説明

車両用ドア

【課題】 車両用ドアの軽量化を図る。
【解決手段】ドアトリム8の一部である中トリム部10には、貫通孔10bを形成する。モジュールパネル6の貫通孔10bと対向する部位には、加飾表皮14を設ける。ドアトリム8の一部である下トリム部11の上端部には、切欠き部11aを形成する。この切欠き部11aにより、下トリム部11とモジュールパネル6の下端部との間に形成された空間の上端部を車内I側に開放し、当該空間を収容ポケット15とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パワーウィンドウユニットやドアロックユニット等の機能部品をモジュールパネルを介してインナーフレームに取り付けるようにした車両用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両ドアは、アウターフレーム及びインナーフレームからなるドアフレームと、インナーフレームの車内側を向く面に取り付けられたモジュールパネルと、インナーフレームにモジュールパネルを覆うようにして取り付けられたドアトリムとを備えており、モジュールパネルの車外側を向く面には、パワーウィンドウユニットやドアロックユニット等の機能部品が取り付けられている。なお、モジュールパネルに取り付けられた各機能部品の大部分は、インナーフレームに形成された孔を通ってドアフレームの内部に入り込んでいる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−88553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の車両用ドアにおいては、機能部品をインナーフレームにモジュールパネルを介して取り付けているので、機能部品をインナーフレームに直接取り付けた車両用ドアに比してモジュールパネルの分だけドア全体の重量が大きくなる。そこで、ドアの重量を軽減することが要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記の問題を解決するために、アウターフレーム及びインナーフレームからなるドアフレームと、上記インナーフレームの車内側を向く面に取り付けられたモジュールパネルと、上記インナーフレームに上記モジュールパネルを覆うようにして取り付けられたドアトリムとを備えた車両用ドアにおいて、上記ドアトリムの上記インナーフレームと対向する部位に、上記ドアトリムを車内外方向に貫通する切欠き部が形成されていることを特徴としている。
この場合、上記モジュールパネルの上記切欠き部と対向する部位に加飾表皮が設けられていることが望ましい。
上記モジュールパネルの下端部と上記ドアトリムの下端部との間に形成された空間が上記切欠き部を介して車内側に開放されることにより、上記モジュールパネルの下端部と上記ドアトリムの下端部との間に収容ポケットが形成されていることが望ましい。
上記ドアトリムが、互いに別体に形成され、かつ下方に向かって順次配置された上トリム部、中トリム部及び下トリム部によって構成され、上記モジュールパネルの上記中パネルから上下方向に突出する上端部及び下端部に上記モジュールパネルを上記インナーフレームに取り付けるための取付部が形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、ドアトリムが切欠き部の分だけ軽くなり、それによってドア全体が軽くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1及び図2は、この発明の一実施の形態を示す。この実施の形態の車両用ドアAは、ドアフレーム1を有している。ドアフレーム1は、車外O側のアウターフレーム2と、車内I側のインナーフレーム3とによって構成されている。アウターフレーム2とインナーフレーム3とは、上端部を除く周縁部が互いに密着固定されている。これにより、アウターフレーム2とインナーフレーム3との間に収容空間4が形成されている。アウターフレーム2とインナーフレーム3との間に形成されるドアフレーム1の上端開口部5には、窓ガラス(図示せず)が上下方向へ移動可能に挿入されている。
【0008】
インナーフレーム3の車内I側の面には、モジュールパネル6が固定されている。モジュールパネル6は、インナーフレーム3より小さく形成されており、室内側から見たとき、モジュールパネル6全体がインナーフレーム3の内側に位置するように配置されている。モジュールパネル6の上端部には上取付部(取付部)6aが形成され、モジュールパネル6の下端部には、下取付部(取付部)6bが形成されている。各取付部6a,6bを貫通してインナーフレーム3に螺合されたビスBを締め付けることにより、モジュールパネル6がインナーフレーム3に固定されている。
【0009】
モジュールパネル6の車外O側を向く面には、パワーウィンドウユニットやドアロックユニット等の機能部品(図示せず)が取り付けられている。この機能部品の大部分は、インナーフレーム3に形成された貫通孔3aを通って収容空間4内に挿入されている。モジュールパネル6には、ワイヤーハーネス7が設けられている。このワイヤーハーネス7は、モジュールパネル6の車内I側を向く面の上下方向における中間部にほぼ水平に配置されている。ワイヤーハーネス7の一部は、モジュールパネル6を貫通して車内側に延び、機能部品に接続されている。
【0010】
インナーフレーム3の車内I側を向く面には、ドアトリム8が固定されている。ドアトリム8は、上トリム部9、中トリム部10及び下トリム部11によって構成されている。上トリム部9、中トリム部10及び下トリム部11は、互いに別体であり、インナーフレーム3の上端部から下端部に向かって順次配置されている。上トリム部9は、室外O側の芯材9aと、室内I側の表皮材9bとから構成されている。芯材9a及び表皮材9bは、周知のドアトリムの芯材及び表皮材と同様に構成されているので、それらの詳細な説明は省略する。中トリム部10も、上トリム部9と同様に、芯材10a及び表皮材10bによって構成されている。一方、下トリム部11は、単層構造とされており、下トリム部11全体が芯材9a,10aと同様の材質によって構成されている。上トリム部9及び中トリム部10を、下トリム部11と同様に単層構造にしてもよい。逆に、下トリム部11を芯材と表皮材とによって構成してもよい。
【0011】
上トリム部9、中トリム部10及び下トリム部11は、インナーフレーム3に固定されている。各トリム部9,10,11は、下トリム部11とモジュールパネル6とを連結固定する周知の固定部材12と同様の固定部材によってインナーフレーム3に固定することができる。勿論、各トリム部9,10,11は、他の固定手段によってインナーフレーム3に固定してもよい。上トリム部9及び中トリム部10も、下トリム部11と同様にしてモジュールパネル6に固定されている。各トリム部9,10,11は、必ずしもモジュールパネル6に固定する必要はない。さらに、上トリム部9の下端部と中トリム部10の上端部、及び中トリム部10の下端部と下トリム部11の上端部とが、固定手段12と同様の固定手段によって互いに固定されている。
【0012】
ドアトリム8は、モジュールパネル6より大きく形成されており、モジュールパネル6全体を覆うように配置されている。ドアトリム8を構成する上トリム部9、中トリム部10及び下トリム部11は、それぞれモジュールパネル6の上部、中間部及び下部を覆うように配置されている。特に、中トリム部10は、その上端部からモジュールパネル6の上取付部6aが上方に突出して車内I側に露出するとともに、中トリム部10の下端部からモジュールパネル6の下取付部6bが下方に突出して車内I側に露出するように配置されている。その一方、上下のトリム部9,11は、それぞれ上取付部6a及び下取付部6bを車内I側から覆うように配置されている。中トリム部10は、ワイヤーハーネス7をブラケット13を介して車外O側に押し、モジュールパネル6とによってワイヤーハーネス7を挟持している。これにより、ワイヤーハーネス7が車両の振動によって移動することなく、モジュールパネル6の所定の部位に位置固定した状態で水平に取り付けられている。
【0013】
中トリム部10には、車外O側に向かって凹む凹部10cが形成されている。この凹部10cの底部全体が切り欠かれることにより、中トリム部10には、凹部10cに連通した貫通孔(切欠き部)10dが形成されている。この貫通孔10dは、モジュールパネル6と対向して配置されている。モジュールパネル6の貫通孔10dと対向する部位には、加飾表皮14が接着等の固着手段によって固着されている。加飾表皮14は、貫通孔10dより大きく形成されており、加飾表皮14の周縁部が貫通孔10dの外側に位置するように配置されている。中トリム部10の貫通孔10dに臨む周縁部は、加飾表皮14を介してモジュールパネル6に押し付けられている。この結果、加飾表皮14及びモジュールパネル6の貫通孔10dを介して車内Iに臨む部分が、あたかも中トリム部10(ドアトリム8)の一部を構成するかのような状況を呈している。
【0014】
下トリム部11の上端部の前後方向における中間部には、切欠き部11aが形成されている。この切欠き部11aにより、下トリム部11とモジュールパネル6の下端部との間に形成された空間の上端部が車内I側に開放されている。この結果、モジュールパネル6と下トリム部11との間には、切欠き部11aを開口部とする収容ポケット15が形成されている。
【0015】
上記構成の車両用ドアAを製造する場合には、まず図3に示すように、アウターフレーム2とインナーフレーム3とを固定してドアフレーム1を構成する。
【0016】
次に、図4に示すように、モジュールパネル6に中トリム10を組み付ける。このとき、モジュールパネル6と中トリム10とによってワイヤーハーネス7を所定の部位に容易に挟持固定することができる。すなわち、モジュールパネル6をインナーフレーム3に取り付けた後、モジュールパネル6に中トリム部10を組み付けるようにした場合には、モジュールパネル6が上下に立った状態になっているため、ワイヤーハーネス7を水平に配置しようとしても、その自重によって垂れ下がってしまう。このため、ワイヤーハーネス7を中トリム部10とモジュールパネル6とによって挟持するようにして、中トリム部10をモジュールパネル6に取り付けることが困難である。そこで、モジュールパネル6には係止部を設け、この係止部によってワイヤーハーネス7を所定の部位に係止しなければならない。ところが、そのようにすると、係止部を形成する手間、及び係止部にワイヤーハーネス7を係止するための手間を要するという問題がある。その点、この実施の形態のように、モジュールパネル6をインナーフレーム3に取り付ける前に中トリム部10をモジュールパネル6に取り付けるようにした場合には、中トリム部10をモジュールパネル6に取り付ける際にモジュールパネル6を水平な姿勢にしておくことができる。それにより、ワイヤーハーネス7を係止部によって係止することなく所定の部位に位置させておくことができる。その状態で中トリム部10をモジュールパネル6に取り付けることにより、ワイヤーハーネス7をモジュールパネル3と中トリム部10とで所定の部位に容易に挟持固定することができる。なお、モジュールパネル6には、中トリム10を組み付ける前に、加飾表皮14を予め固着しておく。
【0017】
中トリム部10をモジュールパネル6に取り付けた後、モジュールパネル6に機能部品が取り付けられる。機能部品は、モジュールパネル6を水平にする際に邪魔にならないのであれば、中トリム部10をモジュールパネル6に取り付ける前にモジュールパネル6に取り付けておいてもよい。また、ワイヤーハーネス7の接続端子7aが中トリム10に設けられたスイッチ16に接続される。
【0018】
次に、図5に示すように、上取付部6a及び下取付部6bにそれぞれ挿通されたビスBをインナーフレーム3にねじ込んで締め付けることにより、モジュールパネル6がインナーフレーム3に固定される。このとき、上取付部6a及び下取付部6bが中トリム部10から上下方向にそれぞれ突出しているので、ビスBの締め付け作業を容易に行うことができる。換言すれば、上取付部6a及び下取付部6bが中トリム部10から上下方向にそれぞれ突出し、ビスBの締め付け作業を容易に行うことができるので、モジュールパネル6をインナーフレーム3に取り付ける前に中トリム部10をモジュールパネル6に取り付けることができ、さらには中トリム部10とモジュールパネル6とによってワイヤーハーネス7を挟持固定することができるのである。モジュールパネル6のインナーフレーム3へ取付後、中トリム部10がインナーフレーム3に取り付けられる。
【0019】
その後、図2に示すように、上トリム部9及び下トリム部11がインナーフレーム3に取り付けられるとともに、モジュールパネル6に連結される。さらに、上トリム部9aの下端部と中トリム部10の上端部とが互いに連結され、中トリム部10の下端部と下トリム部11の上端部とが互いに連結される。これによって、ドアトリム8全体がインナーフレーム3に取り付けられ、モジュールパネル6全体がドアトリム8によって覆われる。
【0020】
上記構成の車両用ドアAにおいては、ドアトリム8に貫通孔10d及び切欠き部11aが形成されているので、その分だけドアトリム8を軽くすることができ、ひいてはドアA全体を軽量化することができる。しかも、モジュールパネル6の貫通孔10d及び切欠き部11aと対向する各部位がドアトリム8の一部として兼用されるので、ドアトリム8に貫通孔10d及び切欠き部11aが形成されることによる美観の低下を防止することができる。
【0021】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、ドアトリム8が互いに別体である上中下の三つのトリム部9,10,11によって構成されているが、ドアトリム8全体を一体に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の一実施の形態を示す図2のX−X線に沿う断面図である。
【図2】同実施の形態の斜視図である。
【図3】同実施の形態のドアフレームを示す斜視図である。
【図4】同実施の形態のモジュールパネルと中トリム部とを示す斜視図である。
【図5】同実施の形態のモジュールパネル及び中トリム部が取り付けられたドアフレームを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
A 車両用ドア
1 ドアフレーム
2 アウターフレーム
3 インナーフレーム
6 モジュールパネル
6a 上取付部(取付部)
6b 下取付部(取付部)
8 ドアトリム
9 上トリム部
10 中トリム部
10d 貫通孔(切欠き部)
11 下トリム部
11a 切欠き部
14 加飾表皮
15 収容ポケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターフレーム及びインナーフレームからなるドアフレームと、上記インナーフレームの車内側を向く面に取り付けられたモジュールパネルと、上記インナーフレームに上記モジュールパネルを覆うようにして取り付けられたドアトリムとを備えた車両用ドアにおいて、
上記ドアトリムの上記インナーフレームと対向する部位に、上記ドアトリムを車内外方向に貫通する切欠き部が形成されていることを特徴とする車両用ドア。
【請求項2】
上記モジュールパネルの上記切欠き部と対向する部位に加飾表皮が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア。
【請求項3】
上記モジュールパネルの下端部と上記ドアトリムの下端部との間に形成された空間が上記切欠き部を介して車内側に開放されることにより、上記モジュールパネルの下端部と上記ドアトリムの下端部との間に収容ポケットが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ドア。
【請求項4】
上記ドアトリムが、互いに別体に形成され、かつ下方に向かって順次配置された上トリム部、中トリム部及び下トリム部によって構成され、上記モジュールパネルの上記中パネルから上下方向に突出する上端部及び下端部に上記モジュールパネルを上記インナーフレームに取り付けるための取付部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−30800(P2007−30800A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220274(P2005−220274)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)