説明

車両用ダクト及びその取付構造

【課題】ダクトの取り付けに際してリベットやスクリューネジなどの別部品を削減できると共に取付作業を簡略に行うことができ、かつダクトの成形上のバラツキや、車体側の組み付け上のバラツキなどによってダクトの取り付けが難しくなるのを防ぐことができるようにする。
【解決手段】ダクト10の流路途中の対向する管壁15a,15aにそれぞれ突状部17をダクト外側へ隆起させて設け、車両側に設けられている対向する取付壁面71,71にはそれぞれ取付孔73を形成し、前記取付壁面71,71間にダクト10を挿入して取付孔73,73に前記ダクトの突状部17,17を挿入することによりダクト10を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調用のダクト等として用いられる車両用ダクト及びその取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には空調用のダクトが取り付けられている。前記空調用ダクトは、両端間の所定位置、例えば中央部がダクト取付部材を介して車体に取り付けられ、両端部がそれぞれ相手装置と接続される。
【0003】
従来におけるダクトの取付構造として、図8に示すように、対向する取付壁面91,91を有する取付部材90を用い、前記取付壁面91,91間にダクト80を配置してリベット95でダクト80の管壁81を取付壁面91,91に締結するものがある。
しかし、この取付構造にあっては、別部品としてリベットが必要になると共に、リベットを打つ面倒な作業が必要になり、部品代及び作業コストが増加する問題がある。
【0004】
また、ダクトの管壁をスクリューネジでサポートパイプに固定する取付構造も知られている(特許文献1参照)。しかし、この取付構造もリベットを用いる取付構造と同様に別部品としてスクリューネジが必要になると共に、ネジ止め作業が必要になる。
【0005】
また、ダクトの管壁外面に拡開変形可能な突出片状からなる取付部を設け、一方、車体側の被取付部にはスリットを形成し、前記スリットに取付部を挿入して拡開させる取付構造が提案されている(特許文献2参照)。しかし、この取付構造にあっては、取付部の構造が複雑であると共に、ダクト成形上のバラツキや、車体側における被取付部の組み付け上のバラツキなどにより、前記スリットに取付部が正しく挿入できない場合が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−207548号公報
【特許文献2】特開2002−327716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、ダクトの取り付けに際してリベットやスクリューネジなどの別部品を削減できると共に取付作業を簡略に行うことができ、かつダクトの成形上のバラツキや、車体側の組み付け上のバラツキなどにより取り付け性に影響を受け難い車両用ダクトとその取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、取付孔を形成した取付壁面が対向する前記取付壁面間に取り付けられる車両用ダクトであって、前記ダクトの流路途中の対向する管壁に、前記取付孔へ挿入される先細の突状部をダクト外側へ隆起させて設け、前記対向する管壁には前記突状部を囲んで波形状の屈曲部を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用ダクトを前記取付壁面間に取り付ける車両用ダクトの取付構造において、前記取付壁面には前記取付孔を前記車両用ダクトの前記突状部における頂部の外径より大きく、かつ底部の外径より小として形成し、前記取付孔に前記突状部を挿入したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明のダクトによれば、ダクトの流路途中の対向する管壁に形成した先細の突状部を、取付壁面の取付孔へ挿入することによりダクトを取り付けることができるため、リベットやスクリューネジなどの別部品を削減することができると共に、取付作業を簡略に行うことができる。さらに、取付孔に挿入される先細の突状部は、その先細形状によって頂部側で細く底部側で太くなっているため、取付孔をダクトの突状部における頂部の外径より大きく、かつ底部の外径より小としておけば、ダクトの成形上のバラツキや車体側の組み付け上のバラツキなどによって、ダクトの突状部と取付孔の位置関係が多少変化しても、突状部の細い頂部側を取付孔に挿入して突状部の頂部と底部間を取付孔内縁に係止することができ、ダクトの取り付けが困難になるのを防ぐことができる。
【0011】
請求項1の発明のダクトによれば、ダクトの対向する管壁に突状部を囲んで波形状の屈曲部を設けたことにより、前記突状部に頂部側から底部側へ押す力が加わった場合には、前記波形状の屈曲部で変形して前記突状部がダクトの内方へ変位する。従って、ダクトの成形上のバラツキによって突状部の外径が正規の外径よりも大きくなったり、車体側の組み付け上のバラツキなどによって対向する取付孔の間隔が正規の間隔よりも狭くなったりして、前記取付孔内にダクトの突状部を挿入する際に、先細の突状部における傾斜面あるいは凸状リブが取付孔の内縁と強く干渉して突状部がダクト内方(突状部の頂部側から底部側)へ押圧されることがあっても、その場合には前記ダクトの突状部を囲んで形成されている波形状の屈曲部が変形して突状部がダクト内方へ変位するため、ダクトの成形上のバラツキや車体側の組み付け上のバラツキを吸収してダクトを取り付けることが可能になる。
【0012】
請求項2の発明のダクトの取付構造によれば、ダクトの流路途中の対向する管壁に形成した突状部を、ダクト取付部材の取付孔へ挿入することによりダクトを取り付けることができるため、リベットやスクリューネジなどの別部品を削減することができると共に、取付作業を簡略に行うことができる。さらに、取付孔を、車両用ダクトの突状部における頂部の外径より大きく、かつ底部の外径より小として形成したことにより、及び取付孔に挿入される先細の突状部が、その形状によって頂部側で細く底部側で太くなっていることから、ダクトの成形上のバラツキや車体側の組み付け上のバラツキなどによって、ダクトの突状部と取付孔の位置関係が多少変化しても、突状部の細い頂部側を取付孔に挿入して、突状部の頂部と底部間を取付孔内縁に係止することができ、取り付けが困難になるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に係る車両用ダクトの斜視図である。
【図2】図1の2−2断面図である。
【図3】図2の3−3断面図である。
【図4】図1の突状部の斜視図である。
【図5】ダクトを取り付ける際を示す断面図である。
【図6】ダクトを取り付けた状態を示す断面図である。
【図7】図6の7−7断面図である。
【図8】従来のダクトの取り付け状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の一実施例に係る車両用ダクトの斜視図、図2は図1の2−2断面図、図3は図2の3−3断面図、図4は図1の突状部の斜視図、図5は車両用ダクトを取付部材の取付壁面間に挿入する際の断面図、図6は車両用ダクトの取付状態を示す断面図、図7は図6の7−7断面図である。
【0015】
図1及び図2に示す車両用ダクトは、車両の空調用のダクト等として用いられるものであり、図6に示すように取付孔73,73が形成された取付壁面71,71を対向させて有するダクト取付部材70の前記取付壁面71,71間に取り付けられ、前記取付壁面71,71を介して車両に取り付けられる。なお、前記取付壁面71,71は、単一の取付部材に形成されたものに限られず、他の車両部品等から突出して設けられたものであってもよい。
【0016】
前記車両用ダクト10は、熱可塑性合成樹脂のブロー成形品で構成され、管状からなる。前記ダクト10の両端11,13は、相手装置への取り付け用フランジ12,14が形成され、両端11,13間の内部が空気の流路10aとなっている。前記両端11,13間の流路10a途中の管壁15は、二組の対向する管壁15a,15a,15b,15bで構成されている。なお、前記車両用ダクト10は、図示のものにおいては全長に渡って断面が四角形とされた角パイプ状のものであるが、それに限られず、両端11,13間の流路10a途中の一部分が四角形断面とされて他の部分が円弧面で構成されたもの、あるいはダクト10の全長に渡って円弧面で構成された丸パイプなどでもよい。
【0017】
前記一組の対向する管壁15a,15aのそれぞれには、前記ダクト取付部材70の取付孔73へ挿入される先細の突状部17がダクト外側へ隆起させて形成されている。実施例の突状部17は円錐台形状からなる。前記円錐台形状の突状部17の大きさはダクト10のサイズ等によって適宜決定されるが、一例として頂部18の外径d1が30mm、底部19の外径d2が50mm、高さhが30mmからなる円錐台形状を挙げる。前記突状部17が形成される対向する管壁15a,15aは、前記取付部材70の取付壁面71,71と対向する面とされる。
【0018】
前記円錐台形状の突状部17は、図2及び図3の断面図と図4の斜視図にも示すように、前記頂部18と底部19間の側面に相当する傾斜面21に、前記円錐台形状の高さ方向kに凸条のリブ23が形成されている。前記凸条のリブ23は、前記円錐台形状の傾斜面21において、周方向jの複数箇所に形成されている。本実施例では180度間隔で前記傾斜面21の2箇所に前記凸条のリブ23が形成されている。前記凸条のリブ23は、180度間隔に限られず、例えば120度間隔等のように他の角度間隔でもよい。前記凸条のリブ23における前記傾斜面21からの突出寸法(高さ)は適宜決定されるが、一例として3mmを挙げる。
【0019】
また、前記傾斜面21には、前記凸条のリブ23間の位置にV状屈曲溝25が前記円錐台形状の高さ方向kに設けられている。さらに、前記円錐台形状の頂部18には前記傾斜面21の前記V状屈曲溝25と連結したV状屈曲溝27が形成され、前記傾斜面21のV状屈曲溝25と前記頂部18のV状屈曲溝27が一連になっている。なお、前記V状屈曲溝25,27は、前記円錐台形状の内方へV状に屈曲(折れ曲がった)した溝形状からなり、適宜の深さ及び溝幅(開口幅)、例えば深さ5mm、溝幅5mmで構成されている。本実施例では180度間隔で設けた前記凸条のリブ23から前記円錐台形状の周方向jへ90度の位置に前記V状屈曲溝25が形成されている。前記V状屈曲溝25,27の部分は、前記円錐台形状の傾斜面21に外方から押圧力が加わった際にさらに屈曲して溝幅が狭くなり、前記円錐台形状の外径を縮小させる。
【0020】
前記突状部17,17が形成されている対向する管壁15a,15aには、前記突状部17を囲んで波形状の屈曲部29が環状に形成され、前記波形状の屈曲部29で前記突状部17の高さ(円錐台形状の高さと等しい)方向kに変形可能になっている。なお、前記波形状の屈曲部29における波形状の山部(頂部)と谷部(底部)の数及び高低差は適宜決定される。
【0021】
前記車両用ダクト10の取付構造は、図5に示すように、前記ダクト取付部材70の対向する取付壁面71,71間に前記車両用ダクト10を挿入し、図6及び図7に示すように、前記取付孔73,73に前記ダクト10の前記突状部17,17を挿入した構造からなる。
【0022】
前記取付部材70は、対向する前記取付壁面71,71の一端が連結壁面72で連結されたコの字状からなり、前記連結壁面72の部分で車両に固定されている。対向する前記取付壁面71,71における前記取付孔73,73間の距離sは、前記車両用ダクト10における前記突状部17,17の底部19,19間の距離s1よりも大きく、かつ前記突状部17,17の頂部18,18間の距離s2よりも小とされている。また、前記取付壁面71の取付孔73の径d3は、前記突状部17における頂部18の外径d1より大きく、かつ底部19の外径d2より小にされている。なお、前記頂部18の外径d1は前記傾斜面21上の凸状リブ23の表面を通る円の外径であり、一方、前記底部19の外径d2は前記傾斜面21上の凸状リブ23の表面を通る円の外径である。また、前記取付部材70は、前記取付壁面71,71の一端が連結壁面72で連結されたコの字状のものに限られず、車両に直接前記取付壁面71,71が一端側で固定されたものや、前記取付壁面71,71が他の車両部品から突出して形成されたものでもよい。
【0023】
前記車両用ダクト10を取り付ける際、前記対向する取付壁面71,71間に前記車両用ダクト10を挿入すると、前記対向する取付壁面71,71の開放端71a,71aが前記突状部17,17の傾斜面21,21あるいは凸状リブ23,23に当接して該傾斜面21,21上あるいは凸状リブ23,23上を前記頂部18,18側へ移動し、前記取付壁面71,71の開放端71a,71a間が拡開する。前記車両用ダクト10を前記取付部材70内へ更に挿入し、前記突部17,17における頂部18,18が前記取付孔73,73の位置に至ると、前記取付孔73,73に前記突部17,17が挿入され、前記対向する取付壁面71,71がそれまでの拡開状態から互いに接近する方向へ復元し、前記取付孔73,73の内縁に前記突状部17,17が係止されて前記取付壁面71,71に前記車両用ダクト70が取り付けられる。そして、前記取付孔73,73に前記突状部17,17が挿入された状態で該突状部17,17を中心に車両用ダクト10を微妙に回転させて相手装置と合わせる。
【0024】
前記取付構造においては、リベットやスクリューネジなどの別部品を削減することができると共に、リベットの締結作業やスクリューネジなどの締め付け作業が不要なため、ダクトの取付作業を簡略に行うことができる。さらに、前記取付孔73に挿入されるダクト10の先細の突状部17は、前記頂部18側で細く底部19側で太くなっているため、前記取付孔73を前記ダクト10の突状部17における頂部18の外径d1より大きく、かつ底部19の外径d2より小としておくことにより、ダクト10の成形上のバラツキや車体側の組み付け上のバラツキなどによって、前記ダクト10の突状部17と取付孔73の位置関係が多少変化しても、前記突状部17の頂部18側を取付孔73に挿入して、前記突状部17を取付孔73の内縁に係止することができる。
【0025】
また、前記突状部17における円錐台形状の傾斜面21に形成された凸条のリブ23によって、前記取付孔73に円錐台形状の突状部17を挿入した際に前記取付孔73の内縁と前記突状部17との接触面積が少なくなり、スライド抵抗が小さくなるため、前記突状部17を前記取付孔73内に挿入してダクト10の開口を正規位置まで正しく合わせることが容易となる。
【0026】
さらに、前記凸条のリブ23間及び前記円錐台形状の頂部18に設けた前記V状屈曲溝25,27により、前記突状部17における円錐台形状の傾斜面21が外方から押圧された際にV状屈曲溝25,27で屈曲変形し、前記円錐台形状の外径を縮小する。そのため、ダクト10の成形上のバラツキや車体側の組み付け上のバラツキなどによって、ダクト10の突状部17が取付孔73の中心からずれ、取付孔73内に突状部17を挿入する際に円錐台形状の傾斜面21あるいは凸状リブ23が取付孔73の内縁と強く干渉して外方から押圧されることがあっても、前記V状屈曲溝25,27が屈曲して円錐台形状の外径を縮小させることにより、正規位置まで前記突状部17を前記取付孔73内に挿入してダクト10を正しく取り付けることが容易となる。
【0027】
さらに、前記突状部17,17が形成されている管壁15a,15aに、前記突状部17を囲んで波形状の屈曲部29を設けたことにより、前記突状部17に頂部18側から底部19側へ押す力が加わった場合には、前記波形状の屈曲部29で変形して前記突状部17がダクト10の内方へ変位する。従って、ダクト10の成形上のバラツキによって突状部17の外径が正規の外径よりも大きくなったり、車体側の組み付け上のバラツキなどによって対向する取付孔73,73の間隔が正規の間隔よりも狭くなったりして、前記取付孔73内にダクト10の突状部17を挿入した際に、突状部17の傾斜面21あるいは凸状リブ23が取付孔73の内縁と強く干渉して突状部17がダクト内方へ押圧されると、前記ダクト10の突状部17を囲んで形成されている波形状の屈曲部29が変形して突状部17がダクト内方へ変位するため、ダクトの成形上のバラツキや車体側の組み付け上のバラツキを吸収してダクトを取り付けることが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
10 車両用ダクト
15a 対向する管壁
17 突状部
18 突状部の頂部
19 突状部の底部
21 傾斜面
25,27 V状屈曲溝
29 波形状の屈曲部
70 取付部材
71 取付壁面
73 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔を形成した取付壁面が対向する前記取付壁面間に取り付けられる車両用ダクトであって、
前記ダクトの流路途中の対向する管壁に、前記取付孔へ挿入される先細の突状部をダクト外側へ隆起させて設け、
前記対向する管壁には前記突状部を囲んで波形状の屈曲部を設けたことを特徴とする車両用ダクト。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ダクトを前記取付壁面間に取り付ける車両用ダクトの取付構造において、
前記取付壁面には前記取付孔を前記車両用ダクトの前記突状部における頂部の外径より大きく、かつ底部の外径より小として形成し、
前記取付孔に前記突状部を挿入したことを特徴とする車両用ダクトの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−63777(P2013−63777A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−3181(P2013−3181)
【出願日】平成25年1月11日(2013.1.11)
【分割の表示】特願2008−308213(P2008−308213)の分割
【原出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】