説明

車両用フェンダーパネルの位置決め治具

【課題】 フェンダーパネルの前後左右における位置決めを正確に行うことができる車両用フェンダーパネルの位置決め治具を提供する。
【解決手段】 位置決め治具30は、アッパーバー11上に載置された状態において、アッパーバーに沿って車幅方向に延設される本体部31と、アッパーバーに形成された2以上の穴部にそれぞれ嵌合されて、アッパーバーの車幅方向中心位置に対して本体部の車幅方向中心位置が一致した状態となるよう位置決め治具を配置させる突出部と、本体部の車幅方向中心位置から車幅方向に互いに等間隔となる位置に一対で設けられ、フェンダーパネル40側の位置決めの基準となるフェンダー基準部と嵌合されてフェンダーパネルを位置決めする嵌合部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用フェンダーパネルの位置決め治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェンダーパネルは、建付治具を用いてボデー左右の骨格に固定されており、フェンダーパネルの建付け(位置決め)の基準は、車両の左右に位置して車両前後に延設されるボデー骨格(アッパーフレーム等)に設定されている。例えば、ボデー骨格側のフェンダーパネル取付面に前後2箇所の位置決め基準穴を設け、フェンダーパネルのフランジ面にボデー骨格側の位置決め基準穴に対応する前後2箇所の位置決め基準穴を設け、これらボデー骨格側およびフェンダーパネル側の位置決め基準穴を互いに一致させた状態で建付治具のピン部を嵌合させてフェンダーパネルの位置決めを行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−91259号公報(請求項2、図1等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように特許文献1では、左右のボデー骨格(アッパフレーム)を基準としてフェンダーが取り付けられている。このボデー骨格は、溶接により各部材が固定されてなるものであり、必ずしも組み付け精度が高いものでは無いため、左右のボデー骨格間で組み付け誤差が生じやすい。このため、左右のボデー骨格を基準としてフェンダーパネルの位置決めを行ってしまうと、ボデー骨格の誤差によって左右のフェンダーパネル同士の間隔が微妙に変化するためフードパネルとフェンダーパネルとの隙間が左右で異なったり、隙間を一定にするのが難しかった。
【0005】
さらに、フェンダーパネルを基準としてヘッドランプが位置決め固定されることから、このフェンダーパネルの基準に左右で誤差が生じると、ヘッドランプの位置が左右でずれてしまうことになり、ヘッドランプの間に設けられるグリルなどの車幅方向中心位置とフードパネルの車幅方向中心位置とにずれが生じてしまっていた。もちろんこの左右の誤差が小さく部品の位置の微調整で対応できる範囲であれば、大した問題では無いがこの誤差が大きくなるとヘッドランプやグリル側で生じる狂いは、より大きくなるため、グリルの車幅方向中心位置とフードパネルの車幅方向中心位置とのずれが大きくなり見栄えが悪くなる可能性があった。さらに場合によっては、グリルが取り付けられなくなる虞もあり、フェンダーパネルの取り付け位置を調整し直す必要が生じるなど作業性においても問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、フェンダーパネルの前後左右における位置決めを正確に行うことができる車両用フェンダーパネルの位置決め治具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用フェンダーパネルの位置決め治具は、車両の車室前方領域の前縁に配置されてフードパネルの前端部を支持するアッパーバー上に載置され、左右のフェンダーパネルの設置時の相対的な位置決めに用いられる位置決め治具であって、前記位置決め治具は、前記アッパーバー上に載置された状態において、前記アッパーバーに沿って車幅方向に延設される本体部と、前記アッパーバーに形成された2以上の穴部にそれぞれ嵌合されて、前記アッパーバーの車幅方向中心位置に対して前記本体部の車幅方向中心位置が一致した状態となるよう当該位置決め治具を配置させる突出部と、前記本体部の車幅方向中心位置から車幅方向に互いに等間隔となる位置に一対で設けられ、前記フェンダーパネル側の位置決めの基準となるフェンダー基準部と嵌合されて前記フェンダーパネルを位置決めする嵌合部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
位置決め治具がアッパーバーの車幅方向中心位置を基準にして載置され、本体部の車幅方向中心位置から車幅方向に互いに等間隔の位置に形成された嵌合部によって左右のフェンダーパネルが位置決めされるので、左右のフェンダーパネルをアッパーバーの車幅方向中心位置を基準にして左右のフェンダーパネル間の間隔が常に一定の間隔となるように配置することができる。したがって、左右のボデー骨格で組立誤差が生じてもこの影響を受けずに、アッパーバーの車幅方向中心を基準として正確にフードパネルの位置決めを行うことが可能となる。ゆえに、フードパネルとフェンダーパネルとの位置関係を常に一定の状態に維持することができるので、フードパネルとフェンダーパネルの隙間が左右で異なるといった不具合を抑制して見栄えを向上させることができる。さらには、フードパネルに対するフェンダーパネルの位置が車幅方向左右で狂いにくく、フェンダーパネルを基準として組みつけられる左右のヘッドランプ間の間隔も大きく変わることがないので、常に安定して部品の組み付けができ、作業性を向上させることができる。
【0009】
前記嵌合部は、前記フェンダー基準部の前縁部および車幅方向内側の側縁部と当接された状態で嵌合され、前記フェンダーパネルの前後および車幅方向での位置を位置決めすることが好ましい。位置決め治具の嵌合部によってフェンダーパネルの前後および車幅方向の位置を規制することで、より正確にフェンダーパネルの位置決めを行うことができる。
【0010】
前記位置決め治具の前記アッパーバー載置時に該アッパーバーに対向する面には、前記アッパーバーに対する当該位置決め治具の上下位置を規制する複数の脚部が設けられていることが好ましい。位置決め治具がアッパーバーの上面に対して複数の脚部で当接されるので、アッパーバー上にがたつき無く安定した状態で位置決め治具を載置させることができる。
【0011】
前記本体部には、その車幅方向中心に形成されて前記フードパネル前端部のストライカが挿入される挿入口と、該挿入口に前記ストライカが挿入された状態で前記フードの前端部と当接する当接部材とが設けられ、前記フードパネル前端部の位置決めを可能としたことが好ましい。フードパネルとフェンダーパネルとの相対位置をより正確かつ見栄え良く位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】車両の前部構造を示す模式的斜視図である。
【図2】第1実施形態にかかる位置決め治具と車両の前部構造とを示す模式的斜視図である。
【図3】車両の前部構造上に位置決め治具が載置された状態を示す模式的斜視図である。
【図4】車両の前部構造上に位置決め治具が載置された状態を示す模式的上面図である。
【図5】位置決め治具によりフェンダーパネルの位置決めを行う場合を説明するための模式的斜視図である。
【図6】第2実施形態にかかる位置決め治具と車両の前部構造とを示す模式的斜視図である。
【図7】フードパネルと位置決め治具との関係を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の位置決め治具の第1実施形態について図1〜5を用いて説明する。
【0014】
図1は、車両の前部構造を示す模式図である。図1に示す実施形態の車両の前部構造Iは、車両の車室前方領域におけるボデー構造であり、車幅方向左右両側で前後方向に延びる一対のアッパーフレーム21と、車体の前端部において車体の幅方向に延びて左右のアッパーフレーム21間を連結するフロントエンドアッパーバー(以下、アッパーバーという)11と、アッパーバー11の下方に設けられて車体の幅方向に延びるフロントエンドクロスメンバ12と、アッパーバー11とフロントエンドクロスメンバ12とを接続するサポート部13とを有する。これらが溶接され互いに固定されることで車両の前部構造Iが構成されている。フロントエンドクロスメンバ12の前方には、フロントバンパなどが装着される。サポート部13の近傍には、例えば図示しないラジエータやランプが装着される。
【0015】
アッパーバー11は、車体の幅方向中央に位置するアッパーバーセンター14と、アッパーバーセンター14の両端に設けられたアッパーバーサイド15からなる。アッパーバーセンター14は、車体の幅方向に延びた略直線状の部材であり、図1中図示しないフードパネル50(図3参照)の前端部を支持する。
【0016】
アッパーバーサイド15は、アッパーバーセンター14の両端部に接続されると共に湾曲して車体の後方側へ延びている。アッパーバーサイド15には、その車幅方向外側の端部、即ちアッパーバーセンター14とは逆側の端部にアッパーフレーム21が接続されている。アッパーフレーム21は、エンジンルームを構成するように車体の前後方向に延設され、このアッパーフレーム21の上面が、図1中図示しないフェンダーパネル40(図3参照)の取付面となる。
【0017】
また、アッパーバーセンター14の上面には、第1開口16(穴部)及び第2開口17(穴部)が設けられている。これらの開口は、ラジエータの取付作業孔である。第1開口16は、上面視において円形状であり、第2開口17は、車幅方向(左右方向)に長い略長方形状である。
【0018】
かかる車両の前部構造Iにフェンダーパネルを取り付けるための位置決め治具について、図2を用いて説明する。
【0019】
位置決め治具30は、車両の車幅方向に延びる本体部31を有する。本体部31はアッパーバー11上に載置されるものであり、アッパーバー11の形状に沿って端部が車幅方向外側に延設された左右対称の部材である。本体部31の底面には、本体部31の底面(アッパーバーセンター14に対向する面)よりも突出した突出部32が設けられている。突出部32は、それぞれ円柱状であり、アッパーバーセンター14上に本体部31を載置した場合に、この突出部32がそれぞれ第1開口16及び第2開口17に嵌合される。即ち、各突出部32は、この第1開口16及び第2開口17に嵌合されるように構成されている。なお、第2開口17は突出部32が嵌合しやすいようにやや遊びを持たせて構成されているために第1開口16とは異なる長方形状となっているので、突出部32は、それぞれ第1開口16に嵌合できるような形状となっていればよい。
【0020】
このように第1開口16及び第2開口17にそれぞれ突出部32を嵌合させることで、本体部31がアッパーバーセンター14(アッパーバー11)の長手方向(車幅方向)に沿って配置され、位置決め治具30の車体(アッパーバー11)に対する前後左右方向(床面に対して水平方向)の位置が決まる。
【0021】
また、位置決め治具30の本体部31の底面側には、底面から突出した別の突出部である脚部33が設けられている。本実施形態では、脚部33は、アッパーバーセンター14上に載置される一つの脚部と各アッパーバーサイド15上に載置される二つの脚部とからなる。各脚部33は突出部32よりも高さが低く、また、この脚部33のアッパーバー11に対向する面は、精度よく形成されている。従って、上述のようにアッパーバー11上にこの脚部33が設置される(設置位置は図2中の斜線部34である)ことで、位置決め治具30の車体(アッパーバー11)に対する上下方向での位置が決まる。即ち、本体部31の底面側が全てアッパーバー11上に載置されるとすれば、上下方向の位置を正確に決めることが難しく、安定してアッパーバー11上に載置させることができない。このため、本実施形態では、脚部33を設けてこの脚部33で位置決め治具30を支持することで、位置決め治具30における車体の上下方向における位置決めを正確に行い、安定して位置決め治具30を載せることができるように構成されている。
【0022】
そして、突出部32をアッパーバーセンター14の開口に挿入すると共に、脚部33をアッパーバー11の上面に載置することで、図3及び図4に示すように、位置決め治具30は、車体の上下および前後左右方向共に正確に位置決めされた状態でアッパーバー11上に載置される。なお、位置決め治具30(本体部31)は、その車幅方向での中心位置がアッパーバーセンター14(アッパーバー11)の車幅方向中心位置Lと略一致する状態に載置される。
【0023】
この状態で、フェンダーパネル40の車体前部への取付を行う。位置決め治具30は、上述のように、アッパーバー11(アッパーバーセンター14)を基準にして上下および前後左右方向共に正確に位置決めされていることから、この位置決め治具30に従ってフェンダーパネル40を取り付けることで、フェンダーパネル40の取付位置をアッパーバー11(アッパーバーセンター14)を基準にして取り付けることができる。
【0024】
また、図3に示すように、車室前方には、フードパネル50が設けられている。フードパネル50は、後端部がアッパーフレーム21に回動可能に支持され、アッパーフレーム21およびアッパーバー11の上方、すなわち車室前方領域(エンジンルーム)の上部を覆うよう配置される。フードパネル50は、その前端部の車幅方向中心位置がアッパーバーセンター14の車幅方向中心位置Lに合うように設置されている。そして、フェンダーパネル40は、アッパーフレーム21に取り付けられた状態でフードパネル50の車幅方向左右両側に配置される。(図5参照)
【0025】
以下にて詳細を説明する。
【0026】
図3及び図4に示すように、フェンダーパネル40は、車体前後方向に沿って延設されてアッパーフレーム21の上面に取り付けられるフランジ部41を備えている。このフランジ部41の車体前方の端部にフェンダーパネル40の位置決め基準となるフェンダー基準部42が形成されており、本実施形態では、略矩形状となっている。
【0027】
また、位置決め治具30の本体部31の車幅方向の左右の両端部35には、フェンダーパネル40を位置決めするための嵌合部36がそれぞれ形成されている。左右一対で設けられる嵌合部36は、本体部31の車幅方向中心位置から左右(車幅方向)に互いに等間隔となる位置に形成される。本体部31の左右の各端部35の嵌合部36は、このフェンダーパネル40のフェンダー基準部42の形状に対応してフェンダーパネル40の前後および左右(車幅)方向の位置を規制する形状となっている。具体的には、嵌合部36は、略矩形状の凹部で形成されており、この嵌合部(凹部)36にフェンダー基準部42の前縁部と車幅方向内側の側縁部とが当接された状態で嵌合されるように構成されている。
【0028】
位置決め治具30(本体部31)は、その車幅方向での中心位置がアッパーバーセンター14(アッパーバー11)の車幅方向中心位置Lとほぼ一致する状態に載置されるため、本体部31の一対の嵌合部36がアッパーバーセンター14の車幅方向中心位置Lから左右(車幅方向)に等間隔の位置に配置される構成となっている。
【0029】
そして、アッパーフレーム21の上面にフェンダーパネル40を載置し、位置決め治具30の左右両端部35の嵌合部(凹部)36にフェンダーパネル40のフェンダー基準部42を当接させることで、フェンダーパネル40の位置決めを行うことができる。即ち、嵌合部(凹部)36とフェンダー基準部42とは互いに対応する形状となっており、フェンダー基準部42の車両の前方側に位置する前辺部43と車両の内側に位置する内辺部44とが嵌合部(凹部)36に当接された状態で嵌合されるので、図5に示すようにフェンダーパネル40の前後および左右(車幅方向)の位置を正確に決めることができる。この状態において、左右のフェンダーパネル40は、位置決め治具30によって、アッパーバーセンター14(アッパーバー11)の車幅方向中心位置Lから左右(車幅方向)に等間隔の位置に配置される。すなわち、左右のフェンダーパネル40は、アッパーバーセンター14(アッパーバー11)の車幅方向中心位置Lを基準にして位置決めされ、左右のフェンダーパネル40間が常に一定の間隔となるよう配置される。
【0030】
このように、本実施形態においては、位置決め治具30を用いることで、フードパネル50の取付基準となるアッパーバーセンター14(アッパーバー11)の車幅方向中心位置Lを基準としてフェンダーパネル40の前後および左右幅方向での位置を正確に決めることができる。
【0031】
従来では、フェンダーパネル40の位置を、アッパーフレーム21を基準として位置決めしていたために、左右のアッパーフレーム21に組立誤差があると、この誤差を含んで左右のフェンダーパネル40同士の間隔が微妙に変化するため、フードパネル50とフェンダーパネル40との隙間が左右で異なった状態で設置されてしまう虞があった。また、フードパネル50に対する隙間が左右のフェンダーパネル40で互いに異なった状態で設置されていると、フェンダーパネル40を基準に取り付けられる左右のヘッドランプ間の間隔にもずれが生じ、見栄えが悪くなったり、最悪ヘッドランプ間に設けられるグリルを取付出来なくなってしまうため、フェンダーパネル40の位置を再調整し直さなければならなくなるなど、作業性において問題があった。
【0032】
これに対し、本実施形態では、位置決め治具30を突出部32及び脚部33によりアッパーバー11に正確に位置決めし、この位置決め治具30にフェンダーパネル40を当接してフェンダーパネル40の位置決めを行っている。即ち、本実施形態では、フェンダーパネル40の位置決めは、位置決め治具30を基準とし、位置決め治具30は、アッパーバー11(アッパーバーセンター14)の車幅方向中心位置Lを基準として行うことにより、結果としてフェンダーパネル40をアッパーバー11(アッパーバーセンター14)の車幅方向中心を基準として取り付けることが可能である。
【0033】
フードパネル50は、アッパーバー11(アッパーバーセンター14)の車幅方向中心位置Lを取付基準としているので、フェンダーパネル40とフードパネル50の基準とが同じとなる。従って、ボデー骨格に組立誤差が含まれていてもこの影響を受けにくく、かつ、位置決め治具30により前後左右方向を規制して正確に位置決めを行うことができる。
【0034】
また、左右のフェンダーパネル40は、フードパネル50の取付基準となるアッパーバー11(アッパーバーセンター14)の車幅方向中心位置Lから車体の前後左右方向で常に同じ位置に配置されるので、左右のフェンダーパネル間の間隔が常に一定に設定される。したがってフードパネル50とフェンダーパネル40との隙間が左右でほぼ同じ間隔とされ車両の見栄えを向上させることができる。さらには、フードパネル50に対するフェンダーパネル40の位置が車幅方向左右で狂いにくく、ヘッドランプ間の間隔も大きく変わることがないので、常に安定して部品の組み付けができ、作業性を向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態では新たに開口を設けることなくラジエータの取付作業孔である第1開口16及び第2開口17を用いて位置決め治具の位置決めを行うことができる。
【0036】
次に、本発明の第2実施形態及びその使用形態について図6及び図7を用いて説明する。
【0037】
本実施形態では、位置決め治具30Aは、第1実施形態と同様にフェンダーパネル40の位置決めができ、さらに同時にフードパネル50の位置決めを行うことができるように構成されている。即ち、上述した実施形態では、フードパネル50は別の位置決め治具によって位置決めされて設置されたが、本実施形態では、位置決め治具30Aにより、フェンダーパネル40の位置決めと同時にフードパネル50の位置決めを行う。なお、ここでは、第1実施形態と異なる部分のみ説明し、第1実施形態と同様の構成・効果については説明を省略する。
【0038】
図6に示すように、本実施形態では、位置決め治具30Aは、第1実施形態同様、アッパーバー11の形状に沿って車幅方向に延びる本体部31と、本体部31の車幅方向の左右の両端部35にフェンダーパネル40を位置決めする嵌合部36を備えている。さらに本体部31は、その上面にフードパネル50前端部の裏面側(エンジンルーム側)に設けられたストライカ55が挿入されるストライカ開口部51を有する。ストライカ55は、フードパネル50前端部の車幅方向中心位置Lに配置され、ストライカ開口部51は、本体部31の車幅方向中心位置Lにおいてストライカ55の形状に合わせて適宜設定されるものである。本実施形態では、ストライカ開口部51は、車両の前後方向に長い溝部となっている。ストライカ開口部51の幅は、ストライカ55の幅方向(即ち左右方向)の長さと略同一となっており、かつ、ストライカ開口部51の長さは、ストライカ55の長さよりもやや長い。このため、後述するようにストライカ55がストライカ開口部51に挿入された場合に、ストライカ開口部51の幅方向においてはストライカ55の車幅方向での位置を規制し、長さ方向においてやや遊びをもって嵌合される。
【0039】
また、本体部31の車両前方側には、フードパネル位置決め部52を備える。フードパネル位置決め部52は、車両の前方に突出した平板部53と、平板部53の前方縁部から上方へ延設された延設部54とを備える。延設部54の上端部には、延設部凹部57(図7参照)が形成されている。
【0040】
そして、本実施形態では、フードパネル50を前部構造Iに取り付けるにあたり、この位置決め治具30Aを用いて以下のように取付を行う。
【0041】
初めに、図6に示すように、上述した第1実施形態と同様にして位置決め治具30Aを用いて前後左右方向において位置決めをした後にフェンダーパネル40を取り付ける。なお、この時、位置決め治具30Aは、本体部31の車幅方向中心位置とアッパーバーセンター14の車幅方向中心位置Lとが一致された状態とされる。
【0042】
この状態で、図7に示すように、フードパネル50の前端部付近に設けられたストライカ55をストライカ開口部51に挿入し、かつ、フードパネル50の前縁部56を延設部54に当接させる。これにより、フードパネル50は、フードパネル位置決め部52によって前後位置が規制されるとともに、フードパネル50の前端部の車幅方向中心位置がアッパーバーセンター14の車幅方向中心位置Lに合うように設置される。従って、フードパネル50を位置決め治具30Aを用いてアッパーバーセンター14(アッパーバー11)の車幅方向中心位置Lを基準に正確に位置決めすることができる。
【0043】
即ち、本実施形態では、ストライカ開口部51にストライカ55を挿入し、かつ、この状態で前縁部56を延設部54に当接させることで、フードパネル50の車両の前後方向及び車幅方向の位置決めを行うことができる。この場合に、フェンダーパネル40の位置決めと同じ位置決め治具30Aを用いて同時に位置決めを行っているので、フェンダーパネル40とフードパネル50とを相対的により正確に位置決めすることができる。したがって、車両の見栄えをより一層向上させることが可能となる。
【0044】
上述した各実施形態では、位置決め治具30、30Aは共に車幅方向に亘るように本体部31が形成されていたが、これに限定されない。例えば、中心から左右に二つ分割され、これらを組み合わせて使用するように構成してもよい。
【0045】
本実施形態では、脚部33を位置決め治具30、30A側に設けたが、これに限定されない。例えば、アッパーバー11側に設けていてもよい。
【0046】
本実施形態では、上下方向の位置決め手段として脚部33を設けたが、これに限定されない。脚部33を設けずに、磁石を設けてこの磁石がアッパーバーセンター14に接着するように設けてもよい。
【0047】
本実施形態では、フェンダーパネル40のフェンダー基準部42が矩形状であるために、対応して本体部31の各端部35の嵌合部36も矩形状の凹部としたが、これに限定されない。フェンダーパネル40のフェンダー基準部42の形状に応じて、即ちこのフェンダー基準部42と当接時に嵌合して位置決めできるように本体部31の各端部35の嵌合部36が構成されていればよい。また、フェンダーパネル40の位置合わせは本実施形態ではフェンダー基準部42と嵌合部36とを当接させることで行ったが、これに限定されない。例えば、位置決めピンによりフェンダーパネル40の位置合わせを行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の位置決め治具は、車体前部にフェンダーパネルを取り付ける際の取付位置を正確に決めることができる。従って、車両製造分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
11 アッパーバー
12 フロントエンドクロスメンバ
13 サポート部
14 アッパーバーセンター
15 アッパーバーサイド
16 第1開口(穴部)
17 第2開口(穴部)
21 アッパーフレーム
30、30A 位置決め治具
31 本体部
32 突出部
33 脚部
35 端部
36 嵌合部
40 フェンダーパネル
41 フランジ部
42 フェンダー基準部
43 前辺部
44 内辺部
50 フードパネル
51 ストライカ開口部
52 位置決め部
53 平板部
54 延設部
55 ストライカ
56 前縁部
57 延設部凹部
I 前部構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室前方領域の前縁に配置されてフードパネルの前端部を支持するアッパーバー上に載置され、左右のフェンダーパネルの設置時の相対的な位置決めに用いられる位置決め治具であって、
前記位置決め治具は、前記アッパーバー上に載置された状態において、
前記アッパーバーに沿って車幅方向に延設される本体部と、
前記アッパーバーに形成された2以上の穴部にそれぞれ嵌合されて、前記アッパーバーの車幅方向中心位置に対して前記本体部の車幅方向中心位置が一致した状態となるよう当該位置決め治具を配置させる突出部と、
前記本体部の車幅方向中心位置から車幅方向に互いに等間隔となる位置に一対で設けられ、前記フェンダーパネル側の位置決めの基準となるフェンダー基準部と嵌合されて前記フェンダーパネルを位置決めする嵌合部と
を備えたことを特徴とする車両用フェンダーパネルの位置決め治具。
【請求項2】
前記嵌合部は、前記フェンダー基準部の前縁部および車幅方向内側の側縁部と当接された状態で嵌合され、前記フェンダーパネルの前後および車幅方向での位置を位置決めすることを特徴とする車両用フェンダーパネルの位置決め治具。
【請求項3】
前記位置決め治具の前記アッパーバー載置時に該アッパーバーに対向する面には、前記アッパーバーに対する当該位置決め治具の上下位置を規制する複数の脚部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用フェンダーパネルの位置決め治具。
【請求項4】
前記本体部には、その車幅方向中心に形成されて前記フードパネル前端部のストライカが挿入される挿入口と、該挿入口に前記ストライカが挿入された状態で前記フードの前端部と当接する当接部材とが設けられ、前記フードパネル前端部の位置決めを可能としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用フェンダーパネルの位置決め治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−82313(P2013−82313A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223366(P2011−223366)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】