説明

車両用フック装置

【課題】 車両用フック装置のフック部に引っ掛けた物袋等の把手部が外れるのを確実に防止する。
【構成】 車両の車室内に装備されて買い物袋B等の把手部Baを保持する車両用フック装置13が、車体に固定されるベース部14と、ベース部14に張出位置と収納位置との間を回動可能に支持されるフック部15とを備えるので、フック部15を張出位置に回動して買い物袋B等の把手部Baを引っ掛けてから、フック部15を収納位置に回動してベース部14にロックすることで、把手部Baがフック部15から外れるのを確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内に装備されて買い物袋等の把手部を保持する車両用フック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内にコンビニの買い物袋等を置くと、内部に収納した物品が袋から零れて散乱することがあるため、袋の把手部を引っ掛けてぶら下げるための車両用フック装置が、下記特許文献1により公知である。
【0003】
この車両用フック装置は、ハウジングにフックを回動可能に支持し、使用時には袋の把手部を引っ掛ける張出位置にフックを張り出し、不使用時には邪魔にならない収納位置にフックを収納するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−77158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単にフックに袋の把手部を引っ掛けるだけでは、自動車の走行中に袋が揺れたときに把手部がフックから外れたり、袋の下端が床面に接したときに把手部が緩んでフックから外れたりする問題がある。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車両用フック装置のフック部に引っ掛けた買い物袋等の把手部が外れるのを確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車両の車室内に装備されて買い物袋等の把手部を保持する車両用フック装置において、車体に固定されるベース部と、前記ベース部に張出位置と収納位置との間を回動可能に支持されるフック部とを備え、前記フック部は前記把手部を保持した状態で前記収納位置へと回動して前記ベース部にロックされることを特徴とする車両用フック装置が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記フック部が前記収納位置にあるときに、前記フック部と前記ベース部との間に前記把手部が通過可能な隙間が形成されることを特徴とする車両用フック装置が提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記ベース部は前記車体に第1、第2ボルトルトでそれぞれ締結される第1、第2取付部を備え、前記第1取付部の近傍には前記車体に形成した位置決め孔に係合する位置決めピンが設けられ、前記車体には前記第2取付部の近傍に当接して前記ベース部を回り止めするリブが形成されることを特徴とする車両用フック装置が提案される。
【0010】
尚、実施の形態のブラケット16は本発明の車体に対応する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の構成によれば、車両の車室内に装備されて買い物袋等の把手部を保持する車両用フック装置が、車体に固定されるベース部と、ベース部に張出位置と収納位置との間を回動可能に支持されるフック部とを備えるので、フック部を張出位置に回動して買い物袋等の把手部を引っ掛けてから、フック部を収納位置に回動してベース部にロックすることで、把手部がフック部から外れるのを確実に防止することができる。
【0012】
また請求項2の構成によれば、フック部が収納位置にあるとき、フック部とベース部との間に把手部が通過可能な隙間が形成されるので、フック部とベース部との間に把手部が挟まってフック部を収納位置に回動できなくなる事態を回避することができる。
【0013】
また請求項3の構成によれば、ベース部の第1取付部および第2取付部はそれぞれ第1、第2ボルトで車体に締結される。このとき、第1取付部の近傍に設けた位置決めピンが車体に設けた位置決め孔に係合することでベース部を回転方向に位置決めするが、第1取付部を締結する第1ボルトの締付トルクでベース部が回転しようとしたときに、第2取付部の近傍が車体のリブに当接してベース部を回り止めするので、位置決めピンとの協働でベース部を精度良く位置決めして第2ボルトの締結作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】自動車のインストルメントパネルの斜視図。
【図2】図1の2部拡大図。
【図3】図2の3方向矢視図。
【図4】図3の4−4線断面図。
【図5】図4の5方向矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1〜図5に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1に示すように、自動車のインストルメントパネル11の車幅方向中央に後方に張り出す張出部11aが形成されており、助手席の前方に設けられたグローブボックス12に隣接する張出部11aの左側面にフック装置13が設けられる。
【0017】
図2〜図5に示すように、フック装置13は合成樹脂製のベース部14および合成樹脂製のフック部15の二つの部材から構成される。ベース部14は縦長の矩形状の枠部14aと、枠部14aの上端から上向きに突出する第1取付部14bと、第1取付部14bを貫通する第1ボルト孔14cと、第1取付部14bに裏面に突設された位置決めピン14dと、枠部14aの下端から下向きに突出する第2取付部14eと、第2取付部14eを貫通する第2ボルト孔14fと、枠部14aおよび第2取付部14eの境目に形成された弾性腕部14gと、枠部14aの下縁に形成されたストッパ受け面14hとを備える。また枠部14aの裏面には複数の肉抜き孔14i…が形成され、枠部14aの左右両側部には一対の軸受部14j,14jが形成される。
【0018】
フック部15は、ブロック状の本体部15aと、本体部15aから屈曲しながら延びるフック15bと、本体部15aの基端に突設された押圧操作部15cと、本体部15aの基端に突設された第1ストッパ15dと、本体部15aの先端に突設された左右一対の第2ストッパ15e,15eと、本体部15aおよびフック15bの両方に相互に接近する方向に突設された一対の膨出部15f,15fと、本体部15aの先端に突設された係止突起15gと、本体部15aの左右両側面に突設された一対の軸部15h,15hとを備える。
【0019】
フック部15の軸部15h,15hがベース部14の軸受部14j,14jに嵌合することで、フック部15はベース部14に対して張出位置および収納位置間で回動自在に支持される。収納位置は、フック装置13を使用しないときと、フック15bに買い物袋Bの把手部Baを引っ掛けた状態で把手部Baがフック15bから外れないようにするときとの位置であり、図2〜図5に実線で示される。フック部15が収納位置にあるとき、フック部15の左右両側縁とベース部14の枠部14aの左右両側縁との間に、若干(例えば、1mm〜2mm)の隙間が形成される(図3参照)。また張出位置は、買い物袋16の把手部Baを引っ掛けることができるように、フック15bがベース部14の枠部14aから車室側に張り出す位置であり、図2および図4に鎖線で示される。
【0020】
フック部15が収納位置にあるとき、本体部15aの係止突起15gがベース部14の弾性腕部14gを乗り越え、かつ本体部15aの第1ストッパ15dがベース部14のストッパ受け面14hに当接することで(図4参照)、フック部15が安定した姿勢で収納位置に保持される。またフック部15が張出位置にあるとき、本体部15aの第2ストッパ15e,15eがベース部14の枠部14aの裏面に当接することで(図4参照)、フック部15が安定した姿勢で張出位置に保持される。
【0021】
インストルメントパネル11の裏面側にはブラケット16(図3および図4参照)が着脱自在に設けられており、このブラケット16には、フック装置13のフック部15が嵌まる開口16aと、開口16aの上下にそれぞれ形成された第1、第2ナット17,18と、上側の第1ナット17に近傍に形成された位置決め孔16bと、下側の第2ナット18に近傍に形成されたリブ16cとが設けられる。
【0022】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0023】
予めベース部14およびフック部15を一体に組み立てたフック装置13をインストルメントパネル11に組み付けるには、先ずインストルメントパネル11のブラケット16の開口16aにフック装置13のフック部15を嵌合し、第1ボルト19を第1取付部14bの第1ボルト孔14cに挿通してブラケット16に設けた第1ナット17(図4参照)に螺合する。
【0024】
このとき、ベース部14の第1取付部14bに設けた位置決めピン14dをブラケット16の位置決め孔16bに嵌合することで、ベース部14はブラケット16に対して回転方向に位置決めされるが、第1取付部14bを締結する第1ボルト19の締結トルクでベース部14が図3の矢印A方向に付勢されて第2取付部14eが図中左側に移動し、第2取付部14eの第2ボルト孔14fと第2ナット18とが位置ずれすることで、第2ボルト20の締め付け作業が面倒になる問題がある。
【0025】
しかしながら、ブラケット16に設けたリブ16cに第2取付部14eが当接することで、矢印A方向の締結トルクを支持してベース部14の回転を阻止し、第2取付部14eの第2ボルト孔14fと第2ナット18との位置ずれを防止することで、第2ボルト20の締め付け作業を容易に行うことができる。
【0026】
上述のようにしてブラケット16にフック装置13を取り付けた後、そのブラケット16をインストルメントパネル11の裏面に結合する。その結果、フック装置13のフック部15およびベース部14の枠部14の内周部が、インストルメントパネル11の開口11bから車室内に露出する。
【0027】
収納位置にあるフック部15の本体部15aに形成した押圧操作部15cを前方に押すと、フック部15の上端が軸部15h,15hを支点として手前側に移動することで、本体部15aに設けた係止突起15gがベース部14の弾性腕部14gを乗り越え、図4に鎖線で示すようにフック部15は張出位置へと回動する。フック部15が張出位置に達すると、本体部15aに設けた一対の第2ストッパ15e,15eがベース部14の枠部14aの裏面に当接することで(図4の鎖線参照)、フック部15が張出位置で安定的に停止する。
【0028】
この状態でコンピニの買い物袋Bの把手部Baをフック15bに引っ掛け、フック15bの背面を押し上げると、フック部15の上端が軸部15h,15hを支点として向こう側に移動することで、本体部15aに設けた係止突起15gがベース部14の弾性腕部14gを乗り越え、図4に実線で示すようにフック部15は収納位置へと回動する。フック部15が収納位置に達すると、本体部15aに設けた第1ストッパ15dがベース部14のストッパ受け面14hに当接することで、フック部15が収納位置でロックされる。このとき、買い物袋Bの把手部Baには若干の厚みが存在するが、フック部15およびベース部14の間には隙間α(図3参照)が存在するため、フック部15の収納位置への回動に支障を来すことはない。
【0029】
以上のように、フック部15を収納位置に回動してベース部14にロックすることで、自動車の走行中に買い物袋Bが揺れたときに把手部Baがフック部15から外れたり、買い物袋Bの下端が床面に接したときに把手部Baが緩んでフック15から外れたりする事態を確実に防止することができる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0031】
例えば、実施の形態ではフック装置13をインストルメントパネル11に設けているが、フロントシートのシートバックやセンターピラー等の車室内の任意の場所に設けることができる。
【0032】
またフック装置13に引っ掛ける袋は買い物袋Bに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0033】
14 ベース部
14b 第1取付部
14d 位置決めピン
14e 第2取付部
15 フック部
16 車体
16b 位置決め孔
16c リブ
19 第1ボルト
20 第2ボルト
B 買い物袋
Ba 把手部
α 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内に装備されて買い物袋(B)等の把手部(Ba)を保持する車両用フック装置において、
車体(16)に固定されるベース部(14)と、前記ベース部(14)に張出位置と収納位置との間を回動可能に支持されるフック部(15)とを備え、前記フック部(15)は前記把手部(Ba)を保持した状態で前記収納位置へと回動して前記ベース部(14)にロックされることを特徴とする車両用フック装置。
【請求項2】
前記フック部(15)が前記収納位置にあるときに、前記フック部(15)と前記ベース部(14)との間に前記把手部(Ba)が通過可能な隙間(α)が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の車両用フック装置。
【請求項3】
前記ベース部(14)は前記車体(16)に第1、第2ボルト(19,20)でそれぞれ締結される第1、第2取付部(14b,14e)を備え、前記第1取付部(14b)の近傍には前記車体(16)に形成した位置決め孔(16b)に係合する位置決めピン(14d)が設けられ、前記車体(16)には前記第2取付部(14e)の近傍に当接して前記ベース部(14)を回り止めするリブ(16c)が形成されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両用フック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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