説明

車両用ブレーキ液圧制御装置およびその製造方法

【課題】車両用ブレーキ液圧制御装置において、部品点数の増加を抑制し、製造コストの上昇および小型化への障害の要因を取り除くことを課題とする。
【解決手段】基体10と、基体10の一面11に配設された電磁弁30と、電磁弁30に装着されたコイル組立体50と、基体10の一面11に装着されたハウジング70と、ハウジング70内に収容された制御ユニット80と、を備え、コイル組立体50とハウジング70とが接続端子53,77にて電気的に接続された車両用ブレーキ液圧制御装置1であって、コイル組立体50は、電磁弁30を囲繞する筒部51aを有するボビン51と、筒部51aに電線52aを巻きつけて形成したコイル52と、を備えており、筒部51aは、熱により軟化する材料にて構成され、コイル52に通電することで発生した熱で軟化しコイル52の縮径に伴って縮径されて、所定の締付力をもって電磁弁30を締め付ける締付部55を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に装着されたコイル組立体の接続端子とハウジング内の接続端子とが接続された車両用ブレーキ液圧制御装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用ブレーキ液圧制御装置は、基体と、この基体の一面に配設された電磁弁と、この電磁弁内の弁機構を磁力で稼動させるコイル組立体と、このコイル組立体への電流の供給・停止などを制御する制御ユニットを備えたハウジングと、を主に備えて構成されている。このような車両用ブレーキ液圧制御装置においては、従来、電磁弁の一端部が基体の装着穴に装着されて、他端部が基体表面から突出するとともに、コイル組立体の接続端子がハウジングの制御ユニットに繋がる接続端子にプロジェクション溶接されることで、コイル組立体が接続端子を介してハウジングから吊り下げられた状態で固定される構造が知られている(特許文献1参照)。そして、このような車両用ブレーキ液圧制御装置では、基体にハウジングを取り付ける際に、基体から突出した電磁弁を、略円筒状のコイル組立体で囲繞するようにして組み立てられている。
【0003】
このような構成では、コイル組立体は、接続端子を介してハウジングに固定されているものの、それ以外の部分は固定されておらず、さらに、コイル組立体の筒部と電磁弁との間には、隙間が存在する。そのため、車両の走行中において、車両用ブレーキ液圧制御装置に過大な振動が加わると、コイル組立体が振られる問題があった。
【0004】
そこで、基体の一面とハウジングとの間に弾性材が設けられており、この弾性材の一部である線状部が、基体の一面とコイル組立体との間、および隣り合うコイル組立体の間で、挟まれるように構成することで、前記の問題を解決した車両用ブレーキ液圧制御装置が発明されていた(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3660297号公報
【特許文献2】特開2007−22223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した従来の車両用ブレーキ液圧制御装置(特許文献2)では、基体の一面とコイル組立体との間、および隣り合うコイル組立体の間に、弾性材の線状部を新たに設けているので、部品点数の増加に伴い、製造コストの上昇や、小型化への障害を招いてしまう虞があった。
【0007】
このような観点から、本発明は、部品点数の増加を抑制し、製造コストの上昇および小型化への障害の要因を取り除くことができる車両用ブレーキ液圧制御装置およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明は、基体と、この基体の一面に配設された電磁弁と、この電磁弁に装着されたコイル組立体と、前記基体の前記一面に装着されたハウジングと、このハウジング内に収容された制御ユニットと、を備え、前記コイル組立体と前記ハウジングとが接続端子にて電気的に接続された車両用ブレーキ液圧制御装置であって、前記コイル組立体は、前記電磁弁を囲繞する筒部を有するボビンと、前記筒部に電線を巻きつけて形成したコイルと、を備えており、前記筒部は、所定の締付力をもって前記電磁弁を締め付ける締付部を構成することを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置である。
【0009】
前記構成の車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、基体の一面とコイル組立体との間、および隣り合うコイル組立体間に弾性材を設けることなく、コイル組立体を電磁弁に確実に固定でき、固定強度も高くなる。よって、特許文献1からの部品点数の増加をなくし、製造コストの上昇および小型化への障害の要因を取り除くことができる。さらに、コイル組立体と電磁弁との固定強度が高くなることで、接続端子にかかる負荷が軽減される。
【0010】
また、本発明においては、前記筒部は、熱により軟化する材料にて構成されており、前記コイルに通電することで発生した熱で軟化し、前記コイルの縮径に伴って縮径されて前記電磁弁を締め付ける締付部を構成するのが好ましい。このような構成とすることで、コイル組立体の筒部で電磁弁を締め付け、コイル組立体を電磁弁に確実に固定でき、固定強度が高くなる。
【0011】
さらに、本発明においては、前記筒部は、前記電磁弁の外径より小さい内径を備えて構成されており、その内部に前記電磁弁を圧入することで、前記電磁弁を締め付ける締付部を構成するのが好ましい。このような構成とすることで、コイル組立体の筒部で電磁弁を締め付け、コイル組立体を電磁弁に確実に固定でき、固定強度が高くなる。
【0012】
また、本発明においては、前記電磁弁は、前記基体にかしめ固定されるように構成するのが好ましい。このような構成とすることで、電磁弁の基体への固定強度が高まるので、基体と電磁弁間の振動を抑えることができ、コイル組立体と電磁弁との固定強度がさらに高くなる。
【0013】
さらに、本発明は、基体と、この基体の一面に配設される電磁弁と、この電磁弁に装着されるコイル組立体と、前記基体の前記一面に装着されるハウジングと、このハウジング内に収容される制御ユニットと、を備え、前記コイル組立体と前記ハウジングとが接続端子にて電気的に接続される車両用ブレーキ液圧制御装置の製造方法であって、前記コイル組立体のボビンを、熱により軟化する材料にて形成し、前記ボビンの筒部に、電線を巻きつけてコイルを形成し、前記コイル組立体が固定された前記ハウジングを前記基体へ組み付けた後に、前記コイルに通電することで発生した熱で前記筒部を軟化させ、前記コイルの縮径に伴って前記筒部を縮径させて前記電磁弁を締め付けることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置の製造方法である。
【0014】
このような製造方法によれば、コイルに電流を流すだけで、部品点数を増加させることなく、コイル組立体の筒部で電磁弁を締め付けることができる。したがって、従来のように基体の一面とコイル組立体との間、および隣り合うコイル組立体間に弾性材を設けることなく、コイル組立体を電磁弁に確実に固定でき、固定強度も高くなる。よって、製造コストの上昇および小型化への障害の要因を取り除くことができる。さらに、コイル組立体と電磁弁との固定強度が高くなることで、接続端子にかかる負荷が軽減される。
【0015】
また、本発明においては、前記電磁弁を、前記基体に形成された取付穴に挿入し、前記取付穴の周囲の基体を塑性流動させることで前記電磁弁を前記基体にかしめ固定する製造方法が好ましい。このような製造方法とすることで、請求項4と同様に、電磁弁の基体への固定強度が高まるので、基体と電磁弁間の振動を抑えることができ、コイル組立体と電磁弁との固定強度がさらに高くなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、車両用ブレーキ液圧制御装置において、部品点数の増加を抑制し、製造コストの上昇および小型化への障害の要因を取り除くことができるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置示した一部破断側面図である。
【図2】電磁弁とコイル組立体周りの構造を示した図であって、(a)はコイルに通電前の状態を示した要部拡大断面図、(b)はコイルに通電後の状態を示した要部拡大断面図である。
【図3】電磁弁の基体への固定状態を示した図であって、(a)はかしめ加工前の状態を示した要部拡大断面図、(b)はかしめ加工後の状態を示した要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明を実施するための形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施形態の説明において、「上下方向」は、電磁弁を上方から基体の取付穴に組み付けた状態を基準としていて、図1乃至図3の紙面の上下方向と同じ方向である。
【0019】
図1に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置1は、基体10と、この基体10の一面11に配設された電磁弁30と、この電磁弁30に装着されたコイル組立体50と、基体10の一面11に装着されたハウジング70と、このハウジング70内に収容された制御ユニット80と、を備えて構成されている。また、基体10の一面11の裏側の面には、図示せぬポンプを駆動させる電動モータ90が設けられている。
【0020】
基体10は、略直方体に形成される金属部材であり、内部にブレーキ液の流路が形成されている。基体10の一面11には、電磁弁30を取り付けるための取付穴12が形成されている。取付穴12は、例えば、8つ形成されており、二行四列に配列されている。これら電磁弁30および取付穴12周りの構造は、後に詳細に説明する。
【0021】
ハウジング70は、基体10側に向かって開口する第一収容部71aと、基体10の反対側に向かって開口する第二収容部71bとを有するハウジング本体部71と、第二収容部71bを塞ぐための蓋部72とを有している。第二収容部71bには、制御ユニット80が収容されている。これらハウジング70と制御ユニット80でハウジングユニットが構成される。
【0022】
ハウジング本体部71は、樹脂にて略角筒状に形成されており、その内部には、内部空間を第一収容部71aと第二収容部71bとに仕切る仕切壁73が形成されている。第一収容部71aの基体10側開口周端縁には、ゴムシール取付溝74が形成されている。このゴムシール取付溝74には、環状のゴムシール(弾性材)75が嵌合されており、ハウジング70を基体10に取り付けたときに、ハウジング本体部71と基体10との間がシールされる。仕切壁73には、コイル組立体50を第一収容部71a側から差し込むための挿通孔76が形成されている。挿通孔76には、接続端子77が設けられている。接続端子77は、ハウジング本体部71内に埋設された金属板の一部として形成されて、挿通孔76の孔壁面から突出している。
【0023】
制御ユニット80は、コイル組立体50や電動モータ90などに供給する電流(通電)を適宜制御することで、各電磁弁30や電動モータ90の動作を制御するための制御基板であり、ハウジング本体部71の第二収容部71b側に固定されている。制御ユニット80は、ハウジング本体部71に埋設された金属板を介して、コイル組立体50や電動モータ90に電気的に接続されている。
【0024】
以下に、電磁弁30とコイル組立体50周りの構造について、図2および図3を参照して詳細に説明する。なお、図2では、常開型の電磁弁30を示しているが、その周囲のコイル組立体50の構成は、常閉型の電磁弁30の周囲のコイル組立体50構成の場合も同様である。
【0025】
図2に示すように、電磁弁30は、コイル組立体50に囲繞されるガイド筒31と、このガイド筒31の内周側に挿入されてガイド筒31の周囲と溶接により固定された弁ハウジング32とを備えており、段付きの略円柱形状に形成されている。ガイド筒31内には、コイル組立体50で発生する磁力によって移動する可動コア33が設けられ、弁ハウジング32内には、可動コア33の移動に伴って弁を開閉させる弁機構34が設けられている。そして、電磁弁30は、弁ハウジング32が基体10の一面11に形成された取付穴12に埋設され、ガイド筒31が一面11から突出した状態で、基体10に固定されている。
【0026】
図2および図3に示すように、弁ハウジング32の外周面には、リング状の溝部35が形成されている。溝部35は、断面が略V字形状に形成されている。弁ハウジング32の溝部35よりも下側に隣接する外周面32a(図3参照)は、取付穴12の内周面12aと略同等の径となるように形成されている。弁ハウジング32の溝部35よりも上側に隣接する外周面32b(図3参照)は、下側の外周面32aよりも小径に形成されている。
【0027】
電磁弁30は、基体10にかしめ固定されている。詳しくは、図3の(b)に示すように、取付穴12の上端周縁部の基体10(弁ハウジング32の周囲の基体10)が溝部35内へ塑性流動されて、塑性変形部13を形成することで、電磁弁30が基体10に係止されてかしめ固定されている。
【0028】
図2に示すように、コイル組立体50は、電磁弁30のガイド筒31を囲繞する筒部51aを有するボビン51と、筒部51aに電線52aを巻きつけて形成したコイル52と、このコイル52と電気的に接続された接続端子53と、ボビン51の軸方向両端を挟むようにしてボビン51に装着される断面略コ字状の磁路枠54とを備えて構成されている。ボビン51の筒部51aの軸方向両端には鍔部51b,51bがそれぞれ形成されている。接続端子53は、ボビン51の一端(上側)の鍔部51bから軸方向外側へ突出している。コイル組立体50は、接続端子53をハウジング70の接続端子77にプロジェクション溶接することで、ハウジング70に固定されている。ハウジング70を基体10に取り付ける前においては、コイル組立体50は、ハウジング70から接続端子53を介して吊り下げられた状態で固定されている。このとき、筒部51aは、電磁弁30のガイド筒31の外径よりも僅かに大きい内径を有しており、ボビン51の筒部51aと電磁弁30との間にクリアランスCが確保されている(図2の(a)参照)。
【0029】
ボビン51の筒部51aは、熱により軟化する熱可塑性樹脂材料(例えば、ポリアミド)にて構成されている。電線52aは、銅線からなる。電線52aは、ボビン51の筒部51aを径方向内側に締め付ける方向に応力が残留する程度にテンションをかけて、ボビン51の筒部51aに巻き付けられている。そして、筒部51aは、ハウジング70を基体10に取り付けた後にコイルに通電することで発生した熱で軟化して、コイル52の縮径に伴って縮径されて、所定の締付力をもって前記電磁弁を締め付ける締付部55を構成する。
【0030】
次に、前記構成の車両用ブレーキ液圧制御装置1の製造方法および車両用ブレーキ液圧制御装置1の作用を説明する。
【0031】
まず、所定の形状に成形した基体10に、電磁弁30の取付穴12を形成する。また、前記した作業に前後して、基体10の適所に、図示しないリザーバ、ポンプなどを装着するための穴(孔)を形成するとともに、基体10の表面を削孔することで基体10の内部にブレーキ液の流路(図示せず)などを形成する。
【0032】
次に、取付穴12に電磁弁30を挿入する。続いて、取付穴12の穴壁に塑性変形部13(図3の(b)参照)を形成して、電磁弁30をかしめ固定する。具体的には、図3の(a)に示すように、電磁弁30を取付穴12に挿入した後に、有底円筒状を呈するかしめ治具Eを、取付穴12の上端周縁部に押し当てて、取付穴12の底面方向に押圧することで、取付穴12の周囲(上端周縁部)の基体10(弁ハウジング32の周囲の基体10)を穴径方向内側へ塑性流動させて、塑性変形部13を形成する。このとき、塑性変形部13は、溝部35よりも上側の部分では弁ハウジング32の外周面32bに当接するとともに、溝部35に相当する部分では溝部35内へ入り込む。これによって、電磁弁30が基体10にかしめ固定される。
【0033】
このように、基体10の一部が、弁ハウジング32の溝部35へ入り込むので、電磁弁30が基体10に係止されることとなる。また、溝部35よりも上側の部分では塑性変形部13が弁ハウジング32を径方向中心側に押圧するので、弁ハウジング32と取付穴12との間に大面積のシール面が形成されるとともに、電磁弁30が取付穴12に抜け出し不能に保持されることになる。
【0034】
電磁弁30を基体10に組み付ける前、若しくは組み付けた後に、リザーバ、ポンプ(図示せず)、電動モータ90などを基体10に組み付ける。
【0035】
その後、電磁弁30を覆うようにハウジング70を基体10に組み付ける。このとき、図2の(a)に示すように、コイル組立体50の筒部51aと、電磁弁30との間にクリアランスCが確保されているので、電磁弁30のガイド筒31を、コイル組立体50のボビン51の内側に円滑に挿入することができる。
【0036】
そして、ハウジング70を基体10へ固定した状態では、コイル組立体50は、隙間(クリアランスC)をあけて電磁弁30を囲繞している。
【0037】
その後、コイル52に通電することで発生した熱でボビン51の筒部51aを軟化させ、コイル52の縮径に伴って筒部51aを縮径させて電磁弁30を締め付けるようにする。これによって、図2の(b)に示すように、筒部51aと電磁弁30との間のクリアランスCがなくなり、所定の締付力をもって、電磁弁30がボビン51の筒部51a(締付部55)で締め付けられる。
【0038】
通電は、例えば、一定の電流を、所定時間連続通電する。このようにすれば、筒部51aが適宜加熱されて軟化する。このとき、コイル52を構成する電線52aには引っ張り応力(テンション)がかかっているので、コイル52には、筒部51aを締め付ける応力が残留している。そのため、軟化した筒部51aは、コイル52によって径方向内側に締め付けられて、コイル52と一体的に縮径する。
【0039】
なお、コイル52に通電する電流の強さおよび通電時間は、ボビン51の材質および筒部51aの厚さ、コイル52の電線52aのテンション、巻き数および発熱率、ボビン51の必要縮径量に応じて適宜設定することができる。また、ボビン51の縮径量を設定することによって、筒部51aの内径寸法を変更して設定することも可能となる。
【0040】
コイル52への通電は、例えば、予め制御ユニット80に、最初の起動時に所定アンペアの電流をコイル52に所定時間通電させるプログラムを入力しておき、制御ユニット80にカプラーを接続して電源を入れてプログラムを起動させることで行うようにすればよい。
【0041】
以上説明した車両用ブレーキ液圧制御装置1によれば、基体10の一面11とコイル組立体50との間、および隣り合うコイル組立体50,50間に弾性材を設けることなく、コイル組立体50を電磁弁30に確実に固定できる。したがって、コイル組立体50が振られることなく接続端子53やその接続箇所に繰り返し荷重が作用するのを防止できる。
【0042】
特に、かかる車両用ブレーキ液圧制御装置1では、コイル組立体50のボビン51の筒部51aは締付部55となって、その筒部51a全体で、電磁弁30を抱持するので、接触面積が大きくなり固定強度も高くなる。さらに、コイル組立体50は、ボビン51の筒部51aが電磁弁30に接続されるとともに、接続端子53がハウジング70の接続端子77に接続されて、二点支持されることとなるので、安定した状態で固定されるとともに、接続端子53,77の接続固定部にかかる負担を低減できる。
【0043】
さらに、コイル52の電線52aの巻き付け時のテンションを利用して、ボビン51の筒部51aを縮径させているので、別途の部品を設けることなく、従来から設けられていた部品を利用して通電を行うだけで済む。したがって、特許文献1の従来技術からの部品点数の増加をなくし、製造コストの上昇および小型化への障害の要因を取り除くことができる。
【0044】
また、電磁弁30を基体10にかしめ固定しているので、電磁弁30の基体10への固定強度が高まる。これによって、基体10の振動による電磁弁30の振動を抑えることができるので、コイル組立体50と電磁弁30との固定強度がさらに高くなり、コイル組立体50の振動をさらに抑制できる。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態では、図示しないが、ボビンの筒部が電磁弁の外径より僅かに小さい内径を有するように構成されている。これによって、ハウジングを基体に組み付ける際に、電磁弁がボビンの筒部の内部に圧入されることになる。したがって、筒部が所定の締付力をもって電磁弁を締め付ける締付部となる。なお、その他の構成については、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0046】
本実施形態によっても、基体の一面とコイル組立体との間、および隣り合うコイル組立体間に弾性材を設けることなく、コイル組立体を電磁弁に確実に固定できる。したがって、コイル組立体が振られることなく接続端子やその接続箇所に繰り返し荷重が作用するのを防止できる。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、予め制御ユニット80に、最初の起動時に電流を通電させるプログラムを入力しておき、コイル52への通電を行っているが、通電の方法はこれに限定されるものではなく、種々の方法を採用できる。例えば、加工ライン上で、ハウジング70を基体10に取り付けた後に、コイル52に電線を接続して直接通電させるようにしてもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、コイル組立体50の接続端子53とハウジング70の接続端子77は溶接にて接合されているが、接合方法はこれに限定されるものではなく、プレスフィット等、他の方法であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 車両用ブレーキ液圧制御装置
10 基体
11 一面
12 取付穴
30 電磁弁
50 コイル組立体
51 ボビン
51a 筒部
52 コイル
52a 電線
53 接続端子
55 締付部
70 ハウジング
77 接続端子
80 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、この基体の一面に配設された電磁弁と、この電磁弁に装着されたコイル組立体と、前記基体の前記一面に装着されたハウジングと、このハウジング内に収容された制御ユニットと、を備え、
前記コイル組立体と前記ハウジングとが接続端子にて電気的に接続された車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
前記コイル組立体は、前記電磁弁を囲繞する筒部を有するボビンと、前記筒部に電線を巻きつけて形成したコイルと、を備えており、
前記筒部は、所定の締付力をもって前記電磁弁を締め付ける締付部を構成する
ことを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記筒部は、熱により軟化する材料にて構成されており、前記コイルに通電することで発生した熱で軟化し、前記コイルの縮径に伴って縮径されて前記電磁弁を締め付ける締付部を構成する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記筒部は、前記電磁弁の外径より小さい内径を備えて構成されており、その内部に前記電磁弁を圧入することで、前記電磁弁を締め付ける締付部を構成する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記電磁弁は、前記基体にかしめ固定された
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項5】
基体と、この基体の一面に配設される電磁弁と、この電磁弁に装着されるコイル組立体と、前記基体の前記一面に装着されるハウジングと、このハウジング内に収容される制御ユニットと、を備え、
前記コイル組立体と前記ハウジングとが接続端子にて電気的に接続される車両用ブレーキ液圧制御装置の製造方法であって、
前記コイル組立体のボビンを、熱により軟化する材料にて形成し、
前記ボビンの筒部に、電線を巻きつけてコイルを形成し、
前記コイル組立体が固定された前記ハウジングを前記基体へ組み付けた後に、前記コイルに通電することで発生した熱で前記筒部を軟化させ、前記コイルの縮径に伴って前記筒部を縮径させて前記電磁弁を締め付ける
ことを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置の製造方法。
【請求項6】
前記電磁弁を、前記基体に形成された取付穴に挿入し、
前記取付穴の周囲の基体を塑性流動させることで前記電磁弁を前記基体にかしめ固定する
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−184675(P2010−184675A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31587(P2009−31587)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】