説明

車両用フロア構造

【課題】センターフロア部材及びセンターフロアクロスメンバの変形を抑制することができる車両用フロア構造を得る。
【解決手段】クロスメンバ20は、センターフロアパネル22とセンターフロアクロスメンバ24とを備えており、センターフロアパネル22のフロア上面部26及び縦壁部28と、センターフロアクロスメンバ24の段差部38及び上部側縦壁部36とで閉断面が構成されている。センターフロアパネル22のフロア上面部26には、車両前後方向に沿ってフロア側稜線部27が形成されており、センターフロアクロスメンバ24の段差部38には、車両前後方向に沿ってフロアクロスメンバ側稜線部39が形成されている。その際、フロア側稜線部27はフロアクロスメンバ側稜線部39よりも車両幅方向外側にオフセットした位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両幅方向に沿って延在するセンターフロア部材と、このセンターフロア部材の車両下方側に接合されたセンターフロアクロスメンバとを備えた車両用フロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、リアフロアパネルとクロスメンバによって車両幅方向に延在する閉断面形状を形成した車体フロア構造が開示されている。
【特許文献1】特開2000−108947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記先行技術による場合、リアフロアパネルの車両幅方向両端部の稜線と、クロスメンバの車両幅方向両端部の稜線については言及されておらず、例えば両者の稜線が車両幅方向に一致する位置に配置された場合には、悪路走行時のサスペンションの入力等により、稜線を起点としてリアフロアパネル及びクロスメンバが変形する可能性がある。一方、車体フロアの強度を確保するために、例えば、リアフロアパネルのクロスメンバと閉断面を形成する部分のみを分割して板厚を上げると、部品点数の増加や重量の増加につながる。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、センターフロア部材及びセンターフロアクロスメンバの変形を抑制することができる車両用フロア構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明に係る車両用フロア構造は、車両幅方向に沿って延在すると共に、車両前方側にフロア上面部から車両下方側に延設された縦壁部を備えたセンターフロア部材と、前記センターフロア部材の車両下方側に配置されると共に、車両上下方向に沿って配置された壁部の中間部に車両幅方向に沿って車両前方側に突出するように形成された段差部を備え、前記段差部の前端部に前記縦壁部の下端部が接合され、かつ、前記壁部の上端部に前記フロア上面部が接合されて前記センターフロア部材との閉断面が構成されるセンターフロアクロスメンバと、前記センターフロア部材の車両幅方向両端部に設けられ、前記閉断面を構成する前記フロア上面部又は前記縦壁部に形成されたフロア側稜線部と、前記センターフロアクロスメンバの車両幅方向両端部に設けられ、前記閉断面において前記フロア上面部又は前記縦壁部と対向する前記段差部又は前記壁部に形成されると共に、前記フロア側稜線部と車両幅方向にオフセットした位置に配置されたフロアクロスメンバ側稜線部と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用フロア構造において、前記フロア側稜線部が前記閉断面を構成する前記フロア上面部に車両前後方向に沿って形成されると共に、前記フロアクロスメンバ側稜線部が前記閉断面を構成する前記段差部に車両前後方向に沿って形成されており、車両正面視にて前記フロア側稜線部と前記フロアクロスメンバ側稜線部とが車両幅方向にオフセットして配置されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1に記載の車両用フロア構造において、前記フロア側稜線部が前記閉断面を構成する前記縦壁部に車両上下方向に沿って形成されると共に、前記フロアクロスメンバ側稜線部が前記閉断面を構成する前記壁部に車両上下方向に沿って形成されており、車両平面視にて前記フロア側稜線部と前記フロアクロスメンバ側稜線部とが車両幅方向にオフセットして配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1に記載の車両用フロア構造において、前記フロア側稜線部が、前記閉断面を構成する前記フロア上面部に車両前後方向に沿って形成されたフロア上面部側稜線部と、前記閉断面を構成する前記縦壁部に車両上下方向に沿って形成されたフロア縦壁部側稜線部と、を備えると共に、前記フロアクロスメンバ側稜線部が、前記閉断面を構成する前記段差部に車両前後方向に沿って形成された段差部側稜線部と、前記閉断面を構成する前記壁部に車両上下方向に沿って形成された壁部側稜線部と、を備え、車両正面視にて前記フロア上面部側稜線部と前記段差部側稜線部とが車両幅方向にオフセットして配置されると共に、車両平面視にて前記フロア縦壁部側稜線部と前記壁部側稜線部とが車両幅方向にオフセットして配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の本発明によれば、車両幅方向に沿って延在するセンターフロア部材の車両下方側にセンターフロアクロスメンバが配置されている。センターフロアクロスメンバには、車両上下方向に沿って配置された壁部の中間部に車両前方側に突出する段差部が車両幅方向に沿って形成されており、段差部の前端部にセンターフロア部材のフロア上面部から延設された縦壁部の下端部が接合され、かつ、センターフロアクロスメンバの壁部の上端部にセンターフロア部材のフロア上面部が接合されることで、センターフロア部材とセンターフロアクロスメンバとで閉断面が構成されている。センターフロア部材の車両幅方向両端部には、閉断面を構成するフロア上面部又は縦壁部にフロア側稜線部が形成されており、センターフロアクロスメンバの車両幅方向両端部におけるフロア側稜線部と車両幅方向にオフセットした位置には、閉断面においてフロア上面部又は縦壁部と対向する段差部又は壁部にフロアクロスメンバ側稜線部が形成されている。すなわち、センターフロア部材の車両幅方向両端部に形成されたフロア側稜線部と、センターフロアクロスメンバの車両幅方向両端部に形成されたフロアクロスメンバ側稜線部とが、車両幅方向にオフセットして配置されている。これによって、悪路走行時のサスペンションの入力等により、フロア側稜線部及びフロアクロスメンバ側稜線部を起点としてセンターフロア部材及びセンターフロアクロスメンバが変形することが抑制される。このため、例えば、車両正面視又は車両平面視においてフロア側稜線部及びフロアクロスメンバ側稜線部が車両幅方向に一致する位置に設けられた場合と比べて、センターフロア部材及びセンターフロアクロスメンバが変形することを抑制することができる。さらに、センターフロア部材等を分割して板厚を厚くする必要がなく、部品点数の増加、及び重量の増加を防止することができる。
【0010】
請求項2記載の本発明によれば、フロア側稜線部が閉断面を構成するフロア上面部に車両前後方向に沿って形成されると共に、フロアクロスメンバ側稜線部が閉断面を構成する段差部に車両前後方向に沿って形成されており、車両正面視にてフロア側稜線部とフロアクロスメンバ側稜線部とが車両幅方向にオフセットして配置されている。これによって、悪路走行時のサスペンションの入力等により、フロア側稜線部及びフロアクロスメンバ側稜線部を起点としてセンターフロア部材及びセンターフロアクロスメンバが変形することをより一層抑制することができる。
【0011】
請求項3記載の本発明によれば、フロア側稜線部が閉断面を構成する縦壁部に車両上下方向に沿って形成されると共に、フロアクロスメンバ側稜線部が閉断面を構成する壁部に車両上下方向に沿って形成されており、車両平面視にてフロア側稜線部とフロアクロスメンバ側稜線部とが車両幅方向にオフセットして配置されている。これによって、悪路走行時のサスペンションの入力等により、フロア側稜線部及びフロアクロスメンバ側稜線部を起点としてセンターフロア部材及びセンターフロアクロスメンバが変形することをより一層抑制することができる。
【0012】
請求項4記載の本発明によれば、フロア上面部側稜線部が閉断面を構成するフロア上面部に車両前後方向に沿って形成されると共に、段差部側稜線部が閉断面を構成する段差部に車両前後方向に沿って形成されており、車両正面視にてフロア上面部側稜線部と段差部側稜線部とが車両幅方向にオフセットして配置されている。フロア縦壁部側稜線部が閉断面を構成する縦壁部に車両上下方向に沿って形成されると共に、壁部側稜線部が閉断面を構成する壁部に車両上下方向に沿って形成されており、車両平面視にてフロア縦壁部側稜線部と壁部側稜線部とが車両幅方向にオフセットして配置されている。これによって、悪路走行時のサスペンションの入力等により、フロア上面部側稜線部及び段差部側稜線部、フロア縦壁部側稜線部及び壁部側稜線部を起点としてセンターフロア部材及びセンターフロアクロスメンバが変形することを更に確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用フロア構造は、悪路走行時のサスペンションの入力等により、センターフロア部材及びセンターフロアクロスメンバの変形を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0014】
請求項2記載の本発明に係る車両用フロア構造は、センターフロア部材及びセンターフロアクロスメンバの変形をより効果的に抑制することができるという優れた効果を有する。
【0015】
請求項3記載の本発明に係る車両用フロア構造は、センターフロア部材及びセンターフロアクロスメンバの変形をより効果的に抑制することができるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項4記載の本発明に係る車両用フロア構造は、センターフロア部材及びセンターフロアクロスメンバの変形を更に確実に抑制することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
【0018】
以下、図1〜図8を用いて、本発明に係る車両用フロア構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0019】
図1には、本発明の車両用フロア構造が適用された車両の斜視図が示されている。この図に示されるように、車両10のボデー本体11の下部には、車両幅方向及び車両前後方向に沿って車両用フロア12が配設されている。また、ボデー本体11の上部には車両幅方向及び車両前後方向に沿ってルーフパネル14が配設されており、ボデー本体11の両側部には、図示しないフロントサイドドア及びリアサイドドアが取り付けられるドア開口部16が形成されている。
【0020】
車両用フロア12の車両幅方向中央部には、車両前後方向に沿ってトンネルリインフォース18が設けられている。車両用フロア12の車両後方側には、車両幅方向に沿って延在するクロスメンバ20が配設されている。クロスメンバ20は、車両用フロア12の一般面12A及びトンネルリインフォース18の車両上方側に突出するように配設されている。クロスメンバ20は、図示しないリアシートの下部に配設されている。
【0021】
図2には、本発明の車両用フロア構造の斜視図が示されている。この図に示されるように、クロスメンバ20は、車両上方側に配置されたセンターフロアパネル22と、このセンターフロアパネル22の車両下方側に配置されたセンターフロアクロスメンバ24と、を備えている。図3に示されるように、センターフロアパネル22は、車両幅方向及び車両前後方向に沿って形成されたフロア上面部26と、フロア上面部26の車両前端部から車両下方側に延設された縦壁部28と、を備えている。フロア上面部26の車両幅方向中間部には、車両幅方向に沿って略水平な平面部26Aが形成されている。フロア上面部26の平面部26Aの車両幅方向両端部には、車両前後方向に沿ってフロア側稜線部(折れ線)27が形成されており、フロア側稜線部27の車両幅方向両側は、車両幅方向両端部に行くに従って下り勾配となる傾斜面26Bとなっている。
【0022】
傾斜面26Bの車両幅方向両端部には、ボデー本体11の車両幅方向両端部の下部に形成されたロッカインナリア(図示省略)に接合される接合部26Cが形成されている。なお、図示を省略するが、接合部26Cの上部には、図示しないリアシートを取り付けるためのかさ上げブラケットが設けられている。センターフロアパネル22とセンターフロアクロスメンバ24とを組み合わせてクロスメンバ20を形成した構成では、クロスメンバ20の車両幅方向中央部はリアシート(図示省略)の着座姿勢から決定され、また、クロスメンバ20の車両幅方向端部はリアサイドドアの形状により決定されるロッカーインナリアの高さから決定されるため、センターフロアパネル22のフロア上面部26にはフロア側稜線部27が形成された構成となっている。
【0023】
センターフロアパネル22の縦壁部28は、傾斜面26Bと対応する車両幅方向両端部が車両下方側に延設されている。縦壁部28の下端部には、車両前方側に折り曲げられてセンターフロアクロスメンバ24に接合される取付部30が形成されている。センターフロアパネル22の平面部26Aには、車両前後方向に沿って複数のビード32が形成されている。
【0024】
図4に示されるように、センターフロアクロスメンバ24は、車両上下方向に配置された壁部としての上部側縦壁部36と、上部側縦壁部36の下端部から車両前方側に突出するように形成された段差部38と、段差部38の前端部から車両下方側に配置された壁部としての下部側縦壁部40と、を備えている。上部側縦壁部36の上端部には、車両後方側に折り曲げられてフロア上面部26の下面に接合される取付部42が形成されている(図5参照)。取付部42は、フロア上面部26の形状に合わせて車両幅方向中間部の両側が車両幅方向両端部に行くに従って下り勾配となるように形成されている。
【0025】
段差部38は、車両幅方向に沿って設けられており、車両幅方向中間部に略水平な平面部38Aが形成されている。段差部38の平面部38Aの車両幅方向両端部には、車両前後方向に沿ってフロアクロスメンバ側稜線部(折れ線)39が形成されており、フロアクロスメンバ側稜線部39の車両幅方向両側は、車両幅方向両端部に行くに従って下り勾配となる傾斜面38Bとなっている。センターフロアクロスメンバ24の下部側縦壁部40の下部の中央部には、トンネルリインフォース18が貫通する凹状部44が設けられている。センターフロアクロスメンバ24の下部側縦壁部40の下端部には、車両前方側に折り曲げられて車両用フロア12の一般面12A及びトンネルリインフォース18の上面に接合される取付部46が設けられている。また、上部側縦壁部36には、車両上下方向に沿って複数のビード48が設けられ、下部側縦壁部40には、車両上下方向に沿って複数のビード50が設けられている。
【0026】
センターフロアパネル22の取付部30は、センターフロアクロスメンバ24の段差部38の形状に合わせて車両幅方向両側部が端部側に行くに従って下り勾配となるように形成されている。図5に示されるように、センターフロアクロスメンバ24の段差部38の前端部にはテーパー面が形成されている。そして、センターフロアパネル22の縦壁部28の下端部がセンターフロアクロスメンバ24の段差部38のテーパー面にスポット溶接等により接合されると共に、センターフロアクロスメンバ24の上部側縦壁部36の上端部に形成された取付部42にセンターフロアパネル22のフロア上面部26の下面がスポット溶接等により接合されることにより、センターフロアパネル22とセンターフロアクロスメンバ24とで閉断面が構成されている。
【0027】
図6に示されるように、車両正面視にてセンターフロアパネル22のフロア上面部26に車両前後方向に沿って形成されたフロア側稜線部27と、センターフロアクロスメンバ24の段差部38に車両前後方向に沿って形成されたフロアクロスメンバ側稜線部39とは、車両幅方向にオフセットした位置に配置されている。言い換えると、閉断面を構成するフロア上面部26(閉断面の上面)に形成されたフロア側稜線部27が、閉断面においてフロア上面部26と対向する段差部38(閉断面の下面)に形成されたフロアクロスメンバ側稜線部39よりも車両幅方向外側にオフセットした位置に配置されている。フロア側稜線部27とフロアクロスメンバ側稜線部39の車両幅方向における距離W(フロア側稜線部27とフロアクロスメンバ側稜線部39の透視平面上における距離W)は、約50mm以上ずらして配置することが好ましい。
【0028】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0029】
車両用フロア構造では、閉断面を構成するフロア上面部26に形成されたフロア側稜線部27が、フロア上面部26に対向する段差部38に形成されたフロアクロスメンバ側稜線部39よりも車両幅方向外側にオフセットした位置に配置されている。これによって、悪路走行時のサスペンションの入力等により、フロア側稜線部27及びフロアクロスメンバ側稜線部39を起点としてセンターフロアパネル22及びセンターフロアクロスメンバ24が変形することを抑制することができる。さらに、センターフロアパネル22等を分割して板厚を厚くする必要がないため、センターフロアパネル22等を1部品で構成することができ、部品点数の増加、及び重量の増加を防止することができる。
【0030】
図9には、比較例に係る車両用フロア構造が示されている。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0031】
図9に示されるように、クロスメンバ100は、車両上方側に配置されたセンターフロアパネル102と、このセンターフロアパネル102の車両下方側に配置されたセンターフロアクロスメンバ24と、を備えている。センターフロアパネル102のフロア上面部26の車両幅方向両端部には、車両前後方向に沿ってフロア側稜線部104が形成されており、フロア側稜線部104を挟んで車両幅方向中央部側に平面部26Aが形成され、車両幅方向端部側に傾斜面26Bが形成されている。その際、車両正面視にてセンターフロアパネル102のフロア上面部26に車両前後方向に沿って形成されたフロア側稜線部104と、センターフロアクロスメンバ24の段差部38に車両前後方向に沿って形成されたフロアクロスメンバ側稜線部39とは、車両幅方向にほぼ一致した位置に配置されている。
【0032】
比較例に係る車両用フロア構造では、車両正面視にてセンターフロアパネル102のフロア上面部26に形成されたフロア側稜線部104と、センターフロアクロスメンバ24の段差部38に形成されたフロアクロスメンバ側稜線部39とが、車両幅方向にほぼ一致した位置に配置されており、悪路走行時のサスペンションの入力等により、フロア側稜線部104及びフロアクロスメンバ側稜線部39を起点としてセンターフロアパネル102及びセンターフロアクロスメンバ24が変形する可能性がある。すなわち、フロア側稜線部104及びフロアクロスメンバ側稜線部39を起点として、図10中の矢印B、矢印Cに示される方向にセンターフロアパネル102及びセンターフロアクロスメンバ24の変形が集中する可能性がある。
【0033】
図8には、本実施形態のクロスメンバ20の図7中のA−A線に沿った横断面における変形状態を、比較例のクロスメンバ100の変形状態と比較した解析図が示されている。
【0034】
図8に示されるように、本実施形態のクロスメンバ20では、センターフロアパネル22の縦壁部28とセンターフロアクロスメンバ24の上部側縦壁部36の変形量が、比較例のクロスメンバ100のセンターフロアパネル102の縦壁部28とセンターフロアクロスメンバ24の上部側縦壁部36の変形量に比べて小さいことが分かる。従って、本実施形態のクロスメンバ20では、フロア側稜線部27とフロアクロスメンバ側稜線部39とを車両幅方向にオフセットして配置することにより、フロア側稜線部27とフロアクロスメンバ側稜線部39とを起点としてセンターフロアパネル22及びセンターフロアクロスメンバ24が変形することを抑制することができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
【0036】
次に、図11を用いて、本発明に係る車両用フロア構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0037】
図11に示されるように、クロスメンバ60は、車両上方側に配置されたセンターフロアパネル62と、このセンターフロアパネル62の車両下方側に配置されたセンターフロアクロスメンバ64と、を備えている。センターフロアパネル62の縦壁部28には、車両上下方向に沿ってフロア側稜線部(折れ線)66が形成されている。縦壁部28は、フロア側稜線部66を挟んで車両幅方向中央部に車両上下方向に沿った平面部62Aと、フロア側稜線部66を挟んで車両幅方向端部に車両後方側に後退した傾斜部62Bと、を備えている。センターフロアクロスメンバ64の上部側縦壁部36には、車両上下方向に沿ってフロアクロスメンバ側稜線部(折れ線)68が形成されている。上部側縦壁部36は、フロアクロスメンバ側稜線部68を挟んで車両幅方向中央部に車両上下方向に沿った平面部64Aと、フロアクロスメンバ側稜線部68を挟んで車両幅方向端部に車両後方側に後退した傾斜部64Bと、を備えている。
【0038】
クロスメンバ60では、車両平面視にてセンターフロアパネル62の縦壁部28に車両上下方向に沿って形成されたフロア側稜線部66と、センターフロアクロスメンバ64の上部側縦壁部36に車両上下方向に沿って形成されたフロアクロスメンバ側稜線部68とが、車両幅方向にオフセットした位置に配置されている。言い換えると、閉断面を構成するセンターフロアパネル62の縦壁部28(閉断面の前面)に形成されたフロア側稜線部66が、閉断面において縦壁部28と対向するセンターフロアクロスメンバ64の上部側縦壁部36(閉断面の後面)に形成されたフロアクロスメンバ側稜線部68よりも車両幅方向外側にオフセットした位置に配置されている。フロア側稜線部66とフロアクロスメンバ側稜線部68の車両幅方向における距離W(フロア側稜線部66とフロアクロスメンバ側稜線部68の透視平面上における距離W)は、約50mm以上ずらして配置することが好ましい。
【0039】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0040】
車両用フロア構造では、閉断面を構成するセンターフロアパネル62の縦壁部28に形成されたフロア側稜線部66が、閉断面において縦壁部28と対向するセンターフロアクロスメンバ64の上部側縦壁部36に形成されたフロアクロスメンバ側稜線部68よりも車両幅方向外側にオフセットした位置に配置されている。これによって、悪路走行時のサスペンションの入力等により、フロア側稜線部66及びフロアクロスメンバ側稜線部68を起点としてセンターフロアパネル62及びセンターフロアクロスメンバ64が変形することを抑制することができる。さらに、センターフロアパネル62等を分割して板厚を厚くする必要がないため、センターフロアパネル62等を1部品で構成することができ、部品点数の増加、及び重量の増加を防止することができる。
【0041】
〔第3実施形態〕
【0042】
次に、図12を用いて、本発明に係る車両用フロア構造の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0043】
図12に示されるように、クロスメンバ70は、車両上方側に配置されたセンターフロアパネル72と、このセンターフロアパネル72の車両下方側に配置されたセンターフロアクロスメンバ74と、を備えている。センターフロアパネル72のフロア上面部26には、車両前後方向に沿ってフロア側稜線部としてのフロア上面部側稜線部76が形成されており、センターフロアパネル72の縦壁部28には、車両上下方向に沿ってフロア側稜線部としてのフロア縦壁部側稜線部78が形成されている。フロア上面部26は、フロア上面部側稜線部76を挟んで車両幅方向中央部に略水平の平面部72Aと、フロア側稜線部66を挟んで車両幅方向端部に車両下方側に傾斜した傾斜部72Bと、を備えている。縦壁部28は、フロア縦壁部側稜線部78を挟んで車両幅方向中央部に車両上下方向に沿った平面部72Cと、フロア縦壁部側稜線部78を挟んで車両幅方向端部に車両後方側に後退した傾斜部72Dと、を備えている。
【0044】
センターフロアクロスメンバ74の段差部38には、車両前後方向に沿ってフロアクロスメンバ側稜線部としての段差部側稜線部80が形成されており、センターフロアクロスメンバ74の上部側縦壁部36には、車両上下方向に沿ってフロアクロスメンバ側稜線部としての壁部側稜線部82が形成されている。段差部38は、段差部側稜線部80を挟んで車両幅方向中央部に略水平の平面部74Aと、段差部側稜線部80を挟んで車両幅方向端部に車両下方側に傾斜した傾斜部74Bと、を備えている。上部側縦壁部36は、壁部側稜線部82を挟んで車両幅方向中央部に車両上下方向に沿った平面部74Cと、壁部側稜線部82を挟んで車両幅方向端部に車両後方側に後退した傾斜部74Dと、を備えている。
【0045】
クロスメンバ70は、車両正面視にてセンターフロアパネル72のフロア上面部26に車両前後方向に沿って形成されたフロア上面部側稜線部76が、センターフロアクロスメンバ74の段差部38に車両前後方向に沿って形成された段差部側稜線部80に対して車両幅方向外側にオフセットした位置に配置されている(図12(A)中の一点鎖線参照)。また、車両平面視にてセンターフロアクロスメンバ74の上部側縦壁部36に車両上下方向に沿って形成された壁部側稜線部82が、センターフロアパネル72の縦壁部28に車両上下方向に沿って形成されたフロア縦壁部側稜線部78に対して車両幅方向外側にオフセットした位置に配置されている。フロア上面部側稜線部76と段差部側稜線部80の車両幅方向における距離(透視平面上における距離)、フロア縦壁部側稜線部78と壁部側稜線部82の車両幅方向における距離(透視平面上における距離)は、それぞれ約50mm以上ずらして配置することが好ましい。
【0046】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0047】
車両用フロア構造では、フロア上面部側稜線部76と段差部側稜線部80とが車両幅方向にオフセットした位置に配置されると共に、フロア縦壁部側稜線部78と壁部側稜線部82とが車両幅方向にオフセットした位置に配置されており、閉断面における2箇所でぞれぞれの折れ線の位置がずれている。これによって、悪路走行時のサスペンションの入力等により、フロア上面部側稜線部76及び段差部側稜線部80、フロア縦壁部側稜線部78及び壁部側稜線部82を起点としてセンターフロアパネル72及びセンターフロアクロスメンバ74が変形することをより確実に抑制することができる。さらに、センターフロアパネル72等を分割して板厚を厚くする必要がないため、センターフロアパネル72等を1部品で構成することができ、部品点数の増加、及び重量の増加を防止することができる。
【0048】
〔実施形態の補足説明〕
【0049】
上述した第1実施形態では、フロア側稜線部27がフロアクロスメンバ側稜線部39よりも車両幅方向外側にオフセットしているが、これに限定されず、逆方向にオフセットさせる構成でもよい。
【0050】
上述した第2実施形態では、フロアクロスメンバ側稜線部68がフロア側稜線部66よりも車両幅方向外側にオフセットしているが、これに限定されず、逆方向にオフセットさせる構成でもよい。
【0051】
上述した第3実施形態では、フロア上面部側稜線部76が段差部側稜線部80よりも車両幅方向外側にオフセットしており、壁部側稜線部82がフロア縦壁部側稜線部78よりも車両幅方向外側にオフセットしているが、これに限定されず、それぞれ逆方向にオフセットさせる構成でもよい。すなわち、フロア上面部側稜線部76と段差部側稜線部80を逆方向にオフセットさせる構成、壁部側稜線部82とフロア縦壁部側稜線部78を逆方向にオフセットさせる構成、又は、両者を逆方向にオフセットさせる構成でもよい。
【0052】
また、本発明では、フロア側稜線部とフロアクロスメンバ側稜線部とは、必ずしもセンターフロアパネルとセンターフロアクロスメンバとの閉断面のみに形成する必要はなく、閉断面の外側に延長して設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施形態に係る車両用フロア構造が適用された車両を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る車両用フロア構造の全体構成を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る車両用フロア構造に用いられるセンターフロアパネル単体を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る車両用フロア構造に用いられるセンターフロアクロスメンバ単体を示す斜視図である。
【図5】第1実施形態に係る車両用フロア構造の閉断面部分を示す縦断面図である。
【図6】第1実施形態に係る車両用フロア構造を示す部分正面図である。
【図7】第1実施形態に係る車両用フロア構造の変形を説明するための部分正面図である。
【図8】図7中のA−A線における第1実施形態に係る車両用フロア構造と比較例に係る車両用フロア構造の変形状態を示す断面図である。
【図9】比較例に係る車両用フロア構造の全体構成を示す斜視図である。
【図10】比較例に係る車両用フロア構造の変形を説明するための平面図である。
【図11】第2実施形態に係る車両用フロア構造の全体構成を示す平面図である。
【図12】(A)は第3実施形態に係る車両用フロア構造の全体構成を示す正面図であり、(B)は第3実施形態に係る車両用フロア構造の全体構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 車両
20 クロスメンバ(車両用フロア構造)
22 センターフロアパネル
24 センターフロアクロスメンバ
26 フロア上面部
27 フロア側稜線部
28 縦壁部
36 上部側縦壁部(壁部)
38 段差部
39 フロアクロスメンバ側稜線部
60 クロスメンバ(車両用フロア構造)
62 センターフロアパネル
64 センターフロアクロスメンバ
66 フロア側稜線部
68 フロアクロスメンバ側稜線部
70 クロスメンバ(車両用フロア構造)
72 センターフロアパネル
74 センターフロアクロスメンバ
76 フロア上面部側稜線部
78 フロア縦壁部側稜線部
80 段差部側稜線部
82 壁部側稜線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向に沿って延在すると共に、車両前方側にフロア上面部から車両下方側に延設された縦壁部を備えたセンターフロア部材と、
前記センターフロア部材の車両下方側に配置されると共に、車両上下方向に沿って配置された壁部の中間部に車両幅方向に沿って車両前方側に突出するように形成された段差部を備え、前記段差部の前端部に前記縦壁部の下端部が接合され、かつ、前記壁部の上端部に前記フロア上面部が接合されて前記センターフロア部材との閉断面が構成されるセンターフロアクロスメンバと、
前記センターフロア部材の車両幅方向両端部に設けられ、前記閉断面を構成する前記フロア上面部又は前記縦壁部に形成されたフロア側稜線部と、
前記センターフロアクロスメンバの車両幅方向両端部に設けられ、前記閉断面において前記フロア上面部又は前記縦壁部と対向する前記段差部又は前記壁部に形成されると共に、前記フロア側稜線部と車両幅方向にオフセットした位置に配置されたフロアクロスメンバ側稜線部と、
を有することを特徴とする車両用フロア構造。
【請求項2】
前記フロア側稜線部が前記閉断面を構成する前記フロア上面部に車両前後方向に沿って形成されると共に、前記フロアクロスメンバ側稜線部が前記閉断面を構成する前記段差部に車両前後方向に沿って形成されており、
車両正面視にて前記フロア側稜線部と前記フロアクロスメンバ側稜線部とが車両幅方向にオフセットして配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用フロア構造。
【請求項3】
前記フロア側稜線部が前記閉断面を構成する前記縦壁部に車両上下方向に沿って形成されると共に、前記フロアクロスメンバ側稜線部が前記閉断面を構成する前記壁部に車両上下方向に沿って形成されており、
車両平面視にて前記フロア側稜線部と前記フロアクロスメンバ側稜線部とが車両幅方向にオフセットして配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用フロア構造。
【請求項4】
前記フロア側稜線部が、前記閉断面を構成する前記フロア上面部に車両前後方向に沿って形成されたフロア上面部側稜線部と、前記閉断面を構成する前記縦壁部に車両上下方向に沿って形成されたフロア縦壁部側稜線部と、を備えると共に、
前記フロアクロスメンバ側稜線部が、前記閉断面を構成する前記段差部に車両前後方向に沿って形成された段差部側稜線部と、前記閉断面を構成する前記壁部に車両上下方向に沿って形成された壁部側稜線部と、を備え、
車両正面視にて前記フロア上面部側稜線部と前記段差部側稜線部とが車両幅方向にオフセットして配置されると共に、車両平面視にて前記フロア縦壁部側稜線部と前記壁部側稜線部とが車両幅方向にオフセットして配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用フロア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−30546(P2010−30546A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197353(P2008−197353)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】