説明

車両用バッテリ搭載構造

【課題】軽量化及び低コスト化を図りつつ、後面衝突時にバッテリを保護することができる車両用バッテリ搭載構造を提供する。
【解決手段】車両用バッテリ搭載構造10では、リアサスペンションビーム22が、車両幅方向に延びるビーム本体部36と、このビーム本体部36の車両幅方向外側に形成され車両側面視した場合の断面積がビーム本体部36よりも大きいビーム端部38とを有している。また、バッテリフレーム24のリア部を構成するバックボード44は、車両幅方向に延びてビーム本体部36の車両前側に配置されたボード本体部46を有している。このボード本体部46における車両幅方向外側の端部46Bには、車体フレームに取り付けられた車体取付部54が設けられており、この車体取付部54は、ビーム本体部36における車両幅方向外側の端部36Aの車両前側に該端部36Aと対向して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリ搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の床下にバッテリを搭載した車両用バッテリ搭載構造が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−87774号公報
【特許文献2】特開2011−73581号公報
【特許文献3】特開平7−156826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構造においては、左右一対のリアサスペンションアームを連結するリアサスペンションビームに対し、バッテリが接近した状態で配置される場合がある。この場合には、車両に後面衝突が生じた際に、この後面衝突に伴って車両前側に移動されたリアサスペンションビームが、バッテリを支持するバッテリフレーム内に侵入する虞がある。
【0005】
従って、バッテリを保護するためには、後面衝突時におけるリアサスペンションビームの車両前側への移動を制限することが要求される。また、通常、車体の構造では、軽量化及び低コスト化が要求される。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、軽量化及び低コスト化を図りつつ、後面衝突時にバッテリを保護することができる車両用バッテリ搭載構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両用バッテリ搭載構造は、車両幅方向に延びるビーム本体部と、前記ビーム本体部の車両幅方向外側に形成され車両側面視した場合の断面積が前記ビーム本体部よりも大きいビーム端部と、を有し、後輪を支持する左右一対のリアサスペンションアームを連結するリアサスペンションビームと、車両幅方向に延びて前記ビーム本体部の車両前側に配置されたボード本体部を有し、車両の床下においてバッテリを支持するバッテリフレームのリア部を構成するバックボードと、前記ボード本体部における車両幅方向外側の端部に設けられると共に、前記ビーム本体部における車両幅方向外側の端部の車両前側に該端部と対向して配置され、車体フレームに取り付けられた車体取付部と、を備えている。
【0008】
この車両用バッテリ搭載構造では、リアサスペンションビームが、車両幅方向に延びるビーム本体部と、このビーム本体部の車両幅方向外側に形成され車両側面視した場合の断面積がビーム本体部よりも大きいビーム端部とを有している。また、バッテリフレームのリア部を構成するバックボードは、車両幅方向に延びてビーム本体部の車両前側に配置されたボード本体部を有している。このボード本体部における車両幅方向外側の端部には、車体フレームに取り付けられた車体取付部が設けられており、この車体取付部は、ビーム本体部における車両幅方向外側の端部の車両前側に該端部と対向して配置されている。
【0009】
従って、車両に後面衝突が生じ、リアサスペンションビームが車両前側に移動された場合には、ビーム本体部における車両幅方向外側の端部が車体取付部に当接される。これにより、リアサスペンションビームの車両前側への移動が規制されるので、バッテリを保護することができる。
【0010】
しかも、上述の車体取付部と当接されたビーム本体部における車両幅方向外側の端部は、ビーム端部よりも断面積が小さく形成されている。従って、例えば、ビーム本体部における車両幅方向外側の端部がビーム端部と同様に断面積が大きく形成された場合に比して、車体取付部やボード本体部の剛性を高くしなく済む。これにより、軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0011】
このように、この車両用バッテリ搭載構造によれば、軽量化及び低コスト化を図りつつ、後面衝突時にバッテリを保護することができる。
【0012】
なお、この車両用バッテリ搭載構造では、後面衝突時に衝突体によって後輪が車両前側に押し込まれ続けられることで、ビーム端部がビーム本体部との接続部を起点として車両前側に曲げ変形される。
【0013】
請求項2に記載の車両用バッテリ搭載構造は、請求項1に記載の車両用バッテリ搭載構造において、前記ボード本体部における車両上下方向の少なくとも一部が、前記ビーム本体部と車両上下方向にオーバーラップされ、前記バックボードが、前記ボード本体部の車両幅方向外側に形成されて前記ビーム端部の車両前側に配置されると共に前記ボード本体部よりも前記リアサスペンションビームとの車両上下方向のオーバーラップ量が少ないボード端部を有する構成とされている。
【0014】
この車両用バッテリ搭載構造によれば、バックボードのボード端部は、ボード本体部よりもリアサスペンションビームとの車両上下方向のオーバーラップ量が少なく形成されている。従って、上述のように、ビーム端部がビーム本体部との接続部を起点として車両前側に曲げ変形される場合には、例えば、ボード端部とボード本体部とで、リアサスペンションビームとの車両上下方向のオーバーラップ量が同じとされた場合に比して、ビーム端部がボード端部をすり抜け易くすることができる。これにより、ボード端部にビーム端部から荷重が入力されることを抑制することができるので、ボード端部の剛性を高くしなくて済む。この結果、より一層、軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0015】
請求項3に記載の車両用バッテリ搭載構造は、請求項2に記載の車両用バッテリ搭載構造において、前記ボード端部が、前記ビーム端部に対して車両上下方向にずれて配置された外端部と、前記外端部と前記ボード本体部との間に形成された中間部と、を有し、前記中間部における車両上下方向両側の縁部のうち、前記外端部の車両上下方向における前記ビーム端部側の縁部と連続する縁部は、車両正面視にて車両幅方向に対して傾斜されると共に、少なくとも車両幅方向内側の一部が前記ビーム端部と車両上下方向にオーバーラップされた構成とされている。
【0016】
この車両用バッテリ搭載構造によれば、ボード端部の外端部は、ビーム端部に対して車両上下方向にずれて配置されている。また、この外端部とボード本体部との間には、中間部が形成されている。この中間部における車両上下方向両側の縁部のうち、外端部の車両上下方向におけるビーム端部側の縁部と連続する縁部は、車両正面視にて車両幅方向に対して傾斜されており、その少なくとも車両幅方向内側の一部は、ビーム端部と車両上下方向にオーバーラップされている。
【0017】
従って、上述の如くビーム端部がビーム本体部との接続部を起点として車両前側に曲げ変形された場合には、このビーム端部が、中間部における上述の傾斜された縁部に接するので、このビーム端部が、車両上下方向におけるボード端部側に変位されることが抑制される。これにより、このビーム端部がボード端部を円滑にすり抜けるので、ボード端部にビーム端部から荷重が入力されることをより一層効果的に抑制することができる。
【0018】
請求項4に記載の車両用バッテリ搭載構造は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両用バッテリ搭載構造において、前記ビーム端部が、前記ビーム本体部よりも車両前後方向の寸法が拡大されることで車両側面視した場合の断面積が前記ビーム本体部よりも大きくなっている構成とされている。
【0019】
この車両用バッテリ搭載構造によれば、ビーム端部は、ビーム本体部よりも車両前後方向の寸法が拡大されることで車両側面視した場合の断面積がビーム本体部よりも大きくなっている。従って、例えば、ビーム端部が、ビーム本体部よりも車両上下方向の寸法が拡大されることで車両側面視した場合の断面積がビーム本体部よりも大きくなっている場合に比して、ビーム端部を車両上下方向に小型化することができる。これにより、上述の如くビーム端部がビーム本体部との接続部を起点として車両前側に曲げ変形される場合には、このビーム端部がボード端部をより一層すり抜け易くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上詳述したように、本発明の車両用バッテリ搭載構造によれば、軽量化及び低コスト化を図りつつ、後面衝突時にバッテリを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造が適用された車両の側面図である。
【図2】図1に示される車両の平面図である。
【図3】図2に示される車両用バッテリ搭載構造の要部拡大図である。
【図4】図3に示される車両用バッテリ搭載構造の正面図である。
【図5】図4に示される車両用バッテリ搭載構造における後面衝突時の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、各図において示される矢印UP、矢印FR、矢印LHは、車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向外側(左側)をそれぞれ示している。
【0023】
先ず、本発明の一実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造の構成について説明する。
【0024】
図1に示される車両12は、図示しない電動機(モータ)を駆動源として走行する電気自動車である。この車両12の床下には、電動機へ供給する電力が蓄電されたバッテリ14が搭載されている。そして、この車両12には、本発明の一実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造10が適用されている。
【0025】
つまり、図2に示されるように、車両12の後部には、後輪16を支持する左右一対のリアサスペンションアーム18が設けられている。この左右一対のリアサスペンションアーム18は、車両前後方向に延びている。
【0026】
各リアサスペンションアーム18の前端部には、ブッシュ20がそれぞれ設けられている。このブッシュ20は、図示しない車体フレームにそれぞれ回動可能に取り付けられている。また、各リアサスペンションアーム18の後端部には、後輪16が回転可能に取り付けられている。
【0027】
この左右一対のリアサスペンションアーム18における車両前後方向中央部は、車両幅方向に延びるリアサスペンションビーム22によって連結されている。このリアサスペンションビーム22及びリアサスペンションアーム18は、一例として、トーションビーム式のサスペンション装置を構成している。
【0028】
このリアサスペンションビーム22の車両前側には、車両12の床下においてバッテリ14を車両下側から支持する枠状のバッテリフレーム24が配置されている。このバッテリフレーム24は、左右一対のバッテリサイドフレーム26と、バッテリフロントフレーム28と、バッテリリアフレーム30とを有している。
【0029】
左右一対のバッテリサイドフレーム26は、バッテリフレーム24の左右のサイド部を構成している。この左右一対のバッテリサイドフレーム26は、車両前後方向に延びており、互いに車両幅方向に間隔を空けて配置されている。バッテリフロントフレーム28は、バッテリフレーム24のフロント部を構成している。このバッテリフロントフレーム28は、車両幅方向に延びており、左右一対のバッテリサイドフレーム26の前端部を連結している。
【0030】
また、バッテリリアフレーム30は、バッテリフレーム24のリア部を構成している。このバッテリリアフレーム30は、車両幅方向に延びており、左右一対のバッテリサイドフレーム26の後端部を連結している。
【0031】
左右一対のバッテリサイドフレーム26の間には、車両幅方向に延びると共に車両前後方向に間隔を空けて配置された複数(本実施形態では、2本)のバッテリサブフレーム32が設けられている。そして、これらのバッテリサブフレーム32によって左右一対のバッテリサイドフレーム26が連結され、バッテリフレーム24の剛性が確保されている。
【0032】
バッテリフレーム24の車両上下方向下側には、バッテリ14を車両上下方向下側から覆うバッテリアンダーカバー34が取り付けられている。バッテリアンダーカバー34は、車両前後方向に延びると共に車両幅方向に間隔を空けて複数(本実施形態では、2本)配置され、バッテリフロントフレーム28、バッテリサブフレーム32、及び、バッテリリアフレーム30に溶接等でそれぞれ接合されている。
【0033】
また、この車両用バッテリ搭載構造10は、より具体的には、次のように構成されている。すなわち、図3,図4に示されるように、リアサスペンションビーム22は、車両幅方向に延びるビーム本体部36と、このビーム本体部36の車両幅方向外側に形成されたビーム端部38とを有している。ビーム本体部36は、車両幅方向に亘って略一定の断面で形成されている。
【0034】
一方、ビーム端部38は、ビーム本体部36における車両幅方向外側の端部36Aと接続されたテーパ部40と、このテーパ部40の車両幅方向外側に形成されてリアサスペンションアーム18と接続された接続部42とを有している。テーパ部40は、車両幅方向外側に向かうに従って車両前後方向の寸法が徐々に拡大されており、接続部42は、テーパ部40における車両幅方向外側の端部と同様の断面で形成されている。この接続部42の断面は、車両幅方向に亘って略一定となっている。
【0035】
そして、テーパ部40及び接続部42が上述の如く形成されることにより、このテーパ部40及び接続部42により構成されたビーム端部38は、車両側面視した場合の断面積がビーム本体部36よりも大きくなっている。なお、このビーム端部38における車両上下方向の寸法は、車両幅方向に亘って略一定となっている(図4参照)。このビーム端部38は、ビーム本体部36よりも車両前後方向の寸法が拡大されることで車両側面視した場合の断面積がビーム本体部36よりも大きくなっている(図3参照)。
【0036】
バッテリリアフレーム30は、車両前後方向を板厚方向として車両幅方向に延びるバックボード44と、このバックボード44の下端部から車両前側に延びるアンダーボード45とを有して構成されており、車両側面視にて断面L字状に形成されている。バックボード44は、車両幅方向に延びるボード本体部46と、このボード本体部46の車両幅方向外側に形成されたボード端部48とを有している。
【0037】
ボード本体部46は、ビーム本体部36の車両前側に配置されている。このボード本体部46を有するバックボード44の全体は、図4に示されるように、その車両上下方向の中央部44Aがリアサスペンションビーム22の車両上下方向の中央部22Aに対して車両下側にずれて配置されている。そして、ボード本体部46における上部46A(車両上下方向の一部)は、ビーム本体部36と車両上下方向にオーバーラップされている。このオーバーラップ量はLである。
【0038】
一方、ボード端部48は、ビーム端部38の車両前側に配置されている。このボード端部48は、バックボード44における車両幅方向外側の端部を構成する外端部50と、この外端部50とボード本体部46との間に形成された中間部52と、を有している。
【0039】
外端部50は、ビーム端部38に対して全体的に車両上下方向下側にずれて配置されている。つまり、外端部50における車両上側(車両上下方向におけるビーム端部38側)の縁部50Aは、ビーム端部38における車両下側の縁部38Aよりも車両下側に位置されている。
【0040】
また、中間部52における車両上下方向両側の縁部52A,52Bのうち、車両上側の縁部52A(すなわち、上述の外端部50における車両上側の縁部50Aと連続する縁部)は、車両幅方向外側に向かうに従って車両下側に向かうように、車両正面視にて車両幅方向に対して傾斜されている。また、この縁部52Aにおける車両幅方向内側の一部52A1は、ビーム端部38と車両上下方向にオーバーラップされている。
【0041】
このように、外端部50における車両上側の縁部50Aは、ビーム端部38における車両下側の縁部38Aよりも車両下側に位置されており、縁部50Aと連続する中間部52における車両上側の縁部52Aは、車両幅方向外側に向かうに従って車両下側に向かうように、車両正面視にて車両幅方向に対して傾斜されている。そして、これにより、この外端部50及び中間部52によって構成されたボード端部48は、ボード本体部46よりもリアサスペンションビーム22との車両上下方向のオーバーラップ量が少なくなっている。
【0042】
つまり、上述の如く、縁部52Aにおける車両幅方向内側の一部52A1は、車両正面視にて車両幅方向に対して傾斜している。このため、ボード本体部46における上部46Aのビーム本体部36との車両上下方向におけるオーバーラップ量がLであるのに対し、中間部52における上述の縁部52Aの一部52A1を有する部分52Cとビーム本体部36との車両上下方向におけるオーバーラップ量は、上述のオーバーラップ量Lよりも小さくなっている。
【0043】
また、縁部52Aの残余部52A2と、外端部50における車両上側の縁部50Aとは、いずれもビーム端部38における車両下側の縁部38Aよりも車両下側に位置されている。このため、中間部52における残余部52A2を有する部分52Dのビーム本体部36との車両上下方向におけるオーバーラップ量、及び、外端部50におけるビーム本体部36との車両上下方向のオーバーラップ量は、いずれもゼロとなっている。
【0044】
また、上述のボード本体部46における車両幅方向外側の端部46Bには、車体取付部54が設けられている。この車体取付部54や、バッテリフレーム24に設けられたその他の図示しない車体取付部により、上述のバッテリフレーム24(図2参照)は、図示しない車体フレームに取り付けられている。この車体取付部54は、図3に示されるように、ボード本体部46における車両幅方向外側の端部46Bから車両後側に突出されている。そして、この車体取付部54は、ビーム本体部36における車両幅方向外側の端部36Aの車両前側に該端部36Aと対向して配置されている。
【0045】
次に、本発明の一実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造10の作用及び効果について説明する。
【0046】
図3,図4に示されるように、この車両用バッテリ搭載構造10では、リアサスペンションビーム22が、車両幅方向に延びるビーム本体部36と、このビーム本体部36の車両幅方向外側に形成され車両側面視した場合の断面積がビーム本体部36よりも大きいビーム端部38とを有している。また、バッテリフレーム24のリア部を構成するバックボード44は、車両幅方向に延びてビーム本体部36の車両前側に配置されたボード本体部46を有している。このボード本体部46における車両幅方向外側の端部46Bには、車体フレームに取り付けられた車体取付部54が設けられており、この車体取付部54は、ビーム本体部36における車両幅方向外側の端部36Aの車両前側に該端部36Aと対向して配置されている。
【0047】
従って、車両12に後面衝突(フルラップ衝突又はオフセット衝突)が生じ、リアサスペンションビーム22が車両前側に移動された場合には、図5に示されるように、ビーム本体部36における車両幅方向外側の端部36Aが車体取付部54に当接される。これにより、リアサスペンションビーム22の車両前側への移動が規制されるので、バッテリ14を保護することができる。
【0048】
しかも、上述の車体取付部54と当接されたビーム本体部36における車両幅方向外側の端部36Aは、ビーム端部38よりも断面積が小さく形成されている。従って、例えば、ビーム本体部36における車両幅方向外側の端部36Aがビーム端部38と同様に断面積が大きく形成された場合に比して、車体取付部54やボード本体部46の剛性を高くしなく済む。これにより、軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0049】
このように、この車両用バッテリ搭載構造10によれば、軽量化及び低コスト化を図りつつ、後面衝突時にバッテリ14を保護することができる。
【0050】
特に、この車両12では、図2に示されるように、車両後側から衝突体60(後続の車両)が車両12の後面にオフセットした状態で衝突した場合、この衝突体60によって後輪16が車両前側に押し込まれ続けられる可能性がある。この場合には、図5に示されるように、ビーム端部38がビーム本体部36との接続部56を起点として車両前側に曲げ変形される。
【0051】
しかしながら、この車両用バッテリ搭載構造10によれば、バックボード44のボード端部48は、ボード本体部46よりもリアサスペンションビーム22との車両上下方向のオーバーラップ量が少なく形成されている(図4参照)。従って、上述のように、ビーム端部38が車両前側に曲げ変形される場合には、例えば、ボード端部48とボード本体部46とで、リアサスペンションビーム22との車両上下方向のオーバーラップ量が同じとされた場合に比して、ビーム端部38がボード端部48をすり抜け易くすることができる。
【0052】
つまり、換言すれば、ビーム端部38のボード端部48への突き当りを抑制することができる。これにより、ボード端部48にビーム端部38から荷重が入力されることを抑制することができるので、ボード端部48の剛性を高くしなくて済む。この結果、より一層、軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0053】
また、リアサスペンションアーム18は、ビーム端部38と同じ高さ位置に配置されている(図4参照)。従って、上述の如くビーム端部38が車両前側に曲げ変形された場合には、リアサスペンションアーム18がボード端部48に突き当たることも抑制することができる。
【0054】
また、図4に示されるように、ボード端部48の外端部50は、ビーム端部38に対して車両上下方向にずれて配置されている。また、この外端部50とボード本体部46との間には、中間部52が形成されている。この中間部52における車両上下方向両側の縁部52A,52Bのうち、外端部50における車両上側の縁部50Aと連続する縁部52Aは、車両正面視にて車両幅方向に対して傾斜されており、その車両幅方向内側の一部52A1は、ビーム端部38と車両上下方向にオーバーラップされている。
【0055】
従って、上述の如くビーム端部38が車両前側に曲げ変形された場合には、このビーム端部38が、中間部52における上述の傾斜された縁部52Aに接するので、このビーム端部38が、車両下側に変位されることが抑制される。これにより、このビーム端部38がボード端部48を円滑にすり抜けるので、ボード端部48にビーム端部38から荷重が入力されることをより一層効果的に抑制することができる。
【0056】
また、ビーム端部38は、ビーム本体部36よりも車両前後方向の寸法が拡大されることで車両側面視した場合の断面積がビーム本体部36よりも大きくなっている。従って、例えば、ビーム端部38が、ビーム本体部36よりも車両上下方向の寸法が拡大されることで車両側面視した場合の断面積がビーム本体部36よりも大きくなっている場合に比して、ビーム端部38を車両上下方向に小型化することができる。これにより、上述の如くビーム端部38が車両前側に曲げ変形される場合には、このビーム端部38がボード端部48をより一層すり抜け易くすることができる。
【0057】
なお、ビーム端部38が車両前側に曲げ変形されて、このビーム端部38がボード端部48をすり抜ける場合でも、車体取付部54の剛性が確保されれば、この車体取付部54でビーム本体部36における車両幅方向外側の端部36Aをしっかりと受け止めることができる。これにより、リアサスペンションビーム22の車両前側への移動が規制されるので、バッテリ14を保護することができる。
【0058】
次に、本発明の一実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造10の変形例について説明する。
【0059】
上記実施形態において、ボード本体部46は、図4に示されるように、その上部46Aのみがビーム本体部36と車両上下方向にオーバーラップされていた。しかしながら、ボード本体部46は、その車両上下方向の全体がビーム本体部36と車両上下方向にオーバーラップされていても良い。
【0060】
また、バックボード44は、その車両上下方向の中央部44Aがリアサスペンションビーム22の車両上下方向の中央部22Aに対して車両下側にずれて配置されていた。しかしながら、バックボード44は、図4の場合に対して上下に反転された上で、その車両上下方向の中央部44Aがリアサスペンションビーム22の車両上下方向の中央部22Aに対して車両上側にずれて配置されていても良い。
【0061】
また、縁部52Aは、その車両幅方向内側の一部52A1のみがビーム端部38と車両上下方向にオーバーラップされていたが、その全体がビーム端部38と車両上下方向にオーバーラップされていても良い(つまり、縁部52Aの残余部52A2もビーム端部38と車両上下方向にオーバーラップされていても良い)。
【0062】
また、バッテリリアフレーム30は、車両側面視にて断面L字状に形成されていたが、バックボード44を有する構成であれば、その他の断面形状で形成されていても良い。
【0063】
また、ビーム端部38は、ビーム本体部36よりも車両前後方向の寸法が拡大されることで車両側面視した場合の断面積がビーム本体部36よりも大きくなっていた。しかしながら、ビーム端部38は、ビーム本体部36よりも車両上下方向の寸法が拡大されるか、又は、ビーム本体部36よりも車両上下方向及び車両前後方向の寸法が拡大されることで車両側面視した場合の断面積がビーム本体部36よりも大きくなっていても良い。
【0064】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
10 車両用バッテリ搭載構造
12 車両
14 バッテリ
16 後輪
18 リアサスペンションアーム
22 リアサスペンションビーム
24 バッテリフレーム
36 ビーム本体部
36A ビーム本体部における車両幅方向外側の端部
38 ビーム端部
40 テーパ部
42 接続部
44 バックボード
46 ボード本体部
46A 上部(ボード本体部における車両上下方向の少なくとも一部)
46B 端部(ボード本体部における車両幅方向外側の端部)
48 ボード端部
50 外端部
50A 縁部(外端部の車両上下方向におけるビーム端部側の縁部)
52A,52B 縁部(中間部における車両上下方向両側の縁部)
52A1 一部(縁部における少なくとも車両幅方向内側の一部)
52 中間部
54 車体取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向に延びるビーム本体部と、前記ビーム本体部の車両幅方向外側に形成され車両側面視した場合の断面積が前記ビーム本体部よりも大きいビーム端部と、を有し、後輪を支持する左右一対のリアサスペンションアームを連結するリアサスペンションビームと、
車両幅方向に延びて前記ビーム本体部の車両前側に配置されたボード本体部を有し、車両の床下においてバッテリを支持するバッテリフレームのリア部を構成するバックボードと、
前記ボード本体部における車両幅方向外側の端部に設けられると共に、前記ビーム本体部における車両幅方向外側の端部の車両前側に該端部と対向して配置され、車体フレームに取り付けられた車体取付部と、
を備えた車両用バッテリ搭載構造。
【請求項2】
前記ボード本体部における車両上下方向の少なくとも一部は、前記ビーム本体部と車両上下方向にオーバーラップされ、
前記バックボードは、前記ボード本体部の車両幅方向外側に形成されて前記ビーム端部の車両前側に配置されると共に前記ボード本体部よりも前記リアサスペンションビームとの車両上下方向のオーバーラップ量が少ないボード端部を有している、
請求項1に記載の車両用バッテリ搭載構造。
【請求項3】
前記ボード端部は、
前記ビーム端部に対して車両上下方向にずれて配置された外端部と、
前記外端部と前記ボード本体部との間に形成された中間部と、を有し、
前記中間部における車両上下方向両側の縁部のうち、前記外端部の車両上下方向における前記ビーム端部側の縁部と連続する縁部は、車両正面視にて車両幅方向に対して傾斜されると共に、少なくとも車両幅方向内側の一部が前記ビーム端部と車両上下方向にオーバーラップされている、
請求項2に記載の車両用バッテリ搭載構造。
【請求項4】
前記ビーム端部は、前記ビーム本体部よりも車両前後方向の寸法が拡大されることで車両側面視した場合の断面積が前記ビーム本体部よりも大きくなっている、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両用バッテリ搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−67202(P2013−67202A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205395(P2011−205395)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】