説明

車両用ドア

【課題】ドアフレームの剛性を充分に確保でき、構造簡素で低コストにでき、ドアガラスの挿入作業性が良好な車両用ドアを提供すること。
【解決手段】ドア本体1aの上方にドア窓開口2を形成するドアフレーム1bを備え、ドア本体1a内にドアフレーム1bの前後の縦枠を下方に延長するガイド部材41,42を設け、ドア窓開口2を開閉するドアガラス3の前後の縦縁を昇降案内する車両用ドア構造において、ドア本体1aのインナパネル11には、その上縁のベルトラインDBから下方へ切欠いてドア窓開口2と連続してドアガラス3を挿入可能な切欠部6を形成する。一方のガイド部材41はドア本体1a内に固定しておき、これに切欠部6から挿入したドアガラス3の一方の縦縁を組付け、他方のガイド部材42はこれにドアガラス3の他方の縦縁を組付けた状態でドア本体1a内に固定し、切欠部6をカバーパネル7で塞閉した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ドア、特にドアガラスの組付け作業が容易な車両用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
図4、図5に示すように、車両用ドア1には、インナパネル11とアウタパネル12とで中空構造をなすドア本体1aと、その上部のドアフレーム1bとで囲まれたドア窓開口2を設けて、昇降可能なドアガラス3によりドア窓開口2を開閉するようにしたものが一般的である。
【0003】
ドアガラス3は、ドア本体1aのドアベルトラインDBに沿うインナパネル11およびアウタパネル12の上端間の間隙よりドア本体1a内に挿入してあり、ドアガラス3の前後の縦縁がそれぞれ、ドアフレーム1bの縦方向の前枠部13の内周縁からドア本体1aの前端部内へ延設したガイド部材41、および後枠部14の内周縁からドア本体1aの後端部内へ延設したガイド部42に摺動可能に組付けられ、電動のウィンドウレギュレータ9の駆動で昇降可能としている。各ガイド部材41,42は、断面ほぼコ字形のレール部材からなり、これらの相対向する凹部内にゴム等のガラスラン50を嵌合している。またウィンドウレギュレータ9はインナパネル11の中間位置に形成されたサービスホール17からドア本体1a内へ組み込まれ、サービスホール17はカバーパネル18で覆い隠されている。
【0004】
ところで、ドアガラス3はドアベルトラインDBの上記間隙からドア本体1a内へ縦方向に挿入しなければならない上、前後のガイド部材41,42間のピッチはドアガラス3をガタツキなく昇降させるようにドアガラス3の前後長に合わせてあるので、ドアガラス3を上記間隙へ挿入しつつ、ドアガラス3の前後の縦縁をガイド部材41,42に組付ける作業が難儀である。
【0005】
そこで従来の車両用ドアでは、ドアベルトラインDB位置のドアフレーム1bの後枠部14の根元に切欠き81を設けて、ドアベルトラインDBに沿う上記間隙の長さをドアガラス3の前後長よりも大きくしておく。そして後枠部14の切欠き81に対応してガイド部材42の上端にも切欠きを設けるとともに、ガイド部材42のガラスラン50に、後枠部10の切欠部81へ向けて開口し、ドアガラス3の後方の縦縁をガイド部材42内へ挿通案内する挿入口51を設けて、広げた上記間隙の上方からドアガラス3をドア本体1aへ挿入しつつ、ドアガラス3の前後の縦縁をそれぞれ前後のガイド部材41,42に組付けることが行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。尚、ドアガラス3挿入後、切欠き81がドアモール等で被覆される。
【特許文献1】特開2003−48431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来構造では、ドアフレーム1bの根元部に切欠き81を設けたので、後方の縦枠部14の強度が低下し、ドアフレーム1bの全体の剛性が十分に確保できないおそれがある。またガラスラン50に挿入口51を設けた分、ガラスラン50の構造が複雑となり、例えば押出成形により生産できるものを、型成形しなければならずコスト高となる。そこで本発明は、ドアフレームの剛性を充分に確保でき、構造簡素で低コストにでき、ドアガラスの挿入作業性が良好な車両用ドアを提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インナパネルとアウタパネルとからなるドア本体と、ドア本体の上方にドア窓開口を形成するドアフレームを備え、ドア本体内にドアフレームの前後の縦枠を下方に延長するように延びて昇降するドアガラスの前後の縦縁を案内するガイド部材が設けられた車両用ドア構造において、上記インナパネルには、その上縁のベルトラインから下方へ切欠いて上記ドア窓開口と連続し、ドアガラスを挿入可能な切欠部を形成する。上記ガイド部材の一方はドア本体内に固定しておき、これに上記切欠部から挿入したドアガラスの上記縦縁の一方を組付ける。上記ガイド部材の他方は、これにドアガラスの上記縦縁の他方を組付けた状態でドア本体内に固定する。上記切欠部をカバーパネルで塞する(請求項1)。ドアガラスはインナパネルの切欠部からドア本体内へ挿入でき、ドア本体上縁の狭い間隙からドアガラスを縦方向に挿入する従来構造に比べて挿入作業が容易である。またドア本体に固定した一方のガイド部材にドアガラスの一方の縦縁を嵌め、ドア本体に移動可能に仮止めなどして非固定とした他方のガイド部材にドアガラスの他方の縦縁を嵌め、その後、他方のガイド部材をドア本体に固定するので、ガイド部材への組付け作業も容易である。
【0008】
上記切欠部は、その幅寸法を上記両側のガイド部材間の距離よりも若干狭く形成し、高さ寸法を上記ドアガラスの最大幅長を有する部位の高さ寸法とほぼ同じにする(請求項2)。ドア本体内へドアガラスをその面方向に挿入できるので組付け作業が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1ないし図3に基いて、本発明を自動車のスライドドアに適用した実施形態を説明する。図1、図2に示すように、スライドドア1は、ドア本体1aと、ドア本体1aの上部に設けたドアフレーム1bとでドア窓開口2が形成してある。ドア本体1aとドアフレーム1bとは一体に形成してあり、これらはインナパネル11とアウタパネル12とからなり、両パネルの外周縁を接合した中空構造をなす。ドア本体1a内およびドアフレーム1bには昇降自在でドア窓開口2を開閉するドアガラス3を組付ける。
【0010】
以下、本発明のドアガラスの組付け作業を良好とするドア構造およびドアガラスの組付け手順を説明する。スライドドア1はドアフレーム1bの前枠13がほぼ垂直に設けてある。ドアフレーム1bの後枠14は、ほぼ垂直に起立する下半部に対して上半部が前傾の傾斜状に屈曲形成してある。これによりドア窓開口2の形状は、下半部の前後幅に対して上半部の前後幅が上方へ向けて漸次狭くなる形としてある。ドア窓開口2の上縁はドアフレーム1bの前枠13および後枠14の上端間をつなぐ上枠15により前後方向ほぼ水平に形成してある。
【0011】
ドア窓開口2を囲むドアフレーム1bには、前枠13の内周縁、後枠部14の内周縁および上枠部15の内周縁にそれぞれ、ドアガラス3の周縁を昇降案内する凹状のガイド部材40が設けてある。ガイド部材40はドア窓開口2側へ開口する断面コ字形のレール材からなりこれをインナパネル11とアウタパネル12とで挟み込むように接合するとともに、該レール内にゴム等からなる断面コ字形のガラスラン50が嵌合してある。
【0012】
図1ないし図3に示すように、ドア本体1aの内部前端側には、ドアフレーム1bの前枠13のガイド部材40と一体に形成してこれを垂直下方へ直線状に延設したガイド部材41が挿入してある。ガイド部材41は、ドア窓開口2の下縁に沿うドアベルトラインDBからドア本体1a内の上下ほぼ中間位置まで延設してあり、下端末に設けた取付部45を介してドア本体1a内のインナパネル11の板面に締結固定してある。取付部45は金属板をほぼL字形に屈曲したもので、一片がガイド部材41に接合してあり、屈曲する他片にはインナパネル12側へ突出するスタッドボルトを備え、該スタッドボルトをインナパネル11に設けたボルト貫通孔へ貫通せしえめ、これにナットを締付けてある。
【0013】
ドア本体1a内部の後端側には、前側のガイド部材41に前後方向に対向し、ドアフレーム1bの後枠14のガイド部材40を下方へ直線状に延長するようにガイド部材42が設けてある。尚、ガイド部材42は後枠14のガイド部材40とは別体のレール部材で構成してあり、内部にガイド部材40より下方へ延長したガラスラン50の下端部が嵌合してある。ガイド部材42は前側のガイド部材41とほぼ同じ長さかそれよりも長くしてある。
【0014】
ガイド部材42は上端および下端の2個所に設けた取付部46,46によりインナパネル11の内面に仮止めしてある。各取付部46,46はガイド部材41の取付部45と同様、L字形の金属片で、一片がガイド部材42に接合してあり、他片のスタッドボルトをインナパネル12のボルト貫通孔へ貫通せしめてある。上記ボルト貫通孔はパネル前後方向に長径の長孔状に形成してあり、ガイド部材42は、ドアガラス3を組付ける前ではスタッドボルトに軽くナット部材を付けた状態で締め込まずにおき、前後方向に移動可能に仮止めしておく。
【0015】
インナパネル11には、ドアガラス3をドア本体1a内へ挿入せしめるために、ドアベルトラインDBから下方へ向けてドア窓開口2を拡大するように切欠部6が形成してある。切欠部6の前後幅は、ドア窓開口2の前後幅、および前後のガイド部材41、42間のピッチよりも若干狭く形成してある。切欠部6の深さ寸法は、ドア窓開口2とほぼ同一形状をなすドアガラス3の前後長が最大となる下半部の高さ寸法とほぼ同じに形成してある。
【0016】
ドアガラス3をドア本体1a内へ組付けるには、切欠部6から挿入するが、切欠部6は前後幅がガラス前後長よりも狭いので、図3に示すように、先ず、ドアガラス3の後縁側を切欠部6からドア本体1a内へ挿入し、ガラス後縁を仮止め状態の前後移動可能とした後方のガイド部材42の凹部に嵌入する。
【0017】
そしてガイド部材42を後方へ押し込みつつドアガラス3を後方へ移動させ、ガラス前縁が切欠部6を通過可能となった位置で、ドアガラス3全体をドア本体1a内へ挿入する。その後、ドアガラス3のガラス前縁を前側のガイド部材41の凹部へ嵌入する。そして、仮止め状態の後方のガイド部材42を、これと前方のガイド部材41とでドアガラス3を前後方向に挟み、かつ昇降自在に支持する所定の取付位置に戻し、ナット部材を締め付けて固定する。尚、ガイド部材42を上記所定の取付位置へ戻す作業は、ガイド部材42後方のインナパネル11に形成したサービスホール19などから行なう。
【0018】
その後、図1、図2に示すように、ドアガラス3の下端にガラスを昇降駆動せしめるウィンドウレギュレータ9を連結しつつ、インナパネル11の切欠部6をカバーパネル7で塞ぐ。カバーパネル7は切欠部6よりもひとまわり大きくしてあり、前後の縦縁および下縁を切欠部6の周縁に重ねあわせ、上縁がドアベルトラインDBに沿うように形成してある。
【0019】
カバーパネル7にはその背面側に、予めウィンドウレギュレータ9を取付けておき、ドア本体1a内に組付けたドアガラス3の下縁にウィンドウレギュレータ9の昇降アームを連結せしめる。その後、カバーパネル7の外周を切欠部6の外周に重ね合わせて複数個所をボルト締めする。最後にインナパネル11の表面およびカバーパネル7は、合成樹脂のドアトリムで被覆する。
【0020】
本実施形態によれば、ドア本体1a内にドアガラス3を挿入するとき、従来構造のようにドアベルトラインDB沿いのインナパネル11とアウタパネル12との間の狭い間隙から縦方向に挿入するのではなく、ドア窓開口2を下方へ拡大するように形成したインナパネル11の切欠部6からドアガラス3の面方向に挿入できるので作業が容易である。切欠部6の前後幅がドアガラス3の前後長より小さくても、ドアガラス3を前後方向一方の片側から順に挿入することで容易にできる。
【0021】
また、ドアガラス3の前後の縦縁をドア本体1a内に設けた前後のガイド部材41,42に嵌める際には、ガイド部材41,42のうち、一方(後方の)のガイド部材42を仮止めして前後に移動可能にしておき、こちら側からドアガラス3の縦縁を嵌め、ドアガラス3でガイド部材42を押し込みながら、反対側のガラス縦縁を他方(前方の)のガイド部材41に嵌める。その後に仮止めのガイド部材42を所定の位置に合わせて固定するので、ドアガラス3のガイド部材41,42への嵌入作業も容易にできる。
【0022】
また、ガラスラン50には、従来構造のようにドアガラスを挿入する挿入口が不要で長手方向に同一断面形状でよいので、押出成形でき、構造が簡素でコストアップとならない。
【0023】
尚、上述の実施形態は例示であって本発明の範囲を限定するものではなく、本発明は上述の実施形態を様々に変形、変更したものも含まれる。例えば、上述の実施形態ではドアガラス3を挿入する際に、後方のガイド部材42を移動可能としたが、これに限らず、後方のガイド部材42を固定しておき、前方のガイド部材41を移動可能としてもよい。また本発明はスライドドアに限らず、ドアフレームの前枠が後傾傾斜状をなすフロントドアやヒンジ結合により開閉されるリヤドアに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用したスライドドアの正面図である。
【図2】本発明の要部を示すもので、上記スライドドアの分解図である。
【図3】図3(A),(B)はドアガラスの挿入手順を示すもので、図2のドアベルトラインに沿う位置での断面図である。
【図4】従来のスライドドアの正面図である。
【図5】従来のスライドドアのベルトラインに沿う位置での断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 スライドドア(車両用ドア)
1a ドア本体
1b ドアフレーム
11 インナパネル
12 アウタパネル
13,14 ドアフレームの前後の縦枠
2 ドア窓開口
3 ドアガラス
41,42 ガイド部材
6 切欠部
7 カバーパネル
DB ドアベルトライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナパネルとアウタパネルとからなるドア本体と、ドア本体の上方にドア窓開口を形成するドアフレームを備え、ドア本体内にドアフレームの前後の縦枠を下方に延長するように延びて昇降するドアガラスの前後の縦縁を案内するガイド部材が設けられた車両用ドア構造において、
上記インナパネルには、その上縁のベルトラインから下方へ切欠いて上記ドア窓開口と連続し、ドアガラスを挿入可能な切欠部を形成し、
上記ガイド部材の一方はドア本体内に固定しておき、これに上記切欠部から挿入したドアガラスの上記縦縁の一方を組付け、上記ガイド部材の他方は、これにドアガラスの上記縦縁の他方を組付けた状態でドア本体内に固定し、
上記切欠部をカバーパネルで塞閉してなることを特徴とする車両用ドア。
【請求項2】
上記切欠部は、その幅寸法を上記両側のガイド部材間の距離よりも若干狭く形成し、高さ寸法を上記ドアガラスの最大幅部位の高さ寸法とほぼ同じにした請求項1に記載の車両用ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−149924(P2008−149924A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340680(P2006−340680)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】