説明

車両用ドラムブレーキ

【課題】バックプレートの変形を抑制しながら、補強プレートをバックプレートの外面に容易に取り付けることができる車両用ドラムブレーキを提供する。
【解決手段】補強プレート5は、アンカー部材11とバックプレート2とを重ねた位置に、かしめて固定する第1かしめ部21と、アクスル挿通孔5aを挟んで第1かしめ部21と反対側でバックプレート2にかしめて固定する第2かしめ部22とによって固着される。第1かしめ部21は、アクスル挿通孔5aの中心とアンカー部材11の中心とを結ぶ基準線L1を挟んで、アンカー部材11の取付フランジ11bとバックプレート2と補強プレート5とを重ねた位置に配置する。第2かしめ部22は、第2かしめ部の中心が、第1かしめ部21の基準線L1に最も近い点を通り、基準線L1と平行な第1延長線L2と、第1かしめ部21の基準線L1に最も遠い点を通り、基準線L1と平行な第2延長線L3との間に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドラムブレーキに係り、詳しくは、ドラムブレーキの外面に取り付けられる補強プレートの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドラムブレーキでは、バックプレートを比較的薄い板材で形成し、強度を必要とするアクスル挿通孔の周囲や、ブレーキシューが当接するアンカー部材の取付位置に対応する補強プレートをバックプレートの外面に取り付け、バックプレート全体の重量を抑えながら強度を確保するようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−65429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1のものでは、補強プレートはバックプレートにスポット溶接とリベットによるかしめ固定とによって結合していることから、製造工程が増加し、製造コストが嵩んでいた。また、スポット溶接をした部分では、スポット溶接時の温度によりバックプレートが熱変形する虞があった。
【0005】
そこで本発明は、バックプレートの変形を抑制しながら、補強プレートをバックプレートの外面に容易に取り付けることができる車両用ドラムブレーキを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ドラムブレーキは、内部にブレーキシューを拡縮自在に収容するバックプレートの中央にアクスル挿通孔を設け、前記アクスル挿通孔の外周側に、前記ブレーキシューの先端部を支持するアンカー部材を固設すると共に、前記バックプレートの外面に、少なくとも前記アクスル挿通孔の周囲と前記アンカー部材の取付位置とを補強する補強プレートを取り付けた車両用ドラムブレーキにおいて、前記補強プレートは、前記アンカー部材と前記バックプレートとを重ねた位置に、かしめて固定される第1かしめ部と、前記アクスル挿通孔を挟んで前記第1かしめ部と反対側で前記バックプレートにかしめて固定される第2かしめ部とによって固着されることを特徴としている。
【0007】
また、前記第1かしめ部と前記第2かしめ部とは、前記アクスル挿通孔の中心と前記アンカー部材の中心とを結ぶ基準線を挟んだ対称位置に対となる状態でそれぞれ配置されると好ましい。さらに、前記第1かしめ部と前記第2かしめ部とはそれぞれ1対ずつ設けられ、前記アンカー部材は、該アンカー部材の中心から前記バックプレートの周方向両側に突出する取付フランジを備え、前記第1かしめ部は、前記アクスル挿通孔の中心と前記アンカー部材の中心とを結ぶ基準線を挟んで、前記取付フランジと前記バックプレートと前記補強プレートとを重ねた位置にそれぞれ配置されると共に、前記第2かしめ部は、該第2かしめ部の中心が、前記第1かしめ部の前記基準線に最も近い点を通り、且つ、前記基準線に平行な第1延長線と、前記第1かしめ部の前記基準線に最も遠い点を通り、且つ、前記基準線に平行な第2延長線との間に位置するようにそれぞれ配置されていても良い。また、前記第2かしめ部は、前記バックプレートと前記補強プレートとのいずれか一方に設けた第2かしめ部用突起を、他方に設けた第2かしめ部用挿通孔に挿通し、該第2かしめ部用挿通孔から突出する前記第2かしめ部用突起の突出端をかしめて形成することもできる。さらに、前記補強プレートは、前記バックプレートよりも厚肉に形成され、前記第2かしめ部用突起は、前記補強プレートをハーフピアス加工して形成しても良い。また、前記第1かしめ部は、前記アンカー部材と前記バックプレートと前記補強プレートとにリベット挿通孔を形成し、該リベット挿通孔にリベット部材を挿通し、該リベット挿通孔から突出する前記リベット部材の突出端をかしめて形成することもできる。さらに、前記アンカー部材に第1かしめ部用突起を形成し、前記バックプレートと前記補強プレートとに第1かしめ部用挿通孔を形成し、前記第1かしめ部は、前記第1かしめ部用突起を前記第1かしめ部用挿通孔に挿通し、該第1かしめ部用挿通孔から突出する前記第1かしめ部用突起の突出端をかしめて形成することもできる。また、前記アンカー部材に、アンカー固着用突起を一体に突設し、該アンカー固着用突起を、前記バックプレートと前記補強プレートとに形成したアンカー固着用挿通孔に挿通し、該アンカー固着用挿通孔から突出する前記アンカー固着用突起の突出端をかしめて、前記アンカー部材を前記バックプレートに固着すると好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用ドラムブレーキによれば、かしめ作業を行うだけで、補強プレートをバックプレートに固着することができるので、製造コストの低減化を図ることができると共に、バックプレートが変形する虞がない。また、第1かしめ部と第2かしめ部とは、アクスル挿通孔の中心とアンカー部材の中心とを結ぶ基準線を挟んだ対称位置に対となる状態にそれぞれ配置することにより、第1かしめ部と第2かしめ部とをそれぞれバランス良く配置することができ、バックプレートと補強プレートとを隙間なく強固に固着することができる。さらに、第1かしめ部と第2かしめ部とをそれぞれ1対ずつ設け、一対の第1かしめ部を、前記基準線を挟んで、取付フランジとバックプレートと補強プレートとを重ねた位置にそれぞれ配置することで、アンカー部材をバックプレートに強固に固定できると共に、第2かしめ部と、基準線に対して前記第2かしめ部と同一方向に配置される第1かしめ部とを、基準線から略等距離に配置することにより、第1かしめ部と第2かしめ部とをバランス良く配置して補強プレートを強固に固定することができる。また、第2かしめ部は、バックプレートと補強プレートとのいずれか一方に設けた第2かしめ部用突起を、他方に設けた第2かしめ部用挿通孔に挿通し、該第2かしめ部用挿通孔から突出する第2かしめ部用突起の突出端をかしめて形成することにより、容易にかしめ作業を行うことができると共に、補強プレートの位置決めを容易に行うことができる。さらに、補強プレートをバックプレートよりも厚肉に形成し、補強プレートをハーフピアス加工して第2かしめ部用突起を形成することにより、第2かしめ部用突起を容易に形成することができる。さらに、第1かしめ部は、アンカー部材とバックプレートと補強プレートとにリベット挿通孔を形成し、該リベット挿通孔にリベット部材を挿通し、リベット挿通孔から突出するリベット部材の突出端をかしめて形成することにより、強度の高いリベット部材を用いてアンカー部材と補強プレートとをバックプレートに確実に固着させることができる。また、アンカー部材に第1かしめ部用突起を設け、バックプレートと補強プレートとに第1かしめ部用挿通孔を形成し、第1かしめ部は、第1かしめ部用突起を第1かしめ部用挿通孔に挿通し、該第1かしめ部用挿通孔から突出する第1かしめ部用突起の突出端をかしめて形成することにより、容易にかしめ作業を行うことができると共に、アンカー部材とバックプレートと補強プレートとの位置決めを容易に行うことができる。さらに、アンカー部材に、アンカー固着用突起を一体に突設し、該アンカー固着用突起を、バックプレートと補強プレートとに形成したアンカー固着用挿通孔に挿通し、該アンカー固着用挿通孔から突出するアンカー固着用突起の突出端をかしめることにより、応力の掛かるアンカー部材をより強固にバックプレートに固着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一形態例を示す車両用ドラムブレーキの背面図である。
【図2】同じく車両用ドラムブレーキの正面図である。
【図3】同じくバックプレートの正面図である。
【図4】図3のIV-IV断面図である。
【図5】図3のV-V断面図である。
【図6】図3のVI−VI断面図である。
【図7】図2のVII-VII断面図である。
【図8】図2のVIII-VIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図8は、本発明の第1形態例を示すもので、本形態例のドラムブレーキ1は、デュオサーボ型の機械式ブレーキであって、車体(図示せず)に取付ボルトにてボルト止めされるバックプレート2の内部側に、一次側の第1ブレーキシュー3と二次側の第2ブレーキシュー4とが対向配置され、基端部3a,4aを回動支点として先端部3b,4b側が拡開可能に形成されている。また、バックプレート2の外面には、補強プレート5が固着されている。
【0011】
両ブレーキシュー3,4は、それぞれバックプレート2に平行に配置されるウェブ3c,4cと、該ウェブ3c,4cの外縁に交差方向に固設されるリム3d,4dと、このリム3d,4dの外周面に貼着されるライニング3e,3eとで形成され、ウェブ3c,4cの略中間部がシューホールドピン6,6とシューホールドスプリング7,7とによってバックプレート2に弾持されている。
【0012】
両ブレーキシュー3,4の基端部3a,4a間には、アジャストギア8によるアジャスト機構を備えたフローティングサポート9が配置され、両基端部3a,4a間に張設されたシュー戻しスプリング10によって基端部3a,4aがフローティングサポート9の両端に圧接状態で支持されている。また、両ブレーキシュー3,4の先端部3b,4b間にはアンカー部材11が設けられ、アンカー部材11と先端部3b,4bとの間にそれぞれ張設されたリターンスプリング12,12により、非作動時の両ブレーキシュー3,4を縮径方向に付勢している。
【0013】
第2ブレーキシュー4の先端部4bの近傍には、パーキングレバー13を連結するための支軸14が設けられている。また、パーキングレバー13の他端には、パーキングレバー13を牽引するための牽引手段であるブレーキケーブル15の連結部16が設けられており、ブレーキケーブル15はバックプレートの挿通部2aを通してバックプレート2の外部側から内部側に挿通され、バックプレート2には、ブレーキケーブル15を案内するケーブルガイド2bが取り付けられている。
【0014】
パーキングレバー13における支軸14よりも連結部16側と、第1ブレーキシュー3のウェブ3cの先端部側との間には、アンカー部材11に近接してストラット17が配設されると共に、ストラット17と第2ブレーキシュー4のウェブ4cとの間には、ストラット17を第2ブレーキシュー4側に付勢するストラット戻しスプリング18が張設されている。
【0015】
アンカー部材11は、ウェブ3c,4cの先端部3b,4bが当接するアンカーピン11aと、該アンカーピン11aの基端側からバックプレート周方向両側に突出し、アンカーピン11aをバックプレート2に取り付ける取付フランジ11bと、アンカーピン11aの先端側に係着され、前記ウェブ3c,4cの先端部3b,4bの反バックプレート側面に当接するアンカープレート11cとを備えている。また、アンカーピン11aの基端部には、前記アンカー部材11を前記バックプレートに装着するためのアンカー固着用突起11dが一体に突設され、さらに、取付フランジ11bのアンカーピン11aを挟んだ両側部には、アンカー部材11をバックプレート2に取り付けるためのアンカー側リベット挿通孔11e,11eが設けられている。
【0016】
バックプレート2は、1枚の薄い鋼板をプレス成形して形成され、中央にナックル及びハブユニットを挿通させるアクスル挿通孔2cを設けた円板状で、その内部にはブレーキシュー3,4やアンカー部材11,ケーブルガイド2bを始めとするドラムブレーキ1の各種構成部材が配設されている。また、アクスル挿通孔2cの外周側には、バックプレート2を車体に取り付ける取付ボルトを挿通する4つのボルト挿通孔2dが設けられている。さらに、バックプレート2には、アンカーピン11aに形成したアンカー固着用突起11dを挿通させるためのバックプレート側アンカー挿通孔2eと、前記アンカー部材11のアンカー側リベット挿通孔11e,11eに対応した、バックプレート側リベット挿通孔2f,2f(本発明の第1かしめ部用挿通孔)と、アクスル挿通孔2cを挟んでバックプレート側リベット挿通孔2f,2fと反対側で、フローティングサポート9側に形成される第2かしめ部用挿通孔2g,2gとが設けられている。
【0017】
補強プレート5は、バックプレート2よりも板厚の厚い金属板で形成され、アンカー部材11の取付位置、及び、バックプレート側リベット挿通孔2f,2fの周囲,アクスル挿通孔2cの周囲,4つのボルト挿通孔2dの周囲、第2かしめ部用挿通孔2g,2gの周囲に亘る形状に形成され、略中央部に、前記アクスル挿通孔2cに対応する挿通孔5aが、前記バックプレート側アンカー挿通孔2eに対応する位置に、補強プレート側アンカー挿通孔5bが、バックプレート側リベット挿通孔2f,2fに対応する位置に、補強プレート側リベット挿通孔5c,5c(本発明の第1かしめ部用挿通孔)が、4つのボルト挿通孔2dに対応する位置に4つの通孔5dがそれぞれ設けられている。また、バックプレート2の第2かしめ部用挿通孔2g,2gに対応する位置には、第2かしめ部用突起5e,5eがハーフピアス加工により形成されている。
【0018】
上述のバックプレート2とアンカー部材11と補強プレート5との組み付けは、まず、補強プレート5の第2かしめ部用突起5e,5eを、バックプレート2の第2かしめ部用挿通孔2g,2gに挿通し、アンカー部材11のアンカー個着用突起11dを、バックプレート2のバックプレート側アンカー挿通孔2eと、補強プレート5の補強プレート側アンカー挿通孔5bに挿通する。次いで、リベット部材19,19をアンカー部材11のアンカー側リベット挿通孔11eと、バックプレート2のバックプレート側リベット挿通孔2fと、補強プレート5の補強プレート側リベット挿通孔5cとにそれぞれ挿通し、リベット部材19,19の突出端をかしめ、第1かしめ部21,21を形成する。さらに、第2かしめ部用突起5e,5eの突出端をかしめて、第2かしめ部22,22を形成し、アンカー個着用突起11dの突出端をかしめて、アンカー取付け用かしめ部20を形成する。これにより、アンカー取付け用かしめ部20と、第1かしめ部21,21と、第2かしめ部22,22とで、アンカー部材11と、バックプレート2と補強プレート5とを一体的に固着することができるとともに、補強プレート5の第2かしめ部用突起5e,5eを、バックプレート2の第2かしめ部用挿通孔2g,2gに挿通した時点で、補強プレート5の位置決めを容易に行うことができる。
【0019】
このように組み付けられたバックプレート2とアンカー部材11と補強プレート5とは、図1に示されるように、アクスル挿通孔2cを挟んで第1かしめ部21,21の反対側に第2かしめ部22,22が配置されると共に、アクスル挿通孔2cの中心C1とアンカーピン11aの中心C2とを結ぶ基準線L1上に、アンカー取付け用かしめ部20が配置される。また、第1かしめ部21,21は、アンカー部材11の取付フランジ11bとバックプレート2と補強プレート5とを重ねた位置で、基準線L1を挟んだ対称位置に配置される。第2かしめ部22,22は、第2かしめ部22の中心C3が、第1かしめ部21の基準線に最も近い点P1を通り、基準線L1と平行な第1延長線L2と、第1かしめ部21の基準線L1に最も遠い点P2を通り、基準線L1と平行な第2延長線L3との間に位置するようにそれぞれ配置され、且つ、基準線L1を挟んだ対称位置に配置される。
【0020】
本形態例は上述のように形成されることにより、かしめ作業を行うだけで、補強プレート5をバックプレート2に固着することができ、製造コストの低減化を図ることができ、また、従来のように補強プレート5をバックプレート2に溶接することがないのでバックプレート2が熱変形する虞がない。さらに、第1かしめ部21,21と第2かしめ部22,22とはそれぞれ1対ずつ設けられ、第1かしめ部21,21は、アンカー部材11の取付フランジ11bとバックプレート2と補強プレート5とを重ねた位置で、アクスル挿通孔2cの中心C1とアンカーピン11aの中心C2とを結ぶ基準線L1を挟んで対称位置に配置され、第2かしめ部22は、第2かしめ部22の中心C3が、第1かしめ部21の基準線L1に最も近い点P1を通り、基準線L1に平行な第1延長線L2と、第1かしめ部21の基準線L1に最も遠い点P2を通り、基準線L1に平行な第2延長線L3との間に位置するように配置され、且つ、基準線L1を挟んだ対称位置に配置されることにより、バックプレート2と補強プレート5とを、少ないかしめ部でバランス良く強固に固着することができる。また、第2かしめ部22は、補強プレート5に設けた第2かしめ部用突起5eを、バックプレート2に設けた第2かしめ部用挿通孔2gに挿通し、第2かしめ部用挿通孔2gから突出する第2かしめ部用突起5eの突出端をかしめることにより、容易にかしめ作業を行うことができると共に、補強プレート5の位置決めを容易に行うことができる。さらに、第2かしめ部用突起5eは、補強プレート5をハーフピアス加工して形成することにより、第2かしめ部用突起5eを容易に形成することができる。また、第1かしめ部21は、アンカー部材11とバックプレート2と補強プレート5とに、アンカー側リベット挿通孔11e,バックプレート側リベット挿通孔2f,補強プレート側リベット挿通孔5cをそれぞれ形成し、各リベット挿通孔11e,2f,5cにリベット部材19を挿通し、補強プレート側リベット挿通孔5cから突出するリベット部材19の突出端をかしめて形成されることにより、強度の高いリベット部材19を用いてアンカー部材11と補強プレート5とをバックプレート2に確実に固着させることができる。また、アンカー部材11に、アンカー固着用突起11dを一体に突設し、アンカー固着用突起11dを、バックプレート2と補強プレート5とに形成したバックプレート側アンカー挿通孔2eと補強プレート側アンカー挿通孔5bとに挿通し、補強プレート側アンカー挿通孔5bから突出するアンカー固着用突起11dの突出端をかしめることにより、応力の掛かるアンカー部材11を、より強固にバックプレートに固着させることができる。
【0021】
尚、本発明は、上述の形態例に限るものではなく、第1かしめ部や第2かしめ部以外にもかしめ部を設けて、補強プレートをバックプレートに固着させても良い。また、第2かしめ部用突起は、補強プレートをハーフピアス加工して設けるものに限らず、補強プレートと別体の突起を溶着して形成するものでも良い。さらに、第2かしめ部は、バックプレート側にかしめ用突起を、補強プレート側に第2かしめ部用挿通孔をそれぞれ設けるものでも良く、また、リベット部材を用いることもできる。さらに、アンカー部材の取付フランジに、一体または別体の第1かしめ部用突起を形成し、バックプレートと補強プレートとに第1かしめ部用挿通孔を形成し、第1かしめ部用突起を第1かしめ部用挿通孔に挿通してかしめることにより第1かしめ部を形成するものでも良い。また、本発明のドラムブレーキはデュオサーボ型のブレーキに限るものではなく、カム式のドラムブレーキや、リーディング及びトレーリング型のドラムブレーキ、2リーディング型のドラムブレーキ等どのようなタイプのドラムブレーキにも適用でき、補強プレートの形状や板厚は、ドラムブレーキのタイプや性能に応じて適宜決定すれば良い。
【符号の説明】
【0022】
1…ドラムブレーキ、2…バックプレート、2a…挿通部、2b…ケーブルガイド、2c…アクスル挿通孔、2d…ボルト挿通孔、2e…バックプレート側アンカー挿通孔、2f…バックプレート側リベット挿通孔、2g…第2かしめ部用挿通孔、3…第1ブレーキシュー、3a,4a…基端部、3b,4b…先端部、3c,4c…ウェブ、3d,4d…リム、3e,4e…ライニング、5…補強プレート、5a…挿通孔、5b…補強プレート側アンカー挿通孔、5c…補強プレート側リベット挿通孔、5d…通孔、5e…第2かしめ部用突起、6…シューホールドピン、7…シューホールドスプリング、8…アジャストギア、9…フローティングサポート、10…シュー戻しスプリング、11…アンカー部材、11a…アンカーピン、11b…取付フランジ、11c…アンカープレート、11d…アンカー固着用突起、11e…アンカー側リベット挿通孔、12…リターンスプリング、13…パーキングレバー、14…支軸、15…ブレーキケーブル、16…連結部、17…ストラット、18…ストラット戻しスプリング、19…リベット部材、19a…頭部、20…アンカー取付け用かしめ部、21…第1かしめ部、22…第2かしめ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にブレーキシューを拡縮自在に収容するバックプレートの中央にアクスル挿通孔を設け、前記アクスル挿通孔の外周側に、前記ブレーキシューの先端部を支持するアンカー部材を固設すると共に、前記バックプレートの外面に、少なくとも前記アクスル挿通孔の周囲と前記アンカー部材の取付位置とを補強する補強プレートを取り付けた車両用ドラムブレーキにおいて、前記補強プレートは、前記アンカー部材と前記バックプレートとを重ねた位置に、かしめて固定される第1かしめ部と、前記アクスル挿通孔を挟んで前記第1かしめ部と反対側で前記バックプレートにかしめて固定される第2かしめ部とによって固着されることを特徴とする車両用ドラムブレーキ。
【請求項2】
前記第1かしめ部と前記第2かしめ部とは、前記アクスル挿通孔の中心と前記アンカー部材の中心とを結ぶ基準線を挟んだ対称位置に対となる状態でそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1記載の車両用ドラムブレーキ。
【請求項3】
前記第1かしめ部と前記第2かしめ部とはそれぞれ1対ずつ設けられ、前記アンカー部材は、該アンカー部材の中心から前記バックプレートの周方向両側に突出する取付フランジを備え、前記第1かしめ部は、前記アクスル挿通孔の中心と前記アンカー部材の中心とを結ぶ基準線を挟んで、前記取付フランジと前記バックプレートと前記補強プレートとを重ねた位置にそれぞれ配置されると共に、前記第2かしめ部は、該第2かしめ部の中心が、前記第1かしめ部の前記基準線に最も近い点を通り、且つ、前記基準線に平行な第1延長線と、前記第1かしめ部の前記基準線に最も遠い点を通り、且つ、前記基準線に平行な第2延長線との間に位置するようにそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1または2記載の車両用ドラムブレーキ。
【請求項4】
前記第2かしめ部は、前記バックプレートと前記補強プレートとのいずれか一方に設けた第2かしめ部用突起を、他方に設けた第2かしめ部用挿通孔に挿通し、該第2かしめ部用挿通孔から突出する前記第2かしめ部用突起の突出端をかしめて形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の車両用ドラムブレーキ。
【請求項5】
前記補強プレートは、前記バックプレートよりも厚肉に形成され、前記第2かしめ部用突起は、前記補強プレートをハーフピアス加工して形成されることを特徴とする請求項4記載の車両用ドラムブレーキ。
【請求項6】
前記第1かしめ部は、前記アンカー部材と前記バックプレートと前記補強プレートとにリベット挿通孔を形成し、該リベット挿通孔にリベット部材を挿通し、該リベット挿通孔から突出する前記リベット部材の突出端をかしめて形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の車両用ドラムブレーキ。
【請求項7】
前記アンカー部材に第1かしめ部用突起を設け、前記バックプレートと前記補強プレートとに第1かしめ部用挿通孔を形成し、前記第1かしめ部は、前記第1かしめ部用突起を前記第1かしめ部用挿通孔に挿通し、該第1かしめ部用挿通孔から突出する前記第1かしめ部用突起の突出端をかしめて形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の車両用ドラムブレーキ。
【請求項8】
前記アンカー部材に、アンカー固着用突起を一体に突設し、該アンカー固着用突起を、前記バックプレートと前記補強プレートとに形成したアンカー固着用挿通孔に挿通し、該アンカー固着用挿通孔から突出する前記アンカー固着用突起の突出端をかしめて、前記アンカー部材を前記バックプレートに固着することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の車両用ドラムブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−113333(P2013−113333A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257775(P2011−257775)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】