説明

車両用フレーム構造

【課題】重量の増加を抑制しつつ車体のねじり剛性を向上させることができる車両用フレーム構造を提供する。
【解決手段】フレーム本体10に補強体30を内蔵した車両用フレーム構造において、フレーム本体は、車体にねじり荷重が作用した時に曲げモーメントの回転軸M方向と略直交する方向に延びる第1面部11c及び第2面部12cと、第1面部と第2面部との間に位置する両側の第3面部11a、12a及び11b、12bとを有し、補強体は、両側の第3面部にそれぞれ接合される両側の第3面接合部31a、31cと、角部10aにおける第1面部側に接合される第1面接合部31bと、第1面部と当接しない第1面非当接部31fと、角部10dにおける第2面部側に接合される第2面接合部31dと、第2面部と当接しない第2面非当接部31gとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体の一部を構成し、閉断面状に形成されたフレーム本体に該フレーム本体を補強するための補強体を内蔵した車両用フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両における車体の一部を構成するサイドシルやピラーなどの車両用フレーム(車体フレーム)は一般に、閉断面状に形成されている。また、車体フレームとして、閉断面状のフレーム本体の内部に補強体を取り付けて補強するようにしたものも知られている。例えば特許文献1には、サイドシル内に、該サイドシルの内面形状に対応した外形形状を有するパイプ状の補強体を接着させたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−067190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示されるように、閉断面状に形成されたフレーム本体の内部に補強体を取り付けて補強する場合、補強体によって重量の増加を招くこととなるので、サイドシルやピラーなどの車体フレームにおいては、如何に重量の増加を抑制しつつ補強するかが重要な課題となっている。
【0005】
また、自動車等の車両においては、操縦安定性や乗り心地性の向上を図る観点から、走行時に車輪を懸架するサスペンション装置と車体との取付部から車体に入力されるねじり荷重がサイドシルやピラーなどの車体フレームに伝達されて車体フレームに曲げモーメントが生じる場合においても車体フレームが曲げ変形しないようにして車体のねじり剛性を高めることが望まれている。
【0006】
そこで、この発明は、重量の増加を抑制しつつ車体のねじり剛性を向上させることができる車両用フレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本願の請求項1に係る発明は、車体の一部を構成し、閉断面状に形成されたフレーム本体に該フレーム本体を補強するための補強体を内蔵した車両用フレーム構造であって、前記フレーム本体は、互いに離間して配設され、車体にねじり荷重が作用した時に該フレーム本体に生じる曲げモーメントの回転軸方向と略直交する方向に延びる第1面部及び第2面部と、該フレーム本体の第1面部と第2面部との間に位置し、該第1面部と該第2面部との間でそれぞれ角部を形成する両側の第3面部とを有し、前記補強体は、前記フレーム本体の両側の第3面部に沿って配設されて該両側の第3面部にそれぞれ当接して接合される両側の第3面接合部と、該第3面接合部に連続して前記フレーム本体の前記第3面部と前記第1面部との間の角部における第1面部側に当接して接合される第1面接合部と、前記フレーム本体の第1面部と当接しない第1面非当接部と、該第3面接合部に連続して前記フレーム本体の前記第3面部と前記第2面部との間の角部における第2面部側に当接して接合される第2面接合部と、前記フレーム本体の第2面部と当接しない第2面非当接部とを有している、ことを特徴としたものである。
【0008】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記補強体は、前記第1面接合部が前記フレーム本体の長手方向に離間して複数設けられるとともに前記第2面接合部が前記フレーム本体の長手方向に離間して複数設けられるように形成されている、ことを特徴としたものである。
【0009】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記補強体は、前記フレーム本体の一方の第3面部と第1面部との間の角部における第1面部側に当接して接合される第1の第1面接合部と、前記フレーム本体の他方の第3面部と第1面部との間の角部における第1面部側に当接して接合される第2の第1面接合部と、前記フレーム本体の一方の第3面部と第2面部との間の角部における第2面部側に当接して接合される第1の第2面接合部と、前記フレーム本体の他方の第3面部と第2面部との間の角部における第2面部側に当接して接合される第2の第2面接合部とを有し、前記第1の第1面接合部と前記第2の第1面接合部とが、前記フレーム本体の長手方向に重ならないように設けられるとともに、前記第1の第2面接合部と前記第2の第2面接合部とが、前記フレーム本体の長手方向に重ならないように設けられている、ことを特徴としたものである。
【0010】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3の何れか1項に係る発明において、前記補強体は、前記第1面接合部を前記曲げモーメントの回転軸方向に前記フレーム本体の第2面部に投影した領域において該第2面部と接合しないように設けられるとともに、前記第2面接合部を前記曲げモーメントの回転軸方向に前記フレーム本体の第1面部に投影した領域において該第1面部と接合しないように設けられている、ことを特徴としたものである。
【0011】
また更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4の何れか1項に係る発明において、前記補強体は、前記フレーム本体の一方の第3面部に当接して接合される第1の第3面接合部、前記フレーム本体の一方の第3面部と第1面部との間の角部における第1面部側に当接して接合される第1の第1面接合部、前記フレーム本体の他方の第3面部に当接して接合される第2の第3面接合部、前記フレーム本体の他方の第3面部と第2面部との間の角部における第2面部側に当接して接合される第2の第2面接合部、及び前記第1の第1面接合部と前記第2の第2面接合部とを連結する第1の連結部とによって前記フレーム本体の長手方向と直交する直交断面においてS字状に形成されるS字状部と、前記第1の第3面接合部、前記フレーム本体の一方の第3面部と第2面部との間の角部における第2面部側に当接して接合される第1の第2面接合部、前記第2の第3面接合部、前記フレーム本体の他方の第3面部と第1面部との間の角部における第1面部側に当接して接合される第2の第1面接合部、及び前記第1の第2面接合部と前記第2の第1面接合部とを連結する第2の連結部とによって前記直交断面において逆S字状に形成される逆S字状部と、前記フレーム本体の長手方向と直交する直交断面方向に延びる隔壁部とを備え、該S字状部と該逆S字状部とが、前記フレーム本体の長手方向に前記隔壁部を介して交互に配置されている、ことを特徴としたものである。
【0012】
また更に、本願の請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明において、前記第1の連結部は、前記フレーム本体の第1面部から第2面部に向かうにつれて前記第1の第3面接合部との離間距離が大きくなるように形成されるとともに前記フレーム本体の第2面部から第1面部に向かうにつれて前記第2の第3面接合部との離間距離が大きくなるように形成され、前記第2の連結部は、前記フレーム本体の第2面部から第1面部に向かうにつれて前記第1の第3面接合部との離間距離が大きくなるように形成されるとともに前記フレーム本体の第1面部から第2面部に向かうにつれて前記第2の第3面接合部との離間距離が大きくなるように形成されている、ことを特徴としたものである。
【0013】
また更に、本願の請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6の何れか1項に係る発明において、前記フレーム本体の第1面部及び第2面部が、サイドシルの車幅方向と直交する方向に延びる両側の側面部であり、前記フレーム本体の両側の第3面部が、前記サイドシルの上面部及び下面部である、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本願の請求項1に係る車両用フレーム構造によれば、フレーム本体に内蔵した補強体は、車体にねじり荷重が作用した時にフレーム本体に生じる曲げモーメントの回転軸方向と略直交する方向に延びるフレーム本体の第1面部及び第2面部との間に位置する両側の第3面部にそれぞれ接合される両側の第3面接合部と、第3面接合部に連続してフレーム本体の第3面部と第1面部との間の角部における第1面部側に接合される第1面接合部と、フレーム本体の第1面部と当接しない第1面非当接部と、第3面接合部に連続してフレーム本体の第3面部と第2面部との間の角部における第2面部側に接合される第2面接合部と、フレーム本体の第2面部と当接しない第2面非当接部とを有している。
【0015】
これにより、車体にねじり荷重が作用した時にフレーム本体に生じる曲げモーメントの回転軸方向と略直交する方向に延びるフレーム本体の第1面部及び第2面部との間に位置する両側の第3面部、第1面部の第3面部との間の角部近傍、及び第2面部の第3面部との間の角部近傍を効果的に補強することができ、車体にねじり荷重が作用した時にフレーム本体の曲げ変形を抑制することができ、重量の増加を抑制しつつ車体のねじり剛性を向上させることができる。
【0016】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、補強体は、第1面接合部がフレーム本体の長手方向に離間して複数設けられるとともに第2面接合部がフレーム本体の長手方向に離間して複数設けられるように形成されていることにより、第1面接合部及び第2面接合部がフレーム本体の長手方向に連続して設けられる場合に比べて、重量の増加を抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0017】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、第1の第1面接合部と第2の第1面接合部とが、フレーム本体の長手方向に重ならないように設けられるとともに、第1の第2面接合部と第2の第2面接合部とが、フレーム本体の長手方向に重ならないように設けられていることにより、前記効果をより具体的に実現することができる。
【0018】
また更に、本願の請求項4に係る発明によれば、補強体は、第1面接合部を曲げモーメントの回転軸方向にフレーム本体の第2面部に投影した領域において該第2面部と接合しないように設けられるとともに、第2面接合部を曲げモーメントの回転軸方向にフレーム本体の第1面部に投影した領域において該第1面部と接合しないように設けられていることにより、前記効果をより具体的に実現することができる。
【0019】
また更に、本願の請求項5に係る発明によれば、補強体は、フレーム本体の長手方向と直交する直交断面においてS字状に形成されるS字状部と、前記直交断面において逆S字状に形成される逆S字状部と、フレーム本体の長手方向と直交する直交断面方向に延びる隔壁部とを備え、S字状部と逆S字状部とが、フレーム本体の長手方向に隔壁部を介して交互に配置されていることにより、車体にねじり荷重が作用した時にフレーム本体の曲げ変形をさらに抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0020】
また更に、本願の請求項6に係る発明によれば、第1の連結部は、第1面部から第2面部に向かうにつれて第1の第3面接合部との離間距離が大きくなるように形成されるとともに第2面部から第1面部に向かうにつれて第2の第3面接合部との離間距離が大きくなるように形成され、第2の連結部は、第2面部から第1面部に向かうにつれて第1の第3面接合部との離間距離が大きくなるように形成されるとともに第1面部から第2面部に向かうにつれて第2の第3面接合部との離間距離が大きくなるように形成されていることにより、補強体を、例えば射出成形によって成形する場合など成形型を用いて成形する場合に、成形時の型抜きを容易に行うことができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0021】
また更に、本願の請求項7に係る発明によれば、フレーム本体の第1面部及び第2面部が、サイドシルの車幅方向と直交する方向に延びる両側の側面部であり、フレーム本体の両側の第3面部が、サイドシルの上面部及び下面部である。
【0022】
これにより、サイドシルの上面部及び下面部、サイドシルの両側の側面部の上面部との間の角部近傍、サイドシルの両側の側面部の下面部との間の角部近傍を効果的に補強することができ、車体にねじり荷重が作用した時にサイドシルの曲げ変形を抑制することができ、重量の増加を抑制しつつ車体のねじり剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用したサイドシルを示す斜視図である。
【図2】図1に示すサイドシルの分解斜視図である。
【図3】図1に示すサイドシルに内蔵した補強体を示す斜視図である。
【図4】図3に示す補強体をY4a−Y4a線及びY4b−Y4b線に沿った断面で切断した図である。
【図5】図1におけるY5−Y5線に沿った断面図である。
【図6】図1におけるY6−Y6線に沿ったサイドシルの断面図である。
【図7】図1におけるY7−Y7線に沿ったサイドシルの断面図である。
【図8】図1におけるY8−Y8線に沿ったサイドシルの断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用したピラーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語など特定の方向を意味する用語を使用するが、それらの使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0025】
本願発明者等は、重量の増加を抑制しつつ車体のねじり剛性を向上させることができる車両用フレーム構造の開発に当たり、先ず、略矩形閉断面状に形成されたフレーム本体を有するとともに該フレーム本体に補強体を内蔵したサイドシルを備えた車体にねじり荷重を作用させた場合について、補強体のフレーム本体との接合部位についての構造最適化解析を行った。
【0026】
そして、前記最適化解析の結果より、車体にねじり荷重を作用させた場合、サイドシルには曲げモーメントの回転軸が車幅方向となるように曲げモーメントが生じ、補強体は、曲げモーメントの回転軸と略直交する方向に延びる両側の側面部の間に位置する上面部及び下面部に対向する部分において接合することがサイドシルの曲げ変形抑制及び車体のねじり剛性向上に最も大きく寄与し、次に上面部及び下面部に連続して上面部及び下面部との間の角部近傍における両側の側面部に対向する部分において接合することがサイドシルの曲げ変形抑制及び車体のねじり剛性向上に大きく寄与することを見出した。
【0027】
かかる解析結果から、補強体は、曲げモーメントの回転軸と略直交する方向に延び、互いに離間して配置されるフレーム本体の第1面部及び第2面部(両側の側面部)との間に位置し、該第1面部と該第2面部との間でそれぞれ角部を形成するフレーム本体の両側の第3面部(上面部及び下面部)に対向する部分において接合するとともに、第3面接合部に連続してフレーム本体の第3面部と第1面部及び第2面部との間の角部における第1面部側及び第2面部側に対向する部分において接合することにより、サイドシルの曲げ変形を抑制して車体のねじり剛性を向上させることができると考えられる。
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用したサイドシルを示す斜視図、図2は、図1に示すサイドシルの分解斜視図、図3は、図1に示すサイドシルに内蔵した補強体を示す斜視図、図4は、図3に示す補強体をY4a−Y4a線及びY4b−Y4b線に沿った断面で切断した図であり、図4(a)は、Y4a−Y4a線に沿った断面で切断した図、図4(b)は、Y4b−Y4b線に沿った断面で切断した図、図5は、図1におけるY5−Y5線に沿った断面図、図6は、図1におけるY6−Y6線に沿ったサイドシルの断面図、図7は、図1におけるY7−Y7線に沿ったサイドシルの断面図、図8は、図1におけるY8−Y8線に沿ったサイドシルの断面図である。なお、図2では、サイドシルに内蔵した補強体を省略して示している。
【0029】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用したサイドシル1は、車体下部において車体前後方向に延びるように配設されるものであり、該サイドシル1の車体前方側がヒンジピラー20に結合され、ヒンジピラー20との結合部25及び該結合部25近傍において補強体30が内蔵されている。
【0030】
サイドシル1は、閉断面状に形成されたフレーム本体10を有し、フレーム本体10は、車体の内面の一部を構成して車体前後方向に延びるサイドシルインナ11と、車体の外面の一部を構成して車体前後方向に延びるサイドシルアウタ12とによって閉断面状に形成されている。
【0031】
具体的には、サイドシルインナ11は、図6に示すように、略水平方向に延びる上面部11aと、上面部11aに対向して上面部11aの下方に位置し、略水平方向に延びる下面部11bと、下面部11bから上面部11aまで略垂直方向に延びる側面部11cとを備え、車幅方向内方側(図6では左側である車内側)に側面部11cが膨出するようにして配設されている。
【0032】
サイドシルインナ11にはまた、上面部11aの車幅方向外方端部に上面部11aから上方へ延びる上フランジ部11dが形成されるとともに、下面部11bの車幅方向外方端部に下面部11bから下方へ延びる下フランジ部11eが形成され、サイドシルインナ11は、断面略ハット状に形成されている。
【0033】
一方、サイドシルアウタ12は、略水平方向に延びる上面部12aと、上面部12aに対向して上面部12aの下方に位置し、略水平方向に延びる下面部12bと、下面部12bから上面部12aまで略垂直方向に延びる側面部12cとを備え、車幅方向外方側(図6では右側である車外側)に側面部12cが膨出するようにして配設されている。
【0034】
サイドシルアウタ12もまた、上面部12aの車幅方向内方端部に上面部12aから上方へ延びる上フランジ部12dが形成されるとともに、下面部12bの車幅方向内方端部に下面部12bから下方へ延びる下フランジ部12eが形成され、サイドシルアウタ12は、断面略ハット状に形成されている。
【0035】
そして、サイドシルインナ11とサイドシルアウタ12とは、上フランジ部11d、12dどうしが接合されるとともに下フランジ部11e、12eどうしが接合され、これにより、フレーム本体10は、閉断面状に形成されている。なお、サイドシルインナ11とサイドシルアウタ12とはそれぞれ、鋼板などの金属製の板状素材をプレス加工して形成することができる。
【0036】
このようにして形成されるフレーム本体10には、サイドシルインナ11の上面部11a及び側面部11cによってそれらの間に角部10aが形成され、サイドシルインナ11の下面部11b及び側面部11cによってそれらの間に角部10bが形成され、サイドシルアウタ12の上面部12a及び側面部12cによってそれらの間に角部10cが形成され、サイドシルアウタ12の下面部12b及び側面部12cによってそれらの間に角部10dが形成され、フレーム本体10は略矩形閉断面状に形成されている。
【0037】
前述したように、フレーム本体10を有するサイドシル1においては、走行時に車輪を懸架するサスペンション装置と車体との取付部から車体に入力されるねじり荷重が伝達され、曲げモーメントの回転軸が車幅方向となるように曲げモーメントが生じることとなる。
【0038】
すなわち、フレーム本体10では、車体にねじり荷重が作用した時に曲げモーメントが生じ、フレーム本体10は、互いに離間して配設され、曲げモーメントの回転軸M方向と略直交する方向に延びるサイドシルインナ11の側面部11c及びサイドシルアウタ12の側面部12cと、側面部11cと12cとの間に位置し、側面部11cと12cとの間でそれぞれ角部10a、10c及び10b、10dを形成するサイドシルインナ11の上面部11a、サイドシルアウタ12の上面部12a及びサイドシルインナ11の下面部11b、サイドシルアウタ12の下面部12bを有している。
【0039】
以下では、適宜、サイドシルインナ11の側面部11cをフレーム本体10の第1面部11cとして表し、サイドシルアウタ12の側面部12cをフレーム本体10の第2面部12cとして表し、サイドシルインナ11の上面部11a、サイドシルアウタ12の上面部12aをフレーム本体10の一方の第3面部11a、12aとして表し、サイドシルインナ11の下面部11b、サイドシルアウタ12の下面部12bをフレーム本体10の他方の第3面部11b、12bとして表す。
【0040】
なお、フレーム本体10の第1面部11c及び第2面部12cは、サイドシル1の車幅方向と直交する方向に延びる両側の側面部であり、第1面部11cが車幅方向内方側の側面部であり、第2面部12cが車幅方向外方側の側面部であり、フレーム本体10の両側の第3面部11a、12a及び11b、12bは、サイドシル1の上面部及び下面部であり、一方の第3面部11a、12aが上面部であり、他方の第3面部11b、12bが下面部である。
【0041】
また、サイドシル1に結合されるヒンジピラー20は、図示しないフロントピラーに結合され、走行時に、車輪を懸架するサスペンション装置と車体との取付部から車体に入力されるねじり荷重が伝達されるとともに該荷重をサイドシル1に伝達することができるようになっている。
【0042】
ヒンジピラー20は、図1に示すように、側面視で略L字状に形成され、車幅方向外方側に位置するヒンジピラーアウタ21と、車幅方向内方側に位置するヒンジピラーインナ22とによって閉断面状に形成されている。
【0043】
また、ヒンジピラー20は、サイドシル1との結合部25では、図2及び図5に示すように、ヒンジピラーインナ22の下部22aがサイドシル1内に、具体的にはサイドシルインナ11とサイドシルアウタ12との間に延びるとともにサイドシルアウタ12の車外側にヒンジピラーアウタ21が配設されるように設けられている。
【0044】
このように、サイドシル1とヒンジピラー20との結合部25では、ヒンジピラーインナ22が、サイドシルインナ11とサイドシルアウタ12とによって形成される閉断面部S1を車外側と車内側に区切るように配設されることにより、サイドシルインナ11とヒンジピラーインナ22によって略断面矩形状の閉断面部S2が形成されるとともに、サイドシルアウタ12とヒンジピラーインナ22によって略断面矩形状の閉断面部S3が形成されている。
【0045】
なお、図2及び図5に示すように、サイドシルアウタ12の側面部12cの車体前方側では車体上下方向の長さが短く形成され、閉断面部S3は、具体的にはサイドシルアウタ12及びヒンジピラーアウタ21とヒンジピラーインナ22とによって閉断面状に形成されている。
【0046】
本実施形態ではまた、フレーム本体10に該フレーム本体10を補強するための補強体30が内蔵されている。補強体30は、図4に示すように、フレーム本体10の長手方向と直交する直交断面においてS字状に形成される板状のS字状部31と、前記直交断面において逆S字状に形成される板状の逆S字状部32と、フレーム本体10の長手方向と直交する直交断面方向である車幅方向に延びる板状の隔壁部33とを有している。
【0047】
S字状部31は、図4(a)及び図6に示すように、フレーム本体10の一方の第3面部11a、12aに略沿って車幅方向に延在し、接着材27を介して第3面部11a、12aに当接して接合される第3面接合部(第1の第3面接合部)31aと、第3面接合部31aの車幅方向内方端部からフレーム本体10の角部10aにおける第1面部11c側に略沿って下方へ延び、第3面接合部31aに連続して接着材27を介してフレーム本体10の角部10aにおける第1面部11c側に当接して接合される第1面接合部(第1の第1面接合部)31bを有している。
【0048】
また、S字状部31は、フレーム本体10の他方の第3面部11b、12bに略沿って車幅方向に延在し、接着材27を介して第3面部11b、12bに当接して接合される第3面接合部(第2の第3面接合部)31cと、第3面接合部31cの車幅方向外方端部からフレーム本体10の角部10dにおける第2面部12c側に略沿って上方へ延び、第3面接合部31cに連続して接着材27を介してフレーム本体10の角部10dにおける第2面部12c側に当接して接合される第2面接合部(第2の第2面接合部)31dを有している。
【0049】
さらに、S字状部31は、第1面接合部31bと第2面接合部31dとを連結する第1の連結部31eを有している。第1の連結部31eは、車内側から車外側に向かうにつれて下方側へ傾斜し、車内側から車外側に向かうにつれて第3面接合部31aとの離間距離が大きくなるように形成されるとともに車外側から車内側に向かうにつれて第3面接合部31cとの離間距離が大きくなるように形成されている。
【0050】
S字状部31はまた、フレーム本体10の第1面部11cと当接しない第1面非当接部31fと、フレーム本体10の第2面部12cと当接しない第2面非当接部31gとを有している。
【0051】
一方、逆S字状部32は、図4(b)及び図7に示すように、フレーム本体10の一方の第3面部11a、12aに略沿って車幅方向に延在し、接着材27を介して第3面部11a、12aに当接して接合される第3面接合部(第1の第3面接合部)32aと、第3面接合部32aの車幅方向外方端部からフレーム本体10の角部10cにおける第2面部12c側に略沿って下方へ延び、第3面接合部32aに連続して接着材27を介してフレーム本体10の角部10cにおける第2面部12c側に当接して接合される第2面接合部(第1の第2面接合部)32bを有している。
【0052】
また、逆S字状部32は、フレーム本体10の他方の第3面部11b、12bに略沿って車幅方向に延在し、接着材27を介して第3面部11b、12bに当接して接合される第3面接合部(第2の第3面接合部)32cと、第3面接合部32cの車幅方向内方端部からフレーム本体10の角部10bにおける第1面部11c側に略沿って上方へ延び、第3面接合部32cに連続して接着材27を介してフレーム本体10の角部10bにおける第1面部11c側に当接して接合される第1面接合部(第2の第1面接合部)32dを有している。
【0053】
さらに、逆S字状部32は、第1面接合部32dと第2面接合部32bとを連結する第2の連結部32eを有している。第2の連結部32eは、車外側から車内側に向かうにつれて下方側へ傾斜し、車外側から車内側に向かうにつれて第3面接合部32aとの離間距離が大きくなるように形成されるとともに車内側から車外側に向かうにつれて第3面接合部32cとの離間距離が大きくなるように形成されている。
【0054】
逆S字状部32はまた、フレーム本体10の第1面部11cと当接しない第1面非当接部32fと、フレーム本体10の第2面部12cと当接しない第2面非当接部32gとを有している。
【0055】
また、隔壁部33は、図4及び図8に示すように、フレーム本体10の内面形状に対応した外形形状を有し、フレーム本体10の長手方向と直交する直交断面方向に延びるように形成されている。なお、図4では、S字状部31、逆S字状部32及び隔壁部33を明瞭に図示するために、二点鎖線によって分離して示している。
【0056】
補強体30は、このようにして形成されるS字状部31、逆S字状部32及び隔壁部33をそれぞれ複数有しており、S字状部31と逆S字状部32とが、フレーム本体10の長手方向である車体前後方向に隔壁部33を介して交互に配置されている。また、補強体30では、S字状部31、逆S字状部32及び隔壁部33が一体的に成形されている。なお、補強体30は、樹脂材料を射出成形等によって成形して得ることができる。
【0057】
このようにして、補強体30では、第1面接合部31b、32dがフレーム本体10の長手方向に離間して複数設けられるとともに第2面接合部31d、32bがフレーム本体10の長手方向に離間して複数設けられるように形成されている。これにより、第1面接合部31b、32d及び第2面接合部31d、32bがフレーム本体10の長手方向に連続して設けられる場合に比べて、重量の増加を抑制することができる。
【0058】
また、補強体30では、第1の第1面接合部31bと第2の第1面接合部32dとは、フレーム本体10の長手方向に重ならないように設けられるとともに、第1の第2面接合部32bと第2の第2面接合部31dとが、フレーム本体10の長手方向に重ならないように設けられている。
【0059】
さらに、補強体30では、第1面接合部31b、32dを曲げモーメントの回転軸M方向にフレーム本体10の第2面部12cに投影した領域において第2面部12cと接合しないように設けられるとともに、第2面接合部31d、32bを曲げモーメントの回転軸M方向にフレーム本体10の第1面部11cに投影した領域において第1面部11cと接合しないように設けられている。
【0060】
また、補強体30では、第1の連結部31eは、第1面部11cから第2面部12cに向かうにつれて第1の第3面接合部31aとの離間距離が大きくなるように形成されるとともに第2面部12cから第1面部11cに向かうにつれて第2の第3面接合部31cとの離間距離が大きくなるように形成され、第2の連結部32eは、第2面部12cから第1面部11cに向かうにつれて第1の第3面接合部32aとの離間距離が大きくなるように形成されるとともに第1面部11cから第2面部12cに向かうにつれて第2の第3面接合部32cとの離間距離が大きくなるように形成されている。これにより、補強体30を、例えば射出成形によって成形する場合など成形型を用いて成形する場合に、成形時の型抜きを容易に行うことができる。
【0061】
なお、補強体30において、第1面接合部31b、32dは、車体上下方向におけるフレーム本体10の第1面部11cの長さの三分の一以上の長さで第1面部11cと接合されることが好ましく、第2面接合部31d、32bは、車体上下方向におけるフレーム本体10の第2面部12cの長さの三分の一以上の長さで第2面部12cと接合されることが好ましい。
【0062】
補強体30はまた、図1及び図3に示すように、サイドシル1とヒンジピラー20との結合部25では、ヒンジピラーインナ22によって分割して形成される車外側の閉断面部S3内に配設されるように、車体前方側において車幅方向における長さが短く形成されている。
【0063】
補強体30は、車体前方側に配設される部分においても同様に、フレーム本体10の長手方向と直交する直交断面においてS字状に形成される板状のS字状部31と、前記直交断面において逆S字状に形成される板状の逆S字状部32と、フレーム本体10の長手方向と直交する直交断面方向である車幅方向に延びる板状の隔壁部33とを備え、S字状部31と逆S字状部32とが、フレーム本体10の長手方向である車体前後方向に隔壁部33を介して交互に配置されている。
【0064】
図5では、ヒンジピラー20との結合部25におけるサイドシル1に内蔵した補強体30の逆S字状部32が示されているが、この図5に示すように、補強体30の車体前方側では、逆S字状部32は、閉断面部S3内において、第3面接合部(第1の第3面接合部)32a、第2面接合部(第1の第2面接合部)32b、第3面接合部(第2の第3面接合部)32c、第1面接合部(第2の第1面接合部)32d、及び第2の連結部32eを有し、フレーム本体10の長手方向と直交する断面において逆S字状に形成されている。
【0065】
しかしながら、第1の第3面接合部32aがサイドシルアウタ12の上面部12aに接合され、第1の第2面接合部32bがサイドシルアウタ12の上面部12aと側面部12cとの角部10cにおける側面部12c側に接合され、第2の第3面接合部32cがヒンジピラーアウタ21の略水平方向に延びる下面部21aに接合され、第2の第1面接合部32dがヒンジピラーアウタ21の下面部21aとヒンジピラーインナ22との角部におけるヒンジピラー22側に接合されている。
【0066】
なお、図示されていないが、補強体30の車体前方側においても、閉断面部S3内において、S字状部31は、フレーム本体10の長手方向と直交する断面においてS字状に形成され、隔壁部33は、フレーム本体10の長手方向と直交する直交断面方向である車幅方向に延びるように形成されている。
【0067】
このように、本実施形態に係る車両用フレーム構造では、フレーム本体10は、互いに離間して配設され、車体にねじり荷重が作用した時にフレーム本体10に生じる曲げモーメントの回転軸M方向と略直交する方向に延びる第1面部11c及び第2面部12cと、フレーム本体10の第1面部11cと第2面部12cとの間に位置し、第1面部11cと第2面部12cとの間でそれぞれ角部10a、10c及び10b、10dを形成する両側の第3面部11a、12a及び11b、12bとを有している。
【0068】
そして、フレーム本体10に内蔵した補強体30は、フレーム本体10の両側の第3面部11a、12a及び11b、12bに沿って配設されて両側の第3面部11a、12a及び11b、12bにそれぞれ当接して接合される両側の第3面接合部31a、32a及び31c、32cと、第3面接合部31a、32cに連続してフレーム本体10の第3面部11a、12a及び11b、12bと第1面部11cとの間の角部10a及び10bにおける第1面部11c側に当接して接合される第1面接合部31b、32dと、フレーム本体10の第1面部11cと当接しない第1面非当接部31f、32fと、第3面接合部31c、32aに連続してフレーム本体10の第3面部11a、12a及び11b、12bと第2面部12cとの間の角部10c及び10dにおける第2面部12c側に当接して接合される第2面接合部31d、32bと、フレーム本体10の第2面部12cと当接しない第2面非当接部31g、32gとを有している。
【0069】
これにより、車体にねじり荷重が作用した時にフレーム本体10に生じる曲げモーメントの回転軸M方向と略直交する方向に延びるフレーム本体10の第1面部11c及び第2面部12cとの間に位置する両側の第3面部11a、12a及び11b、12b、第1面部11cの第3面部11a、12a及び11b、12bとの間の角部10a及び10b近傍、及び第2面部12cの第3面部11a、12a及び11b、12bとの間の角部10c及び10d近傍を効果的に補強することができ、車体にねじり荷重が作用した時にフレーム本体10の曲げ変形を抑制することができ、重量の増加を抑制しつつ車体のねじり剛性を向上させることができる。
【0070】
また、補強体30は、フレーム本体10の長手方向と直交する直交断面においてS字状に形成されるS字状部31と、前記直交断面において逆S字状に形成される逆S字状部32と、フレーム本体10の長手方向と直交する直交断面方向に延びる隔壁部33とを備え、S字状部31と逆S字状部32とが、フレーム本体10の長手方向に隔壁部33を介して交互に配置されていることにより、車体にねじり荷重が作用した時にフレーム本体10の曲げ変形をさらに抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0071】
本実施形態では、フレーム本体10の第1面部11c及び第2面部12cが、サイドシル1の車幅方向と直交する方向に延びる両側の側面部11c、12cであり、フレーム本体10の両側の第3面部11a、12a及び11b、12bが、サイドシル1の上面部11a、12a及び下面部11b、12bである。
【0072】
これにより、サイドシル1の上面部11a、12a及び下面部11b、12b、サイドシル1の両側の側面部11c、12cの上面部11a、12aとの間の角部10a、10c近傍、サイドシル1の両側の側面部11c、12cの下面部11b、12bとの間の角部10b、10d近傍を効果的に補強することができ、車体にねじり荷重が作用した時にサイドシル1の曲げ変形を抑制することができ、重量の増加を抑制しつつ車体のねじり剛性を向上させることができる。
【0073】
図9は、本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用したピラーの断面図である。本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームとしてのピラー41は、サイドシル1に結合されるとともに車体上下方向に延びるものであり、図9に示すように、補強体60が内蔵されている。
【0074】
ピラー41は、閉断面状に形成されたフレーム本体50を有し、フレーム本体50は、車体の外面の一部を構成して車体上下方向に延びるピラーアウタ51と、車体の内面の一部を構成して車体上下方向に延びるピラーインナ52とによって閉断面状に形成されている。
【0075】
ピラーアウタ51は、底面部51aと、底面部51aの両側の側面部、具体的には車体後方側の側面部51b及び車体前方側の側面部51cと、側面部51b、51cから延びるフランジ部51d、51eとを備えて断面ハット状に形成され、ピラーインナ52もまた、底面部52aと、底面部52aの両側の側面部、具体的には車体後方側の側面部52b及び車体前方側の側面部52cと、側面部52b、52cから延びるフランジ部52d、52eとを備えて断面ハット状に形成されている。そして、ピラーアウタ51とピラーインナ52のフランジ部51d、52d、51e、52eどうしが接合されることにより、ピラー41は、略矩形閉断面状に形成されている。
【0076】
本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用したピラー41においても、走行時に車輪を懸架するサスペンション装置と車体との取付部から車体に入力されるねじり荷重が伝達され、曲げモーメントの回転軸Mが車幅方向となるように曲げモーメントが生じることとなる。
【0077】
すなわち、フレーム本体50には、車体にねじり荷重が作用した時に曲げモーメントが生じ、フレーム本体50は、互いに離間して配設され、曲げモーメントの回転軸M方向と略直交する方向に延びるピラーインナ51の底面部51a及びピラーアウタ52の底面部52aと、底面部51aと52aとの間に位置し、底面部51aと52aとの間でそれぞれ角部50a、50b、50c、50dを形成するピラーインナ51の側面部51b、ピラーアウタ52の側面部52b及びピラーインナ51の側面部51c、ピラーアウタ52の側面部52cを有している。
【0078】
以下では、適宜、ピラーインナ51の底面部51aをフレーム本体50の第1面部51aとして表し、ピラーアウタ52の底面部52aをフレーム本体50の第2面部52aとして表し、ピラーインナ51の側面部51b及びピラーアウタ52の側面部52bをフレーム本体50の一方の第3面部51b、52bとして表し、ピラーインナ51の側面部51c、ピラーアウタ52の側面部52cをフレーム本体50の他方の第3面部51c、52cとして表す。
【0079】
ピラー41においても、補強体60は、補強体30と同様に、フレーム本体50の両側の第3面部51b、52b及び51c、52cに沿って配設されて両側の第3面部51b、52b及び51c、52cにそれぞれ当接して接合される両側の第3面接合部と、該第3面接合部に連続してフレーム本体50の角部50a及び50bにおける第1面部51a側に当接して接合される第1面接合部と、フレーム本体50の第1面部51aと当接しない第1面非当接部と、該第3面接合部に連続してフレーム本体50の角部50c、50dにおける第2面部52a側に当接して接合される第2面接合部と、フレーム本体50の第2面部52aと当接しない第2面非当接部とを有している。
【0080】
また、補強体60は、フレーム本体50の長手方向と直交する直交断面においてS字状に形成されるS字状部61と、前記直交断面において逆S字状に形成される逆S字状部と、フレーム本体50の長手方向に直交する直交断面方向に延びる隔壁部とを備え、S字状部61と該逆S字状部とが、フレーム本体50の長手方向に前記隔壁部を介して交互に配置されている。
【0081】
図9では、補強体60のS字状部61が示されているが、この図9に示すように、S字状部61は、フレーム本体50の一方の第3面部51b、52bに接着材27を介して当接して接合される第3面接合部(第1の第3面接合部)61aと、第3面接合部61aに連続して接着材27を介してフレーム本体50の角部50aにおける第1面部51a側に当接して接合される第1面接合部(第1の第1面接合部)61bを有している。
【0082】
また、S字状部61は、フレーム本体50の他方の第3面部51c、52cに接着材27を介して当接して接合される第3面接合部(第2の第3面接合部)61cと、第3面接合部61cに連続して接着材27を介してフレーム本体50の角部50dにおける第2面部52c側に当接して接合される第2面接合部(第2の第1面接合部)61dを有している。
【0083】
さらに、S字状部61は、第1面接合部61bと第2面接合部61dとを連結する第1の連結部61eを有し、第1の連結部61eは、車外側から車内側に向かうにつれて車体前方側へ傾斜し、車外側から車内側に向かうにつれて第3面接合部61aとの離間距離が大きくなるように形成されるとともに車内側から車外側に向かうにつれて第3面接合部61cとの離間距離が大きくなるように形成されている。
【0084】
S字状部61はまた、フレーム本体50の第1面部51aと当接しない第1面非当接部61fと、フレーム本体50の第2面部52aと当接しない第2面非当接部61gとを有している。
【0085】
補強体60の逆S字状部については、図示されていないが、フレーム本体50の一方の第3面部51b、52bに接着材27を介して接合される第3面接合部(第1の第3面接合部)と、該第3面接合部に連続して接着材27を介してフレーム本体50の角部50cにおける第2面部52a側に接合される第2面接合部(第1の第2面接合部)を有している。
【0086】
また、前記逆S字状部は、フレーム本体50の他方の第3面部51c、52cに接着材27を介して当接して接合される第3面接合部(第2の第3面接合部)と、該第3面接合部に連続して接着材27を介してフレーム本体50の角部50bにおける第1面部51a側に当接して接合される第1面接合部(第2の第1面接合部)を有している。
【0087】
さらに、前記逆S字状部は、前記第1面接合部と前記第2面接合部とを連結する第2の連結部を有し、該第2の連結部は、車外側から車内側に向かうにつれて車体後方側へ傾斜し、車外側から車内側に向かうにつれて前記第1の第3面接合部との離間距離が大きくなるように形成されるとともに車内側から車外側に向かうにつれて前記第2の第3面接合部との離間距離が大きくなるように形成されている。
【0088】
前記逆S字状部はまた、フレーム本体50の第1面部51aと当接しない第1面非当接部と、フレーム本体50の第2面部52aと当接しない第2面非当接部とを有している。
【0089】
また、補強体60の隔壁部についても、図示されていないが、フレーム本体50の内面形状に対応した外形形状を有し、フレーム本体50の長手方向と直交する直交断面方向に延びるように形成されている。
【0090】
このように、本実施形態に係る車両用フレーム構造を適用したピラー41においても、フレーム本体50は、互いに離間して配設され、車体にねじり荷重が作用した時にフレーム本体50に生じる曲げモーメントの回転軸M方向と略直交する方向に延びる第1面部51a及び第2面部52aと、フレーム本体50の第1面部51aと第2面部52aとの間に位置し、第1面部51aと第2面部52aとの間でそれぞれ角部50a、50c及び50b、50dを形成する両側の第3面部51b、52b及び51c、52cとを有している。
【0091】
そして、フレーム本体50に内蔵した補強体60は、フレーム本体50の両側の第3面部51b、52b及び51c、52cに沿って配設されて両側の第3面部51b、52b及び51c、52cにそれぞれ当接して接合される両側の第3面接合部61a及び61cと、第3面接合部61a及び61cに連続してフレーム本体50の第3面部51b、52b及び51c、52cと第1面部51aとの間の角部50a、50bにおける第1面部51a側に当接して接合される第1面接合部61bと、フレーム本体50の第1面部51aと当接しない第1面非当接部61fと、第3面接合部61a及び61cに連続してフレーム本体50の第3面部51b、52b及び51c、52cと第2面部52aとの間の角部50c及び50dにおける第2面部52a側に当接して接合される第2面接合部61dと、フレーム本体50の第2面部52aと当接しない第2面非当接部61gとを有している。
【0092】
これにより、車体にねじり荷重が作用した時にフレーム本体50に生じる曲げモーメントの回転軸M方向と略直交する方向に延びるフレーム本体50の第1面部51a及び第2面部52aとの間に位置する両側の第3面部51b、52b及び51c、52c、第1面部51aの第3面部51b、52b及び51c、52cとの間の角部50a及び50b近傍、及び第2面部52aの第3面部51b、52b及び51c、52cとの間の角部50c及び50d近傍を効果的に補強することができ、車体にねじり荷重が作用した時にフレーム本体50の曲げ変形を抑制することができ、重量の増加を抑制しつつ車体のねじり剛性を向上させることができる。
【0093】
また、補強体60は、フレーム本体50の長手方向と直交する直交断面においてS字状に形成されるS字状部61と、前記直交断面において逆S字状に形成される逆S字状部と、フレーム本体50の長手方向と直交する直交断面方向に延びる隔壁部とを備え、S字状部61と前記逆S字状部とが、フレーム本体50の長手方向に前記隔壁部を介して交互に配置されていることにより、車体にねじり荷重が作用した時にフレーム本体50の曲げ変形をさらに抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0094】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、重量の増加を抑制しつつ車体のねじり剛性を向上させることができる車両用フレーム構造を提供することができ、例えばサイドシルやピラーなどの車体の一部を構成する車体フレームに広く利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0096】
1 サイドシル
10、50 フレーム本体
11 サイドシルインナ
12 サイドシルアウタ
30、60 補強体
31、61 S字状部
31a、31c、32a、32c、61a、61c 第3面接合部
31b、32d、61b 第1面接合部
31d、32b、61d 第2面接合部
31e、61e 第1の連結部
31f、61f 第1面非当接部
31g、61g 第2面非当接部
32 逆S字状部
32e 第2の連結部
33 隔壁部
41 ピラー
51 ピラーインナ
52 ピラーアウタ
M 曲げモーメントの回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の一部を構成し、閉断面状に形成されたフレーム本体に該フレーム本体を補強するための補強体を内蔵した車両用フレーム構造であって、
前記フレーム本体は、互いに離間して配設され、車体にねじり荷重が作用した時に該フレーム本体に生じる曲げモーメントの回転軸方向と略直交する方向に延びる第1面部及び第2面部と、該フレーム本体の第1面部と第2面部との間に位置し、該第1面部と該第2面部との間でそれぞれ角部を形成する両側の第3面部とを有し、
前記補強体は、前記フレーム本体の両側の第3面部に沿って配設されて該両側の第3面部にそれぞれ当接して接合される両側の第3面接合部と、該第3面接合部に連続して前記フレーム本体の前記第3面部と前記第1面部との間の角部における第1面部側に当接して接合される第1面接合部と、前記フレーム本体の第1面部と当接しない第1面非当接部と、該第3面接合部に連続して前記フレーム本体の前記第3面部と前記第2面部との間の角部における第2面部側に当接して接合される第2面接合部と、前記フレーム本体の第2面部と当接しない第2面非当接部とを有している、
ことを特徴とする車両用フレーム構造。
【請求項2】
前記補強体は、前記第1面接合部が前記フレーム本体の長手方向に離間して複数設けられるとともに前記第2面接合部が前記フレーム本体の長手方向に離間して複数設けられるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用フレーム構造。
【請求項3】
前記補強体は、前記フレーム本体の一方の第3面部と第1面部との間の角部における第1面部側に当接して接合される第1の第1面接合部と、前記フレーム本体の他方の第3面部と第1面部との間の角部における第1面部側に当接して接合される第2の第1面接合部と、前記フレーム本体の一方の第3面部と第2面部との間の角部における第2面部側に当接して接合される第1の第2面接合部と、前記フレーム本体の他方の第3面部と第2面部との間の角部における第2面部側に当接して接合される第2の第2面接合部とを有し、前記第1の第1面接合部と前記第2の第1面接合部とが、前記フレーム本体の長手方向に重ならないように設けられるとともに、前記第1の第2面接合部と前記第2の第2面接合部とが、前記フレーム本体の長手方向に重ならないように設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用フレーム構造。
【請求項4】
前記補強体は、前記第1面接合部を前記曲げモーメントの回転軸方向に前記フレーム本体の第2面部に投影した領域において該第2面部と接合しないように設けられるとともに、前記第2面接合部を前記曲げモーメントの回転軸方向に前記フレーム本体の第1面部に投影した領域において該第1面部と接合しないように設けられている、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用フレーム構造。
【請求項5】
前記補強体は、前記フレーム本体の一方の第3面部に当接して接合される第1の第3面接合部、前記フレーム本体の一方の第3面部と第1面部との間の角部における第1面部側に当接して接合される第1の第1面接合部、前記フレーム本体の他方の第3面部に当接して接合される第2の第3面接合部、前記フレーム本体の他方の第3面部と第2面部との間の角部における第2面部側に当接して接合される第2の第2面接合部、及び前記第1の第1面接合部と前記第2の第2面接合部とを連結する第1の連結部とによって前記フレーム本体の長手方向と直交する直交断面においてS字状に形成されるS字状部と、前記第1の第3面接合部、前記フレーム本体の一方の第3面部と第2面部との間の角部における第2面部側に当接して接合される第1の第2面接合部、前記第2の第3面接合部、前記フレーム本体の他方の第3面部と第1面部との間の角部における第1面部側に当接して接合される第2の第1面接合部、及び前記第1の第2面接合部と前記第2の第1面接合部とを連結する第2の連結部とによって前記直交断面において逆S字状に形成される逆S字状部と、前記フレーム本体の長手方向と直交する直交断面方向に延びる隔壁部とを備え、該S字状部と該逆S字状部とが、前記フレーム本体の長手方向に前記隔壁部を介して交互に配置されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車両用フレーム構造。
【請求項6】
前記第1の連結部は、前記フレーム本体の第1面部から第2面部に向かうにつれて前記第1の第3面接合部との離間距離が大きくなるように形成されるとともに前記フレーム本体の第2面部から第1面部に向かうにつれて前記第2の第3面接合部との離間距離が大きくなるように形成され、前記第2の連結部は、前記フレーム本体の第2面部から第1面部に向かうにつれて前記第1の第3面接合部との離間距離が大きくなるように形成されるとともに前記フレーム本体の第1面部から第2面部に向かうにつれて前記第2の第3面接合部との離間距離が大きくなるように形成されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用フレーム構造。
【請求項7】
前記フレーム本体の第1面部及び第2面部が、サイドシルの車幅方向と直交する方向に延びる両側の側面部であり、前記フレーム本体の両側の第3面部が、前記サイドシルの上面部及び下面部である、
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の車両用フレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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