説明

車両用ドア

【課題】 インナーパネルとドアトリムとの下端部間に設けられる遮音性のシール部材をドアトリムに容易に接着することができ、しかもインナーパネルとドアトリムとの間に水滴が溜まるのを防止することができる車両用ドアを提供する。
【解決手段】 ドアトリム3のシール部材4が接着される面には、複数の突起31を形成する。この突起31を形成することにより、ドアトリム3とシール部材4との間に、インナーパネル22とドアトリム3との間の空間をシール部材4より下側の外部空間に開放する隙間S1〜S3を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下端部に遮音性のシール部材が設けられた車両用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用ドアは、金属製のアウターパネル及びインナーパネルからなるドアフレームと、インナーパネルに設けられたドアトリムとを有しており、インナーパネルとドアトリムとの下端部間には、遮音性のシール部材が設けられている。このシール部材は、車外において発生する騒音、例えばタイヤが路面を走行する際に発生する騒音がインナーパネルとドアトリムとの間からドア内部に入り込むのを防止し、それによって車内の静粛性を向上させるものである。
【0003】
ところで、インナーパネルとドアトリムとの間には水滴が侵入することがある。例えば、ドアの窓ガラスに付着した水滴の一部がアウターパネルとインナーパネルとの間に侵入する。この水滴は、インナーパネルに形成された各種の孔、例えば窓ガラス昇降ユニット用に形成され孔を通ってインナーパネルとドアトリムとの間に入り込むのである。
【0004】
インナーパネルとドアトリムとの間に侵入した水滴をそれらの下端部間から排出するために、従来の車両用ドアにおいては、上記シール部材として、インナーパネルとドアトリムとの下端部間のシールを必要とする部分の長さより短いシール部材を複数用いている。そして、各シール部材をその長手方向へ互いに離して設けることにより、シール部材間に隙間を形成し、この隙間から水滴を外部に排出するようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シール部材は、通常、ドアトリムのインナーパネルとの対向面の下端部に接着等の手段によって固着されている。この場合、シール部材として、インナーパネルとドアトリムとの下端部間のシールを必要とする部分の長さと等しい長さを有するシール部材が用いられているのであれば、そのシール部材を一回固着するだけで済む。しかし、実際には、水滴の排出のために長さが短い複数のシール部材が用いられている。このため、シール部材の固着を何度も行わなければならず、その分だけ固着に要する手間が増えるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するために、インナーパネルとドアトリムとの下端部間に遮音性のシール部材が設けられた車両用ドアにおいて、上記ドアトリムと上記シール部材との間にこれを上下に貫通する隙間を形成するために、上記ドアトリムの上記シール部材と対向する下端部に凸部又は凹部を設けたことを特徴としている。
この場合、上記凸部が上記シール部材の長手方向に所定の間隔をもって複数設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、ドアトリムの下端部に凸部又は凹部が形成されることにより、シール部材とドアトリムとの下端部間にこれを上下に貫通する隙間が形成される。したがって、インナーパネルとドアトリムとの間に侵入した水滴は、その隙間を通って外部に排出される。しかも、シール部材として、インナーパネルとドアトリムとの下端部間をシールが必要な部分の長さと同一の長さを有する一つのシール部材を用いることができる。したがって、シール部材は一回固着するだけでよく、固着に要する手間を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係る車両ドアの一実施の形態を示す図である。この実施の形態の車両用ドア1は、ドアフレーム2、ドアトリム3、及びドアフレーム2とドアトリム3との下端部間に設けられたシール部材4とを備えている。
【0009】
図2に示すように、ドアフレーム2は、車外側に配置されたアウターパネル21と、車内側に配置されたインナーパネル22とを有している。アウターパネル21とインナーパネル22との前後方向の両端部どうし及び下端部どうしは互いに固定されている。一方、上端部どうしは、互いに離間させられており、その上端部間には、窓ガラス(図示せず)が上下方向へ移動可能に設けられている。インナーパネル22の下端部には、水抜き用の貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0010】
ドアトリム3は、周知のように、車外側から車内側に向かって順次積層された芯材、フォーム層及び表皮(いずれも図示せず)によって構成されている。フォーム層は、省略されることもある。ドアトリム2は、芯材をインナーパネル22と対向させた状態でインナーパネル22に周知の方法によって、例えばクリップによって固定されている。
【0011】
インナーパネル22とドアトリム3(の芯材)との互いに対向する下端部間には、遮音性を有するシール部材4が設けられている。シール部材4は、ウレタン、ゴム等の樹脂を発泡成形してなるものであり、遮音性を向上させるために独立気泡を有している。シール部材4の長さは、インナーパネル22とドアトリム3との下端部のうちの遮音が必要である部分の長さとほぼ同一に設定されている。シール部材4の断面形状は、外力が作用しない自然状態でほぼ正方形をなしている。シール部材4の断面形状は、遮音という目的を達成することができる限り任意である。
【0012】
シール部材4は、その車内側を向く面がドアトリム3(実際には、ドアトリム3の芯材)に接着等の手段によって固着されている。シール部材4の車外側を向く面は、インナーパネル22に押圧接触させられている。シール部材4は、インナーパネル22に固着し、ドアトリム4に押圧接触させてもよい。
【0013】
図2及び図3に示すように、ドアトリム3の下端部、より正確にはドアトリム3の芯材の下端部には、突起31が複数形成されている。突起31は、この実施の形態では3つ形成されているが、一つだけ形成してもよく、二つあるいは4つ以上形成してもよい。また、複数の突起31は、前後方向における一箇所だけでなく、複数個所にそれぞれ形成してもよい。
【0014】
各突起31は、ドア1の前後方向(シール部材4の長手方向)へ互いに離れて配置されている。シール部材4は、突起31の先端部に押圧接触させられている。これにより、シール部材4の突起31近傍部分が、ドアトリム3からインナーパネル22側へ向かって離間させられている。この結果、ドアトリム3とシール部材4との間には、最も前方に位置する突起31によって三角形状の隙間S1が区画され、前後方向に隣接する二つの突起31,31によって長方形状の隙間S2が形成され、最も後方に位置する突起31によって三角形状の突起S3が形成されている。これらの隙間S1,S2,S3は、突起31の上下方向の長さがシール部材4の同方向の幅とほぼ同一に設定されているので、ドアトリム3とシール部材4との間を上下方向に貫通している。したがって、ドアトリム3とインナーパネル22との間の空間がドア1の下側の外部に対し隙間S1〜S3を介して開放されている。
【0015】
上記構成の車両用ドア1によれば、インナーパネル22とドアトリム3との下端部間の遮音を必要とする部分が、複数のシール部材によって密閉されることなく、1本のシール部材4だけで密閉されている。したがって、シール部材4をドアトリム3に接着する場合には、接着工程を複数回にわたって繰り返す必要がなく、一回の接着工程だけで事足りる。よって、接着に要する手間を軽減することができる。しかも、インナーパネル22とドアトリム3との間に侵入した水滴は、隙間S1〜S3を通って排出することができる。
【0016】
図5は、この発明の他の実施の形態を示す図3と同様の断面図である。この実施の形態においては、ドアトリム3(の芯材)のシール部材4が固着される下端部に、突起31に代わる複数の凹部32が形成されている。凹部32は、一つだけ形成してもよい。凹部は、上下方向に延びており、その長さはシール部材4の上下方向の幅より長くなっている。これにより、ドアトリム3とシール部材4との間に、それらの間を貫通する隙間S4が形成されている。その他の、構成は上記実施の形態と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施の形成を示す正面図である。
【図2】図1のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図3】図2のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図4】この発明の他の実施の形態を示す図3と同様の断面図である。
【符号の説明】
【0018】
S1,S2,S3,S4 隙間
1 車両用ドア
2 ドアフレーム
3 ドアトリム
4 シール部材
22 インナーパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーパネルとドアトリムとの下端部間に遮音性のシール部材が設けられた車両用ドアにおいて、
上記ドアトリムと上記シール部材との間にこれを上下に貫通する隙間を形成するために、上記ドアトリムの上記シール部材と対向する下端部に凸部又は凹部を設けたことを特徴とする車両用ドア。
【請求項2】
上記凸部が上記シール部材の長手方向に所定の間隔をもって複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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