説明

車両用ニーガード装置

【課題】 グローブボックスの内部容積の増大を図ることができる車両用ニーガード装置を提供する。
【解決手段】助手席の前方下部に設けられたグローブボックス2のリッド4bと、このリッド4bの前方に配置され、前方へ移動するリッド4bを受け止める支持ブラケット7とを備えた車両用ニーガード装置において、上記支持ブラケット7を上記リッド4bの左右方向の中央部と対向するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の衝突時に助手席の乗員の膝部を受け止めて当該乗員が車室内の前方下部に潜り込むことを防止する車両用ニーガード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用ニーガード装置は、特許文献1に記載されているようにグローブボックスの開口部を開閉するリッドと、車体に設けられた一対の支持ブラケットとを有している。リッドは、車両の衝突時に、左右方向の両端部に助手席の乗員の両膝がそれぞれ突き当たるよう、助手席の前方下部に配置されている。一方、一対の支持ブラケットは、リッドの両端部とそれぞれ対向するようにしてその前方に配置されている。したがって、車両の衝突時にリッドが膝に押されて前方へ移動すると、一対の支持ブラケットがリッドに突き当たってこれを受け止め、乗員の両膝をリッドを介して受け止める。これにより、助手席の乗員が社室の前方下部に潜り込むことが防止されている。しかも、支持ブラケットは、所定の大きさ以上の力が前方に向かって作用すると圧縮変形する。それによって、膝に加わる衝撃が緩和されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−321501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のニーガード装置においては、一対の支持ブラケットがリッドの左右方向の両端側に配置されているため、一対の支持ブラケットの分だけグローブボックスの左右方向の長さを短くしなければならない。この結果、グローブボックスの内部容積が小さくなってしまうという問題があった。
【0005】
また、両膝がリッドに同時に突き当たることなく、時間差をもって突き当たることがある。そのような場合には、一方の支持ブラケットが後からリッドに突き当たる膝を受け止める前に、他方のブラケットがリッドに先に突き当たる膝によって圧縮変形させられてしまう。この結果、リッドに先に突き当たる膝に大きな荷重が作用し、当該膝が損傷するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するために、助手席の前方の下部に設けられたグローブボックスのリッドと、このリッドの前方に配置され、前方へ移動するリッドを受け止める支持ブラケットとを備え、上記支持ブラケットに上記リッドを介して所定の大きさ以上の力が前方に向かって作用すると、上記リッドが圧縮変形する車両用ニーガード装置において、上記支持ブラケットが上記リッドの左右方向の中央部と対向するように配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、支持ブラケットがリッドの左右方向と対向するように配置されているので、支持ブラケットがリッドの左右方向の両端部に配置された場合に比してグローブボックスの左右方向の長さを長くすることができ、その内部容積を大きくすることができる。
また、一方の膝がリッドに他方の膝より早く突き当たった場合には、リッドの一端部が前方へ移動させられることにより、支持ブラケットの一端部が若干圧縮変形する。この圧縮変形に伴ってリッドが水平方向へ回動し、リッドの他端部が後方へ移動する。この結果、一方の膝がリッドの一端部に突き当たった後、他方の膝がリッドの他端部に直ちに突き当たる。その後、両膝が支持ブラケットによりリッドを介して支持される。したがって、一方の膝だけに多大の力が作用することがなく、膝が損傷することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図3は、この発明に係る車両用ニーガード装置の一実施の形態を示す。これらの図において、符号1は、インストルメントパネル(以下、インパネと略称することもある。)である。このインパネ1は、車室の前端部に配置されており、車体(図示せず)によって支持されている。インパネ1には、四角形状の切欠き部1aが形成されている。この切欠き部1aは、助手席(図示せず)の前方下部に配置されている。
【0009】
切欠き部1aには、グローブボックス2が設けられている。グローブボックス2は、本体部3及び回動部4を有している。本体部3は、前部(車両の後方を向く部分)が開口した箱状の収容部3aと、この収容部3aの前端部から全周にわたって外側に突出するフランジ部3bとを有している。収容部3aは、切欠き部1aを通ってインパネ1から車両の前方に突出している。フランジ部3bは、切欠き部1aにほとんど隙間なく嵌め込まれ、インパネ1に固定されている。フランジ部3bは、インパネ1の前面(車室内を向く面)の切欠き部1aを囲む部分に突き当てられた状態でインパネ1に固定してもよい。フランジ部3bは、その一部が車体に固定されることもある。
【0010】
回動部4は、上端が開口した箱状の小物入れ部4aと、この小物入れ部4aの前部に一体に設けられたリッド4bとを有している。小物入れ部4aは、収容部3aとほぼ同一の左右方向の長さを有しており、収容部3aに出没可能に収容されている。リッド4bは、フランジ部3bとほぼ同一の形状及び大きさを有しており、その下端部がフランジ部3bの下端部にヒンジ(図示せず)を介して上下方向へ回動可能に連結されている。リッド4bの回動範囲、つまり回動部4の回動範囲は、図2において実線で示す閉位置と、想像線で示す開位置との間に規制されている。回動部4が閉位置に回動すると、小物入れ部4aのほぼ全体が収容部3a内に収容されるとともに、リッド4bの周縁部がフランジ部3bに突き当たる。回動部4が開位置に回動すると、小物入れ部3aの上端開口部の一部が収容部3aから車内側に露出し、そこから小物入れ部3a内に小物を入れることができる。
【0011】
図1〜図3において、符号5はステアリングビームである。ステアリングビーム5は、ステアリングシャフト(図示せず)を支持するためのものであり、その長手方向を左右方向に向けて配置されている。しかも、ステアリングビーム5は、フランジ部3bの上部に対して僅かに斜め上で、その前方に位置するように配置されている。ステアリングビーム5の両端部は、支持部材6,6を介して車体に取り付けられている。
【0012】
ステアリングビーム5には、支持ブラケット7が取り付けられている。支持ブラケット7は、金属製の板材を曲げ加工することによって形成したものであり、上板部7aと、この上板部7aの左右両側部から下方に突出する側板部7b,7bと、上板部7aの先端部から下方に突出し、側板部7bの前端面に溶接等によって固定された前板部7cとから構成されている。上板部7a及び両側板部7b,7bの各基端部は、ステアリングビーム5に固定されている。前板部7cは、フランジ部3bの上部の左右方向におけるほぼ中央部に突き当たった状態で固定されている。この結果、回動部4が閉位置に回動すると、リッド4bの上部の左右方向における中央部が、支持ブラケット7に対向するのみならず、フランジ部3bを介して支持ブラケット7に突き当たる。前板部7cは、フランジ部3bに対して若干後方に離間させておいてもよく、フランジ部3bに固定しなくてもよい。
【0013】
車両の前後方向における側板部7bの中央部には、その下面から上方に向かって切り込まれた切込み溝7dが形成されている。これにより、側板部7bの上下方向の幅が中央部で狭くなり、支持ブラケット7の前後方向における中央部の圧縮強度が他の部分より弱くなっている。したがって、支持ブラケット7の前板部7cに所定の大きさ以上の力が車両の前方へ向かって作用すると、支持ブラケット7が中央部で折れ曲がるように圧縮変形させられる。支持ブラケット7は、蛇腹状に圧縮変形されるものであってもよい。
【0014】
なお、この実施の形態では、ステアリングビーム5がフランジ3bの上部より若干上方に配置されている関係上、支持ブラケット7がその基端側から先端側へ向かって下り勾配をなすように傾斜させられているが、ステアリングビーム5がフランジ3bの上部とほぼ同一位置に配置される場合には、支持ブラケット7がほぼ水平に配置され、ステアリングビーム5がフランジ3bの上部より下方に配置される場合には、支持ブラケット7が上り勾配をなすように傾斜させられる。
【0015】
上記構成の車両用ニーガード装置においては、支持ブラケット7がリッド4bの中央部に配置されているので、リッド4bの左右の両端部に配置された場合に比して小物入れ部4aの左右方向の長さを長くすることができる。よって小物入れ部4aの内部容積を大きくすることができる。
【0016】
また、回動部4が閉位置に位置している状態において、車両の衝突時に助手席の乗員の両膝がリッド4bに突き当たると、乗員の両膝は、リッド4b及びフランジ部3bを介して支持ブラケット7によって受け止められる。したがって、乗員が車内の前部下方に潜り込むことを防止することができる。しかも、支持ブラケット7に所定の大きさ以上の力が車両の前方に向かって作用すると、支持ブラケット7が折れ曲がるように圧縮変形するので、膝に作用する衝撃を緩和することができる。
【0017】
ここで、リッド4bは、支持ブラケット7が圧縮変形する前に大きく変形するものであってはならない。大きく変形するものであると、乗員の潜り込みを防止することができないからである。そこで、この実施の形態では、図2に示すように、リッド4bが前後二つの壁を有する二重壁構造をなしている。しかも、前後二つの壁の間には、左右方向に延びるリブ(図示せず)及び上下方向に延びるリブ(図示せず)が一又は複数宛形成されている。特に、この実施の形態では、前後二つの壁が各リブによって互いに連結されている。これによって、リッド4bの強度向上が図られている。リッド4bの強度向上は、リッド4bを繊維強化樹脂によって形成することによってもなし得る。
【0018】
乗員の両膝が時間差をもってリッド4bに突き当たる場合、例えば右膝が左膝よりリッド4bに先に突き当たる場合には、右膝がリッド4bの右端部(車両の後方から見て右端部)に突き当たると、支持ブラケット7の右側の側板部7b及び天板部7aの右端部が若干圧縮変形する。すると、リッド4bが支持ブラケット7を中心として水平方向へ回動し、リッド4bの左側の端部が車内側に向かって移動して直ちに左膝に突き当たる。その後は、両膝が支持ブラケット7によりリッド4bを介して同時に受け止められる。したがって、右膝にだけ大きな力が作用して損傷することを防止することができる。
【0019】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、本体部3と回動部4とからなるグローブボックス2が用いられているが、周知の他のグローブボックスを用いてもよい。例えば、グローブボックス2を回動部4だけで構成してもよい。その場合には、回動部4がインパネ1に直接回動可能に設けられ、リッド4bが支持ブラケット に直接固定される。また、インパネ1に斜め上方に向かって開口する小物入れ部を設けるとともに、インパネの下端部にリッドを水平な軸線を中心として回動可能に設け、これらの小物入れ部とリッドとによってグローブボックスを構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施の形態の要部を示す透視斜視図である。
【図2】図1のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図3】同実施の形態の要部を分解して示す透視斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
2 グローブボックス
4b リッド
7 支持ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
助手席の前方の下部に設けられたグローブボックスのリッドと、このリッドの前方に配置され、前方へ移動するリッドを受け止める支持ブラケットとを備え、上記支持ブラケットに上記リッドを介して所定の大きさ以上の力が前方に向かって作用すると、上記リッドが圧縮変形する車両用ニーガード装置において、
上記支持ブラケットが上記リッドの左右方向の中央部と対向するように配置されていることを特徴とする車両用ニーガード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−87682(P2008−87682A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272421(P2006−272421)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】