説明

車両用フック装置

【課題】被引掛物をフックに容易に掛けられるように構成しつつ、被引掛物が外れる可能性を低減できるフック装置を提供する。
【解決手段】ハウジング50と、ハウジング50に収容され、ハウジング50に回動可能に支持されるフック20と、フック開口を閉塞するための閉塞部80と、閉塞部80にフック開口を閉塞させるよう付勢する弾性体と、を備える。フック20は、フック基部から突出するように形成された引掛部と、引掛部と対向する壁部と、壁部に形成された開口部とを有する。閉塞部80は、開口部から張り出し、回転すると開口部の裏側に退避可能な本体部と、本体部に設けられて開口部の裏側に配される第1回転軸と、本体部の第1回転軸と異なる位置に設けられて開口部の裏側に配される第2回転軸と、を有する。壁部は、第1回転軸に係合して回転可能に支持する第1支持部と、第2回転軸に係合して回転可能に支持する第2支持部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フック開口を閉塞する閉塞部を備える車両用フック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の室内にはフック装置が設けられ、手荷物などの被引掛部を掛けるために使用される。車両の振動によりフックから被引掛部が外れないように、フック開口を閉塞する蓋を有するフック装置が用いられる(特許文献1等参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用フックは、手荷物を掛けるための開放部を有するフック本体と、開放部を閉じるために回転自在に取り付けられた蓋と、この蓋の回転軸から突出するように蓋と一体に形成された脚部とを備える。手荷物を掛けていない状態では蓋は開放部を開いている一方、脚部は開放部に位置する。この車両用フックは、フック本体に手荷物を掛けると、フックの開放部に位置する脚部が手荷物とともに押し込まれ、脚部に連動して蓋が回転して開放部を閉じるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−251678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車両用フックにおいて、たとえば手荷物の被引掛物が車両の振動などにより自由状態になれば、蓋が回転して外れることがある。また、蓋は手荷物の被引掛物の重さにより閉じた状態が保持されているため、手荷物が大きく車室下面に着地している場合は、手荷物の被引掛物は自由状態であり蓋が機能しづらい。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被引掛物をフックに容易に掛けられるように構成しつつ、被引掛物が外れる可能性を低減できるフック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用フック装置は、ハウジングと、ハウジングに収容され、ハウジングに回動可能に支持されるフックと、フックのフック開口を閉塞するための閉塞部と、フック開口を閉塞させるよう閉塞部を付勢する弾性体と、を備える。フックは、フック基部と、フック基部から突出するように形成された引掛部と、フック基部に設けられ、引掛部と対向する壁部と、壁部に形成された開口部と、を有する。閉塞部は、開口部から張り出し、回転すると開口部の裏側に退避可能な本体部と、本体部に設けられて開口部の裏側に配される第1回転軸と、本体部の第1回転軸と異なる位置に設けられて開口部の裏側に配される第2回転軸と、を有する。壁部は、第1回転軸に係合して回転可能に支持する第1支持部と、第2回転軸に係合して回転可能に支持する第2支持部と、を有する。このフック装置の閉塞部は、第2支持部と第2回転軸との係合を解除して第1回転軸を中心に回転可能であり、また第1支持部と第1回転軸との係合を解除して第2回転軸を中心に回転可能である。
【0008】
この態様によると、フック装置は、閉塞部を弾性体により付勢してフック開口を閉塞しているため、フックに掛けられた被引掛物がフックから外れる可能性を低減することができる。被引掛物をフックに掛ける場合と外す場合とに応じて、すなわち閉塞部に加えられる荷重の方向に応じて閉塞部をそれぞれ別の回転方向に回転させて開口部の裏側に退かせることができる。またフックを使用しない場合にはフックをハウジングに収容することができる。
【0009】
本発明の別の態様もまた、車両用フック装置である。この装置は、壁部と、該壁部から突き出るように設けられたフックとを有するハウジングと、フックのフック開口を閉塞するための閉塞部と、フック開口を閉塞させるよう閉塞部を付勢する弾性体と、を備える。ハウジングの壁部には開口部が形成され、閉塞部は、開口部から張り出し、回転すると開口部の裏側に退避可能な本体部と、本体部に設けられて開口部の裏側に配される第1回転軸と、本体部の第1回転軸と異なる位置に設けられて開口部の裏側に配される第2回転軸と、を有する。壁部は、第1回転軸に係合して回転可能に支持する第1支持部と、第2回転軸に係合して回転可能に支持する第2支持部と、を有する。このフック装置の閉塞部は、第2支持部と第2回転軸との係合を解除して第1回転軸を中心に回転可能である一方、第1支持部と第1回転軸との係合を解除して第2回転軸を中心に回転可能である。
【0010】
この態様によると、フック装置は、閉塞部を弾性体により付勢してフック開口を閉塞しているため、フックに掛けられた被引掛物がフックから外れる可能性を低減することができる。被引掛物をフックに掛ける場合と外す場合とに応じて、すなわち閉塞部に加えられる荷重の方向に応じて閉塞部をそれぞれ別の回転方向に回転させて開口部の裏側に退かせることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フック装置において、被引掛物をフックに容易に掛けられるように構成しつつ、被引掛物が外れる可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係るフック装置の斜視図である。
【図2】ハウジングを説明するための説明図である。
【図3】フックを説明するための説明図である。
【図4】閉塞部を説明するための説明図である。
【図5】図1(b)に示すフック装置の線分A−Aの断面図である。
【図6】フック装置におけるフックの動作について説明するための説明図である。
【図7】フック装置における閉塞部の動作について説明するための説明図である。
【図8】変形例のフック装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施形態に係るフック装置10の斜視図である。図1(a)はフック20を閉じた状態のフック装置10の斜視図であり、図1(b)はフック20を開いた状態のフック装置10の斜視図である。フック装置10は、フック20と、フック20を収容可能なハウジング50と、フック20のフック開口を閉塞する閉塞部80と、閉塞部80を付勢するトーションバネ(不図示)と、トーションバネを支持するシャフトとを備える。
【0014】
フック装置10は、たとえば車室の内壁にハウジング50を埋め込むように取り付けられ、フック装置10は、図1(a)に示すフック20をハウジング50に収容した状態からフック20を開方向に回転させ、図1(b)に示すフック20を突き出た状態にしてフック20に手荷物などの被引掛物を掛けて用いられる。
【0015】
図1(a)に示すフック20がハウジング50に収容された状態を、収容状態または閉状態といい、図1(b)に示すようにフック20がハウジング50から突き出た状態をフック20の使用状態または開状態という。またフック装置10において、フック20の表面24が露出する側を手前側とし、その逆のハウジング50の底面側を奥側とする。以下、各部材の個別の図面を参照しつつ各部材の構成を説明する。
【0016】
図2は、ハウジング50を説明するための説明図である。図2(a)はハウジング50の上面図であり、図2(b)はハウジング50の表面図であり、図2(c)はハウジング50の側面図である。ここで各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。なお上面や側面から見えない内部構造を点線で表示する。
【0017】
ハウジング50は、箱状部52、フランジ部54、軸孔56、開口縁部58、取付部60、第1弾性片62a、第2弾性片62b(これらを区別しない場合「弾性片62」という)、第1ストッパ部64a、第2ストッパ部64b(これらを区別しない場合「ストッパ部64」という)を有する。
【0018】
箱状部52の開口の周囲にはフランジ部54が形成される。箱状部52の底面61には取付部60が設けられ、車両に取り付けられる。図2(c)に示すように箱状部52の側面65にフック20を回動可能に支持する軸孔56が形成される。
【0019】
一対の弾性片62は箱状部52の下面63から立設する。弾性片62は弾性を有し、フック20に係合してフック20を所定の状態で保持する。一対のストッパ部64は、箱状部52の下面63と対向するよう配され、フック20に当接してフック20の開方向の回転を止める。
【0020】
図3は、フック20を説明するための説明図である。図3(a)は図1(a)のようにフック20の表面を立設した状態の上面図であり、図3(b)は図1(b)のようにフック20の表面を水平にした状態で上側からみた図であり、図3(c)はフック20の側面図である。
【0021】
フックは、ハウジング50に収容され、ハウジング50に回動可能に支持される。フック20は、操作部22、表面24、引掛部26、フック基部28、軸部30、壁部32、開口部34、バネ軸支部36、シャフト軸受部38、第1突部40、第2突部42、閉保持部44および開保持部46を有する。
【0022】
フック基部28は、板状に形成され、フック20の収容状態においてハウジング50の開口を塞ぐ。フック基部28の表面24には突起状の操作部22が形成され、フック20を収容状態から使用状態にするために操作する取っ手として機能する。
【0023】
引掛部26は、フック基部28の一端から突出するように形成される。引掛部26は手荷物などの被引掛物が引っ掛けられる。壁部32は、図3(c)に示すようにフック基部28の後端部48から離れてフック基部28に立設し、引掛部26と対向する。壁部32と引掛部26との間がフック開口21となり、フック開口21を被引掛部が通過する。
【0024】
図3(a)に示すように壁部32の中央には開口部34が形成され、図1(b)に示すように開口部34から閉塞部80が張り出す。開口部34の縁には一対のバネ軸支部36が壁部32から突き出すように形成される。バネ軸支部36のそれぞれにはシャフト軸受部38が形成され、シャフト軸受部38にトーションバネを支持するシャフト(不図示)が挿入される。
【0025】
図3(a)および(c)に示すようにバネ軸支部36を挟むように第1突部40および第2突部42が形成される。バネ軸支部36と第1突部40の間、バネ軸支部36と第2突部42の間に閉塞部80の回転軸が支持される。
【0026】
フック基部28には軸部30が設けられ、壁部32より後端側に配される。図3(a)に示す軸部30が突き出た方向を軸方向という。軸部30の径方向外向きに突出する閉保持部44および開保持部46が設けられる。閉保持部44は、フック20の閉状態においてハウジング50の弾性片62に係合してフック20を閉状態に保持し、開保持部46はフック20の開状態においてハウジング50の弾性片62に係合してフック20を開状態に保持する。
【0027】
図4は、閉塞部80を説明するための説明図である。図4(a)は閉塞部80の正面図であり、図4(b)は閉塞部80の上面図であり、図4(c)は閉塞部80の側面図である。閉塞部80は、フック20のフック開口21を閉塞する。
【0028】
閉塞部80は、閉塞本体部82、第1回転軸84および第2回転軸86を有する。閉塞本体部82は、図4(c)に示すように側面が3角形状に形成され、図1(b)に示すように壁部32の開口部34から一端が張り出す。閉塞本体部82の2つの後端に第1回転軸84および第2回転軸86が設けられ、閉塞本体部82より軸方向に延出する。なお、閉塞本体部82は、開口部34から一端が張り出す形状であれば任意の形状であってよく、閉塞本体部82の側面が3角形状に限定されない。
【0029】
第1回転軸84および第2回転軸86は、ともにフック20の軸部30に平行に配される。第1回転軸84は、閉塞本体部82が張り出した開口部34の裏側に配される。第2回転軸86は、第1回転軸84と異なる位置に設けられ、開口部34の裏側に配される。第1回転軸84および第2回転軸86の中央にそれぞれバネ受部88が凹んで形成される。バネ受部88は、トーションバネに接触して付勢される。
【0030】
図5は、図1(b)に示すフック装置10の線分A−Aの断面図である。シャフト96はバネ軸支部36のシャフト軸受部38に挿入されて支持される。トーションバネ90の巻回部94は壁部32の裏側でシャフト96に挿入されて支持される。トーションバネ90は、閉塞部80にフック開口21を閉塞させるよう付勢する弾性体である。フック20の後端部48の上にストッパ部64が張り出し、フック20の回転を規制する。
【0031】
図6は、フック装置10におけるフック20の動作について説明するための説明図である。図6(a)はフック20の収容状態におけるフック装置10の断面図であり、図6(b)は、フック20の使用状態におけるフック装置10の断面図である。
【0032】
図6(a)ではフック20がハウジング50に収容され、フック基部28と箱状部52の底面61が対向している。閉保持部44は弾性片62に係合し、弾性片62がフック20を閉方向に回転する方向に付勢することにより収容状態に保持されている。弾性片62と閉保持部44の係合により、フック20を収容した際にユーザにクリック感を伝達することができる。
【0033】
トーションバネ90は、巻回部94と、第1回転軸84を第1支持部に付勢するよう巻回部94の一端に形成された第1アーム92aと、第2回転軸86を第2支持部に付勢するよう巻回部94の他端に形成された第2アーム92bと、を有する。ここで第1支持部は、第1突部40と壁部32の一部とバネ軸支部36の一部により構成された窪みであり、第2支持部は第2突部42と壁部32の一部とバネ軸支部36の一部により構成された窪みである。トーションバネ90の付勢により閉塞本体部82が開口部34から張り出す。第1支持部は、第1回転軸84に係合すると第1回転軸84を回転可能に支持し、第2支持部は、第2回転軸86に係合すると第2回転軸86を回転可能に支持する。この状態で第1回転軸84と第2回転軸86とは、被引掛部がフック開口21を通過する上下方向、もしくは壁部32の表面に沿った方向に並列に配置される。これにより、被引掛部の出入りに伴い、閉塞部80の回転中心が第1回転軸84または第2回転軸86に切り替わって閉塞部80が出没できる。
【0034】
一対のバネ軸支部36は、シャフト96を支持し、閉塞本体部82が張り出している状態において第1回転軸84および第2回転軸86の間に配される。これにより、バネ軸支部36は第1回転軸84および第2回転軸86を支持する第1支持部、第2支持部として機能できる。またバネ軸支部36は先端に向かって尖った三角形状に形成されており、閉塞部80が開口部34の裏側に退避するまでの第1回転軸84および第2回転軸86の回転時の軌道を阻害しないように形成される。
【0035】
図6(b)ではフック20がハウジング50から出た使用状態となり、フック20の開方向への回転はフック基部28の後端部48がストッパ部64に当接して規制されている。フック20の使用状態において、閉塞部80が自由状態であれば、トーションバネ90に付勢により閉塞部80の第1回転軸84および第2回転軸86が第1支持部および第2支持部にそれぞれ係合し、閉塞本体部82がフック開口21を閉塞している。
【0036】
開保持部46は弾性片62に係合し、弾性片62がフック20を開方向に回転する方向に付勢することにより使用状態に保持されている。弾性片62と開保持部46の係合により、フック20を収容した際にユーザにクリック感を伝達することができる。
【0037】
図7は、フック装置10における閉塞部80の動作について説明するための説明図である。図7(a)は被引掛物をフック20に掛けるときの動作を示し、図7(b)は被引掛物をフック20に掛けた状態を示し、図7(c)は被引掛物をフック20から外すときの動作を示す。
【0038】
図7(a)の矢印に示すように被引掛物をフック20に掛ける場合、被引掛物がフック開口21を塞ぐ閉塞部80に上側から接触して、閉塞部80が第1回転方向に回転する。なお第1回転方向は、閉塞本体部82の突き出た突端81が閉塞状態から下方に移動する回転方向であり、第2回転方向は、閉塞本体部82の突端81が閉塞状態から上方に移動する回転方向である。
【0039】
閉塞部80が第1回転方向に回転する場合、閉塞部80は、第2支持部と第2回転軸86との係合を解除して第1回転軸84を第1支持部に係合して回転する。被引掛物が上側から閉塞本体部82を押すと、閉塞本体部82は第1回転方向のトルクを受ける。第1回転軸84は、閉塞本体部82が第1回転方向のトルクを受けると反作用で上方に移動しようとするが、第1突部40により上方の移動が規制されているため、第1回転軸84と第1支持部の係合は維持される。一方、第2回転軸86において、そのトルクの方向に第2支持部が開放されているため第2支持部と第2回転軸86との係合が解除され、第2回転軸86が第2支持部から離間する。そのため閉塞部80は、第1回転軸84を回転中心として回転し、第2回転軸86が第2支持部から離間するとともに閉塞本体部82の突端81が引掛部26から離間して、閉塞本体部82が壁部32の裏側に退避する。これにより、被引掛物を閉塞部80に接触させてフック開口21を開くことができ、閉塞部80が無い場合と同じ一つの動作で被引掛物をフック20に掛けることができる。
【0040】
図7(b)に示すように被引掛物をフック20に掛け、閉塞部80が自由状態になると閉塞本体部82がフック開口21に張り出し、フック開口21が閉塞される。これにより、被引掛物が車両の振動などによりフック20から外れる可能性を低減することができる。
【0041】
図7(c)に示すように被引掛物をフック20から外す場合、被引掛物がフック開口21を塞ぐ閉塞部80に下側から接触して、閉塞部80が第2回転方向に回転する。閉塞部80が第2回転方向に回転する場合、閉塞部80は、第1支持部と第1回転軸84との係合を解除して第2回転軸86を第2支持部に係合して回転する。
【0042】
被引掛物が下側から閉塞本体部82を押すと、閉塞本体部82は第2回転方向のトルクを受ける。第2回転軸86は、閉塞本体部82が第2回転方向のトルクを受けると反作用で下方に移動しようとするが、第2突部42により下方の移動が規制されているため、第2回転軸86と第2支持部の係合は維持される。一方、そのトルクの方向に第1支持部が開放されているため第1支持部と第1回転軸84との係合が解除され、第1回転軸84が第1支持部から離間する。そのため閉塞部80は、第2回転軸86を回転中心として回転し、第1回転軸84が第1支持部から離間するとともに閉塞本体部82の突端81が引掛部26から離間して、閉塞本体部82が壁部32の裏側に退避する。
【0043】
これにより、被引掛物を閉塞部80に接触させてフック開口21を開くことができ、閉塞部80が無い場合と同じ一つの動作で被引掛物をフック20から外すことができる。トーションバネ90の第1アーム92aおよび第2アーム92bがそれぞれ第1回転軸84と第2回転軸86とを付勢することにより、回転軸を切り替えて第1回転方向と第2回転方向とに回転でき、閉塞部80の閉塞を被引掛物によりスムーズに開放できる。また、閉塞部80の側面を略3角形状に形成することで、側面が矩形である場合と比べて閉塞本体部82の回転軌跡を小さくすることができ、開口部34を小さくできる。
【0044】
以上のようにフック装置10は、被引掛物をフック20に掛ける場合も外す場合も閉塞部80が無い場合と同じ一つの動作で完了できる。そして被引掛物をフック20に掛けている状態では、閉塞部80を付勢してフック開口21を閉塞しているため、被引掛物がフック20から外れる可能性を低減することができる。
【0045】
図8は、変形例のフック装置100の断面図を示す。図6(b)に示すフック装置10と比べて、フック装置100はハウジング150にフック120が一体に固定されている点で異なる。フック120はあらかじめ突き出たままの状態で保持される。フック120とハウジング150を一体化することでシンプルな構成となり、コストを抑えることができる。
【0046】
フック120のフック基部128はハウジング150の壁部132から突き出し、フック基部128の端部から引掛部126が壁部132に対向するように立設する。フック開口121は閉塞部80の閉塞本体部82により閉塞されている。閉塞部80はトーションバネ90に付勢されている。トーションバネ90の巻回部94はシャフト96に挿入され、シャフト96の両端は一対のバネ軸支部136に支持される。バネ軸支部136は壁部132の裏側に対向して設けられる。
【0047】
壁部132は、第1回転軸84に係合して回転可能に支持する第1支持部と、第2回転軸86に係合して回転可能に支持する第2支持部と、を有する。第1支持部は、第1突部140と壁部132の一部とバネ軸支部136の一部により構成された窪みであり、第2支持部は第2突部142と壁部132の一部とバネ軸支部136の一部により構成された窪みである。
【0048】
フック装置100においても、閉塞部80の動作は図7(a)〜(c)に示す動作と同様である。すなわち、閉塞部80は、第2支持部と第2回転軸86との係合を解除して第1回転軸84を第1支持部に係合して回転可能である一方、第1支持部と第1回転軸84との係合を解除して第2回転軸86を第2支持部に係合して回転可能である。このように、被引掛物をフック120に掛ける場合も外す場合も閉塞部80が無い場合と同じ一つの動作で完了できる。
【0049】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0050】
10 フック装置、 20 フック、 21 フック開口、 22 操作部、 24 表面、 26 引掛部、 28 フック基部、 30 軸部、 32 壁部、 34 開口部、 36 バネ軸支部、 38 シャフト軸受部、 40 第1突部、 42 第2突部、 44 閉保持部、 46 開保持部、 50 ハウジング、 52 箱状部、 54 フランジ部、 56 軸孔、 58 開口縁部、 60 取付部、 62a 第1弾性片、 62b 第2弾性片、 64a 第1ストッパ部、 64b 第2ストッパ部、 80 閉塞部、 82 閉塞本体部、 84 第1回転軸、 86 第2回転軸、 88 バネ受部、 90 トーションバネ、 92a 第1アーム、 92b 第2アーム、 94 巻回部、 96 シャフト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに収容され、前記ハウジングに回動可能に支持されるフックと、
前記フックのフック開口を閉塞するための閉塞部と、
前記フック開口を閉塞させるよう前記閉塞部を付勢する弾性体と、を備え、
前記フックは、
フック基部と、
前記フック基部から突出するように形成された引掛部と、
前記フック基部に設けられ、前記引掛部と対向する壁部と、
前記壁部に形成された開口部と、を有し、
前記閉塞部は、
前記開口部から張り出し、回転すると前記開口部の裏側に退避可能な本体部と、
前記本体部に設けられて前記開口部の裏側に配される第1回転軸と、
前記本体部の前記第1回転軸と異なる位置に設けられて前記開口部の裏側に配される第2回転軸と、を有し、
前記壁部は、
前記第1回転軸に係合して回転可能に支持する第1支持部と、
前記第2回転軸に係合して回転可能に支持する第2支持部と、を有し、
前記閉塞部は、前記第2支持部と前記第2回転軸との係合を解除して前記第1回転軸を中心に回転可能であり、また前記第1支持部と前記第1回転軸との係合を解除して前記第2回転軸を中心に回転可能であることを特徴とする車両用フック装置。
【請求項2】
前記弾性体は、トーションバネであって、巻回部と、前記第1回転軸を前記第1支持部に付勢するよう前記巻回部の一端に形成された第1アームと、前記第2回転軸を前記第2支持部に付勢するよう前記巻回部の他端に形成された第2アームと、を有する請求項1に記載の車両用フック装置。
【請求項3】
前記壁部は、前記巻回部に挿通されるシャフトと、前記シャフトを支持し前記第1回転軸および前記第2回転軸の間に配される一対の軸支部と、を有することを特徴とする請求項2に記載の車両用フック装置。
【請求項4】
壁部と、前記壁部から突き出るように設けられたフックとを有するハウジングと、
前記フックのフック開口を閉塞するための閉塞部と、
前記フック開口を閉塞させるよう前記閉塞部を付勢する弾性体と、を備え、
前記ハウジングの前記壁部には開口部が形成され、
前記閉塞部は、
前記開口部から張り出し、回転すると前記開口部の裏側に退避可能な本体部と、
前記本体部に設けられて前記開口部の裏側に配される第1回転軸と、
前記本体部の前記第1回転軸と異なる位置に設けられて前記開口部の裏側に配される第2回転軸と、を有し、
前記壁部は、
前記第1回転軸に係合して回転可能に支持する第1支持部と、
前記第2回転軸に係合して回転可能に支持する第2支持部と、を有し、
前記閉塞部は、前記第2支持部と前記第2回転軸との係合を解除して前記第1回転軸を中心に回転可能である一方、前記第1支持部と前記第1回転軸との係合を解除して前記第2回転軸を中心に回転可能であることを特徴とする車両用フック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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