説明

車両用ナビゲーションシステム

【課題】運転者が画面に注視せねばならない時間を短縮し、車両用ナビゲーションシステムの操作による運転操作への支障を抑制することのできる車両用ナビゲーションシステムを提供する。
【解決手段】道路地図情報等を表示する車両用ナビゲーションシステムであって、道路地図情報を画面表示させる地図表示手段12と、当該画面表示される地図の表示領域を変更する表示領域変更手段36と、当該表示領域変更手段36を操作可能な操作手段14、15と、当該操作手段14、15の操作によって画面表示される可能性が高い特定領域を、予め設定された特定条件に基づいて選択する特定領域選択手段35とを設け、前記表示領域変更手段36において、前記操作手段14、15の所定動作に応じて、前記地図の表示領域を連続的に変更するとともに当該表示領域が前記特定領域選択手段35で選択された特定領域になった場合に、その表示領域の変更を一旦停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画面上に地図表示を行う車両用ナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
前記のような車両用ナビゲーションシステムとしては、一般的に、道路地図情報等の表示を行う画面がインストゥルメントパネルに設置されるとともに、この画面近傍あるいはリモコンに設けられたスイッチ等の操作によりこの車両用ナビゲーションシステムを操作できるように構成されたものが使用されている。そして、車両の運転者がこの車両用ナビゲーションシステムを操作する際に、その運転操作の妨げにならないような工夫がなされたものが各種開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、前記画面に表示される地図の縮尺を拡大及び縮小するための操作スイッチをステアリングホイール近傍に設けた車両用ナビゲーションシステムが開示されている。この車両用ナビゲーションシステムによれば、運転者がステアリングホイールから完全に手を離さずとも地図の拡大及び縮小操作ができるという利点がある。
【特許文献1】特開2004−325082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に示される車両用ナビゲーションシステムでは、前記地図の縮尺が所望の状態になったかどうかを確認する必要があり、運転者は縮尺を変更する毎に画面を注視する必要がある。特に、特定の地点を地図上で検索するために縮尺を変更する場合には、画面上に当該特定の地点が表示されたかどうかを確認しつつ前記操作を繰り返す必要があり、運転者が画面に注視する時間が長くなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑み、運転者が画面を注視せねばならない時間を短縮し、車両用ナビゲーションシステムの操作による運転操作への支障を抑制することのできる車両用ナビゲーションシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、道路地図情報を画面表示させる地図表示手段と、当該画面表示される地図の表示領域を変更する表示領域変更手段と、当該表示領域変更手段を操作可能な操作手段と、当該操作手段の操作によって画面表示される可能性が高い特定領域を、予め設定された特定条件に基づいて選択する特定領域選択手段とを備え、前記表示領域変更手段は、前記操作手段の所定動作に応じて、前記地図の表示領域を連続的に変更するとともに当該表示領域が前記特定領域選択手段で選択された特定領域になった時点で、その表示領域の変更を一旦停止することを特徴とする車両用ナビゲーションシステムを特徴とするものである(請求項1)。
【0007】
本発明によれば、前記表示領域変更手段において、地図の表示領域を連続的に変更するとともに表示される地図が特定領域となった時点でその表示領域の変更を一旦停止するよう構成されており、運転者等が表示領域の変更操作を行う毎に表示領域が特定領域になったかどうかを確認する必要がないので、運転者が車両用ナビゲーションシステムの画面を注視する時間が抑制される。すなわち、車両用ナビゲーションシステムの操作による運転操作への支障を抑制することが可能になる。また、この表示領域変更手段によれば、操作手段の所定動作に応じて表示領域が特定領域へと変更されており、運転者等の操作に基づいて表示領域が変更されることになる。すなわち、運転者等の意思に即して表示領域が変更されるため、運転者等の操作に拠らずに表示領域が自動的に変更される場合に比べて運転者等に与えるストレスを抑制することができる。
【0008】
また本発明において、目的地を設定する目的地設定手段を備え、前記特定条件が、現在時刻、走行道路の状況、車両の状態または車両の現在位置等からなる車両の走行環境および前記目的地設定手段における目的地の設定状況の少なくとも一つであるのが好ましい(請求項2)。
【0009】
このようにすれば、目的地の設定状況や時々刻々変化する走行環境に応じた特定領域が選択されるので、運転者等がこの走行環境等に応じて表示領域を検索する手間を減少させることができる。
【0010】
また本発明において、前記特定領域選択手段が、前記特定条件に基づいて予め設定した特定地点を選択するとともに、当該特定地点が画面表示される領域を特定領域として選択するのが好ましい(請求項3)。
【0011】
このようにすれば、画面上に特定地点を含む特定領域が表示されることになるので、この特定地点の位置を容易に把握することができる。また、地図上に特定地点が表示されているかどうかを確認しつつ表示領域を変更する必要がなくなるので、運転操作への支障をより確実に抑制することができる。
【0012】
また本発明において、目的地を設定する目的地設定手段を備え、特定地点が走行道路の状況が変化する地点と前記目的地設定手段で設定された目的地との少なくとも一方であるのが好ましい(請求項4)。
【0013】
前記特定地点としては、種々のものが設定可能であるが、特に目的地や走行環境が変化する地点を特定地点として選択するよう構成すれば、運転者等が自車両の走行状況を把握しやすくなり、より快適な運転操作が可能になる。
【0014】
また本発明において、前記特定領域選択手段が、前記画面表示される地図上に前記特定地点と車両の現在位置とのどちらもが表示される領域を特定領域として選択するのが好ましい(請求項5)。
【0015】
このようにすれば、運転者等が自車両の現在位置と前記特手地点との位置関係を容易に把握することが可能になる。
【0016】
また本発明において、前記操作手段の所定動作が、当該操作手段が所定時間以上連続して一定の操作状態にあるのが好ましい(請求項6)。
【0017】
このようにすれば、前記操作手段の誤操作により前記表示手段が運転者等の意思に反して特定領域となってしまうのを抑制することができる。
【0018】
また本発明において、前記表示領域が特定領域となった際に、その旨を報知する報知手段が設けられるのが好ましい(請求項7)。
【0019】
このようにすれば、表示領域が特定領域になったかどうかをいちいち目視で確認する必要がなくなるので、運転者等が画面を注視する時間を減少させることができ、車両用ナビゲーションシステムの操作による運転操作への支障をより確実に抑制することができる。
【0020】
また本発明において、前記特定領域に関する付加情報を取得する付加情報取得手段と、当該付加情報取得手段により取得した付加情報を前記画面上に表示する付加情報表示手段とを備え、当該付加情報表示手段が、前記表示領域が特定領域となった際に前記付加情報を前記画面上に表示するのが好ましい(請求項8)。
【0021】
このようにすれば、特定領域に関する情報を運転者が容易に把握することが可能になる。
【0022】
また本発明において、前記付加情報が前記特定地点の近傍に表示されるのが好ましい(請求項9)。
【0023】
このようにすれば、運転者等が特定地点の位置と前記付加情報とをより容易に関連付けて把握することが可能になる。
【0024】
また本発明において、前記操作手段が、ステアリングホイールに設けられるのが好ましい(請求項10)。
【0025】
このようにすれば、運転者等がステアリングホイールから手を離さずとも表示領域変更操作を行うことができ、運転操作への支障をより確実に抑制することができる。
【0026】
また本発明において、前記表示領域変更手段が、前記画面表示される地図の縮尺を変更するものであるのが好ましい(請求項11)。
【0027】
このようにすれば、表示領域変更手段によって表示領域が前記特定領域となるまで地図の拡大、縮小が自動的に行われるので、運転者等による車両用ナビゲーションシステムの操作が容易になる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、運転者等の運転操作への支障を抑制しつつ運転者等による所望の地図表示が可能な車両用ナビゲーションシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。
【0030】
図1は本発明にかかる車両用ナビゲーションシステムの概略図、図2は図1に示されるステアリングホイール付近の拡大図、図3はこの車両用ナビゲーションシステムのブロック図、図4はこの車両用ナビゲーションシステムに設けられるディスプレイ12の表示画面の概略図である。
【0031】
図1および図3に示すように車両用ナビゲーションシステム10は、インストゥルメントパネル1の上部中央付近に設置された液晶モニター等からなるディスプレイ12(画面)と、ステアリングホイール3に設けられたステアリングスイッチ14(操作手段)と、ディスプレイ12の裏面等に設置されたコントロールユニット20とを有している。
【0032】
ディスプレイ12は、前記コントロールユニット20からの画像信号を受信してこの画像信号に基づいた道路地図情報等を表示するものである。また、このディスプレイ12には、図3および図4に示すようにタッチパネル式スイッチ15(操作手段)が設けられている。このタッチパネル式スイッチ15は、図示しないメニューボタンの操作に応じてディスプレイ12上に表示/非表示される。
【0033】
前記ステアリングスイッチ14およびタッチパネル式スイッチ15は、前記コントロールユニット20を操作する操作部であり、これらスイッチ14,15の動作に応じて予め関連付けられた操作信号がコントロールユニット20に出力される。ステアリングスイッチ14は、図2に示すように、運転者がステアリングホイール3から手を離さずとも操作できる位置に設けられている。また、このステアリングスイッチ14は、複数の押しボタンスイッチ14aとトグルスイッチからなる上下スイッチ14bとを有している。これらのうち上下スイッチ14bの操作信号は後述するコントロールユニット20に設けられた表示領域変更手段36に送信され、ディスプレイ12上に表示される地図の表示領域を変更する際に用いられる。具体的には、この上下スイッチ14bの操作により表示領域の縮尺すなわち縮小率を変更することができる。例えば、上下スイッチ14bを押し上げると、表示領域の縮小率が大きくなり広域にわたる地図が表示される。一方、上下スイッチ14bを押し下げると、縮小率が小さくなり詳細な地図が表示されるようになっている。
【0034】
タッチパネル式スイッチ15は、図4に示すように複数のメイン操作アイテムa1〜a5を有している。図例では、目的地をジャンルから検索する際に使用されるメイン操作アイテムa1と、目的地を住所等に基づいて検索する際に使用されるメイン操作アイテムa2と、ディスプレイ12上に表示される地図の縮小率を変更する際に使用されるスケール設定用のメイン操作アイテムa3と、目的地までの経路情報案内に関する各種設定を行う際に使用されるメイン操作アイテムa4と、各種オプションを設定する際に使用されるメイン操作アイテムa5とが設けられている。そして、これら各アイテムが押圧操作されることによりコントロールユニット20に操作信号を出力するよう構成されている。前記メイン操作アイテムa1〜a5のうち前記スケール設定用のメイン操作アイテムa3(以後スケール用スイッチa3)と前記ステアリングスイッチ14の上下スイッチ14bとは同じ機能を有している。すなわち、スケール用スイッチa3の操作信号も表示領域変更手段36に送信されて、ディスプレイ12上に表示される地図の表示領域を変更する際に用いられる。そして、スケール用スイッチa3の上部分を押圧すると表示領域の縮小率が大きくなり広域にわたる地図が表示される。一方、スケール用スイッチa3の下部分を押圧すると前記縮小率が小さくなって詳細な地図が表示されるようになっている。この上下スイッチ14bおよびスケール用スイッチa3の操作と表示領域変更手段36および地図の縮小率の変更方法との関係については後述する。
【0035】
コントロールユニット20は、前記ステアリングスイッチ14やタッチパネル式スイッチ15からの操作信号に応じて種々の演算を行い、演算結果に基づく画像信号をディスプレイ12に出力して、ディスプレイ12の画面制御等を行うものである。さらに、このコントロールユニット20は車両に取り付けられたスピーカー4とも通信しており、前記演算結果に応じた音声信号をスピーカー4に出力している。従って、スピーカー4からはこの音声信号に基づく種々の音声案内が出力されることになる。
【0036】
コントロールユニット20は、図3に示すように、目的地設定手段21、経路誘導手段22、機器設定手段23、走行道路状況検出手段30、現在時刻検出手段31、車両状態検出手段32、現在位置検出手段33、データベース34、特定領域選択手段35、表示領域変更手段36、付加情報取得手段37、付加情報表示手段38、報知手段39を備えている。
【0037】
目的地設定手段21とは、ステアリングスイッチ14やタッチパネル式スイッチ15のうちの前記メイン操作アイテムa1,a2等の操作に基づいて目的地を設定する手段である。この目的地は前述のようにジャンルや住所等から検索可能となっている。経路誘導手段22とは、前記設定された目的地までの経路を導出し、この経路に沿って車両を目的地まで誘導するものである。また、機器設定手段23とは、車両に取り付けられた空調装置やオーディオ等の車載機器の作動状態を制御する手段である。すなわち、本実施形態の車両用ナビゲーションシステム10は、前記空調装置やオーディオ等の車載機器とも通信を行っており、前記スイッチ14,15にはその操作に基づいて前記車載機器を操作できるような機能も搭載されている。
【0038】
走行道路状況検出手段30、現在時刻検出手段31、車両状態検出手段32、現在位置検出手段33とは現在時刻、走行道路の状況、車両の状態または車両の現在位置等からなる自車両の走行環境を検出するものである。走行道路状況検出手段30とは、いわゆるVICS等を用いて自車両周辺あるいは前記経路誘導手段22で導出された経路上の渋滞や交通規制といった道路情報を検出するものである。前記現在時刻検出手段31とは時計であり、現在時刻を検出するものである。車両状態検出手段32とは、燃料センサ等によって燃料タンクの残量を検出するとともに、車両の走行可能距離の演算等を行うものである。現在位置検出手段33とは、GPS(Global Positioning System)や各種センサ等の出力に基づいて車両の現在位置を検出するものである。これら検出された走行環境は、地図情報と関連付けられてディスプレイ12に表示される。例えば図4では、検出された現在位置がディスプレイ12に表示された地図上に矢印P1で示されている。
【0039】
データベース34とは、各種の地図情報や施設情報が収容されたファイルである。例えば、このデータベース34には駐車場やガソリンスタンドの位置およびその営業時間等の情報が収容されている。さらに、データベース34には、ユーザーにより登録された自宅および過去の目的地の位置等が記憶、収容されている。このデータベース34に収容される情報は、前記のようなユーザーによる登録に加えて、外部との通信によっても更新、登録されるようになっている。
【0040】
前記表示領域変更手段36とは、ディスプレイ12上に表示される地図の縮小率を変更するものである。この表示領域変更手段36は、前記ステアリングスイッチ14の上下スイッチ14bあるいはタッチパネル式スイッチ15のスケール用スイッチa3の操作信号を受信し、この操作信号に応じて地図の縮小率を変更した後、その縮小率変更後の地図の画像信号をディスプレイ12に出力している。この表示領域変更手段36で変更可能な縮小率は予め数種類設定されており、当該縮小率は前記上下スイッチ14bあるいはスケール用スイッチa3の操作により段階的に変化するようになっている。前述のように、基本的には、上下スイッチ14bが上方に押し上げられた場合あるいはスケール用スイッチa3の上部分が押圧された場合には、地図の縮小率は大きくなり広域にわたる地図が表示され、上下スイッチ14bが押し下げられた場合あるいはスケール用スイッチa3の下部分が押圧された場合には、地図の縮小率は小さくなり詳細な地図が表示されるようになっている。しかし、この表示領域変更手段36では、上下スイッチ14bあるいはスケール用スイッチa3の操作時間tに応じて、その地図の縮小率の変更方法を変化させている。
【0041】
まず、上下スイッチ14bあるいはスケール用スイッチa3の操作時間tが基準時間t0以下の場合には、その1回の操作によって地図の縮小率が1段階だけ変更されるようになっている。すなわち、その操作回数に応じて縮小率が段階的に変更されるので、例えば縮小率を3段階変化させたい場合には、上下スイッチ14b等の操作(操作時間tがt0以下の操作)を3回行う必要がある。
【0042】
これに対して、上下スイッチ14b等の操作時間tが基準時間t0以上連続した場合、すなわち、上下スイッチ14b等が長押しされた場合には、前記縮小率はディスプレイ12の表示領域が後述する特定領域となるまで連続的に変更され、表示領域が特定領域となった時点でその縮小率の変更が一旦停止されるようになっている。従って、例えば特定領域の縮小率が現在の縮小率に対して3段階異なるものであったとしても、上下スイッチ14b等の操作は1回でよいことになる。
【0043】
前記特定領域は、前記現在時刻、走行道路の状況、車両の状態または車両の現在位置等からなる走行環境や目的地設定手段21の設定状況等に基づいて、ユーザーにより選択される可能性が高いと想定される表示領域である。そして、この特定領域は特定領域選択手段35により選択される。
【0044】
この特定領域選択手段35では、まず、前記目的地設定手段21の設定状況や走行環境等に基づいて運転者等が検索あるいは表示させたがっていると想定される特定地点を決定し、この特定地点と自車両の位置とのどちらもが表示される領域を特定領域として選択する。すなわち、ユーザーが地図上で確認したい特定地点の位置とその特定地点までの経路が把握できるような領域を特定領域として選択している。
【0045】
例えば、前記目的地設定手段21において目的地が設定されている場合には、特定地点として目的地が選択される。また、前記走行道路状況検出手段30により走行道路の渋滞が検出された場合には、渋滞が開始する地点あるいは渋滞が途切れる地点が特定地点として選択される。また、自車両の近くに分岐点が検出された場合にはその分岐点が特定地点として選択される。また、前記車両状態検出手段32により燃料タンクの残量によって走行可能な距離が短くなってきた場合には、データベース34から自車両近傍のガソリンスタンドが特定地点として選択される。また、現在時刻検出手段31により検出された現在時刻が正午前後である場合には、データベース34に収容されているレストランが特定地点として選択される。さらに、現在時刻や走行開始からの時間によっては、予め登録されている自宅地点やデータベース34に収容された走行開始地点等が特定地点として選択される場合がある。
【0046】
そして、このようにして選択された特定地点と現在位置とがどちらも表示され、かつ、現在位置から特定地点までの経路の全体を把握できる領域のうち最も詳細に表示される(縮小率が最小)領域が特定領域として選択される。
【0047】
前記特定地点の選択肢としては前記以外にもデータベース34に多数の地点が収容されており、走行環境に応じて種々の特定地点が選択されるようになっている。この特定地点の選択方法としては、例えば複数の判定基準を設けておき、前記走行環境、走行履歴、ステアリングスイッチ14の操作履歴等に応じて選択するように構成すればよい。また、この複数の判定基準は特定領域選択手段35に記憶させておいてもよいし、データベース34に収容しておいてもよい。
【0048】
前記特定領域の選択結果は、表示領域変更手段36に出力される。表示領域変更手段36では、上下スイッチ14bあるいはスケール用スイッチa3が長押しされたことを検出すると、ディスプレイ12に表示される地図の縮小率を、表示領域が前記選択された特定領域となるまで連続的に変更していく。このように、本車両用ナビゲーションシステム10では、特定領域選択手段35において運転者等が表示させたい領域を予測し、表示領域変更手段36においてその領域を自動的に表示させるようにしている。
【0049】
また、前記特定領域選択手段35では、自車両の現在位置からの距離等に基づき運転者等が表示させたがっていると想定される特定地点の候補を複数選択するとともに、それらを運転者等が選択する可能性の高い順番に整理している。そして、上下スイッチ14bあるいはスケール用スイッチa3の操作時間や操作回数に応じて前記選択される可能性の高い順に特定地点、特定領域を出力している。具体的には、上下スイッチ14bあるいはスケール用スイッチa3が長押しされ、表示領域が第一候補である特定領域になった後も上下スイッチ14bあるいはスケール用スイッチa3が長押しされていれば、次の候補である特定領域になるまで再度表示領域を自動的に変更する。また、表示変更が第一候補である特定領域になった後所定期間を空けずに上下スイッチ14b等が再度長押しされた場合にも、前記のように次の候補である特定領域になるまで再度表示領域を自動的に変更する。さらに、選択された特定領域と現在表示されている領域とが一致する場合にも、上下スイッチ14b等が長押しされると、次の特定領域が選択され表示領域を変更するようになっている。
【0050】
前記付加情報取得手段37は、前記選択された特定地点に関する種々の情報を取得するものである。ここで付加情報とは、特定地点の名称や施設情報および現在位置から特定地点までの距離や特定地点への到達時間等である。この到達時間は、特定地点と現在位置との位置関係および走行道路状況検出手段30で検出された交通情報等に基づいて算出される。そして、ここで取得された付加情報は付加情報表示手段38によってディスプレイ12の特定地点近傍に表示されるとともに、報知手段39によりスピーカー4から音声出力される。
【0051】
また、この報知手段39では、ディスプレイ12上の地図が特定領域となった場合や、現在表示されている領域が既に選択された特定領域である場合にも、その旨を報知する報知音を出力している。
【0052】
次に、以上のように構成された車両用ナビゲーションシステム10の動作についての一例を、図5のフローチャートおよび図6〜図8のディスプレイ12の表示例を用いて説明する。ここで、図6が現在の表示状態とする。
【0053】
まず、ステップS2で現在位置が検出される。現在位置は図6の地図上に矢印P1として表示される。次に上下スイッチ14bあるいはスケール用スイッチa3が押圧操作されると、この操作時間tが計測されるとともにこの操作時間tが予め設定されている基準時間t0よりも大きいか否か、すなわち上下スイッチ14b等が長押しされたかどうかが判断される(ステップS4)。この操作時間tが基準時間t0よりも小さく長押しされなかったと判断された場合には(ステップS4でNo)、報知音1が出力されるとともに(ステップS6)ディスプレイ12上の地図の縮小率が1段階だけ変更される(ステップ8)。前記上下スイッチ14bが押し上げられた場合あるいはスケール用スイッチa3の上部分が押圧された場合には、図7に示すように縮小率が1段階だけ大きくなり、表示領域が縮小されてより広域の地図が表示される。
【0054】
一方、上下スイッチ14bあるいはスケール用スイッチa3の操作時間tが基準時間t0よりも大きく、長押しされたと判断された場合には(ステップS4でYes)、ステップS10に進み目的地設定がなされているかどうかが判断される。ここで、目的地設定がなされている場合(ステップS10でYes)は、設定された目的地が特定地点P2として選択される(ステップS18)。そして、この目的地に関する付加情報が取得される(ステップS19)。前記目的地設定がなされていない場合には(ステップS10でNo)、さらに自宅地点の登録がなされているかどうかが判断される(ステップS12)。自宅登録がなされている場合には(ステップS12でYes)、特定地点P2として自宅地点が選択され(ステップS16)、自宅地点に関する付加情報が取得される(ステップS17)。一方、自宅登録もなされていない場合には(ステップS12でNo)、データベース34に記憶された走行開始地点が特定地点P2として選択され(ステップS14)、走行開始地点に関する付加情報が取得される(ステップS15)。
【0055】
以上のようにして特定地点P2が選択されると、次に特定領域が選択される(ステップS20)。具体的には、選択された特定地点P2と現在位置P1とを表示可能で、かつ現在位置P1から特定地点P2までの経路が表示できる最小限の領域が演算され、予め設定された縮小率のうちこの領域を表示するための縮小率に近い縮小率が選択される。そして、この選択された特定領域が現在の表示領域と一致する場合(ステップS22でYes)には、報知音2が出力される(ステップS26)。一方、特定領域が現在の表示領域と異なっている場合(ステップS22でNo)には、地図の縮小率が1段階変更される(ステップS26)。そして、ステップS27に進み、上下スイッチ14bの長押しが継続しているかどうかが判断される。ここで、上下スイッチ14bの長押しが継続していると判断されなかった場合には(ステップS27でNo)、表示領域が所望の領域になったとみなされ報知音3が出力されて表示領域の変更が終了する(ステップS28)。一方、上下スイッチ14bの長押しが継続していると判断された場合には(ステップS27でYES)、再びステップS22に戻り、ステップS22からの動作が繰り返されることになる。従って、上下スイッチ14bの長押しされている間は表示領域が変更され続け、表示領域が例えば図8に示すような特定領域となった時点で(ステップS22でYES)、前記のように報知音2が出力されるとともに表示領域の変更が一旦停止されることになる。そして、ディスプレイ12上に前記付加情報が表示されるとともに(ステップS30)、この付加情報が報知手段39によってスピーカー4を介して音声出力される(ステップS32)。
【0056】
また、前記のフローチャートでは省略したが、前述のように、一旦特定領域が表示された後、再び所定時間を空けずに上下スイッチ14bあるいはスケール用スイッチa3が同じ方向に長押しされた場合には、既に選択された特定地点を除いた特定地点のうち、ユーザーにより選択される可能性の高い次の候補である特定地点が選択される。そして、新たに選択された特定地点が表示されるまで領域変更が行われる。
【0057】
以上のように、本車両用ナビゲーションシステム10によれば、上下スイッチ14bやスケール用スイッチa3等の長押し操作に応じて、ディスプレイ12上の地図の表示領域を特定領域へと自動的に変更しており、運転者等が表示領域が特定領域となったかどうかをいちいち目視で確認しながら上下スイッチ14b等の操作を行う必要がないので、運転者がディスプレイ12に注視する時間を短縮することができる。すなわち、運転者の運転操作への支障を抑制することができる。
【0058】
特に、走行道路状況検出手段30等により走行環境が検出されるとともに、特定領域選択手段35において、この検出された走行環境や目的地設定手段21における目的地設定状況等に基づき特定領域が選択されているので、時々刻々変化する走行環境に応じた特定領域の選択が可能になる。
【0059】
また、前記特定領域選択手段34において、データベース34等から特定地点を選択し、この特定地点と現在位置とを表示する領域を特定領域として選択するようにしておけば、運転者等はこの特定領域の表示により特定地点までの経路の全体を容易に把握することが可能になる。
【0060】
特に、通常よく表示されると考えられる目的地や走行道路の状況が変化する地点を前記特定地点として設定しておけば、より運転者等の意思に沿った表示領域の選択が可能となる。
【0061】
また、前記のように上下スイッチ14bあるいはスケール用スイッチa3を長押しすることによって表示領域が特定領域へと自動変更されるように構成しておけば、ユーザーの誤操作を抑制することができる。さらに、この上下スイッチ14bあるいはスケール用スイッチa3を基準時間t0以下の時間で操作した際には、前記表示領域が予め設定した段階毎に変化するよう構成されており、表示領域を変更するために複数のスイッチを設ける必要がなくなるので操作が容易になる。
【0062】
また、前記のように報知手段39を設け、表示領域が特定領域になったことを報知するようにすれば、運転者等は現在のディスプレイ12の表示状態を容易に知ることができる。また、付加情報取得手段37および付加情報表示手段38を設け、特定領域あるいは特定地点の付加情報をディスプレイ12上に表示するようにすれば、運転者等が特定領域および特定地点の情報を容易に知ることができる。さらに、前記報知手段39によってこの付加情報を報知するようにすれば、ディスプレイ12を注視する時間をさらに削減することができ、運転操作への支障をより確実に抑制することができる。特に、前記付加情報を特定地点近傍に表示させるようにすれば、付加情報と特定地点とを関連付けて把握することが容易になる。
【0063】
さらに、前記上下スイッチ14bのように表示領域変更手段36の操作手段をステアリングホイール3に設けておけば、運転者はステアリングホイール3から手を離さずとも簡単に表示領域を変更することができる。従って、操作手段の位置をいちいち確認する手間が削減されるので、運転操作への支障をより確実に抑制することが可能になる。
【0064】
ここで、前記実施形態では、上下スイッチ14bあるいはスケール用スイッチa3の操作によってディスプレイ12に表示される地図の縮尺すなわち縮小率が変更される場合について示したが、これらの操作によってディスプレイ12に表示される地図がスクロールするよう構成してもよい。同様に、前記実施形態では、表示領域変更手段36において地図の縮尺すなわち縮小率が変更される場合について示したが、この表示領域変更手段36によって地図の表示位置が変更されるよう構成してもよい。
【0065】
また、前記実施形態では、特定領域選択手段35において、特定領域として前記選択された特定地点と現在位置とのいずれもが表示される領域を選択した場合について示したが、特定領域として前記特定地点付近の詳細地図が表示されるような領域が選択されるようにしてもよい。さらに、この特定領域としては、運転者等により予め設定された縮小率や、コントロールユニット20等が学習、記憶した運転者等の選択回数の多い縮小率そのものであってもよい。
【0066】
また、特定地点、特定領域は前記に限られず、様々な地点、領域が設定可能である。
【0067】
また、前記表示領域変更手段36の操作手段としては、前記上下スイッチ14bやスケール用スイッチa3に限らず、リモコンに設けられたスイッチであってもよい。さらにはマイクからの音声入力であってもよい。
【0068】
また、前記報知音1〜3は異なる音であってもよいし、同一の音であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態に車両用ナビゲーションシステムを有する車両の概略図である
【図2】図1に示す車両用ナビゲーションシステムの一部を拡大して示す拡大図である。
【図3】図1に示す車両用ナビゲーションシステムの概略ブロック図である。
【図4】図1に示す車両用ナビゲーションシステムの画面表示例である。
【図5】図1に示す車両用ナビゲーションシステムの動作状態を示すフローチャートである。
【図6】図1に示す車両用ナビゲーションシステムの画面表示例である。
【図7】図1に示す車両用ナビゲーションシステムの画面表示例である。
【図8】図1に示す車両用ナビゲーションシステムの画面表示例である。
【符号の説明】
【0070】
3 ステアリングホイール
4 スピーカー
10 車両用ナビゲーションシステム
12 ディスプレイ
14 ステアリングスイッチ
14b 上下スイッチ
15 タッチパネル式スイッチ
16 スピーカー
20 コントロールユニット
21 目的地設定手段
22 経路誘導手段
30 走行道路状況検出手段
31 現在時刻検出手段
32 車両状態検出手段
33 現在位置検出手段
34 データベース
35 特定領域選択手段
36 表示領域変更手段
37 付加情報取得手段
38 付加情報表示手段
a3 スケール用スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路地図情報を画面表示させる地図表示手段と、
当該画面表示される地図の表示領域を変更する表示領域変更手段と、
当該表示領域変更手段を操作可能な操作手段と、
当該操作手段の操作によって画面表示される可能性が高い特定領域を、予め設定された特定条件に基づいて選択する特定領域選択手段とを備え、
前記表示領域変更手段は、前記操作手段の所定動作に応じて、前記地図の表示領域を連続的に変更するとともに当該表示領域が前記特定領域選択手段で選択された特定領域になった時点で、その表示領域の変更を一旦停止することを特徴とする車両用ナビゲーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ナビゲーションシステムにおいて、
目的地を設定する目的地設定手段を備え、
前記特定条件が、現在時刻、走行道路の状況、車両の状態または車両の現在位置等からなる車両の走行環境および前記目的地設定手段における目的地の設定状況の少なくとも一つであることを特徴とする車両用ナビゲーションシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用ナビゲーションシステムにおいて、
前記特定領域選択手段が、前記特定条件に基づいて予め設定した特定地点を選択するとともに、当該特定地点が画面表示される領域を特定領域として選択することを特徴とする車両用ナビゲーションシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用ナビゲーションシステムにおいて、
目的地を設定する目的地設定手段を備え、
前記特定地点が走行道路の状況が変化する地点と前記目的地設定手段で設定された目的地との少なくとも一方であることを特徴とする車両用ナビゲーションシステム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の車両用ナビゲーションシステムにおいて、
前記特定領域選択手段が、前記画面表示される地図上に前記特定地点と車両の現在位置とのどちらもが表示される領域を特定領域として選択することを特徴とする車両用ナビゲーションシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の車両用ナビゲーションシステムにおいて、
前記操作手段の所定動作が、当該操作手段が所定時間以上連続して一定の操作状態にあることを特徴とする車両用ナビゲーションシステム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の車両用ナビゲーションシステムにおいて、
前記表示領域が特定領域となった際に、その旨を報知する報知手段が設けられることを特徴とする車両用ナビゲーションシステム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の車両用ナビゲーションシステムにおいて、
前記特定領域に関する付加情報を取得する付加情報取得手段と、
当該付加情報取得手段により取得した付加情報を前記画面上に表示する付加情報表示手段とを備え、
当該付加情報表示手段が、前記表示領域が特定領域となった際に前記付加情報を前記画面上に表示することを特徴とする車両用ナビゲーションシステム。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用ナビゲーションシステムにおいて、
前記付加情報が前記特定地点の近傍に表示されることを特徴とする車両用ナビゲーションシステム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の車両用ナビゲーションシステムにおいて、
前記操作手段が、ステアリングホイールに設けられることを特徴とする車両用ナビゲーションシステム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の車両用ナビゲーションシステムにおいて、
前記表示領域変更手段が、前記画面表示される地図の縮尺を変更するものであることを特徴とする車両用ナビゲーションシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−51644(P2008−51644A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228035(P2006−228035)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】