説明

車両用シート

【課題】乗員の体重差における乗り心地性能を簡易な構成で向上する。
【解決手段】車両用シート10では、サポートスプリング100の連結部108は、バックシェル62の係合ブラケット70に係合可能に構成され、クッションシェル32が下方へ基準値以上移動することで、係合ブラケット70が連結部108に係合する。このため、クッションシェル32の移動量が基準値未満の場合に、サポートパッド40からクッションシェル32へ弾性力が作用する。一方、クッションシェル32の移動量が基準値以上の場合に、サポートパッド40による弾性力及びサポートスプリング100による付勢力がクッションシェル32、バックシェル62に作用する。このため、サポートパッド40を変更せずに、着座する乗員の体重に応じてクッションシェル32及びバックシェル62を支持する力を変更できる。したがって、乗員の体重差における乗り心地性能を簡易な構成で向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッションシェルと連結されたバックシェルを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の車両用シートでは、クッションフレームの上方にクッションシェルが設けられている。クッションシェルは、車体に対して上下方向に移動自在に構成されると共に、クッションサポートパッドに支持されている。また、バックフレームにはバックシェルが移動可能に設けられており、バックシェルとクッションシェルとがヒンジを介して連結されている。
【0003】
クッションシェルに乗員が着座した際には、クッションサポートパッドが弾性変形することで、クッションサポートパッドからクッションシェルに弾性力が作用して、車体からクッションシェルへ入力された振動等が吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−526425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この車両用シートでは、クッションサポートパッドの弾性力によりクッションシェルが支持されている。このため、着座する乗員の体重が重い場合には、クッションサポートパッドにおける沈み込み量が大きくなるため、乗員に対する乗り心地性能が悪化する可能性がある。そこで、例えば、乗員の体重に応じてクッションサポートパッドを交換すると、大掛りな作業となる。これにより、乗員の体重差に対する乗り心地性能を簡易な構成で対応できることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、乗員の体重差における乗り心地性能を簡易な構成で向上できる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の車両用シートは、シートクッションフレームに連結された支持部材に弾性体を介して支持されると共に、前記弾性体の弾性変形に追従して移動可能に設けられたクッションシェルと、前記シートクッションフレームの車両後方端部に連結されたシートバックフレームに上下方向において移動可能に設けられ、前記クッションシェルと連結されたバックシェルと、前記クッションシェルの下方に設けられ、前記クッションシェルが下方へ移動することで弾性変形して前記クッションシェルへ弾性力を付与する弾性体と、前記バックシェルと係合可能に構成され、前記バックシェルが下方へ基準値以上移動することで前記バックシェルと係合して前記バックシェルへ上方への付勢力を付与する付勢部材と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の車両用シートでは、クッションシェルが、シートクッションフレームに連結された支持部材に弾性体を介して支持されている。また、シートバックフレームにはバックシェルが上下方向において移動可能に設けられており、バックシェルはクッションシェルに連結されている。
【0009】
このため、クッションシェルに乗員が着座すると、クッションシェルが弾性体を下方へ押圧して、弾性体が弾性変形するため、弾性体の弾性変形に追従してクッションシェルがバックシェルと共に下方へ移動する。これにより、弾性体からクッションシェルに弾性力が付与される。
【0010】
ここで、付勢部材がバックシェルに係合可能に構成されている。また、バックシェルが下方へ基準値以上移動されることで、付勢部材がバックシェルと係合して、付勢部材からバックシェルに上方への付勢力が付与される。
【0011】
これにより、クッションシェル及びバックシェルの下方への移動量が基準値未満の場合には、弾性体による弾性力がクッションシェルに作用する。一方、クッションシェル及びバックシェルの下方への移動量が基準値以上の場合には、弾性体による弾性力がクッションシェルに作用すると共に、付勢部材による付勢力がバックシェルに作用する。このため、クッションシェルの下方への移動量に応じて、クッションシェル及びバックシェルを支持する力を変更できる。つまり、弾性体を変更することなく、乗員の体重差に応じてクッションシェル及びバックシェルを支持する力を変更できる。
【0012】
請求項2に記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記バックシェルに設けられ、前記付勢部材と係合可能に構成された係合部を備え、前記付勢部材の一端部が前記シートバックフレームに係止され、前記バックシェルが下方へ基準値以上移動することで前記付勢部材の他端部が前記係合部と係合する。
【0013】
請求項2に記載の車両用シートでは、バックシェルに係合部が設けられており、係合部は付勢部材と係合可能に構成されている。また、シートバックフレームに付勢部材の一端部が係止されており、バックシェルが下方へ基準値以上移動されることで、付勢部材の他端部が係合部と係合される。
【0014】
これにより、シートバック内に付勢部材を収容した状態で、バックシェル及びクッションシェルに付勢部材の付勢力を作用させることができる。
【0015】
請求項3に記載の車両用シートは、請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記シートバックフレームに設けられると共に、前記他端部が前記係合部に係合可能にされる係合位置と前記他端部が前記係合部と係合不能にされる退避位置との間で前記他端部の位置を切替可能に構成された切替機構を備えている。
【0016】
請求項3に記載の車両用シートでは、シートバックフレームに切替機構が設けられている。ここで、付勢部材の他端部が係合部に係合される係合位置と付勢部材の他端部が係合部に係合不能にされる退避位置との間で、切替機構が付勢部材の他端部の位置を切替える。このため、切替機構によって、付勢部材をバックシェルに係合させるか否かを選択できる。
【0017】
請求項4に記載の車両用シートは、請求項3に記載の車両用シートにおいて、前記切替機構は、前記シートバックフレームに回転可能に支持されると共に、前記他端部が係合解除可能に係合され、回転されることで前記他端部を前記係合位置または前記退避位置へ配置させる回転部と、前記回転部と連結され、操作されることで前記回転部を回転させるレバー部と、を含んで構成されている。
【0018】
請求項4に記載の車両用シートでは、切替機構が回転部とレバー部とを含んで構成されている。回転部は、シートバックフレームに回転可能に支持されており、レバー部が回転部に連結されている。また、回転部には、付勢部材の他端部が係合解除可能に係合されており、レバーが操作されて、回転部が回転されることで、付勢部材の他端部が係合位置又は退避位置に配置される。これにより、簡易な構成で、付勢部材を係合位置又は退避位置に切替えできる。
【0019】
請求項5に記載の車両用シートは、請求項4に記載の車両用シートにおいて、前記回転部に係合され、前記係合位置と前記退避位置との間の中間位置に対して前記回転部が前記係合位置側へ回転される際に前記係合位置側への回転力を付与すると共に前記回転部が前記中間位置に対して前記退避位置側へ回転される際に前記退避位置側への回転力を付与する回転力付与部材を備えている。
【0020】
請求項5に記載の車両用シートでは、回転部に回転力付与部材が係合されている。また、係合位置と退避位置との間の中間位置に対して係合位置側へ回転部が回転される際には、回転力付与部材によって回転部材に係合位置側への回転力が付与される。さらに、中間位置に対して退避位置側へ回転部が回転される際には、回転力付与部材によって回転部材に退避位置側への回転力が付与される。
【0021】
このため、中間位置を境界として係合位置側又は退避位置側へ回転部が回転された際には、回転部に回転力が作用して、当該回転力によって回転部が回転される。これにより、当該回転力によってレバー部の操作を補助することができ、付勢部材の他端部を退避位置又は係合位置に確実に配置させることができる。
【0022】
請求項6に記載の車両用シートは、請求項5に記載の車両用シートにおいて、前記回転力付与部材が前記付勢部材により構成されている。
【0023】
請求項6に記載の車両用シートでは、回転力付与部材が付勢部材により構成されているため、付勢部材の付勢力を利用して、回転部に回転力を付与できる。これにより、コストアップを抑制しつつ、レバーの操作を補助することができ、付勢部材の他端部を確実に切替えることができる。
【0024】
請求項7に記載の車両用シートは、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記付勢部材は並列に配置された2つのバネ部を有し、各々の前記バネ部の一端部が前記シートバックフレームに係止されると共に、前記バネ部の他端部が連結部によって連結され、前記連結部が前記バックシェルに係合可能に構成されている。
【0025】
請求項7に記載の車両用シートでは、付勢部材が2つのバネ部を有しており、バネ部は並列に配置されている。これにより、バネ部が作用する付勢力を小さくできるため、バネ部の設計自由度を広げることができる。
【0026】
また、バネ部の一端部は、シートバックフレームに係止されている。さらに、バネ部の他端部は、連結部によって連結されており、連結部はバックシェルに係合可能に構成されている。このため、連結部によって、2つのバネ部を一体に構成できるため、付勢部材を組付ける際の組付性を向上できる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に記載の車両用シートによれば、乗員の体重差における乗り心地性能を簡易な構成で向上できる。
【0028】
請求項2に記載の車両用シートによれば、シートバック内のスペースを利用して、付勢部材を効率よく配置できる。
【0029】
請求項3に記載の車両用シートによれば、付勢部材をバックシェルに係合させるか否かを選択できる。
【0030】
請求項4に記載の車両用シートによれば、簡易な構成で、付勢部材を係合位置又は退避位置に切替えできる。
【0031】
請求項5に記載の車両用シートによれば、レバーの操作を補助することができ、付勢部材の他端部を退避位置又は係合位置に確実に配置させることができる。
【0032】
請求項6に記載の車両用シートによれば、コストアップを抑制しつつ、レバーの操作を補助することができ、付勢部材の他端部を確実に切替えることができる。
【0033】
請求項7に記載の車両用シートによれば、バネ部の設計自由度を広げることができ、付勢部材を組付ける際の組付性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用シートに用いられるサポートスプリングが係合位置に配置された状態を示す車両左方から見た縦断面図である。
【図2】図1に示される車両用シートを示す車両左斜め前方から見た一部破断した斜視図である。
【図3】図2に示される車両用シートに用いられるシートバックの要部を車両斜め後方から見た斜視図である。
【図4】図2に示される車両用シートを車両左方から見た縦断面図である。
【図5】図1に示されるサポートスプリングが退避位置に配置された状態を示す車両左方から見た縦断面図である。
【図6】図1に示されるサポートスプリングと係合ブラケットとが係合された状態を示す車両左方から見た縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図2には、本発明の実施の形態に係る車両用シート10の全体が車両左斜め前方から見た一部破断した斜視図にて示されている。なお、図面に適宜示される矢印FRは車両前方を示し、矢印RHは車両右方(車幅方向一側)を示し、矢印UPは上方を示す。
【0036】
この図に示すように、車両用シート10は、乗員が着座するシートクッション30と、乗員の背部を支持するシートバック50と、シートクッション30を車体フロアに連結する連結機構12とを有している。
【0037】
連結機構12は、車両用シート10の下部を構成している。連結機構12は、一対の長尺状のガイドレール14を有しており、ガイドレール14の長手方向両端部が、一対のレッグブラケット16を介して、車両の車体フロアに固定されている。ガイドレール14は車両前後方向に沿って平行に配置されている。
【0038】
一対のガイドレール14内には、長尺状のアッパーレール(図示省略)がそれぞれ設けられており、アッパーレールはガイドレール14に対して車両前後方向にスライド移動可能に構成されている。このアッパーレールの上方には、シートクッションフレーム18がそれぞれ設けられている。シートクッションフレーム18は、板金により製作されており、シートクッションフレーム18の下部が、図示しないボルト及びナット等の締結部材によってアッパーレールに固定されている。これにより、シートクッションフレーム18は、アッパーレールと一体に車両前後方向に移動可能に構成されている。
【0039】
シートクッションフレーム18の車両後方端部には、板金により製作されたヒンジブラケット20が設けられており、ヒンジブラケット20は、図示しないボルト及びナット等の締結部材によってシートクッションフレーム18に締結されている。ヒンジブラケット20の上部には、後述するシートバック50を傾倒可能に支持するための周知のリクライニング機構22が設けられている。
【0040】
また、シートクッションフレーム18には、ヒンジブラケット20に対して車両前方の位置において、後述するシートクッション30を連結(支持)するための一対のリンク24がそれぞれ設けられており、リンク24の下端部がシートクッションフレーム18に回転可能に支持されている。
【0041】
一対のシートクッションフレーム18の間には、支持部材としてのサポートパネル26が設けられている。サポートパネル26は、略矩形板状に形成されて、一対のシートクッションフレーム18に掛け渡(連結)されている。
【0042】
シートクッション30は、シートクッションフレーム18の上方に設けられている。シートクッション30は、クッションシェル32を有しており、クッションシェル32は、板金により製作されて略板状に形成されている。クッションシェル32の下側部には、前述したリンク24の上端部が回転可能に連結されており、これにより、クッションシェル32が上下方向及び車両前後方向に移動可能に構成されている。また、クッションシェル32の車両後方端部には、後述するバックシェル62を連結するためのクッション側ヒンジ部34が設けられている。さらに、クッションシェル32の上方には、ウレタンパッド36が設けられている。このウレタンパッド36の厚さ寸法は比較的薄く設定されており、ウレタンパッド36は表皮38によって被覆されている。
【0043】
一方、クッションシェル32とサポートパネル26との間には、弾性体としてのサポートパッド40が設けられている。サポートパッド40は、軟質発泡合成樹脂等で製作されると共に、略直方体状に形成されて、クッションシェル32及びサポートパネル26に当接されている。これにより、クッションシェル32は、サポートパッド40を介してサポートパネル26に支持されており、クッションシェル32に乗員が着座すると、クッションシェル32がサポートパッド40を下方へ押圧することで、サポートパッド40が弾性変形する。この際には、サポートパッド40の弾性変形に追従して、クッションシェル32が下方へ移動すると共に、サポートパッド40からクッションシェル32へ上方への弾性力が作用する(付与される)ように構成されている。また、このサポートパッド40では、設定体重の乗員がシートクッション30に着座する際に、クッションシェル32の下方への移動量が基準値未満になるように設定されている。換言すると、設定体重に比べて体重の重い乗員がシートクッション30に着座する際には、クッションシェル32の下方への移動量が基準値以上になるように設定されている。
【0044】
次に、本発明の要部であるシートバック50の構成について説明する。図3及び図4に示すように、シートバック50は、シートバックフレーム52と、バックシェル62と、切替機構80と、付勢部材及び回転力付与部材としてのサポートスプリング100と、を有している。なお、図3には、便宜上、バックシェル62が図示省略されている。
【0045】
シートバックフレーム52は、シートバック50の骨格部材として構成されている。シートバックフレーム52は、車幅方向両側の部分において、一対のサイドフレーム54を有している。このサイドフレーム54は、板金により製作されて、略上下方向に延設されている。サイドフレーム54の下端部には、前述したリクライニング機構22が連結されており、これにより、シートバックフレーム52がリクライニング機構22及びヒンジブラケット20を介してシートクッションフレーム18に連結されている。
【0046】
一対のサイドフレーム54の下部には、後述する回転リンク82を支持するための円形状の支持孔(図示省略)が貫通形成されている。また、車両左方に配置されたサイドフレーム54には、支持孔の上方の位置において、ガイド溝56が貫通形成されており、ガイド溝56は支持孔の周方向に沿って湾曲して形成されている。
【0047】
シートバックフレーム52には、上部において、アッパーフレーム58が設けられている。アッパーフレーム58は、パイプ材により製作されて、車両前方から見て略逆U字形状に屈曲されている。アッパーフレーム58の両端部は、サイドフレーム54の上端部に溶接等によって結合されている。
【0048】
また、シートバックフレーム52は、後述するサポートスプリング100の上端部(一端部)を係止するための係止ワイヤ60を有している。係止ワイヤ60は、断面円形状に形成されて、車幅方向に沿って延設されており、係止ワイヤ60の長手方向両端部がサイドフレーム54の上端部に溶接等によって結合されている。
【0049】
図2に示すように、バックシェル62は、板金により製作されると共に、略板状に形成されている。このバックシェル62はシートバック50の中央部に配置されると共に、シートバックフレーム52に設けられたバックシェル支持機構(図示省略)にシートバックフレーム52に対して移動可能に支持されている。これにより、バックシェル62が上下方向及び車両前後方向へ移動可能に構成されている。また、バックシェル62には、下端部において、バック側ヒンジ部64が設けられており、バック側ヒンジ部64はクッション側ヒンジ部34と回転可能に連結されている。これにより、バックシェル62がクッションシェル32に連結されて、クッションシェル32が上下方向及び車両前後方向へ移動する際には、クッションシェル32と共にバックシェル62が移動するように構成されている。
【0050】
バックシェル62の車両前方部分には、ウレタンパッド66が設けられている。このウレタンパッド66の厚さ寸法は比較的薄く設定されており、ウレタンパッド66は表皮68によって被覆されている。
【0051】
図4に示すように、バックシェル62の車両後方部分には、中央部において、係合部としての係合ブラケット70が設けられており、係合ブラケット70は、側面視において略クランク状に形成されている。係合ブラケット70には、上部において、固定壁72が設けられており、固定壁72はバックシェル62と平行に配置されて、バックシェル62に固定されている。また、係合ブラケット70には、下部において、フック部74が設けられている。フック部74は、固定壁72の下端から車両後方へ延設された上壁76と、この上壁76の車両後方端から下方へ延設された側壁78と、で構成されている。また、側壁78は、下方へ向かうに従いバックシェル62から離間される方向(車両後方)へ傾斜されており、フック部74が下方へ開放されている。さらに、バックシェル62から側壁78までの距離は、後述するサポートスプリング100の線径に比して大きく設定されている。
【0052】
図3及び図4に示すように、切替機構80は、シートバックフレーム52の下部に設けられている。この切替機構80は、回転部としての回転リンク82とレバー部としての操作レバー86とを有している。
【0053】
回転リンク82は、断面円形の棒状部材により形成されると共に、車幅方向に沿って延設されており、回転リンク82の両端部が、サイドフレーム54の支持孔に回転可能に支持されている。回転リンク82の車幅方向中間部は、車両前方から見て、略U字形状に屈曲されており、この回転リンク82の車幅方向中間部が係止部84とされている。
【0054】
操作レバー86は、シートバックフレーム52の車両左方に配置されると共に、シートバック50の表皮68から露出されるように設けられている。操作レバー86には、下部において、略円柱形状の支持部88が設けられている。支持部88は、回転リンク82の車両左側端部と同軸上に配置されると共に、回転リンク82の車両左側端部に連結されている。また、操作レバー86には、上部において、略直方体状の取手部90が設けられており、取手部90は、支持部88と一体に形成されると共に、支持部88から上方へ突出されている。これにより、操作レバー86を回転させることで、回転リンク82が回転方向一側(図3に示す矢印A方向)及び回転方向他側(図3に示す矢印B方向)へ回転されるように構成されている。
【0055】
また、取手部90には、サイドフレーム54側の部分において、図示しないボスが設けられている。このボスは、取手部90からサイドフレーム54側へ突出されて、サイドフレーム54のガイド溝56内に配置されている。これにより、操作レバー86が回転された際に、ボスがガイド溝56の内周部に当接することで、操作レバー86及び回転リンク82の回転範囲が設定されている。さらに、回転リンク82の回転範囲では、回転リンク82の係止部84が回転リンク82の回転中心に対して下方に配置されている。つまり、側面視において、係止ワイヤ60と回転リンク82の係止部84との間に、回転リンク82の回転中心が配置されている。
【0056】
サポートスプリング100は、バックシェル62の車両後方に設けられている。サポートスプリング100は、断面円形状の線材により製作されると共に、車両前方から見て、略U字形状に形成されている。サポートスプリング100の上端部(一端部)には、一対の上側フック102が設けられており、上側フック102は側面視において略逆U字形状に屈曲されて、下方へ開放されている。この上側フック102内にはシートバックフレーム52の係止ワイヤ60が配置されており、これにより、サポートスプリング100の上端部(一端部)が係止ワイヤ60に係止されている。
【0057】
サポートスプリング100には、上側フック102の下方において、一対のバネ部104が設けられている。一対のバネ部104は、引張バネとして構成されて、車幅方向に並列に配置されている。また、サポートスプリング100には、バネ部104の下方において、一対の下側フック106が設けられており、下側フック106は、側面視において略V字形状に屈曲されて、上方へ開放されている。そして、一対のバネ部104が自然状態(付勢力が作用していない状態)から伸張された状態で、下側フック106内に回転リンク82の係止部84が配置されている。これにより、下側フック106から係止部84にサポートスプリング100の付勢力が作用している状態で、下側フック106が係止部84に係止(係合)されている。したがって、回転リンク82が回転する際には、回転リンク82と共に下側フック106が移動されるため、サポートスプリング100が係止ワイヤ60の軸周りに回転するように構成されている。
【0058】
また、サポートスプリング100の下端部(他端部)には、連結部108が設けられている。この連結部108は車幅方向に沿って延設されており、連結部108の車幅方向両端部が下側フック106に接続されている。
【0059】
ここで、図1に示すように、回転方向一側(矢印A方向側)へ回転リンク82が最も回転された際には、バックシェル62の係合ブラケット70の下方に連結部108が配置されるように設定されている(以下この位置を「係合位置」と称する)。また、この際には、係合ブラケット70のフック部74(上壁76)からサポートスプリング100の連結部108までの上下方向の距離が、クッションシェル32の下方への移動量における基準値と同じ値に設定されている。これにより、係合位置において、クッションシェル32が下方へ基準値以上移動されることで、クッションシェル32と共にバックシェル62が下方へ移動して、係合ブラケット70のフック部74が連結部108に係合するように構成されている(図6参照)。
【0060】
また、図5に示すように、回転方向他側(矢印B方向側)へ回転リンク82が最も回転された際には、係合ブラケット70に対して車両後方かつ下方に連結部108が配置されるように設定されている(以下この位置を「退避位置」と称する)。これにより、退避位置においてクッションシェル32及びバックシェル62が下方へ移動しても、係合ブラケット70のフック部74が連結部108と係合不能に構成されている。
【0061】
さらに、図1及び図5に示すように、側面視において、係止ワイヤ60(サポートスプリング100の上側フック102)と回転リンク82の係止部84(サポートスプリング100の下側フック106)との間に回転リンク82の回転中心が配置されている。また、サポートスプリング100が係合位置に回転された際には、係止ワイヤ60の軸心と回転リンク82の回転中心とを結ぶ境界線CLに対して、回転リンク82の係止部84が車両前方へ配置されるように設定されている(図1参照)。さらに、サポートスプリング100が待機位置に配置された際には、境界線CLに対して、係止部84が車両後方へ配置されるように設定されている(図5参照)。
【0062】
つまり、回転リンク82が係合位置と待機位置との間で回転する際には、サポートスプリング100から回転リンク82の係止部84に作用する付勢力の方向が、回転リンク82の回転中心へ向かう方向と一致する位置(以下、この位置を「中間位置」と称する)を通過するように構成されている。
【0063】
次に、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0064】
初めに、設定体重の乗員が車両用シート10に着座する場合について説明する。この場合では、回転リンク82及び操作レバー86が退避位置に配置されている。このため、サポートスプリング100の連結部108が、バックシェル62の係合ブラケット70に対して車両後方かつ下方へ配置されているため、係合ブラケット70のフック部74が連結部108に係合不能にされている。
【0065】
この状態で、乗員がシートクッション30に着座すると、乗員の体重によってクッションシェル32がサポートパッド40を下方へ押圧して、サポートパッド40が弾性変形する。このため、サポートパッド40の弾性変形に追従して、クッションシェル32及びバックシェル62が下方へ移動すると共に、サポートパッド40からクッションシェル32へ上方への弾性力が作用する(付与される)。
【0066】
この際には、乗員の体重が設定の範囲内の体重であるため、クッションシェル32の下方への移動量が基準値未満となり、この状態におけるクッションシェル32の下方への変位可能量が十分確保されている。これにより、サポートパッド40からクッションシェル32へ作用する弾性力によってクッションシェル32及びバックシェル62が支持されて、車体フロアからクッションシェル32及びバックシェル62へ入力された振動等を吸収できる。
【0067】
次に、設定体重に比べて体重の重い乗員が車両用シート10に着座する場合について説明する。この場合には、乗員がシートクッション30に着座する前に、操作レバー86を退避位置から係合位置へ回転させる。操作レバー86が回転されると、操作レバー86と共に回転リンク82が回転する。
【0068】
また、回転リンク82の係止部84には、サポートスプリング100の下側フック106が係止(係合)されているため、回転リンク82と共に下側フック106が移動することで、シートバックフレーム52の係止ワイヤ60の軸回りにサポートスプリング100が回転する。これにより、サポートスプリング100が退避位置から係合位置へ回転されて、サポートスプリング100の連結部108が係合ブラケット70の下方へ配置される(図1参照)。
【0069】
ここで、サポートスプリング100の連結部108は、バックシェル62の係合ブラケット70のフック部74に係合可能に構成されている。また、この状態で、設定体重に比べて体重の重い乗員がシートクッション30に着座すると、クッションシェル32が下方へ基準値以上移動するため、クッションシェル32と共にバックシェル62が下方へ基準値以上移動して、係合ブラケット70のフック部74とサポートスプリング100の連結部108とが係合する(図6参照)。このため、連結部108が回転リンク82の係止部84から下方へ離間されて(連結部108と係止部84との係合が解除されて)、サポートスプリング100からバックシェル62へ上方への付勢力が作用する(付与される)。これにより、サポートパッド40による弾性力及びサポートスプリング100による付勢力がクッションシェル32及びバックシェル62に作用するため、クッションシェル32が必要以上に下方へ移動することが抑制される。したがって、この状態においても、クッションシェル32の下方への変位可能量が十分確保されており、サポートパッド40による弾性力及びサポートスプリング100による付勢力によってクッションシェル32及びバックシェル62が支持されて、車体フロアからクッションシェル32へ入力された振動等を吸収できる。
【0070】
以上説明したように、クッションシェル32の下方への移動量が基準値未満の場合には、サポートパッド40からクッションシェル32及びバックシェル62へ上方への弾性力が作用する。一方、クッションシェル32及びバックシェル62の下方への移動量が基準値以上の場合には、サポートパッド40による弾性力及びサポートスプリング100による付勢力がクッションシェル32及びバックシェル62に作用する。このため、クッションシェル32(バックシェル62)の下方への移動量に応じて、クッションシェル32及びバックシェル62に作用する力を変更できる。つまり、サポートパッド40を変更せずに、クッションシェル32に着座する乗員の体重に応じて、クッションシェル32及びバックシェル62を支持する力を変更できる。したがって、乗員の体重差における乗り心地性能を簡易な構成で向上できる。
【0071】
また、上述のように、バックシェル62には、係合ブラケット70が設けられており、係合位置において、サポートスプリング100の連結部108に係合ブラケット70のフック部74が係合可能に構成されている。また、サポートスプリング100の上端部(一端部)には、一対の上側フック102が設けられており、上側フック102がシートバックフレーム52の係止ワイヤ60に係止されている。そして、バックシェル62が下方へ基準値以上移動することで、サポートスプリング100の連結部108が係合ブラケット70のフック部74と係合される。
【0072】
これにより、シートバック50内にサポートスプリング100を収容した状態で、バックシェル62及びクッションシェル32にサポートスプリング100の付勢力を作用させることができる。したがって、シートバック50内のスペースを利用して、効率よくサポートスプリング100を配置できる。
【0073】
さらに、シートバックフレーム52の下部には、切替機構80が設けられており、切替機構80によって、サポートスプリング100の連結部108の位置が係合位置と退避位置との間で切替えられる。このため、サポートスプリング100をバックシェル62に係合させるか否かを選択できる。
【0074】
また、切替機構80の回転リンク82には、サポートスプリング100の連結部108が係合解除可能に係合されており、切替機構80の操作レバー86が操作されて、回転リンク82が回転されることで、連結部108の位置が係合位置又は退避位置に配置される。これにより、簡易な構成で、サポートスプリング100を係合位置又は退避位置に切替えできる。
【0075】
さらに、回転リンク82が係合位置と待機位置との間で回転する際には、回転リンク82が中間位置を通過する。この中間位置では、回転リンク82に回転中心方向への力が作用しているため、回転リンク82に回転力が作用しない。これにより、中間位置に対して係合位置側にサポートスプリング100が回転される際には、サポートスプリング100が回転リンク82に作用する付勢力の方向が、回転リンク82の回転中心へ向かう方向とずれるため、サポートスプリング100の付勢力によって回転リンク82に回転方向一側への回転力が作用する(付与される)。一方、サポートスプリング100が中間位置に対して待機位置側に回転される際には、サポートスプリング100が回転リンク82に作用する付勢力の方向が、回転リンク82の回転中心へ向かう方向とずれるため、サポートスプリング100の付勢力によって回転リンク82に回転方向他側への回転力が作用する(付与される)。
【0076】
これにより、中間位置を境界として係合位置側又は退避位置側へ回転リンク82が回転された際には、サポートスプリング100の付勢力による回転力によって回転リンク82が回転される。これにより、この回転力によって操作レバー86の操作を補助することができ、サポートスプリング100の連結部108を退避位置又は係合位置に確実に配置させることができる。
【0077】
また、サポートスプリング100の付勢力によって、回転力が回転リンク82に作用するため、回転リンク82に回転力を付与する部材を別途設けることなく、サポートスプリング100の付勢力を利用して回転リンク82に回転力を付与できる。これにより、コストアップを抑制しつつ、操作レバー86の操作を補助することができ、サポートスプリング100の連結部108を退避位置又は係合位置に確実に切替えることができる。
【0078】
さらに、サポートスプリング100は、並列に配置された2つのバネ部104を有している。このため、バネ部104における荷重を低くできるため、バネ部104の設計自由度を広げることができる。また、連結部108によって2つのバネ部104の下端が連結されているため、サポートスプリング100を組付ける際の組付性を向上できる。
【0079】
なお、本実施の形態では、サポートスプリング100のバネ部104は引張バネにより構成されている。これに替えて、サポートスプリング100を圧縮バネ又はトーションバネにより構成してもよい。この場合には、例えば、サポートスプリング100の一端部をシートバックフレーム52に固定させて、サポートスプリング100の他端部を係合ブラケットに係合可能に構成してもよい。
【0080】
また、本実施の形態では、切替機構80によって、サポートスプリング100が係合位置又は退避位置に切替可能に構成されている。これに替えて、サポートスプリング100が係合位置に配置されると共に、切替機構80の回転リンク82を回転不能(切替不能)に構成してもよい。
【0081】
さらに、本実施の形態では、操作レバー86を手動操作することで、回転リンク82が回転されるように構成されている。これに替えて、回転リンク82が自動で回転されるように構成してもよい。この場合には、例えば、操作レバー86と回転リンク82との間にモータ及びギヤにより構成された連動機構を設ける。また、操作レバー86が操作されてモータが回転することで、ギヤの回転により回転リンク82が回転されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 車両用シート
18 シートクッションフレーム
26 サポートパネル(支持部材)
32 クッションシェル
40 サポートパッド(弾性体)
52 シートバックフレーム
62 バックシェル
70 係合ブラケット(係合部)
80 切替機構
82 回転リンク(回転部)
86 操作レバー(レバー部)
100 サポートスプリング(付勢部材、回転力付与部材)
104 バネ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションフレームに連結された支持部材に弾性体を介して支持されると共に、前記弾性体の弾性変形に追従して移動可能に設けられたクッションシェルと、
前記シートクッションフレームの車両後方端部に連結されたシートバックフレームに上下方向において移動可能に設けられ、前記クッションシェルと連結されたバックシェルと、
前記バックシェルと係合可能に構成され、前記バックシェルが下方へ基準値以上移動することで前記バックシェルと係合して前記バックシェルへ上方への付勢力を付与する付勢部材と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記バックシェルに設けられ、前記付勢部材と係合可能に構成された係合部を備え、
前記付勢部材の一端部が前記シートバックフレームに係止され、前記バックシェルが下方へ基準値以上移動することで前記付勢部材の他端部が前記係合部と係合する請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記シートバックフレームに設けられると共に、前記他端部が前記係合部に係合可能にされる係合位置と前記他端部が前記係合部と係合不能にされる退避位置との間で前記他端部の位置を切替可能に構成された切替機構を備えた請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記切替機構は、
前記シートバックフレームに回転可能に支持されると共に、前記他端部が係合解除可能に係合され、回転されることで前記他端部を前記係合位置または前記退避位置へ配置させる回転部と、
前記回転部と連結され、操作されることで前記回転部を回転させるレバー部と、
を含んで構成された請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記回転部に係合され、前記係合位置と前記退避位置との間の中間位置に対して前記回転部が前記係合位置側へ回転される際に前記係合位置側への回転力を付与すると共に前記回転部が前記中間位置に対して前記退避位置側へ回転される際に前記退避位置側への回転力を付与する回転力付与部材を備えた請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記回転力付与部材が前記付勢部材により構成された請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記付勢部材は並列に配置された2つのバネ部を有し、各々の前記バネ部の一端部が前記シートバックフレームに係止されると共に、前記バネ部の他端部が連結部によって連結され、前記連結部が前記バックシェルに係合可能に構成された請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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