説明

車両用ブレーキ装置

【課題】一制動期間内でABS制御手段が作動し終了した後に再始動する見込みを増加させない範囲で回生制動力を発生し、従来よりも回生効率を向上した車両用ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】液圧ブレーキ装置と、回生ブレーキ装置と、目標取得手段、協調制御手段、およびアンチロックブレーキ制御手段を有する制動制御装置とを備える車両用ブレーキ装置であって、制動制御装置は、ブレーキ操作部材が継続して操作されている一制動期間内でアンチロックブレーキ制御手段が作動したときに、ABS制御期間が終了して協調制御手段が再始動した時点(時刻t4)の目標制動力FRを回生許可制動力FHと演算する最終値演算手段と、一制動期間内でABS制御期間が終了して協調制御手段が再始動した(時刻t4)以降に作動し、目標制動力FRが回生許可制動力FH未満であるときにのみ回生制動力FEの発生を許可する回生許可手段と、をさらに有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧ブレーキ装置および回生ブレーキ装置を備えた車両用ブレーキ装置に関し、より詳細には、液圧ブレーキ装置および回生ブレーキ装置を協調制御する制動制御装置のアンチロックブレーキ制御が終了した後の作動に関する。
【背景技術】
【0002】
走行駆動源としてエンジンおよび発電電動機を備えるハイブリッド車両では、制動時に発電電動機で運動エネルギを電気エネルギに回生して蓄電し、燃費を向上するのが一般的になっている。この意味で、発電電動機は、駆動輪に回生制動力を付与する回生ブレーキ装置と考えることができる。回生ブレーキ装置は、単独では十分な制動力が得られないので、通常は従来の液圧ブレーキ装置、例えばマスタシリンダによる基礎液圧制動力とポンプによる制御液圧制動力とを足し合わせる装置が併用される。したがって、液圧ブレーキ装置および回生ブレーキ装置を協調制御することが必要となる。
【0003】
この協調制御では、ドライバーの意図する目標制動力をブレーキ操作部材の操作ストローク量またはマスタシリンダ圧力で検出し、回生ブレーキ装置の回生効率を向上するために、目標制動力を基礎液圧制動力と回生制動力で賄うように制御する。さらに、基礎液圧制動力と回生制動力の和が目標制動力に不足するときには制御液圧制動力を発生させ、3つの制動力を加算した全制動力を目標制動力に一致させるように制御する。
【0004】
また近年では、車輪にロックの傾向が生じたときに、付与する制動力を意図的に減少させてロックを抑制するアンチロックブレーキ制御(以降ではABS制御と略記)機能を装備するのが一般的になっている。ハイブリッド車両におけるABS制御では、従来のガソリン車両と比較して制動制御が複雑化するため、特許文献1などに新しい制動制御技術が提案されている。
【0005】
特許文献1に開示される制動力制御装置は、油圧制動手段(液圧ブレーキ装置)と回生制動手段(回生ブレーキ装置)とを備え、回生制動力の発生はABS制御が実行される場合に禁止され、ABS制御の終了を判定するABS終了判別手段と、ブレーキ操作中のABS制御が終了した後に回生制動力の発生を禁止する回生制動禁止手段とをさらに備えている。これにより、回生制動の入り切りが繰り返されることに起因し、制動力に不連続が生じ、また駆動モータの操作音が大きくなることで運転者に違和感を与えてしまうのを防止できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3541646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の制動力制御装置では、回生制動力が付与される駆動輪でスリップ(ロックの傾向)が生じたときに、ABS制御できめ細かい制御を行うことが難しい回生制動力の発生を禁止し、油圧制動力(液圧英動力)を車両状況に合わせてきめ細かく制御する。このとき、回生制動力を油圧制動力に移行させるが、制動力に不連続が生じて運転者に違和感を与えてしまう。そして、一旦ABS制御が終了したときに回生協調制動を再開すると、再度駆動輪がスリップしてABS制御開始条件が再成立し、これによって回生制動の入り切りが繰り返され制動力が不連続となるおそれが大きいため、回生協調制動の再開を禁止している。回生協調制動の再開を禁止する制御は、ブレーキが継続して操作されている一制動期間の間で実施し、次の制動操作では再び回生協調制動を許容する。
【0008】
前述の従来技術では、一旦ABS制御が終了した後の回生協調制動を禁止しているため、その分の回生効率の低下を招いている。ところで、ABS制御終了後に回生協調制動を再開した場合に、ABS制御開始条件が必ず成立してABS制御が再始動するとは限らない。つまり、ブレーキの操作状況の変化や回生制動力の大きさによってはABS制御開始条件が成立しない場合もあり、回生制動力を発生し得る余地がある。換言すれば、一制動期間内でABS制御の開始と終了ならびに回生制動の入り切りを繰り返すハンチングのおそれを低減しつつ、回生効率を向上することが期待できる。
【0009】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、一制動期間内でABS制御手段が作動し終了した後に再始動する見込みを増加させない範囲で回生制動力を発生し、従来よりも回生効率を向上した車両用ブレーキ装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する請求項1に係る車両用ブレーキ装置の発明は、車輪に液圧制動力を調整可能に付与する液圧ブレーキ装置と、前記車輪のうちで発電電動機に駆動される駆動輪に回生制動力を付与する回生ブレーキ装置と、ブレーキ操作部材の操作量に対応した目標制動力を取得する目標取得手段、前記液圧制動力と前記回生制動力とを加算した全制動力が前記目標制動力に一致するように前記液圧ブレーキ装置および前記回生ブレーキ装置を協調制御する協調制御手段、および前記協調制御手段が作動していて前記車輪にロックの傾向が生じた場合に前記協調制御手段を停止し前記回生制動力の発生を禁止するとともに前記液圧制動力を調整して前記ロックを抑制するアンチロックブレーキ制御手段を有する制動制御装置と、を備える車両用ブレーキ装置であって、前記制動制御装置は、前記ブレーキ操作部材が継続して操作されている一制動期間内で前記アンチロックブレーキ制御手段がABS制御期間にわたって作動したときに、前記ABS制御期間が終了して前記協調制御手段が再始動した時点の目標制動力を回生許可制動力と演算する最終値演算手段と、前記一制動期間内で前記ABS制御期間が終了して前記協調制御手段が再始動した以降に作動し、前記目標制動力が前記最終値演算手段で演算された前記回生許可制動力未満であるときにのみ前記回生制動力の発生を許可する回生許可手段と、をさらに有する。
【0011】
請求項2に係る車両用ブレーキ装置の発明は、車輪に液圧制動力を調整可能に付与する液圧ブレーキ装置と、前記車輪のうちで発電電動機に駆動される駆動輪に回生制動力を付与する回生ブレーキ装置と、ブレーキ操作部材の操作量に対応した目標制動力を取得する目標取得手段、前記液圧制動力と前記回生制動力とを加算した全制動力が前記目標制動力に一致するように前記液圧ブレーキ装置および前記回生ブレーキ装置を協調制御する協調制御手段、および前記協調制御手段が作動していて前記車輪にロックの傾向が生じた場合に前記協調制御手段を停止し前記回生制動力の発生を禁止するとともに前記液圧制動力を調整して前記ロックを抑制するアンチロックブレーキ制御手段を有する制動制御装置と、を備える車両用ブレーキ装置であって、前記制動制御装置は、前記ブレーキ操作部材が継続して操作されている一制動期間内で前記アンチロックブレーキ制御手段がABS制御期間にわたって作動したときに、前記ABS制御期間中における目標制動力の最小値を回生許可制動力と演算する最小値演算手段と、前記一制動期間内で前記ABS制御期間が終了して前記協調制御手段が再始動した以降に作動し、前記目標制動力が前記最小値演算手段で演算された前記回生許可制動力未満であるときにのみ前記回生制動力の発生を許可する回生許可手段と、をさらに有する。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1または2において、前記回生許可手段は、前記回生許可制動力から前記目標制動力を差し引いたABS見込み余力の大小に対応して、許可する回生制動力の大きさを制限する。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記回生許可手段は、前記一制動期間内で前記ABS制御期間が終了して前記協調制御手段が再始動しさらに一定時間を経過した後に作動する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る車両用ブレーキ装置の発明では、制動制御装置は、一制動期間内でアンチロックブレーキ制御手段(ABS制御手段)がABS制御期間にわたって作動したときに、ABS制御期間が終了して協調制御手段が再始動した時点の目標制動力を回生許可制動力と演算し、協調制御手段が再始動した以降に目標制動力が回生許可制動力未満であるときにのみ回生制動力の発生を許可する。ここで、回生許可制動力は、ABS制御手段が終了した時点の目標制動力であり、換言すればABS制御手段が再始動する目安となる量である。したがって、協調制御手段が再始動した以降に目標制動力が回生許可制動力未満であるときには、ABS制御手段が再始動する見込みは少なく、回生制動力を発生しつつ総制動力を目標制動力に一致させることができる。これにより、一制動期間内でABS制御手段が作動し終了した後に再始動する見込みを増加させない範囲で回生制動力を発生し、従来よりも回生効率を向上できる。
【0015】
請求項2に係る車両用ブレーキ装置の発明では、制動制御装置は、一制動期間内でアンチロックブレーキ制御手段(ABS制御手段)がABS制御期間にわたって作動したときに、ABS制御期間中における目標制動力の最小値を回生許可制動力と演算し、協調制御手段が再始動した以降に目標制動力が回生許可制動力未満であるときにのみ回生制動力の発生を許可する。ここで、回生許可制動力は、ABS制御期間内でABS制御手段が終了しなかった最小の目標制動力であり、請求項1と同様、ABS制御手段が再始動する目安となる量である。したがって、協調制御手段が再始動した以降に目標制動力が回生許可制動力未満であるときには、ABS制御手段が再始動する見込みは少なく、回生制動力を発生しつつ総制動力を目標制動力に一致させることができる。これにより、一制動期間内でABS制御手段が作動し終了した後に再始動する見込みを増加させない範囲で回生制動力を発生し、従来よりも回生効率を向上できる。
【0016】
なお、請求項1および請求項2において、協調制御手段が再始動した以降に目標制動力が回生許可制動力以上であるときには、ABS制御手段が再始動する見込みは従来技術と同程度にあり、このとき従来技術と同様に回生制動力の発生を許可しない。したがって、仮にABS制御手段が再始動しても、従来技術と同様で回生制動力を液圧制動力に移行させる必要がなく、制動力が連続的に変化して違和感が発生しない。
【0017】
請求項3に係る発明では、回生許可手段は、回生許可制動力から目標制動力を差し引いたABS見込み余力の大小に対応して、許可する回生制動力の大きさを制限する。つまり、回生許可制動力よりも目標制動力が大きく減少しているときは、ABS制御手段が再始動する見込みは殆ど無いので、大きな回生制動力を発生する。一方、回生許可制動力よりも目標制動力が少しだけ減少しているときは、ABS制御手段が再始動する見込みが潜在的に増加するので、小さな回生制動力を発生する。これにより、ABS制御手段が一旦終了した後に回生制動力を発生していて仮にABS制御手段が再始動しても、液圧制動力に移行させる回生制動力の量が確率的に削減され、移行時の制動力の不連続および違和感を小さく抑制できる。
【0018】
請求項4に係る発明では、回生許可手段は、一制動期間内でABS制御期間が終了して協調制御手段が再始動した直後に作動せずに、さらに一定時間を経過した後に作動する。これにより、ABS制御手段が終了して協調制御手段に移行する過渡的な状況下での作動を複雑化させずに安定化することができ、例えば各種の外乱の影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の車両用ブレーキ装置の装置構成を示す概要図である。
【図2】図1中の液圧ブレーキ装置の構成を詳細に説明する図である。
【図3】第1実施形態におけるブレーキECU(制動制御装置)の制動制御の処理フローを説明するフローチャートの図である。
【図4】第1実施形態の車両用ブレーキ装置で、一制動期間の途中にABS制御手段3が作動したときのタイムチャートを示す図である。
【図5】液圧制動力および回生制動力の配分を例示説明する図であり、(1)は回生許可制動力が比較的大きい場合、(2)は回生許可制動力が比較的小さい場合を示している。
【図6】制動力の前後配分線図であり、(1)は回生許可制動力が比較的大きい場合、(2)は回生許可制動力が比較的小さい場合を示している。
【図7】第2実施形態におけるブレーキECU(制動制御装置)の制動制御の処理フローを説明するフローチャートの図である。
【図8】第2実施形態の車両用ブレーキ装置で、一制動期間の途中にABS制御手段が作動したときのタイムチャートを示す図である。
【図9】第3実施形態におけるブレーキECU(制動制御装置)の制動制御の処理フローを説明するフローチャートの図である。
【図10】第3実施形態の車両用ブレーキ装置で、一制動期間の途中にABS制御手段が作動したときのタイムチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1実施形態の車両用ブレーキ装置について、図1〜図6を参考にして説明する。図1は、本発明の第1実施形態の車両用ブレーキ装置1の装置構成を示す概要図である。図示されるように、車両用ブレーキ装置1は、回生ブレーキ装置A、液圧ブレーキ装置B、ハイブリッドECU50、ブレーキECU60などにより構成されている。車両用ブレーキ装置1は、前輪駆動の4輪ハイブリッド車両に搭載されるもので、通常はドライバーのブレーキペダル21の踏み込み操作に応じた制動力を発生するように作動する。これとは別に、車輪7FR、7FL、7RR、7RLにロックの傾向が生じた場合に制動力を調整してロックを抑制するアンチロックブレーキ制御機能を有し、他にもアクティブクルーズコントロール機能やブレーキアシスト機能、トラクションコントロール機能や電子安定性制御機能などを有していてもよい。
【0021】
回生ブレーキ装置Aは、図略の発電電動機で構成され、図略のインバータ装置およびバッテリ装置を含んでいる。発電電動機は、バッテリ装置の直流電圧を交流電圧に変換するインバータ装置により駆動されて電動機として作動し、駆動輪である前右輪7FRおよび前左輪7FLを駆動する。また、発電電動機は、前右輪7FRおよび前左輪7FLにより駆動されて発電機として作動し、インバータ装置を介してバッテリ装置を充電する。このとき、発電電動機からの反力により前右輪7FRおよび前左輪7FLに回生制動力FEが付与されるので、一般的にこの機能を回生ブレーキ装置Aと呼称している。前右輪7FRおよび前左輪7FLは、共通の車軸で発電電動機に連結されているので、概ね同量の回生制動力FEが発生する。回生ブレーキ装置Aで物理的に発生可能な最大回生制動力FEmax1は、車両の走行状況や車載バッテリの蓄電状態などに依存して変化する。なお、発電電動機に代えて発電機および電動機を別々に備え、発電機に回生ブレーキ装置Aの機能を設けることもできる。
【0022】
液圧ブレーキ装置Bは、作動液として作動油を使用しており、図示されるようにブレーキペダル21、負圧式ブレーキブースタ22、マスタシリンダ23、液圧制御ユニット25、などで構成されている。液圧ブレーキ装置Bは、ブレーキペダル21の踏み込み操作による踏力を負圧式ブレーキブースタ22で助勢し、マスタシリンダ23を作動させて基礎液圧を発生させ、液圧制御ユニット25でポンプにより制御液圧を基礎液圧に加えて前右輪7FR、前左輪7FL、後右輪7RR、および後左輪7RLの各ホイールシリンダWC4、WC3、WC2、WC1に付与するものである。
【0023】
ハイブリッドECU50は、ハイブリッド車両のパワートレイン全体を制御する電子制御装置であり、図略のエンジンおよび発電電動機を協調して制御するものである。ハイブリッドECU50は、インバータ装置に接続されて、回生ブレーキ装置Aを制御するようになっており、発生可能な最大回生制動力FEmax1を把握している。
【0024】
ブレーキECU60は、液圧ブレーキ装置Bおよび回生ブレーキ装置Aを協調制御する本発明の制動制御装置に相当する。ブレーキECU60は、通信によりハイブリッドECU50に回生制動力FEの目標値である回生制動力指令値FE1を指令し、回生制動力FEの実績値である回生制動力実行値FE2を受け取ることで回生ブレーキ装置Aの作動を制御する。また、ブレーキECU60は、液圧制御ユニット25内の弁類を開閉制御し、ポンプを制御して液圧ブレーキ装置Bの作動を制御する。ブレーキECU60は、後述する目標取得手段61、協調制御手段62、アンチロックブレーキ制御手段63(ABS制御手段)、最終値演算手段64、および回生許可手段65の各機能手段を有している。
【0025】
図2は、図1中の液圧ブレーキ装置Bの構成を詳細に説明する図である。ブレーキペダル21は、ブレーキ操作部材に相当する部材であり、踏み込み操作量に応じて負圧式ブレーキブースタ22を作動させる。ブレーキペダル21の操作量であるストローク量は、ペダルストロークセンサ21aにより検出されて、ブレーキECU60に検出信号が出力されるようになっている。負圧式ブレーキブースタ22は、図略のエンジンから供給される負圧を利用して、ブレーキペダル21の踏み込み操作による踏力を助勢し、マスタシリンダ23を作動させる。
【0026】
マスタシリンダ23は、タンデム式であり、有底筒状に形成されたハウジング23aと、ハウジング23a内に液密かつ摺動可能に並べて収納された第1および第2ピストン23b、23cとにより構成されている。第1ピストン23bと第2ピストン23cとの間には第1液圧室23dが形成され、第2ピストン23cとハウジング23aの底部との間には第2液圧室23fが形成されている。第1および第2ピストン23b、23cは負圧式ブレーキブースタ22に駆動され、第1および第2液圧室23d、23fに基礎液圧が発生するようになっている。
【0027】
また、第1ピストン23bが戻り位置(ブレーキペダル21が操作されていないときの初期位置)から所定ストローク前進するまでの間、第1液圧室23dとリザーバ24とを連通する符号略の第1ポートがマスタシリンダ23に穿設されている。同様に、第2ピストン23cが戻り位置から所定ストローク前進するまでの間、第2液圧室23fとリザーバ24とを連通する符号略の第2ポートがマスタシリンダ23に穿設されている。したがって、ブレーキペダル21の操作量が小さく第1および第2ピストン23b,23cの移動量が小さい間、第1および第2液圧室23d、23fはリザーバ24に連通するので、基礎液圧は発生しない。これにより、ブレーキペダル21の操作量が小さい間、目標制動力FRに相当する回生制動力FEを優先して発生できるようになっている。そして、ブレーキペダル21の操作量が増加し、第1および第2ピストン23b,23cが所定ストロークを超えて前進すると第1および第2ポートを閉止するので、以降は基礎液圧が発生するようなっている。
【0028】
液圧制御ユニット25は、液圧制御弁31、41、ABS制御弁を構成する増圧制御弁32、33、42、43および減圧制御弁35、36、45、46、調圧リザーバ34、44、ポンプ37、47、モータMなどが一つのケースにパッケージされて構成されている。図2に示されるように、本第1実施形態の液圧ブレーキ装置Bのブレーキ配管経路は、後右輪7RRおよび後左輪7RLに液圧制動力を付与する第1配管経路L1と、前左輪7FLおよび前右輪7FRに液圧制動力を付与する第2配管経路L2とを有する前後配管方式で構成されている。マスタシリンダ23の第1液圧室23dは第2配管経路L2に接続され、第2液圧室23fは第1配管経路L1に接続されている。
【0029】
まず、液圧制御ユニット25の第1配管経路L1の構成について説明する。第1配管経路L1には、差圧制御弁で構成される液圧制御弁31が備えられている。液圧制御弁31は、ブレーキECU60からの制御により、連通状態および差圧状態に切り替わるものである。液圧制御弁31は通常は連通状態とされており、差圧状態に切り替わることによりホイールシリンダWC1、WC2側の油経路L12をマスタシリンダ23側の油経路L11の基礎液圧よりも所定の差圧分高い圧力に保持することができる。この差圧が制御液圧であり、後述するポンプ37、47の吐出圧から得ることができる。
【0030】
油経路L12は2つに分岐しており、分岐した一方には、後左輪7RLのホイールシリンダWC1へのブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁32が備えられている。分岐した他方には、後右輪7RRのホイールシリンダWC2へのブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁33が備えられている。増圧制御弁32、33は、ブレーキECU60により連通状態および遮断状態を切り替え制御できる2位置弁として構成されている。そして、増圧制御弁32、33が連通状態に制御されているときには、マスタシリンダ23の基礎液圧、またはポンプ37の駆動によって形成される制御液圧と基礎液圧とを加算した液圧を各ホイールシリンダWC1、WC2に加えることができる。
【0031】
また、増圧制御弁32、33と各ホイールシリンダWC1、WC2との間における油経路L12は、油経路L13により調圧リザーバ34のリザーバ孔34aに連通されている。油経路L13には、ブレーキECU60により連通状態および遮断状態を切り替え制御できる減圧制御弁35、36がそれぞれ配設されている。
【0032】
ABS制御手段63が作動していない通常の作動状態では、増圧制御弁32、33は連通状態とされ、減圧制御弁35、36は遮断状態とされている。ABS制御手段63が作動すると、減圧モードでは増圧制御弁32、33が閉じられて減圧制御弁35、36が開かれる。これにより、油経路L13を経由して調圧リザーバ34へ作動油が排出され、ホイールシリンダWC1、WC2における液圧が減圧され、後左輪7RLおよび後右輪7RRのロックを抑制するようになっている。
【0033】
また、ABS制御手段63の増圧モードでは、増圧制御弁32、33が開かれて減圧制御弁35、36が閉じられる。これにより、ホイールシリンダWC1、WC2における液圧が増圧され、後左輪7RLおよび後右輪7RRの制動力が増加するようになっている。なお、増圧制御弁32、33には、それぞれ安全弁32a、33aが並列に設けられている。安全弁32a、33aにより、ABS制御手段63の作動時にブレーキペダル21の踏み込みがなくなったときに、ホイールシリンダWC1、WC2の作動油をリザーバ24に戻すようになっている。
【0034】
さらに、液圧制御弁31と増圧制御弁32、33との間における油経路L12と調圧リザーバ34のリザーバ孔34aとを結ぶ油経路L14には、ポンプ37が安全弁37aとともに配設されている。ポンプ37の吐出側に配設されているダンパ38は、吐出された作動油の液圧の脈動を吸収して油経路L12に作動油を圧送する。ポンプ37の吸入側は、調圧リザーバ34のリザーバ孔34aに接続されている。また、調圧リザーバ34のリザーバ孔34bと油経路L11とを連通する油経路L15が設けられ、調圧リザーバ34とマスタシリンダ23とが連通されている。
【0035】
ポンプ37は、ブレーキECU60からの指令でモータMの駆動電流が調整されることにより、吐出流量が調整される。ポンプ37は、ABS制御手段63の減圧モード時に作動し、ホイールシリンダWC1、WC2内の作動油または調圧リザーバ34に貯められている作動油を吸い込み、連通状態の液圧制御弁31を介してマスタシリンダ23に戻す。また、ポンプ37は、アクティブクルーズコントロール機能やブレーキアシスト機能の他、トラクションコントロール機能や電子安定性制御機能などの車両の姿勢を安定に制御する機能を実施する際に、制御液圧を発生させるために作動する。
【0036】
すなわち、ポンプ37は、差圧状態に切り替えられている液圧制御弁31に差圧を発生させるべく、マスタシリンダ23内の作動油を油経路L11および油経路L15を経由して吸い込み、油経路L14、L12および連通状態の増圧制御弁32、33を介して各ホイールシリンダWC1、WC2に吐出して制御液圧を付与する。さらに、ポンプ37は、回生ブレーキ装置Aで十分な回生制動力FEが得られない場合や回生制動力FEの発生が禁止された場合などにも作動して差圧を発生させ、各ホイールシリンダWC1、WC2に制御液圧を付与する。
【0037】
また、油経路L11には、マスタシリンダ23で生成された基礎液圧を検出する圧力センサPが設けられており、この検出信号はブレーキECU60に送信されるようになっている。なお、圧力センサPは、第2配管経路L2の油経路L21に設けるようにしてもよい。
【0038】
さらに、液圧制御ユニット25の第2配管経路L2も前述した第1配管経路L1と同様な構成であり、第2配管経路L2は油経路L21〜L25から構成されている。弁類なども同様であり、第2配管経路L2に液圧制御弁41および調圧リザーバ44が備えられている。分岐した油経路L22の一方には前左輪7FLのホイールシリンダWC3のブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁42が備えられ、分岐した他方には後後輪7RRのホイールシリンダWC2へのブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁43が備えられている。さらに、油経路L23に減圧制御弁45、46、油経路L24にポンプ47がそれぞれ備えられている。
【0039】
液圧制御ユニット25により、マスタシリンダ23の基礎液圧および、ポンプ37、47の駆動と液圧制御弁31、41の制御によって形成された制御液圧を各車輪7RL、7RR、7FL、7FRのホイールシリンダWC1、WC2、WC3、WC4に付与できる。各ホイールシリンダWC1、WC2、WC3、WC4は、基礎液圧および制御液圧が供給されると、ブレーキ手段BK1〜BK4を作動させて各車輪7RL、7RR、7FL、7FRに基礎液圧制動力FBおよび制御液圧制動力FCを付与する。ブレーキ手段BK1〜BK4としては、ディスクブレーキ、ドラムブレーキなどがあり、ブレーキパッド、ブレーキシューなどの摩擦部材が車輪に一体のディスクロータ、ブレーキドラムなどの回転を規制するようになっている。
【0040】
次に、ブレーキECU60が有する各機能手段について説明する。目標取得手段61は、ブレーキペダル21の操作量に対応した目標制動力FRを取得する手段である。当然ながら、ブレーキペダル21の操作量が増加したときに目標制動力FRを大きくするが、必ずしも比例関係である必要はない。目標取得手段61は、例えば、ブレーキペダル21の操作量と目標制動力FRとを対応付ける一覧表形式のマップを用いることで実現できる。
【0041】
協調制御手段62は、液圧制動力(基礎液圧制動力FBと制御液圧制動力FCの和)と回生制動力FEとを加算した全制動力が目標制動力FRに一致するように液圧ブレーキ装置Bおよび回生ブレーキ装置Aを協調制御する手段である。協調制御手段62は、ブレーキペダル21の操作量に応じて自動的に発生する基礎液圧制動力FBをベースとしつつ、できるだけ多くの回生制動力FEを発生させ、基礎液圧制動力FBと回生制動力FEとを加算した全制動力で目標制動力FRを賄えれば良しとする。賄えない場合、協調制御手段62は、液圧制御ユニット25のポンプ37、47を駆動して、不足分に相当する制御液圧制動力FCを発生させ、基礎液圧制動力FB、制御液圧制動力FC、および回生制動力FEの3つを加算した全制動力が目標制動力FRに一致するように制御する。
【0042】
アンチロックブレーキ制御手段63(ABS制御手段)は、車輪7RL、7RR、7FL7FRのいずれかにロックの傾向が生じた場合に、協調制御手段62を停止し回生制動力FEの発生を禁止するとともに液圧制動力を調整してロックを抑制する手段である。ロックの傾向を判定するABS開始判定条件は、従来技術を適宜応用して決定することができる。また、ABS制御期間中に発生すべき制動力、すなわちブレーキペダル21の操作量で定まる目標制動力FRよりも小さなABS時目標制動力FR(ABS)の決定方法にも従来技術を適宜用いることができる。ABS制御手段63は、きめ細かい制御を行うことが難しい回生制動力FEの発生を禁止し、液圧制御ユニット25で制御液圧制動力FCを調整して、ABS時目標制動力FR(ABS)を賄うように制御する。ロックの傾向が解消されると、ABS制御手段63は自動的に終了して、協調制御手段62が自動的に再始動される。
【0043】
最終値演算手段64は、ブレーキペダル21が継続して操作されている一制動期間内でABS制御手段63がABS制御期間にわたって作動したときに、ABS制御期間が終了して協調制御手段62が再始動した時点の目標制動力FRを回生許可制動力FHと演算する手段である。最終値演算手段64は、ABS制御期間内の各時点で目標制動力FRを記憶し、ABS制御期間が終了した時点の目標制動力FRを回生許可制動力FHとする。
【0044】
ここで、回生許可制動力FHは、ロックの傾向が解消されたときの目標制動力FRである。したがって、ABS制御手段が一旦終了した後に目標制動力FRが回生許可制動力FH以上になるとABS開始判定条件が成立してABS制御手段63が再始動する見込みが大きくなると考えられる。換言すれば、回生許可制動力FHはABS制御手段63が再始動する目安となる量である。別の言い方をすれば、目標制動力FRが回生許可制動力FH未満であればABS制御手段63が再始動する見込みは小さく回生制動力FEを発生して良いと判断でき、目標制動力FRが回生許可制動力FH以上になったら回生制動力FEを発生すべきでないと判断できる量でもある。
【0045】
なお、ドライバーの足が離れてブレーキペダル21が戻り位置に復帰した時点で、回生許可制動力FHはクリアされ、次の制動操作には持ち越されない。なぜなら、車両の進行に伴い路面状況などが変化して、車輪7RL、7RR、7FL7FRがロックする条件も変化すると考えられるからである。
【0046】
回生許可手段65は、一制動期間内でABS制御期間が終了して協調制御手段62が再始動した以降に作動し、目標制動力FRが回生許可制動力FH未満であるときにのみ回生制動力FEの発生を許可する手段である。前述したように、目標制動力FRが回生許可制動力FH以上であるかあるいは未満であるかにしたがい、回生許可手段65は回生制動力FEの発生の可否を判定する。さらに回生許可手段65は、回生許可制動力FHから目標制動力FRを差し引いたABS見込み余力FKの大小に対応して、許可する回生制動力FEの大きさを制限する。つまり、回生許可制動力FHよりも目標制動力FRが大きく減少しているときは許可する回生制動力FEの最大値、すなわち許可する最大回生制動力FEmax2を大とし、一方、回生許可制動力FHよりも目標制動力FRが少しだけ減少しているときは許可する最大回生制動力FEmax2を小とする。なお、回生ブレーキ装置Aで物理的に発生可能な最大回生制動力FEmax1は、許可する最大回生制動力FEmax2とは異なる量であり、ハイブリッドECU50から通信により取得できる。したがって、回生許可手段65が許可する最大回生制動力FEmax2は、通信により取得される最大回生制動力FEmax1を超えない。
【0047】
次に、ブレーキECU60の制動制御の処理フローについて、図3のフローチャートを参考にして説明する。図3のステップS1で、ブレーキECU60は入力処理を行う。具体的には、ペダルストロークセンサ21aからブレーキペダル21の操作量の情報を取得し、液圧制御ユニット25内の圧力センサPから基礎液圧の情報を取得し、他に液圧制御ユニット25の作動状況などを把握する。ブレーキECU60は、基礎液圧の情報に基づいて容易に基礎液圧制動力FBを求めることができる。次のステップS2で、目標取得手段61により目標制動力FRを演算する。次のステップS3では、目標制動力FRがゼロであるか否かを調査して、制動操作中であるか否かを判定する。目標制動力FRがゼロのとき、制動操作は終了していると判定し、処理フローを終了する。
【0048】
ステップS3で目標制動力FRがゼロでなく制動操作中のときステップS4に進み、ABS制御手段63が作動しているか調査し、ABS未作動のときステップS5に進み、ABS作動中のときステップS9に進み、ABS終了後のときステップS13に進む。ABS未作動時のステップS5で、ブレーキECU60は、発生可能な最大回生制動力FEmax1の情報をハイブリッドECU60から通信により取得する。次のステップS6で、要求操作力FRから基礎液圧制動力FBを差し引いた不足分を最大回生制動力FEmax1で賄えるか否かを調査する。賄えるときステップS7に進み、回生制動力指令値FE1を前述の不足分(=FR−FB)に設定する。また、賄えないときステップS8に進み、回生制動力指令値FE1を最大回生制動力FEmax1に設定する。ステップS7およびステップS8は、次にステップS18で合流する。
【0049】
ABS作動中のステップS9で、最終値演算手段64は、最新の要求制動力FRを用いて回生許可制動力FHを更新する。ステップS9の処理をABS作動中に毎回実施することにより、ABS制御手段63がいつ終了しても、終了時点の要求制動力FRが自動的に回生許可制動力FHになる。ABS制御手段63は、次のステップS10で予め定めた決定方法にしたがいABS時目標制動力FR(ABS)を決定し、ステップS11でABS時目標制動力FR(ABS)を目標制動力FRに置き換える。次のステップS12で、回生制動力指令値FE1をゼロに設定し、次いでステップS18に合流する。
【0050】
ABS終了後のステップS13で、回生許可手段65は、ABS制御手段63が終了した時点で得られた回生許可制動力FHから目標制動力FRを差し引いてABS見込み余力FKを演算する。次のステップS14で、許可する最大回生制動力FEmax2を演算する。最大回生制動力FEmax2は、ABS見込み余力FKの大小に対応する関数f(FK)で求められる。得られた最大回生制動力FEmax2は、ABS制御手段63が再始動する見込みを大きくしない範囲での最大値を意味する。次のステップS15で、要求操作力FRから基礎液圧制動力FBを差し引いた不足分を最大回生制動力FEmax2で賄えるか否かを調査する。賄えるときステップS16に進み、回生制動力指令値FE1を前述の不足分(=FR−FB)に設定する。また、賄えないときステップS8に進み、回生制動力指令値FE1を最大回生制動力FEmax2に設定する。ステップS16およびステップS17は、次いでステップS18に合流する。
【0051】
ステップS7、S8、S12、S16、およびS17のいずれかで回生制動力指令値FE1を設定すると、ステップS18に合流する。ステップS18では、回生制動力指令値FE1をハイブリッドECU50に送信する。これにより回生ブレーキ装置Aが作動して、回生制動力FEが発生する。ステップS19で、ブレーキECU60はハイブリッドECU50から回生制動力実行値FE2の情報を取得する。次に、ステップS20で、ブレーキECU60は、要求制動力FRから基礎液圧制動力FBおよび回生制動力実行値FE2を減算して制御液圧制動力FCを演算し、この制御液圧制動力FCを発生するように液圧制御ユニット25を制御する。これで制動制御の処理フローの1サイクルが終了し、一定時間経過するたびに再度ステップS1から処理フローが繰り返される。
【0052】
次に、第1実施形態の車両用ブレーキ装置1の作動について説明する。図4は、第1実施形態の車両用ブレーキ装置1で、一制動期間の途中にABS制御手段63が作動したときのタイムチャートを示す図である。図4で、横軸は共通の時間tであり、チャートは上から順番にブレーキペダル21の操作の有無、回生協調手段62の作動状況、回生協調の実施状況、ABS制御手段63の作動状況、目標制動力FRの変化、および回生制動力FEの変化である。また、図4には、ABS制御手段63が時刻t3から時刻t4までのABS制御期間で作動した場合が例示されている。
【0053】
図4の時刻t1で、ブレーキペダル21が踏み込み操作されると(Off→On)、目標制動力FRが発生し、回生協調手段62が始動し(Off→On)、直ちに回生協調が開始されて液圧制動力および回生制動力FEが発生する。時刻t1の直後にブレーキペダル21は強く踏み込まれ、時刻t2以降は徐々に踏み込まれており、踏み込み操作量に対応する目標制動力FRが示されている。回生協調手段62は、この目標制動力FRに一致するように、液圧制動力および回生制動力FEを加算した全制動力を制御する。
【0054】
時刻t3で、車輪7RL、7RR、7FL7FRのいずれかにロックの傾向が生じてABS開始判定条件が成立すると、協調制御手段62が停止し、ABS制御手段63が始動する(Off→On)。ABS制御手段63は、回生制動力FEの発生を禁止するとともに、目標制動力FRよりも小さい図示されていないABS時目標制動力FR(ABS)を決定し、これに一致するように液圧制動力を制御する。
【0055】
時刻t4で、ロックの傾向が解消されると、ABS制御手段63の作動が終了し、協調制御手段62が再始動する。この時点で発生している全制動力は目標制動力FRに一致し、この量が図示される回生許可制動力FHと演算される。図の例では、時刻t4以降で目標制動力FRは単調減少しており、回生許可制動力FHから目標制動力FRを差し引いたABS見込み余力FKは漸増している。したがって、時刻t4以降で、ABS見込み余力FKの大きさに対応する回生制動力FEの発生が許可され、回生協調制御が行われる。
【0056】
次に、制動力の配分について説明する。図5は、液圧制動力および回生制動力FEの配分を例示説明する図であり、(1)は回生許可制動力FHが比較的大きい場合、(2)は回生許可制動力FHが比較的小さい場合を示している。説明を簡易にするため、図5では発生可能な最大回生制動力FEmax1は一定としてある。また、図6は、制動力の前後配分線図であり、(1)は回生許可制動力FHが比較的大きい場合、(2)は回生許可制動力FHが比較的小さい場合を示している。
【0057】
図5の(1)で、横軸は目標制動力FR、縦軸は発生する制動力を示している。協調制御手段62は、目標制動力FRと発生する制動力とが一致するように制御し、したがって原点Oを通り傾き45°の協調線M上で作動する。協調線M上の原点Oから最大回生制動力FEmax1に相当するa点までの範囲では、前述したようにマスタシリンダ23で基礎液圧が発生せず、優先的に回生制動力FEを発生する範囲である。協調線M上のa点を超える範囲では、基礎液圧制動力FBが発生し、それでも不足する場合ブレーキECU60は制御液圧制動力FCを発生させる。ABS未作動時に発生可能な回生制動力FEmax1は、図中に水平な実線で示され、a点、b点、およびc点を通っている。
【0058】
一方、ABS作動後に許可する最大回生制動力FEmax2は、部分的に一点鎖線で示されるように台形状に変化する。すなわち、最大回生制動力FEmax2は、原点Oからa点までは協調線Mに一致し、a点からb点までは最大回生制動力FEmax1に一致し、b点以降は目標制動力FRの増加につれて減少し、目標制動力FRが回生許可制動力FHに一致するd点でゼロになっている。
【0059】
したがって、協調制御手段62は、ABS未作動時とABS終了後とでは、液圧制動力および回生制動力FEの配分を変える。例えば、目標制動力FR=FR1でABS未作動時に、協調制御手段62は、最大回生制動力FEmax1を優先的に発生し、目標制動力FRに対する不足分を基礎液圧制動力PBで賄う。それでも不足する場合には、協調制御手段62は、制御液圧FC1を発生する。同じ目標制動力FR=FR1でもABS終了後に、協調制御手段62は、最大回生制動力FEmax2を優先的に発生し、目標制動力FRに対する不足分を基礎液圧制動力PBおよび制御液圧制動力FC2で賄う。この例のように、協調制御手段62は、ABS未作動時に発生していた最大回生制動力FEmax1を、ABS終了後には最大回生制動力FEmax2へと制限する。
【0060】
なお、路面状況が劣悪などの条件下で回生許可制動力FHが比較的小さい場合、図5(2)に破線で示されるように、許可する最大回生制動力FEmax2はa点に達する前に制限を受ける。そして、最大回生制動力FEmax2は、a点よりも手前のe点で折れ曲がり、以降は目標制動力FRの増加につれて減少し、目標制動力FRが回生許可制動力FHに一致するf点に至るように三角形状に変化する。この場合、協調制御手段62は、ABS終了後に回生制動力FEの発生を一層顕著に制限する。
【0061】
次に、図6の(1)の前後配分線図で、横軸は前輪駆動力、縦軸は後輪駆動力を示し、図中の右上方ほど総制動力が大きいことを示している。図中で、原点Oを通り略一定の傾きを有する二点鎖線は、回生制動力FEを使用していないときの作動点を順次結んだ液圧制動力配分線である。液圧制動力配分線の傾きは、液圧ブレーキ装置Bにおける制動力の前後の配分比を示し、図の例では駆動前輪7FR、7FL側に相対的に大きな制動力が発生している。また、原点Oから水平に移動しa点で折れ曲がり以降液圧制動力配分線に平行してb点を通りc点に至る実線は、回生制動力FEを優先的に使用したときの作動点を順次結んだ総制動力配分線である。図6の(1)のa点〜d点は、図5の(1)のa点〜d点にそれぞれ対応している。
【0062】
図5の(1)において、原点Oから点aまでの間は回生制動力FEのみが発生する。これは、図6で、駆動前輪7FR、7FLのみに回生制動力FEが発生して、作動点が原点Oから水平にa点まで移動することに対応している。a点で回生制動力FEが最大回生制動力FEmax1に飽和すると、ABS未作動時には、単純に制動力の不足分を液圧制動力で発生し、図6の(1)に示されるように、作動点は斜め右上方のb点を経てc点に移動する。これに対し、ABS終了後には、b点で回生制動力FEの制限が始まり、図6の(1)に一点鎖線で示されるように作動点はb点から急峻な角度で移動し、液圧制動力配分線上のd点まで移動して回生制動力FEの発生がなくなる。
【0063】
なお、回生許可制動力FHが比較的小さい場合、図6の(2)に示されるとおり、a点よりも手前のe点で回生制動力FEの制限が始まり、作動点はe点からf点まで移動して回生制動力FEの発生がなくなる(図6の(2)のe点およびf点は図5の(2)のe点およびf点にそれぞれ対応)。
【0064】
第1実施形態の車両用ブレーキ装置1によれば、協調制御手段62が再始動した図4の時刻t4以降に目標制動力FRが回生許可制動力FH未満であり、このときにのみ回生制動力FEの発生が許可されて、ABS制御手段63が再始動する見込みを増加させない範囲で回生制動力FEを発生できる。したがって、図4の回生制動力FEに斜線を付した面積Sに相当する分だけ、従来よりも回生効率を向上できる。
【0065】
なお、協調制御手段62が再始動した以降に目標制動力FRが回生許可制動力FH以上であるときには、ABS制御手段63が再始動する見込みは従来技術と同程度にあり、このとき従来技術と同様に回生制動力FEの発生を許可しない。したがって、仮にABS制御手段63が再始動しても、従来技術と同様で回生制動力FEを液圧制動力に移行させる必要がなく、制動力が連続的に変化して違和感が発生しない。
【0066】
さらに、回生許可手段65は、回生許可制動力FHから目標制動力FRを差し引いたABS見込み余力FKの大小に対応して、許可する回生制動力FEの大きさを制限する。つまり、回生許可制動力FHよりも目標制動力FRが大きく減少しているときは、大きな回生制動力FEを発生し、回生許可制動力FHよりも目標制動力FRが少しだけ減少しているときは、小さな回生制動力FEを発生する。これにより、ABS制御手段63が一旦終了した後に回生制動力FEを発生していて仮にABS制御手段63が再始動しても、液圧制動力に移行させる回生制動力FEの量が確率的に削減され、移行時の制動力の不連続および違和感を小さく抑制できる。
【0067】
次に、回生許可制動力FHminの決定方法が異なる第2実施形態について、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第2実施形態における装置構成は図1および図2に示される第1実施形態と同じであり、ブレーキECU60が最終値演算手段64に代えて最小値演算手段を有する点が異なる。
【0068】
最小値演算手段は、ブレーキペダル21が継続して操作されている一制動期間内でABS制御手段63がABS制御期間にわたって作動したときに、ABS制御期間中における目標制動力FRの最小値を回生許可制動力FHminと演算する手段である。最小値演算手段は、ABS制御期間内の各時点で目標制動力FRの変化を把握しつつその時点までの最小値を記憶し、ABS制御期間が終了した時点で記憶している最小値を回生許可制動力FHminとする。
【0069】
ここで、回生許可制動力FHminは、ABS制御期間内でABS制御手段が終了しなかった最小の目標制動力FRであり、この時点でロックの傾向が継続していたことを示している。したがって、ABS制御手段63が一旦終了しても、目標制動力FRが回生許可制動力FHmin以上になると、ABS開始判定条件が成立してABS制御手段63が再始動する見込みが大きくなると考えられる。換言すれば、回生許可制動力FHminはABS制御手段63が再始動する目安となる量である。第2実施形態の回生許可制動力FHminは、第1実施形態の回生許可制動力FHと同じ意図で設定する量である。
【0070】
図7は、第2実施形態におけるブレーキECU60の制動制御の処理フローを説明するフローチャートの図である。図3に示される第1実施形態のフローチャートと比較すればわかるように、第2実施形態ではステップS9AおよびステップS13Aが第1実施形態から変形され、他のステップは同じになっている。すなわち、第2実施形態のステップS9Aで、最小値演算手段は、その時点までの要求制動力FRの最小値min(FR)を用いて回生許可制動力FHminを更新する。ステップS9の処理をABS作動中に毎回実施することにより、ABS制御手段63がいつ終了しても、ABS制御期間中における目標制動力FRの最小値が自動的に回生許可制動力FHminになる。また、第2実施形態のステップS13Aで、回生許可手段65は、ABS制御手段63が終了した時点で得られた回生許可制動力FHminから目標制動力FRを差し引いてABS見込み余力FKを演算する。
【0071】
次に、第2実施形態の車両用ブレーキ装置の作動について説明する。図8は、第2実施形態の車両用ブレーキ装置で、一制動期間の途中にABS制御手段63が作動したときのタイムチャートを示す図であり、図4に示される第1実施形態と同じ条件でブレーキペダル21が操作された場合を例示している。図示されるように、時刻t1〜時刻t4までの間、第2実施形態の車両用ブレーキ装置は第1実施形態と同様に作動する。そして、時刻t4で、ロックの傾向が解消されてABS制御手段63の作動が終了し協調制御手段62が再始動したときに、最小値演算手段は、ABS制御期間中における目標制動力FRの最小値を回生許可制動力FHminと演算する。この回生許可制動力FHminは、第1実施形態の回生許可制動力FHよりも小さめになっている。
【0072】
図8の例では、時刻t4以降で目標制動力FRは単調減少しているが、時刻t4から時刻t5までの間は、目標制動力FRのほうが回生許可制動力FHminよりも大きい。したがって、この間、回生許可手段65は回生制動力FEの発生を許可しない。時刻t5で目標制動力FRが回生許可制動力FHminに一致し、以降では目標制動力FRが回生許可制動力FHminよりも小さくなって、ABS見込み余力FKは漸増する。したがって、目標制動力FRが回生許可制動力FHmin未満である時刻t5以降のみで、ABS見込み余力FKの大きさに対応する回生制動力FEの発生が許可され、回生協調制御が行われる。
【0073】
第2実施形態の車両用ブレーキ装置によれば、回生効率を向上する効果は第1実施形態以下となるが、ABS制御手段63が再始動した場合の影響を低減できる効果が生じる。詳述すると、回生許可制動力FHおよび回生許可制動力FHminは、ABS制御手段63が再始動する目安であり、路面状況が低下すればこれ以下の制動力でもABS開始判定条件が成立する見込みは皆無でない。したがって、時刻t4以降にABS制御手段63が再始動した場合を仮定すると、液圧制動力に移行させる回生制動力FEの量は第2実施形態のほうが第1実施形態よりも小さく、移行時の制動力の不連続および違和感を一層小さく抑制できる。
【0074】
次に、ABS制御期間が終了した後の回生許可手段の始動を遅らせた第3実施形態について、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第3実施形態における装置構成は図1および図2に示される第1実施形態と同じであり、ブレーキECU60の回生許可手段が異なる。すなわち、第3実施形態の回生許可手段は、一制動期間内でABS制御期間が終了して協調制御手段62が再始動しさらに一定時間Tを経過した後に作動し、第1実施形態と比較して一定時間Tだけ遅れて始動する。
【0075】
図9は、第3実施形態におけるブレーキECU60の制動制御の処理フローを説明するフローチャートの図である。図3に示される第1実施形態のフローチャートと比較すればわかるように、第3実施形態では、ステップS31およびステップS32が第1実施形態に追加され、他のステップは同じになっている。すなわち、ステップS4でABS終了後のときステップS31に進み、ABS終了後に一定時間Tが経過しているか否かを調査する。一定時間Tが経過していないときステップS32に進み、回生制動力指令値FE1をゼロに設定し、次いでステップS18に合流する。また、一定時間Tが経過しているときステップS13以降に進み、第1実施形態と同様に、ABS見込み余力FKおよび許可する最大回生制動力FEmax2を演算する。
【0076】
次に、第3実施形態の車両用ブレーキ装置の作動について説明する。図10は、第3実施形態の車両用ブレーキ装置で、一制動期間の途中にABS制御手段63が作動したときのタイムチャートを示す図であり、図4に示される第1実施形態と同じ条件でブレーキペダル21が操作された場合を例示している。図示されるように、時刻t1〜時刻t4で回生許可制動力FHを求めるまでの間、第3実施形態の車両用ブレーキ装置は第1実施形態と同様に作動する。そして、時刻t4で、ロックの傾向が解消されてABS制御手段63の作動が終了し協調制御手段62が再始動しても、回生許可手段は始動せず、回生協調制御に入らない。そして、時刻t4からさらに一定時間Tを経過した時刻t6で回生許可手段が始動し、以降はABS見込み余力FKに対応する回生制動力FEが発生する。
【0077】
第3実施形態の車両用ブレーキ装置によれば、ABS制御手段63が終了して協調制御手段62に移行する過渡的な状況下での作動を複雑化させずに安定化することができ、例えば各種の外乱の影響を抑制できる。
【0078】
なお、各実施形態で、ABS制御手段63が終了した後に許可する最大回生制動力FEmax2は、ABS見込み余力FKの大小に対応する関数f(FK)で求めることができ、この関数f(FK)は自由に設定することができる。定性的には、大きな回生制動力FEを許可すれば回生効率を大きく向上できるが、ABS制御手段63が再起動したときの影響が大きくなる。逆に、小さな回生制動力FEを許可すれば回生効率向上の効果は減じるが、ABS制御手段63が再起動したときの影響を小さくする効果が生じる。本発明は、その他様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1:車両用ブレーキ装置
21:ブレーキペダル(ブレーキ操作部材) 21a:ペダルストロークセンサ
22:負圧式ブレーキブースタ 23:マスタシリンダ 24:リザーバ
25:液圧制御ユニット 31、41:液圧制御弁
32、33、42、43:増圧制御弁 35、36、45、46:減圧制御弁
34、44:調圧リザーバ 37、47:ポンプ
50:ハイブリッドECU
60:ブレーキECU(制動制御装置)
7FR:前右輪 7FL:前左輪 7RR:後右輪 7RL:後左輪
A:回生ブレーキ装置 B:液圧ブレーキ装置
L1:第1配管経路 L11〜L15:油経路
L2:第2配管経路 L21〜L25:油経路
M:モータ P:圧力センサ
WC1、WC2、WC3、WC4:ホイールシリンダ
FR:目標制動力 FR(ABS):ABS時目標制動力
FB:基礎液圧制動力 FC:制御液圧制動力
FE:回生制動力 FE1:回生制動力指令値 FE2:回生制動力実行値
FEmax1:発生可能な最大回生制動力 FEmax2:許可する最大回生制動力
FH、FHmin:回生許可制動力 FK:ABS見込み余力
T:一定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪(7FR、7FL、7RR、7RL)に液圧制動力(FB、FC)を調整可能に付与する液圧ブレーキ装置(B)と、
前記車輪のうちで発電電動機に駆動される駆動輪(7FR、7FL)に回生制動力(FE)を付与する回生ブレーキ装置(A)と、
ブレーキ操作部材(21)の操作量に対応した目標制動力(FR)を取得する目標取得手段(61)、前記液圧制動力と前記回生制動力とを加算した全制動力が前記目標制動力に一致するように前記液圧ブレーキ装置および前記回生ブレーキ装置を協調制御する協調制御手段(62)、および前記協調制御手段が作動していて前記車輪にロックの傾向が生じた場合に前記協調制御手段を停止し前記回生制動力の発生を禁止するとともに前記液圧制動力を調整して前記ロックを抑制するアンチロックブレーキ制御手段(63)を有する制動制御装置(60)と、を備える車両用ブレーキ装置(1)であって、
前記制動制御装置は、
前記ブレーキ操作部材が継続して操作されている一制動期間内で前記アンチロックブレーキ制御手段がABS制御期間にわたって作動したときに、前記ABS制御期間が終了して前記協調制御手段が再始動した時点の目標制動力を回生許可制動力(FH)と演算する最終値演算手段(64)と、
前記一制動期間内で前記ABS制御期間が終了して前記協調制御手段が再始動した以降に作動し、前記目標制動力が前記最終値演算手段で演算された前記回生許可制動力未満であるときにのみ前記回生制動力の発生を許可する回生許可手段(65)と、をさらに有する車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
車輪に液圧制動力を調整可能に付与する液圧ブレーキ装置と、
前記車輪のうちで発電電動機に駆動される駆動輪に回生制動力を付与する回生ブレーキ装置と、
ブレーキ操作部材の操作量に対応した目標制動力を取得する目標取得手段、前記液圧制動力と前記回生制動力とを加算した全制動力が前記目標制動力に一致するように前記液圧ブレーキ装置および前記回生ブレーキ装置を協調制御する協調制御手段、および前記協調制御手段が作動していて前記車輪にロックの傾向が生じた場合に前記協調制御手段を停止し前記回生制動力の発生を禁止するとともに前記液圧制動力を調整して前記ロックを抑制するアンチロックブレーキ制御手段を有する制動制御装置と、を備える車両用ブレーキ装置であって、
前記制動制御装置は、
前記ブレーキ操作部材が継続して操作されている一制動期間内で前記アンチロックブレーキ制御手段がABS制御期間にわたって作動したときに、前記ABS制御期間中における目標制動力の最小値を回生許可制動力(FHmin)と演算する最小値演算手段と、
前記一制動期間内で前記ABS制御期間が終了して前記協調制御手段が再始動した以降に作動し、前記目標制動力が前記最小値演算手段で演算された前記回生許可制動力未満であるときにのみ前記回生制動力の発生を許可する回生許可手段と、をさらに有する車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記回生許可手段は、前記回生許可制動力から前記目標制動力を差し引いたABS見込み余力(FK)の大小に対応して、許可する回生制動力の大きさ(FEmax2)を制限する車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、
前記回生許可手段は、前記一制動期間内で前記ABS制御期間が終了して前記協調制御手段が再始動しさらに一定時間(T)を経過した後に作動する車両用ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−23137(P2013−23137A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161982(P2011−161982)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】