説明

車両用フード構造

【課題】ストライカの取付部分の剛性を確保しつつ、衝撃時のエネルギー吸収性能を向上させる。
【解決手段】フードインナパネル24の前部の車両下方側には、ロックリインフォースメント30が配設されている。ロックリインフォースメント30は、車両前方側に配置される厚板部材32と、厚板部材32よりも車両後方側に配置され、厚板部材32よりも厚みの薄い薄板部材34とが接合されて構成されている。厚板部材32には、開口32Kが形成されており、ストライカ50が取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、フードフレームの車両前端下面にリインフォースメントが固定され、リインフォースメントへ車体側にロックされるストライカが取り付けられた車両用フード構造が開示されている。リインフォースメントにより、フードのロック部分、特にストライカの取付部分が補強されている。
【0003】
一方、特許文献1において、歩行者衝突時にエネルギー吸収性能を向上させるためには、リインフォースメントの変形が必要とされる。そこで、ストライカの取付部分の剛性確保と、フードに作用した衝撃をより効果的に吸収できるようにすること、を両立させるための技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−212154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、ストライカの取付部分の剛性を確保しつつ、衝撃時のエネルギー吸収性能を向上させることの可能な車両用フード構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明の車両用フード構造は、車体のフードの外板を成すフードアウタパネルと、前記フードの一部を構成し前記フードアウタパネルよりも車両内側に配置されるフードインナパネルと、前記フードインナパネルの前端部の下方側に設けられ、前記フードを前記車体にロックするためのストライカが取り付けられた厚板部材、及び、該厚板部材と接合部で接合されて該厚板部材よりも車両後方側に配置され厚みが前記厚板部材よりも薄い薄板部材、を有するロックリインフォースメントと、を備えている。
【0007】
上記の車両用フード構造では、フードインナパネルの前端部の下方側にロックリインフォースメントが設けられている。ロックリインフォースメントは、厚板部材と厚板部材よりも厚みの薄い薄板部材とを有し、厚板部材と薄板部材とは接合部で接合され、薄板部材は厚板部材よりも車両後方側に配置されている。
【0008】
上記構成によれば、フードを車体にロックするためのストライカは、厚板部材に取り付けられているので、ストライカの取付部分における剛性を高めることができる。一方、薄板部材は、厚みが厚板部材よりも薄いので、衝突体が衝突した時に、特に接合部付近で変形しやすく、エネルギー吸収性能を向上させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明の車両用フード構造は、前記接合部が、車両前後方向において、前記薄板部材に最も近い車体側部材と前記ストライカとの間に配置されていること、を特徴とする。
【0010】
ここで、車体側部材とは、車体に固定された部材をいい、車種によって異なるが、例えば、インテークダクトなどが挙げられる。衝突体がフードに衝突した時、ロックリインフォースメントの主な支点となる位置は、ストライカの取付位置、及び、ロックリインフォースメントが車体側部材に当たる位置である。したがって、衝突体からの衝突荷重入力の時に、ロックリインフォースメントに作用するモーメントは、2つの支点(ストライカの取付位置と車体側部材)の間で大きくなる。一方、ロックリインフォースメントは、接合部の薄板部材側の端部において剛性が変化しており、薄板部材側で弱くなっていることから、接合部付近に応力が集中する。そこで、接合部を、ストライカの取付位置と車体側部材の間に配置することにより、効果的にロックリインフォースメントを変形させて、衝撃の吸収を行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明の車両用フード構造は、前記接合部の前記薄板部材側の端部が、車両前後方向において、前記ストライカの中心位置と前記車体側部材との間の中間部に配置されていること、を特徴とする。
【0012】
ロックリインフォースメントとフードインナパネルとの車両後方側の連結部分が、車両側部材の前端部よりも後方に配置されている場合、衝突体からロックリインフォースメントへの荷重入力の際、ロックリインフォースメントに作用するモーメントの最大位置は、2つの支点の間の略中間位置(ストライカの中心位置及び車体側部材から等距離の位置)になる。一方、前述のように、ロックリインフォースメントは、接合部の薄板部材側の端部において剛性が変化しており、薄板部材側で弱くなっていることから、接合部の薄板部材側の端部に応力が集中する。そこで、この応力集中部分に、前述のモーメント最大位置を配置することにより、効果的にロックリインフォースメントを変形させて、衝撃の吸収を行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明の車両用フード構造は、前記薄板部材には、前記接合部に隣接して前記接合部よりも車両後方側に、車両左右方向に沿って屈曲した弱体部が形成されている。
【0014】
前述のように、接合部の薄板部材側は、剛性が変化して弱くなる部分であり、応力が集中する。そこで、接合部に隣接して薄板部材の接合部よりも車両後方側に、車両左右方向に沿って屈曲した弱体部を形成する。このように、弱体部を形成することにより、弱体部を基点としてロックリインフォースメントの変形が生じやすくなり、効果的に衝撃の吸収を行うことができる。
【0015】
請求項5に記載の発明の車両用フード構造は、前記フードインナパネルには、車両前後方向に延びる複数のビードが車両幅方向に並列的に設けられ、かつ、少なくとも1つの前記ビードの前端部が前記ロックリインフォースメントの後端部より車両前方側に位置するように配置されていること、を特徴とする。
【0016】
上記のように、フードインナパネルにビードが設けられている場合には、衝突体のフードへの衝突時に、フードインナパネルの撓み範囲を拡大することができる。そのため、慣性マスが増え、応力伝播範囲が広がり、エネルギー吸収性能が高まる。一方、ビードによりフードインナパネルの剛性が高くなる。そこで、このようなビードを有するフードインナパネルを用いる場合に、厚板部材と薄板部材とを接合した前述の衝突体が衝突した時に変形しやすいロックリインフォースメントを用いることにより、エネルギー吸収性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記構成としたので、ストライカの取付部分の剛性を確保しつつ、衝撃時のエネルギー吸収性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態のフード構造が適用された車両の前部を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の車両用フード構造をフードインナパネルの車両上方側から見た斜視図である。
【図3】図2中の3−3線に沿った車両用フード構造の縦断面図である。
【図4】本実施形態のロックリインフォースメントの分解斜視図である。
【図5】本実施形態のロックリインフォースメントの接合部付近の縦断面図である。
【図6】本実施形態のフードロック機構の一部断面図である。
【図7】本実施形態の車両用フード構造のフードに衝突体が衝突した際のロックリインフォースメントへの衝突荷重の入力、支点の位置を示す説明図である。
【図8】本実施形態の車両用フード構造のフードに衝突体が衝突した際のロックリインフォースメントへの衝突荷重の入力、支点の位置と、ロックリインフォースメントへ作用するモーメントの関係を示す模式図である。
【図9】本実施形態及び比較例において、衝突体が衝突したときの加速度とストロークとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて、本実施形態に係る車両用フード構造について説明する。なお、図中において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0020】
図1には、本実施形態に係る車両用フード構造が適用された車両の前部が示されている。また、図2には、本実施形態に係る車両用フード構造の構成がフードインナパネルの車両上方側から見た状態で示されている。また、図3には、車両用フード構造のロックリインフォースメンと付近の構成が縦断面図にて示されている。
【0021】
図1に示されるように、自動車(車両)10の車両本体の前部には、エンジンルームの上方を覆うようにフード12が設けられている。フード12は、車両前後方向の後端部に設けられた左右一対のヒンジアーム(図示省略)により、車両本体に対して前端部12Aが車両上下方向に開閉可能とされている。自動車10の車両本体のフード12の前端部12Aにおける車両幅方向中央部には、フードロック機構14が配設されている。
【0022】
図2及び図3に示されるように、フード12には、本実施形態の車両用フード構造20が適用されている。フード12は、車両上方側(車両外側)に車両幅方向及び車両前後方向に沿って配置されるフードアウタパネル22と、このフードアウタパネル22の車両下方側で車両幅方向及び車両前後方向に沿って配置されるフードインナパネル24と、を備えている。なお、図2では、本実施形態の車両用フード構造を分りやすくするために、フードアウタパネル22を二点鎖線で図示している。
【0023】
フードアウタパネル22は、車両上方に向かって凸になるように緩やか湾曲する形状とされており、車体の外面(外観形状)の一部を成している。これに対し、フードインナパネル24は、フードアウタパネル22よりも車体内側(下側)に配設されており、フードインナパネル24の周縁部24Aとフードアウタパネル22の周縁部22Aとがヘミング加工により一体化されることで閉断面構造に形成されている(図3参照)。
【0024】
フードインナパネル24の車両前方部分は、車両内側(下側)に向かって凸となるように屈曲されており、フードアウタパネル22との間に、前方中空部12Rが形成されている。すなわち、フードインナパネル24は、車両前方側から車両後方側へと、フードアウタパネル22から漸遠する漸遠部24B、漸遠部24Bの後端から連続してフードアウタパネル22に漸近する漸近部24C、及び、漸近部24Cの後端から連続しフードアウタパネル22に対し略一定の距離で離間して配置される離間部24Dが形成されている。主として漸遠部24Bと漸近部24Cによって、フードアウタパネル22との間に前方中空部12Rが形成されている。
【0025】
図2に示されるように、フードインナパネル24の周縁部24Aの内側付近を除いた中央部領域には、車両前後方向に延びるビードとしての複数の波形形状部40が車両幅方向に並列的に形成されている。複数の波形形状部40は、車両正面視にて車両上方側に屈曲する凸状部40Aと車両下方側に屈曲する凹状部40Bとが車両幅方向に交互に配置されている。
【0026】
図2、図3に示されるように、フードインナパネル24の前部の車両下方側には、ロックリインフォースメント30が配設されている。ロックリインフォースメント30は、車両前方側に配置される厚板部材32と、厚板部材32よりも車両後方側に配置される薄板部材34とが接合されて構成されている。
【0027】
図3及び図4に示されるように、厚板部材32は、車両前方側のベース部32Aと、車両後方側の立上部32Bを有している。ベース部32Aは、前端部がフードインナパネル24に固定されると共に、後方に向かって板面がフードインナパネル24から漸遠するように配置されている。ベース部32Aには、開口32Kが形成されており、後述するストライカ50が取り付けられる。立上部32Bは、ベース部32Aの後端部が車両後方斜め上方へ向かってフードインナパネル24に近づくように屈曲形成されている。厚板部材32は、後述するストライカ50が取り付けられるため、剛性を確保すべく比較的厚みの厚い板で形成されている。
【0028】
薄板部材34は、前壁部34A、弱体部34B、中間壁部34C、及び、後端部34Dを有している。薄板部材34は、厚板部材32よりも厚みの薄い板で形成されている。前壁部34Aは、後方へ向かってフードインナパネル24へ近づくように延出されている。図4に示されるように、前壁部34Aには、車両前後方向に延びてフード12に向かって凸になる複数のリブ34ARが車両幅方向に並列的に形成されている。複数のリブ34ARの間には、凹部34AHが形成されている。前壁部34Aは、立上部32Bの車両前側に配置され、凹部34AHの背面と立上部32Bの前面とが溶接されて、厚板部材32と薄板部材34が接合されている。
【0029】
弱体部34Bは、前壁部34Aがフードインナパネル24から遠ざかるように第1屈曲部34B1で屈曲して延出し、さらに延出先(フードインナパネル24からさらに遠い位置)の第2屈曲部34B2でフードインナパネル24に近づくように車両斜め上後方へ屈曲することで形成されている。弱体部34Bには、衝突体90がフード12に衝突した際に応力が集中し、第1屈曲部34B1及び第2屈曲部B2がロックリインフォースメント30の曲げ変形の起点となる。
【0030】
中間壁部34Cは、弱体部34Bの後端から連続して形成され、車両後方斜め上方へ向かってフードインナパネル24へ近づくように延出されている。中間壁部34Cには、フードインナパネル24から遠ざかるように屈曲された第3屈曲部34C3、及び、第3屈曲部34C3よりも車両後方でフードインナパネル24に近づくように屈曲された第4屈曲部34C4が形成されている。
【0031】
後端部34Dは、中間壁部34Cの後端から連続形成され、上面がフードインナパネル24と接合されている。フードインナパネル24とロックリインフォースメント30の間には、中空部30Rが形成されている。
【0032】
図5に示されるように、厚板部材32と薄板部材34とは、立上部32Bの上面に前壁部34Aがスポット溶接(点接合)されて接合されている。厚板部材32と薄板部材34とが重なり合う部分を以下「接合部36」という。ロックリインフォースメント30の接合部36における厚みは、厚板部材32の厚みと薄板部材34の厚みを合わせたものとなる。ロックリインフォースメント30の剛性は、接合部36で最も高く、接合部36の薄板部材34側の端部に形成される境界部分(以下、「接合境界部36A」という)で、剛性は急激に変化して薄板部材34側で弱くなっている。
【0033】
ここで、厚板部材32のプレスバラツキ(1mm程度)、薄板部材34のプレスバラツキ(1mm程度)、及び、厚板部材32と薄板部材34とを組み付ける時の組み付け誤差(1mm程度)を考慮すると、接合境界部36Aと第1屈曲部34B1の間の距離Lは、最低3mm程度に設定することが適当と考えられる。一方、応力集中は、強度剛性が変化する箇所に発生するため、弱体部34Bは接合境界部36Aに近い位置に形成する方が衝撃吸収のための変形に効果的である。そこで、効果的に衝撃を吸収するため、接合境界部36Aと第1屈曲部34B1との距離Lは、3mm以下とすることが好ましい。
【0034】
また、フード12の内側でフード12の開放時にユーザーの目に触れる部分(準外板)については、見栄えの向上が要求されるが、接合部36と中間壁部34Cとが面一に近い状態であれば、準外板の見栄え向上に寄与することができる。そこで、厚板部材32のプレスバラツキ(1mm程度)を考慮して、薄板部材34の第2屈曲部34B2から第3屈曲部34C3に架けての下側面と、厚板部材32の立上部32Bの下側面との段差Dは、1mm以下であることが好ましい。
【0035】
ロックリインフォースメント30の前端縁及び側端縁は、略平面状とされており、フードインナパネル24の漸遠部24Bと面接触状態で配置され、ボルト28とナット26により複数箇所で締結固定されている(図3参照)。フードインナパネル24の該当位置の上面(フード12の内部)には、予めナット26が溶接により固着されており、ロックリインフォースメント30の車両内側(車両下方側)からボルト28を差し込んでナット26に螺合させることで、フードインナパネル24の車両内側にロックリインフォースメント30が取り付けられている。
【0036】
図3、図4、及び図6に示されるように、ロックリインフォースメント30のベース部32Aには、フードロック機構14の一部を構成するストライカ50が取り付けられている。ストライカ50は、中間部50Bと上端固定部50Aを有している。中間部50Bは、車両側断面形状が車両上方に開放された略「U」字状となっている。上端固定部50Aは、両先端部が各々車幅方向に屈曲して形成されている。ストライカベース52は、略四角板形状とされ、上端固定部50Aを収納する凹部52Aが形成されている。上端固定部50Aは、上側がストライカベース52の凹部52Aに収納され(図6参照)、該位置に溶接されている。ストライカ50の中間部50Bは、ロックリインフォースメント30の上側から開口32Kを介して車両本体側(下側)へ垂下されている。ストライカベース52は、厚板部材32の上面側に配置されている。厚板部材32とストライカベース52とは、ボルト54及びナット56により、締結固定されている。ストライカ50は、フードロック機構14の車両本体側のラッチ部(不図示)に係止されることで、フード12を車両本体側に閉止した状態とする。ロックリインフォースメント30は、ストライカ50を固定するために強度が必要であり、フードインナパネル24よりも板厚の厚い部材で形成されている。
【0037】
図3に示されるように、フード12の内側には、車体側部材としてのインテークダクト60が配置されている。インテークダクト60の先端は、ロックリインフォースメント30の中間壁部34Cの第3屈曲部34C3と第4屈曲部34C4の間に接近しており、車体に固定された部材として、最もロックリインフォースメント30に近い位置に配置されている。衝突体90がフード12に衝突した際に、インテークダクト60がロックリインフォースメント30と干渉し合って、ロックリインフォースメント30の変形を阻害する。
【0038】
ここで、図7に示されるように、ストライカ50の車両前後方向の中間を中央位置50M、インテークダクト60の車両前後方向前端を前端位置60Aとすると、衝突荷重Fは、フードインナパネル24と薄板部材34との接合部分(後端部34D)からロックリインフォースメント30へ作用する。そして、ロックリインフォースメント30に対して、中央位置50Mと前端位置60Aとを支点としてモーメントMが作用する。この場合の模式図が、図8に示されている。ここで、中央位置50Mと前端位置60Aとの間の距離を距離Xとすると、中央位置50MとモーメントMの最大位置との間の距離Yは、(式1)で示され、モーメントMの最大位置は、おおよそ、中央位置50Mと前端位置60Aとの中間位置Oとなる。
【0039】
Y ≒ X/√3 (式1)
【0040】
そこで、厚板部材32と薄板部材34との接合境界部36Aは、中央位置50Mと前端位置60Aの間の中間部37に配置することが好ましい。ここでの中間部37は、中間位置Oから距離Xの10%の範囲内をいう。
【0041】
図2及び図3に示されるように、フードインナパネル24の車両前後方向に延びる複数の波形形状部40の前端部40Cは、ロックリインフォースメント30の後端部30Bより車両前方側に位置している。すなわち、図2に示されるように、複数の波形形状部40の車両前後方向の長さAは、ロックリインフォースメント30の後端部30Bから複数の波形形状部40の後端部40Dまでの長さBよりも長く形成されている。フードインナパネル24の複数の波形形状部40は、フード12の車両上方側から衝突体90(図7参照)が衝突したときに、車両下方側に撓み変形が可能となっている。その際、複数の波形形状部40の前端部40Cを、ロックリインフォースメント30後端部30Bより車両前方側に延在させることで、フードインナパネル24の広い範囲に応力を伝播することが可能となっている。
【0042】
また、フードインナパネル24における複数の波形形状部40の車両幅方向両側には、車両前後方向に延びるビード42が形成されている。ビード42は、複数の波形形状部40の車両前後方向の長さAよりも短く形成されており、ロックリインフォースメント30の後端部30Bより車両後方側に配置されている。また、ビード42は、車両後方外側に向けて車両内側の波形形状部40との間隔が開くように配置されている。
【0043】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0044】
本実施形態では、ロックリインフォースメント30が、厚みの異なる厚板部材32と薄板部材34とで形成されている。厚みの厚い厚板部材32にストライカ50を取り付けることにより、ストライカ50の取付部分の剛性を確保することができる。
【0045】
一方、図7に示されるように、本実施形態のフード12の外側(上方)から、フード12に衝突体90が衝突すると、フードインナパネル24と薄板部材34との接合部分(後端部34D)からロックリインフォースメント30へ衝突荷重Fが入力する。薄板部材34は、厚板部材32よりも厚みが薄いので、容易に変形させて衝撃を吸収することができ、エネルギー吸収性能を高めることができる。
【0046】
また、本実施形態では、応力が集中する接合境界部36Aが、ストライカ50とインテークダクト60の前端位置60Aの間に配置されているので、接合境界部36A付近を起点として効果的にロックリインフォースメント30を変形させることができる。
【0047】
また、本実施形態では、接合境界部36Aに隣接させて薄板部材34側に弱体部34Bを形成しているので、弱体部34Bを起点としてロックリインフォースメント30の変形が生じやすくなり、より効果的に衝撃の吸収を行うことができる。
【0048】
なお、本実施形態では、弱体部34Bを設けたが、弱体部34Bは必ずしも必要ではなく、前壁部34Aから屈曲することなく面一で中間部34Cに至る構成にしてもよい。特に弱体部34Bを設けることにより、衝突荷重の入力時に弱体部34Bを起点としてスムーズにロックリインフォースメント30が変形し、より効果的に衝撃を吸収することができる。
【0049】
また、本実施形態では、薄板部材34を屈曲させることにより弱体部を形成したが、弱体部として、切り込みを形成したり、開口を形成したりする構成により剛性を低くしてもよい。特に、本実施形態のように、弱体部を薄板部材34を屈曲させることにより形成することにより、準外板の見栄えの向上に寄与することができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、接合境界部36Aが車両前後方向でモーメントMの最大位置に近い範囲内である中間部37に配置されているので、ロックリインフォースメント30の変形が生じやすくなり、より効果的に衝撃の吸収を行うことができる。
【0051】
また、本実施形態では、フードインナパネル24に形成された複数の補強ビード42の前端部がロックリインフォースメント30の後端部より車両前方側に位置するように配置されているので、フードインナパネル24の撓む範囲が拡大する。そのため、慣性マスが増え、慣性力が増加することで、フードインナパネル24の応力伝播範囲が広がり、エネルギー吸収性能を高めることができる。また、当該構成を採用し場合、フード12の剛性が高くなることから、前述のようにロックリインフォースメント30を容易に変形させることのできる構成を併せて採用することにより、より効果的にエネルギー吸収性能を高めることができる。
【0052】
図9には、本実施形態及び比較例(ロックリインフォースメントの板厚が一定)の構成において、衝突体90が衝突した場合のロックリインフォースメント30の変形ストロークと、フードインナパネル24の変形部分の加速度との関係が示されている。このグラフから分かるように、本実施形態のフードインナパネル24では、比較例のフードインナパネルよりも、全般的に加速度が小さくなっていることが分かる。頭部傷害値(HIC)については、本実施形態の構成では、対比較例で50%低減されている。
【符号の説明】
【0053】
12 フード
20 車両用フード構造
22 フードアウタパネル
24 フードインナパネル
30 ロックリインフォースメント
32 厚板部材
34 薄板部材
34B 弱体部
36A 接合境界部
36 接合部
37 中間部
40 波形形状部(ビード)
50 ストライカ
60 インテークダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフードの外板を成すフードアウタパネルと、
前記フードの一部を構成し前記フードアウタパネルよりも車両内側に配置されるフードインナパネルと、
前記フードインナパネルの前端部の下方側に設けられ、前記フードを前記車体にロックするためのストライカが取り付けられた厚板部材、及び、該厚板部材と接合部で接合されて該厚板部材よりも車両後方側に配置され厚みが前記厚板部材よりも薄い薄板部材、を有するロックリインフォースメントと、
を備えた車両用フード構造。
【請求項2】
前記接合部は、車両前後方向において、前記薄板部材に最も近い車体側部材と前記ストライカとの間に配置されていること、を特徴とする請求項1に記載の車両用フード構造。
【請求項3】
前記接合部の前記薄板部材側の端部は、車両前後方向において、前記ストライカの中心位置と前記車体側部材との間の中間部に配置されていること、を特徴とする請求項2に記載の車両用フード構造。
【請求項4】
前記薄板部材には、前記接合部に隣接して前記接合部よりも車両後方側に、車両幅方向に沿って屈曲した弱体部が形成されていること、を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車両用フード構造。
【請求項5】
前記フードインナパネルには、車両前後方向に延びる複数のビードが車両幅方向に並列的に設けられ、かつ、少なくとも1つの前記ビードの前端部が前記ロックリインフォースメントの後端部より車両前方側に位置するように配置されていること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用フード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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