを通常の状態に戻せば意匠的に周辺の表皮材26と一体化し、シートバック14の背面の意匠性を損なうことがない。また、図7に示されるように、取り付け装置60にモバイル機器90を取り付けたままで帯状部26Bの折り返しを通常の状態に戻せば、このモバイル機器90ごと収納ケース40に収納することもできる。
この構成によれば、帯状部26Bに設けられた線ファスナーのテープ50Bにより、上方に折り返された折り返し部分26Bbを背面上部26Uと背面下部26Lの両箇所のテープ50U,50Lに留めることができる。すなわち、背面上部26Uに留める場合と背面下部26Lに留める場合とで、対となるテープ(50Bと50U、50Bと50L)の片方が兼用されている。これにより、部材点数を削減することができる。
【0018】
(第1の実施形態の変形例)
上記の第1の実施形態において、背面上部26Uには線ファスナーのテープ50Uが1本のみ設けられていた。しかし図8に示されるように背面上部26Uの複数の高さ位置にテープ50U,50U,50Uを設けることにより、帯状部26Bの折り返し部分26Bbに設けられたテープ50Bをこれらのテープ50U,50U,50Uに対して選択的に留めることができる。これにより、折り返し部分26Bbに固定された取り付け装置60の高さ位置を(同図の二点鎖線で示されるように)変化させることができ、モバイル機器90を好みに応じてより最適な高さに調節した上で使用することができるという作用効果を奏する。
【0019】
(第2の実施形態)
次に、図面を参照しながら本発明を実施するための第2の形態について説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態において樹脂板30(角度規定部材)及び取り付け装置60の構成を変更した実施形態である。なお第2の実施形態のうち、シート10の基本構成、収納ケース40、線ファスナーのテープ50U,50B,50L、保持具70等、前記の第1の実施形態から実質的な変更を要しない部分については、第1の実施形態と同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0020】
シートバック14背面の表皮材26に帯状部26Bが設定されており、これを上方へ折り返し可能となっている点については第1の実施形態と同様である。しかし第2の実施形態は、第1の実施形態において帯状部26Bの中間部分に張られて設けられていた樹脂板30A,30Bを備えておらず、図10に示されるように折り返された帯状部26Bは弛んだ状態となる。第2の実施形態においてはこれに代えて、図9に示されるように、帯状部26Bのうち折り返されない固定部分26Baの中央に樹脂板130が張られて設けられている。樹脂板130の固定方法は図示されないが、第1の実施形態の樹脂板30A,30Bと同様、樹脂板130を保持袋に入れた状態で保持袋の縁部が帯状部26Bに縫い付けられることにより固定されている。
樹脂板130は、板形状を有する樹脂製の剛性部材である。樹脂板130の上には、第1の面ファスナー134が張られている。一方、帯状部26Bのうち折り返される折り返し部分26Bbにも、これと互いに張り合わせ及び引き剥がしが可能な第2の面ファスナー136が張られている。折り返し部分26Bb上の第2の面ファスナー136の固定位置は、帯状部26Bを折り返して線ファスナーにより背面上部26Uに留められた図10の状態としたときに固定部分26Ba上の第1の面ファスナー134と互いに張り合わさる対応位置に設定されている。
【0021】
図11に示されるように、帯状部26Bの折り返し部分26Bbの露出側の面(通常の状態における裏面)には、モバイル機器90の取り付け装置60が固定されている。取り付け装置60の固定位置は、面ファスナー136が張られた箇所の裏側に設定されている。取り付け装置160は、シート側構造160Sとモバイル機器側構造160Mとから構成され、互いに組み付け及び分解が可能となっている。図11は組み付け状態の断面図を、図12は分解状態の斜視図を示している。
シート側構造160Sは、本体となる概して円板形状の基板161を有する。基板161は、周縁部が中央部に比して薄くなっており、この部分が帯状部26Bの折り返し部分26Bbに対して直接縫い付けられることにより固定されている。基板161の中央には、厚みを貫通する軸孔162が形成されている。軸孔162の内周壁には、外側へ断面V字状に窪んだ内周溝163が一周に亘って形成されている。また、軸孔162が形成された周辺部の表面には、図12に示されるように、4個の位置決め穴164が形成されている。位置決め穴164の形成位置は、軸孔162を中心とする同一円上の90度ごとの位置に設定されている。
モバイル機器側構造160Mもまた、本体となる概して円板形状の基板165を有する。基板165は、図11に示されるように、モバイル機器90の保持具70の背面と固定されており、保持具70を支持している。基板165の中央の表面には、円柱形状に突出する軸166が設けられており、軸166の外周壁には、外側へ断面山形状に隆起した外周爪167が一周に亘り設けられている。組み付け状態においては、軸166が前記の軸孔162に、外周爪167が内周溝163にそれぞれ嵌合している。軸孔162の内径は、軸166の外径よりは大きいが外周爪167の最大径よりは小さく設定されている。しかしシート側構造160Sとモバイル機器側構造160Mは、いずれも可撓性を有する樹脂製の部材である。このため、両者を組み付け及び分解する際には、外周爪167を撓ませながら軸166を軸孔162内を通すことができる。
また、軸166が形成された周辺部の表面には、図12に示されるように、4個の位置決め突起168が設けられている。位置決め突起168の形成位置は、位置決め穴164と対応させて、軸166を中心とする同一円状の90度ごとの位置とされている。
【0022】
以上のように構成される第2の実施形態は、前記の第1の実施形態と同様の作用効果とともに、以下のような作用効果を奏する。
この構成によれば、シートバック14背面の表皮材26の帯状部26Bのうち、折り返されない固定部分26Baに剛性を有する樹脂板130が張られて設けられている。また、折り返しにより折り返し部分26Bbが固定部分26Baに重ねられると、それぞれに張られて設けられた面ファスナー134,136が互いに接着する。第1の面ファスナー134は樹脂板130の上に張られており、モバイル機器90の取り付け装置70は第2の面ファスナーが張られた部分の裏側に固定されている。このため、図10に示されるように、取り付け装置60の角度が樹脂板130の剛性により規定のの向きに保たれる。これにより、取り付け装置60の角度をモバイル機器90の使用に適した向きに設定することができ、使用性が向上する。
またこの構成によれば、取り付け装置160には、互いに嵌合する位置決め突起168及び位置決め穴164を備えている。組み付け状態においては位置決め突起168が位置決め穴164に嵌合しており、基本的にはシート側構造160Sとモバイル機器側構造160Mの相対回転はできない。しかし、組み付け状態のままでも位置決め突起168を撓ませながら回転させることが可能であり、90度ごとの4方向に位置決め固定することができる。これにより、図13に矢印にて示されるように、モバイル機器90の使用に際して90度ごとの好みの向きに回転させることができる。この効果は、モバイル機器90が自身の姿勢をリアルタイムで検知し、これに応じてタッチパネル92の表示内容を自動で可読方向に切り替える機能を有する場合において特に有効となる。
【0023】
なお、本発明に係る車両用シートは、上記の第1及び第2の実施形態に限定されるものではなく、その他各種の形態で実施できるものである。
第1及び第2の実施形態において、帯状部26Bはシートバック14の背面において上下方向に延設されているが、下部が上方に折り返し可能とされていれば、左右の幅よりも上下の長さのほうが長くなっている必要はない。また、その形状は矩形である必要はない。
第1及び第2の実施形態において、帯状部26Bに張られて設けられる樹脂板30A,30B,130は板形状を有するものであった。しかし帯状部26Bに固定される取り付け装置60の角度を規定の向きに設定する限りにおいて、ブロック状、棒状等の種々の形状の樹脂板としても良い。
第1及び第2の実施形態において、折り返し部分26Bbの下端はシートバック14の背面上部26U及び背面下部26Lに対して線ファスナーにより留められるものであった。しかしこれに代えて、スナップボタンや面ファスナー等の着脱可能な種々のファスナーを用いてもよい。
【符号の説明】
【0024】
10 (車両用)シート
12 シートクッション
14 シートバック
14B 背凭れ部
14H ヘッドレスト部
20 シートバックフレーム
21 サイドフレーム
22 アッパフレーム
23 ヘッドレストフレーム
24 パッド材
26 表皮材
26U 背面上部
26L 背面下部
26B 帯状部
26Ba 固定部分
26Bb 折り返し部分
30A 第1の樹脂板(第1の実施形態)
30B 第2の樹脂板(第1の実施形態)
32 保持袋
130 樹脂板(第2の実施形態)
134 第1の面ファスナー
136 第2の面ファスナー
40 収納ケース
42 クリップ
44 当接部
50B,50L,50U テープ
52L,52U スライダ
60 取り付け装置(第1の実施形態)
60S シート側構造
61 基板
62 棒状金具
63 支持板
60M モバイル機器側構造
64 アーム部材
65 保持部
66 把持金具
67 ねじ
68 つまみ
160 取り付け装置(第2の実施形態)
160S シート側構造
161 基板
162 軸孔
163 内周溝
164 位置決め穴
160M モバイル機器側構造
165 基板
166 軸
167 外周爪
168 位置決め突起
70 保持具
72 ガイドレール
90 モバイル機器
92 タッチパネル
94 スリット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者の背凭れとなるシートバックと、
該シートバックの後側にモバイル機器の保持手段とを備える車両用シートであって、
前記保持手段は、
シートバックの後側に上下方向に延設される帯状部材と、
該帯状部材の下部を上方へ折り返し下端をシートバック上部に固定する固定部材と、
前記帯状部材の折り返された部分に取り付けられたモバイル機器の取り付け装置と、
前記取り付け装置の取り付け角度を規定する角度規定部材とを有することを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記角度規定部材は前記帯状部材に設けられた板状の剛性部材であることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートであって、
前記板状の剛性部材は前記帯状部材の上下方向の中間部分に張られて設けられており、前記帯状部材は折り返されたとき前記剛性部材が張られた箇所の前後位置で折れ曲がった状態となることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−112034(P2013−112034A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257368(P2011−257368)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】