説明

車両用フロア構造

【課題】様々な車両の車両とのフロアパネルを共用化しながら、車体のデザイン要求に応えられるデザイン自由度を確保することができるようにした車両用フロア構造を提供する。
【解決手段】車体側パネル部材1に、周縁部11を複数の締結部材により着脱可能に結合され、フロアパネルとして構成された第1フロア部材10と、第1フロア部材10の下方に第1フロア部材10との間に収納空間6を空けて配置され、車体側パネル部材1に、周縁部21を複数の前記締結部材又は他の締結部材により着脱可能に結合され、フロアパネルとして構成された第2フロア部材20とをそなえている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フロア構造にかかり、特に、フロアの下方に収納空間を有する車両用フロア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車両用フロア構造は、薄鋼板をプレス加工することで形成された複数のパネルをスポット溶接等により溶着することで構成されている。例えば、乗用車のフロア部は、前方から、車室のフロア部を構成するフロントフロアパンと、リヤシートクロスメンバと、リヤシートを支持するリヤシートパンと、荷室のフロア部を構成するリヤフロアパンとがこの順で互いに溶着され、フロントフロアパンの両側部にはサイドシルが溶着され、形成されている。
【0003】
ところで、電気自動車(Electric vehicle)やハイブリッド電気自動車 (Hybrid electric vehicle) の場合、モータを動力源とするため、容量の大きいバッテリが用いられる。また、バッテリの劣化や損傷を防ぐためには、バッテリを好ましい状況に維持して搭載したい。燃料電池車(Fuel Cell Electric Vehicle)においても、容量の大きな燃料電池を好ましい状況に維持して搭載したい。したがって、バッテリや燃料電池を専用ケースに収納して車両に搭載することが行なわれている。
【0004】
ただし、容量の大きいバッテリや燃料電池をケースに収納する場合、ケースの容量も大きくなってしまう。このため、ケースを搭載する大きなスペースが必要となる。荷室に搭載することも行なわれているが、その分だけ荷室が狭くなってしまう。
そこで、例えば特許文献1,2に記載されているように、バッテリケースをフロアの下部に配置したものがある。
【0005】
特許文献1のものは、フレームレス構造の車体のフロアパネルの下部にバッテリケースをボルトで締結している。
特許文献2のものは、フレーム構造の車両において、矩形の車体フレームの上面にフロアパネルを、下面に底面パネルを、ボルトにより取り付け、車体フレームと底面パネルとフロアパネルとで囲繞された空間内にバッテリ等を装備している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−272400号公報
【特許文献2】特開2006−182295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両を製造する場合、可能な限り部品の共用化を図り、製造コストを抑制したい。車体部品についても共用化を進めたいが、電気自動車等において、上述のようにフロア下部にバッテリケースを装備する構成を採用すると、バッテリケースの高さ分だけフロア面を高くしなくてはならず、必然的に車高も高くすることが必要になる。この結果、フロア面が高く車高も高い特有の車体形状となる。
【0008】
したがって、フロア下部にバッテリケースを装備する電気自動車のフロアを、例えば、従来の内燃機関を動力源とする車両の車体と共用化しようとすると、フロア面や車高が不要に高い車体形状となり、デザイン要求に対応できない場合がある。
つまり、SUV(Sport utility vehicle)のようにフロア面や車高が一般に高い車体形状のものには、上記電気自動車のフロアを共用化しながらも、デザイン要求への対応は可能であるが、セダンタイプのように最低地上高がさほど要求されない車両は、通常、フロア面が低く設計されており、上記電気自動車のフロアを共用化した場合、デザイン要求への対応は困難となる。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑み創案されたものであり、様々な車両とのフロアパネルを共用化しながら、車体のデザイン要求に応えられるデザイン自由度を確保することができるようにした車両用フロア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の車両用フロア構造は、車体側パネル部材(例えば、左右のサイドシル,リヤシートクロスメンバ,ダッシュパネルクロスメンバなど)に、周縁部を複数の締結部材により着脱可能に結合され、フロアパネルとして構成された第1フロア部材と、前記第1フロア部材の下方に前記第1フロア部材との間に収納空間を空けて配置され、前記車体側パネル部材に、周縁部を複数の締結部材により着脱可能に結合され、フロアパネルとして構成された第2フロア部材と、をそなえていることを特徴としている。
【0011】
また、前記収納空間は、バッテリを収納する空間であって、前記第2フロア部材は、前記バッテリを上載されるバッテリトレーとして用いられることが好ましい。
また、前記第1フロア部材の前記締結部材及び前記第2フロア部材の前記締結部材は、何れもボルト及びナットであって、前記第1フロア部材の前記周縁部には前記ボルト及びナットの締結により前記車体側パネル部材に接合される第1フランジ部が設けられ、前記第2フロア部材の前記周縁部には前記ボルト及びナットの締結により前記車体側パネル部材に接合される第2フランジ部が設けられ、前記ボルト及びナットの少なくとも一部は、前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部の対応箇所にそれぞれ形成されたボルト穴を通じて前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部を共締めされて前記車体側パネル部材に接合することが好ましい。
【0012】
前記第2フロア部材の前記第2フランジ部には、前記第1フランジ部を前記車体側パネル部材に接合するボルトの頭部又はナットが遊挿される大径穴が形成されていることが好ましい。
前記第2フロア部材の前記第2フランジ部には、前記ボルト穴と前記大径穴とが交互に形成されていることが好ましい。
【0013】
前記第1フロア部材と前記第2フロア部材とを直接係止する係止部材をそなえていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両用フロア構造によれば、第1フロア部材とその下方に配置された第2フロア部材との間に収納空間が形成され、第1フロア部材及び第2フロア部材はいずれもフロアパネルとして構成されているので、実質的なフロアとして使用される第1フロア部材のみならず収納空間の下面として使用される第2フロア部材も、フロアに必要な強度及び剛性を有している。このため、収納空間内部の収納品を保護し易く、例えば第2フロア部材をバッテリトレーとして用いてバッテリをこの収納空間に収納するのに好適である。
【0015】
また、第1フロア部材及び第2フロア部材はフロアパネルとして構成されているため、第1フロア部材及び第2フロア部材をともに使用する本構造以外に、第1フロア部材及び第2フロア部材の一方のみをフロアパネルとして使用したフロア構造とすることができる。
例えば、第2フロア部材のみをフロアパネルとして使用したフロア構造の場合、フロア面を下げることができ、上方に収納空間及び第1フロア部材が無いため、車室内スペースに余裕をもたせることができ、車体のデザイン自由度を確保することができる。また、セダンタイプのように最低地上高をさほど要求されない車両のフロア部材として共用化することができる。
【0016】
第1フロア部材のみをフロアパネルとして使用したフロア構造の場合には、第1フロア部材の下方に収納空間及び第2フロア部材が配置されないため、第1フロア部材を、SUVのように大きい最低地上高が要求される車両のフロア部材として共用化することができる。
さらに、第1フロア部材及び第2フロア部材はそれぞれの周縁部を車体側パネル部材に着脱可能に結合されるため、第2フロア部材を、第1フロア部材と共通の締結部材により車体側パネル部材に着脱可能に結合することにより、例えば、第1フロア部材及び第2フロア部材の対応箇所にそれぞれ形成されたボルト穴を通じてボルト及びナットを共締めすることにより、着脱効率を向上させることができる。
【0017】
また、第1フロア部材の周縁部は締結部材により着脱可能に結合され、第2フロア部材の周縁部は締結部材により着脱可能に結合されるため、第1及び第2フロア部材を車体側パネル部材に同時に着脱するだけでなく、第1フロア部材は装着しながら第2フロア部材のみを着脱することが可能になる。
例えば、第2フロア部材に、第1フロア部材の第1フランジ部を車体側パネル部材に接合するボルトの頭部又はナットが遊挿される大径穴が形成されていると、大径穴に遊挿されるボルトの頭部を有するボルト又はナットにより、第1フロア部材を第2フロア部材から独立して車体側パネル部材に接合することができる。
【0018】
第1及び第2フロア部材を車体側パネル部材にボルト及びナットにより共締めするボルト穴と上記の大径穴とを備える場合、大径穴において第1フロア部材のみを車体側パネル部材に締結したままで、第1及び第2フランジ部の対応箇所にそれぞれ形成されたボルト穴を通じて共締めしているボルトを緩めると、第1フロア部材を車体側パネル部材から取り外すことなく、第2フロア部材を取り外すことができる。
【0019】
第2フロア部材にバッテリが上載されている場合には、第1フロア部材を車体側パネル部材から取り外すことなく、第2フロア部材を取り外すことができるため、バッテリの保守作業の効率化を図ることができる。
また、収納空間を、バッテリ収納空間として使用すると、重量のあるバッテリを第1フロア部材の下方に収納するため、車両の重心を下げることができ、車両の動的性能及び安定性の向上に寄与する。
【0020】
また、第2フロア部材に、ボルト穴と大径穴とが交互に形成されていると、ボルト穴を通じた第1フランジ部と第2フランジ部との車体側パネル部材への共締めや、大径穴部において第1フロア部材のみの車体側パネル部材への締結を接合方向に均一にする上で有利になる。
第1フロア部材と第2フロア部材とを直接係止する係止部材により、第1及び第2フロア部材を車体側パネル部材から取り外した場合であっても、両者の相対的な配置関係は変わらず、収納空間を保ったまま第1及び第2フロア部材を取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる車両用フロア構造を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる車両用フロア構造の要部を破断させて模式的に示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる車両用フロア構造を模式的に示す断面図であり、(a)は第1実施形態にかかる模式的断面図、(b)は第2フロア部材を他の車両に共用化した場合の共用化車両の模式的断面図、(c)は第1フロア部材を他の車両に共用化した場合の共用化車両の模式的断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる車両用フロア構造の要部断面図であり、第1実施形態にかかる要部断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかる車両用フロア構造を示す要部底面図(図4のA矢視図)である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかる車両用フロア構造の模式的縦断面図(図1のB−B矢視断面相当図)である。
【図7】本発明の第1実施形態にかかる車両用フロア構造における第1フロア部材と第2フロア部材とを係止する係止部材の変形例を示す要部断面図であり、(a)は第1変形例を示し、(b)は第2変形例を示す。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる車両用フロア構造の要部断面図であり、第2実施形態にかかる要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
〈第1実施形態〉
図1〜図6は本発明の第1実施形態にかかる車両用フロア構造を示すもので、図1はその分解斜視図、図2はその模式的斜視図、図3はその模式的断面図、図4はその要部断面図、図5はその要部底面図、図6はその模式的縦断面図である。
【0023】
[構成]
〔フロアパネル全体〕
まず、本実施形態にかかる車両用フロア構造が適用されるフロアパネルの全体構造を説明する。
図1に示すように、本車両用フロア構造は、車体側パネル部材1と、第1フロア部材10と、第2フロア部材20とを備え、これらにより車両のフロアパネル全体が構成される。また、第1フロア部材10及び第2フロア部材20は、ともに車室内のフロア部に配置され、第1フロア部材10はフロントフロアパネルとして構成されている。第1フロア部材10のみならず第2フロア部材20も、フロアパネルとして構成されており、第1フロア部材10及び第2フロア部材20は、フロアパネルとして必要な形状,強度及び剛性を備えている。
【0024】
車体側パネル部材1は、サイドシル2と、ダッシュパネルクロスメンバ3と、リヤシートクロスメンバ4と、後部座席を上載し、荷室等のフロア部を構成するリヤフロアパネル5とを有している。
なお、車両の左右方向に延在するダッシュパネルクロスメンバ3及びリヤシートクロスメンバ4により、フロアパネル左右方向の強度,剛性が確保され、車両の前後方向にそれぞれ延在する左右のサイドシル2により、フロアパネルの前後方向の強度,剛性が確保されている。
【0025】
第1フロア部材10及び第2フロア部材20は、上述のように強度,剛性を担うサイドシル2,ダッシュパネルクロスメンバ3及びリヤシートクロスメンバ4に結合されて車室内のフロア部を構成する。
第1フロア部材10の周縁部(第1周縁部)11及び第1フロア部材10の下方に配置される第2フロア部材20の周縁部(第2周縁部)21は、車体側パネル部材1のサイドシル2、ダッシュパネルクロスメンバ3及びリヤシートクロスメンバ4の各内縁により形成された略矩形の形状に対応した形状に形成されている。
【0026】
第1フロア部材10には、その左右方向中央に、前後方向に延びた凸部(第1凸部)19が形成され、第1凸部19の左右には実質的なフロア面を構成する平端部10aが形成され、平坦部10aの側縁部並びに、平坦部10a及び第1凸部19の前後縁部に、車体側パネル部材1と結合する上記の第1周縁部11が第1フロア部材10の周縁部の全周に亘って形成されている。第2フロア部材20にも、その左右方向中央に、第1凸部19に対応して前後方向に延びた凸部(第2凸部)29が形成され、第2凸部29の左右方向に平坦部20aが形成され、平坦部20aの側縁部並びに、平坦部20a及び第2凸部29の前後縁部に、車体側パネル部材1と結合する上記の第2周縁部21が第2フロア部材20の周縁部の全周に亘って形成されている。なお、凸部19,29の下面側の凹所は排気管やプロペラシャフトを配設可能なフロアトンネル部として機能しうる。
【0027】
以下、第1フロア部材10及び第2フロア部材20と車体側パネル部材1との配置関係について、サイドシル2との配設関係を例に説明するが、ダッシュパネルクロスメンバ3及びリヤシートクロスメンバ4との配設についても同様である。
図2は第1フロア部材10及び第2フロア部材20をその前後端を省略して簡略化して示す斜視図であり、図6は第1フロア部材10及び第2フロア部材20を車幅方向中心線で破断した模式的縦断面図(図1のB−B矢視断面相当図)である。
【0028】
図1,図2及び図6に示すように、車両用フロア構造の第1フロア部材10及び第2フロア部材20と、サイドシル2,2,ダッシュパネルクロスメンバ3及びリヤシートクロスメンバ4とは、上方から順に、サイドシル2の水平面部2a,各クロスメンバ3,4の水平面部3a,4aと、サイドシル2の水平面部2a,各クロスメンバ3,4の水平面部3a,4aに対応して形成された第1フロア部材10の第1周縁部11と、サイドシル2の水平面部2a,各クロスメンバ3,4の水平面部3a,4a及び第1周縁部11に対応して形成された第2フロア部材20の第2周縁部21とが配置される。
【0029】
なお、図6は第1フロア部材10及び第2フロア部材20の車幅方向中心線、つまり、後述する凸部(バックボーン部)19,29で破断した縦断面図であるが、凸部19,29の左右の凸部19,29よりも低くなった平坦部10a,20aにおいても、第1フロア部材10の第1周縁部11及び第2フロア部材20の第2周縁部21と各クロスメンバ3,4の水平面部3a,4aとの位置関係は図6に示すものと略同様になる。
【0030】
第2フロア部材20は、第1フロア部材10の下方に収納スペース(収納空間)6を空けて配置され、第1凸部19の下方には、これに対応して第2凸部29が位置する。つまり、第1フロア部材10と、第2フロア部材との間には、収納スペース6としての空間が設けられている。
本実施形態では、この収納スペース6に、収納物としてバッテリ40を収納するようにしており、第2フロア部材20は、バッテリ40を載せるバッテリトレーとして用いられ、第1フロア部材10は、フロアパネルであるとともにバッテリカバーとしても用いられている。すなわち、第1フロア部材10,第2フロア部材20及び後述するバッテリシール42によりバッテリケースが構成されている。
通常バッテリケース内は、複数の区画に分けられて、各区画にバッテリ40が収納されるが、本実施形態では、第2フロア部材20が左右方向中央の第2凸部29により区画され、第2凸部29の左右の平坦面20a上にバッテリ40が上載され収納される。
【0031】
〔フロア部材の取付部構造〕
次に、本実施形態にかかる車両用フロア構造における、第1フロア部材10及び第2フロア部材20と車体側パネル部材1との結合について説明する。
【0032】
ここでは、第1フロア部材10及び第2フロア部材20とサイドシル2との結合を説明するが、第1フロア部材10及び第2フロア部材20と、ダッシュパネルクロスメンバ3及びリヤシートクロスメンバ4との結合も、同様である。
図4に示ように、第1フロア部材10及び第2フロア部材20のサイドシル2との結合部には、上方から順に、サイドシル2の水平面部2aと、第1フロア部材10の第1周縁部11に形成された第1フランジ部12と、第2フロア部材20の第2周縁部21に形成された第2フランジ部22とが配置される。なお、図4においては、車両右側のサイドシル2の部分を例示するが、車両左側のサイドシル2の部分も同様(但し、左右対称)に構成される。
【0033】
また、第1フロア部材10の第1周縁部11は、平坦部10aから下方に傾斜した段部10bを介して配設された水平な平面であるサブフランジ部10cと、このサブフランジ部10cから上方に傾斜した段部10dを介して配設された水平な平面である第1フランジ部12とを有する。これらはプレス加工により形成される。サブフランジ部10cには後述する第1クリップ穴14が形成される。
【0034】
第2フロア部材20の第2周縁部21は、第1周縁部11に対応する形状で、平坦部20aから上方に傾斜した段部20bを介して配設された水平な平面であるサブフランジ部20cと、このサブフランジ部20cから上方に傾斜した段部20dを介して配設された水平な平面である第2フランジ部22とを有する。これらも第1周縁部11と同様に形成される。サブフランジ部20cには後述する第2クリップ穴24が形成される。
【0035】
第1フランジ部12には、ボルト穴(第1ボルト穴)13が形成されている。第2フランジ部22には、第1ボルト穴13に対応した箇所にボルト穴(第2ボルト穴)23が形成されている。サイドシル2の水平面部2aには、第1ボルト穴13及び第2ボルト穴23に対応した箇所に、サイドシルボルト穴2bが形成されている。第1ボルト穴13,第2ボルト穴23及びサイドシルボルト穴2bは、ボルト30のボルト軸より大きく、ボルト30の頭部よりも小さく形成されている。また、第1フランジ部12,第2フランジ部22及び水平面部2aにそれぞれ形成された第1ボルト穴13,第2ボルト穴23及びサイドシルボルト穴2bは、等間隔に長手方向に設けられている。
【0036】
締結部材としてのボルト30は、第1ボルト穴13,第2ボルト穴23及びサイドシルボルト穴2bを通じてナット(締結部材)31との螺合により、水平面部2aと、第1フランジ部12と、第2フランジ部22とを締結している。つまり、ボルト30及びナット31により、第1フランジ部12及び第2フランジ部22は共締めされてサイドシル2に着脱可能に結合される。
【0037】
ボルト30は、スタッドボルトを用いておりサイドシル2に溶着されている。なお、ボルト30に換えてナット31を配設し、ナット31に換えてボルト30を配設してもよい。この場合、ナット31は、ウェルドナットを用いてサイドシル2に溶着されている。
サイドシル2と第1フロア部材10の第1周縁部11との間には車室シール41が介装されており、第1周縁部11の全周に亘って車体側パネル部材1との間に全周に亘って車室シール41が介装されている。第1フロア部材10の第1周縁部11と第2フロア部材20第2周縁部21との間にはバッテリケース用のシール42が介装されている。詳細には、第1周縁部11のサブフランジ部10cと第2周縁部21のサブフランジ部20cとの間の全周に亘ってバッテリシール42が介装されている。
【0038】
第1周縁部11のサブフランジ部10cには、第1クリップ穴14が形成されている。第2周縁部21のサブフランジ部20cには、第1クリップ穴14の対応する箇所に第2クリップ穴24が形成されている。
係止部材32は、第1クリップ穴14と第2クリップ穴24とを通じて、第1周縁部11のサブフランジ部10cと第2周縁部21のサブフランジ部20cとを直接係止する。つまり、係止部材32により、第1フロア部材10と第2フロア部材20とを直接係止する。
【0039】
係止部材32は、ここでは、弾性材(例えば板金又は樹脂)により形成されたクリップが用いられている。このクリップ32は、その先端で結合されて基端に向かって互いに対向するように延びた2片の対向部が弾性変形によって互いに離接しうるように構成されている。その先端部及び基端部には、互いに離隔する方向に突出した突出部32a,32bが形成される。各対向部の先端部には、先端に向けて先細り(対向部が互いに接近する)になったテーパ面32dが形成される。
【0040】
これらの突出部32a,32bの相互間の中間部32cは、第1フロア部材10のサブフランジ部10cと第2フロア部材20のサブフランジ部20cとを重合させた厚みと略同程度(或いはこの厚みよりも微小量だけ短い)長さに設定されると共に、自然の状態(弾性変形しない状態)ではクリップ穴14,24の直径よりも大きな径(スパン)に形成されている。
【0041】
クリップ32を先端から第1クリップ穴14及び第2クリップ穴24に挿通すると、各テーパ面32dがクリップ穴14,24の各縁部に当接して各対向部が圧縮されて、先端の突出部32aが強制的に縮径し、中間部32cがクリップ穴14,24内に挿通しきると拡径し、クリップ32が第1フロア部材10と第2フロア部材20とを係止する。この状態では中間部32cはクリップ穴14,24内に弾性的に圧縮変形した状態で保持される。
【0042】
なお、係止部材としては図4に示すものに限らず、種々のものを適用しうる。例えば、図7(a),(b)はそれぞれ係止部材の第1変形例,第2変形例を示すものである。
図7(a)に示す係止部材は、弾性材(例えば板金又は樹脂)により形成されたクリップ132とクリップ132内に挿入されるクリップ保持部材133とから構成される。クリップ132は、図4に示すクリップ32と略同様に、その先端で結合されて基端に向かって互いに対向するように延びた2片の対向部が弾性変形によって互いに離接しうるように構成されている。クリップ132の基端部には、つば状の突出部132bが、先端部には突出部132aがそれぞれ形成され、突出部132a,132bの相互間には中間部132cが、各対向部の先端部には先端に向けて先細りになったテーパ面132dがそれぞれ形成される。
【0043】
クリップ保持部材133は、例えば鉄等の金属又は樹脂により形成される。このクリップ保持部材133は、軸状の中間部133cの先端部と基端部とに拡径部133a,133bが設けられている。軸状の中間部133cは、クリップ穴14,24に圧接するように開いたクリップ132の中間部132cの径(スパン)よりも小さな径に形成され、先端の拡径部133aは、クリップ穴14,24に圧接するように開いたクリップ132の中間部132cの径(スパン)よりも僅かに大きな径の球形に形成される。基端の拡径部133bは、クリップ穴14,24の内径よりも十分に大きな径に形成される。
【0044】
クリップ132を先端から第1クリップ穴14及び第2クリップ穴24に挿通すると、各テーパ面132dがクリップ穴14,24の各縁部に当接して各対向部が圧縮されて、先端の突出部132aが強制的に縮径する。中間部132cがクリップ穴14,24内に挿通しきると拡径する。
次に、クリップ保持部材133をクリップ132の基端側からクリップ内部(各対向部の間)に挿入すると、先端部133aが中間部132cをタイトに進入して突出部132a内に入り込んで、クリップ132のクリップ穴14,24からの離脱を防止する。
【0045】
図7(b)に示す係止部材は、弾性材(例えば板金又は樹脂)により形成されたクリップ232のみにより構成される。クリップ232は、図4に示すクリップ32と略同様に、その先端で結合されて基端に向かって互いに対向するように延びた2片の対向部が弾性変形によって互いに離接しうるように構成されている。
クリップ232の基端部232bは、外方につば状に突出すると共に2片の対向部を結合するプレート状に形成されている。その他の構成は、クリップ32と同様に、先端部に突出部232aが、基端部232bと突出部232aとの相互間には中間部232cが、各対向部の先端部には先端に向けて先細りになったテーパ面132dが、それぞれ形成される。
【0046】
クリップ232を先端から第1クリップ穴14及び第2クリップ穴24に挿通すると、各テーパ面232dがクリップ穴14,24の縁部に当接して各対向部が圧縮されて、先端の突出部232aが強制的に縮径し、中間部232cがクリップ穴14,24内に挿通しきると拡径し、クリップ232が第1フロア部材10と第2フロア部材20とを係止する。この状態では中間部232cはクリップ穴14,24内に弾性的に圧縮変形した状態で保持される。
【0047】
この構造では、先端部だけでなく基端部232bにおいても2片の対向部が結合されているので、中間部232cは、より強い弾性力によってクリップ穴14,24内に弾性的に圧縮変形した状態で保持される。
なお、上記のクリップ32,132,232は、図4,図7(a),(b)に示す断面形状が断面と直交する方向に一定長さだけ連続した2片の対向部を有する構造であるが、これらのクリップ32,132,232を、図4,図7(a),(b)に示すクリップの断面図の形状を中心軸で回転させた回転体形状のような立体形状としてもよい。また、係止部材は、クリップ32,132,232以外のクリップでもよいし、ボルト及びナットでもよいし、第2クリップ穴24にネジ山を切り、このネジ山にボルトを螺装するものでもよい。
なお、ダッシュパネルクロスメンバ3及びリヤシートクロスメンバ4との結合では、結合レベル(図4中の上下の位置)は変化するが、同様の断面の取付部構造となっている。
【0048】
〔大径穴〕
次に、第2フランジ部22に形成された大径穴24について説明する。
図5に示すように、車両右側の第2フランジ部22の底面には、第2ボルト穴23と大径穴24とが車両前後方向へ等間隔に交互に形成されている。
【0049】
大径穴24は、ボルト30の頭部またはナット31が遊挿される大きさに形成されている。
第1周縁部11の第1フランジ部12に接する大径穴24に遊挿されるナット31と、第2周縁部21の第2フランジ部22に接するボルト穴23を通じたボルト30に螺合されるナット31とが交互に並んでいる。
【0050】
以上、図5に示す第2フランジ部の車両右側に形成された大径穴24について説明したが、車両左側、前側及び後側についても同様にボルト穴23と大径穴24とが形成されている。
【0051】
[作用・効果]
本発明の一実施形態に係る車両用フロア構造は、上述のように構成されるので、以下のような作用および効果を奏する。
【0052】
第1フロア部材10とその下方に配置された第2フロア部材20との間に収納スペース6が形成され、第1フロア部材10及び第2フロア部材10はいずれもフロアパネルとして構成されており、フロアパネルに必要な強度及び剛性を備えているので、実質的なフロアとして使用される第1フロア部材10のみならず収納スペース6の下面として使用される第2フロア部材20も、フロアパネルに必要な強度及び剛性を有している。このため、収納スペース6の収納品を保護し易く、例えば第2フロア部材20をバッテリトレーとして用いてバッテリ40をこの収納スペース6に収納するのに好適である。
【0053】
第1フロア部材10の下方であって第2フロア部材20の上方、すなわち、実質的なフロアの下方の収納スペース6に重量のあるバッテリ40を収納するため、車両の重心を下げることができる。また、第1フロア部材10及び第2フロア部材20は車室内のフロア部を構成する部位に配設されるため、車両の中心に配設されており、車両の動的性能及び安定性の向上に寄与する。
【0054】
また、第1フロア部材10及び第2フロア部材10はフロアパネルとして構成されているため、第1フロア部材10及び第2フロア部材20をともに使用する本構造以外に、第1フロア部材10及び第2フロア部材20の一方のみをフロアパネルとして使用したフロア構造とすることができる。
例えば、図3(b)に示すように、第2フロア部材20のみをフロアパネルとして使用したフロア構造の場合、フロア面を下げることができ、上方に収納スペース6及び第1フロア部材10が無いため、車室内スペースに余裕をもたせることができ、車体のデザイン自由度を確保することができる。また、セダンタイプのように最低地上高をさほど要求されない車両のフロア部材として共用化することができる。
【0055】
さらに、第2フロア部材20の左右方向中央の前後方向に延びた第2凸部29が形成されるため、フロアトンネル部として機能し、プロペラシャフトを有するFRまたは4WDの車両のフロア部材として共用化することができる。排気管を有する内燃機関を備えた車両のフロア部材として共用化することができる。
図3(c)に示すように、第1フロア部材10のみをフロアパネルとして使用したフロア構造の場合には、第1フロア部材10の下方に収納スペース6及び第2フロア部材20が配置されないため、第1フロア部材10を、SUVのように大きい最低地上高が要求される車両のフロア部材として共用化することができる。
【0056】
さらに、第1フロア部材10は、その左右方向中央の前後方向に延びた第1凸部(バックボーン部)19が形成され、第1凸部19の下面の凹所はフロアトンネル部として機能し、プロペラシャフトを有するFRまたは4WDの車両のフロア部材として共用化することができる。排気管を有する内燃機関を備えた車両のフロア部材として共用化することができる。
【0057】
第1フロア部材10及び第2フロア部材20はそれぞれの周縁部11,21を車体側パネル部材1に着脱可能に結合されるため、第2フロア部材20を、第1フロア部材10と共通の締結部材により車体側パネル部材1に着脱可能に結合することにより、例えば、第1フロア部材及び第2フロア部材の対応箇所にそれぞれ形成されたボルト穴13,23を通じてボルト30及びナット31を共締めすることにより、着脱効率を向上させることができる。
【0058】
第2フロア部材20は、バッテリ40のバッテリトレーとして用いられている。また、第1フロア部材10は、フロアパネルであるとともにバッテリカバーとしても用いられている。すなわち、第1フロア部材10,第2フロア部材20及びバッテリシール42はバッテリケースとして構成されている。このため、別途バッテリケースを設ける必要が無く、簡易な構成で車両にバッテリ40を搭載し、重量を抑えることができる。
【0059】
第2フロア部材20の左右方向中央には、第1凸部19に対応して前後方向に延びた第2凸部(バックボーン部)29が形成され、第2凸部29の左右方向に平坦部20aが形成される。これにより、第2凸部29により区画されたバッテリ40を平坦部20aに上載し収納することができる。また、この第2凸部29の下面の凹所も第1凸部19の下面の凹所と同様にフロアトンネル部として機能しうる。
【0060】
第1フロア部材10の第1周縁部11は、平坦部10aから下方に傾斜した段部10bを介して配設された水平な平面であるサブフランジ部10cと、このサブフランジ部10cから上方に傾斜した段部10dを介して配設された水平な平面である第1フランジ部12とを有する。これらはプレス加工により形成される。また、第2フロア部材20の第2周縁部21は、第1周縁部11に対応する形状で、平坦部20aから上方に傾斜した段部20bを介して配設された水平な平面であるサブフランジ部20cと、このサブフランジ部20cから上方に傾斜した段部20dを介して配設された水平な平面である第2フランジ部22とを有する。これらより、第1周縁部11及び第2周縁部は幾重にもプレス加工による曲げ形状が形成されており、断面二次モーメントが大きくなり、第1周縁部11及び第2周縁部の長手方向の曲げ剛性が向上する。
【0061】
ボルト30及びナット31により、第1フランジ部12及び第2フランジ部22は共締めされてサイドシル2に接合されるため、ボルト30及びナット31の締結により、同時に第1フロア部材10及び第2フロア部材20を車体側パネル部材1に接合することができる。これにより、作業工程が簡略化され、作業効率が向上する。また、車体側パネル部材1と第1フロア部材10と第2フロア部材20とが共締めされるため、共締めされる部材の厚みが増し、締結をより確実なものにすることができる。
【0062】
第2フロア部材20の第2フランジ部22には、ボルト30の頭部またはナット31が遊挿される大きさの大径穴24と、ボルト30のボルト軸より大きく、ボルト30の頭部よりも小さく形成された第2ボルト穴23とが形成されるため、大径穴24に遊挿されるボルト30またはナット31により、第1フロア部材10は第2フロア部材20から独立して車体側パネル部材1に接合される。第2ボルト23穴及び大径穴24を通じて第1フロア部材10及び第2フロア部材20が車体側パネル部材1に接合している場合、第1フランジ部11及び第2フランジ部11の対応箇所にそれぞれ形成された第1ボルト穴13及び第2ボルト穴23を通じて共締めしているボルト30及びナット31の締結を緩めると、第2フロア部材20のみが車体側パネル部材1から結合を解かれる。すなわち、第1フロア部材10を車体側パネル部材1から取り外すことなく、第2フロア部材20のみを取り外すことができる。
【0063】
第2フロア部材20にバッテリ40が上載されている場合、第1フロア部材10を車体側パネル部材1から取り外すことなく、第2フロア部材20を取り外すことができるため、バッテリ40の保守作業の効率化を図ることができる。
第2フランジ部22には、第2ボルト穴23と大径穴24とが車両前後方向へ等間隔に交互に形成されているため、第2ボルト穴23が等間隔に形成され、大径穴24が等間隔に形成される。これにより、第1フランジ部10と第2フランジ部20とが均一に共締めされて車体側パネル部材1に接合することができる。第1フランジ部10の車体側パネル部材1への接合を均一にすることができる。
【0064】
係止部材32は、第1クリップ穴14と第2クリップ穴24とを通じて、第1周縁部11のサブフランジ部10cと第2周縁部21のサブフランジ部20cとを直接係止するため、第1フロア部材10及び第2フロア部材20を車体側パネル部材1から取り外した場合であっても、両者の相対的な配置関係は変わらない。また、収納スペース6を保ったまま第1フロア部材10及び第2フロア部材20を取り外すことができる。さらに、第1周縁部11のサブフランジ部10cと第2周縁部21のサブフランジ部20cとの間には全周に亘ってバッテリシール42が介装されるため、収納スペース6にバッテリ40を収納する場合、収納スペース6に対応するバッテリケース内を良好な環境のまま取り外すことができる。
【0065】
万が一、車体側パネル部材1への第2フロア部材20の接合が外れたとしても、第2フロア部材20は第1フロア部材10に係止部材32によって直接係止されるため、脱落を防止することができる。
第1周縁部11と車体側パネル部材1との間には全周に亘って車室シール41が介装されているため、車室内を密閉しすることができる。これにより、車内エアコンの効率を高め、防音効果を高めることができる。
【0066】
第1フロア部材10の第1周縁部11と第2フロア部材20第2周縁部21との間には全周に亘ってバッテリシール42が介装されているため、収納スペース6にバッテリ40を収納する場合、バッテリを良好な環境に保つことができる。
【0067】
〈第2実施形態〉
次に、図面を用いて本発明の第2実施形態について説明する。
[構成]
図8に示すように、車両用フロア構造の右端要部には、上方から順に、サイドシル2と、第1周縁部11の第1フランジ部12とが配置される。
【0068】
第2フロア部材20の第2フランジ部22は、第1フランジ部11の長手方向の幅の長さよりも短く形成される。つまり、第2フランジ部22は、第1フロア部材10とサイドシル2の水平面部2aとを接合するボルト30の頭部またはナット31に工具を係合できる程度に短く形成される。
また、第2フランジ部22にはボルト穴は形成されない。すなわち、サイドシル2と接合するのは第1フロア部材10のみで、第2フロア部材20は後述する係止部材332により第1フロア部材10と接合する。
【0069】
係止部材332は、第1周縁部11のサブフランジ面10cに形成された第1クリップ穴14と、第2周縁部21のサブフランジ面20cに形成された第2クリップ穴24とを通じて、第1周縁部11と第2周縁部21とを直接係止する。
本実施形態の係止部材332は、例えばボルト及びナットで構成され、バッテリ等の重量物を上載した第2フロア部材20を第1フロア部材に接合する。すなわち、係止部材332は第1実施形態の係止部材32と比較して大きな締結力を持ったボルト及びナット等の係止部材が用いられる。
これらの構成以外は、第1実施形態と同様の構成である。
【0070】
[作用・効果]
本発明の第2実施形態に係る車両用フロア構造は、上述のように構成されるので、以下のような作用および効果を奏する。
車体側パネル部材1と接合するのは第1フロア部材10のみで、第2フロア部材20は係止部材332により第1フロア部材10と接合し、係止部材332は、第1周縁部11のサブフランジ面10cに形成された第1クリップ穴14と、第2周縁部21のサブフランジ面20cに形成された第2クリップ穴24とを通じて、第1周縁部11と第2周縁部21とを直接係止するとともに、第2フロア部材20を間接的にサイドシル2へ結合する。このため、係止部材332の係止を解くと、第1フロア部材10を車体側パネル部材1から取り外すことなく、第2フロア部材20だけを取り外すことができる。これにより、バッテリ40の保守作業の効率化を図ることができる。特に、第一実施形態において、第2フロア部材20に大径穴24が形成されない場合と比して、バッテリ40の保守作業の効率化をより図ることができる。
【0071】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0072】
上述の実施形態では、何れも第1フロア部材10及び第2フロア部材20を直接車体側パネル部材1に結合する例を説明したが、これらの間にアダプタ用パネルを介装して結合してもよい。このアダプタ用パネルは、車体側パネル部材のうち結合レベルの変化が大きいダッシュパネルクロスメンバ3及びリヤシートクロスメンバ4との結合にのみ介装してもよい。これらにより、第1フロア部材10又は第2フロア部材20の他の車両との共用化をより効率的にすることができる。
【0073】
また、収納スペース6に電気自動車のバッテリを搭載する例を説明したが、収納するものはバッテリに限らず、燃料電池車の燃料電池であってもよい。また、その他のものを適宜収納してもよい。特に、保守管理を必要とし、重量のあるものの収納に適している。
第2凸部29は、特に設けなくてもよい。第2フロア部材20の中央周辺を平坦に形成して、第2凸部29に相当する部位も平坦部20aとして構成してもよい。これにより、収納スペース6をより確保することができ、収納スペース6に収納する際のレイアウトの制約がより少なくなる。また、プロペラシャフトを有さないFF(フロントエンジン・フロントドライブ方式)やRR(リヤエンジン・リヤドライブ方式)の車両のフロア部材として第2フロア部材20の共用化をより効率的にすることができる。共用化された第2フロア部材は第2凸部29を有さないため、車室内スペースにより余裕をもたせることができる。
【0074】
第2凸部29と同様に、第1凸部19は、特に設けなくてもよい。これにより、車室内スペースにより余裕をもたすことができる。また、FFやRRの車両のフロア部材としても適用でき、第1フロア部材10の共用化をより効率的にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、フロアの下方に収納空間を有するため、特に、フロアパネルの下方にバッテリを搭載する電気自動車に適用できる。
また、フロアパネルとして構成された第1及び第2フロア部材により、フロアパネルの共用化が図れるため、種々の車両に適用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 車体側パネル部材
2 サイドシル
2a 水平面部
2b サイドシルボルト穴
3 ダッシュパネルクロスメンバ
3a 水平面部
4 リヤシートクロスメンバ
4a 水平面部
5 リヤフロア
6 収納スペース(収納空間)
10 第1フロア部材
10a 平坦部
10b 段部
10c サブフランジ部
10d 段部
11 第1周縁部(周縁部)
12 第1フランジ部
13 第1ボルト穴(ボルト穴)
14 第1クリップ穴
19 第1凸部
20 第2フロア部材
20a 平坦部
20b 段部
20c サブフランジ部
20d 段部
21 第2周縁部(周縁部)
22 第2フランジ部
23 第2ボルト穴(ボルト穴)
24 第2クリップ穴
25 大径穴
29 第2凸部
30 ボルト(締結部材)
31 ナット(締結部材)
32 クリップ(係止部材)
32a 突出部
32b 突出部
32c 中間部
32d テーパ面
40 バッテリ
41 車室シール
42 バッテリシール
132 クリップ(係止部材)
232 クリップ(係止部材)
332 ボルト及びナット(係止部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側パネル部材に、周縁部を複数の締結部材により着脱可能に結合され、フロアパネルとして構成された第1フロア部材と、
前記第1フロア部材の下方に前記第1フロア部材との間に収納空間を空けて配置され、前記車体側パネル部材に、周縁部を複数の締結部材により着脱可能に結合され、フロアパネルとして構成された第2フロア部材と、をそなえている
ことを特徴とする、車両用フロア構造。
【請求項2】
前記収納空間は、バッテリを収納する空間であって、
前記第2フロア部材は、前記バッテリを上載されるバッテリトレーとして用いられる
ことを特徴とする、請求項1記載の車両用フロア構造。
【請求項3】
前記第1フロア部材の前記締結部材及び前記第2フロアパネル部材の前記締結部材は、何れもボルト及びナットであって、
前記第1フロア部材の前記周縁部には前記ボルト及びナットの締結により前記車体側パネル部材に接合される第1フランジ部が設けられ、
前記第2フロア部材の前記周縁部には前記ボルト及びナットの締結により前記車体側パネル部材に接合される第2フランジ部が設けられ、
前記ボルト及びナットの少なくとも一部は、前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部の対応箇所にそれぞれ形成されたボルト穴を通じて前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部を共締めされて前記車体側パネル部材に接合する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の車両用フロア構造。
【請求項4】
前記第2フロア部材の前記第2フランジ部には、前記第1フランジ部を前記車体側パネル部材に接合するボルトの頭部又はナットが遊挿される大径穴が形成されている
ことを特徴とする、請求項3記載の車両用フロア構造。
【請求項5】
前記第2フロア部材の前記第2フランジ部には、前記ボルト穴と前記大径穴とが交互に形成されている
ことを特徴とする、請求項4記載の車両用フロア構造。
【請求項6】
前記第1フロア部材と前記第2フロア部材とを直接係止する係止部材をそなえている
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用フロア構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−56395(P2012−56395A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200074(P2010−200074)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】