説明

車両用ヒートポンプ式冷暖房装置

【目的】 冷媒の流れを冷暖房時に逆転せずに、暖房運転時に車室内に吹き出される空気の急激な温度変化を回避して、乗員の快適感を向上する。
【構成】 暖房運転時には、冷媒流路切り換え手段としての三方弁32が実線示のように切り換えられ、冷媒がコンプレッサ31→三方弁32→車室内コンデンサ33→膨張弁34→エバポレータ35→レシーバ36→コンプレッサ31と循環し、冷房運転時には、三方弁32が点線示のように切り換えられ、冷媒がコンプレッサ31→三方弁32→車室外コンデンサ38→車室内コンデンサ33→膨張弁34→エバポレータ35→レシーバ36→コンプレッサ31と循環する。そして、制御装置43が検出熱環境情報により暖房運転を判別すると、インテークドア42やリターンドア54を開閉制御して、エバポレータ35への吸い込み空気の熱負荷を調整する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コンプレッサの駆動により冷媒を車室外熱交換器や車室内熱交換器に循環させる蒸気圧縮サイクルを備えた車両用ヒートポンプ式冷暖房装置であって、特に、その暖房運転時に吹き出し空気の急激な温度変化を回避して、乗員の快適感を向上させるものに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の車両用ヒートポンプ式冷暖房装置としては、特開平2−290475号公報や実開平2−130808号公報などに開示されているように、四方弁で冷媒の流れを暖房運転時と冷媒運転時とで逆転させ、暖房運転時には、車室外熱交換器を吸熱器として使用し、車室内熱交換器を放熱器として使用し、冷房運転時には、車室外熱交換器を放熱器として使用し、車室内熱交換器を吸熱器として使用するようにしたものが知られている。
【0003】具体的には、上記特開平2−290475号公報に開示された冷暖房装置を、図11に図示して説明する。つまり、暖房運転時には、四方弁2が実線示のように切り換えられ、冷媒がコンプレッサ1→四方弁2→第1車室内熱交換器3→加熱用熱交換器4→第2車室内熱交換器5→膨張弁6→車室外熱交換器7→四方弁2→レシーバ8→コンプレッサ1と循環し、第1車室内熱交換器3がコンプレッサ1から吐出された高温なる冷媒の熱をブロワファン9で導入された空気に放熱して車室内暖房用の温風を作り、加熱用熱交換器4がエンジン10からの廃熱を冷媒に吸熱し、この冷媒の熱を第2車室内熱交換器5がブロワファン11で導入された空気に放熱して車室内暖房用の温風を作り、車室外熱交換器7がファン12で導入された外気の熱を冷媒に吸熱する。冷房運転時には、四方弁2が点線示のように切り換えられ、冷媒がコンプレッサ1→車室外熱交換器7→膨張弁6→第2車室内熱交換器5→第1車室内熱交換器3→四方弁2→レシーバ8→コンプレッサ1と循環し、車室外熱交換器7がコンプレッサ1から吐出された高温なる冷媒の熱を外気に放熱し、第1,第2車室内熱交換器3,5がブロワファン9,11で導入された空気の熱を冷媒に放熱して車室内冷房用の冷風を作る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述した従来例にあっては、四方弁2で冷媒の流れを暖房運転時と冷媒運転時とで逆転させ、暖房運転時には、車室外熱交換器7を吸熱器として使用し、車室内熱交換器3,5を放熱器として使用して車室内暖房用の温風を作り、冷房運転時には、車室外熱交換器7を放熱器として使用し、車室内熱交換器3,5を吸熱器として使用して車室内冷房用の冷風を作るようになっているので、外気温が低い時や走行時あるいは降雨時、さらに降雪時などのような気候条件において、暖房運転を行うと、車室外熱交換器7での吸熱量が減少する。そして、コンプレッサ1の仕事量が一定であると仮定すると、車室外熱交換器7からの吸熱量とコンプレッサ1の仕事量との合計熱量を放熱する車室内熱交換器3,5での放熱量が減少し、暖房能力が低下する。しかも、暖房能力が低下すると、着霜現象が生じ易くなる。そして、着霜現象の発生回数が増えると、デフロスト運転の回数が増加し、安定した暖房運転が得られなくなる。また、低外気温時に暖房運転を行って車室外熱交換器7が凍結すると、デフロスト運転が困難となり、暖房運転を連続的に行うことができなかった。
【0005】このような問題を解決するために、本出願人は、流路切り換え手段の流路切り換え動作により、冷媒が逆流することなく、暖房運転時には、第1車室内熱交換器を放熱器として使用し、第2車室内熱交換器を吸熱器として使用し、冷房運転時には、車室外熱交換器のみ、または車室外熱交換器と第1車室内熱交換器との両方を放熱器として使用し、第2車室内熱交換器を吸熱器として使用する車両用ヒートポンプ式冷暖房装置を提案した。しかし、この車両用ヒートポンプ式冷暖房装置において、コンプレッサに可変容量コンプレッサを用いて実験を行った結果、暖房運転時に、コンプレッサの容量を固定して、第2車室内熱交換器に導入される空気の熱負荷を変化させると、ある熱負荷状態で冷暖房装置の作動状態(能力)が急激に変化するポイントが有ることがわかった。このことから、暖房運転時に、第2車室内熱交換器の熱負荷が上記ポイントになると、作動状態が不安定となり車室内への吹き出し空気温度の変化が大きくなって、温度性能が低下する可能性がある。
【0006】そこで本発明にあっては、冷媒の流れを暖房運転時と冷房運転時とで逆転せずに、暖房運転時に吹き出し空気の急激な温度変化を回避して、乗員の快適感を向上することを課題にしている。
【0007】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、冷媒に仕事量を加えるコンプレッサと、このコンプレッサの冷媒吐出側に接続され冷媒の熱を外気に放熱する車室外熱交換器と、前記コンプレッサの冷媒吐出側に接続され冷媒の熱を送風手段によって導入された空気に放熱して温風を作る放熱タイプの第1車室内熱交換器と、この車室内第1熱交換器の冷媒流出側に接続された膨張手段と、この膨張手段の冷媒流出側に接続され送風手段によって導入された空気の熱を前記車室外熱交換器および前記第1車室内熱交換器の少なくとも一方から前記膨張手段を通して供給された冷媒に放熱して冷風を作る吸熱タイプの第2車室内熱交換器と、前記コンプレッサの冷媒吐出側と前記車室外熱交換器および前記第1車室内熱交換器の冷媒流入側との間に設けられコンプレッサから吐出される冷媒を冷房運転時には前記車室外熱交換器に導入し暖房運転時には前記車室外熱交換器を迂回させて前記第1車室内熱交換器に導入する冷媒流路切り換え手段と、前記第2車室内熱交換器への吸い込み空気の熱負荷を検出する熱負荷検出手段と、前記第2車室内熱交換器への吸い込み空気の熱負荷を調整する熱負荷調整温調手段と、前記車室内の熱環境情報を検出する熱環境検出手段と、この熱環境検出手段からの熱環境情報により暖房運転を判別しこの判別結果により前記熱負荷調整手段に前記熱負荷検出手段の出力を不安定域から外す制御信号を出力する制御手段と、を備えている。
【0008】第2の発明は、冷媒に仕事量を加えるコンプレッサと、このコンプレッサの冷媒吐出側に接続され冷媒の熱を外気に放熱する車室外熱交換器と、前記コンプレッサの冷媒吐出側に接続され冷媒の熱を送風手段によって導入された空気に放熱して温風を作る放熱タイプの第1車室内熱交換器と、この第1車室内熱交換器の冷媒流出側に接続された膨張手段と、この膨張手段の冷媒流出側に接続され送風手段によって導入された空気の熱を前記車室外熱交換器および前記第1車室内熱交換器の少なくとも一方から前記膨張手段を通して供給された冷媒に放熱して冷風を作る吸熱タイプの第2車室内熱交換器と、前記コンプレッサの冷媒吐出側と前記車室外熱交換器および前記第1車室内熱交換器の冷媒流入側との間に設けられコンプレッサから吐出される冷媒を冷房運転時には前記車室外熱交換器に導入し暖房運転時には前記車室外熱交換器を迂回させて前記第1車室内熱交換器に導入する冷媒流路切り換え手段と、前記コンプレッサの仕事量を検出する仕事量検出手段と、前記第2車室内熱交換器への吸い込み空気の熱負荷を調整する熱負荷調整手段と、前記車室内の熱環境情報を検出する熱環境検出手段と、この熱環境検出手段からの熱環境情報により暖房運転を判別しこの判別結果により前記熱負荷調整手段に前記仕事量検出手段の出力を不安定域から外す制御信号を出力する制御手段と、を備えている。
【0009】
【作用】第1,第2の両発明において、暖房運転時には、コンプレッサの駆動により、冷媒がコンプレッサから流路切り換え手段,第1車室内熱交換器,膨張手段,第2車室内熱交換器を順に経由してコンプレッサに循環し、第1車室内熱交換器がコンプレッサから吐出された高温なる冷媒の熱を送風手段で導入された空気に放熱して温風を作り、第2車室内熱交換器が送風手段で導入された空気の熱を冷媒に放熱して冷風を作る。
【0010】冷房運転時には、コンプレッサの駆動により、冷媒がコンプレッサから流路切り換え手段,車室外熱交換器のみ、または車室外熱交換器と第1車室内熱交換器との両方,膨張手段,第2車室内熱交換器を順に経由してコンプレッサに循環し、車室外熱交換器がコンプレッサから吐出された高温なる冷媒の熱を外気に放熱し、第2車室内熱交換器が送風手段で導入された空気の熱を冷媒に放熱して冷風を作る。
【0011】要するに、流路切り換え手段の流路切り換え動作により、冷媒が逆流することなく、暖房運転時には、第1車室内熱交換器を放熱器として使用し、第2車室内熱交換器を吸熱器として使用し、冷房運転時には、車室外熱交換器のみ、または車室外熱交換器と第1車室内熱交換器との両方を放熱器として使用し、第2車室内熱交換器を吸熱器として使用する。
【0012】そして、第1の発明では、冷暖房運転時に、熱環境検出手段が車室内の熱環境情報を検出し、熱負荷検出手段が第2車室内熱交換器への吸い込み空気の熱負荷を検出し、制御手段が、検出熱環境情報により暖房運転を判別すると、熱負荷調整手段を駆動して、第2車室内熱交換器に導入される吸い込み空気の熱負荷を調整し、車室内に吹き出される空気の温度の急激な変化を回避する。
【0013】また、第2の発明では、冷暖房運転時に、熱環境検出手段が車室内の熱環境情報を検出し、仕事量検出手段がコンプレッサの仕事量を検出し、制御手段が、検出熱環境情報により暖房運転を判別すると、熱負荷調整手段を駆動して、第2車室内熱交換器に導入される吸い込み空気の熱負荷を調整し、車室内に吹き出される空気の温度の急激な変化を回避する。
【0014】
【実施例】
第1実施例図1は、第1実施例の車両用ヒートポンプ式冷暖房装置を示している。
【0015】図1において、コンプレッサ31は、エンジンルームのような車室外に設けられ、斜板式の容量可変コンプレッサになっている。具体的には、コンプレッサ31は、斜板が配置されるケーシング内に吸入圧力Psまたは吐出圧力Pdを導き、これによってピストン前後の圧力差(シリンダ室とケーシング室との圧力差)を調整することによって、斜板の傾き角度を変えて、吐出容量を変更することができる。この傾き角度制御のために、コンプレッサ31は、電磁アクチュエータを備えたコントロールバルブを有し、ソレノイド電流値ISOLによって、コントロールバルブが作動する設定圧力Prを変更できるようになっている。このコンプレッサ31の吐出側には、車室外熱交換器38と第1車室内熱交換器33とが流路切り換え手段としての三方弁32を介して接続されている。車室外熱交換器38は、車室外に設けられ、コンプレッサ31から吐出される冷媒の熱を外気に放熱する車室外コンデンサになっている。第1車室内熱交換器33は、インストルメントパネルの裏側のような車室内前部に配置された装置本体としてのダクト39内に設けられ、コンプレッサ31から吐出される冷媒の熱を送風手段としてのブロワファン37によって導入された空気に放熱する放熱タイプの車室内コンデンサになっている。三方弁32は、暖房運転時には、実線示のような流路切り換え状態となり、コンプレッサ31の吐出側を第1車室内熱交換器33の冷媒流入側に接続する一方、冷房運転時には、点線示のような流路切り換え状態となり、コンプレッサ31の吐出側を車室外熱交換器38の冷媒流出側に設けられた逆止弁70を迂回して第1車室内熱交換器33の冷媒流入側に接続するようになっている。逆止弁70は、車室外熱交換器38側から第1車室内熱交換器33側への冷媒の流れを許容し、第1車室内熱交換器33側から車室外熱交換器38への冷媒の流れを阻止するようになっている。第1車室内熱交換器33の冷媒流出側には、ダクト39内の第1車室内熱交換器33よりも上流側に設けられた第2車室内熱交換器35の冷媒流入側が、車室外に設けられた膨張手段として液体冷媒を断熱膨張して霧状にする膨張弁34を介して接続されている。第2車室内熱交換器35は、ブロワファン37によって導入された空気の熱を、車室外熱交換器38および第1車室内熱交換器33の少なくとも一方から膨張弁34を通して供給された冷媒に放熱して冷風を作る吸熱タイプのエバポレータになっている。第2車室内熱交換器35の冷媒流出側には、コンプレッサ31の冷媒吸入側が、車室外に設けられたレシーバ36を介して接続されている。
【0016】ダクト39の第2車室内熱交換器35よりも上流側には、車室内空気を導入する内気導入口40と、走行風圧を受けて外気を導入する外気導入口41とが設けられている。この内気導入口40と外気導入口41とが分岐する部分のダクト39内には、内気導入口40と外気導入口41とを任意の比率で開閉するインテークドア42が設けられている。内気導入口40と外気導入口41との空気導出側(空気流の下流側)と第2車室内熱交換器35との間に位置するダクト39内には、制御装置43で駆動されるブロワファンモータ44で回転駆動されるブロワファン37が設けられている。
【0017】ダクト39の第1車室内熱交換器33よりも上流側には、エアミックスドア46が設けられている。このエアミックスドア46は、制御装置43で駆動される図外のエアミックスドアアクチュエータにより、第2車室内熱交換器35を通過して冷えている空気が第1車室内熱交換器33を迂回して冷えたままの冷風と、第2車室内熱交換器35を通過して冷えている空気が第1車室内熱交換器33を通過して暖められた温風との割合(冷風と温風との風量配分)を調整するように開閉する。エアミックスドア46の開度たるエアミックスドア開度Xdscは、エアミックスドア46が一点鎖線示の位置となり、冷風と温風との風量配分が冷風100%となるときを、エアミックスドア開度Xdsc=0%(全閉)と設定し、エアミックスドア46が二点鎖線示の位置となり、冷風と温風との風量配分が温風100%となるときを、エアミックスドア開度Xdsc=100%(全開)と設定してある。
【0018】ダクト39の第1車室内熱交換器33よりも下流側には、上記冷風と温風との混合を良くすることにより、温度調整された空調風を作る部屋としてのエアミックスチャンバ47が設けられている。エアミックスチャンバ47における第1車室内熱交換器33の空気導出側と対応する部分には、空調風を内気導入口40側に再循環するため空調風導入口48が設けられている。この空調風導入口48には、内気導入口40側のダクト39に設けられた空調風導出口49に連通する再循環用ダクト50が接続されている。また、エアミックスチャンバ47には、図外の対象乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すベンチレータ吹き出し口51と、対象乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹き出し口52と、図外のフロントウインドガラスに向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹き出し口53とが連設されている。エアミックスチャンバ47内には、リターンドア54とベンチレータドア55とフットドア56とデフロスタドア57とが設けられている。リターンドア54は、制御装置43で駆動される図外のリターンドアアクチュエータにより、空調風導入口48を開閉する。ベンチレータドア55は、制御装置43で駆動される図外のベンチレータドアアクチュエータにより、ベンチレータ吹き出し口51を開閉する。フットドア56は、制御装置43で駆動される図外のフットドアアクチュエータにより、フット吹き出し口52を開閉する。デフロスタドア57は、制御装置43で駆動される図外のデフロスタドアアクチュエータにより、デフロスタ吹き出し口53を開閉する。
【0019】前記インテークドア42と空調風導入口48と空調風導出口49と再循環ダクト50とリターンドア54とが、第2車室内熱交換器35への吸い込み空気の熱負荷たる吸い込み空気温度Tsucを調整する熱負荷調整手段になっている。
【0020】制御装置43には、第2車室内熱交換器吸い込み風温センサ58に構成された熱負荷検出手段と第2車室内熱交換器吹き出し風温センサ59とベンチレータ吹き出し口風温センサ60と日射量センサ61と外気温センサ62と室温センサ63と室温設定器64と吹き出し口モードスイッチ65とブロワファンスイッチ66などの熱環境情報入力手段からの第2車室内熱交換器35の吸い込み空気温度Tsucたる熱負荷情報、および、第2車室内熱交換器35の吹き出し空気温度Toutとベンチレータ吹き出し口51の吹き出し空気温度Tventと車両の日射量Qsunと車室外の外気温Tambと車室内の検出室温Troomと車室内の設定室温Tptcなどの熱環境情報が入力される。制御装置43は、入力された熱負荷情報および入力された熱環境情報から、エアミックスドア開度Xdscとインテークドア開度Xdsucとコンプレッサ31の入力値に相当するソレノイド電流値ISOLと第2車室内熱交換器35を通過する通過風量Vevaと目標空調風温度Tofなどの目標冷暖房条件を演算する。そして、制御装置43は、車室内の冷暖房条件が上記演算された目標冷暖房条件を維持するように、コンプレッサ31とブロワファンモータ44とエアミックスドアアクチュエータとリターンドアアクチュエータとベンチレータドアアクチュエータとフットドアアクチュエータとデフロスタドアアクチュエータなどを駆動する。特に、制御装置43は、前記熱環境検出手段からの熱環境情報により、暖房定常運転なる暖房運転が安定した暖房温調運転を判別し、この暖房温調運転なる判別結果により、前記熱負荷調整手段中のインテークドア42のインテークドアアクチュエータとリターンドア54のリターンドアアクチュエータとに、第2車室内熱交換器吸い込み風温センサ58の出力を不安定域から外す制御信号を出力する制御手段としての機能を持っている。
【0021】なお、図1中において、A→Aは、冷媒管路が連通していることを示し、B→Bは、ベンチレータ吹き出し口風温センサ60の出力端が制御装置43の入力端に接続していることを示している。
【0022】図2は、コンプレッサ31の容量、つまりソレノイド電流値ISOLを固定し、エアミックスドア46を全開(エアミックスドア開度Xdsc=100%)とし、ベンチレータドア55を全開とし、フットドア56とデフロスタドア57とを全閉とし、第2車室内熱交換器35の吸い込み空気温度Tsucを変化させた場合におけるベンチレータ吹き出し口51の吹き出し空気温度Tventの変化を調べた実験結果を示している。この図2を考察すると、第2車室内熱交換器35の吸い込み空気温度Tsucを低温から徐々に上げていくと、ベンチレータ吹き出し口51の吹き出し空気温度Tventが急激に上昇する温度Tsuc″が存在することがわかった。これは、第2車室内熱交換器35の吸い込み空気温度TsucがTsuc″以下では、コンプレッサ31の吸入圧力Psが設定圧力Prよりも小さく、コントロールバルブが作動せず、コンプレッサ31の吐出圧力Pdも低く、コンプレッサ31の入力が小さいために、ベンチレータ吹き出し口51の吹き出し空気温度Tventは、あまり上昇しない。ところが、車室内熱交換器35の吸い込み空気温度TsucがTsuc″を越えることにより、コントロールバルブが作動すると、コンプレッサ31の吐出冷媒量が急増し、吐出圧力Pdも高くなり、コンプレッサ31の入力も増えるので、結果的に、ベンチレータ吹き出し口51の吹き出し空気温度Tventが高くなるからであると考えられる。また、実験結果では、温度Tsuc″に再現性があり、この温度Tsuc″は、ソレノイド電流値ISOLに対して、特有な温度(特異点温度)であることがわかった。
【0023】そして、コンプレッサ31のソレノイド電流値ISOLを変化させ、その時の特異点温度Tsuc″をプロットすると、図3のようになる。この図3の結果は、冷暖房装置に固有な特性で、冷暖房装置の構成要素が決まれば、予備実験によって得ることができる。
【0024】図4〜図8は、制御装置43における暖房時のフローチャートを示している。これらのフローチャートは、車両の図外のメインスイッチをオン動作し、制御装置43が起動することにより、処理の実行が始まる。
【0025】図4および図5は、暖房温調制御のフローチャートを示している。暖房温調制御の処理が始まると(ステップ101)、ステップ102において、暖房温調制御直後か否かを判断する。暖房温調制御直後(ステップ102がYES)であれば、ステップ103に進む。逆に、暖房温調制御直後でない(ステップ102がNO)場合には、ステップ105に進む。
【0026】ステップ103では、エアミックスドア46の初期設定を行う。このエアミックスドア46の初期設定は、通常、エアミックスドア開度Xdsc=100%に設定され、第2車室内熱交換器35の吹き出し空気の全部が、第1車室内熱交換器33に流入するようになる。
【0027】ステップ104では、外気温センサ62で検出される外気温Tambに対して、第2車室内熱交換器35の目標吹き出し空気温度Tout′を決める。具体的には外気温Tambが設定値Tamb1よりも低い場合には、第2車室内熱交換器35で凍結が起こらないように、目標吹き出し空気温度Tout′を設定値Tout1′に固定し、外気温Tambが設定値Tamb1から設定値Tamb2までの間では、「防曇性」を確保できる範囲で、目標吹き出し空気温度Tout′を徐々に上昇させて、コンプレッサ31の入力を小さく抑え、外気温Tambが設定値Tamb2を越えた場合には、コンプレッサ31の吐出圧力Pdの上昇を抑えるために、目標吹き出し空気温度Tout′を設定値Tout2′に固定する。
【0028】ステップ105では、外気温センサ62で検出される外気温Tambと室温設定器64からの設定室温Tptcと日射センサ61で検出される日射量Qsunと第2車室内熱交換器吸い込み風温センサ58で検出される第2車室内熱交換器35の吸い込み空気温度Tsucとブロワファンモータ印加電圧Vfanに相当する第2車室内熱交換器35の通過風量Vevaと室温センサ63で検出される検出室温Troomと第2車室内熱交換器吹き出し風温センサ59で検出される第2車室内熱交換器35の吹き出し空気温度Toutとベンチレータ吹き出し口風温センサ60で検出されるベンチレータ吹き出し口51の吹き出し空気温度Tventなどの熱環境情報を基にして、目標吹き出し温度Tofを算出する。
【0029】ステップ106では、第2車室内熱交換器吹き出し風温センサ59で検出した吹き出し空気温度Toutを読み込む。
【0030】ステップ107では、ステップ106で検出した吹き出し空気温度Toutと、ステップ104で設定した目標吹き出し空気温度Tout′との偏差ΔT1が基準値±β0になるように、コンプレッサ31の吐出容量、つまりソレノイド電流値ISOLを制御する。
【0031】ステップ108では、ステップ105で算出した目標吹き出し温度Tofに応じて、ブロワファンモータ印加電圧Vfanを設定する。つまり、目標吹き出し温度Tofが設定値Tof1よりも低ければ、ブロワファンモータ印加電圧Vfanを低レベル電圧VLOに設定し、目標吹き出し温度Tofが設定値Tof1から設定値Tof2までの間では、目標吹き出し温度Tofに応じて、ブロワファンモータ印加電圧Vfanを低レベル電圧VLOから高レベル電圧VHIまで徐々に上昇し、目標吹き出し温度Tofが設定値Tof2よりも高ければ、ブロワファンモータ印加電圧Vfanを高レベル電圧VHIに設定する。
【0032】ステップ109では、ステップ105で算出した目標吹き出し温度Tofに応じて、バイレベルモードかフットモードかの吹き出し口モードの設定を行う。
【0033】ステップ110では、図6に示す第2車室内熱交換器35への吸い込み空気の温度制御を行う。
【0034】ステップ111では、図7に示すソレノイド電流値ISOL制御を行う。
【0035】図6は、第2車室内熱交換器35への吸い込み空気の温度制御のフローチャートを示している。温度制御の処理が始まる(ステップ201)と、ステップ202にてベンチレータ吹き出し口風温センサ60で検出した吹き出し空気温度Tventを読み込む。
【0036】ステップ203では、ステップ105と同様に、目標吹き出し温度Tofを算出する。
【0037】ステップ204では、ステップ202で検出した吹き出し空気温度Tventとステップ203で算出した目標吹き出し温度Tofとの偏差ΔT2を算出する。
【0038】ステップ205では、ステップ204で算出したΔT2の大小を基準値αに基づいて判定する。ΔT2<−αの場合(温か過ぎる)には、ステップ206にて、インテークドア開度XdsucをΔXdsucだけ大きくし、インテークドア42を内気導入口40側にΔXdsucだけ回動し、外気導入口41の開度量をΔXdsucだけ多く開いて、外気導入量を増やす。ΔT2が±αの範囲内にある場合(ちょうど良い)には、ステップ207にて、インテークドア開度Xdsucをそのままとし、ΔT2<αの場合(寒い)には、ステップ208に進む。
【0039】ステップ208では、インテークドア開度Xdsucが0、すなわち、インテークドア42が外気導入口41を完全に閉じて、内気循環モードに100%なっているかを判断する。内気循環モードになっている(ステップ208がYES)場合には、ステップ209に進んで、リターンドア57を開いて第1車室内熱交換器33で暖められた温風の一部を再循環ダクト50を通して内気導入口40に供給し、第2車室内熱交換器35への吸い込み空気温度Tsucを高める制御を行い、内気循環モードになっていない(ステップ208がNO)場合には、ステップ210に進んでリターンドア57を閉じる。
【0040】ステップ211では、インテークドア開度XdsucをΔXdsucだけ小さくし、インテークドア42を外気導入口41側にΔXdsucだけ回動し、内気導入口40の開度量をΔXdsucだけ多く開いて、内気循環率を大きくする。
【0041】図7は、コンプレッサ流量切り替えのためのソレノイド電流値ISOL制御のフローチャートを示している。ソレノイド電流値ISOL制御の処理が始まる(ステップ301)と、ステップ302にて、ベンチレータ吹き出し口風温センサ60で検出したベンチレータ吹き出し口51の吹き出し空気温度Tventを読み込み、ステップ303にて、第2車室内熱交換器吸い込み風温センサ58で検出した第2車室内熱交換器35への吸い込み空気温度Tsucを読み込み、ステップ304にて、ソレノイド電流値ISOLを読み込む。
【0042】ステップ305では、図3に示す実験結果を用いて、予め求めておいた特異点温度Tsuc″とソレノイド電流値ISOLとの関係から、ステップ304で検出したソレノイド電流値ISOLに対する特異点温度Tsuc″を算出する。
【0043】ステップ306では、ステップ302で検出した吹き出し空気温度Tventとステップ305で算出した特異点温度Tsuc″との偏差ΔT3を計算し、この偏差ΔT3がΔT3<±βの範囲外(ステップ306がYES)の場合には、ステップ307に進む。
【0044】ステップ307では、ステップ302で検出した吹き出し空気温度Tventとステップ303で検出した吸い込み空気温度Tsucとの差ΔT4を計算し、この差ΔT4が基準値θよりも大きい場合(ステップ307がYES)には、高レベルの暖房運転中であると判断し、この高レベルの暖房運転を維持するために、ステップ308に進んで、ソレノイド電流値ISOLをΔIだけ小さくして、コンプレッサ31の冷媒吐出量を多くする。逆に、上記差ΔT4が基準値θ未満(ステップ307がNO)であれば、低レベルの暖房運転中であると判断し、この低レベルの暖房運転を維持するために、ステップ309に進んで、ソレノイド電流値ISOLをΔIだけ大きくして、コンプレッサ31の冷媒吐出量を少なくする。
【0045】この第1実施例によれば、暖房運転時には、三方弁32が図1の実線示のように切り換えられ、冷媒がコンプレッサ31→三方弁32→第1車室内熱交換器33→膨張弁34→第2車室内熱交換器35→レシーバ36→コンプレッサ31と循環し、第1車室内熱交換器33がコンプレッサ31から吐出された高温なる冷媒の熱をブロワファン37で導入された空気または車両走行時のラム圧によって導入された空気に放熱して温風を作り、第2車室内熱交換器35がブロワファン37で導入された空気または車両走行時のラム圧によって導入された空気の熱を冷媒に放熱して冷風を作る。また、冷房運転時には、三方弁32が図1の点線示のように切り換えられ、冷媒がコンプレッサ31→三方弁32→車室外熱交換器38→逆止弁70→第1車室内熱交換器33→膨張弁34→第2車室内熱交換器35→レシーバ36→コンプレッサ31と循環し、車室外熱交換器38がコンプレッサ31から吐出された高温なる冷媒の熱を外気に放熱し、残りの熱を第1車室内熱交換器33がブロワファン37で導入された空気または車両走行時のラム圧によって導入された空気に放熱して温風を作り、第2車室内熱交換器35がブロワファン37で導入された空気または車両走行時のラム圧によって導入された空気の熱を冷媒に放熱して冷風を作る。
【0046】要するに、この第1実施例での暖房運転時には、コンプレッサ31が始動すると、第2車室内熱交換器35の吸熱量と、コンプレッサ31のソレノイド電流値ISOLに相当する仕事量とを、第1車室内熱交換器33において放熱するので、車室内には第2車室内熱交換器35の吸い込み空気温度Tsucよりも高温の空気が吹き出され、運転時間の経過とともに、車室内温度、すなわち、ベンチレータ吹き出し口51からの吹き出し空気温度Tventは上昇し、車室内は加速度的に暖められる。また、第2車室内熱交換器35で除湿され、その後、第1車室内熱交換器33で加熱されるので、除湿を必要とする暖房運転時に、暖房能力が低下することはなく、デフロスト運転の必要もないので、連続運転が可能となる。しかも、インテークドア42やリターンドア54の開閉制御を行ったり、あるいは、第2車室内熱交換器35への吸い込み空気温度Tsucとコンプレッサ31のソレノイド電流値ISOLとを検出し、暖房運転モードが遷移する可能性がある場合に、ソレノイド電流値ISOLを変更したりすることにより、第2車室内熱交換器35への吸い込み空気温度Tsucを調整し、暖房温調運転時に特異点温度Tsuc″を回避して、車室内への吹き出し空気温度を安定させることがきる。
【0047】なお、この第1実施例において、熱負荷調整手段中の空調風導入口48と空調風導出口49と再循環ダクト50とに代えて、第2車室内熱交換器35の上流側に位置するダクト39内に、電気ヒータやエンジン排熱ヒータなどを設けて、第2車室内熱交換器35への吸い込み空気の熱負荷を調整することも可能である。また、検出室温Troomと設定室温Tptcとの偏差を基にして、第2車室内熱交換器35への吸い込み空気の熱負荷を調整してもよい。
【0048】第2実施例図8は、第2実施例の車両用ヒートポンプ式冷暖房装置を示している。
【0049】図8に示す車両用ヒートポンプ式冷暖房装置は、第1実施例の図1に示す車両用ヒートポンプ式冷暖房装置に、仕事量検出手段としての冷媒温度センサ68をコンプレッサ31の冷媒吐出側に設け、この冷媒温度センサ68が、コンプレッサ31の吐出冷媒温度Tdを検出して制御装置43Aに入力し、制御装置43Aが、入力された吐出冷媒温度Tdに基づいて、ソレノイド電流値ISOLを不安定域から外すように制御するとともに、インテークドア42やリターンドア54などの開閉を制御することにより、第2車室内熱交換器35への吸い込み空気の温度制御を行うようにした点に特徴がある。
【0050】図9および図10は、制御装置43Aにおける暖房時のフローチャートを示している。この第2実施例のフローチャートは、第1実施例のフローチャートと同様に、車両の図外のメインスイッチをオン動作し、制御装置43Aが起動することにより、処理の実行が始まる。
【0051】図9は、コンプレッサ吐出冷媒温度Tdを使用した暖房運転制御のフローチャートを示している。暖房運転制御の処理が始まると(ステップ401)、ステップ402にて、冷媒温度センサ68で検出したコンプレッサ31の吐出冷媒温度Tdを読み込む。
【0052】ステップ403では、ステップ402で検出した吐出冷媒温度TdをTdnとして制御装置43A中の図外のメモリに一時記憶しておく。
【0053】ステップ404では、図外のメインスイッチがオン動作された直後の初期化において検出されてメモリに一時記憶された吐出冷媒温度Tdbとステップ403で一時記憶した吐出冷媒温度Tdnとの差ΔT5を基準値θdと比較し、この差ΔT5が基準値θd以上の場合(ステップ404がYES)には、暖房運転モードが遷移しないと判断して、ステップ405に進む。逆に、上記差ΔT5が基準値θd未満の場合(ステップ404がNO)には、暖房運転モードが遷移する可能性があると判断して、ステップ406に進む。
【0054】ステップ405では、図6に示した第2車室内熱交換器35への吸い込み空気の温度制御を行う。
【0055】ステップ406では、ステップ403で一時記憶した吐出冷媒温度Tdnが設定温度Td1よりも大きいかを判断する。Tdn>Td1の場合(ステップ406がYES)には、ステップ407にて、インテークドア42をΔXdsucだけ外気導入口41側に回動し、内気導入口40の開度量をΔXdsucだけ多く開いて、内気導入量を増やして、第2車室内熱交換器35への吸い込み空気温度Tsucを高める制御を行う。逆に、Tdn≦Td1の場合(ステップ406がNO)には、ステップ408にて、図10に示す回復制御を行う。
【0056】図10は、回復制御のフローチャートを示している。回復制御の処理が始まると(ステップ501)、ステップ502にて、回復制御に入る直前のインテークドア開度XdsucをXdsucorgとしてメモリに一時記憶し、ステップ503にて、回復制御に入る直前のソレノイド電流値ISOLをISOLORGとしてメモリに一時記憶する。
【0057】ステップ504では、第2車室内熱交換器吸い込み風温センサ58で検出した吸い込み空気温度Tsucを読み込む。
【0058】ステップ505では、インテークドア開度Xdsuc=0に設定し、インテークドア42で外気導入口41を完全に閉じて、100%の内気循環モードに設定する。
【0059】ステップ506では、図3に示す実験結果を用いて、予め求めておいた特異点温度Tsuc″とソレノイド電流値ISOL′との関係から、ステップ505で検出した吸い込み空気温度Tsucが特異点温度Tsuc″となるときのソレノイド電流値ISOL′を算出する。
【0060】ステップ507では、ソレノイド電流値ISOLをステップ506で算出したソレノイド電流値ISOL′に設定する。これによって、冷暖房装置が高レベルの暖房運転モードで作動し、ベンチレータ吹き出し口51からの吹き出し空気の温度を即座に上昇させることができる。
【0061】ステップ508では、室温センサ63で検出した検出室温Troomを読み込む。
【0062】ステップ509では、ステップ508で検出した検出室温Troomが設定温度θroomより高いかを判断する。Troom≦θroomの場合(ステップ509がNO)には、ステップ510に進み、逆に、Troom>θroomの場合(ステップ509がYES)には、ステップ511に進む。
【0063】ステップ510では、車室内の温度を上昇させて、乗員の快適性を確保するために図6に示した吹き出し空気の温度制御を行った後、ステップ508に戻る。
【0064】ステップ511では、インテークドア開度Xdsucをステップ502で一時記憶したXdsucorgに書き換える。
【0065】ステップ512では、ソレノイド電流値ISOLをステップ503で一時記憶したISOLORGに書き換える。
【0066】したがって、この第2実施例によれば、吐出冷媒温度Tdのようなコンプレッサ31の仕事量に対して直接的な制御条件を用いて、ソレノイド電流値ISOLを不安定域から外すとともに、熱負荷手段中のインテークドア42やリターンドア54などの開閉を制御し、第2車室内熱交換器35への吸い込み空気の温度制御を行っているので、第1実施例のように、吸い込み空気温度Tsucのようなコンプレッサ31の仕事量に対して間接的な制御条件を用いた場合に比べて、制御精度が一層高くなる。
【0067】なお、この第2実施例において、コンプレッサ31の仕事量に対する直接的な制御条件としては、吐出冷媒温度Td以外に、吐出冷媒圧力,吸入冷媒温度,吸入冷媒圧力および入力電力なども適用可能である。
【0068】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、流路切り換え手段の流路切り換え動作により、冷媒が逆流することなく、暖房運転時には、第1車室内熱交換器を放熱器として使用し、第2車室内熱交換器を吸熱器として使用し、冷房運転時には、車室外熱交換器のみ、または車室外熱交換器と第1車室内熱交換器との両方を放熱器として使用し、第2車室内熱交換器を吸熱器として使用しているので、暖房運転時において、第2車室内熱交換器の吸熱量とコンプレッサの仕事熱量とを第1車室内熱交換器で放熱し、暖房能力が向上する。しかも、第2車室内熱交換器で除湿した後、第1車室内熱交換器で加熱するので、除湿を必要とする暖房運転時に、暖房能力が低下することはなく、デフロスト運転の必要もないので、連続運転が可能となる。また、冷房運転時と暖房運転時で、冷媒の流れ方向が変わらないので、配管の耐圧性向上や管径を変更することなく、現行の冷房装置の配管や冷媒をそのまま使用できる。
【0069】また、本発明によれば、冷暖房運転時に、熱環境検出手段で車室内の熱環境情報を検出し、熱負荷検出手段で第2車室内熱交換器への吸い込み空気の熱負荷を検出するか、または、仕事量検出手段でコンプレッサの仕事量を検出するかし、制御手段が、検出熱環境情報により暖房運転を判別すると、熱負荷調整手段を駆動して、第2車室内熱交換器に導入される吸い込み空気の熱負荷を調整しているので、車室内に吹き出される空気の温度の急激な変化を回避して、乗員の快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の全体を示す構成図。
【図2】第1実施例の特異点温度とベンチレータ吹き出し口からの吹き出し空気温度との関係を調べた実験結果図。
【図3】第1実施例の特異点温度とソレノイド電流値との関係を示す実験結果図。
【図4】第1実施例の暖房温調時のフローチャート。
【図5】第1実施例の暖房温調時のフローチャート。
【図6】第1実施例の吸い込み空気の温度制御のフローチャート。
【図7】第1実施例のソレノイド電流値制御のフローチャート。
【図8】第2実施例の全体を示す構成図。
【図9】第2実施例の暖房時のフローチャート。
【図10】第2実施例の回復制御のフローチャート。
【図11】従来例を示す構成図。
【符号の説明】
31…コンプレッサ
32…流路切り換え手段
33…第1車室内熱交換器
35…第2車室内熱交換器
37…ブロワファン(送風手段)
38…車室外熱交換器
40…内気導入口
41…外気導入口
42…インテークドア(熱負荷調整手段)
43,43A…制御装置
46…エアミックスドア
48…空調風導入口(熱負荷調整手段)
49…空調風導出口(熱負荷調整手段)
50…再循環ダクト(熱負荷調整手段)
54…リターンドア(熱負荷調整手段)
58…第2車室内熱交換器吸い込み風温センサ(熱負荷検出手段)
68…冷媒温度センサ(仕事量検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷媒に仕事量を加えるコンプレッサと、このコンプレッサの冷媒吐出側に接続され、冷媒の熱を外気に放熱する車室外熱交換器と、前記コンプレッサの冷媒吐出側に接続され、冷媒の熱を送風手段によって導入された空気に放熱して温風を作る放熱タイプの第1車室内熱交換器と、この第1車室内熱交換器の冷媒流出側に接続された膨張手段と、この膨張手段の冷媒流出側に接続され、送風手段によって導入された空気の熱を前記車室外熱交換器および前記第1車室内熱交換器の少なくとも一方から前記膨張手段を通して供給された冷媒に放熱して冷風を作る吸熱タイプの第2車室内熱交換器と、前記コンプレッサの冷媒吐出側と前記車室外熱交換器および前記第1車室内熱交換器の冷媒流入側との間に設けられ、コンプレッサから吐出される冷媒を、冷房運転時には前記車室外熱交換器に導入し、暖房運転時には前記車室外熱交換器を迂回させて前記第1車室内熱交換器に導入する冷媒流路切り換え手段と、前記第2車室内熱交換器への吸い込み空気の熱負荷を検出する熱負荷検出手段と、前記第2車室内熱交換器への吸い込み空気の熱負荷を調整する熱負荷調整手段と、前記車室内の熱環境情報を検出する熱環境検出手段と、この熱環境検出手段からの熱環境情報により暖房運転を判別し、この判別結果により前記熱負荷調整手段に前記熱負荷検出手段の出力を不安定域から外す制御信号を出力する制御手段と、を備えたことを特徴とする車両用ヒートポンプ式冷暖房装置。
【請求項2】 冷媒に仕事量を加えるコンプレッサと、このコンプレッサの冷媒吐出側に接続され、冷媒の熱を外気に放熱する車室外熱交換器と、前記コンプレッサの冷媒吐出側に接続され、冷媒の熱を送風手段によって導入された空気に放熱して温風を作る放熱タイプの第1車室内熱交換器と、この第1車室内熱交換器の冷媒流出側に接続された膨張手段と、この膨張手段の冷媒流出側に接続され、送風手段によって導入された空気の熱を前記車室外熱交換器および前記第1車室内熱交換器の少なくとも一方から前記膨張手段を通して供給された冷媒に放熱して冷風を作る吸熱タイプの第2車室内熱交換器と、前記コンプレッサの冷媒吐出側と前記車室外熱交換器および前記第1車室内熱交換器の冷媒流入側との間に設けられ、コンプレッサから吐出される冷媒を、冷房運転時には前記車室外熱交換器に導入し、暖房運転時には前記車室外熱交換器を迂回させて前記第1車室内熱交換器に導入する冷媒流路切り換え手段と、前記コンプレッサの仕事量を検出する仕事量検出手段と、前記第2車室内熱交換器への吸い込み空気の熱負荷を調整する熱負荷調整手段と、前記車室内の熱環境情報を検出する熱環境検出手段と、この熱環境検出手段からの熱環境情報により暖房運転を判別し、この判別結果により前記熱負荷調整手段に前記仕事量検出手段の出力を不安定域から外す制御信号を出力する制御手段と、を備えたことを特徴とする前記請求項1に記載した車両用ヒートポンプ式冷暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図11】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開平5−201243
【公開日】平成5年(1993)8月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−12478
【出願日】平成4年(1992)1月28日
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)