説明

車両用ブレーキ制御装置

【課題】 余分な消費電力が低減できる車両用ブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】 複数の増圧制御弁17、18、37、38の上流の圧力が可変となっている車両用ブレーキ制御装置において、ブレーキ制御ECU4は、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38の上流のブレーキ液圧に対応する物理量、例えば差圧制御弁16、36の指示電流値I1や圧力センサ70で検出されるM/C圧P1に応じて、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38それぞれに備えられるソレノイドコイルに流す電流の値I2を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクション制御(以下、TCS制御という)もしくはABS制御が実行できるように構成されたアクチュエータを備える車両用ブレーキ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ブレーキ制御装置では、TCS制御を行うに際し、転動輪はブレーキ力を発生させる制御対象輪とはならないため、転動輪に対応するホイールシリンダ(以下、W/Cという)に対してブレーキ液圧が加えられないようにされる。具体的には、転動輪に対応するW/Cとマスタシリンダ(以下、M/Cという)とを結ぶ管路に備えられた増圧制御弁(ノーマリオープン弁)が遮断状態とされることで、W/Cにブレーキ液圧が加えられないようにされる。
【0003】
また、ABS制御時の減圧タイミングや保持タイミングのときも同様で、減圧や保持の対象となる車輪に対応するW/CとM/Cとを結ぶ配管に備えられた増圧制御弁が遮断状態とされることで、減圧タイミングや保持タイミング中にW/Cに加えられたブレーキ液圧が増加しないようにされる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このように、TCS制御中には、転動輪に対応するW/Cへのブレーキ液圧の印加を制御する増圧制御弁が遮断状態とされ、ABS制御における減圧タイミングや保持タイミングのときにも、減圧や保持の対象となる車輪のW/Cへのブレーキ液圧の印加を制御する増圧制御弁が遮断状態とされる。このとき、増圧制御弁を遮断状態にすべく、増圧制御弁の上流側および下流側にかかるブレーキ液圧がどのような圧力、例えば、増圧制御弁の上流側と下流側との差圧がどのような値であっても、増圧制御弁によって確実にブレーキ液圧の流動を遮断できるように、増圧制御弁に対して流す電流の電流値が大きな値に設定されている。
【特許文献1】特許第2900542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、増圧制御弁に対して流す電流の電流値が大きな値に一義的に決定されていたため、増圧制御弁のソレノイドコイルやソレノイドコイルに流す電流を供給するECU内のICに必要以上の電流が流されることになり、必要以上に電力が消費される。このために、ソレノイドコイルやECU内のICで余分な発熱が生じるという問題を発生させる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、余分な消費電力が低減できる車両用ブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、複数の増圧制御弁(17、18、37、38)の上流の圧力が可変となっている車両用ブレーキ制御装置において、制御部(4)は、複数の増圧制御弁(17、18、37、38)の上流のブレーキ液圧に応じた物理量(I1、P1)を求め、この物理量(I1、P1)に応じて、複数の増圧制御弁(17、18、37、38)それぞれに備えられるソレノイドコイルに流す電流の値(I2)を変化させることを特徴としている。
【0008】
このため、複数の増圧制御弁(17、18、37、38)それぞれに備えられるソレノイドコイルに流す電流の値(I2)が必要以上に大きな値にならないようにすることができ、消費電流の低減を図ることが可能となる。そして、このように余分な消費電流を低減できることから、ソレノイドコイルや制御部(4)内のICで余分な発熱が生じることを抑制することができる。
【0009】
具体的には、請求項2に示されるように、制御部(4)は、物理量(I1、P1)が小さいほど、複数の増圧制御弁(17、18、37、38)それぞれに備えられるソレノイドコイルに流す電流の値(I2)を小さくする。
【0010】
請求項3に記載の発明では、制御部(4)は、トラクション制御時には、差圧制御弁(16、36)のソレノイドコイルおよびモータ(60)に電流を流すことで、マスタシリンダ(13)側のブレーキ液圧とホイールシリンダ(14、15、34、35)側のブレーキ液圧とで差圧が形成されるようにしつつ、ポンプ(19、39)を駆動し、複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)のうち駆動輪に対応するものに対してブレーキ液圧を加えて駆動力を抑制し、
また、このトラクション制御時に、複数の増圧制御弁(17、18、37、38)のうち、転動輪に対応する複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)のブレーキ液圧を制御するためのものに関しては、ソレノイドコイルに流される電流の値(I2)を差圧制御弁(16、36)に流す電流の値を示す指示電流値(I1)に応じて設定することを特徴としている。
【0011】
トラクション制御時には、複数の増圧制御弁(17、18、37、38)のうち、転動輪に対応する複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)のブレーキ液圧を制御するためのものに関しては、遮断状態とされる。このときに、転動輪に対応する増圧制御弁に流される電流の値(I2)を差圧制御弁(16、36)の指示電流値(I1)に応じた値となるようにすれば、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、制御部(4)は、トラクション制御時に、ポンプ(19、39)によるブレーキ液圧の昇圧遅れに応じて、ソレノイドコイルに流される電流の値(I2)を設定することを特徴としている。
【0013】
このように、ポンプ(19、39)によるブレーキ液圧の昇圧遅れに応じてソレノイドコイルに流される電流の値(I2)を設定すれば、より余分な消費電流を抑えることが可能となり、より上記効果を高めることができる。
【0014】
具体的には、請求項5に示されるように、ポンプ(19、39)によるブレーキ液圧の昇圧遅れ分の時間が経過する前には、その時間経過後よりも、ソレノイドコイルに流される電流の値(I2)が低く設定されるようにすればよい。
【0015】
請求項6に記載の発明では、複数の増圧制御弁(17、18、37、38)の上流側におけるブレーキ液圧を検出する圧力センサ(70)を備え、制御部(4)は、ABS制御時には、複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)のうち制御対象輪となるものに対応する複数の増圧制御弁(17、18、37、38)および複数の減圧制御弁(21、22、41、42)を駆動することにより、該制御対象輪のホイールシリンダに加えられるブレーキ液圧を制御すると共に、該ABS制御における減圧タイミングもしくは保持タイミングのときに、該制御対象輪のホイールシリンダに対応する増圧制御弁のソレノイドコイルに流す電流の値(I2)を圧力センサ(70)の検出結果に応じて設定することを特徴としている。
【0016】
このように、ABS制御の減圧タイミングおよび保持タイミングに関しても、複数の増圧制御弁(17、18、37、38)のうち制御対象輪に対応する複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)のブレーキ液圧を制御するためのものに関しては、遮断状態とされる。このときに、制御対象輪に対応する増圧制御弁に流される電流の値(I2)が圧力センサ(70)での検出結果に応じた値となるようにすれば、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0017】
具体的には、請求項7に示されるように、圧力センサ(70)での検出された圧力が小さいほど、ソレノイドコイルに流される電流の値(I2)が小さく設定されるようにすればよい。
【0018】
請求項8に記載の発明では、ソレノイドコイルに流す電流の値(I2)は、該ソレノイドコイルに対して一定値の電流を流しつつ、その電流の流す時間をヂューティ制御して単位時間当たりのトータルの電流値の平均値を変動させることにより、調整されるようになっていることを特徴としている。
【0019】
このように、デューティ制御によってソレノイドコイルに流す電流の値(I2)を調整することも可能である。このようなデューティ制御が実行される場合、デューティ変調ノイズが生じる可能性があるが、ソレノイドコイルに流す電流の値(I2)を調整することにより、デューティ変調ノイズを低減することが可能となる。
【0020】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態が適用された車両用ブレーキ制御装置1の全体構成を示したものである。本実施形態では、この車両用ブレーキ制御装置1を前輪駆動の車両に搭載した場合について説明するが、後輪駆動のものに搭載しても構わない。
【0023】
以下、図1に基づいて、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置1の構成について説明する。
【0024】
車両に制動力を加える際にドライバによって踏み込まれるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル11は、ブレーキ液圧発生源となる倍力装置12およびM/C13に接続されており、ドライバがブレーキペダル11を踏み込むと、倍力装置12にて踏力が倍力され、M/C13に配設されたマスタピストン13a、13bを押圧する。これにより、これらマスタピストン13a、13bによって区画されるプライマリ室13cとセカンダリ室13dとに同圧のM/C圧が発生させられるようになっている。
【0025】
M/C13には、プライマリ室13cおよびセカンダリ室13dそれぞれと連通する通路を有するマスタリザーバ13eが備えられている。マスタリザーバ13eは、その通路を通じてM/C13内にブレーキ液を供給したり、M/C13内の余剰のブレーキ液を貯留したりする。なお、各通路は、プライマリ室13cおよびセカンダリ室13dから延びる各主管路の管路直径よりも非常に小さい直径に形成されるため、M/C13のプライマリ室13cおよびセカンダリ室13d側からマスタリザーバ13eへのブレーキ液の流入の際にはオリフィス効果を発揮するようになっている。
【0026】
M/C13に発生させられるM/C圧は、第1配管系統50aと第2配管系統50bを通じて各W/C14、15、34、35に伝えられるようになっている。第1配管系統50aは、左前輪FLと右後輪RRに加えられるブレーキ液圧を制御するもので、第2配管系統50bは、右前輪FRと左後輪RLに加えられるブレーキ液圧を制御するものであり、これら第1、第2配管系統50a、50bの2配管系によりX配管が構成されている。
【0027】
以下、第1、第2配管系統50a、50bについて説明するが、第1配管系統50aと第2配管系統50bとは、略同様の構成であるため、ここでは第1配管系統50aについて説明し、第2配管系統50bについては、第1配管系統50aを参照して説明を省略する。
【0028】
第1配管系統50aには、上述したM/C圧を左前輪FLに備えられたW/C14及び右後輪RRに備えられたW/C15に伝達する主管路となる管路Aが備えられている。この管路Aを通じて、各W/C14、15それぞれにW/C圧を発生させられるようになっている。
【0029】
また、管路Aには、連通・差圧状態の2位置を制御できる電磁弁で構成された第1差圧制御弁16が備えられている。この第1差圧制御弁16は、通常ブレーキ状態では弁位置は連通状態とされており、ソレノイドコイルに電力供給が成されると弁位置が差圧状態になる。第1差圧制御弁16における差圧状態の弁位置では、W/C14、15側のブレーキ液圧がM/C圧よりも所定以上高くなった際にのみ、W/C14、15側からM/C13側へのみブレーキ液の流動が許可される。このため、常時W/C14、15側がM/C13側よりも所定圧力以上高くならないように維持され、それぞれの管路の保護が成されている。
【0030】
そして、管路Aは、この第1差圧制御弁16よりもW/C14、15側の下流において、2つの管路A1、A2に分岐する。2つの管路A1、A2の一方にはW/C14へのブレーキ液圧の増圧を制御する第1増圧制御弁17が備えられ、他方にはW/C15へのブレーキ液圧の増圧を制御する第2増圧制御弁18が備えられている。
【0031】
第1、第2増圧制御弁17、18は、連通・遮断状態を制御できる2位置弁として電磁弁により構成されている。そして、これら第1、第2増圧制御弁17、18が連通状態に制御されているときには、M/C圧あるいは後述するポンプ19からのブレーキ液の吐出によるブレーキ液圧をW/C14、15に加えることができるようになっている。
【0032】
なお、ドライバが行うブレーキペダル11の操作による通常のブレーキ時においては、第1差圧制御弁16及び第1、第2増圧制御弁17、18は、常時連通状態に制御されている。
【0033】
また、第1差圧制御弁16及び第1、第2増圧制御弁17、18には、それぞれ安全弁16a、17a、18aが並列に設けられている。第1差圧制御弁16の安全弁16aは、第1差圧制御弁16の弁位置が差圧状態である際にドライバによりブレーキペダル11が踏み込まれた場合に、M/C圧をW/C14、15に伝達可能とするために設けられている。また、各増圧制御弁17、18の安全弁17a、18aは、特にABS制御時において各増圧制御弁17、18が遮断状態に制御されている際に、ドライバによりブレーキペダル11が戻された場合において、この戻し操作に対応して左前輪FLおよび右後輪RRのW/C圧を減圧可能とするために設けられている。
【0034】
管路Aにおける第1、第2増圧制御弁17、18及び各W/C14、15の間とリザーバ20とを結ぶ減圧管路としての管路Bには、連通・遮断状態を制御できる2位置弁として、電磁弁からなる第1減圧制御弁21と第2減圧制御弁22とがそれぞれ配設されている。そして、これら第1、第2減圧制御弁21、22は、通常ブレーキ時には、常時遮断状態とされている。
【0035】
リザーバ20と主管路である管路Aとの間を結ぶように還流管路となる管路Cが配設されている。この管路Cにはリザーバ20からM/C13側あるいはW/C14、15側に向けてブレーキ液を吸入吐出するように、モータ60によって駆動される自吸式のポンプ19が設けられている。
【0036】
なお、ポンプ19の吐出口側には、ポンプ19に対して高圧なブレーキ液が加えられないように、安全弁19aが備えられている。また、ポンプ19が吐出したブレーキ液の脈動を緩和するために管路Cのうちポンプ19の吐出側には固定容量ダンパ23が配設されている。
【0037】
そして、リザーバ20とM/C3とを接続するように補助管路となる管路Dが設けられている。この管路Dを通じ、ポンプ19にてM/C13からブレーキ液を吸入し、管路Aに吐出することで、TCS制御時やABS制御時などにおいて、W/C14、15側にブレーキ液を供給し、対象となる車輪のW/C圧を増加できるようになっている。
【0038】
リザーバ20は、管路Dに接続されてM/C3側からのブレーキ液を受け入れるリザーバ孔20aと、管路B及び管路Cに接続されW/C14、15から逃がされるブレーキ液を受け入れると共にポンプ19の吸入側にブレーキ液を供給するリザーバ孔20bとが備えられ、これらがリザーバ室20cと連通している。リザーバ孔20aより内側には、ボール弁20dが配設されている。このボール弁20dには、ボール弁20dを上下に移動させるための所定ストロークを有するロッド20fがボール弁20dと別体で設けられている。
【0039】
また、リザーバ室20c内には、ロッド20fと連動するピストン20gと、このピストン20gをボール弁20d側に押圧してリザーバ室20c内のブレーキ液を押し出そうとする力を発生するスプリング20hが備えられている。
【0040】
このように構成されたリザーバ20は、所定量のブレーキ液が貯留されると、ボール弁20dが弁座20eに着座してリザーバ20内にブレーキ液が流入しないようになっている。このため、ポンプ19の吸入能力より多くのブレーキ液がリザーバ室20c内に流動することがなく、ポンプ19の吸入側に高圧が印加されないようになっている。
【0041】
また、管路AにおけるM/C13と第1差圧制御弁16との間には圧力センサ70が備えられている。この圧力センサ70により、M/C13に発生させられているM/C圧を検出できるようになっている。
【0042】
一方、上述したように、第2配管系統50bは、第1配管系統50aにおける構成と略同様となっている。つまり、第1差圧制御弁16は、第2差圧制御弁36に対応する。第1、第2増圧制御弁17、18は、それぞれ第3、第4増圧制御弁37、38に対応し、第1、第2減圧制御弁21、22は、それぞれ第3、第4減圧制御弁41、42に対応する。リザーバ20は、リザーバ40に対応する。ポンプ19は、ポンプ39に対応する。また、管路A、管路B、管路C、管路Dは、それぞれ管路E、管路F、管路G、管路Hに対応する。以上のように車両用ブレーキ制御装置1における液圧配管構造が構成されている。
【0043】
さらに、車両用ブレーキ制御装置1には、制御部となるブレーキ制御ECU4が備えられている。このブレーキ制御ECU4は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って各種演算などの処理を実行する。
【0044】
このブレーキ制御ECU4からの電気信号に基づいて、上記のように構成されたブレーキアクチュエータ6における各制御弁16〜18、21、22、36〜38、41、42及びポンプ19、39を駆動するためのモータ60への電圧印加制御が実行されるようになっている。これにより、各W/C14、15、34、35に発生させられるW/C圧の制御が行われるようになっている。
【0045】
このような車両用ブレーキ制御装置1では、基本的に、従来と同様のブレーキ制御が実行される。すなわち、ノーマルブレーキ時には、各制御弁の弁位置が図1に示される位置となり、ブレーキペダル11の踏み込み量に応じてM/C圧が発生すると、そのM/C圧が各W/C14、15、34、35に伝えられ、各車輪に制動力が発生させられるようになっている。
【0046】
そして、トラクション制御時においては、制御対象となる車輪の制動力を調整すべく、第1、第2差圧制御弁16、36が差圧状態にされると共に、モータ60への通電が行われる。これにより、M/Cシリンダ13をブレーキ液供給源として、ポンプ19、39によるブレーキ液の吸入吐出動作が行われ、管路C、Gおよび管路A、Eを通じて対象となる車輪に対応するW/C14、15、34、35が自動的に加圧され、制動力が発生させられるようになっている。このとき、第1〜第4制御弁17、18、37、38のうち転動輪に対応するものは遮断状態とされ、W/C14、15、34、35のうち転動輪に対応するものにはブレーキ液圧が加えられないようにされる。例えば、本実施形態のように、車両用ブレーキ制御装置1が前輪駆動車に適用される場合には、左右後輪RL、RRのW/C15、35に対応する第2、第4増圧制御弁18、38が遮断状態とされる。
【0047】
また、ABS制御時にも、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38のうち制御対象輪に対応するものが、減圧タイミングや保持タイミングのときに遮断状態とされる。これにより、W/C14、15、34、35に掛かるブレーキ液圧が増加しないようにされる。
【0048】
これら各ブレーキ制御自体は、従来と同様であるため、ここでは詳細については省略し、以下、本実施形態における車両用ブレーキ制御装置1の特徴部分について説明する。
【0049】
上述したように、トラクション制御時には、第1〜第4制御弁17、18、37、38のうち転動輪に対応するものは遮断状態とされ、W/C14、15、34、35のうち転動輪に対応するものにはブレーキ液圧が加えられないようにされる。
【0050】
本実施形態の車両用ブレーキ制御装置1では、このトラクション制御時に遮断状態とされる転動輪に対応する第1〜第4制御弁17、18、37、38のソレノイドへの通電量を制御する。
【0051】
また、上述したように、ABS制御時にも、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38のうち制御対象輪に対応するものが、減圧タイミングや保持タイミングのときに遮断状態とされる。
【0052】
本実施形態の車両用ブレーキ制御装置1では、このABS制御の減圧タイミングや保持タイミングのときに遮断状態とされる第1〜第4制御弁17、18、37、38のソレノイドへの通電量も制御する。
【0053】
図2は、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置1におけるブレーキ制御ECU4が実行する処理のフローチャートを示したものである。この図に示される処理は、車両に備えられる図示しないイグニッションスイッチがオンされたときに、ブレーキ制御ECU4によって実行される一般的な各種制御のための処理と共に実行される。
【0054】
まず、ステップ100では、TCS制御中であるか否かが判定される。この処理は、例えば、ブレーキ制御ECU4もしくは図示しないエンジンECUによって実行されるTCS制御処理において、TCS制御の開始条件を満たしたときにセットされるTCS制御中フラグがセットされているか否かに基づいて判定される。このTCS制御処理に関しては、一般的に良く知られているものであるため、ここでは説明を省略する。
【0055】
このステップで肯定判定された場合、ステップ110に進み、第1、第2差圧制御弁16、36への指示電流値の読み込みが行われる。ここでいう第1、第2差圧制御弁16、36への指示電流値とは、ブレーキ制御ECU4が第1、第2差圧制御弁16、36を駆動するためにこれらを駆動するためのソレノイドコイルへ流す電流の値のことである。TCS制御中には、ブレーキ制御ECU4にて、第1、第2差圧制御弁16、36で発生させる差圧がどの程度必要であるかが求められ、その差圧を発生させるために必要な指示電流値も求められている。このため、この値を読み込むことにより、本処理が実行される。
【0056】
そして、ステップ120に進み、増圧制御弁電流値設定処理が実行される。この処理により、TCS制御の対象輪とはならない転動輪、すなわち左右後輪RL、RRのW/C15、35に対応する第2、第4増圧制御弁18、38のソレノイドコイルへ流す電流の値が設定される。
【0057】
具体的には、ステップ110で読み込まれた指示電流I1と第2、第4増圧制御弁18、38のソレノイドコイルへ流す電流の値I2との間の関係を規定したマップが予めブレーキ制御ECU4に記憶させてあり、このマップに基づいてソレノイドコイルへ流す電流の値I2が求められる。
【0058】
ここで、第1、第2差圧制御弁16、36への指示電流値I1の大きさは、第1、第2差圧制御弁16、36で発生させられる差圧の大きさに対応しており、指示電流I1が大きいほど発生させられる差圧が大きいということを意味している。そして、発生させられる差圧が大きいほど、第2、第4増圧制御弁18、38に加えられるブレーキ液圧が高くなるため、第2、第4増圧制御弁18、38がそのブレーキ液圧に耐えられるように、ソレノイドコイルへ流す電流の値I2を設定しなければならない。このため、本実施形態では、指示電流値I1が大きくなるほど、第2、第4増圧制御弁18、38のソレノイドコイルへ流す電流の値I2が比例して大きくなるようなマップとしてある。
【0059】
一方、ステップ100で否定判定された場合には、ステップ130に進み、ABS制御中であるか否かが判定される。この処理は、例えば、ブレーキ制御ECU4によって実行されるABS制御処理において、ABS制御の開始条件を満たしたときにセットされるABS制御中フラグがセットされているか否かに基づいて判定される。このABS制御処理に関しては、一般的に良く知られているものであるため、ここでは説明を省略する。
【0060】
このステップで肯定判定された場合にはステップ140に進み、否定判定された場合には第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38のいずれにも電流が流される状況ではないものとしてそのまま処理を終了する。
【0061】
ステップ140では、M/C圧P1の読み込みが為される。このM/C圧P1の読み込みは、圧力センサ70の検出信号を読み込むことによって行われる。
【0062】
次に、ステップ150に進み、ABS制御における保持モードもしくは減圧モードが設定されているか否かが判定される。この処理も、ブレーキ制御ECU4によって実行されるABS制御処理において、保持モードもしくは減圧モードが設定されていることを示すフラグがセットされているか否かに基づいて判定される。これに関してもABS制御処理において一般的なものであるため、説明を省略する。
【0063】
そして、ステップ150で肯定判定された場合にはステップ160に進み、否定判定された場合にはABS制御処理中ではあるが第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38のいずれにも電流が流される状況ではないものとしてそのまま処理を終了する。
【0064】
ステップ160では、ステップ120と同様に、増圧制御弁電流値設定処理が実行される。この処理により、ABS制御における保持モードもしくは減圧モードが設定されている車輪、例えば左後輪RLのW/C35に対応する第4増圧制御弁38のソレノイドコイルへ流す電流の値が設定される。
【0065】
具体的には、ステップ140で読み込まれたM/C圧P1とABS制御における保持モードもしくは減圧モードが設定されている左後輪RLに対応する第4増圧制御弁38のソレノイドコイルへ流す電流の値I2との間の関係を規定したマップが予めブレーキ制御ECU4に記憶させてある。このマップに基づいてソレノイドコイルへ流す電流の値I2が求められる。
【0066】
ここで、M/C圧P1は、ABS制御における保持モードもしくは減圧モードが設定されている左後輪RLに対応する第4増圧制御弁38に加えられるブレーキ液圧と対応している。このため、M/C圧P1が大きいほど、第4増圧制御弁38に加えられるブレーキ液圧が高くなるため、第4増圧制御弁38がそのブレーキ液圧に耐えられるように、ソレノイドコイルへ流す電流の値I2を設定しなければならない。このため、本実施形態では、M/C圧P1が大きくなるほど、第4増圧制御弁38のソレノイドコイルへ流す電流の値I2が比例して大きくなるようなマップとしてある。
【0067】
以上のようにしてTCS制御中やABS制御中に第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38のソレノイドコイルに流す電流の値I2を設定するようにしている。このため、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38のソレノイドコイルに流す電流の値I2に関して以下のことが言える。
【0068】
図3−a、図3−bは、TCS制御中における第1、第2差圧制御弁16、36の指示電流値I1と第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38のソレノイドコイルに流す電流の値I2との関係を示したものであり、図3−aは従来の場合、図3−bは本実施形態の場合をそれぞれ示している。
【0069】
まず、図3−a、図3−bにおいて、第1、第2差圧制御弁16、36の指示電流値I1は、第1、第2差圧制御弁16、36に発生させられる差圧と対応している。したがって、この指示電流値I1に応じたW/C圧が発生させられることになる。例えば、図3−a、図3−bに示されるように、7MPaのW/C圧を発生させる場合と3MPaのW/C圧を発生させる場合とで、指示電流値I1の大きさも変わる。
【0070】
これに対して、図3−aに示される従来の場合には、指示電流値I1の大きさに関わらず、転動輪となる左右後輪RL、RRのW/C15、35に対応する第2、第4増圧制御弁18、38のソレノイドコイルへ流す電流の値I2が同じであった。このため、上述したように、必要以上に電力が消費される。
【0071】
一方、図3−bに示される本実施形態の場合には、指示電流値I1の大きさに応じて、転動輪となる左右後輪RL、RRのW/C15、35に対応する第2、第4増圧制御弁18、38のソレノイドコイルへ流す電流の値I2が変えられている。
【0072】
このため、TCS制御中において、転動輪となる左右後輪RL、RRのW/C15、35に対応する第2、第4増圧制御弁18、38のソレノイドコイルへ流す電流が必要以上に大きなものとされず、消費電流の低減を図ることが可能となる。そして、このように余分な消費電流を低減できることから、ソレノイドコイルやブレーキ制御ECU4内のICで余分な発熱が生じることを抑制することができる。
【0073】
同様に、ABS制御における保持タイミングや減圧タイミングのときにも、ABS制御における保持モードもしくは減圧モードが設定されている左後輪RLに対応する第4増圧制御弁38のソレノイドコイルへ流す電流が必要以上に大きなものとされない。したがって、この場合にも、消費電流の低減を図ることが可能となり、TCS制御の場合と同様の効果を得ることができる。
【0074】
このように、本実施形態では、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38の上流の圧力が可変となっている車両用ブレーキ制御装置1において、ブレーキ制御ECU4は、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38の上流のブレーキ液圧に応じた物理量、つまり指示電流値I1もしくはM/C圧P1を求めている。そして、この物理量に応じて、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38それぞれに備えられるソレノイドコイルに流す電流の値I2を設定している。
【0075】
このため、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38それぞれに備えられるソレノイドコイルに流す電流の値I2が必要以上に大きな値にならないようにすることができ、消費電流の低減を図ることが可能となる。そして、このように余分な消費電流を低減できることから、ソレノイドコイルやブレーキ制御ECU4内のICで余分な発熱が生じることを抑制することができる。
【0076】
なお、ここで説明した第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38のソレノイドコイルへ流す電流の値I2の変更の手法としては、ソレノイドコイルに出力される電流そのものの値が変動する手法を採用しても良いが、ソレノイドコイルに出力される電流の大きさは一定値のままで、それをデューティ制御することで単位時間当たりの電流値の平均値を変動させるような手法を採用しても構わない。
【0077】
このようにソレノイドコイルに出力される電流をデューティ制御する場合には、ソレノイドコイルもしくはソレノイドコイルに電流を出力するブレーキ制御ECU4からデューティ変調ノイズが生じる可能性がある。しかしながら、TCS制御時には第1、第2差圧制御弁16、36の指示電流値I1に応じて、ABS制御時にはM/C圧P1に応じて、ソレノイドコイルへ流す電流の値I2が必要最小限なものに設定される。このため、ソレノイドコイルへ流す電流に応じて、デューティ変調ノイズも低減することが可能となる。
【0078】
(他の実施形態)
上記実施形態では、TCS制御時には第1、第2差圧制御弁16、36の指示電流値I1に応じて、転動輪となる左右後輪RL、RRのW/C15、35に対応する第2、第4増圧制御弁18、38のソレノイドコイルへ流す電流の値I2を一定値に一義的に決めている。しかしながら、必ずしもソレノイドコイルへ流す電流の値I2を一定値としなくても良い。
【0079】
例えば、TCS制御を実行する場合、車輪速度センサからの加速スリップ情報に基づいてブレーキ制御ECU4が発生させるべきW/C圧を演算し、そのW/C圧を発生させられるようにポンプ9、39を作動させる。このとき、ポンプ19、39によるブレーキ液圧の昇圧遅れが発生するため、その昇圧遅れを加味して、転動輪となる左右後輪RL、RRのW/C15、35に対応する第2、第4増圧制御弁18、38のソレノイドコイルへ流す電流の値I2を設定しても良い。
【0080】
図4は、ポンプ作動に伴うW/C圧の上昇とソレノイドコイルへ流す電流の値I2との関係を示したものである。この図に示されるように、ポンプ19、39によってTCS制御時に必要とされるW/C圧まで昇圧するために、例えば0.5[s]の時間が必要になる。このため、ソレノイドコイルへ流す電流の値I2を、その時間に至るまでは徐々に高くし、その時間に至った後は第1、第2差圧制御弁16、36の指示電流値I1に応じた値となるようにすることができる。
【0081】
このようにすれば、より余分な消費電流を抑えることが可能となり、より上記効果を高めることができる。
【0082】
また、上記実施形態では、前輪駆動の車両に対して本発明の一実施形態における車両用ブレーキ制御装置1を搭載した例を挙げたが、上述したように後輪駆動の車両に搭載することも可能である。また、ABS制御における保持タイミングや減圧タイミングにおいて、保持モードや減圧モードが設定された第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38に対応するソレノイドコイルに流す電流の値I2をM/C圧P1に応じて変更することに関しては、4輪駆動の車両に対しても適用可能である。
【0083】
また、上記実施形態では、TCS制御やABS制御に関して説明したが、横滑り防止制御に関しても、制御対象輪以外の車輪に対応する増圧制御弁にはブレーキ液圧が加えられないようにされる。このため、増圧制御弁のソレノイドコイルに流す電流値I2を調整するようにすれば、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0084】
また、上記実施形態では、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38の上流のブレーキ液圧に応じた物理量として、指示電流値I1やM/C圧P1を用いたが、その他の物理量を用いても構わない。
【0085】
なお、各図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用ブレーキ制御装置のブロック構成を示す図である。
【図2】図1に示す車両用ブレーキ制御装置に備えられるブレーキ制御ECU4が実行する処理のフローチャートである。
【図3−a】従来のTCS制御中における差圧制御弁の指示電流値I1と増圧制御弁のソレノイドコイルに流す電流の値I2との関係を示したグラフである。
【図3−b】従来のTCS制御中における差圧制御弁の指示電流値I1と増圧制御弁のソレノイドコイルに流す電流の値I2との関係を示したグラフである。
【図4】ポンプ作動に伴うW/C圧の上昇とソレノイドコイルへ流す電流の値I2との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0087】
1…車両用ブレーキ制御装置、4…ブレーキ制御ECU4、13…M/C、
14、15、34、35…W/C、16、36…第1、第2差圧制御弁、
17、28、37、38…第1〜第4増圧制御弁、19、39…ポンプ、
21、22、41、42…第1〜第4減圧制御弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバのブレーキ操作部材(11)の操作に基づいたブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ(13)と、
前記マスタシリンダ(13)で発生させられたブレーキ液圧に基づいて、制動力を発生させる複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)と、
前記マスタシリンダ(13)と前記複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)との間を接続する主管路(A、E)と、
前記主管路(A、E)における前記複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)それぞれに対応して設けられ、前記複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)に加えられるブレーキ液圧を制御するための複数の増圧制御弁(17、18、37、38)と、
前記複数の増圧制御弁(17、18、37、38)を駆動するために、該複数の増圧制御弁(17、18、37、38)それぞれに備えられるソレノイドコイルに流す電流を制御する制御部(4)とを備え、
前記複数の増圧制御弁(17、18、37、38)の上流のブレーキ液圧が可変となっている車両用ブレーキ制御装置において、
前記制御部(4)は、前記複数の増圧制御弁(17、18、37、38)の上流のブレーキ液圧に応じた物理量(I1、P1)を求め、この物理量(I1、P1)に応じて、前記複数の増圧制御弁(17、18、37、38)それぞれに備えられるソレノイドコイルに流す電流の値(I2)を変化させるようになっていることを特徴とする車両用ブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記制御部(4)は、前記物理量(I1、P1)が小さいほど、前記前記複数の増圧制御弁(17、18、37、38)それぞれに備えられるソレノイドコイルに流す電流の値(I2)を小さくするようになっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項3】
ドライバのブレーキ操作部材(11)の操作に基づいたブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ(13)と、
前記マスタシリンダ(13)で発生させられたブレーキ液圧に基づいて、制動力を発生させる複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)と、
前記マスタシリンダ(13)と前記複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)との間を接続する主管路(A、E)と、
前記主管路(A、E)における前記複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)それぞれに対応して設けられ、前記複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)に加えられるブレーキ液圧を制御するための複数の増圧制御弁(17、18、37、38)と、
前記複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)それぞれに対応して設けられ、前記主管路(A、E)のうち、前記複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)と前記複数の増圧制御弁(17、18、37、38)との間それぞれに接続された減圧管路(B、F)と、
ブレーキ液の供給を行う補助管路(D、H)と、
前記補助管路(D、H)と前記減圧管路(B、F)とに接続されたリザーバ(20、40)と、
前記減圧管路(B、E)それぞれに備えられた複数の減圧制御弁(21、22、41、42)と、
前記減圧管路(B、E)における前記複数の減圧制御弁(21、22、41、42)と前記リザーバ(20、40)との間と前記主管路(A、E)における前記マスタシリンダ(13)と前記複数の増圧制御弁(17、18、37、38)との間とを接続する還流管路(C、G)と、
前記還流管路(C、G)に備えられ、前記リザーバ(20、40)に蓄えられたブレーキ液を前記主管路(A、E)に還流するポンプ(19、39)と、
前記ポンプ(19、39)を駆動するためのモータ(60)と、
前記主管路(A、E)のうち前記還流管路(C、G)との接続点と前記マスタシリンダ(13)との間に備えられた差圧制御弁(16、36)と、
前記差圧制御弁(16、36)、前記複数の増圧制御弁(17、18、37、38)、前記複数の減圧制御弁(21、22、41、42)を駆動するために、これら各弁に備えられるソレノイドコイルに流す電流を制御すると共に、前記モータ(60)に流す電流を制御する制御部(4)とを備え、
前記制御部(4)は、
トラクション制御時には、前記差圧制御弁(16、36)のソレノイドコイルおよび前記モータ(60)に電流を流すことで、前記マスタシリンダ(13)側のブレーキ液圧と前記ホイールシリンダ(14、15、34、35)側のブレーキ液圧とで差圧が形成されるようにしつつ、前記ポンプ(19、39)を駆動し、前記複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)のうち駆動輪に対応するものに対してブレーキ液圧を加えて駆動力を抑制するようになっており、
また、このトラクション制御時に、前記複数の増圧制御弁(17、18、37、38)のうち、転動輪に対応する前記複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)のブレーキ液圧を制御するためのものに関しては、ソレノイドコイルに流される電流の値(I2)を前記差圧制御弁(16、36)に流す電流の値を示す指示電流値(I1)に応じて設定するようになっていることを特徴とする車両用ブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記制御部(4)は、前記トラクション制御時に、前記ポンプ(19、39)によるブレーキ液圧の昇圧遅れに応じて、前記ソレノイドコイルに流される電流の値(I2)を設定するようになっていることを特徴とする請求項3に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記制御部(4)は、前記ポンプ(19、39)によるブレーキ液圧の昇圧遅れ分の時間が経過する前には、その時間経過後よりも、前記ソレノイドコイルに流される電流の値(I2)を低く設定するようになっていることを特徴とする請求項4に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記複数の増圧制御弁(17、18、37、38)の上流側におけるブレーキ液圧を検出する圧力センサ(70)を備え、
前記制御部(4)は、ABS制御時には、前記複数のホイールシリンダ(14、15、34、35)のうち制御対象輪となるものに対応する前記複数の増圧制御弁(17、18、37、38)および前記複数の減圧制御弁(21、22、41、42)を駆動することにより、該制御対象輪のホイールシリンダに加えられるブレーキ液圧を制御すると共に、該ABS制御における減圧タイミングもしくは保持タイミングのときに、該制御対象輪のホイールシリンダに対応する前記増圧制御弁のソレノイドコイルに流す電流の値(I2)を前記圧力センサ(70)の検出結果に応じて設定するようになっていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項7】
前記制御部(4)は、前記圧力センサ(70)での検出された圧力が小さいほど、前記ソレノイドコイルに流される電流の値(I2)を小さく設定するようになっていることを特徴とする請求項6に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項8】
前記ソレノイドコイルに流す電流の値(I2)は、該ソレノイドコイルに対して一定値の電流を流しつつ、その電流の流す時間をデューティ制御して単位時間当たりのトータルの電流値の平均値を変動させることにより、調整されるようになっていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3−a】
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【図3−b】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−82588(P2006−82588A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266638(P2004−266638)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】