説明

車両用ディスプレイ装置

【課題】検索画面を前景として見える道路形状に合わせて描写することで視認性と操作性を向上した車両用ディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】ナビゲーション用の情報を格納したデータベースと、データベースから抽出した情報をもとに検索画面を含む画像情報を生成し、検索画面を遠近法で描画する画像情報生成部と、画像情報生成部で生成した画像情報を車両のフロントガラスに投影表示するヘッドアップディスプレイと、車両の位置情報に応じて画像情報生成部を制御し、車両の前方視野における前方車両との車間位置に検索画面を路面形状に合わせて表示するように制御する制御部と、を具備する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両運転者の前方視野領域にナビゲーション用の検索画面などを表示する車両用ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目的地までの運転を支援するナビゲーション装置があり、出発地又は現在地から目的地までの地図情報や、車両の現在位置の情報等を車両に設けたディスプレイに表示するようにしている。また近年では、ナビゲーション情報や走行速度などの車両情報を車両のフロントガラスに表示するヘッドアップデイスプレイ(以下、HUDと称す)を設け、運転者の視認性を向上した装置もある。
【0003】
HUDを備えた車両用ディスプレイ装置では、フロントガラスにナビゲーション情報や車両情報を表示するため、表示された情報と実景とが重なってしまい、運転に支障を来たす場合がある。このため、通常は運転の支障にならないように、フロントガラスの低い位置、つまり運転者が前方を見る視線の位置よりも低い位置にナビゲーション用の情報を表示するようにしている。
【0004】
ところで、従来のHUDを備えた車両用ディスプレイ装置では、主にナビゲーション情報(自車の位置や走行を誘導する情報)を表示することを目的としているため、検索画面を表示し画面を見ながら選択操作することは想定していない。一方、車両の走行時に道路の周辺情報等を知りたい場合もあり、データベースの情報を検索して表示したいという要求もある。
【0005】
しかしながら、HUDによって各種の情報を表示する場合は、運転者の視野を妨げるため、表示位置は視線から離れた周辺位置に表示することになる。このため、検索画面を表示する場合は周辺位置に表示されることになり、検索画面のリストを選択操作する際に運転者の視線が前方と検索画面の間で頻繁に移動するため、注意散漫になり安全上好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4305318号公報
【特許文献2】特開2004−322680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、HUDによって各種の情報を表示する場合、運転者の視野を妨げるため表示位置は視線から離れた周辺位置に表示することになる。このため検索画面も周辺位置に表示され、検索画面のリストを選択操作する際に運転者の視線が前方と検索画面の間で頻繁に移動するため、注意散漫になり安全上好ましくない。
【0008】
本発明の実施形態は上記事情に鑑みて成されたもので、検索画面を前景として見える道路形状に合わせて描写することで視認性と操作性を向上した車両用ディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る車両用ディスプレイ装置は、ナビゲーション用の情報を格納したデータベースと、前記データベースから抽出した情報をもとに検索画面を含む画像情報を生成し、前記検索画面を遠近法で描画する画像情報生成部と、前記画像情報生成部で生成した画像情報を車両のフロントガラスに投影表示するヘッドアップディスプレイと、前記車両の位置情報に応じて前記画像情報生成部を制御し、前記車両の前方視野における前方車両との車間位置に前記検索画面を路面形状に合わせて表示するように制御する制御部と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、前景として見える前方車両と自車両との間に検索画面のリストを表示し、リストをあたかも路面にペイントされているように表示するため、前方視界を遮蔽することなくかつ違和感なく表示することができる。またリスト選択の補助を行うアイコンを周辺視領域に表示することにより、安全性を損なわない操作が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態に係る車両用ディスプレイ装置の構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態におけるHUD(ヘッドアップディスプレイ)を示す構成図。
【図3】HUDにおける表示情報の表示例を示す説明図。
【図4】自車両が道路を走行中の前方視野の一例を示す説明図。
【図5】ナビゲーション用の検索画面の表示例を示す説明図。
【図6】検索画面の下位情報の表示例を示す説明図。
【図7】検索画面の表示形態を示す説明図。
【図8】道路がカーブしているときの検索画面の表示例を示す説明図。
【図9】自車両の表示器に表示される他の検索画面の一例を示す説明図。
【図10】ナビゲーション用の検索画面の表示動作を示すフローチャート。
【図11】検索画面の表示処理を説明する説明図。
【図12】検索画面の高さ方向の幅を求める計算式の一例を示す説明図。
【図13】検索画面の垂直位置を示す説明図。
【図14】検索画面の水平方向の幅を求める計算式の一例を示す説明図。
【図15】検索画面の水平位置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る車両用ディスプレイ装置について図面を参照して詳細に説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付す。
【実施例1】
【0013】
図1は、一実施形態に係る車両用ディスプレイ装置10の構成を示すブロック図である。図1において、車両用ディスプレイ装置10は、システム制御部11、車両情報取得部12、ナビゲーション情報生成部13、アンテナ14を備え、車両情報取得部12、ナビゲーション情報生成部13はシステム制御部11に接続されている。またシステム制御部11には操作部15、画像情報生成部16、制御信号生成部17、測定部18が接続されている。
【0014】
システム制御部11は、車両用ディスプレイ装置10の動作を制御するものであり、CPU、ROM、RAM等を含むコンピュータシステムである。車両情報取得部12は、自車両の車速や傾きを検出する車速度センサやジャイロセンサ等からの情報をもとに、自車両の速度情報、加速度情報、ハンドルの操舵に伴う進行方向(前進・バック、右・左折)の情報、ブレーキ情報などを取得する。またエンジンを始動してからの走行時間や走行距離の情報等を取得し、システム制御部11に入力する。
【0015】
ナビゲーション情報生成部13は、車速センサやジャイロセンサ等に車内LANを介して接続されており、自車両の現在位置を検出するGPS受信部を含む。GPS受信部はアンテナ14に接続され、GPS衛星から送信された信号をアンテナ14で受信し、受信信号に基づいて自車両の現在位置の情報を取得する。
【0016】
またナビゲーション情報生成部13は、データベース131を含む。データベース131には、地図情報や、道路の車幅情報、道路の傾斜情報、走行レーンの幅や本数の情報、車両の走行経路上に存在する道路標識の情報や建造物の情報等を格納している。またナビゲーション情報生成部13は、目的地までの経路を案内するナビゲーション情報(例えば経路案内用の2次元地図上に車両の現在位置を重ね合せた情報)を生成する。
【0017】
操作部15は、自車両に設けられた操作キーを含み、運転者の操作によって、ナビゲーション表示のオン・オフ指示や、出発地と目的地の情報等を入力する。尚、操作部15はディスプレイをタッチするタッチパネル式のものでもよい。
【0018】
画像情報生成部16は、車両情報取得部12やナビゲーション情報生成部13からの情報をもとに画像情報を生成し、表示装置20(図2)に供給する。制御信号生成部17は、表示部30(後述)に表示する画像情報の表示位置を必要に応じて切り換える位置制御信号を生成し、表示装置20に供給する。
【0019】
測定部18は、前方車両と自車両間の距離を測定するもので、例えば、自車両にカメラを搭載して前方の映像を撮影し、撮影した画像を分析することで前方車両を識別し、前方車両との距離を算出する。或いは、自車両に複数の超音波センサやレーダを取り付け、自車両から発した超音波やレーダを前方車両に向けて発射し、前方車両で反射された超音波やレーダを受信して、発射から受信までの時間情報をもとに前方車両との距離を測定するものであってもよい。
【0020】
次に図2を参照して表示装置20の構成について説明する。尚、以下の説明では表示装置20としてヘッドアップディスプレイ(HUD)を用いた例を説明する。HUDは、例えば自車両のダッシュボードにおける運転席に対応する位置に配置されたプロジェクターであり、運転席前方のフロントガラスに画像を投影する。
【0021】
図2において、HUD20は、光束生成部21と、照射レンズ22及び照射範囲を制御する光学レンズ23を含む。照射レンズ22と光学レンズ23は光学ボックス24を構成し、フォーカスや倍率を制御することができる。さらに照射位置を制御するミラー25、画像を拡大するレンズ26と、ミラー25の角度を制御する駆動部27を含む。
【0022】
光束生成部21には、画像情報生成部16からの画像情報が供給され、光束生成部21は画像情報を表示する光束を出力する。光束は、照射レンズ22及び光学レンズ23を介してミラー25に照射される。ミラー25で反射した光束は、拡大レンズ26で拡大され、車両のフロントガラスFG(表示部30)に投影される。光学ボックス24、ミラー25、拡大レンズ26は投射光学系を構成する。
【0023】
投影された画像の表示範囲は、光学レンズ22によって制御することができ、照射位置はミラー25の角度を調整することによって制御することができる。駆動部27は、制御信号生成部17からの位置制御信号によって駆動され、ミラー25の角度を調整し表示情報の表示位置を変える。
【0024】
図3は、HUD20を利用した表示情報の表示例を概略的に示す図である。表示部30は、運転席前方のフロントガラスFGで代用され、HUD20からの画像情報を運転席前方のフロントガラスFGの領域301に投影する。尚、自車両のダッシュボード中央部にLCDディスプレイ等の表示器31を配置し、この表示器31に各種の情報を表示することもできる。また自車両には表示キー151と操作キー152を含む操作部15を設けている。操作部15は表示領域301に表示されたリストから任意のリストを選択するものであり、運転の支障にならないように極力単純な操作を行うものが望ましく、例えばアップ・ダウンキーやカーソルキー、又はロータリーキー等を用いる。
【0025】
運転中は実景を優先的に注視できるように、フロントガラスFGの下側の位置、つまり運転者Dの基準視線(視界)よりも下側の位置に表示領域301(ナビ領域)を設定している。投影表示する画像情報としては、地図情報や車両情報、障害物情報、ナビゲーション用の検索画面等がある。
【0026】
本実施形態ではナビゲーション用の検索画面の表示方法に特徴があり、以下、ナビゲーション用の検索画面(以下、単に検索画面と呼ぶ)の表示例について説明する。尚、検索画面としては、例えば走行中の道路情報及び道路周辺の情報をリスト化した画面が考えられ、画像情報生成部16によって検索画面が生成される。
【0027】
図4は、例えば高速道路を走行中の前方視野の一例を示している。前方視野において運転者が最も注視する領域は前方の中心領域300である。本実施形態では、中心領域300を囲む周辺領域302と、画像情報を表示する表示領域301(ナビ領域)を設定し、ナビ領域301にナビゲーション情報(例えば自車の位置、進行方向、走行速度等)を表示する。
【0028】
また、車両の走行時には前方車両と車間距離をとって走行するため、通常、中心領域300とナビ領域301において、前方車両と自車両の車間位置に路面が見える。前方車両と自車両間の路面は、道路形状や車間距離によって形状やサイズにバラツキがあるものの、ほぼ一様な前景と見做すことができる。したがって本実施形態では、図5に示すように前方車両と自車両間のほぼ一様な前景にナビゲーション用の検索画面40を表示する。
【0029】
また検索画面40は、前景として見える道路形状に合わせて遠近法(perspective)で描画する。検索画面40の表示は、運転者の操作によって行われ、例えば図3で示すように、ダッシュボードに表示キー151を設けておき、表示キー151を押すことで検索画面40が表示され、もう一度押すことで検索画面40を消去できるようにする。また操作キー152を設けている。表示キー151、操作キー152は、図1の操作部15の一部を構成する。
【0030】
図5は、運転席前方のフロントガラスFGの中心領域300からナビ領域301領域にかけて投影表示した検索画面40の一例を示す説明図である。検索画面40は、例えば「コーヒー」、「食事どころ」、「観光スポット」、「ガソリンスタンド」、「事故注意ポイント」、「おすすめ」等の、道路情報や道路周辺情報を表す複数のリスト41〜46で構成される。尚、検索画面40を表示する場合、実際の路面が全く隠ぺいされるのを防ぐため、検索画面40は半透明で表示するとよい。
【0031】
また周辺領域302(図4参照)には、検索画面40のリストの選択操作を補助するアイコン50を表示する。アイコン50は、アップ・ダウン選択する矢印アイコン51,52と、決定(エンター)及び戻り(リターン)を指示する「決」、「戻」のアイコン53,54を含む。アイコン50は、操作キー152(図3)の操作を補助するものであり、操作キー152はアイコンが示す機能を実行する複数の操作キーで構成される。操作キー152は、アイコン50と同じ配列でアップ・ダウンキーや決定キー、戻りキーが配置されており、操作キー152の操作によって検索画面40のリストを選択することができる。尚、アイコン50は操作時の視認性を向上するため、アニメーション効果を付与して表示するようにしてもよい。
【0032】
検索画面40の初期表示では、例えば「コーヒー」のリスト41がハイライト表示される。また周辺領域302にアイコン50が表示される。そしてダウン方向にリストを選択するときは、矢印アイコン52に対応するダウンキーを操作すればよい。ダウンキーを用いて複数のリスト42、43…からいずれかのリストを選択し、決定キーを押すと決定したリストがハイライト表示される。またアップ方向にリストを選択するときは、矢印アイコン51に対応するアップキーを操作すればよいし、アップやダウンキーを用いてリスト41、42、43…を選択している途中で行き過ぎたときは戻りキーを押せばよい。
【0033】
こうして選択したリストがハイライト表示されたあとは、図6に示すように、選択されたリストの下位情報が表示される。例えば「事故注意ポンイト」のリスト45が選択された場合は、選択リストに関する下位情報451であるメッセージ(例えば「この先2Km地点、カーブスピード落とせ」など)が検索画面40に代わって表示される。下位情報451は、データベース131に保管したデータに基づいて生成され、検索画面40と同様に遠近法で表示される。下位情報は、運転者の前方視野を妨げないように極力簡素化した内容を表示するのが望ましい。
【0034】
図7は検索画面40の幾つかの表示形態を示す説明図である。検索画面40は前景の路面形状に合わせて遠近法で表示され、上方の最も遠方のコンテンツ(リスト41)はパースペクティブ量を下げ、ほぼ垂直方向に立ち上がった状態で表示するとよい。垂直方向に立てることにより遠方リストであっても文字が読みやすくなる。
【0035】
遠方のコンテンツは、相対的にサイズが圧縮されるが、パースペクティブ量を下げることで垂直方向に立ち上がるように表現され、リストの情報が把握しやすくなる。本来であれば遠方コンテンツのフォントは変形量が大きくなり、かつ、描画スペースが狭小となるが、垂直方向に立ち上げることで(必ずしも路面と直角でなくてもよい)、遠方コンテンツの視認性を改善することができる。最遠方のコンテンツ領域は、正確には前走車または前々走車の路面レベルより上に位置するが、ナンバープレートなど運転者が捕捉すべき情報が遮蔽されない位置に表示するとよい。一方、下方の手前側のコンテンツ(リスト45,46など)は相対的に文字が大きくなるため、パースペクティブ量(傾き量)が増えても視認性への影響は少ない。
【0036】
また遠方のコンテンツ(例えばリスト41,42,43)は、背景のコントラストを上げて表示するとよい。遠方のコンテンツほど背景のコントラスト比を上げることにより、リスト全体の視認性を均一的に確保することができる。
【0037】
またリスト41〜46の数が多い場合は、各リストの一部(上部、下部)が重なるように表示しても良い。重ね表示することで単位面積当たりに表現できるリストを増やすことができる。特に下方の手前側のリストは文字を大きく表示することができるため、下方のリストほど重なり量を増やしても意味を把握することができる。
【0038】
さらに、選択したリストについてはハイライト表示等により他のリストと異なる形態で描画するとよい。例えば図7のリスト46のように立体的な表示方法を用いて文字が浮き上がるように表示し、他の選択されなかったリストと容易に識別できるようにしてもよい。こうして選択されている情報を区別することで容易に把握することができる。
【0039】
図8は走行中の道路がカーブしている場合の検索画面40の表示例を示す図である。進行先の道路がどの方向に、どれくらいの曲率でカーブしているかは、データベース131の道路情報をもとに判断することができるため、検索画面40を表示するときに、カーブの曲がり具合に応じて検索画面40を同様に曲げて表示することができる。
【0040】
図9は自車両内の表示器31に表示される画面の一例を示す説明図である。表示器31はナビゲーションの検索画面を表示する専用表示器(CID)として機能するもので、各種の検索用の画面が表示される。しかしながら、表示器31の表示密度が濃いと運転者は表示内容の把握が難しくなる。
【0041】
本実施形態では、本来は表示器31に表示される検索リスト41〜46をフロントガラスFGに表示することにより、表示器31の表示情報を減らすことができ、よりシンプルな画面にすることができるため、運転者の視認性を向上することができる。
【0042】
図10は、システム制御部11の制御のもとに行われる検索画面40の表示動作を示すフローチャートである。図10のステップS0はスタートステップであり、ステップS1では、ナビゲーションメニューの操作モードか否かを判断する。例えば表示キー151が操作されたか否かを判断する。メニュー操作モードであれば、ステップS2で前方車両との車間距離が予め設定した距離以上か否かを判断する。
【0043】
予め設定した距離以上であればステップS3に進み、ナビゲーション情報生成部13のデータベース131から検索画面40に表示するリスト情報を抽出する。ステップS1,S2の判断がNOの場合は元に戻る。またステップS2での前方車両との車間距離は測定部18によって測定する。
【0044】
ステップS4では走行中の道路のレーン幅、検索画面40のリストの大きさ、自車両の走行位置の相対関係からHUD上の適切な表示位置を算出する。レーン幅やレーンの数の情報はデータベース131から取得し、自車両の位置情報は車両情報取得部12から取得する。ステップS5ではリスト情報を描画位置に配置する。図5の例で言えば複数のリスト41〜46を順に遠近法で検索画面40の各位置に配置する。ステップS6では選択操作を補助するアイコン50を周辺領域302に表示する。
【0045】
ステップS7では自車位置の移動量が設定値以上になったか否かを判断し、ステップS8では前方のレーン形状が設定値以上に変化したか否かを判断する。自車位置の移動量が設定値以下で前方のレーン形状に変化がない場合はステップS9に進む。また自車位置の移動量が設定値以上のとき、又は前方のレーン形状が変化した場合は、ステップS5に戻りリスト情報をレーン形状に合わせた描画位置に配置し直す。例えば図8のように、レーンがカーブしているときはカーブに追わせてリスト情報を配置する。
【0046】
ステップS9では同一メニューか否かを判断する。検索画面40が道路情報や道路の周辺情報に関するリスト41〜46を表示している場合はステップS10に進み、選択したリストをハイライト表示し、ステップS11では選択したリストの下位情報を表示して終了する。
【0047】
一方、ステップS9において別の検索画面を表示する場合は、ステップS3に戻って新たなリスト情報を取得して別のリストで構成される検索画面を表示するように動作する。別の検索画面を表示する場合は、操作部15に「次画面」の表示を指示するキーを設けておき、運転者の操作で別の検索画面を表示する。
【0048】
図11は、ステップS4及びステップS5での検索リスト40の表示処理を説明する説明図である。図11(a)は、例えば高速道路の走行時に自車両の前方に所定の車間距離をおいて他の車両B1(前方車両)が走行しているときの運転者からみた前景を示している。また検索画面40の表示位置と表示形状を斜線で示している。検索画面40は最も遠方側に表示されるリスト41の縦方向の表示幅をRV2とし、リスト41の表示位置の高さをRV1で示す。また検索画面40の下限の高さ位置をRV0で示し、自車両の前方縁の高さ位置をRb0で示している。
【0049】
また、フロントガラスの左端から検索画面40の下端(リスト46)までの横方向の幅をRH1、フロントガラスの右端から検索画面40の下端(リスト46)までの横方向の幅をRH2で示す。またフロントガラスの左端から検索画面40の上端(リスト41)までの横方向の幅をRH3、フロントガラスの右端から検索画面40の上端(リスト41)までの横方向の幅をRH4で示す。
【0050】
一方、図11(b)は画像情報生成部16で生成される検索画面40の表示位置を示している。図11(b)に示すように、画像情報生成部16で生成される画像の横方向のピクセル数をNhとし、縦方向のピクセル数をNvとすると、検索画面40はRv0〜Rv2及びRh1〜Rh4で規定される範囲内のピクセルで構成される。Rv0〜Rv2及びRh1〜Rh4は、(a)のRV0〜RV2及びRH1〜RH4に比例する。
【0051】
図11(b)において、画像領域の下端から検索画面40の下端までの高さはRv0で表わされる。また検索画面40の最も遠方側に表示されるリスト41の縦方向の表示幅はRv2で表され、画像領域の下端からリスト41までの高さはRv1で表される。自車両の前方縁の高さ位置をRb0で示している。また画像領域の左端から検索画面40の左端までの幅はRh1及びRh3で表わされ、画像領域の右端から検索画面40の右端までの幅はRh2及びRh4で表わされる。
【0052】
図12は、図11(b)の高さ方向の幅Rb0、Rv0、Rv1、Rv2を求める計算式の一例を示す図であり、図13は、自車位置(点O)から前方車両B1(点P0の位置)までの距離等を示す側面図であり、運転者の視点位置を点O’で示している。尚、自車両Aと前方車両B1までの距離は、走行時の平均的な車間距離に相当し、自車両Aの速度をもとに算出することができる。点P0は仮想的な前走車B1の最接近位置を示す。
【0053】
図13では、視点位置をO’としたときに、HUDの有効表示内の最大俯角をθdで示し、最大仰角をθeで示している。また前方車両B1の後端を点P0としたとき、点P0から垂直に引いた線と最大俯角θd及び最大仰角θeの線が交わる点を点P2、点P3で示している。また前前方車両B2の後端を点Sで示し、点Oと点P0の間に点Q、点B、点Rを設定している。
【0054】
点Qは仮想的なデータ表示の下限位置であり、点Bは運転者から見える前方路面上の最近接点であり、点Rは水平線と視界下限の交点を示す。また点P0、点Q、点Bから最大俯角θdの線までの高さをそれぞれv1、v0、b0で示している。また点O’と点Sを結ぶ線から点P0までの垂直高さをv2で示している。
【0055】
点Oと点P0間の距離をOP0、点Rと点B間の距離をRB、点Rと点Q間の距離をRQ、点Rと点P0間の距離をRP0、点Sと点P0間の距離をSP0とすると、図11(b)の高さ方向の幅Rb0、Rv0、Rv1、Rv2は、図12の計算式で求めることができる。
【0056】
図12の備考欄に示すように、点Oはナビゲーション情報生成部13からの自車位置情報から求めることができ、点R,B,Q,P0,Sは、設計時点の平均値から推定することができる。したがって、図12の計算式をもとに画像上の検索画面40の垂直方向の高さ位置やサイズを決定することができる。
【0057】
また図14は、図11(b)の水平方向の幅Rh1〜Rh4を求める計算式の一例を示す図であり、図15は、視点位置(点O’)から前方車両B1までの距離等を示す平面図である。
【0058】
図15では、視点位置をO’としたときに、HUDの有効表示内の右眼角度をθrで示し、左眼角度をθlで示している。また前方車両B1の後端を点P1としたとき、点P1から水平方向に引いた線と左眼角度θl及び右眼角度θrの線が交わる点を点P4、点P5で示している。また点O’と点P1の間に点Q1を設定している。点Q1は仮想的なデータ表示の下限位置である。
【0059】
また図15では、走行レーンの境界線をL1,L2で示し、点O’と点P1を結ぶ線を中心に、レーン境界線L1までの幅をWLとし、レーン境界線L2までの幅をWRとしている。また点Q1から水平に線を引き、左眼角度θl及び右眼角度θrの線と交わる点をQ2,Q3としたとき、点Q2から境界線L1までの幅をh1で示し、点Q3から境界線L2までの幅をh2で示している。また点P4から境界線L1までの幅をh3で示し、点P5から境界線L2までの幅をh4で示している。
【0060】
点O’と点P1間の距離をO’P1とすると、図11(b)のRh1〜Rh4は、図14に示す計算式で求めることができる。図14の備考欄に示すように、点O’はナビゲーション情報生成部13からの自車位置情報と設計時点の平均値から推定することができ、点P1と点Q1は設計時点の平均値から推定することができ、WL,WRはデータベース131の値と自車両位置から推定することができる。したがって、図14に示す計算式をもとに画像上の検索画面40の水平方向の位置とサイズを決定することができる。
【0061】
尚、検索画面40を表示する場合、自車両にレーダやカメラを搭載し、前方車両との正確な車間距離を測定し、車間距離が予め設定した距離よりも短くなったときは検索画面40の表示を中止するとよい。検索画面40の表示を中止することにより、前方車両への追突リスクを低減することができ安全性が高まる。つまり、検索画面40の表示を停止したことにより運転者に通知効果が生じ、安全性を高めることができる。
【0062】
また検索画面40の表示を中止した際に、中心領域300の上部や周辺視領域302等を利用して車間距離をとることを促すメッセージを表示するように切り換えるようにしても良い。
【0063】
また自車両にカメラを搭載した場合は、前方の景色をより正確に測定することができるため、中心領域300で運転者が注目すべき事象(例えば、穴、出っ張り、水たまり、小動物等)をカメラで検出した場合には、検索画面40の表示を中止するとよい。
【0064】
さらに、自車両にカメラを搭載した場合は、走行時の天候や時間帯に応じて検索画面40の表示を変えても良い。例えば昼間(日差しが強い場合)や、薄暮、夜間等に応じて検索画面40の明るさやコントラスト、色を自動的に変えることができる。またカメラで撮影した画像をもとに中心領域300に存在する路面領域を特定して形状を推定し、HUDでの検索画面40の表示形状をより実景に近づけるように補正してもよい。
【0065】
以上述べた実施形態によれば、ナビゲーション用の検索機能で頻繁に使用される検索画面を前方車両と自車両との車間位置にリスト表示し、リストをあたかも路面にペイントされているように表示するため、前方視界を遮蔽することなくかつ違和感なく表示することができる。またリスト選択の補助を行うアイコンを周辺視領域に表示することにより、安全性を損なわない操作が可能になる。また車間距離が短くなったときには検索画面の表示を中止することもでき、安全性を考慮した表示を行うことができる。
【0066】
尚、本発明の実施形態は、以上説明した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0067】
10…車両用ディスプレイ装置
11…システム制御部
12…車両情報取得部
13…ナビゲーション情報生成部
131…データベース
14…アンテナ
15…操作部
151…表示キー
152…操作キー
16…画像情報生成部
17…制御信号生成部
18…測定部
20…表示装置(ヘッドアップ・ディスプレイ)
30…表示部
31…表示器
300…中心領域
301…表示領域(ナビ領域)
302…周辺領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション用の情報を格納したデータベースと、
前記データベースから抽出した情報をもとに検索画面を含む画像情報を生成し、前記検索画面を遠近法で描画する画像情報生成部と、
前記画像情報生成部で生成した画像情報を車両のフロントガラスに投影表示するヘッドアップディスプレイと、
前記車両の位置情報に応じて前記画像情報生成部を制御し、前記車両の前方視野における前方車両との車間位置に前記検索画面を路面形状に合わせて表示するように制御する制御部と、
を具備したことを特徴とする車両用ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記画像情報生成部は、複数のリストで構成される検索画面を生成し、
前記複数のリストを操作部によって選択可能にしたことを特徴とする請求項1記載の車両用ディスプレイ装置。
【請求項3】
前記画像情報生成部は、前記複数のリストの選択操作を補助するアイコン情報を前記検索画面の周辺部に生成し、
前記操作部は前記アイコン情報が示す機能を実行する複数のキーを含むことを特徴とする請求項2記載の車両用ディスプレイ装置。
【請求項4】
前記画像情報生成部は、前記検索画面の複数のリストのうち、上方に表示されるリストのパースペクティブ量を下げ、下方に表示されるリストのパースペクティブ量を上げることを請求項2記載の車両用ディスプレイ装置。
【請求項5】
前記画像情報生成部は、前記検索画面の複数のリストのうち、上方に表示されるリストの背景コントラストを上げ、下方に表示されるリストの背景コントラストを下げることを特徴とする請求項2記載の車両用ディスプレイ装置。
【請求項6】
前記画像情報生成部は、前記検索画面の複数のリストの一部が互いに重なり合うようにし、前記複数のリストのうち上方に表示されるリストよりも下方に表示されるリストの重なり量が多くなるようにしたことを特徴とする請求項2記載の車両用ディスプレイ装置
【請求項7】
前記画像情報生成部は、前記検索画面の複数のリストのうち、選択されたリストを他のリストと異なる形態で描画することを特徴とする請求項2記載の車両用ディスプレイ装置。
【請求項8】
前記車両と前方車両との車間距離を測定する測定部を備え、
前記制御部は、前記車両と前方車両との車間距離が予め設定した距離よりも短くなったときに前記検索画面の表示を中止することを特徴とする請求項1記載の車両用ディスプレイ装置。
【請求項9】
前記測定部は前記車両の前方を撮影するカメラを含み、前記カメラで撮影した画像をもとに前方の路面領域を特定して形状を推定し、
前記制御部は、前記画像情報生成部を制御して前記路面領域の形状に合わせて前記検索画面の形状を補正することを特徴とする請求項8記載の車両用ディスプレイ装置。
【請求項10】
前記測定部は前記車両の前方を撮影するカメラを含み、前記カメラによって前記車両の運転者が注目すべき事象が撮影されたとき、前記制御部は前記検索画面の表示を中止することを特徴とする請求項8記載の車両用ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−35784(P2012−35784A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178652(P2010−178652)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(504113008)東芝アルパイン・オートモティブテクノロジー株式会社 (110)
【Fターム(参考)】