説明

車両用フレーム構造

【課題】この発明は、高い性能重量効率を実現しつつ、曲げ変形中期における荷重エネルギー吸収特性を向上させることができる車両用フレーム構造を提供することを目的とする。
【解決手段】フレーム本体11は、荷重Fが作用した時に圧縮方向の力が作用する第1面部11aと、引張方向の力が作用する第2面部11bと、第1、第2面部11a、11bを接続する第3、第4面部11c、11dとを有し、該第3、第4面部11c、11dには、フレーム本体11から離間した基部12aと、該基部12aから突出して、フレーム本体11に結合される複数の凸部12bとを一体に形成した機能板12を備えており、凸部12bは、車両用フレーム1の長手方向、直交断面方向に複数配列される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体の一部を構成し、車両の衝突時に荷重が作用して曲げ変形が生ずる管状の車両用フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体の一部を構成する管状のフレーム構造として、車両衝突時に荷重が作用しても、高い曲げ剛性を発揮して、車室内の乗員を確実に保護できるようにしたものが数多く提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、車体の一部を構成する管状のサイドシルにおいて、そのインナパネルとの間で複数の閉断面部を形成するリインホースメントをコーナー部に備えたものが開示されている。
【0004】
このリインホースメントは、サイドシルの長手方向と直交する直交断面方向において凹凸が形成されており、そのうち凸部がインナパネルのコーナー部内面側に結合されている。
【0005】
下記特許文献1では、上述したリインホースメントを備えたサイドシルと、リインホースメントを備えていないサイドシルとについてそれぞれ曲げ変形が生じた時の曲げ抗力特性を解析し、両者を比較検討している。そして、その比較結果に基づき、リインホースメントを備えたサイドシルのほうがより高い曲げ抗力を発揮できたことを示している。
【0006】
下記特許文献1に開示されているように、上述したようなリインホースメントをフレームのコーナー部に備えることで、肉厚な補強材を備えなくても、衝突荷重等が作用した時の曲げ変形を効率的に抑制することが可能となる。つまり、この場合、曲げ抗力をフレームの全体重量で除した数値、いわゆる性能重量効率を高めることができ、結果として、フレームの軽量化を図ることができる。
【0007】
近年では、環境保護の観点から、燃費向上の要求が高まっており、これを実現すべく、車体の軽量化について様々な研究開発が進められている。このような理由から、各車両用フレームにおいても、より軽量でありながら高い曲げ抗力を発揮するものが求められており、上述した性能重量効率は、車両用フレームを開発する上で極めて重要な要素となっている。
【0008】
また、下記特許文献2では、サイドシルにおいて、そのインナパネルのコーナー部を含む周辺領域に、サイドシルの長手方向に延びる中空空間を複数形成したものが開示されている。
【0009】
このような構成であっても、下記特許文献1に開示されたフレーム構造と同様、単純な平板からなるフレームに比べ、高い曲げ抗力を発揮することができる。この場合、中空空間を形成した分、フレーム全体の軽量化を図りつつ、フレームの曲げ抗力を向上させることを可能にしている。
【0010】
また、下記特許文献3では、フレームに曲げ変形が発生した時の挙動を解析し、曲げ変形のメカニズムを検証している。そして、その結果から、フレームに荷重が作用した時には、圧縮方向の力が作用する面側のコーナー部及びその周辺部の領域に大きな面外変形(ここで言う面外変形とは、面上のみで変位が発生する二次元的な変形ではなく、面の厚み方向に変位を伴う三次元的な変形全般を言う。)が発生することで、フレームに曲げ変形が生じることを見出している。
【0011】
下記特許文献3に開示された技術では、このような観点から、前記コーナー部及びその周辺部の領域を他に比べて肉厚に形成しており、これによって、フレームの軽量化を図りつつ、曲げ抗力の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−113766号公報
【特許文献2】特開平11−208521号公報
【特許文献3】特開2008−68759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記特許文献1〜3に開示された従来技術は、車両用フレームの曲げ変形初期においてより高い曲げ抗力を備えることを目的としているに過ぎない。実際、車両衝突時等に発生する衝撃荷重から乗員を保護しようとすると、フレームが配設される車体の部位によっては、フレームの曲げ変形中期にて吸収できる荷重エネルギーを増大させることが好ましい場合もある。
【0014】
近年では、車両用フレームの曲げ変形中期における荷重エネルギー吸収特性を向上させつつ、かつ車両用フレームの性能重量効率(荷重エネルギー吸収量をフレーム全体重量で除した数値)を高めることが課題となっている。
【0015】
この発明は、高い性能重量効率を実現しつつ、曲げ変形中期における荷重エネルギー吸収特性を向上させることができる車両用フレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明の車両用フレーム構造は、車体の一部を構成し、車両の衝突時に荷重が作用して曲げ変形が生ずる管状のフレーム構造であって、フレーム本体は、前記荷重が作用した時に圧縮方向の力が作用する第1面部と、引張方向の力が作用する第2面部と、前記第1、第2面部の間に配設された壁面部とを有し、該壁面部には、前記フレーム本体から離間した基部と、該基部から突出して、前記壁面部に結合される複数の凸部とを一体に形成した機能板を備えており、前記凸部は、フレームの長手方向に複数配列されるとともに、前記長手方向に直交する直交断面方向に複数配列されるものである。
【0017】
この構成によれば、車両用フレームの曲げ変形時、壁面部及び機能板は、屈曲部周辺の広範囲に亘って荷重エネルギー吸収に寄与することになる。これにより、曲げ変形中期における車両用フレームの荷重エネルギー吸収特性を向上させることができる。
さらに、この場合、フレーム本体、機能板の肉厚化を抑制しながらも、荷重エネルギー吸収特性の向上を図れることから、荷重エネルギー吸収特性における性能重量効率(荷重エネルギー吸収量/車両用フレームの全体重量)を向上させることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記凸部が、前記長手方向及び前記直交断面方向に周期的に配列されるように形成されており、前記フレームの長手方向に隣接する前記凸部は、互いに前記直交断面方向の重なりを有しているとともに、前記直交断面方向に隣接する前記凸部は、互いに前記長手方向の重なりを有しているものである。
【0019】
この構成によれば、荷重の付加時に基部の長手方向、直交断面方向に折り目(折れのきっかけ)が形成されて、曲げ変形時に発生する屈曲部での面外変形が促進されることを防止できる。このため、車両用フレームの曲げ抗力特性を向上させることができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、前記機能板に、前記長手方向に亘って前記フレーム本体に結合されるフランジ部を形成したものである。
【0021】
この構成によれば、車両用フレームの曲げ変形時に機能板がフレーム本体から剥離することを確実に防止できる。このため、フレーム本体、機能板による荷重エネルギー吸収量増大機能をより安定化させることができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、前記凸部が、前記フレーム本体に結合される先端部が、多角形状の平面部を有した多角錐台状をなしているものである。
【0023】
この構成によれば、凸部を溶接によってフレーム本体に結合する時には、凸部の平面部を溶接代とすることができ、これによって両者の結合をより安定的に行うことができる。
【0024】
この発明の一実施態様においては、前記凸部が、前記フレーム本体に結合される先端部が、円形状の平面部を有した円錐台状をなしているものである。
【0025】
この構成によれば、角錐台状の場合に比べて凸部間には大きな間隙が形成されるため、該間隙に基部を形成することで、フレーム本体と機能板とにより構成される構造体の剛性を向上させることができる。このため、曲げ変形初期の屈曲部における面外変形を抑制することができ、車両用フレームの曲げ抗力特性を向上させることができる。
【0026】
この発明の一実施態様においては、前記第1面部と前記壁面部との間に、コーナー部が形成されており、該コーナー部を含む領域に、前記機能板を備えているものである。
【0027】
この構成によれば、曲げ変形初期の屈曲部における面外変形をより効果的に抑制することができ、その結果、車両用フレームの曲げ抗力特性をより向上させることができる。
さらに、この場合、フレーム本体、機能板の肉厚化を抑制しながらも、曲げ抗力特性の向上を図れることから、曲げ抗力特性における性能重量効率(車両用フレームの曲げ抗力/車両用フレームの全体重量)を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、車両用フレームの曲げ変形時、壁面部及び機能板は、屈曲部周辺の広範囲に亘って荷重エネルギー吸収に寄与することになる。これにより、曲げ変形中期における車両用フレームの荷重エネルギー吸収特性を向上させることができる。
さらに、この場合、フレーム本体、機能板の肉厚化を抑制しながらも、荷重エネルギー吸収特性の向上を図れることから、荷重エネルギー吸収特性における性能重量効率(荷重エネルギー吸収量/車両用フレームの全体重量)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の第1実施形態に係る車両用フレーム構造を示す斜視図。
【図2】車両用フレームを長手方向に直交する直交断面方向で切断した時の断面図。
【図3】機能板の各凸部の配列を説明するための正面図。
【図4】(a)車両用フレームの曲げ抗力特性、荷重エネルギー吸収特性の解析方法を説明するための図、(b)車両用フレームの湾曲状態を示す斜視図。
【図5】車両用フレームに荷重を付加した時の、該荷重に対する反力と圧子の下降ストロークとの関係、及び荷重エネルギー吸収量と圧子の下降ストロークとの関係を示すグラフ。
【図6】車両用フレームの第1面部の中央部に向かって垂直方向から荷重を付加した時の車両用フレームの挙動をシミュレーション解析した結果を示す斜視図。
【図7】機能板の挙動をシミュレーション解析した結果を示す斜視図。
【図8】屈曲部における閉断面の形状を示す断面図。
【図9】フレーム本体と機能板とにより構成された構造体の機能を説明するための断面図。
【図10】この発明の第2実施形態に係る車両用フレーム構造を示す斜視図。
【図11】この発明の第3実施形態に係る車両用フレーム構造を示す斜視図。
【図12】車両用フレームを長手方向に直交する直交断面方向で切断した時の断面図。
【図13】車両用フレームの第1面部の中央部に向かって垂直方向から荷重を付加した時の車両用フレームの挙動をシミュレーション解析した結果を示す斜視図。
【図14】機能板の挙動をシミュレーション解析した結果を示す斜視図。
【図15】屈曲部における閉断面の形状を示す断面図。
【図16】この発明の第4実施形態に係る車両用フレーム構造を示す斜視図。
【図17】車両用フレームを長手方向に直交する直交断面方向で切断した時の断面図。
【図18】車両用フレームの第1面部の中央部に向かって垂直方向から荷重を付加した時の車両用フレームの挙動をシミュレーション解析した結果を示す斜視図。
【図19】機能板の挙動をシミュレーション解析した結果を示す斜視図。
【図20】屈曲部における閉断面の形状を示す断面図。
【図21】この発明の第5実施形態に係る車両用フレーム構造を示す斜視図。
【図22】この発明の第6実施形態に係る車両用フレーム構造を示す斜視図。
【図23】機能板の各凸部の配列を説明するための正面図。
【図24】この発明の第7実施形態に係る車両用フレーム構造を示す斜視図。
【図25】この発明の第8実施形態に係る車両用フレーム構造を示す斜視図。
【図26】機能板の各凸部の配列を説明するための正面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図9に示す第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用フレーム構造を示す斜視図であり、図2は、車両用フレーム1を長手方向に直交する直交断面方向で切断した時の断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る車両用フレーム1は、矩形管状のフレーム本体11と、車両用フレーム1の長手方向に延びる2つの機能板12とにより構成されている。なお、図1では、図示の便宜上、フレーム本体11を一点鎖線で示しつつ、これを透過状態で示している。
【0031】
フレーム本体11は、その長手方向と直交する直交断面方向の形状が、図2に示すように略矩形状をなしており、第1面部11aと、該第1面部11aと対向する位置にある第2面部11bと、第1、第2面部11a、11bの間に配設された壁面部としての第3、第4面部11c、11dとを有している。
【0032】
また、第1〜第4面部11a〜11dの間には、コーナー部11e〜11hが形成されている。このコーナー部11e〜11hのうち、第1面部11aと第3、第4面部11c、11dとの間のコーナー部11e、11fを含む内周側の領域には、機能板12が配設されている。
【0033】
この機能板12は、車両用フレーム1の長手方向の略全長に亘って延びるとともに、車両用フレーム1の直交断面方向において、コーナー部11e、11f及びその周辺の第3、第4面部11c、11dの一部に亘って延びている。そして、機能板12の一部には、フレーム本体11から離間した基部12aと、該基部12aから突出して先端に平面部12cを有する複数の凸部12bとが一体に形成されている。
【0034】
また、機能板12には、フレーム本体11の直交断面方向の両端部に平面状のフランジ部12d、12eが形成されている。機能板12では、各凸部12bの平面部12cがコーナー部11e、11f近傍で第3、第4面部11c、11dに結合されている。そして、フランジ部12dがフレーム本体11の第1面部11a、フランジ部12eが第3、第4面部11c、11dにそれぞれ長手方向に亘って結合されている。
【0035】
図3は、機能板12の各凸部12bの配列を説明するための正面図である。機能板12の各凸部12b、12b、…は、図1、図3に示すように、平面部12cが四角形をなす角錐台状をなしており、車両用フレーム1の長手方向及び直交断面方向において周期的に配列されている。
【0036】
さらに、本実施形態では、1つの凸部12bに着目した場合、図3に示すように、この凸部12bは、長手方向に隣接する凸部12b1(12b2)と互いに直交断面方向に重なりL1を有するとともに、直交断面方向に隣接する凸部12b2(12b1)と互いに長手方向に重なりL2を有している。
【0037】
このような位置関係にある凸部12b、12b1、12b2…を周期的に配列することで、長手方向及び直交断面方向には、直線状に連続した基部12aが形成されないような構成となっている。
【0038】
次に、図4〜図9を参照しながら、車両用フレーム1に荷重を加えてこれを折り曲げた時の曲げ抗力特性、及び荷重エネルギー吸収特性について説明する。
本発明者は、図1に示すような車両用フレーム1を開発するにあたり、これに曲げ変形を伴うような荷重Fを付加した時の挙動をCAE(Computer Aided Engineering)によりシミュレーション解析した。
【0039】
図4(a)は、車両用フレーム1の曲げ抗力特性、荷重エネルギー吸収特性の解析方法を説明するための図である。本解析では、図4(a)に示すように、所定の長さLを有する車両用フレーム1を、この長さLより短い所定距離Dだけ離間させた固定点X、Xで支持し、この固定点X、Xの長手方向中間に位置する中央部Oに上方から圧子Yを下降させ、車両衝突時の荷重に相当する荷重Fを付加した場合を想定している。図4では、上面を第1面部11aに設定し、この第1面部11aの表面に対し荷重Fを直交断面方向上方から付加している。
【0040】
そして、荷重Fを付加した時に、車両用フレーム1にて折れ曲がりが生じるまでに加えることができる最大の荷重(ここでは最大荷重F′maxという)、及び折れ曲がりにより吸収できる荷重エネルギー(ここでは荷重エネルギー吸収量という)を算出し、これら最大荷重F′max、及びエネルギー吸収量を、それぞれ曲げ抗力特性、荷重エネルギー吸収特性の優劣を評価する目安とした。
【0041】
ところで、車両用フレーム1のような長尺の管状体が折れ曲がる時には、図4(b)で示すように、先ず長手方向において湾曲した状態となる。そして、このように湾曲状態となった時、折れ曲がりの内周側では、長手方向両端から圧縮方向の力を受ける一方、折れ曲がりの外周側では、長手方向両端から引張方向の力を受ける。図4の場合であれば、折れ曲がりの内周側、つまり圧縮方向の力を受ける側が第1面部11aとなり、折れ曲がりの外周側、つまり引張方向の力を受ける側が第2面部11bとなる。
【0042】
図5は、車両用フレーム1に荷重Fを付加した時の、該荷重Fに対する反力F′と、圧子Yの下降ストロークとの関係、及び荷重エネルギー吸収量と圧子Yの下降ストロークとの関係を示すグラフである。本発明者は、図4に示すシミュレーションにおいて、中央部Oに荷重Fを付加した後、この荷重Fに対して発生する車両用フレーム1の反力F′と、車両用フレーム1の湾曲及び折れ曲がりに伴って変化する圧子Yの位置(これを下降ストロークという)との関係をグラフ化した。
【0043】
図5では、圧子Yの下降ストロークが増加する途中で、反力F′の値にピークが現れており、それ以降は、この反力F′の値が下降ストロークの増加に伴って徐々に減少していく傾向を示している。
【0044】
このように、図5に示すグラフでは、車両用フレーム1の湾曲状態において、荷重Fを徐々に大きくした時、上述したピークが生じる前では、荷重Fが大きくなるにつれて反力F′も徐々に大きくなっていることを示している。他方、ピークが生じた後では、車両用フレーム1にて既に折れ曲がりの急速な進行が始まっており、折れ曲がりの進行によって荷重Fに対する反力F′が低下していることを示している。
【0045】
ここで、図5に示す反力F′のピーク値は、折れ曲がりが急速に進行するまでに加えることができる最大荷重F′maxを示しており、この最大荷重F′maxが、曲げ抗力の程度を表す数値となる。
【0046】
また、図5に示すグラフでは、圧子Yの下降ストロークの座標軸と反力F′のグラフとで囲まれた領域の面積SEAによって、車両用フレーム1の折れ曲がりにより吸収できる荷重エネルギー(荷重エネルギー吸収量)を求めることができる。図5では、圧子Yの下降ストロークと面積SEAとの関係もグラフ化している。
【0047】
次に、図6〜図8に示すシミュレーション解析結果を参照しながら、車両用フレーム1に荷重Fを付加してこれを折り曲げた時の挙動について説明する。図6は、車両用フレーム1の第1面部11aの中央部Oに向かって直交断面方向上方から荷重Fを付加した時の車両用フレーム1の挙動をシミュレーション解析した結果を示す斜視図であり、図7は、機能板12の挙動をシミュレーション解析した結果を示す斜視図、図8は、屈曲部における閉断面の形状を示す断面図である。ここで、図6では、フレーム1の曲げ変形進行の過程を同図(a)、(b)、(c)の順に示しており、図7(a)〜(c)、図8(a)〜(c)では、これらがそれぞれ図6(a)〜(c)に対応している。また、図6、図7では、各部の変形量の大小を色の濃淡で示しており、変形量が大きいほど濃い色で示している。
【0048】
本発明者は、図1に示す車両用フレーム1の曲げ抗力特性、及び荷重エネルギー吸収特性を評価するにあたり、これに図4(a)に示すような荷重Fを付加した時の車両用フレーム1各部の変形量を算出した。
【0049】
図6〜図8を見てみると、車両用フレーム1に荷重Fが付加された直後には、荷重Fが作用する中央部Oに屈曲部が現れ、主にこの屈曲部で面外変形が発生していることが分かる。例えば、前記屈曲部では、荷重Fが直接作用する第1面部11a及びその両端のコーナー部11e、11fに凹みが生じ、第3、第4面部11c、11dが断面外向きに向かって面外変形している(図中の変形箇所α参照)。
【0050】
また、このフレーム本体11の面外変形と同時に、構造板12でも、図7に示すように屈曲部が現れ、そこに面外変形が発生している(図中の変形箇所β参照)。
【0051】
ところが、本実施形態の車両用フレーム1では、コーナー部11e、11fの頂点P(図8参照)が外側へ大幅に変位することが抑制され、さらには、第3、第4面部11c、11dの断面外向きの大幅な面外変形が抑制されている。
【0052】
そして、特に図8を見ると、コーナー部11e、11f等の面外変形が抑制されることに伴い、第1面部11aと対向する第2面部11bでは、断面内向きの凹みが新たに生じている。
【0053】
本実施形態では、フレーム本体11と機能板12とにより、図9に示すように、複数の閉断面13aを有する構造体13が、車両用フレーム1の直交断面方向のみならず、その長手方向に形成されている。そして、この構造体13では、フレーム本体11、基部12aが中立軸(面)NAから離間して配置されることにより、その断面二次モーメントが高められた構造となっている。
【0054】
ここで、前記屈曲部において面外変形が発生した時には、該屈曲部に対応する位置で、構造体13に図9に示すような変形が長手方向及び直交断面方向に発生するが、その時構造体13における高い断面二次モーメントにより高い曲げ抗力が発揮される。
【0055】
本発明者は、図6〜図8に示す解析結果から、前記屈曲部において面外変形が発生した時、断面二次モーメントが高められた構造体13により、前記屈曲部における面外変形が抑制できることを見出した。
【0056】
さらに、複数の凸部12bをフレーム本体11に結合することで、構造体13には、各結合部同士を結ぶ線により区画される仮想領域13A(図3のハッチング部分参照)が複数形成される。本発明者は、フレーム本体11と機能板12との協働により、仮想領域13A毎の各結合点で荷重Fが受け止められており、これによって前記屈曲部における面外変形がより効果的に抑制されていることを見出した。
【0057】
そして、新たに第2面部11bにも面外変形が生じていることから、コーナー部11e、11f及びその周辺における面外変形が抑制された分、引張方向の力を受ける第2面部11bでも荷重Fを受け止めることが可能になり、その結果、前記屈曲部の閉断面全体における曲げ抗力が向上することを見出した。
【0058】
このように、フレーム本体11の曲げ変形時に圧縮方向の力を受ける第1面部11aのコーナー部11e、11fを含む領域に複数の凸部12bを形成した機能板12を配設するとともに、複数の凸部12bを車両用フレーム1の長手方向及び直交断面方向に配列したことで、曲げ変形初期の屈曲部における面外変形をより効果的に抑制することができる。
【0059】
このため、図5に示す最大荷重F′maxを図中二点鎖線で示すように高めることができ、その結果、車両用フレーム1の曲げ変形が急速に進行するまでの、曲げ変形初期(図5参照)における曲げ抗力特性を向上させることができる。
【0060】
また、本発明者は、反力F′のピーク(最大荷重F′max)が生じた後に、車両用フレーム1の曲げ変形が進行する曲げ変形中期(図5参照)において、第3、第4面部11c、11d、及び機能板12が、前記屈曲部の周辺で結合部毎に略均等に変形していることを見出した。
【0061】
この場合、第3、第4面部11c、11dに対して複数の凸部12bが結合されていることにより、第3、第4面部11c、11d、及び機能板12は、屈曲部周辺の広範囲に亘って荷重Fのエネルギー吸収に寄与することになる。その結果、曲げ変形中期における面積SEAを増大させることができ、車両用フレーム1の荷重エネルギー吸収特性を向上させることができる。
【0062】
また、この場合、フレーム本体11、機能板12の肉厚化を抑制しながらも、車両用フレーム1の曲げ抗力特性及び荷重エネルギー吸収特性の向上を図れることから、曲げ抗力特性、荷重エネルギー吸収特性における性能重量効率(最大荷重F′max/車両用フレーム1の全体重量、面積SEA/車両用フレーム1の全体重量)を向上させることができる。
【0063】
ここで、車両用フレーム1において荷重エネルギー吸収特性が向上している点について着目すると、例えば車両前突時等に車両前後方向に座屈変形することで荷重エネルギーを吸収するフロントサイドフレームにこの車両用フレーム1を適用することができる。
【0064】
また、図3に示すように、1つの凸部12bに対し長手方向に隣接するものと互いに直交断面方向に重なりL1を有するとともに、直交断面方向に隣接するものと互いに長手方向に重なりL2を有して、長手方向及び直交断面方向に直線状に連続した基部12aが形成されないように構成することで、車両用フレーム1に荷重Fが作用した時、基部12aの長手方向、直交断面方向に折り目(折れのきっかけ)が形成されて、前記屈曲部での面外変形が促進されることを防止できる。
【0065】
また、曲げ変形発生時に圧縮方向の力を受ける第1面部11aに結合されるフランジ部12dを機能板12に形成したことで、車両用フレーム1の曲げ変形時に、機能板12がフレーム本体11から剥離することを確実に防止できる。このため、フレーム本体11と機能板12とにより構成された構造体13の面外変形抑制機能や荷重エネルギー吸収量増大機能をより安定化させることができる。
【0066】
また、フレーム本体11に結合される凸部12bが、四角形状の平面部を有した四角錐台状をなしていることにより、凸部12bを溶接によってフレーム本体11に結合する時には、凸部12bの平面部12cを溶接代とすることができ、これによって両者の結合をより安定的に行うことができる。
【0067】
(第2実施形態)
なお、曲げ変形発生時に圧縮方向の力を受ける第1面部のコーナー部を含む領域に機能板を配設して、曲げ抗力特性の向上を図る場合、第3、第4面部に対応してフランジ部を形成することに必ずしも限定されない。例えば、図10に示す車両用フレーム2の機能板22のように、第1実施形態の機能板12のフランジ部12eに対応する部位を省略してもよい。
【0068】
図10に示す機能板22では、機能板12と同様、基部12aに対応する基部22a、凸部12bに対応する凸部22b、及びフランジ部12dに対応するフランジ部22dが形成されている。そして、凸部22bは、平面部22cで、第3、第4面部21c、21dに結合され、フランジ部22dは、フレーム本体21の第1面部22aに結合されている。
【0069】
また、本発明では、図10に示すように、直交断面方向の形状がコの字状をなす第1パネル部材21Aと、平板状の第2パネル部材21Bとによって矩形管状のフレーム本体21を形成してもよい。第1パネル部材21Aには、その両端部にて断面外向きに突出するフランジ部21i、21iが形成されており、第1パネル部材21Aと第2パネル部材21Bとを対向させ、フランジ部21i、21iと第2パネル部材21Bの両端部とを結合することにより、フレーム本体21が矩形管状をなしている。
【0070】
本実施形態では、第1パネル部材21Aにおいて、第1面部(中央面部)21aと、その両側に連続する第3、第4面部(側面部)21c、21dと、フランジ部21iとが形成され、第1面部21aと、第3、第4面部21c、21dとの間には、コーナー部21e、21fが形成されている。
【0071】
また、第2パネル部材21Bにおいては、第2面部21bが形成され、第1、第2パネル部材21A、21Bの結合により、コーナー部11g、11hに対応するコーナー部21g、21hが形成されている。ここで、第1、第2パネル部材21A、21Bを結合した時、第3、第4面部21c、21dは、第1、第2面部41a、41bの間に配設される。
【0072】
(第3実施形態)
次に、図11〜図15に示す第3実施形態について説明する。図11は、本発明の第3実施形態に係るフレーム構造を示す斜視図であり、図12は、車両用フレーム3を直交断面方向で切断した時の断面図である。図11に示すように、本実施形態に係る車両用フレーム3は、フレーム本体11と、第3、第4面部11c、11dの略全面に亘って延びる2つの機能板32とにより構成されている。なお、図11〜図15において、図1〜図9に示す第1実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0073】
本実施形態では、機能板32が、垂直断面方向においてコーナー部11e、11fからコーナー部11g、11hに亘って延び、第3、第4面部11c、11dの内面側を覆っている。
【0074】
そして、機能板32には、第3、第4面部11c、11dから離間した基部32aと、該基部32aから突出した角錐台状の複数の凸部32bとが一体に形成されている。
【0075】
また、機能板32には、フレーム本体11の直交断面方向の両端部に平面状のフランジ部32d、32eが形成されている。機能板32では、各凸部32bの平面部32cが第3、第4面部11c、11dに結合されるとともに、フランジ部32dがフレーム本体11の第1面部11a、フランジ部32eが第2面部11bにそれぞれ長手方向に亘って結合されている。
【0076】
また、機能板32の各凸部32b、32b、…は、上述した各実施形態と同様直交断面方向及び長手方向において周期的に配列され、その1つの凸部32bに対し長手方向に隣接するものと互いに直交断面方向に重なりを有するとともに、長手方向に隣接するものと互いに直交断面方向に重なりを有している。
【0077】
次に、図13〜図15を参照しながら、車両用フレーム3に荷重を加えてこれを折り曲げた時の曲げ抗力特性、及び荷重エネルギー吸収特性について説明する。
本発明者は、第1実施形態の車両用フレーム1の場合と同様の方法により、車両用フレーム3に曲げ変形を伴うような荷重Fを付加した時の挙動をCAEによりシミュレーション解析した。
【0078】
図13〜図15を見てみると、車両用フレーム3に荷重Fが付加された直後には、車両用フレーム1の場合と同様、荷重Fが作用する中央部Oの屈曲部で主に面外変形が発生していることが分かる(図中の変形箇所α′参照)。
【0079】
また、このフレーム本体11の面外変形と同時に、構造板32でも、図14に示すように屈曲部が現れ、そこに面外変形が発生している(図中の変形箇所β′参照)。
【0080】
ところが、本実施形態の場合も、やはりコーナー部11e、11fの頂点P(図15参照)が外側へ大幅に変位することが抑制されており、さらには、第3、第4面部11c、11dの断面外向きの大幅な面外変形が抑制されている。
【0081】
そして、図15を見ると、コーナー部11e、11f等の面外変形が抑制されることに伴い、第1面部11aと対向する第3面部11bに、閉断面の内側に向かって凹みが生じている。
【0082】
このように、本実施形態においても、フレーム本体11と機能板32とにより、曲げ変形初期の屈曲部における面外変形が効果的に抑制されており、該屈曲部における曲げ抗力が向上している。
【0083】
ところで、本発明者は、特に第3、第4面部11c、11dの略全域に亘って機能板32を結合したことにより、車両用フレーム3の曲げ変形中期において、第3、第4面部11c、11d、及び機能板32がさらに広範囲で略均等に変形していることを見出した。
【0084】
本実施形態では、第3、第4面部11c、11dにおいて、複数の凸部32bをより広範囲に亘って結合することにより、第3、第4面部11c、11d、及び機能板32がより広範囲で荷重Fのエネルギー吸収に寄与することになる。これにより、曲げ変形中期における車両用フレーム3の荷重エネルギー吸収特性をより向上させることができる。
【0085】
(第4実施形態)
次に、図16〜図20に示す第4実施形態について説明する。図16は、本発明の第4実施形態に係るフレーム構造を示す斜視図であり、図17は、車両用フレーム4を直交断面方向で切断した時の断面図である。図16に示すように、本実施形態に係る車両用フレーム4は、第1、第2パネル部材41A、41Bからなり、第1〜第4面部41a〜41dを有するフレーム本体41と、車両用フレーム4の長手方向に延びる2つの機能板42とにより構成されている。
【0086】
第1、第2パネル部材41A、41Bは、直交断面方向の形状がコの字状をなしており、それぞれ第1、第2面部(中央面部)41a、41bと、第1、第2面部41a、41bの両側に連続する側面部41c1、41d1、41c2、41d2と、各両端部にて断面外向きに突出するフランジ部41i、41jとが形成されている。
【0087】
これら2つの第1、第2パネル部材41A、41Bを対向させ、その両端部に位置するフランジ部41i、41j同士を結合することにより、矩形管状のフレーム本体41が形成されている。
【0088】
ここで、第1、第2パネル部材41A、41Bを結合した時、各側面部41c1、41d1、41c2、41d2は、第1、第2面部41a、41bの間に配設される。そして、第1パネル部材41Aの側面部41c1と第2パネル部材41Bの側面部41c2との組み合わせにより第3面部41cが形成され、第1パネル部材41Aの側面部41d1と第2パネル部材41Bの側面部41d2との組み合わせにより第4面部41dが形成されている。
【0089】
そして、第1〜第4面部41a〜41dの間には、コーナー部41e〜41hが形成されており、第1面部41aと第3、第4面部41c、41dとの間のコーナー部41e、41fを含む領域には、機能板42が配設されている。
【0090】
この機能板42は、直交断面方向において、コーナー部41e、41f、第1パネル部材41Aの側面部41c1、41d1、及びフランジ部41i、41jに亘って延びている。そして、機能板42には、第3、第4面部41c、41dから離間した基部42aと、該基部42aから突出した複数の凸部42bとが一体に形成されている。
【0091】
また、機能板42には、直交断面方向の両端部に平面状のフランジ部42d、42eが形成されている。機能板42では、各凸部42bの平面部42cがコーナー部41e、41f近傍で第3、第4面部41b、41cに結合されている。そして、本実施形態では、フランジ部42dがフレーム本体41の第1面部41aに結合される一方、フランジ部42eがフランジ部41i、41jの間に挟まれた状態で結合されている。
【0092】
また、機能板42の各凸部42b、42b、…は、長手方向及び直交断面方向において周期的に配列され、その1つの凸部42bに対し長手方向に隣接するものと互いに直交断面方向に重なりを有するとともに、直交断面方向に隣接するものと互いに長手方向に重なりを有している。
【0093】
次に、図18〜図20を参照しながら、車両用フレーム4に荷重を加えてこれを折り曲げた時の曲げ抗力特性、及び荷重エネルギー吸収特性について説明する。
本発明者は、第1実施形態の車両用フレーム1の場合と同様の方法により、車両用フレーム4に曲げ変形を伴うような荷重Fを付加した時の挙動をCAEによりシミュレーション解析した。
【0094】
図18〜図20を見てみると、車両用フレーム4に荷重Fが付加された直後には、車両用フレーム1の場合と同様、荷重Fが作用する中央部Oの屈曲部で主に面外変形が発生していることが分かる。例えば、前記屈曲部では、荷重Fが直接作用する第1面部41a及びその両端のコーナー部41e、41fやフランジ部41i、41jに凹みが生じ、第3、第4面部41c、41dが断面外向きに向かって面外変形している(図中の変形箇所α″参照)。
【0095】
また、このフレーム本体41の面外変形と同時に、構造板42でも、図19に示すように屈曲部が現れ、そこに面外変形が発生している(図中の変形箇所β″参照)。
【0096】
そして、図20を見ると、コーナー部41e、41f等の面外変形が抑制されることに伴い、第1面部41aと対向する第2面部41bでは、断面内向きの凹みが新たに生じている。
【0097】
ここで、本発明者は、図18〜図20に示す解析結果から、機能板42の一端側のフランジ部42e、及びフレーム本体41のフランジ部41i、41jが、曲げ変形初期の前記屈曲部における面外変形を抑制していることを見出した。図18〜図20では、フランジ部41i、41j、42eにより、コーナー部41e、41fの頂点Pが外側へ大幅に変位することが抑制され、さらには、第3、第4面部41c、41dの断面外向きの大幅な面外変形が抑制されている。
【0098】
そして、本実施形態では、機能板42のフランジ部42eを、フレーム本体41のフランジ部41i、41jとの間に挟んで結合していることにより、フレーム本体41と機能板42との結合が強固になり、両者の協働によって前記屈曲部における面外変形がより効果的に抑制されている。
【0099】
さらに、本実施形態では、上述した各実施形態と同様、フレーム本体41と機能板42とにより構成された構造体13(図9参照)によっても、前記屈曲部における面外変形が抑制されている。
【0100】
また、本発明者は、上述した各実施形態と同様、車両用フレーム4の曲げ変形中期において、第3、第4面部41c、41d、及び機能板42が前記屈曲部の周辺で略均等に変形し、該屈曲部周辺の広範囲に亘って荷重Fのエネルギー吸収に寄与していることを見出した。
【0101】
本実施形態では、機能板42の一端側を、フレーム本体41のフランジ部41i、41jとの間に挟んで結合することにより、曲げ変形初期の屈曲部における面外変形を、フレーム本体41と機能板42との協働によってより効果的に抑制することができ、曲げ抗力特性を向上させることができる。
【0102】
また、第3、第4面部41c、41dに対して複数の凸部42bが結合されていることにより、車両用フレーム4の荷重エネルギー吸収特性を向上させることもできる。
【0103】
(第5実施形態)
なお、本発明では、図21に示す車両用フレーム5のように、直交断面方向の形状がコの字状をなす第1パネル部材51Aと、平板状の第2パネル部材51Bとによってフレーム本体51を形成し、機能板52の一端側を、フランジ部51iと第2パネル部材51Bの端部との間に挟んで結合するようにしてもよい。
【0104】
第1パネル部材51Aには、その両端部にて断面外向きに突出するフランジ部51i、51iが形成されており、第1パネル部材51Aと第2パネル部材51Bとを対向させ、フランジ部51i、51iと第2パネル部材51Bの両端部を結合することにより、矩形管状のフレーム本体51が形成されている。
【0105】
本実施形態では、第1パネル部材51Aにおいて、第1面部(中央面部)51aと、その両側に連続する第3、第4面部(側面部)51c、51dと、フランジ部51iとが形成され、第1面部51aと、第3、第4面部51c、51dとの間には、コーナー部51e、51fが形成されている。
【0106】
また、第2パネル部材51Bにおいては、第2面部51bが形成され、第1、第2パネル部材51A、51Bの結合により、コーナー部51g、51hが形成されている。ここで、第1、第2パネル部材51A、51Bを結合した時、第3、第4面部51c、51dは、第1、第2面部51a、51bの間に配設される。
【0107】
そして、本実施形態では、2つの機能板52が、垂直断面方向において、コーナー部51e、51fからコーナー部51g、51hに亘って延び、第3、第4面部51c、51dの内面側を覆っている。
【0108】
この機能板52には、フレーム本体51及び第3、第4面部51c、51dから離間した基部52aと、該基部52aから突出した角錐台状の複数の凸部52bとが形成されている。
【0109】
また、機能板52には、直交断面方向の両端部に平面状のフランジ部52d、52eが形成されている。機能板52では、各凸部52bの平面部52cが第3、第4面部51c、51dに結合されている。そして、フランジ部52dがフレーム本体51の第1面部51aに結合される一方、フランジ部52eが、フランジ部52i、52jの間に挟まれた状態で結合されている。
【0110】
(第6実施形態)
また、上述した各実施形態では、機能板の凸部がいずれも角錐台状に形成されているが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図22に示す車両用フレーム5′の機能板52′のように、凸部62bを、その平面部62cが円形をなすように円錐台状に形成してもよい。なお、図22において、図21に示す第5実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0111】
本実施形態では、機能板52′において、大多数が円錐台状の凸部62bとされているものの、長手方向の一列分だけ角錐台状の凸部52bが形成されている。この場合、凸部52bでは溶接による結合がなされる一方、凸部62bでは、溶接以外の方法として、例えば接着剤による結合がなされる。
【0112】
また、本実施形態においても、凸部62b、62b、…は、図23に示すように、その1つの凸部62bに対し長手方向に隣接するものと互いに直交断面方向に重なりを有するとともに、直交断面方向に隣接するものと互いに長手方向に重なりを有して、長手方向及び垂直断面方向に直線状に連続した基部62aが形成されないように構成されている。
【0113】
本実施形態のように、円錐台状の凸部62bとすることで、凸部62b間には、角錐台状の場合に比べて図23に示すように大きな間隙が形成される。ここで、その間隙に基部62aを形成するようにすれば、フレーム本体51と機能板52′とにより構造体13を形成した時、基部62a側に平面部を有することで、構造体13の剛性を向上させることができる。これにより、曲げ変形初期の前記屈曲部における面外変形をより効果的に抑制することができる。
【0114】
なお、凸部の平面部の形状を多角形、円形のいずれにするかについては、凸部のフレーム本体への結合方法や、構造体13に要求される剛性の程度等によって適宜選択すればよい。
【0115】
(第7実施形態)
ところで、本発明は、機能板の基部、凸部の双方を、フレーム本体のコーナー部を含む領域に形成することに必ずしも限定されない。本発明では、少なくともフレーム本体の第3、第4面部に対応して基部、凸部が形成されていればよい。例えば、図24に示す車両用フレーム7のように、機能板72の凸部72bが、フレーム本体71のコーナー部71e、71fまで及ばないように構成してもよい。
【0116】
なお、本実施形態では、フレーム本体71が、第5、第6実施形態と同様、直交断面方向の形状がコの字状をなす第1パネル部材71Aと、平板状の第2パネル部材71Bとにより構成されている。フレーム本体71において、符号71a〜71dで示すフレーム本体71の部位は、それぞれ第1〜第4面部であり、その他、71e〜71hはコーナー部、71iは、フランジ部である。また、機能板72において、符号72aは基部、72cは平面部、72d、72eはフランジ部である。
【0117】
なお、本実施形態では、凸部72bを円錐台状に形成しているが、多角錐台状に形成してもよいし、円錐台状に形成したものと多角錐台状に形成したものとを並設してもよい。
【0118】
(第8実施形態)
また、本発明では、凸部の平面部の形状を、多角形や円形とすることに必ずしも限定されない。例えば、図25に示す車両用フレーム7′のように、その機能板72′の凸部82bの平面部82cを十字型に形成してもよい。なお、図25において、図24に示す第7実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0119】
なお、本実施形態においても、各凸部82b、82b、…は、図26に示すように、その1つの凸部82bに対し長手方向に隣接するものと互いに直交断面方向に重なりを有するとともに、直交断面方向に隣接するものと互いに長手方向に重なりを有し、長手方向及び直交断面方向には、直線状に連続した基部82aが形成されないような構成となっている。
【0120】
(その他の実施形態)
なお、上述した各実施形態では、機能板が、フレーム本体の第1面部に結合されるフランジ部を備えているが、凸部の位置によっては、コーナー部との位置関係や加工技術上の理由により、フランジ部を形成することが困難な場合がある。そこで、荷重エネルギー吸収特性の向上を主目的とする場合には、第3、第4面部に結合されるフランジ部のみを機能板に備えるようにしてもよいし、各フランジ部を省略して、凸部のみで結合するようにしてもよい。
【0121】
また、上述した各実施形態では、機能板をいずれもフレーム本体の内周側に配設することとしたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、フレーム本体の外周側に配設してもよい。
【0122】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、壁面部は、第3面部11c、21c、41c、51c、71c、第4面部11d、21d、41d、51d、71dに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0123】
1、2、3、4、5、5′、7、7′…車両用フレーム
11、21、41、51、71…フレーム本体
11a、21a、41a、51a、71a…第1面部
11b、21b、41b、51b、71b…第2面部
11c、21c、41c、51c、71c…第3面部
11d、21d、41d、51d、71d…第4面部
11e、11f、21e、21f、41e、41f、51e、51f、71e、71f…コーナー部
12、22、32、42、52、52′、72、72′…機能板
12a、22a、32a、42a、52a、62a、72a、82a…基部
12b、22b、32b、42b、52b、62b、72b、82b…凸部
12d、12e、22d、32d、32e、42d、42e、52d、52e、72d、72e…フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の一部を構成し、車両の衝突時に荷重が作用して曲げ変形が生ずる管状のフレーム構造であって、
フレーム本体は、前記荷重が作用した時に圧縮方向の力が作用する第1面部と、
引張方向の力が作用する第2面部と、
前記第1、第2面部の間に配設された壁面部とを有し、
該壁面部には、前記フレーム本体から離間した基部と、
該基部から突出して、前記壁面部に結合される複数の凸部とを一体に形成した機能板を備えており、
前記凸部は、フレームの長手方向に複数配列されるとともに、
前記長手方向に直交する直交断面方向に複数配列される
車両用フレーム構造。
【請求項2】
前記凸部は、前記長手方向及び前記直交断面方向に周期的に配列されるように形成されており、
前記フレームの長手方向に隣接する前記凸部は、互いに前記直交断面方向の重なりを有しているとともに、
前記直交断面方向に隣接する前記凸部は、互いに前記長手方向の重なりを有している
請求項1記載の車両用フレーム構造。
【請求項3】
前記機能板には、前記長手方向に亘って前記フレーム本体に結合されるフランジ部を形成した
請求項1または2記載の車両用フレーム構造。
【請求項4】
前記凸部は、前記フレーム本体に結合される先端部が、多角形状の平面部を有した多角錐台状をなしている
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用フレーム構造。
【請求項5】
前記凸部は、前記フレーム本体に結合される先端部が、円形状の平面部を有した円錐台状をなしている
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用フレーム構造。
【請求項6】
前記第1面部と前記壁面部との間には、コーナー部が形成されており、
該コーナー部を含む領域に、前記機能板を備えている
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用フレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図20】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−16410(P2011−16410A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161365(P2009−161365)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】