説明

車両用ニーレスト装置

【課題】 不使用時には、運転席と助手席との間の前方に位置する車内空間を狭めることがない車両用ニーレスト装置を提供する。
【解決手段】インストルメントパネル3に形成された切欠き部3aに膝当て部材12を移動可能に挿通する。膝当て部材12は、実線で示す使用位置と想像線で示す格納位置との間を回転軸11を中心として回動可能にする。膝当て部材12は、使用位置に位置しているときには、その大部分がインストルメントパネル3から車内に突出しており、その突出した部分に運転者が膝を押し当てることができる。膝当て部材12は、格納位置に位置しているときには、その全体がインストルメント3に対して車外前方側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転席又は補助席に座った乗員の膝及び/又はその近傍(この発明において膝と称する。)を支持するための車両用ニーレスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツタイプの自動車には、運転席と助手席との間の前方に膝当て部材を設けたものや、ドアに膝当て部材を設けたもの(下記特許文献1参照)がある。膝当て部材は、運転者等の乗員が膝を押し当てるためのものであり、急カーブの道路を比較的高速で走行する場合のように、乗員に大きな横G(水平方向の加速度)が作用するとき、乗員は膝を膝当て部材に押し当てることによって姿勢を所望の姿勢に維持することができる。
【0003】
【特許文献1】実開平6−78062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、膝当て部材は、高速道路の走行中のように、大きな横Gが作用することのない場合には無用の長物であるのみならず、運転席と助手席との間前方の利用可能な空間を狭めてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するために、第1の発明は、車内の運転席と助手席との間の前方に上記運転席又は上記補助席の乗員が膝を押し当てる膝当て部材が配置されてなる車両用ニーレスト装置において、上記運転席及び上記助手席の前方に配置されたインストルメントパネルの下端部に切欠き部を設け、この切欠き部に上記膝当て部材を、上記膝当て部材のほぼ全体が上記インストルメントパネルより車外側前方に位置する格納位置と、上記乗員が膝を上記膝当て部材の上記インストルメントパネルから車内に突出した部分に押し当てることができる使用位置との間を移動可能に挿通したことを特徴としている。
上記の問題を解決するために、第2の発明は、車内の運転席と助手席との間の前方に上記運転席又は上記補助席の乗員が膝を押し当てる膝当て部材が配置されてなる車両用ニーレスト装置において、上記運転席と上記助手席との間に配置されたコンソールボックスの前端部の上面に切欠き部を設け、この切欠き部に上記膝当て部材を、上記膝当て部材のほぼ全体が上記コンソールボックスの上面より車外側下方に位置する格納位置と、上記乗員が膝を上記膝当て部材の上記コンソールボックスから車内に突出した部分に押し当てることができる使用位置との間を移動可能に挿通したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記特徴構成を有する第1又は第2発明によれば、急カーブの多い道路の走行中には、膝当て部材を使用位置に位置させる。運転者は、膝を膝当て部材に押し当てることにより、大きな横Gが作用した場合でも姿勢を所望の姿勢に維持することができる。一方、高速道路のように大きな横Gが作用することがない道路の走行中には、膝当て部材を格納位置に位置させる。これにより、運転席と助手席との間の前方に位置する空間を有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係る車両用ニーレスト装置10が採用された車両の車内を後部座席側から前部座席側に向かって見た斜視図であり、図2はこの発明に係る車両用ニーレスト装置10の概略構成を示す側断面図である。
【0008】
図1に示すように、運転席1及び助手席2の前方には、インストルメントパネル3が設けられており、運転席1と助手席2との間には、コンソールボックス4が設けられている。コンソールボックス4の前端部は、インストルメントパネル3の左右方向における中央の下部にほぼ接するまで延びている。
【0009】
インストルメントパネル3のコンソールボックス4の前端部に隣接する箇所には、車両用ニーレスト装置10,10′が設置されている。二つのニーレスト装置10,10′は、一方のニーレスト装置10が運転者用であるためにインストルメントパネル3の左右方向における中央に対して若干運転席1側寄りに配置されているのに対し、他方のニーレスト装置10′が助手席2の乗員用であるためにインストルメントパネル3の中央に対して若干助手席2側寄りに配置されている点を除き、同一構造を有している。そこで、運転席側ニーレスト装置10についてのみ説明する。
【0010】
図2に示すように、ニーレスト装置10は、左右方向へ向かって水平に延びる回転軸11を有している。この回転軸11は、インストルメントパネル3の下端部近傍でその車外側(前方側;図2において左側)に配置されている。回転軸11は、ステッピングモータ等の回転駆動源(図示せず)によって回転駆動される。
【0011】
インストルメントパネル3には、切欠き部3aが形成されている。この切欠き部3aは、インストルメントパネル3の中央から若干運転席1側寄りの箇所に配置されている。切欠き部3aには、膝当て部材12が移動可能に挿通されている。
【0012】
膝当て部材12は、略扇形の平板状をなしており、扇の要となる部分が回転軸11に固定されている。したがって、膝当て部材12は、回転駆動源により回転軸11を中心として回転駆動される。膝当て部材12の回動範囲は、図2において実線で示す使用位置と、想像線で示す格納位置との間に制限されている。使用位置及び格納位置は、回転駆動源を停止させることによって規制されている。換言すれば、膝当て部材12の使用位置及び格納位置は、停止した回転駆動源によって規制されている。使用位置は、膝当て部材12の一側面12aをコンソールボックス4の上面に付き当てることによって規制してもよい。格納位置は、膝当て部材12の他側面12bに形成された凹部12cの底面を車両のステアリングビーム5に突き当てることによって規制してもよい。
【0013】
膝当て部材12が使用位置に位置しているときには、その一側面12aがコンソールボックス4の上面4aに極く接近した状態で対向しており、凹部12cが形成された他側部を除く膝当て部材12の大部分がインストルメントパネル3から車内側に突出している。運転者は、運転席1に腰掛けた通常の運転姿勢で左足の膝を膝当て部材12のインストルメントパネル3から車内側に突出した部分に押し付けることができる。一方、膝当て部材12が格納位置に位置しているときには、一側面12aがコンソールボックス3の車内に臨む面のうちの切欠き部3a近傍部分とほぼ面一になっており、その結果膝当て部材12のほぼ全体が切欠き部3aからインストルメントパネル3の車内に臨む面より車外側前方に位置している。
【0014】
上記構成の車両用ニーレスト装置10においては、膝当て部材12を使用位置に位置させることにより、通常のニーレスト装置と全く同一に使用することができる。つまり、運転者に車外側から車内中央側への横Gが作用したとき、運転者は左足の膝を膝当て部材12に押し当てることにより、運転姿勢を所望の姿勢に維持することができる。その一方、膝当て部材12を格納位置に移動させることにより、運転席1と助手席2との間の前方に位置する車内空間を有効に利用することができる。ニーレスト装置10′も、運転者と助手席2の乗員との差はあるものの、ニーレスト装置10と同様の効果を奏する。
【0015】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、膝当て部材12をインストルメントパネル3の切欠き部3aに移動可能に挿通しているが、コンソールボックス4の上面4aの前端部に切欠き部を設け、この切欠き部に膝当て部材12を上下方向へ移動可能に挿通してもよい。
また、上記の実施の形態においては、膝当て部材12を、回転軸11を中心として回動させているが、格納位置と使用位置との間を直線移動させてもよい。これは、膝当て部材をコンソールボックス4の上面4aの前端部に切欠き部を設け、この切欠き部に膝当て部材12を移動可能に挿通する場合も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係る車両用ニーレスト装置が設けられた車両を後部座席側から前部座席側に向かって見た斜視図である。
【図2】図1に示す車両に用いられた車両用ニーレストの概略構成を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 運転席
2 助手席
3 インストルメントパネル
4 コンソールボックス
10 車両用ニーレスト装置
10′ 車両用ニーレスト装置
11 回転軸
12 膝当て部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内の運転席と助手席との間の前方に上記運転席又は上記補助席の乗員が膝を押し当てる膝当て部材が配置されてなる車両用ニーレスト装置において、
上記運転席及び上記助手席の前方に配置されたインストルメントパネルの下端部に切欠き部を設け、この切欠き部に上記膝当て部材を、上記膝当て部材のほぼ全体が上記インストルメントパネルより車外側前方に位置する格納位置と、上記乗員が膝を上記膝当て部材の上記インストルメントパネルから車内に突出した部分に押し当てることができる使用位置との間を移動可能に挿通したことを特徴とする車両用ニーレスト装置。
【請求項2】
車内の運転席と助手席との間の前方に上記運転席又は上記補助席の乗員が膝を押し当てる膝当て部材が配置されてなる車両用ニーレスト装置において、
上記運転席と上記助手席との間に配置されたコンソールボックスの前端部の上面に切欠き部を設け、この切欠き部に上記膝当て部材を、上記膝当て部材のほぼ全体が上記コンソールボックスの上面より車外側下方に位置する格納位置と、上記乗員が膝を上記膝当て部材の上記コンソールボックスから車内に突出した部分に押し当てることができる使用位置との間を移動可能に挿通したことを特徴とする車両用ニーレスト装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−298189(P2006−298189A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123612(P2005−123612)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】