説明

車両用パネルの位置決め構造体

【課題】車両用パネルの位置決め精度を向上させる。
【解決手段】車両用パネルの位置決め構造体であって、車両用パネルの表面に貼着固定される基台部と、前記基台部に係合され、突出する嵌合部と、を備え、前記嵌合部は、前記基台部に対して略垂直な円弧状の外周面を有する、ことを特徴とする位置決め構造体。さらに、前記基台部において、前記嵌合部と前記基台部の係合部から前記基台部の外縁部に延びた放射状のリブが形成されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のウインドシールドパネルなどの車両用パネルの位置決め構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車体の開口部にウインドシールドパネルを配置する際、ストッパやロケートピンなどの固定部材を用いて、ウインドシールドパネルを車体の開口部に固定する、ウインドシールドパネルの位置決め構造が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車体開口部の周縁フランジ上にウインドシールドパネルを接着固定する構造において、前記周縁フランジの上辺部を構成するルーフパネル側フランジとルーフレール側フランジとの重合部を部分的に開離してスペーサ挿入部を開設し、該スペーサ挿入口に係合部を有するフランジ側スペーサを挿入固定して、該係合部を周縁フランジ上に突出配置する一方、ウインドシールドパネルの上縁近傍の前記フランジ側スペーサに対応する位置に係合部を有するパネル側スペーサを固着して、これらフランジ側スペーサとパネル側スペーサの係合部相互を係着してウインドシールドパネルを定置できるようにすると共に、前記パネル側スペーサにはその係合部よりも突出量の大きなロケートピンを突設し、フランジ側スペーサには該ロケートピンが挿入係合して前記係合部相互の係着を案内するロケート孔を設けたことを特徴とする自動車用ウインドシールドパネルの位置決め構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−245660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4に示すように、特許文献1に記載の位置決め構造は、パネル側スペーサ20は、車両用パネル(ウインドシールドパネル25)面に例えば両面接着テープ等の接着材で固着したベース部21と、自動車車体の開口部(取付孔)に係合する係合部22と、係合部22の形成部分の中央位置に係合部22よりも大きな突出量で突設されたロケートピン23とを備えている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の位置決め構造では、ロケートピンが正規の位置からずれた状態で、自動車車体の取付孔に取り付けられた場合、ロケートピンの形状が角形状の為、取付孔とロケートピンの角との接触になる。そのため、ロケートピンの一部に局所的な集中荷重が掛かかりやすく、ロケートピンが変形や破損する場合があった。また、ロケートピンが角形状の為、回転してスペーサが取り付けられた場合、位置ズレが発生しやすく、車両用パネルを正確な位置に取り付けられない、最悪の場合は組み付かないといった不具合が起こるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、位置決め精度を向上させた車両用パネルの位置決め構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、車両用パネルの位置決め構造体であって、車両用パネルの表面に貼着固定される基台部と、前記基台部に係合され突出した嵌合部と、を備え、前記嵌合部は、前記基台部に対して略垂直な円弧状の外周面を有する、ことを特徴とする位置決め構造体である。
【0009】
また、本発明において、前記嵌合部の断面を、略半円状とする構成にしてもよい。
【0010】
また、本発明において、前記外周面の曲率半径Rが、2.0mm以上、8.0mm以下、とすることが好ましい。
【0011】
また、本発明において、前記基台部において、前記嵌合部と前記基台部の係合部から前記基台部の外縁部に延びた放射状のリブを形成した構成にしてもよい。
【0012】
また、前記基台部において、該基台部の長手方向に略直交する線状のリブを形成した構成にしてもよい。
【0013】
また、本発明は、上述の位置決め構造体を備えた車両用パネルである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、位置決め構造体を構成する嵌合部は、円弧状の外周面を有するため、車両用パネルの取り付け時に、嵌合部に掛かる力が分散されやすく、一部に局所的な力が加わることがない。したがって、局所的な集中荷重によりロケートピンが変形や破損することなく、正規の位置に車両用パネルを取り付ける事が出来る。また、角形状のロケートピンに比べて、スペーサが回転してガラスに取り付けられた場合に、位置ズレが小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る位置決め構造体の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る位置決め構造体の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る位置決め構造体の上面図である。
【図4】従来例の位置決め構造の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1〜3を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明における車両用パネルは、ガラスや樹脂製など特に限定されないが、例えば、自動車車両のフロントガラスとして使用されるウインドシールドガラス、車両の後部に使用されるリアガラスなどを挙げることができる。以下、車両用パネルをウインドシールドガラスとして使用する場合について説明する。
【0017】
図1〜図3に示すように、本発明の位置決め構造体100は、自動車などの車体に取り付けられる車両用パネル22の位置決め構造体100であって、自動車車体20の車両用パネル22取付用の開口部23に挿入固定される嵌合部101と、車両用パネル22の車内面側に貼着固定される基台部16と、を備えている。なお、開口部23は自動車車体20の上縁部21に形成される。
【0018】
嵌合部11は、基台部16との係合部15を介して一体成型されており、この基台部16の偏平面から上側に突設されている。嵌合部11の外周面は、基台部16に対して略垂直な円弧状の面を有している。さらに、嵌合部11には、連続して先端にかけて先細りのテーパー状突起部12を形成する構成にしてもよい。この先細りのテーパー状によって取付用の開口部23に挿入しやすくなる。
【0019】
テーパー状突起部12は、嵌合部11の突設中心から偏心して形成された先端頂頭部13が形成されており、嵌合部11から先端頂頭部13にかけて先細りの形状となっており、その外周面には円弧状の外周面と傾斜面14を有する構成にしてもよい。この傾斜面14によって、車両用パネルに貼固定された位置決め構造体100を開口部23に垂直方向だけでなく、斜めから挿入することができる。
【0020】
嵌合部11は、突設中心部が繰り抜かれた空洞部17を有する構成としてもよい。嵌合部11の断面は略半円状の略C字状とするとよい。略半円状にすることによって、完全な円形に近い場合に比べて、自動車車体の開口部23に挿入する際、開口部23の隙間の割合が大きくなるため、取り付けが容易になる。
【0021】
また、突設中心部を繰り抜くことによって、嵌合部11の部品が軽量化されるとともに、使用する原料の削減することができる。また、嵌合部11の材質として樹脂を使用する場合は、繰り抜きによって、嵌合部11の部材を薄くすることができ、樹脂成型後のヒケ(樹脂の体積収縮による凹みや穴)を防止することができる。
【0022】
嵌合部11の外周面は、円弧状の形状にし、適度な曲率半径を持たせることによって、自動車車体の開口部23との接触において、嵌合部11の一部に局所的な力が掛からない構成となっている。例えば、嵌合部11の外周面の曲率半径Rが、2.0mm以上、8.0mm以下、さらには、2.0mm以上、4.0mm以下であることが特に好適である。
【0023】
その理由として、曲率半径Rが、8.0mmより大きい場合、車両用パネル22が回転したり、ずれた場合、正規の取付位置からのずれが大きくなりやすいため、好ましくない。一方、2.0mmより小さい場合、自動車車体20への取付時、嵌合部11の破損など強度上の観点から好ましくない。
【0024】
なお、ここで言う曲率半径Rとは、図3に示すように嵌合部11の円弧状の外周面と開口部23との接触面における値を表す。
【0025】
次に、基台部16について説明する。基台部16は、略偏平形状の板状体であり、基台部16を、両面テープ30の一面側に貼り付け、両面テープ30の他面側を車両用パネル22に貼り付け、基台部16が貼着固定される。なお、基台部16を貼着固定する方法はウレタン系樹脂などの接着剤をしようしてもよい。
【0026】
基台部16は、外周縁の角部に車両用パネル22の逆付けを防止するためのつめ部40を設ける構成にしてもよい。つめ部40を設けることによって、車両用パネル22を逆さに装着することを防ぐことができる。
【0027】
また、位置決め構造体100の強度と柔軟性を向上させるために、基台部16に補強用のリブを形成する構成にしてもよい。例えば、基台部16において、嵌合部11と基台部16の係合部15から基台部16の外縁部方向に延びた放射状のリブ50aを形成するとよい。
【0028】
また、例えば、基台部16の長手方向に略直交する線状のリブ50bを形成するようにしてもよい。線状のリブ50bは、基台部16において、嵌合部11を中心にして左右対称になるように複数形成すると、位置決め構造体100の強度と柔軟性をさらに向上させることができる。なお、ここで言う略直交とは、基台部16の長手方向に対して、おおよそ±90±5度をなす角度である。
【0029】
位置決め構造体100を構成する基台部16、嵌合部11などの材質は、金属、樹脂材料など特に制限されないが、射出成型による成型性、加工の観点から、ポリアセタール樹脂やポリエチレンテレフタラートなどのエンジニアリングプラスチックなどを使用することが好適である。
【0030】
位置決め構造体100を構成する基台部16、嵌合部11の大きさは使用される車両用パネル22や自動車車体の車種によって適宜変更されるべきである。例えば、好適な大きさとして、長手方向が50mm以上、150mm以下、短手方向が10mm以上、30mm以下の基台部16にするとよい。この数値範囲にすると、引っ張り方向、ズレ方向において、十分な接着強度を得やすいため好適である。また、嵌合部11の高さは、取り付けやすさと強度の観点から、5.0mm以上とすることが好ましい。
【0031】
また、以上の実施の形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0032】
本発明における位置決め構造体100は、嵌合部11は、基台部16に対して略垂直な円弧状の外周面を有している。そのため、仮に、車両用パネル22がずれて取り付けられた場合においても、嵌合部11の一部に局所的な集中荷重がかかりにくい構成である。したがって、本発明の位置決め構造体100は、集中荷重によって位置決め構造体100が破損してしまうことを防ぐことができ、強度的な観点からも優れる利点を有する。
【符号の説明】
【0033】
100 位置決め構造体
11 嵌合部
12 テーパー状突起部
13 先端頂頭部
14 傾斜面
15 係合部
16 基台部
17 空洞部
20 自動車車体
21 上縁部
22 車両用パネル
23 開口部
30 両面テープ
40 つめ部
50a 放射状のリブ
50b 線状のリブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用パネルの位置決め構造体であって、
車両用パネルの表面に貼着固定される基台部と、
前記基台部に係合され突出した嵌合部と、を備え、
前記嵌合部は、前記基台部に対して略垂直な円弧状の外周面を有する、
ことを特徴とする位置決め構造体。
【請求項2】
前記嵌合部の断面が、略半円状であることを特徴とする請求項1に記載の位置決め構造体。
【請求項3】
前記外周面の曲率半径Rが、2.0mm以上、8.0mm以下、であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の位置決め構造体。
【請求項4】
前記基台部において、前記嵌合部と前記基台部の係合部から前記基台部の外縁部に延びた放射状のリブが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の位置決め構造体。
【請求項5】
前記基台部において、該基台部の長手方向に略直交する線状のリブが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の位置決め構造体。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の位置決め構造体を備えた車両用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−52726(P2013−52726A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191181(P2011−191181)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)