説明

車両用フード支持構造

【課題】車体前部の設計自由度を増すことが可能な車両用フード支持構造を提供する。
【解決手段】フロントフェンダ11の上部内側部14に、前後方向に延びるとともにフロントフェンダ11の内側に配置されたホイールハウスアッパーメンバー16で支持される段部15が設けられ、この段部15に、フードの側縁部下面にゴムを介して当てられる受け面としての第4壁34が形成されるとともに段部15に沿うように前後方向に延びるフード下ブラケット21,22が取付けられ、これらのフード下ブラケット21,22が、車両前方に向かうにつれて脆弱になるように強度が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フード支持構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用フードに上方あるいは上方斜め前方から衝突物があった場合に、衝突物が受ける衝撃を小さくするために車体側、特に左右のフロントフェンダ側でフードを支持するフード支持構造が提案されている。
【0003】
このような従来の車両用フード支持構造として、フロントフェンダに脆弱部を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−108841公報
【0004】
特許文献1の図3を以下の図10で説明する。なお、符号は振り直した。
図10は従来の車両用フード支持構造を示す断面図であり、フロントフェンダ200は、車幅方向内側に配置された縦壁部201と、この縦壁部201の外側方に配置された外壁部202とを一体に備え、縦壁部201は、上部に、フード203のサイドエッジ部203aを受けるためのブラケット204が取付けられ、下端にフードリッジレインフォース206への取付部207が設けられ、これらのブラケット204と取付部207との間の縦壁部201に脆弱部208が形成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フード203に上方から衝突物があると、フード203に下向きの外力が作用してフード203が下方へ変位する。この外力はブラケット204を介して縦壁部201に伝わり、脆弱部208が潰れる。従って、フロントフェンダ200の全体が変形し、フロントフェンダ200の上端に設けられた稜線部200aの位置が下がる。
【0006】
このように、特許文献1では、フロントフェンダ200を下方へ変形させることで、衝突物が受ける衝撃を緩和する構造であるため、少なくともフロントフェンダ200が下方へ変形する分、即ち脆弱部208の高さ分だけフロントフェンダ200の高さを高く設定しなければならず、フード203の位置もフロントフェンダ200に合わせて高くする必要があり、フロントフェンダ200及びフード203の造形面が高くなって車体前部の設計自由度が少なくなる。
【0007】
本発明の目的は、車体前部の設計自由度を増すことが可能な車両用フード支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、フロントフェンダの上部内側部でフードが支持される車両用フード支持構造において、フロントフェンダの上部内側部に、前後方向に延びるとともにフロントフェンダの内側に配置されたホイールハウスアッパーメンバーで支持される段部が設けられ、この段部に、フードの側縁部下面に当てられる受け面が形成されるとともに段部に沿うように前後方向に延びるフード下ブラケットが取付けられ、このフード下ブラケットが、車両前方に向かうにつれて脆弱になるように強度が設定されていることを特徴とする。
【0009】
フードに上方から衝突物があった場合に、この衝突時の外力によって、まずフード下ブラケットの車両前方側が下方に変形し、更に、フード下ブラケットの下方への変形は車両後方側へ進行する。この結果、フードの変位も車両前方側から次第に車両後方側へ移るから、フードの全体が下方へ変位し、衝突時のエネルギーが吸収される。
従って、エネルギー吸収に必要な上下方向の変形量を小さくすることが可能になり、フード下ブラケットの高さは小さくて済む。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、フロントフェンダの上部内側部に、前後方向に延びるとともにフロントフェンダの内側に配置されたホイールハウスアッパーメンバーで支持される段部が設けられ、この段部に、フードの側縁部下面に当てられる受け面が形成されるとともに段部に沿うように前後方向に延びるフード下ブラケットが取付けられ、このフード下ブラケットが、車両前方に向かうにつれて脆弱になるように強度が設定されているので、フードに上方から衝突物があった場合に、脆弱なフード下ブラケットの車両前方側を先に下方に変形させてからフード下ブラケットの車両後方側を徐々に変形させることができ、これによって、フードの全体を下方へ変位させことで衝突時のエネルギーを吸収することができる。
【0011】
従って、エネルギー吸収に必要なフード下ブラケットの上下方向の変形量を小さくすることができ、フード下ブラケットの高さが小さくて済むので、フロントフェンダ及びフードの造形面の高さを低く抑えることができ、車体前部の設計自由度を増すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るフード支持構造(第1実施形態)を示す車両の要部断面図であり、フロントフェンダ11及びフード12を車幅方向に切断して車両前方から見た図である。図中の矢印(LEFT)は車両左方を示している。
【0013】
フロントフェンダ11は、車幅方向外側に配置されて造形面を形成する外壁部13と、この外壁部13の内縁が折曲げられて形成された上部内側部14とを備え、上部内側部14は、一段低くなった段部15と、外壁部13及び段部15のそれぞれを繋ぐ縦壁15Aとから形成されている。
【0014】
フロントフェンダ11の外壁部13の車幅方向内方にはホイールハウスアッパーメンバー16が配置され、このホイールハウスアッパーメンバー16の上部にフェンダブラケット17が取付けられ、このフェンダブラケット17で段部15が支持されている。
【0015】
段部15は、その内側の縁寄りに衝撃吸収部材としてのフード下ブラケット21,22(符号22のみ図示)が取付けられ、これらのフード下ブラケット21,22にそれぞれゴム23が取付けられ、これらのゴム23がフード12の下面に当てられている。
【0016】
ホイールハウスアッパーメンバー16は、断面コ字形状のメンバー本体25と、このメンバー本体25の開口部を塞ぐために断面コ字形状に形成されたカバー部材26とからなる閉断面形状の部材である。
【0017】
フェンダブラケット17は断面コ字形状の部材であり、開口部が車幅方向内側を向くように配置されている。
フード下ブラケット22は、断面W形状の部材であり、4つの第1壁31〜第4壁34が屈曲部36〜38で屈曲するように一体に連結され、第1壁31がフェンダブラケット17の上面に取付けられ、第4壁34にゴム23が取付けられている。
【0018】
第4壁34は、フード12の側縁部下面、即ち、インナパネル42の下面42bにゴム23を介して当てられる受け面である。
フード下ブラケット21は、フード下ブラケット22と同一構造であり、詳細説明は省略する。
【0019】
フード12は、造形面を形成するアウタパネル41と、このアウタパネル41の内側に取付けられたインナパネル42とからなり、アウタパネル41の側縁はフロントフェンダ11の上端部と連続するように高さが合わせられ、インナパネル42の下面42bがゴム23で支持されている。
【0020】
図2は本発明に係るフード支持構造(第1実施形態)を示す車両の要部斜視図(図中の矢印(FRONT)は車両前方を表している。以下同じ。)であり、フロントフェンダ11の車幅方向内側にホイールハウスアッパーメンバー16が車両前後方向に延びるように配置され、このホイールハウスアッパーメンバー16の上方に位置する車両前後方向に延びる段部15がフロントフェンダ11の上部内側部14に形成され、この段部15に、前後に離されて並べられた2つのフード下ブラケット21,22が取付けられている。
【0021】
フード下ブラケット21,22では、フード下ブラケット22に対して車両前方側のフード下ブラケット21の方が、板厚、材質、寸法、形状を異ならせることで、上下に座屈して潰れるときの強度、即ち座屈強度が低く形成されている、即ち脆弱に形成されている。なお、45はホイールハウスアッパーメンバー16の内側面に連結されたバルクヘッドアッパーである。
【0022】
以上に述べたフード支持構造の作用を次に説明する。
図3(a),(b)は本発明に係るフード支持構造(第1実施形態)の作用を示す作用図である。
(a)はフード12に衝突物が衝突する前のフード下ブラケット21,22を示している。フード12は左半分のみが図示されている。
【0023】
(b)において、フード12の前部に衝突物があり、矢印Aで示すように、フード12の前部に外力が作用すると、外力がフード12からフード下ブラケット21,22に伝わり、フード下ブラケット21,22が共に変形する。
【0024】
このとき、フード下ブラケット21の方のフード下ブラケット22よりも大きく変形し、衝突エネルギーを吸収する。
フード12は、前部が大きく下方に変位し、後部側を支点にして矢印Bで示すように回動するように変位する。
【0025】
フード12が下方に変位するにつて、フード下ブラケット22も次第に下方へ変形するようになり、フード12の全体が下方に変位するようになる。この結果、フード下ブラケット21,22の両方で衝突時の衝撃を吸収するようになる。
【0026】
仮に、フード下ブラケット21,22の座屈強度を同一にし、且つ両方共低座屈強度とした場合には、フード12に作用した外力によってフード下ブラケット21,22が両方とも衝突の初期に潰れきり、却って大きな反力が発生して、衝突物が大きな衝撃力を受ける。
【0027】
また仮に、フード下ブラケット21,22の座屈強度を同一にし、且つ両方共高座屈強度とした場合には、フード12に作用した外力によってフード下ブラケット21,22が両方とも潰れにくくなり、やはり衝突物が大きな衝撃力を受ける。
【0028】
これに対して、本発明では、車両前方側のフード下ブラケット21を車両後方側のフード下ブラケット22よりも低座屈強度とすることにより、フード12に衝突時の外力が作用したときに、フード下ブラケット21を先に変形させてフード12の前部を下方に変位させ、これに続いてフード下ブラケット22を変形させてフード12の後部をも下方に変位させて、フード12の全体を下方に変位させることで、衝突時に大きなエネルギー吸収を効果的に行うことができる。
【0029】
従って、エネルギー吸収に必要なフード下ブラケット21,22の上下方向の変形量を小さくすることができる。即ち、フード下ブラケット21,22の高さを小さくすることができる。
【0030】
図4(a)〜(d)は本発明に係るフード下ブラケットの別実施形態を示す斜視図(第2実施形態)である。図1に示した実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
(a)に示すフード下ブラケット50は、第1壁31、第2壁52、第3壁53及び第4壁34からなる断面W形状の部材であり、屈曲部55上に上下方向の座屈強度調整用の長穴56(長軸長さL1)が開けられている。
【0031】
(b)に示すフード下ブラケット60は、第1壁61、第2壁62、第3壁63及び第4壁64からなる断面W形状の部材であり、屈曲部66〜68上にそれぞれ上下方向の座屈強度調整用の長穴56が開けられている。
【0032】
(c)に示すフード下ブラケット70は、第1壁31、第2壁72、第3壁73及び第4壁34からなる断面W形状の部材であり、屈曲部75上に上下方向の座屈強度調整用の長穴76,76(それぞれの長軸長さL2)が開けられている。
【0033】
(d)に示すフード下ブラケット80は、第1壁81、第2壁82、第3壁83及び第4壁84からなる断面W形状の部材であり、屈曲部86〜88上にそれぞれ上下方向の座屈強度調整用の長穴76,76(それぞれの長軸長さL2)が開けられている。
【0034】
以上の(a)〜(d)に示した長穴56,76の長軸長さL1,L2及び個数は、主に座屈変形初期の剛性を調整する因子であり、長軸長さL1,L2が大きく、個数が多ければ、座屈変形初期に発生する荷重は小さくなり、長軸長さL1,L2が小さく、個数が少なければ、座屈変形初期に発生する荷重は大きくなる。
【0035】
従って、上記したフード下ブラケット50〜80を組み合わせる、あるいは、長穴56,76の長軸長さ、個数を変更することで、車両前方側のフード下ブラケットを車両後方側のフード下ブラケットよりも低座屈強度として脆弱とすることができる。
【0036】
図5(a),(b)は本発明に係るフード下ブラケットの別実施形態を示す斜視図(第3実施形態)である。図1に示した実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
(a)に示すフード下ブラケット90は、第2壁92と第3壁93との間に設けられた屈曲部97の屈曲角度をθ1とした断面W形状の部材である。屈曲角度θ1は、例えば、180°に近い角度である。
【0037】
(b)に示すフード下ブラケット100は、第2壁102と第3壁103との間に設けられた屈曲部107の屈曲角度をθ2とした断面W形状の部材である。屈曲角度θ2は(a)に示した屈曲角度θ1よりも小さく、例えば、90°に近い角度である。
【0038】
以上の(a),(b)に示した屈曲角度θ1,θ2は、主に座屈変形後期の剛性の低下量を調整する因子であり、屈曲角度θ1のように屈曲角度が大きければ、座屈変形後期のの荷重の減少量が大きくなり、屈曲角度θ2のように屈曲角度が小さければ、座屈変形後期のの荷重の減少量は小さくなる。
【0039】
図6は本発明に係るフード下ブラケットの荷重とストロークとの関係を示すグラフであり、フード下ブラケットを強制的に上下方向に変形させたときのストローク量(変形量)と、そのときに発生する荷重との関係を示している。
実施例1(実線)の試料は、図4(a)に示されたフード下ブラケット50の屈曲部55の屈曲角度を図5(b)に示したθ2としたものであり、剛性が低く(低座屈強度)、ストローク量が大きくなっても荷重が低下しにくい。
【0040】
実施例2(一点鎖線)の試料は、図4(c)に示されたフード下ブラケット70の屈曲部75の屈曲角度をθ1としたものであり、実施例1よりは剛性が高く(中座屈強度)、ストローク量が大きくなると、荷重が大きく低下する。
上記した実施例1を車両前方側、実施例2を車両後方側というように組み合わせてもよい。
【0041】
比較例1(破線)の試料は、屈曲部に長穴が形成されておらず、屈曲角度はθ1よりも大きい断面W形状のものであり、実施例2よりは剛性が更に高くなるが、ストローク量が小さいうちから荷重が急激に低下する。
【0042】
以上の実施例1、実施例2に示したのと同様に、図4(a)〜(d)に示したフード下ブラケット50,60,70,80と図5に示したフード下ブラケット90,100と適宜を組み合わせることで、衝突時により適するエネルギー吸収特性を設定することができる。
【0043】
図7は本発明に係るフード支持構造を示す斜視図(第4実施形態)であり、図2に示した第1実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
フロントフェンダ11の上部内側部14に設けられた段部15に車両前後方向に延びる長尺のフード下ブラケット110が取付けられている。
【0044】
フード下ブラケット110は、車両前方に向かうにつれて上下方向の座屈強度が小さくなる、即ち脆弱になるように設定されている。なお、115はホイールハウスアッパーメンバー16と段部15との間に設けられた車両前後方向に延びるフェンダーブラケットである。
【0045】
例えば、フード下ブラケット110の上部全体にゴム(不図示)を取付け、このゴムをフード12(図1参照)の下面に当てることで、フロントフェンダ11(図1参照)とフード12との隙間を塞ぐことができ、エンジンルーム内の音を外部に伝わりにくくすることができ、遮音性を向上させることができる。
【0046】
図8(a),(b)は本発明に係るフード下ブラケットの別実施形態を示す斜視図(第5実施形態、第6実施形態)である。
(a)の第5実施形態において、フード下ブラケット110は、断面W形状の部材であり、4つの第1壁111〜第4壁114が屈曲部116〜118で屈曲するように一体に形成され、屈曲部117上に車両前方から車両後方へ順に3つの長穴121〜123が並ぶように開けられている。
長穴121〜123のそれぞれの長軸長さをL3〜L5とすると、L3>L4>L5の関係にある。
【0047】
フード下ブラケット110を、車両前後方向に3つの部分、即ち、前から順に前部ブラケット125、中間部ブラケット126、後部ブラケット127というように図中の二点鎖線で長手方向に長さを3等分したときに、前部ブラケット125に長穴121が設けられ、中間部ブラケット126に長穴122が設けられ、後部ブラケット127に長穴123が設けられている。
このような構造とすることで、フード下ブラケット110が、後部ブラケット127から前部ブラケット125に向かうにつれて上下方向の座屈強度が順に小さくなる。
【0048】
(b)に示す第6実施形態のフード下ブラケット130は、断面W形状の部材であり、4つの第1壁111、第2壁132、第3壁133、第4壁114が屈曲部116,137,118で屈曲するように一体に形成され、屈曲部137上に複数の長穴141が開けられている。長穴141の長軸長さはL6である。
【0049】
フード下ブラケット130を、車両前後方向に3つの部分、即ち、前から順に前部ブラケット145、中間部ブラケット146、後部ブラケット147というように図中の二点鎖線で長手方向に長さを3等分したときに、前部ブラケット145には長穴111が3箇所設けられ、中間部ブラケット146には長穴141が2箇所設けられ、後部ブラケット147には長穴141が1箇所設けられている。即ち、前部ブラケット145と中間部ブラケット146とでは隣り合う長穴141,141間のピッチが前部ブラケット145の方が狭い。
このような構造とすることで、フード下ブラケット130が、後部ブラケット147から前部ブラケット145に向かうにつれて上下方向の座屈強度が順に小さくなる。
【0050】
図9は本発明に係るフード支持構造を示す斜視図(第7実施形態)であり、フロントフェンダ11の上部内側部14に設けられた段部15にフード下ブラケット110が取付けられ、バルクヘッドアッパー45の上部に、フード12(図1参照)の下面に当てられる受け面を有する衝撃吸収部材としてのフード下ブラケット151,152が取付けられている。
【0051】
フード下ブラケット151は、バルクヘッドアッパー45の上面に取付けられた底壁154、この底壁154から順に折曲げ形成された前部下部壁155、前部上部壁156及び上壁157からなる後方に開口を有する一体成形品であり、上壁157がゴム(不図示)を介してフード12の下面に当てられる。
【0052】
フード下ブラケット152は、バルクヘッドアッパー45の上面に取付けられた底壁161、この底壁161から順に折曲げ形成された前部下部壁162、前部上部壁163及び上壁164からなる後方に開口を有する一体成形品であり、上壁164がゴム(不図示)を介してフード12の下面に当てられる。
【0053】
以上の図1、図2に示したように、フロントフェンダ11の上部内側部14でフード12が支持される車両用フード支持構造において、フロントフェンダ11の上部内側部14に、前後方向に延びるとともにフロントフェンダ11の内側に配置されたホイールハウスアッパーメンバー16で支持される段部15が設けられ、この段部15に、フード12の側縁部下面42bに当てられる受け面としての第4壁34が形成されるとともに段部15に沿うように前後方向に延びるフード下ブラケット21,22が取付けられ、これらのフード下ブラケット21,22が、車両前方に向かうにつれて脆弱になるように強度が設定されているので、フード12に上方から衝突物があった場合に、脆弱なフード下ブラケットの車両前方側、即ちフード下ブラケット21を先に下方に変形させてからフード下ブラケットの車両後方側、即ちフード下ブラケット22を徐々に変形させることができ、これによって、フード12の全体を下方へ変位させことで衝突時のエネルギーを吸収することができる。
【0054】
従って、エネルギー吸収に必要なフード下ブラケット21,22の上下方向の変形量を小さくすることができ、フード下ブラケット21,22の高さが小さくて済むので、フロントフェンダ11及びフード12の造形面の高さを低く抑えることができ、車体前部の設計自由度を増すことができる。
【0055】
尚、本実施形態では、図2に示したように、車両前方側が脆弱となるようにフード下ブラケット21,22を2個前後方向に並べて配置したが、特に2個には限らず、車両前方側が脆弱となるようにフード下ブラケットを前後方向に複数並べて配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のフード支持構造は、自動車に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るフード支持構造(第1実施形態)を示す車両の要部断面図である。
【図2】本発明に係るフード支持構造(第1実施形態)を示す車両の要部斜視図である。
【図3】本発明に係るフード支持構造(第1実施形態)の作用を示す作用図である。
【図4】本発明に係るフード下ブラケットの別実施形態を示す斜視図(第2実施形態)である。
【図5】本発明に係るフード下ブラケットの別実施形態を示す斜視図(第3実施形態)である。
【図6】本発明に係るフード下ブラケットの荷重とストロークとの関係を示すグラフである。
【図7】本発明に係るフード支持構造を示す斜視図(第4実施形態)である。
【図8】本発明に係るフード下ブラケットの別実施形態を示す斜視図(第5実施形態、第6実施形態)である。
【図9】本発明に係るフード支持構造を示す斜視図(第7実施形態)である。
【図10】従来の車両用フード支持構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
11…フロントフェンダ、12…フード、14…上部内側部、15…段部、16…ホイールハウスアッパーメンバー、21,22,50,60,70,80,90,100,110,130…フード下ブラケット、34,64,84,114…受け面(第4壁)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントフェンダの上部内側部でフードが支持される車両用フード支持構造において、
前記フロントフェンダの上部内側部に、前後方向に延びるとともに前記フロントフェンダの内側に配置されたホイールハウスアッパーメンバーで支持される段部が設けられ、この段部に、前記フードの側縁部下面に当てられる受け面が形成されるとともに前記段部に沿うように前後方向に延びるフード下ブラケットが取付けられ、このフード下ブラケットが、車両前方に向かうにつれて脆弱になるように強度が設定されていることを特徴とする車両用フード支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−269448(P2009−269448A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121223(P2008−121223)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】