説明

車両用ステップ装置

【課題】フェンダーを兼用するステップ本体の踏面の面積を、ステップ状態である時に大きくできる車両用ステップ装置を提供する。
【解決手段】車体4に取り付けられるフェンダー兼用のステップ本体10は、ステップ状態とフェンダー状態との間で状態変更可能である。フェンダー状態であるステップ本体10において車輪3の前方に位置する第1の部位10Aと後方に位置する第2の部位10Bと上方に位置する第3の部位10Cとにより囲まれる車輪干渉防止領域Aが形成される。ステップ本体10が車体4から外方に張り出すように配置されるステップ状態である時、第3の部位10Cが第1、第2の部位10A、10Bよりも車体4の外方に配置される。足載せ部材20は、ステップ本体10がフェンダー状態である時に車輪干渉防止領域A外の退避位置に配置され、ステップ状態である時に車輪干渉防止領域A内の使用位置に配置され、その上面が踏面20Aとされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば消防用車両や建設用車両等の車輪の周囲において車体に取り付けられるフェンダー兼用のステップ本体を備え、車体に取り付けられた収納庫への物品の出し入れや車体への乗降等を行うために用いられるステップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体から外方に張り出すように配置されるステップ状態と、車輪の周囲においてフェンダーとして配置されるフェンダー状態との間で状態変更できるステップを備える車両用ステップ装置が従来から用いられている(特許文献1参照)。しかし、この従来例におけるステップは車輪の前後間に配置されるため、車輪の上方位置での作業を行う場合には利用できなかった。
【0003】
そこで図10に示すように、車輪101の周囲において車体102に取り付けられるフェンダー兼用のステップ本体103を備え、そのステップ本体103は、車体102から図示のように外方に張り出すように配置されるステップ状態と、車輪の周囲において車体102の側壁を構成するようにフェンダーとして配置されるフェンダー状態との間で状態変更されるように、車体102の前後方向に沿う軸回りに揺動可能に車体102に取り付けられ、ステップ状態のステップ本体103の上面が踏面103Aとされる車両用ステップ装置が利用されている。
【特許文献1】実公平7−15795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図10に示すステップ装置においては、車輪101の交換時やステップ本体103の揺動時にステップ本体103と車輪101が干渉するのを防止する必要がある。そのためステップ本体103は、フェンダー状態である時に車輪101の前方に位置する第1の部位103aと、後方に位置する第2の部位103bと、上方に位置する第3の部位103cとを有し、それら第1〜第3の部位103a、103b、上103cにより囲まれる車輪干渉防止領域Aが形成され、ステップ本体103がステップ状態である時、第3の部位103cは第1、第2の部位103a、103bよりも車体102の外方に配置される。
【0005】
そうすると、ステップ本体103がステップ状態である時、第3の部位103cと車輪101との間に車輪干渉防止領域Aを構成する空間が存在することから、その分だけ踏面103Aの面積が小さくなっていた。踏面103Aの面積が小さいと、そこに足を載せる作業者を安定して支持できず、また、作業者は常に足元を確認する必要があるため作業能率を低下させるという問題がある。本発明は、そのような問題を解決することのできる車両用ステップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車輪の周囲において車体に取り付けられるフェンダー兼用のステップ本体を備え、前記ステップ本体は、前記車体から外方に張り出すように配置されるステップ状態と、前記車輪の周囲においてフェンダーとして配置されるフェンダー状態との間で状態変更可能に前記車体に取り付けられ、前記ステップ本体は、フェンダー状態である時に前記車輪の前方に位置する第1の部位と後方に位置する第2の部位と上方に位置する第3の部位とを有し、それら第1〜第3の部位により囲まれる車輪干渉防止領域が形成され、前記ステップ本体がステップ状態である時、前記第3の部位が前記第1、第2の部位よりも前記車体の外方に配置される車両用ステップ装置において、前記ステップ本体がフェンダー状態である時、前記車輪干渉防止領域外の退避位置に配置可能な足載せ部材が設けられ、前記ステップ本体がステップ状態である時、前記足載せ部材は前記車輪干渉防止領域内の使用位置に配置可能とされると共に、その上面が踏面とされることを特徴とする。
本発明の車両用ステップ装置によれば、ステップ本体がフェンダー状態である時は、ステップ本体の第1〜第3の部位により囲まれる車輪干渉防止領域が形成され、足載せ部材は車輪干渉防止領域外の退避位置に配置されるので、ステップ本体と足載せ部材が車輪と干渉することはない。
ステップ本体がステップ状態である時は、ステップ本体の第3の部位と車輪との間に車輪干渉防止領域を構成する空間が存在するが、車輪干渉防止領域内の使用位置に配置される足載せ部材の上面が踏面とされるので、その空間を足載せ部材により覆って踏面の面積を大きくできる。
【0007】
前記足載せ部材は、前記退避位置と前記使用位置との間で変位可能に前記ステップ本体に取り付けられているのが好ましい。これにより、足載せ部材をステップ本体から離反させることなく容易に使用位置と退避位置との間で変位させることができる。
この場合、前記ステップ本体のフェンダー状態とステップ状態との間の状態変更に応じて前記足載せ部材が退避位置と使用位置との間で変位するように、前記ステップ本体と前記足載せ部材とを連動させる連動機構が設けられているのが好ましい。これにより、ステップ本体のフェンダー状態とステップ状態との間での状態変更に応じて、足載せ部材を自動的に退避位置と使用位置との間で変位させることができる。
【0008】
前記ステップ本体は、前記車体の前後方向に沿う軸回りに揺動可能に前記車体に取り付けられると共に、その揺動によりフェンダー状態とステップ状態との間で状態変更可能とされ、前記足載せ部材は、前記車体の前後方向に沿う軸回りに揺動可能に前記ステップ本体に取り付けられると共に、その揺動により退避位置と使用位置との間で変位可能とされ、前記ステップ本体がフェンダー状態である時、退避位置に配置される前記足載せ部材を自重により揺動しないように保持する保持部材が前記車体に取り付けられ、前記ステップ本体のフェンダー状態からステップ状態への状態変更途中における前記足載せ部材の車体外方へ向かう変位により、前記保持部材による前記足載せ部材の保持が解除されるように、前記足載せ部材と前記保持部材との相対配置が設定されているのが好ましい。
これにより、ステップ本体の揺動によるフェンダー状態からステップ状態への状態変更途中において、足載せ部材を保持部材による保持が解除された後に車体の前後方向に沿う軸回りに揺動させ、使用位置に配置できる。すなわち、ステップ本体のフェンダー状態からステップ状態への状態変更時に、複雑な構成を要することなく、足載せ部材を使用位置に変位させることができる。
この場合、前記足載せ部材の自重による揺動を規制する支持位置と、前記足載せ部材から下方に離れた支持解除位置との間で変位可能な支持部材を備え、前記ステップ本体の揺動に応じて前記支持部材が支持位置と支持解除位置との間で揺動するように、前記支持部材は前記車体の前後方向に沿う軸回りに揺動可能に前記ステップ本体に取り付けられると共に、前記ステップ本体の揺動を前記支持部材に伝達する伝動機構が設けられ、前記ステップ本体のフェンダー状態からステップ状態への状態変更途中においては前記保持部材による前記足載せ部材の保持解除前に前記支持部材は前記支持解除位置から支持位置に変位され、前記ステップ本体のステップ状態からフェンダー状態への状態変更途中においては前記足載せ部材が退避位置に配置される前に前記支持部材は前記支持位置から支持解除位置に変位されるのが好ましい。
これにより、ステップ本体の揺動によるフェンダー状態からステップ状態への状態変更途中においては、足載せ部材は保持部材による保持が解除された後に自重により揺動しないように支持部材により支持され、さらにステップ本体がステップ状態に向い揺動することで足載せ部材は支持部材により支持されつつ使用位置に向かい揺動し、ステップ本体がステップ状態となることで足載せ部材は使用位置に配置される。よって、ステップ本体のフェンダー状態からステップ状態への状態変更時における足載せ部材の使用位置への変位を支持部材により支持しつつ行い、足載せ部材とステップ本体等の他部材との衝突による衝撃を防止できる。
また、ステップ本体の揺動によるステップ状態からフェンダー状態への状態変更途中においては、足載せ部材は支持部材により支持されつつ使用位置から退避位置に向かい揺動し、さらにステップ本体がフェンダー状態に向い揺動することで足載せ部材は保持部材により保持可能な位置に至り、ステップ本体がステップ状態になると足載せ部材は保持部材により保持されると共に支持部材による足載せ部材の支持は解除される。すなわち、ステップ本体のステップ状態からフェンダー状態への状態変更時に、複雑な構成を要することなく足載せ部材を自動的に退避位置に変位させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用ステップ装置によれば、フェンダーを兼用するステップ本体の踏面の面積を、複雑な構成を要することなくステップ状態である時に大きくすることで、そこに足を載せる作業者を安定して支持して作業能率を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に示す消防用車両1は、左右前車輪2と左右後車輪3により支持される車体4と、車体4の前部の運転席を覆うキャビン5と、車体4の後部に取り付けられる収納庫6とを備えている。収納庫6は左右側面の開口がシャッター式開閉扉6aにより開閉される。車両1の種類は特に限定されず、例えば収納庫6以外にクレーン等を搭載していてもよいし、収納庫6を備えていないホイールローダーのような建設用車両等であってもよい。
なお、本件明細書において前後左右上下の方向は車両の前後左右上下方向を基準とする。
【0011】
開閉扉6aの下方に位置する左右後車輪3の周囲において、車体4に取り付けられるフェンダー兼用のステップ本体10を備える車両用ステップ装置Sが設けられている。各ステップ本体10は、図2、図5、図9に示すように車体4から外方に張り出すように配置されるステップ状態と、図1、図3、図4、図6に示すように車輪の周囲においてフェンダーとして配置されることで車体4の側壁一部を構成するフェンダー状態との間で状態変更される。その状態変更が可能なように、ステップ本体10は車体4の前後方向(図1の左右方向)に沿う軸回りに揺動可能に車体4に取り付けられている。本実施形態では、ステップ本体10の揺動はステップ本体10の縁等を手指で把持して人力により行うものとされ、図5、図6に示すように前後一対の伸縮シリンダ型のダンパー60の一端が車体4に前後方向軸周りに相対回転可能に取り付けられ、他端がステップ本体10に前後方向軸周りに相対回転可能に取り付けられ、ステップ本体10のフェンダー状態とステップ状態との間の揺動を円滑に行うことができる。また、フェンダー状態のステップ本体10が不慮に揺動するのを防止するため、図3に示すようにステップ本体10に前後一対のロックバー61が前後スライド可能に取り付けられ、各ロックバー61を挿抜可能なロック受け62が車体4に取り付けられている。さらに、図6に示すようにフェンダー状態のステップ本体10の上端が車体4内に変位するのを防止するストッパー63と、ステップ状態のステップ本体10の外端が下方に変位するのを防止するストッパー(図示省略)が車体4に取り付けられている。
【0012】
ステップ本体10は、フェンダー状態である時に車輪3の前方に位置する第1の部位10Aと後方に位置する第2の部位10Bと上方に位置する第3の部位10Cとを有する。それら第1〜第3の部位10A、10B、10Cにより囲まれる領域により車輪干渉防止領域Aが形成される。左右方向から視て車輪干渉防止領域A内に車輪3が配置されることで、車輪3の着脱時やステップ本体10の状態変更時にステップ本体10が車輪3に干渉するのが防止される。ステップ本体10がステップ状態である時、第3の部位10Cは第1、第2の部位10A、10Bよりも車体4の外方に配置される。
【0013】
本実施形態のステップ本体10は、2本の型鋼製の柱材10a、10b、型鋼製の桟材10c、アルミ製の側板10dとから構成されている。ステップ本体10のフェンダー状態において、両柱材10a、10bは長手方向が上下方向とされると共に前後方向の間隔をおいて配置され、桟材10cにより両柱材10a、10bの上端部を連結することで骨組みが構成され、側板10dは柱材10a、10bと桟材10cの外側に例えば接着剤により取り付けられ、側板10dの外側面が車体4の外側面と略面一とされる。図3に示すように、側板10dは、ステップ本体10のフェンダー状態において、上端に位置して前後方向に沿う第1の縁10αと、前後端に位置して上下方向に沿う第2、第3の縁10β、10γと、第2、第3の縁10β、10γの下端に連なる第4の縁10δとを有し、第4の縁10δは、第2の縁10βから後方に向かい延びる部分δ1と、この部分δ1から上方に向かい延びる部分δ2と、この部分δ2から後方に向かうに従い上方に向かい延びる部分δ3と、この部分δ3から後方に向かい延びる部分δ4と、この部分δ4から後方に向かうに従い下方に向かい延びる部分δ5と、この部分δ5から下方に向かい延びる部分δ6と、この部分δ6から後方に向かい延びて第3の縁10γに至る部分δ7とを有する。
【0014】
ステップ本体10の車体4への取り付けのため、図5に示すように、車輪3の前後位置において車体4の骨組みを構成する柱状部材4aに軸支部材11がリベット等を介して取り付けられ、各軸支部材11に第1支持シャフト12が軸心方向が前後方向となると共に相対回転しないように取り付けられ、各第1支持シャフト12によりギヤボックス13が第1支持シャフト12の軸中心に回転可能に支持され、各ギヤボックス13がステップ本体10の下端寄り部位に溶接等により同行揺動するように取り付けられている。これにより、ステップ本体10は前後方向に沿う第1支持シャフト12の軸回りに揺動可能とされている。
【0015】
ステップ本体10がフェンダー状態である時、側面視で車輪干渉防止領域A外の退避位置に配置可能な板状の足載せ部材20が設けられている。なお、足載せ部材20は板状に限定されず、例えば格子状であってもよい。ステップ本体10がステップ状態である時、足載せ部材20は平面視で車輪干渉防止領域A内の使用位置に配置可能とされると共に、その上面が踏面20Aとされる。図5に示すように、本実施形態の足載せ部材20は略矩形板状であり、使用位置において車体4の外方側に位置して前後方向に沿う第1の縁20αと、前後端に位置して左右方向に沿う第2、第3の縁20β、20γと、車体4の内方側に位置して前後方向に沿う第4の縁20δとを有し、車体4の外方に位置するコーナー部分が切り欠き状とされることで第4の縁20δの前後端近傍部分は段差状部20δ′とされている。その踏面20A上に、収納庫6内の物品の出し入れを行う作業者の足が載置される。なお、本実施形態においては、図1、図2に示すように、ステップ本体10の前後において車体4を構成する側壁4′、4″が、収納庫6の下方において、車体4の骨組みを構成する部材に前後方向軸周りに揺動可能に取り付けられ、車体4から外方に張り出すように配置されるステップ状態と、車体4の側壁として機能する状態との間で状態変更可能とされている。
【0016】
足載せ部材20は、ヒンジ21を介して車体4の前後方向に沿う軸回りに揺動可能にステップ本体10に取り付けられ、その揺動により退避位置と使用位置との間で変位可能とされている。ステップ本体10のステップ状態とフェンダー状態との間の状態変更に応じて足載せ部材20が使用位置と退避位置との間で変位するように、ステップ本体10と足載せ部材20とを連動させる連動機構40が設けられている。本実施形態の連動機構40は、前後一対の保持部材41と前後一対の支持部材42を有する。
【0017】
図6に示すように、各保持部材41は、側壁41aと底壁41bとを有する型材と、底壁41b上に貼り付けられたナイロン等の摩擦低減材41cとを有し、車体4を構成する柱状部材4aにリベット等を介して取り付けられている。ステップ本体10がフェンダー状態である時、退避位置に配置される足載せ部材20の第4の縁20δの段差状部20δ′は両保持部材41の摩擦低減材41c上に載置され、これにより足載せ部材20は保持部材41により自重により揺動しないように保持される。ステップ本体10がフェンダー状態からステップ状態へ揺動する時、その揺動によって足載せ部材20は車体4の外方側へ向かい変位し、その変位量が一定量を越えると保持部材41による足載せ部材20の保持が解除される。すなわち、ステップ本体10のフェンダー状態からステップ状態への状態変更途中における足載せ部材20の車体外方側へ向かう変位により、保持部材41による足載せ部材20の保持が解除されるように、足載せ部材20と保持部材41との相対配置が設定されている。
【0018】
各支持部材42は、屈曲した形状の支持バー42aと、支持バー42aの先端と両端間とに前後方向軸中心に回転可能に取り付けられた支持ローラー42b、42cとを有する。支持部材42は保持部材41と干渉することがない位置に配置され、本実施形態では両保持部材41の前後間に配置される。各支持部材42の基端は、ギヤボックス13により軸心方向が前後方向となるように支持された第2支持シャフト43に同行回転するように取り付けられている。第2支持シャフト43はギヤボックス13に対して軸中心に回転可能とされている。ギヤボックス13はステップ本体10と同行揺動するので、支持部材42は車体4の前後方向に沿う軸回りに揺動可能にステップ本体10に取り付けられた状態となる。
【0019】
ステップ本体10の揺動に応じて支持部材42が揺動するように、ステップ本体10の揺動を支持部材42に伝達する伝動機構44が設けられている。本実施形態の伝動機構44は、第1支持シャフト12に相対回転しないように取り付けられた第1ギヤ44aと、第1ギヤ44aに噛み合うと共に第2支持シャフト43に相対回転しないように取り付けられた第2ギヤ44bとを有する。これにより、ステップ本体10が揺動し、第2支持シャフト43が第1支持シャフト12の回りを公転すると、第1ギヤ44aに噛み合う第2ギヤ44bと共に第2支持シャフト43が自身の軸中心に回転し、この第2支持シャフト43の回転により支持部材42が揺動する。
【0020】
支持部材42は上記揺動により、足載せ部材20による揺動を規制する支持位置と、足載せ部材20から下方に離れた支持解除位置との間で変位可能とされ、ステップ本体10の揺動に応じて支持位置と支持解除位置との間で揺動する。すなわち、図6に示すようにステップ本体10がフェンダー状態であり、足載せ部材20が退避位置にある時、支持部材42の先端のローラー42bは足載せ部材20の下方に配置される。図7に示すようにステップ本体10のフェンダー状態からステップ状態への揺動量が少ない時、支持部材42の先端のローラー42bはステップ本体10がフェンダー状態である時よりも足載せ部材20に近接される。図8に示すようにステップ本体10のフェンダー状態からステップ状態への揺動量が多く保持部材41による足載せ部材20の保持が解除された状態では、支持部材42の先端のローラー42bが足載せ部材20の下面に当接することで、足載せ部材20は自重による揺動が規制されるように支持部材42により支持される。図9に示すようにステップ本体10がステップ状態である時、足載せ部材20が使用位置に位置するように、支持部材42は足載せ部材20の下方に配置される。この際、支持部材42の先端のローラー42bはステップ本体10の側板10dに当接し、両端間のローラー42cは足載せ部材20の下面に当接し、これにより足載せ部材20は支持部材42を介してステップ本体10により支持される。
【0021】
ステップ本体10がフェンダー状態からステップ状態に向かい揺動する場合、足載せ部材20は当初はステップ本体10の揺動につれて保持部材41上を車体外方に向かい摺動すると共に下方に向かい揺動し、また、支持部材42はステップ本体10の揺動につれて揺動し、支持部材42の先端のローラー42bは上方に変位する。ステップ本体10の揺動量が多くなると、保持部材41による足載せ部材20の保持が解除される前に、ローラー42bが足載せ部材20の下面に当接することで、足載せ部材20は支持部材42により支持される。すなわち、ステップ本体10のフェンダー状態からステップ状態への状態変更途中においては、保持部材41による足載せ部材20の保持解除前に支持部材42は支持解除位置から支持位置に変位される。さらにステップ本体10の揺動量が多くなると、支持部材42の揺動により足載せ部材20の下面に当接するローラー42bが次第に足載せ部材20の揺動中心に近接し、これにより、足載せ部材20の第4の縁20δの段差状部20δ′は、当初は上方に向かい、保持部材41よりも車体内方側に位置する時は保持部材41の上方に位置し、保持部材41よりも車体外方側に位置した後に下方に向かい変位する。しかる後にステップ本体10がステップ状態になることで、足載せ部材20の下面に支持部材42の両端間のローラー42cが当接し、足載せ部材20は使用位置に変位する。
【0022】
ステップ本体10がステップ状態からフェンダー状態に向かい揺動する場合、足載せ部材20の下面に当初は支持部材42の両端間のローラー42cが当接し、ステップ本体10の揺動量が増加すると支持部材42も揺動することで先端のローラー42bが当接する。さらにステップ本体10の揺動量が多くなると、支持部材42の揺動により足載せ部材20の下面に当接するローラー42bが次第に足載せ部材20の揺動中心から遠ざかり、これにより、足載せ部材20の第4の縁20δの段差状部20δ′は、当初は上方に向かった後に、保持部材41よりも車体内方側に位置する時に下方に向かうものとされている。さらにステップ本体10の揺動量が多くなると、ローラー42bが足載せ部材20の下方に位置して支持部材42は支持解除位置に変位し、足載せ部材20は保持部材41により保持される。さらにステップ本体10がフェンダー状態に向かい揺動すると、足載せ部材20の段差状部20δ′は保持部材41上を車体内方に向かい摺動する。しかる後に、保持部材41がフェンダー状態になることで足載せ部材20は退避位置に変位する。すなわち、ステップ本体10のステップ状態からフェンダー状態への状態変更途中においては、足載せ部材20が退避位置に配置される前に支持部材42は支持位置から支持解除位置に変位される。
【0023】
上記車両用ステップ装置Sによれば、ステップ本体10がフェンダー状態である時は、ステップ本体10の第1〜第3の部位10A、10B、10Cにより囲まれる車輪干渉防止領域Aが形成され、足載せ部材20は車輪干渉防止領域A外の退避位置に配置されるので、ステップ本体10と足載せ部材20が車輪3と干渉することはない。ステップ本体10がステップ状態である時は、ステップ本体10の第3の部位10Cと車輪3との間に車輪干渉防止領域Aを構成する空間が存在するが、車輪干渉防止領域A内の使用位置に配置される足載せ部材20の上面が踏面20Aとされるので、その空間を足載せ部材20により覆って踏面20Aの面積を大きくできる。
また、足載せ部材20は退避位置と使用位置との間で変位可能にステップ本体10に取り付けられているので、ステップ本体10から離反させることなく足載せ部材20を容易に退避位置と使用位置との間で変位させることができる。さらに、連動機構40はステップ本体10のステップ状態とフェンダー状態との間の状態変更に応じて足載せ部材20を使用位置と退避位置との間で変位させるので、ステップ本体10の状態変更に応じて足載せ部材20を自動的に使用位置と退避位置との間で変位させることができる。
そのステップ本体10の揺動によるフェンダー状態からステップ状態への状態変更途中において、足載せ部材20を保持部材41による保持が解除された後に車体4の前後方向に沿う軸回りに揺動させ、使用位置に配置できる。すなわち、ステップ本体10のフェンダー状態からステップ状態への状態変更時に、複雑な構成を要することなく、足載せ部材20を使用位置に変位させることができる。さらに、ステップ本体10の揺動によるフェンダー状態からステップ状態への状態変更途中においては、足載せ部材20は保持部材41による保持が解除された後に自重により揺動しないように支持部材42により支持され、さらにステップ本体10がステップ状態に向かい揺動することで足載せ部材20は支持部材42により支持されつつ使用位置に向かい揺動し、ステップ本体10がステップ状態となることで足載せ部材20は使用位置に配置される。よって、ステップ本体10のフェンダー状態からステップ状態への状態変更時における足載せ部材20の使用位置への変位を支持部材42により支持しつつ行い、足載せ部材20とステップ本体10等の他部材との衝突による衝撃を防止できる。また、ステップ本体10の揺動によるステップ状態からフェンダー状態への状態変更途中においては、足載せ部材20は支持部材42により支持されつつ使用位置から退避位置に向かい揺動し、さらにステップ本体10がフェンダー状態に向かい揺動することで足載せ部材20は保持部材41により保持可能な位置に至り、ステップ本体10がステップ状態になると足載せ部材20は保持部材41により保持されると共に支持部材42による足載せ部材20の支持は解除される。すなわち、ステップ本体10のステップ状態からフェンダー状態への状態変更時に、複雑な構成を要することなく足載せ部材20を自動的に退避位置に変位させることができる。
【0024】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、ステップ本体を人力でなく電動モータや流体圧シリンダ等のアクチュエータを用いて動力により開閉させてもよく、この場合、開閉扉もアクチュエータを用いて開閉させ、単一のスイッチ操作により開閉扉の開閉に連動してステップ本体をステップ状態とフェンダー状態との間で状態変更させてもよい。
ステップ本体と足載せ部材とを連動させる連動機構の構成は特に限定されず、例えば、ステップ本体をアクチュエータによりステップ状態とフェンダー状態との間で状態変更させ、足載せ部材もアクチュエータにより使用位置と退避位置との間で変位させ、単一のスイッチ操作によりステップ本体の状態変更に連動して足載せ部材を変位させてもよい。
ステップ本体の揺動を前記支持部材に伝達する伝動機構の構成は特に限定されず、例えば上記実施形態のようなギヤに代えてカムや摩擦伝動機構等を介して伝動するようにしてもよい。
ステップ本体と足載せ部材とを連動させる連動機構は必須ではなく、ステップ本体の状態変更と足載せ部材の変位とを個別に人力や動力により行ってもよい。
足載せ部材の退避位置は車輪干渉防止領域外であれば特に限定されず、例えば、ステップ本体がフェンダー状態である時にステップ本体の第3の部位と側面視で重なる位置を退避位置とし、足載せ部材が上下スライド可能にステップ本体に取り付けられ、その退避位置から下方スライドすることで使用位置に変位されてもよい。この場合、ステップ本体がフェンダー状態である時に足載せ部材が使用位置に配置されてもよく、ステップ本体をステップ状態に変位させる時や車輪の交換時等に足載せ部材を車輪と干渉しないように退避位置に変位させ、ステップ本体がステップ状態になった時に使用位置に変位させてもよい。
足載せ部材はステップ本体により支持されるものに限定されず、例えば、ステップ本体がフェンダー状態では車体に設けた収納部内の退避位置に収納され、ステップ本体がステップ状態である時に収納部から取り出されてステップ本体に載置されることで使用位置に配置されるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態のステップ装置を備えた車両の側面図
【図2】本発明の実施形態の車両用ステップ装置においてステップ本体がステップ状態である時の斜視図
【図3】本発明の実施形態の車両用ステップ装置においてステップ本体がフェンダー状態である時の側面図
【図4】本発明の実施形態の車両用ステップ装置においてステップ本体がフェンダー状態である時の平断面図
【図5】本発明の実施形態の車両用ステップ装置においてステップ本体がステップ状態である時の平断面図
【図6】本発明の実施形態の車両用ステップ装置においてステップ本体がフェンダー状態である時の正断面図
【図7】本発明の実施形態の車両用ステップ装置においてステップ本体が状態変更途中で支持部材が支持解除位置である時の正断面図
【図8】本発明の実施形態の車両用ステップ装置においてステップ本体が状態変更途中で支持部材が支持位置である時の正断面図
【図9】本発明の実施形態の車両用ステップ装置においてステップ本体がステップ状態である時の正断面図
【図10】従来の車両用ステップ装置においてステップ本体がステップ状態である時の斜視図
【符号の説明】
【0026】
3 車輪
4 車体
10 ステップ本体
10A 第1の部位
10B 第2の部位
10C 第3の部位
20 足載せ部材
20A 踏面
40 連動機構
41 保持部材
42 支持部材
44 伝動機構
A 車輪干渉防止領域
S 車両用ステップ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の周囲において車体に取り付けられるフェンダー兼用のステップ本体を備え、
前記ステップ本体は、前記車体から外方に張り出すように配置されるステップ状態と、前記車輪の周囲においてフェンダーとして配置されるフェンダー状態との間で状態変更可能に前記車体に取り付けられ、
前記ステップ本体は、フェンダー状態である時に前記車輪の前方に位置する第1の部位と後方に位置する第2の部位と上方に位置する第3の部位とを有し、それら第1〜第3の部位により囲まれる車輪干渉防止領域が形成され、
前記ステップ本体がステップ状態である時、前記第3の部位が前記第1、第2の部位よりも前記車体の外方に配置される車両用ステップ装置において、
前記ステップ本体がフェンダー状態である時、前記車輪干渉防止領域外の退避位置に配置可能な足載せ部材が設けられ、
前記ステップ本体がステップ状態である時、前記足載せ部材は前記車輪干渉防止領域内の使用位置に配置可能とされると共に、その上面が踏面とされることを特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項2】
前記足載せ部材は、前記退避位置と前記使用位置との間で変位可能に前記ステップ本体に取り付けられている請求項1に記載の車両用ステップ装置。
【請求項3】
前記ステップ本体のフェンダー状態とステップ状態との間の状態変更に応じて前記足載せ部材が退避位置と使用位置との間で変位するように、前記ステップ本体と前記足載せ部材とを連動させる連動機構が設けられている請求項2に記載の車両用ステップ装置。
【請求項4】
前記ステップ本体は、前記車体の前後方向に沿う軸回りに揺動可能に前記車体に取り付けられると共に、その揺動によりフェンダー状態とステップ状態との間で状態変更可能とされ、
前記足載せ部材は、前記車体の前後方向に沿う軸回りに揺動可能に前記ステップ本体に取り付けられると共に、その揺動により退避位置と使用位置との間で変位可能とされ、
前記ステップ本体がフェンダー状態である時、退避位置に配置される前記足載せ部材を自重により揺動しないように保持する保持部材が前記車体に取り付けられ、
前記ステップ本体のフェンダー状態からステップ状態への状態変更途中における前記足載せ部材の車体外方へ向かう変位により、前記保持部材による前記足載せ部材の保持が解除されるように、前記足載せ部材と前記保持部材との相対配置が設定されている請求項1に記載の車両用ステップ装置。
【請求項5】
前記足載せ部材の自重による揺動を規制する支持位置と、前記足載せ部材から下方に離れた支持解除位置との間で変位可能な支持部材を備え、
前記ステップ本体の揺動に応じて前記支持部材が支持位置と支持解除位置との間で揺動するように、前記支持部材は前記車体の前後方向に沿う軸回りに揺動可能に前記ステップ本体に取り付けられると共に、前記ステップ本体の揺動を前記支持部材に伝達する伝動機構が設けられ、
前記ステップ本体のフェンダー状態からステップ状態への状態変更途中においては前記保持部材による前記足載せ部材の保持解除前に前記支持部材は前記支持解除位置から支持位置に変位され、前記ステップ本体のステップ状態からフェンダー状態への状態変更途中においては前記足載せ部材が退避位置に配置される前に前記支持部材は前記支持位置から支持解除位置に変位される請求項4に記載の車両用ステップ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−131049(P2007−131049A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323795(P2005−323795)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000192073)株式会社モリタ (80)
【Fターム(参考)】