説明

車両用フロアマット

【課題】フロアマットがズレた場合でも、該フロアマットがアクセルペダルやブレーキペダルに干渉することがない車両用フロアマットを提供すること。
【解決手段】マット本体11の前方端11a近傍及び後方端11b近傍に折り曲げ可能なヒンジ部12a、12bを設けた車両用フロアマットであって、車両用フロアマットは、該フロアマットの位置が前方にズレても、マット本体11の前方端近傍にヒンジ部12aが設けられていることから、マット本体11の前方端がヒンジ部12aを介して折れ曲がり、アクセルペダル等から速やかに外れるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアマットがズレた場合でも、該フロアマットがアクセルペダルやブレーキペダルに干渉することがない車両用フロアマットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の床面にはタフテッドカーペットやニットカーペットなどのファーストカーペットが敷設されている。このファーストカーペットは、一般に車内の床面全面に接着剤などを介して敷設されるため、埃やゴミなどで汚れた場合でも、簡単に取り外して清掃することができない。このため、車両床面には、埃やゴミが直接ファーストカーペットに付かないようにするため、その上面に取り外し可能なフロアマットが載置されている。
【0003】
ところが、この車両床面のファーストカーペット上に載置されるフロアマットは、運転時や乗り降りの際にズレを生じ易くやすく、そのズレ防止対策がなされていた。
【0004】
そのズレ防止対策の一手段として、図5に示すように、ファーストカーペット1内に入り込み、フロアマット2のズレを防止する該フロアマット2裏面に設けたズレ防止用突起3がある(例えば特許文献1及び2参照)。また、図6に示すように、車両床面5にフック6を突設し、このフック6をフロアマット7の縁部に設けた貫通孔8に引っかけることで、フロアマット7のズレを防止する手段もある(例えば特許文献3〜5参照)。
【0005】
ところが、図5に示すフロアマット2の裏面に設けた多数のズレ防止用突起3だけでは、そのズレ防止効果は確実なものではなかった。そこで、図6に示すフロアマット7の縁部に設けた貫通孔8に車両床面5に突設したフック6を引っ掛けるズレ防止手段を併用する対応がなされることもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−309849号公報
【特許文献2】特開2007−307418号公報
【特許文献3】特開平6−320995号公報
【特許文献4】特開2000−153731号公報
【特許文献5】特開2007−22299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、フック6の貫通孔8への引っ掛けが不十分であった場合には、フロアマット7に加わる力の大きさや方向によっては、該フロアマット7が斜めにズレたりすることがあり、その際、フロアマット7の縁部の貫通孔8からフック6が外れることもあった。
【0008】
このようにして、車両床面のフロアマットの位置を固定する固定フックからフロアマットが外れ、フロアマットの位置が前方にズレてしまった時、そのズレたフロアマットがアクセルペダルに引っ掛かる虞があった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、フロアマットがズレた場合でも、該フロアマットがアクセルペダルやブレーキペダルに干渉することがない車両用フロアマットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、マット本体の前方端近傍及び後方端近傍に折り曲げ可能なヒンジ部を設けたことを特徴とする車両用フロアマットをその要旨とした。
【0011】
請求項2に係る発明は、ヒンジ部がマット本体の前方端近傍及び後方端近傍に設けた線状に熱融着された薄肉部からなることを特徴とする請求項1に記載の車両用フロアマットをその要旨とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両用フロアマットは、該フロアマットの位置が前方にズレて、アクセルペダル等に引っ掛かっても、マット本体の前方端近傍にヒンジ部が設けられていることから、マット本体の前方端がヒンジ部を介して折り曲がり、アクセルペダル等から速やかに外れるようになっている。
【0013】
また本発明の車両用フロアマットは、誤って前後の方向を逆にして車両床面に載置し、該フロアマットの位置が前方にズレて、アクセルペダル等に引っ掛かっても、マット本体の後方端近傍にもヒンジ部が設けられていることから、マット本体の後方端がヒンジ部を介して折り曲がり、アクセルペダル等から速やかに外れるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のフロアマットの表面を示す斜視図。
【図2】本発明のフロアマットの裏面を示す斜視図。
【図3】本発明のフロアマットの要部拡大断面図。
【図4】本発明のフロアマットの位置が前方にズレて、アクセルペダル等に引っ掛かった状態を示す模式図。
【図5】従来のフロアマットのズレ防止手段を示す要部拡大断面図。
【図6】従来のフロアマットのズレ防止手段の別例を示す要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の車両用フロアマットを図面に従ってさらに詳しく説明する。本発明の車両用フロアマット(以下、単にマットという)は、自動車や列車、航空機などの車両床面、特に床面にファーストカーペットが敷設されている床面上に載置されるものである。
【0016】
マット本体11の構成としては特に限定されない。図1〜図3に示す形態では、基布13にパイル糸14を打ち込んでなる表装材15と、この表装材15の裏面に取り付けた裏貼り材16とからなる。表装材15は、不織布、紙、布、フェルトあるいはこれらの複合物からなる基布13にパイル糸14を所定のボリュームとなるように打ち込み、抜け止めのためのプレコート(図示しない)を施したものである。
【0017】
裏張り材16は、モノフィラメントで構成されたループ状パイル糸を用いて編成又は織成されたパイル編物又はパイル織物17と支持層18とからなる。モノフィラメントで構成されたループ状パイル糸を用いて編成又は織成されたパイル編物又はパイル織物17としては、例えばモノフィラメントで構成されたループ状パイル糸を用いて編成された経編(ラッセル編地)であって、前記ループ状パイル糸をカットした編物、モノフィラメントで構成されたループ状パイル糸を用いて編成された表面と裏面とを有する経編緯糸入編物(ダブルラッセル編地)であって、前記表面と裏面とを接続するループ状パイル糸をカットした編物、モノフィラメントで構成されたループ状パイル糸を用いて織成された二重織物の表織物と裏織物とを結合するループ状パイル糸をカットして分離した表織物又は裏織物、モノフィラメントで構成されたループ状パイル糸を用いて織成されたパイル織物のループ状パイル糸をカットした織物を挙げることができる。
【0018】
パイル編物又はパイル織物17のカットされたループ状パイル糸のカット端は、パイル編物又はパイル織物17から突出しており、該マットを車両床面のファーストカーペット上に敷設し、これに荷重が加わったときに、前記カット端がファーストカーペット内部に入り込み、これを係止する係止部として作用するようになっている。
【0019】
尚、パイル編物又はパイル織物17に用いるループ状パイル糸として、太く硬めのモノフィラメントで構成されている。具体的にはポリエチレンモノフィラメント、ポリエステルモノフィラメント、ポリアミドモノフィラメントなどが望ましく、その繊度は100デニール以上、好ましくは300デニール以上である。また、1本限らず、複数本のモノフィラメントを束ねたものをループ状パイル糸63として用いることもできる。
【0020】
また、パイル編物又はパイル織物17の目の形態は任意であるが、例えば図1〜図4に示すように亀甲状、菱形状、角状などのネット状が好ましい。
【0021】
支持層18は発泡樹脂から構成されたものであり、例えばポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−酢ビ共重合体、ポリメタクリル酸メチル、フェノール、ユリアなどを素材とし、これらを熱分解型発泡剤を用いた気泡発生手段や揮発性溶剤を用いた気泡発生手段、あるいは高圧下で不活性ガスを高分子中に吸収させ、常圧で発泡させる気泡発生手段など従来公知の気泡発生手段を用いて発泡成形することにより得られるものを挙げることができる。図示の例では、発泡ポリウレタンを用いた支持層を採用した。
【0022】
支持層18を構成する発泡樹脂の発泡倍率としては任意であるが、好ましくは5〜50倍、より好ましくは10〜30倍である。また、発泡樹脂の気泡構造としても特に限定されないが、連続気泡と独立気泡が20%:80%〜80%:20%の割合で混在するものが好ましい。すなわち発泡樹脂中の連続気泡構造の割合が多い場合、吸音性はアップするがへたり易くなり、独立気泡が構造の割合が多い場合には、弾性力はアップするが吸音性能は小さくなるため、用途や使用状態に合わせて適宜選択するとよい。図示の例では連続気泡と独立気泡の割合を50%:50%とした。
【0023】
この支持層18が接着剤を介して前述のパイル編物又はパイル織物17に付設されているのである。これにより、該マットに荷重が加わったとき、前記パイル編物又はパイル織物17の前記ループ状パイル糸の基部を固定し支持する発泡樹脂から構成される支持層18が弾性変形し、その支持層18の復元力により前記ループ状パイル糸のカット端がファーストカーペット内部に入り込むことになることから、その作用は荷重が加わる部分の周囲にまで拡がり、また、荷重が加わる方向や大きさによっても、敷物に加わる荷重で弾性変形した支持層の復元力によってカット端が確実に車両床面のファーストカーペット内部に入り込み、より効果的に敷物のズレを防止することができる。尚、支持層18をパイル編物又はパイル織物17に付設する手段としては接着剤に限らず、例えば支持層18の表層部分に熱融着性樹脂からなる層を設けておき、この層を熱融着させることでパイル編物又はパイル織物17に付設するなどの方法を採ることもできる。
【0024】
図1〜図3に示すマットは、マット本体11の前方端11a近傍及び後方端11b近傍に折り曲げ可能なヒンジ部12a、12bが設けられている。このマットにおけるヒンジ部12a、12bは、例えば図4に示すように、フロアマットの位置が前方にズレて、アクセルペダルやブレーキペダル(以下、アクセルペダル等という)19に引っ掛かっても、マット本体11の前方端11a近傍及び後方端11b近傍に設けたヒンジ部12a、12bを介して前方端11a及び後方端11bが図4の矢印に示すように折り曲がり、アクセルペダル等19から外れるようになっており、アクセルペダル等19の矢印に示す操作をスムーズに行うことができる。
【0025】
このヒンジ部12a、12bは、マット本体11の前方端近傍及び後方端近傍に例えばウェルダーなどを用いて加圧しながら熱融着することで、線状の薄肉状のヒンジ部を得ることができる。図示の例では、ウェルダーなどを用いてマット本体11の表裏から押圧しつつ熱融着してヒンジ部12a、12bを形成しているので、ヒンジ部12a、12bはより薄く、マット本体11の前方端11a及び後方端11bは折れ曲がり易くなっている。
【0026】
尚、図示の例では、マット本体11の前方端近傍及び後方端近傍にヒンジ部12a、12bを設けたが、マット本体11の左右端近傍にも同様にヒンジ部を設けてもよい。
【0027】
尚、本発明のマットは、図面に示した例に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で自由に変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のマットは、自動車や列車、航空機などの車両のタフテッドカーペットやニットカーペットなどのファーストカーペットが敷設されている床面に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
11・・・マット本体
11a・・・前方端
11b・・・後方端
12a・・・ヒンジ部
12b・・・ヒンジ部
15・・・表装材
16・・・裏貼り材
19・・・アクセルペダル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マット本体の前方端近傍及び後方端近傍に折り曲げ可能なヒンジ部を設けたことを特徴とする車両用フロアマット。
【請求項2】
ヒンジ部がマット本体の前方端近傍及び後方端近傍に設けた線状に熱融着された薄肉部からなることを特徴とする請求項1に記載の車両用フロアマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100039(P2013−100039A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245278(P2011−245278)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000149664)株式会社大和 (35)
【出願人】(592083993)株式会社八千代 (34)
【出願人】(592084004)株式会社祥永 (34)
【Fターム(参考)】