説明

車両用ヘッドランプ取付構造

【課題】 既存のプラットフォームの車体を前方へ延長させることなく、車体に対してヘッドランプユニットを前方且つ上方へ離隔して配する。
【解決手段】 ヘッドランプユニット10における複数の取付部12,13,14の全てを、車体20に固定される少なくとも1つの艤装部材30に係わらせ、ヘッドランプユニット10と車体20の間に艤装部材30が介在するようにし、車体20にホイールエプロン21から上方へ延びるエクステンション部22を設け、少なくとも1つの艤装部材30を、エクステンション部22の上端に接続されるフェンダー31とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドランプユニットを複数の取付部により車体に固定する車両用ヘッドランプ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ヘッドランプ取付構造として、ヘッドランプユニットに複数の取付部を形成し、各取付部のうち上側のものを車体のラジエータアッパフレームに係わらせ、下側のものを車体のラジエータサイドパネルに固定されるブラケットに係わらせるものが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−11848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、基本車種からプラットフォームを共用として複数の車種を派生させると、車両のデザインが異なったり、セダンタイプとSUV(Sports Utility Vehicle)タイプのように車両の型式そのものが変更となるなどして、基本車種よりも派生した車種の方がヘッドランプユニットの位置が前方且つ上方となる場合がある。
このとき、車体を前方へ延長させることが可能であるならば、ヘッドランプユニットと車体とを係わらせることができるが、車体及びエンジンルーム内のレイアウトをできる限り基本車種と同じ構成とした方が好ましいし、エンジン型式等によっては車体の前方への延長が不可能な場合もある。
【0004】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、既存のプラットフォームの車体を前方へ延長させることなく、車体に対してヘッドランプユニットを前方且つ上方へ離隔して配することのできる車両用ヘッドランプ取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両用ヘッドランプ取付構造において、ヘッドランプユニットにおける複数の取付部の全てを、車体に固定される少なくとも1つの艤装部材に係わらせ、前記ヘッドランプユニットと前記車体の間に該艤装部材が介在するようにし、前記車体にホイールエプロンから上方へ延びるエクステンション部を設け、前記少なくとも1つの艤装部材を、前記エクステンション部の上端に接続されるフェンダーとしたことを特徴とする。
尚、ここでいう「車体」とは、ラジエータサイドパネル、ラジエータアッパフレーム、ホイールエプロン、サイドフレーム等をさし、エクステンション部を含む。また、ここでいう「艤装部材」とは、車体に固定されるバンパー、フェンダー、ブラケット等の部材をさし、樹脂部材であると金属部材であるとを問わない。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、ヘッドランプユニットの全取付部を艤装部材に係わらせるようにしたので、ヘッドランプユニットを車体と離隔して構成することができる。
ここで、エクステンション部の上端にフェンダーが接続されるようにしたので、フェンダーが車体に対して比較的上方の位置となる。そして、このフェンダーの前部にヘッドランプユニットが取り付けられるので、ヘッドランプユニットが車体に対して比較的上方の位置となるとともに、車体に対して比較的前方の位置となる。これにより、ヘッドランプユニットを車体から上方且つ前方に離隔して配することができる。また、少なくとも1つの艤装部材がフェンダーであるので、ヘッドランプユニットが車体に直接取り付けられてなくとも、ヘッドランプユニットの支持剛性、支持強度を確保することができる。
【0007】
従って、派生車種のヘッドランプユニットの位置が基本車種に対して前方且つ上方となった場合に、既存のプラットフォームの車体を前方へ延長させることなく、車体に対してヘッドランプユニットを前方且つ上方へ離隔して配することができる。また、派生車種の車体及びエンジンルーム内のレイアウトを基本車種と同じ構成とすることができるので、より多くの部品を共用として製造コストを大幅に低減することができ、実用に際して極めて有利である。
さらに、ヘッドランプユニットが艤装部材を介して車体に固定されているので、歩行者等が衝突した際にヘッドランプユニットが車体側から脱落しやすいので、従来よりも歩行者衝突時の安全性が向上する。
また、軽衝突時には、ヘッドランプユニットに衝撃が加わった際に、艤装部材が変形等するおそれはあるものの、車体側にまで変形等が生じることはない。従って、ヘッドランプユニット及び艤装部材の交換で修理を完了させることができ、車体の修復等を行う必要がないことから、リペアコストの低減を図ることもできる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用ヘッドランプ取付構造において、前記艤装部材は、前記フェンダーに加え、前記車体のラジエータフレーム及び前記フェンダーに接続される樹脂製のランプブラケットを含むことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の作用に加え、ヘッドランプユニットの左右外側はフェンダーに取り付けられ、左右内側はランプブラケットに取り付けられることとなる。このとき、フェンダー、ランプブラケット及び車体で閉断面を形成されるので、ヘッドランプユニットの支持剛性、支持強度が向上する。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明の車両用ヘッドランプ取付構造によれば、既存のプラットフォームの車体を前方へ延長させることなく、車体に対してヘッドランプユニットを前方且つ上方へ離隔して配することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1及び図2は本発明の一実施形態を示すもので、図1は車両用ヘッドランプ取付構造の外観斜視図、図2は車両用ヘッドランプ取付構造の分解斜視図である。
【0012】
図1に示すように、この車両用ヘッドランプ取付構造は、自動車車両の前部のヘッドランプ及びこの周辺に関し、ヘッドランプユニット10を直接的に車体20に固定せずに、艤装部材30を介在させて固定するものである。
【0013】
ヘッドランプユニット10は内部にバルブが配されるハウジング11を有する。このハウジング11は樹脂からなり、前面が透明でバルブから照射される光を透過するようになっている。
本実施形態においては、ヘッドランプユニット10は、全体として、後方に向かって左右外側へ斜めに延びるよう形成される。ヘッドランプユニット10は、ハウジング11の後端上部に形成された第1取付部12と、ハウジング11の左右内側端部の下側に形成された第2取付部13と、ハウジング11の下面の左右外側に形成された第3取付部14と、を有する。
【0014】
図2に示すように、第1取付部12は、艤装部材30の1つであるフェンダー31のリンフォース31aに固定される。第2取付部13及び第3取付部14は、艤装部材30の1つであり車体20に接続されるランプブラケット32に固定される。すなわち、艤装部材30は、フェンダー31に加え、ランプブラケット32を含んでいる。そして、ヘッドランプユニット10における3つの取付部12,13,14の全てが、車体20に固定される艤装部材30に係わり、ヘッドランプユニット10と車体20の間に艤装部材30が介在するようになっている。
第1取付部12は左右に所定の幅を有して後方へ延び、第2取付部13は前後に所定の幅を有して左右内側へ延び、第3取付部14は左右に所定の幅を有して下方へ延びる。各取付部12,13,14の先端側には、固定用のボルト15,16,17が挿通される孔が形成される。
【0015】
図2に示すように、本実施形態においては、車体20のホイールエプロン21の上端は略前後に延びるフレーム状に形成され、このホイールエプロン21の上部に上方へ延びるエクステンション材22が接合される。エクステンション部としてのエクステンション材22の上端にフェンダー31は接続される。
エクステンション材22は、ホイールエプロン21の上面に沿って略前後に延び、上端には左右内側へ延びるフランジ22aが、下端には左右内側へ延びるフランジ22bがそれぞれ形成される。上端のフランジ22aの後部にはフェンダー31のフェンダー本体31bが接続され、前部にはフェンダー31のリンフォース31aが接続される。下端のフランジ22bの後部及び前後中央はホイールエプロン21と接合され、前部はラジエータアッパフレーム23と接続される。
【0016】
ラジエータアッパフレーム23は、略左右に延び、左右外側がホイールエプロン21に接続され、左右内側にはラジエータサイドパネル24が接続される。ラジエータサイドパネル24は略上下に延び、図示しないラジエータロアフレームに接続される。ラジエータアッパフレーム23におけるラジエータサイドパネル24との接続部付近に、ランプブラケット32の後端が固定される。
【0017】
図2に示すように、ランプブラケット32は略L字状に形成され、ヘッドランプユニット10の左右内側に沿って延びる前後延在部32aと、ヘッドランプユニット10の前側に沿って延びる左右延在部32bと、を有する。本実施形態においては、ランプブラケット32はグラスファイバーを使用しており、従来公知のブラケットよりも高い剛性及び強度を有している。ランプブラケット32は、全体的に平板状であり、前後延在部32aの後端に上方へ延びる車体接続部32cが形成され、左右延在部32bの左右外側端部に下方へ延びるフェンダー接続部32dが形成される。前後延在部32aの上面には、ヘッドランプユニット10の第2取付部13がボルト16により固定される。
【0018】
また、図2に示すように、フェンダー接続部32dには、上下に離隔した2箇所の止め点が設けられ、各止め点はフェンダー31のリンフォース31aに略左右に延びるボルト33により固定される。さらに、フェンダー接続部32dには、ヘッドランプユニットの第3取付部14がボルト17により固定される。すなわち、フェンダー接続部32dで、ヘッドランプユニット10、フェンダー31及びランプブラケット32の互いの位置が定まるようになっている。尚、本実施形態においては、ランプブラケット32の左右延在部32bは、上方に向かって凹となるよう湾曲形成され、ヘッドランプユニット10と当接する。
【0019】
フェンダー31のリンフォース31aは意匠面をなすフェンダー本体31bの内側に配され、図2に示すように、上端及び下端でフェンダー本体31bに接続される。リンフォース31aの前部は、ヘッドランプユニット10に沿って前方に凹となるよう湾曲形成され、上端にヘッドランプユニット10の第1取付部12がボルト15により固定されるとともに、下端がランプブラケット32のフェンダー接続部32dにボルト(図示省略)により固定される。尚、リンフォース31aには、軽衝突に対応するビードが形成されている。
【0020】
また、フェンダー31の下側は、ホイールエプロン21とリンフォース31aを接続するフェンダーブラケット25により車体20側に支持される。フェンダーブラケット25は、略左右に延び、上方に向かって凸となるよう形成される。また、フェンダーブラケット25は、左右内側がホイールエプロン21に接合され、左右外側にはリンフォース31aとの接続のためのウエルドナットが溶着されている。
【0021】
以上のように構成された車両用ヘッドランプ取付構造では、ヘッドランプユニット10の全取付部12,13,14を艤装部材30に係わらせるようにしたので、ヘッドランプユニット10を車体20と離隔して構成することができる。
ここで、エクステンション材22の上端にフェンダー31が接続されるようにしたので、フェンダー31が車体20に対して比較的上方の位置となる。そして、このフェンダー31の前部にヘッドランプユニット10が取り付けられるので、ヘッドランプユニット10が車体20に対して比較的上方の位置となるとともに、車体20に対して比較的前方の位置となる。これにより、ヘッドランプユニット10を車体20から上方且つ前方に離隔して配することができる。また、艤装部材30の1つがフェンダー31であるので、ヘッドランプユニット10が車体20に直接取り付けられてなくとも、ヘッドランプユニット10の支持剛性、支持強度を確保することができる。
【0022】
従って、複数の車種でプラットフォームを共用として派生車種のヘッドランプユニット10の位置が基本車種に対して前方且つ上方となった場合に、既存のプラットフォームの車体20を前方へ延長させることなく、車体20に対してヘッドランプユニットを10前方且つ上方へ離隔して配することができる。また、派生車種の車体20及びエンジンルーム内のレイアウトを基本車種と同じ構成とすることができるので、より多くの部品を共用として製造コストを大幅に低減することができ、実用に際して極めて有利である。
【0023】
さらに、ヘッドランプユニット10が艤装部材30を介して車体20に固定されているので、歩行者等が衝突した際にヘッドランプユニット10が車体20側から脱落しやすいので、従来よりも歩行者衝突時の安全性が向上する。
また、軽衝突時には、ヘッドランプユニット10に衝撃が加わった際に、艤装部材30が変形等するおそれはあるものの、車体20側にまで変形等が生じることはない。従って、ヘッドランプユニット10及び艤装部材30の交換で修理を完了させることができ、車体20の修復等を行う必要がないことから、リペアコストの低減を図ることもできる。
【0024】
また、本実施形態の車両用ヘッドランプ取付構造によれば、ヘッドランプユニット10の左右外側はフェンダー31に取り付けられ、左右内側はランプブラケット32に取り付けられることとなる。このとき、フェンダー31、ランプブラケット32及び車体20で閉断面を形成されるので、ヘッドランプユニット10の支持剛性、支持強度が向上する。
【0025】
また、本実施形態の車両用ヘッドランプ取付構造によれば、ランプブラケット32にグラスファイバーを使用したので、ランプブラケット32の強度を飛躍的に向上することができる。
【0026】
尚、前記実施形態においては、ヘッドランプユニット10と係わる艤装部材30がフェンダー31とランプブラケット32であるものを示したが、例えば、艤装部材30をヘッドランプユニット10の前側を包囲する一のパイプ材としてもよい。また、例えば、ヘッドランプユニット10と係わる艤装部材30が複数のブラケットであってもよいし、フェンダー31のみであってもよい。
【0027】
また、前記実施形態においては、エクステンション材22が板状であるものを示したが、例えば柱状であってもよく、ホイールエプロン21から上方へ延びてフェンダー31の取付位置を上方へオフセットさせるものであれば形状等は任意であるし、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両用ヘッドランプ取付構造の外観斜視図である。
【図2】車両用ヘッドランプ取付構造の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
10 ヘッドランプユニット
12 第1取付部
13 第2取付部
14 第3取付部
20 車体
21 ホイールエプロン
22 エクステンション材
23 ラジエータアッパフレーム
30 艤装部材
31 フェンダー
32 ランプブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドランプユニットにおける複数の取付部の全てを、車体に固定される少なくとも1つの艤装部材に係わらせ、前記ヘッドランプユニットと前記車体の間に該艤装部材が介在するようにし、
前記車体にホイールエプロンから上方へ延びるエクステンション部を設け、
前記少なくとも1つの艤装部材を、前記エクステンション部の上端に接続されるフェンダーとしたことを特徴とする車両用ヘッドランプ取付構造。
【請求項2】
前記艤装部材は、前記フェンダーに加え、前記車体のラジエータフレーム及び前記フェンダーに接続される樹脂製のランプブラケットを含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用ヘッドランプ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−168677(P2006−168677A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367786(P2004−367786)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】