説明

車両用ヘッドアップディスプレイ

【課題】防塵カバーの反射機能を多目的に活用して、付加価値の高い車両用ヘッドアップディスプレイを提供する。
【解決手段】第1の表示器から出射される第1の表示情報を表す第1表示光を、インストルメントパネルの上面に設けられた開口部を通して、運転席前方のウインドシールドに反射させることにより、第1の表示情報の虚像を運転者の視野前方に結像させる車両用ヘッドアップディスプレイにおいて、開口部を塞ぐと共に、ウインドシールドの外部から入射される外光を運転者から視認されない位置へ反射させる防塵カバーと、第1の表示情報とは異なる第2の表示情報を表す第2表示光を、防塵カバーの外光が反射される側の面に反射させた後に、ウインドシールドに反射させることにより、第2の表示情報の虚像を第1の表示情報の虚像と共に運転者の視野前方に結像させる第2の表示器とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウインドシールドの投射エリアに、表示器に表示された画像を反射鏡によって反射させて、投射エリアに投射される画像の虚像と、車両のアイポイントからウインドシールドを通して視認される車両の前景とを重畳視認させる車両用ヘッドアップディスプレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用ヘッドアップディスプレイとして、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1の車両用ヘッドアップディスプレイは、車両のインストルメントパネル内に表示体が収容されており、表示体によって表示された画像が、インストルメントパネルの上面に設けられた開口部を通り、半透明の投影板によって運転者のアイポイントに反射されるようになっている。これにより、運転者は、アイポイントと投影板との延長上に虚像を視認することができるようになっている。
【0003】
特許文献1の車両用ヘッドアップディスプレイでは、インストルメントパネルの開口部は、車両前方下側に向けて傾斜する透明パネル部材によって閉塞されている。透明パネルは開口部の防塵カバーとして機能するようになっている。
【0004】
また、透明パネル部材の車両前方側は、インストルメントパネルの内側に沈み込むように配置されて、透明パネル自体は運転者から見えないようになっている。そして、透明パネル部材の車両前方側には、遮光部材が設けられている。透明パネル部材の遮光部材と対向する面は、椀状に凹んだ形に形成されている。よって、フロントガラスを介して入射した外光は、透明パネル部材で反射して遮光部材に至り、遮光部材で吸収されるので、外光が運転者の目に直接入射することがないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−90730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、透明パネル部材は、インストルメントパネルの開口部の防塵カバーとして使用されると共に、外光を遮光部材へ反射させるものに留まっている。本発明者は、透明パネル部材の反射機能を積極的に活用して、新たな表示体の反射鏡として使用することができれば、更に付加価値の高い車両用ヘッドアップディスプレイの提供が可能になると考えた。
【0007】
本発明の目的は、上記のように防塵カバーの反射機能を多目的に活用して、付加価値の高い車両用ヘッドアップディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0009】
請求項1に記載の発明では、運転席前方のインストルメントパネル内に配置された第1の表示器から出射される第1の表示情報を表す第1表示光を、インストルメントパネルの上面に設けられた開口部を通して、運転席前方のウインドシールドに反射させることにより、第1の表示情報の虚像を運転者の視野前方に結像させる車両用ヘッドアップディスプレイにおいて、
透明部材から成り、車両前方側に向かうほどインストルメントパネル内に奥まるように配置されて開口部を塞ぐと共に、ウインドシールドの外部から入射される外光を運転者から視認されない位置へ反射させる防塵カバーと、
インストルメントパネル内に配置され、第1の表示情報とは異なる第2の表示情報を表す第2表示光を、防塵カバーの外光が反射される側の面に反射させた後に、ウインドシールドに反射させることにより、第2の表示情報の虚像を第1の表示情報の虚像と共に運転者の視野前方に結像させる第2の表示器とを備えることを特徴としている。
【0010】
この発明によれば、防塵カバーの反射機能を積極的に活用して、第2の表示器から出射される第2の表示光(第2の表示情報)の虚像を、第1の表示器から出射される第1の表示光(第1の表示情報)の虚像と共に運転者の視野前方に結像することができ、表示情報を増やすことができるので、付加価値の高い車両用ヘッドアップディスプレイとすることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、防塵カバーの外光および第2表示光が反射される反射面は、曲面に形成されており、第2の表示情報の虚像が、運転者の視野前方において所定距離以上の遠方に拡大されて結像されることを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、通常、運転者は車両の前景の遠方を見ながら運転するので、第2表示光(第2の表示情報)の虚像が所定距離以上の遠方に拡大されて結像されることで、車両の前景と第2表示光(第2の表示情報)の虚像とを視認する際の目の焦点位置を大きく変える必要がなくなる。よって、第2表示光(第2の表示情報)の虚像が見え易くなり、運転者の目の負担を低減でき、より安全な運転が可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、防塵カバーの外光および第2表示光が反射される反射面には、増反射処理が施されたことを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、増反射処理によって、第2の表示器から出射される第2の表示情報を表す第2表示光の反射率を高めることができるので、第2の表示情報の虚像をより鮮明に結像させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明では、第1の表示情報は、ナイトビューシステムによって夜間走行時に車両前方において検知された歩行者、障害物、あるいは道路の情報のうち、少なくとも1の情報であり、
第2の表示情報は、少なくとも1つの情報を強調するように表示する強調用の情報であることを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、ナイトビューシステムによって検知された歩行者、障害物、あるいは道路の情報のうち、少なくとも1つの情報を、強調用の情報によって強調することができるので、運転者への注意をより高めて、安全運転に繋げることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明では、第2の表示情報は、ナビゲーションシステムによって指示される行先案内表示の情報であることを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、ナビゲーションシステムによって指示される行先案内表示の情報が、運転者の視野前方に第1の表示情報の虚像と共に表示される形となるので、運転者は、ナビゲーション画面への視線の変更を行うことなく、行先案内表示の情報を視認することができる。よって、運転者は車両の前景から視線を逸らす頻度を減らすことができるので、より安全な運転が可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明では、第2の表示情報は、路車間通信によって得られた道路状況に基づく安全確保のための注意情報であることを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、運転者は、注意情報をもとにして、それに備えた早め早めの処置を行うことが可能となるので、より安全な運転が可能となる。
【0021】
請求項7に記載の発明では、第2の表示情報は、車間距離センサによって得られた前方走行車との車間距離を示す情報であることを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、運転者は、前方走行車との実際の車間距離を認識することができ、速度調整等により適切な車間距離を維持することができるので、より安全な運転が可能となる。
【0023】
請求項8に記載の発明では、第2の表示情報は、光源の点灯あるいは色によって車両の作動状態を示す情報であることを特徴としている。
【0024】
この発明によれば、車両の作動状態を示す情報が、光源の点灯あるいは色によって示される情報であると、数字や文字等によって示される情報とは異なり、運転者は直感的且つ瞬間的に車両の作動状態を把握することができる。
【0025】
請求項9に記載の発明では、第1の表示情報の虚像は、第2の表示情報の虚像よりも、運転者の視野のより遠くに結像されるようになっており、
車両の速度が所定速度よりも大きい場合には、第1の表示器から第1の表示情報が出射されると共に、車両の速度が所定速度よりも小さい場合には、第2の表示器から第1の表示情報が出射されることを特徴としている。
【0026】
この発明によれば、通常、運転者は車両の速度が大きくなるほど、車両の前景のより遠くを見て運転し、車両の速度が小さくなるほど、車両の前景のより近くを見て運転する。よって、車両の速度が所定速度よりも大きい場合には、運転者は第1の表示器から出射される第1の表示情報を視認しやすくなる。逆に、車両速度が所定速度よりも小さい場合には、運転者は第2の表示器から出射される第1の表示情報を認識しやすくなる。よって、第1の表示情報を重要度の高い情報とした場合に、車速に関係なく、運転者は、車両の前景と共に、第1の表示情報を明確に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態における車両用ヘッドアップディスプレイの全体構成を示す全体構成図である。
【図2】図1におけるII部を示す部分拡大図である。
【図3】(a)は第1液晶パネルによって形成されるカメラ画像であり、(b)は第2液晶パネルによって形成される注意表示画像である。
【図4】ナイトビューシステムの概略を説明する説明図である。
【図5】第1、第2液晶パネルを制御するための制御部を示す回路図である。
【図6】(a)はウインドシールドに虚像として視認される表示像1、(b)はウインドシールドに虚像として視認される表示像2である。
【図7】第2実施形態においてウインドシールドに虚像として視認される表示像である。
【図8】第3実施形態においてウインドシールドに虚像として視認される表示像である。
【図9】第4実施形態においてウインドシールドに虚像として視認される表示像である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0029】
(第1実施形態)
第1実施形態における車両用ヘッドアップディスプレイ100を図1〜図6に基づいて説明する。図1は車両用ヘッドアップディスプレイ100の全体構成を示す全体構成図、図2は図1におけるII部を示す部分拡大図、図3は第1液晶パネル110によって形成されるカメラ画像110a、および第2液晶パネル150によって形成される注意表示画像150a、図4はナイトビューシステム30の概略を説明する説明図、図5は第1液晶パネル110、第2液晶パネル150を制御するための制御部160を示す回路図、図6はウインドシールド20に虚像として視認される表示像である。
【0030】
車両用ヘッドアップディスプレイ(Head Up Display)100は、自動車に適用されたものであり、第1液晶パネル110から出射される第1の表示情報を表す第1表示光、および第2液晶パネル150から出射される第2の表示情報を表す第2表示光を車両のウインドシールド20の投射位置20aに入射させると共に、運転者Mと投射位置20aとを結ぶ線の車両前方延長線上に、第1の表示情報の第1表示像21と、第2の表示情報の第2表示像22とを結像させて、虚像として運転者Mに視認させるものである。この車両用ヘッドアップディスプレイ100によって、運転者Mは、第1、第2表示像(虚像)21、22と、車両の前景とを重畳して視認することができる。以下、車両用ヘッドアップディスプレイ100をHUD100と呼ぶことにする。
【0031】
尚、ウインドシールド20は、車両のフロント側のウインドシールドであり、2枚のガラスとその中間に設けられる中間膜とから形成された合わせガラスが使用されている。ウインドシールド20は、わずかな曲率を有しており、凹面鏡と同一の効果により、第1、第2表示像21、22を拡大してより遠方に表示できるようになっている。また、ウインドシールド20は、車室内側表面で反射する正規像に対して車室外側表面で反射するノイズ像を目立たなくするために、例えば、車室内側表面に増反射膜を設ける、または、中間膜を断面楔型に形成して正規像とノイズ像との位置を合わせるようにする、または、中間膜にてS波をカットする偏光処理を行う等の対応を実施する場合がある。
【0032】
HUD100は、ウインドシールド20の下端面から車室内後方、更には下方に延出されるインストルメントパネル10の内側に配設されている。HUD100は、第1液晶パネル110、反射鏡120、防塵カバー130、無反射用壁部140、第2液晶パネル150、および制御部160等を備えている。以下、HUD100の、各構成の詳細について説明する。
【0033】
第1液晶パネル110は、第1の表示情報を形成する第1の表示器であり、制御部160の駆動回路164によって駆動制御されるようになっている。第1液晶パネル110は、インストルメントパネル10内の運転者M側に、表示面が天地方向を向き、表示面に直交する軸線が車両前後方向を向くように配置されている。第1液晶パネル110は、例えば、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor=TFT)が用いられたTFT液晶パネル、デュアルスキャンタイプのディスプレイ(Dual Scan Super Twisted Nematic=D−STN)、TN(Twisted Nematic)セグメント液晶等が使用される。
【0034】
第1液晶パネル110によって形成される第1の表示情報は、例えば、車両走行時における車両情報としての、車速、エンジン回転数、エンジン冷却水温、およびバッテリ電圧等の情報である。更に、本実施形態では、第1の表示情報として、夜間走行時においてナイトビューシステム30によって得られたカメラ画像110a(図3(a))も第1液晶パネル110に形成されるようになっている。第1液晶パネル110は、上記のような複数種類の第1の表示情報を1つずつ、あるいは、複数組み合わせて、第1液晶パネル110の表面に形成することができるようになっている。運転者Mは図示しない切り替えスイッチにより、第1の表示情報をいずれにするか選択できるようになっている。
【0035】
尚、ナイトビューシステム30は、図4に示すように、夜間において、近赤外線投光器31から近赤外線光を車両前方に照射して、車両前方の見えにくい歩行者、障害物、道路等のうち、少なくとも1つからの反射を近赤外線カメラ32で受光して、映像化した後に、カメラ画像110aとして運転者Mに表示するものである。近赤外線投光器31は、例えば車両のヘッドランプ内に装着されており、近赤外線カメラ32は、車室内のバックミラー近傍に装着されている。ここでは、カメラ画像110aは、近赤外線カメラ32からHUD100の制御部160(マイクロコンピュータ162)に出力されて、更に駆動回路164を介して第1液晶パネル110に第1の表示情報として形成されるようになっている。
【0036】
第1液晶パネル110は、第1光源111を備えている。第1光源111は、インストルメントパネル10内において、第1液晶パネル110の車両後方側に配置されており、例えば、発光ダイオード(Light Emitting Diode=LED)が使用されている。第1光源111は、第1液晶パネル110の軸線に沿うように光を出射するようになっている。第1液晶パネル110は、第1光源111から出射される光によって、表面に形成した第1の表示情報を第1表示光として、第1光源111とは反対側となる軸線方向に出射するようになっている。
【0037】
反射鏡120は、インストルメントパネル10内において、第1液晶パネル110の車両前方側に配置された鏡である。反射鏡120は、反射像を拡大する凹面鏡として形成されており、反射面は第1液晶パネル110およびウインドシールド20に向き合うように車両後方側が下側を向くように傾斜されて配置されている。反射鏡120は、第1液晶パネル110から出射された第1表示光(第1の表示情報)を、インストルメントパネル10の上面に開口形成された開口部10aを通して、ウインドシールド20の投射位置20aに反射させる。換言すると、反射鏡120は、第1表示光(第1の表示情報)を投射位置20aとは反対側の位置に第1の反射像(虚像)121として形成して、投射位置20aに結像させる。
【0038】
防塵カバー130は、インストルメントパネル10の開口部10aを閉塞し、第1液晶パネル110から出射される第1表示光を透過させ、更に、ウインドシールド20の外部から入る外光(図2)を無反射用壁部140へ反射させると共に、第2液晶パネル150から出射される第2表示光をウインドシールド20(投射位置20a)に反射させる板状部材である。防塵カバー130は、アクリルやポリカーボネートのような透明な樹脂、あるいは透明ガラスから形成されている。防塵カバー130は、開口部10aの車両後方側から車両前方側に向けて下側に傾斜するように、つまり、開口部10aの車両後方側から車両前方側に向けてインストルメントパネル10内に奥まるように配置されて、開口部10aを塞いでいる。よって、防塵カバー130は、運転席に着座した運転者Mからは、直接見えない位置に配置されている。
【0039】
そして、防塵カバー130の板状に広がる面は、曲面に形成されている。具体的には、防塵カバー130のウインドシールド20と対向する表側(上側)の面が、下側に凹む凹面に形成されている。更に、防塵カバー130の表側の面は、外光、および第2液晶パネル150からの第2表示光を反射させる反射面となっており、この反射面には、光の反射率を高めるための増反射処理が施されている。
【0040】
無反射用壁部140は、インストルメントパネル10の開口部10aの車両前方側端と、防塵カバー130の車両前方側端との間を塞ぐように配設された板状部材であり、透明な樹脂、あるいは透明ガラスから形成されている。無反射用壁部140の防塵カバー130の表側(上側)の面と対向する面は、例えば黒色に塗られており、入射された光を吸収するようになっている。また、無反射用壁部140は、車両前方側(第2液晶パネル150)から出射される光(第2表示光)を防塵カバー130側に透過させるようになっている。
【0041】
第2液晶パネル150は、第2の表示情報を形成する第2の表示器であり、制御部160の駆動回路164によって駆動制御されるようになっている。第2液晶パネル150は、インストルメントパネル10内の無反射用壁部140の車両前方側に、表示面が天地方向を向き、表示面に直交する軸線が車両前後方向を向くように配置されている。第2液晶パネル150は、例えば、第1液晶パネル110と同様に、TFT液晶パネル、デュアルスキャンタイプのディスプレイ、TNセグメント液晶等が使用される。
【0042】
第2液晶パネル150によって形成される第2の表示情報は、例えば、夜間走行時においてナイトビューシステム30によって検知された歩行者、障害物、あるいは道路等のうち、少なくとも1つの情報に対して、運転者Mに強調するように表示する強調用の情報、つまり注意表示画像150aとなっている。注意表示画像150aは、図3(b)に示すように、例えばリング状で外形が楕円状を成すマークとなっている。
【0043】
第2液晶パネル150は、第2光源151を備えている。第2光源151は、インストルメントパネル10内において、第2液晶パネル110の車両前方側に配置されており、例えば、第1光源111と同様に発光ダイオード(LED)が使用されている。第2光源151は、第2液晶パネル150、および無反射用壁部140を通して防塵カバー130の表側(上側)の面に光を出射するようになっている。第2液晶パネル150は、第2光源151から出射される光によって、表面に表示した第2の表示情報を第2表示光として、防塵カバー130の表側の面に出射するようになっている。
【0044】
第2液晶パネル150から出射された第2表示光(第2の表示情報)は、防塵カバー130の表側の面によって反射され、インストルメントパネル10の開口部10aを通して、ウインドシールド20の投射位置20aに反射されるようになっている。換言すると、第2表示光(第2の表示情報)は、防塵カバー130によって、投射位置20aとは反対側の位置に第2の反射像(虚像)122として形成され、投射位置20aに結像されるようになっている。
【0045】
制御部160は、第1液晶パネル110の第1表示情報、および第2液晶パネル150の第2表示情報の表示状態を制御する制御手段である。図5に示すように、制御部160は、車両のイグニッションスイッチ40がオンされると、バッテリ50から電力供給されて作動するようになっている。制御部160は、操作スイッチ161、マイクロコンピュータ162、各種センサ群163、および駆動回路164等を備えている。
【0046】
操作スイッチ161は、HUD100を作動、停止させるためのスイッチであり、オンすることで第1液晶パネル110に第1表示情報を、第2液晶パネル150に第2表示情報を形成させて、HUD100を作動状態にする。
【0047】
マイクロコンピュータ162は、各種センサ群163によって検出された検出信号、近赤外線カメラ32から出力されるカメラ画像110aのデータ、および運転者Mが選択する選択信号(図示せず)に基づいて、第1表示情報および第2表示情報を決定すると共に、各表示情報を形成するための指示を駆動回路164に出力するようになっている。
【0048】
各種センサ群163は、車両走行時における車両情報を検出するためのセンサであり、例えば、車速を検出する車速センサ、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ、エンジン冷却水温を検出する水温センサ、およびバッテリ50のバッテリ電圧を検出する電圧センサ等である。各種センサ群163によって検出された検出信号がマイクロコンピュータに出力されるようになっている。また、近赤外線カメラ32からは、カメラ画像110aと共に、カメラ画像110a中の注意すべきポイント、例えば検知された「歩行者」の画面上の位置座標も併せて出力されるようになっている。
【0049】
駆動回路164は、マイクロコンピュータ162によって決定された各表示情報を、第1液晶パネル110、および第2液晶150にて形成するように第1、第2液晶パネル110、150を制御する。
【0050】
次に、上記構成に基づくHUD100の作動および作用効果について説明する。
【0051】
防塵カバー130は、インストルメントパネル10の開口部10aを塞ぐカバーとして機能する。よって、開口部10aからインストルメントパネル10内にゴミや埃等の異物が入り込むことが無い。また、図2に示すように、ウインドシールド20の外側から入り込む外光は、防塵カバー130の表側の面で反射して、無反射用壁部140に吸収される。よって、運転者Mが眩しく感じることが無い。
【0052】
そして、運転者Mが操作スイッチ161をオンにするとHUD100が作動される。マイクロコンピュータ162は、運転者Mの指示に基づいて表示すべき第1表示情報および第2表示情報を決定すると共に、駆動回路164を介して第1液晶パネル110および第2液晶パネル150にそれぞれ第1表示情報、および第2表示情報を形成させる。
【0053】
第1液晶パネル110は、第1光源111から出射される光によって、第1表示情報を第1表示光として反射鏡120に出射させる。反射鏡120は、第1液晶パネル110から出射された第1表示光(第1の表示情報)を、インストルメントパネル10の開口部10aを通して、ウインドシールド20の投射位置20aに反射させる。投射位置20aに反射された第1表示光(第1の表示情報)は、運転者Mと投射位置20aとを結ぶ線の車両前方延長線上(運転者の視野前方)に第1表示像21(虚像)として結像されて、運転者Mに視認される。
【0054】
また、第2液晶パネル150は、第2光源151から出射される光によって、第2表示情報を第2表示光として無反射用壁部140を通して防塵カバー130に出射させる。防塵カバー130は、第2液晶パネル150から出射された第2表示光(第2の表示情報)を、インストルメントパネル10の開口部10aを通して、ウインドシールド20の投射位置20aに反射させる。投射位置20aに反射された第2表示光(第2の表示情報)は、運転者Mと投射位置20aとを結ぶ線の車両前方延長線上(運転者の視野前方)に第2表示像22(虚像)として結像されて、運転者Mに視認される。
【0055】
昼間の運転中であると、第1表示像21としては、例えば車速、エンジン回転数、エンジン冷却水温、およびバッテリ電圧のうち、運転者Mの選択によって選択されたものが運転者Mの視野前方に表示される。この場合、第2表示像22については、特に設定をしていない。
【0056】
これに対して、夜間の運転中であると、ナイトビューシステム30を用いたカメラ画像110aと、予め定めた注意表示画像150aとの表示が可能となる。具体的には、図6に示すように、HUD100は、運転者Mの視野前方に、第1表示像21としてカメラ画像110aを表示し、また、第2表示像22として注意表示画像150aを表示する。注意表示画像150aは、図6(a)に示すように、カメラ画像110a内の所定位置に表示される。つまり、これは、夜間において、ナイトビューシステム30が、運転者Mの肉眼では視認しづらい歩行者を発見した場合には、歩行者が前方にいることを示すためのサインとしている。尚、注意表示画像150aは、図6(b)に示すように、カメラ画像110a中における歩行者の位置座標をもとに、歩行者の位置に一致するように表示されるようにしても良い。
【0057】
以上のように、本実施形態では、運転者Mの視野前方に第1液晶パネル110から出射される第1の表示光(第1の表示情報)の虚像(第1表示像21)に加えて、防塵カバー130の反射機能を積極的に活用して、第2液晶パネル150から出射される第2の表示光(第2の表示情報)の虚像(第2表示像22)の表示を可能としている。これにより、表示情報を増やすことができるので、付加価値の高いHUD100とすることができる。
【0058】
また、防塵カバー130の外光および第2表示光が反射される反射面は、曲面に形成されているので、第2表示光(第2の表示情報)の虚像が、運転者の視野前方において所定距離以上の遠方に拡大されて結像されることになる。これにより、通常、運転者Mは車両の前景の遠方を見ながら運転するので、第2表示光(第2の表示情報)の虚像が所定距離以上の遠方に拡大されて結像されることで、車両の前景と第2表示光(第2の表示情報)の虚像とを視認する際の目の焦点位置を大きく変える必要がなくなる。よって、第2表示光(第2の表示情報)の虚像が見え易くなり、運転者の目の負担を低減でき、より安全な運転が可能となる。
【0059】
また、防塵カバー130の外光および第2表示光が反射される反射面には、増反射処理が施されているので、第2液晶パネル150から出射される第2の表示情報を表す第2表示光の反射率を高めることができるので、第2表示光(第2の表示情報)の虚像をより鮮明に結像させることができる。
【0060】
また、第1の表示情報は、ナイトビューシステム30によって夜間走行時に車両前方において検知された歩行者、障害物、あるいは道路等の情報のうち、少なくとも1つの情報であり、第2の表示情報は、上記少なくとも1つの情報を強調するように表示する強調用の情報、つまり注意表示画像150aとしている。これにより、少なくとも1つの情報を、注意表示画像150aによって強調することができるので、運転者への注意をより高めて、安全運転に繋げることができる。
【0061】
(第2実施形態)
第2実施形態におけるウインドシールド20に視認される第1の表示情報および第2の表示情報を図7に示す。第2実施形態は、上記第1実施形態に対して、第1の表示情報を車両情報としての車速(速度表示画像110b)とし、また、第2の表示情報を図示しないナビゲーションシステムから得られる行先案内表示(行先表示画像150b)としたものである。
【0062】
速度表示画像110bは、各種センサ群163のうち、車速センサによって得られる速度情報(ここでは53km/h)として表示されている。また、行先表示画像150bは、ナビゲーションシステムによってルート案内を実行しているときの行先案内の表示情報(150m先左折指示)として表示されている。第2実施形態では、ナビゲーションシステムのルート案内データがマイクロコンピュータ162に入力されるようになっており、マイクロコンピュータ162は、車速センサによって検出された車速に基づいて速度表示画像110bを第1液晶パネル110に対して形成させると共に、案内データに基づいて、ルート案内中に都度必要とされる行先表示画像150bを第2液晶パネル150に対して形成させるようにしている。
【0063】
これにより、ナビゲーションシステムによって指示される行先表示画像150bが、運転者Mの視野前方に速度表示画像110bと共に表示される形となるので、運転者Mは、ナビゲーション画面への視線の変更を行うことなく、行先表示画像150bを視認することができる。よって、運転者Mは車両の前景から視線を逸らす頻度を減らすことができるので、より安全な運転が可能となる。
【0064】
(第3実施形態)
第3実施形態におけるウインドシールド20に視認される第1の表示情報および第2の表示情報を図8に示す。第3実施形態は、上記第1実施形態に対して、第1の表示情報を車両情報としての車速(速度表示画像110b)とし、また、第2の表示情報を図示しない路車間通信によって得られた道路状況に基づく注意情報(注意表示画像150c)としたものである。
【0065】
速度表示画像110bは、各種センサ群163のうち、車速センサによって得られる速度情報(ここでは53km/h)として表示されている。また、注意表示画像150cは、路車間通信によって得られる注意情報(次の交差点左側から人が出てくる等の注意矢印マーク)として表示されている。第3実施形態では、路車間通信によって得られる自車の走行領域の道路状況(他車の動き、人の動き等)のデータがマイクロコンピュータ162に入力されるようになっており、マイクロコンピュータ162は、車速センサによって検出された車速に基づいて速度表示画像110bを第1液晶パネル110に対して形成させると共に、道路状況データに基づいて、運転者Mに対して都度必要とされる注意表示画像150cを第2液晶パネル150に対して形成させるようにしている。
【0066】
これにより、運転者Mは、注意表示画像150cをもとにして、それに備えた早め早めの処置を行うことが可能となるので、より安全な運転が可能となる。
【0067】
(第4実施形態)
第4実施形態におけるウインドシールド20に視認される第1の表示情報および第2の表示情報を図9に示す。第4実施形態は、上記第1実施形態に対して、第1の表示情報を車両情報としての車速(速度表示画像110b)とし、また、第2の表示情報を前方走行車との車間距離を示す情報(車間距離表示画像150d)としたものである。
【0068】
速度表示画像110bは、各種センサ群163のうち、車速センサによって得られる速度情報(ここでは53km/h)として表示されている。また、車間距離表示画像150dは、例えば、図示しないアクティブクルーズコントロールシステムによって得られる前方走行車との車間距離を示す情報(前方走行車を示す楕円リングマークおよび車間距離値50m)として表示されている。第4実施形態では、アクティブクルーズコントロールシステムの前方走行車のデータがマイクロコンピュータ162に入力されるようになっており、マイクロコンピュータ162は、車速センサによって検出された車速に基づいて速度表示画像110bを第1液晶パネル110に対して形成させると共に、前方走行車のデータに基づいて、車間距離表示画像150dを第2液晶パネル150に対して形成させるようにしている。
【0069】
これにより、運転者Mは、前方走行車との実際の車間距離を認識することができ、速度調整等により適切な車間距離を維持することができるので、より安全な運転が可能となる。
【0070】
(その他の実施形態)
上記各実施形態に対して、第2液晶パネル150によって視認される第2の表示情報は、光源の点灯あるいは色によって車両の作動状態を示す情報としても良い。例えば、エンジン冷却水温や、バッテリ電圧において、安全な状態であれば緑色の点灯、注意が必要な状態であれば橙色の点灯、車両を停止させるべき状態であれば赤色の点灯とする。または、表示視野の左右方向に光源を並べて、第3実施形態に対して、注意表示画像150cに対応する表示として、車両の左側に危険予知があれば表示視野の左側の光源を点灯させ、また、車両の右側に危険予知があれば表示視野の右側の光源を点灯させるようにしても良い。
【0071】
これにより、車両の作動状態を示す情報が、光源の点灯あるいは色によって示される情報であると、数字や文字等によって示される情報とは異なり、運転者Mは直感的且つ瞬間的に車両の作動状態を把握することができる。
【0072】
また、第1液晶パネル110で表示する第1の表示情報と、第2液晶パネル150で表示する第2の表示情報とを車両の速度に応じて、入れ替えるようにしても良い。例えば、第1の表示情報は、第2の表示情報よりも、運転者Mの視野のより遠くに表示されるようにする。そして、車両の速度が所定速度よりも大きい場合には、第1液晶パネル110から第1の表示情報が出射されると共に、車両の速度が所定速度よりも小さい場合には、第2液晶パネル150から第1の表示情報が出射されるようにする。
【0073】
通常、運転者Mは車両の速度が大きくなるほど、車両の前景のより遠くを見て運転し、車両の速度が小さくなるほど、車両の前景のより近くを見て運転する。よって、車両の速度が所定速度よりも大きい場合には、運転者は第1液晶パネル110から出射される第1の表示情報を視認しやすくなる。逆に、車両速度が所定速度よりも小さい場合には、運転者は第2液晶パネル150から出射される第1の表示情報を認識しやすくなる。よって、第1の表示情報を重要度の高い情報とした場合に、車速に関係なく、運転者は、車両の前景と共に、第1の表示情報を明確に視認することができる。
【0074】
また、第1、第2の表示器は、TFT液晶パネル、デュアルスキャンタイプのディスプレイ、TNセグメント液晶等が使用されるものとして説明したが、これに限定されることなく、エレクトロルミネセンス等の自発光式の表示器としても良い。更に、レーザをスキャンするレーザプロジェクターとしても良い。
【0075】
また、第1、第2の表示器は、液晶パネルのように画像を形成するものに限らず、矢印や注意マークのように、固定表示の印刷がなされており、光源の発光で表示されるものとしても良い。
【0076】
また、各種実施形態のHUD100では、第1の表示情報および第2の表示情報をウインドシールド20に表示するものとしたが、これに限らず、専用の表示用反射板を用いるものとしても良い。
【符号の説明】
【0077】
10 インストルメントパネル
10a 開口部
20 ウインドシールド
30 ナビゲーションシステム
100 車両用ヘッドアップディスプレイ
110 第1液晶パネル(第1の表示器)
110a カメラ画像(第1の表示情報、歩行者、障害物、あるいは道路の情報)
130 防塵カバー
150 第2液晶パネル(第2の表示器)
150a 注意表示画像(第2の表示情報、強調用の情報)
150b 行先表示画像(第2の表示情報、行先案内表示の情報)
150c 注意表示画像(第2の表示情報、注意情報)
150d 車間距離表示画像(第2の表示情報、車間距離を示す情報)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席前方のインストルメントパネル内に配置された第1の表示器から出射される第1の表示情報を表す第1表示光を、前記インストルメントパネルの上面に設けられた開口部を通して、運転席前方のウインドシールドに反射させることにより、前記第1の表示情報の虚像を運転者の視野前方に結像させる車両用ヘッドアップディスプレイにおいて、
透明部材から成り、車両前方側に向かうほど前記インストルメントパネル内に奥まるように配置されて前記開口部を塞ぐと共に、前記ウインドシールドの外部から入射される外光を前記運転者から視認されない位置へ反射させる防塵カバーと、
前記インストルメントパネル内に配置され、前記第1の表示情報とは異なる第2の表示情報を表す第2表示光を、前記防塵カバーの前記外光が反射される側の面に反射させた後に、前記ウインドシールドに反射させることにより、前記第2の表示情報の虚像を前記第1の表示情報の虚像と共に前記運転者の視野前方に結像させる第2の表示器とを備えることを特徴とする車両用ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記防塵カバーの前記外光および前記第2表示光が反射される反射面は、曲面に形成されており、前記第2の表示情報の虚像が、前記運転者の視野前方において所定距離以上の遠方に拡大されて結像されることを特徴とする請求項1に記載の車両用ヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記防塵カバーの前記外光および前記第2表示光が反射される反射面には、増反射処理が施されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用ヘッドアップディスプレイ。
【請求項4】
前記第1の表示情報は、ナイトビューシステムによって夜間走行時に車両前方において検知された歩行者、障害物、あるいは道路の情報のうち、少なくとも1の情報であり、
前記第2の表示情報は、前記少なくとも1つの情報を強調するように表示する強調用の情報であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の車両用ヘッドアップディスプレイ。
【請求項5】
前記第2の表示情報は、ナビゲーションシステムによって指示される行先案内表示の情報であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の車両用ヘッドアップディスプレイ。
【請求項6】
前記第2の表示情報は、路車間通信によって得られた道路状況に基づく安全確保のための注意情報であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の車両用ヘッドアップディスプレイ。
【請求項7】
前記第2の表示情報は、車間距離センサによって得られた前方走行車との車間距離を示す情報であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の車両用ヘッドアップディスプレイ。
【請求項8】
前記第2の表示情報は、光源の点灯あるいは色によって車両の作動状態を示す情報であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の車両用ヘッドアップディスプレイ。
【請求項9】
前記第1の表示情報の虚像は、前記第2の表示情報の虚像よりも、運転者の視野のより遠くに結像されるようになっており、
前記車両の速度が所定速度よりも大きい場合には、前記第1の表示器から前記第1の表示情報が出射されると共に、前記車両の速度が所定速度よりも小さい場合には、前記第2の表示器から前記第1の表示情報が出射されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の車両用ヘッドアップディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−32087(P2013−32087A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168681(P2011−168681)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】