説明

車両用ホイールのタイヤビードストッパ

【課題】 サイドウォール強化型ランフラットタイヤの装着作業を容易化するとともに、ランフラット時のビードのずれを防止する。
【解決手段】 サイドウォール強化型ランフラットタイヤ10用のホイール20のリム本体21の一端部に、サイドリング24を取り外し可能に装着する。リム本体21の外周には、タイヤビードストッパ30を取り外し可能に装着する。タイヤビードストッパ30は、リム本体21の外周に対応する周長とタイヤビード13A,13Bの高さに対応する高さを有して環状をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤのサイドウォールを強化して内圧が低下しても車両荷重を支持できるようにし、ひいてはランフラット走行可能にしたサイドウォール強化型ランフラットタイヤに用いられるホイール構造に関し、特に、ランフラット時にタイヤビードがずれるのを規制するストッパ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サイドウォール強化型ランフラットタイヤは、パンク等で内圧が低下した時でも車両荷重を支持できる程度の強度をサイドウォールに持たせ、完全に潰れてしまわないようになっている。これによって、車両を安全な場所までランフラット走行させることができる。
一方、内圧低下によってサイドウォールが外側へ膨らむように湾曲するのに伴い、ビードが内側へずれようとする。これを許すと、ビードがホイールのドロップに落ち、締め代が無くなり、タイヤとホイールの間に滑りが発生し、制動上の問題も起きかねない。そこで、これを防止すべく、ホイールのドロップ付きリムには、ハンプが設けられている。或いは、ドロップが無くストレート部が設けられた横装填式のリムが用いられている。
【特許文献1】特開2000−190716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
サイドウォール強化型ランフラットタイヤ用のドロップ付きのホイールでは、ビードのずれ防止の確実性を期すために、ハンプを通常より高くした特殊形状のリムを採用している。しかし、ハンプの高さがあまり大きいと、タイヤセットに支障を来たすという問題がある。一方、横装填式のリムでは、ランフラット時にビードがずれ過ぎた場合、タイヤが外れるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、前記問題点を解決するために提案されたものであり、
サイドウォール強化型ランフラットタイヤ用のホイールのリムに取り外し可能に装着され、前記タイヤのビードの変位(幅方向内側へのずれ)を規制するストッパであって、
前記リムの外周に対応する周長の環状をなして前記リムの外周面に取り外し可能に設けられる環状部を備え、
この環状部の幅方向の両端部には、前記ビードの内面と近接対向する一対のビード規制部が設けられ、
高さが、前記ビードの高さに対応する大きさ(前記ビードと略等しい高さ)になっていることを特徴とする。
これによって、ビードが幅方向内側へずれるように変位するのを防止できるとともに、ホイールにはハンプを設ける必要が無くタイヤの装着作業を容易化できる。また、当該着脱式のタイヤビードストッパの高さを、ビードの高さに対応する程度にすることにより、ビードの変位規制機能をハンプよりも向上できる一方、ランフラット時でもタイヤのトレッド部との間隔を確保できる。したがって、高さ方向の強度は、それ程大きくする必要がない。
【0005】
前記環状部には、これを幅方向に補強する幅方向補強部が設けられていることが望ましい。幅方向補強部は、例えば幅方向に延びるリブ等にて構成するとよい。
【0006】
前記環状部が、周方向に複数の分割体に分割されるとともに、これら分割体が分割体連結手段にて連結されていてもよい。分割体連結手段は、分割体を分離可能に連結しているのが望ましい。
前記分割体の幅方向の両端部が、前記ビード規制部として提供されていてもよい。
【0007】
前記複数の分割体のうち1の分割体に第1係合部が設けられ、その隣の分割体に前記第1係合部と分離可能に係合する第2係合部が設けられ、これら第1、第2係合部が、前記分割体連結手段の構成要素として提供されていてもよい。
【0008】
前記分割体連結手段が、前記複数の分割体の外周に巻かれる帯部材を含んでいてもよい。これによって、分割体をリムに縛り付けるようにして連結することができる。
【0009】
前記帯部材は、有端環状の帯本体と、この帯本体の両端部を接近離間可能に連結する帯端連結手段とを有していることが望ましい。これによって、分割体をリムに容易かつ確実に縛り付けることができる。
【0010】
前記帯端連結手段が、互いに逆向きの凹部を有して帯本体の両端部にそれぞれ設けられた一対のハーフピースと、これらハーフピースの端部どうしを前記凹部の略半幅分だけ離して回転可能に連結するリンクとを有していてもよい。
【0011】
前記分割体の外周面には、周方向に延びて前記帯部材を嵌め込む帯収容溝が形成されていることが望ましい。前記帯部材が帯本体と帯端連結手段を有している場合には、前記帯収容溝が、前記分割体の外周面の周方向に延びて前記帯本体を嵌め込む帯本体収容溝と、この溝の中間部に設けられ、前記帯端連結手段を収容する帯端連結手段収容凹部を有していることが望ましい。これによって、帯部材を分割体にしっかり止めることができる。
【0012】
前記環状部が、無端環状をなしていてもよい。この場合、前記ホイールのリムが、リム本体と、このリム本体の少なくとも一方の端部に取り外し可能に装着されるサイドリングとを有していることが望ましい。
【0013】
前記無端の環状部には、複数の凸部が、互いに周方向に離間して形成され、各凸部が、環状部の幅方向に延びて幅方向補強部として提供されるとともにその延び方向の両端部が前記ビード規制部として提供されていてもよい。
軽量化の観点からは、前記凸部が、中空であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、サイドウォール強化型ランフラットタイヤ用のホイールの横装填式のリム構造であって、リム本体と、前記リム本体の少なくとも一端部に取り外し可能に装着されるサイドリングと、前記リム本体の外周に対応する周長と前記ビードの高さに対応する高さを有して環状をなし、前記リム本体の外周に取り外し可能に装着され、前記タイヤのビードの変位を規制するタイヤビードストッパと、を備えていることを特徴とする。当該サイドリング付きのリム構造は、タイヤビードストッパが無端環状の場合に、サイドリングを外した状態で装着でき、特に効果的である。
【0015】
前記タイヤビードストッパは、有端環状でも無端環状でもよい。特に無端環状の場合には、前記リム本体のサイドリング側の端部の外周に取り外し可能に装着されるとともに幅方向外側の端縁が前記サイドリングに係止されるカラーを、さらに備え、前記カラーの外周面が、幅方向外側に向かって拡径するテーパ状をなして前記ビードの内端面を載せるビードシート部となっていることが望ましい。サイドリングとカラーを外した状態でタイヤビードストッパを装着することにより、装着作業を容易に行なうことができる。
【0016】
前記リム本体の幅方向の中央部には、ストレート部が形成され、このストレート部の幅方向の両端部には、前記サイドリングまたはリム本体に形成されたビードシート部が連なっており、前記タイヤビードストッパが、前記ストレート部と略等幅であることが望ましい。これによって、ビードがビードシート部より幅方向内側へずれ出ないようにすることができる。また、締め代を確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ホイールにタイヤビードストッパを取り外し可能に設けることによってビードが幅方向内側へずれるように変位するのを防止できるとともに、ホイールにはハンプを設ける必要が無く、タイヤの装着作業を容易化できる。また、タイヤビードストッパの高さを、ビードの高さに対応する程度にすることにより、ビードの変位規制機能をハンプによるよりも向上できる一方、ランフラット時でもサイドウォール強化型ランフラットタイヤのトレッド部との間隔を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
第1実施形態
図1は、乗用車等の車両用のホイールアッセンブリを示したものである。ホイールアッセンブリは、サイドウォール強化型ランフラットタイヤ10と、これを装着するホイール20とを備えている。サイドウォール強化型ランフラットタイヤ10は、トレッド部11と、このトレッド部11の幅方向(軸方向)の両端部から径方向内側へ延出された一対のサイドウォール12と、これらサイドウォール12の径方向内側の端部にそれぞれ設けられた一対のビード13A,13Bとを有している。図6に示すように、サイドウォール12は、タイヤ10の内圧が無い時でも接地部分が完全に潰れることがなく当該車両の荷重を支持できる強度が付与されている。ビード13A,13Bの内径は、自然状態(ホイール20に装着されていない状態)で後記リム22のストレート部23aの外径より小さい。したがって、ホイール20への装着状態では拡径されることになり、締め代が確保されている。
【0019】
図1に示すように、ホイール20は、ディスク21と、このディスク21の外周に設けられた横装填式リム22とを有している。横装填式リム22は、リム本体23と、このリム本体23の幅方向(軸方向)の一端部(図において左)に設けられたサイドリング24を有し、2ピース構造をなしている。リム本体23は、ディスク21と溶接又は一体成形されている。
【0020】
リム本体23の幅方向の中間部は、広い領域にわたって一定径の円筒状をなすストレート部23aになっている。ドロップ部は、設けられていない。リム本体23のサイドリング24とは逆側の端部(図において右)には、第2ビードシート部23bが形成され、その更に幅方向の外側には、第2フランジ23cが形成されている。ビードシート部23bは、ストレート部23aに連なるとともに、その外周面が幅方向外側へ向かうにしたがって緩やかに拡径するテーパ状になっている。テーパ角度は、例えば5度である。フランジ23cは、その内面がビートシート部23の外周面に滑らかに連なるとともに径方向外側へ突出している。テーパ状をなすビードシート部23に、タイヤ10のビード13Bの内端面が押し当てられて気密に密着されている。また、フランジ23cの内面にビード13Bの外面が押し当てられている。
なお、符号23eは、エアバルブ装着穴である。
【0021】
リム本体23のサイドリング24側の端部(図において左)には、ビードシート部23dが形成され、その更に幅方向の外側には、サイドリング装着部23fが形成されている。ビードシート部23dは、上記逆側端部のビードシート部23bと同様に、ストレート部23aに連なるとともに、その外周面が幅方向外側(図において左)へ向かうにしたがって例えば5度のテーパ角で緩やかに拡径するテーパ状になっている。サイドリング装着部23fは、ビードシート部23dより径が小さく、両者の間に段差が形成されている。サイドリング装着部23fには、第1係合突起23gが径方向外側に突出形成されている。詳細な図示は省略するが、第1係合突起23gは、周方向に等間隔離れて複数(例えば8つ)配置されている。サイドリング装着部23fの突起23gより外側には、シール溝が形成され、そこにダストシール用のOリング25が嵌め込まれている。
【0022】
サイドリング24の径方向内側部分は、リム本体23への被着部24fになっている。被着部24fには、第2係合突起24gが径方向内側に突出形成されるとともに、その幅方向外側に離れて環状シール壁24hが径方向内側に突出形成されている。突起24gは、リム本体23の突起23gと同様に、周方向に等間隔離れて突起23gと同数配置されている。サイドリング24の突起24gを外側からリム本体23の突起23g間の隙間に通し、突起23gとその奥の段差との間に位置させたのち、突起23gの背後に重なるように回転させることにより、サイドリング24がリム本体23にバヨネット嵌合されている。なお、リム本体23とサイドリング24は、別途、図示しないネジ等にて回転不能に固定されている。上記サイドリングの装着状態において、環状シール壁24hの突出端面が、Oリング25に押し当てられている。これにより、ダストがリム本体23とサイドリング24の嵌合隙間に侵入するのが防止されている。
【0023】
サイドリング24の径方向外側部分には、第1フランジ24cと、ビードシート部24dが形成されている。フランジ24cは、リム本体23のフランジ23cと対称形状をなして径方向外側へ突出されている。ビードシート部24dは、短幅をなし、その外周面が上記リム本体23のビードシート部23dと連続するとともにビードシート部23dから離れるにしたがって例えば5度のテーパ角で緩やかに拡径するテーパ状をなし、フランジ24cの内面に滑らかに連なっている。リム本体23のビードシート部23dと、サイドリング24のビードシート部24dとにより、テーパ状の第1ビードシート部22dが形成されている。この第1ビードシート部22dに、タイヤ10のビード13Aの内端面が押し当てられ気密に密着されている。ビード13Aは、リム本体23のビードシート部23dとサイドリング24のビードシート部24dとに跨ることにより、リム本体23とサイドリング24の間の隙間を塞いでいる。また、フランジ24cの内面にビード13Aの外面が押し当てられている。
【0024】
車両用ホイールアッセンブリのホイール20のリム22は、横装填式であり、ハンプが無い。一方、ストレート部23aにタイヤビードストッパ30が設けられている。
図2に示すように、タイヤビードストッパ30は、複数(例えば6つ)の分割体31と、帯部材40とを備えている。分割体31は、硬質の樹脂にて形成されているが、軟質の樹脂やゴム等にて形成してもよい。或いは、金属にて形成してもよい。樹脂やゴムで形成すれば、軽量化を図ることができる。図1〜図3に示すように、分割体31は、天板32と、一対の側壁33と、一対の端壁34を有し、全体として平面視長方形状、側面視円弧形状の逆さ容器状をなしている。
【0025】
天板32は、平面視長方形状をなし、長手方向に沿って円弧状に湾曲されている。天板32の短手方向(幅方向)の両端部には、円弧形状の側壁33が径方向内側へ突出するようにして設けられ、長手方向(周方向)の両端部には、端壁34が径方向内側へ突出するようにして設けられている。図1に示すように、壁33,34の高さ(分割体31ひいてはタイヤビードストッパ30の高さ)は、タイヤ10のビード13A,13Bの高さと略同じになっている。
【0026】
天板32の幅ひいては分割体31の幅は、ホイール20のストレート部23aの幅と略等しい。すなわち、一対の端壁34の間隔は、ストレート部23aの幅と略等しい。これにより、側壁33は、ストレート部23aの両端部付近(ビードシート部23d,23bとの境)に配置され、ビード13A,13Bの内面と近接対向している。側壁33は、本発明のビード規制部を構成している。
【0027】
図3(a)に示すように、天板32の表側面には、帯本体収容溝32aと、透し溝32bが形成されている。帯本体収容溝32aは、天板32の短手方向(幅方向)の中央部において長手方向(周方向)の全長にわたって延びている。図1に示すように、帯本体収容溝32aは、帯部材40の後記帯本体41の厚さに対応する深さの浅い平溝になっている。図3(a)に示すように、透し溝32bは、天板32の長手方向の中央部において短手方向の全長にわたって延びている。図2に示すように、透し溝32bは、後記帯端連結手段42の噛合い状態の大きさに対応する幅の半円溝になっている。図2及び図3(a)に示すように、2つの溝32a,32bが交差すべき天板32の中央部の表側面には、帯端連結手段収容凹部32cが形成されている。凹部32cは、平面視正方形状をなし、透し溝32bより深い半円溝になっている。
【0028】
図3(b)に示すように、天板32の裏面には、長手方向すなわち周方向に延びる縦補強リブ35と、短手方向すなわち幅方向に延びる横補強リブ36が形成されている。これら補強リブ35,36は、それぞれの延び方向と直交する方向に離間して複数設けられている。
端壁34と、横補強リブ36と、天板32の上記透し溝32b及び凹部32cを形成する半円断面状の部分32b’,32c’とは、幅方向補強部を構成している。
【0029】
分割体31の一方の端壁34には、第1係合部37が設けられ、他方の端壁34には、第2係合部38が設けられている。第1係合部37は、係合シャフト37aを有している。係合シャフト37aは、端壁34から突出された一対のブラケット37bにて支持されている。第2係合部38は、フック状をなしている。
【0030】
図2に示すように、複数の分割体31は、ホイール20のストレート部23aの外周面の周方向に沿って一列に並べられ、全体として環状になっている。これら分割体31が、分割体連結手段にて連結されている。
詳述すると、図2及び図4に示すように、隣り合う分割体31,31のうち、一方の分割体31のフック状の第2係合部38が、他方の分割体31の第1係合部37の係合シャフト37aに引っ掛けられている。これによって、隣り合う分割体31,31どうしが連結されている。ひいては、複数の分割体31が環状に連なり、タイヤビードストッパ30の環状部30Xを構成している。換言すると、タイヤビードストッパ30は、環状部30Xを有し、この環状部30Xが、周方向に複数の分割体41に分割されている。
第1、第2係合部37,38は、分割体連結手段の構成要素になっている。
【0031】
分割体連結手段は、更に帯部材40を含んでいる。図2に示すように、帯部材40は、帯本体41と、帯端連結手段42とを有している。帯本体41は、有端環状の薄板にて構成され、この帯本体41の両端部が帯端連結手段42にて連結されている。これによって、帯部材40が、全体として無端環状をなしている。帯部材40は、例えば鋼等の金属にて構成されているが、樹脂等の金属以外の材料で構成することにしてもよい。
【0032】
図5(a)に示すように、帯端連結手段42は、一対をなす第1、第2のハーフピース43A,43Bと、リンク44を有している。各ハーフピース43A,43Bは、半円状の凹部43cを有して、半円弧状をなしている。第1ハーフピース43Aの凹部43cは、上に開口されるように向けられている。逆に、第2ハーフピース43Bの凹部43cは、下に開口されるように向けられている。第1ハーフピース43Aの基端部が、帯本体41の一端部に一体に延設され、第2ハーフピース43Bの基端部が、帯本体41の他端部に一体に延設されている。
【0033】
これらハーフピース43A,43Bの先端部どうしが、リンク44にて連結されている。各ハーフピース43A,43Bとリンク44は、帯幅方向(図5の紙面と直交する方向)に沿う軸45の周りに回転可能になっている。第1ハーフピース43Aの軸45と第2ハーフピース43Bの軸45との距離Lは、半円状凹部43cの半径と略等しい。これによって、帯端連結手段42は、第1ハーフピース43Aとリンク44と第2ハーフピース43Bが一列に並ぶ展開状態(図5(a))と、第1ハーフピース43Aの凹部43cに第2ハーフピース43Bの先端部が嵌り、第2ハーフピース43Bの凹部43cに第1ハーフピース43Aの先端部が嵌る噛合い状態(同図(b))との間で変形可能になっている。帯端連結手段42が噛合い状態のとき、帯部材40への引っ張り力Fに対して帯端連結手段42の各軸45が死点上または死点を僅かに超えた位置にあり、引っ張り力Fによっては展開しないようになっている。
【0034】
帯端連結手段42の全長は、展開状態のとき相対的に大きく、噛合い状態のとき相対的に小さい。詳しくは、噛合い状態のとき、展開状態に対して軸間距離Lの2倍ほど短い。したがって、帯端連結手段42の展開・噛合により、帯本体41の両端部どうしが接近離間可能になっている。ひいては、帯部材40の周長が、拡縮可能になっている。帯端連結手段42が展開状態のときの帯部材40の周長は、複数の分割体41を環状に連ねてなる環状部30Xの外周長と略同じか僅かに大きい。帯端連結手段42を噛合い状態にすると、帯部材40の周長が、環状部30Xの外周長より小さくなる。
【0035】
図1及び図2に示すように、帯部材40は、環状部30Xの外周に巻回されている。図2に示すように、1つの分割体31の中央の凹部32cには、帯端連結手段42の下半分が収容されている。帯端連結手段42は、透し溝32bを通して横から確認できるようになっている。帯端連結手段42は、噛合い状態になっている。これによって、帯部材40の周長が縮められ、帯本体41が分割体31の帯本体収容溝32aに嵌め込まれている。
帯本体収容溝32aと帯端連結手段収容凹部32cによって、帯収容溝が構成されている。
【0036】
上記構成の車両用ホイールアッセンブリの組み立て手順を説明する。
サイドリング24をリム本体23から外しておく。バルブ装着穴23eには、バルブを装着しておく。
一方、タイヤビードストッパ30の複数の分割体31を環状に連結するとともに、外周に帯部材40を緩めた状態(帯端連結手段42を展開した状態)で巻き付けておく。
この環状になったタイヤビードストッパ30をタイヤ10の内部に入れる。このタイヤビードストッパ30が中に入った状態のタイヤ10の片側のビード13Bを、サイドリング装着部23fの側からリム本体23に嵌める。この嵌め込み作業は、リム22にハンプが無いので、容易に行なうことができる。
【0037】
このビード13Bをフランジ23cの近くまで移動させ、タイヤ10内のタイヤビードストッパ30をストレート部23aの所定位置に位置させる。そして、帯部材40を締める(帯端連結手段42を噛合い状態にする)ことにより、タイヤビードストッパ30をストレート部23aにしっかり固定する。
【0038】
次いで、タイヤ10のもう一方のビード13Aの端を、リム本体23のビードシート部23dに載せる。
そして、サイドリング24をリム本体23の装着部23fに装着する。このサイドリング24を、リム本体23のサイドリング装着部23fとビードシート部23dの段差に突き当たるまで押すと、サイドリング装着部23fのOリング用シール溝が露出する。このシール溝にOリング25を嵌める。
その後、バルブ装着穴23eに嵌めたバルブからタイヤ10内に圧縮空気を充填する。この空気圧によって、ビード13A,13Bの内端面が、ビードシート部22d,23bに密着するとともに、外面が、フランジ24c,23cに密着する。また、サイドリング24が、外側へ押し動かされてOリング25を押圧し、シールがなされる。
【0039】
図6に示すように、車両走行中にタイヤ10内の内圧がパンク等で無くなった場合でも、強化されたサイドウォール12によって車両の荷重を支持でき、ランフラット走行を行なうことができる。この時、サイドウォール12が外側へ膨らむように湾曲するのに伴い、ビード13A,13Bが内側へずれて来る。すると、タイヤビードストッパ30の側壁33に当たり、それ以上ずれるのが規制される。タイヤビードストッパ30は、端壁34や補強リブ36,32b’,32c’等によって横方向の剛性が高められているので、ビード13A,13Bの内側への変位を確実に阻止することができる。この状態でもビード13A,13Bとホイール20の締め代が十分に確保されているので、タイヤ10とホイール20が滑ることはない。したがって、十分な制動力を確保することができる。ホイール20にはドロップが無いため、それにビード31が落ちることがなく、タイヤ10が外れることはない。
【0040】
内圧無しの時でも、タイヤ10のトレッド部11がタイヤビードストッパ30から離れており、タイヤビードストッパ30に車両の垂直荷重がかかることはないので、タイヤビードストッパ30の高さ方向の剛性は、要求されない。また、タイヤビードストッパ30は、ホイール20のリム22にしっかり固定されている必要はなく、例えば周方向に摺動するようになっていてもよい。
タイヤビードストッパ30の環状部30Xを構成する分割体31は、樹脂にて出来、容器状になっているので、軽量化を図ることができる。一方、補強リブ35,36を設けることにより剛性を十分に確保することができる。
【0041】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の実施形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
第2実施形態
図7及び図8は、本発明の第2実施形態を示したものである。この実施形態のタイヤビードストッパ50は、樹脂成形にてなる一体物である。樹脂に代えて、ゴム製にしてもよく、金属製にしてもよい。タイヤビードストッパ50は、無端環状の帯板状をなす環状部51と、この環状部51の外周の周方向に等間隔置きに設けられた複数の凸部52と、を一体に有している。各凸部52は、例えば側面視半円状の中空をなし、環状部51の幅方向の全長にわたって延びている。凸部52は、幅方向補強部を構成している。凸部52の中空部52aは、両側端面に開口されている。
【0042】
なお、凸部52の断面形状は、円弧状に代えて、図9(a)に示すように、台形状をなしていてもよく、図9(b)に示すように、三角形状をなしていてもよく、その他の形状をなしていてもよい。
軽量化の観点からは、凸部52内を中空にすることが好ましいが、必ずしもそうする必要はなく、中実にしてもよい。
【0043】
タイヤビードストッパ50は、上記第1実施形態と同様に、ホイール20のストレート部23aの外周に嵌められている。タイヤビードストッパ50の内径(環状部51の内径)は、ストレート部23aの外径と略等しい。環状部51と凸部52を合わせたタイヤビードストッパ50全体の高さ(厚さ)は、タイヤ10のビード13A,13Bの高さに対応する大きさになっている。タイヤビードストッパ50(環状部51と凸部52)は、ストレート部23aと略等幅をなし、ストレート部23aの略全体を覆っている。タイヤビードストッパ50(環状部51と凸部52)の両側端面は、ビード13A,13Bの内面と近接対向されており、ビード規制部を構成している。図7の仮想線に示すように、タイヤ10の内圧低下時にビード13A,13Bが幅方向の内側にずれようとすると、タイヤビードストッパ50の側端面(主に凸部52の側端面)に当たり、それ以上ずれるのが阻止される。
【0044】
第2実施形態では、ホイール20のリム22が、リム本体23と、サイドリング24と、カラー26との、3ピース構造になっている。詳述すると、リム本体23には、サイドリング装着部23fとストレート部23aの間に、ビードシート部23dに代えて、カラー装着部23kが設けられている。カラー装着部23kは、その外周面がストレート部23aよりやや小径の円筒状になっている。カラー装着部23kの外周面には、シール溝が形成され、そこにエアシール用のOリング27が嵌め込まれている。
【0045】
カラー26は、その内周がカラー装着部23kの外周と略等しい円筒面をなし、カラー装着部23kの外周に嵌め込まれている。カラー26とカラー装着部23kとの間は、Oリング27にてシールされている。カラー26の外周面は、幅方向(軸方向)の外側へ向かって例えば5度のテーパ角で緩やかに拡径するテーパ状をなし、サイドリング24のビードシート部24dの外周面と連続している。これにより、カラー26は、サイドリング24のビードシート部24dと共に第1ビートシート部22dを構成している。ビートシート部22dには、タイヤ10のビード13Aの内端面が、カラー26とサイドリング24に跨るようにして押し当てられ気密に密着されている。カラー26の幅方向外側の端縁は、サイドリング24に突き当たり、係止されている。カラー26とサイドリング24の間は、ビード13Aによってシールされている。
【0046】
第2実施形態の車両用ホイールアッセンブリを組み立てる際は、予めタイヤ10の中にタイヤビードストッパ50を入れておく。この状態で、図10(a)に示すように、タイヤ10のビード13Bを、サイドリング24もカラー26も未装着のリム本体23に、サイドリング及びカラー装着部23f,23kの側から嵌め、このタイヤ10の内部のタイヤビードストッパ50をストレート部23aの所定位置にセットする。タイヤビードストッパ50は、ストレート部23aの外径と略等しい内径の無端環状をなしているが、リム本体23のサイドリング及びカラー装着部23f,23k側にはフランジは勿論、テーパ状のビードシート部も無く、タイヤビードストッパ50より小径になっているので、タイヤビードストッパ50の嵌め込み作業を容易に行なうことができる。
【0047】
続いて、図10(b)に示すように、カラー装着部23kのエアシール溝にOリング27を嵌めたうえで、カラー26をカラー装着部23kの外周に嵌める。この際、カラー26が、タイヤ10のビード13Aの内周に入り込み、カラー26の外周面にビード13Aの内端面が乗る。カラー26は、その外周面とビード13Aとの間の摩擦による抵抗を受けるが、回転操作は不要で単に押し込むだけであるので、カラー26の嵌め込み作業は簡単である。
次に、図7に示すように、サイドリング24を、サイドリング装着部23fに装着するとともに内側へ押し込んでOリング25を嵌める。その後、タイヤ内に空気を充填する。
【0048】
第2実施形態の変形態様
図11は、3ピースのリム構造の変形態様を示したものである。この態様では、リム本体23のカラー装着部23kとサイドリング装着部23fが、リム本体23の一端部(図において左)において外周側と内周側に重なるようにして配置されている。詳述すると、リム本体23の一端部の外周は、ストレート部23aより小径の円筒面状をなし、そこにカラー26が装着されることにより、カラー装着部23kとなっている。
【0049】
リム本体23の一端部の内周部分は、径方向内側へ突出形成された第1係合突起23gを有してサイドリング装着部23fとなっている。第1係合突起23gは、第1実施形態のものと同様に、周方向に等間隔離れて複数(例えば8つ)配置されている(詳細図示省略)。
【0050】
サイドリング24は、円筒状をなす被着部24fと、この円筒状被着部24fの幅方向(軸方向)の外側の周縁から径方向外側へ突出する環状鍔部24tを有して、断面L字状をなしている。被着部24fの外周に第2係合突起24gが形成されている。突起24gは、径方向外側へ突出するとともに、第1実施形態のものと同様に、周方向に等間隔離れて複数(例えば8つ)配置されている(詳細図示省略)。突起23g,24gどうしのバヨネット嵌合によってサイドリング24の被着部24fがリム本体23の装着部23fに取り付けられる点は、第1実施形態と同様である。
【0051】
この変形態様によれば、カラー装着構造とサイドリング装着構造が幅方向の同位置で径方向に重なって配置されているので、カラー26とサイドリング24を合わせた装着所要領域を狭くでき、ひいては、リム構造の幅が増大するのを回避することができる。
【0052】
この変形態様では、環状シール壁23hが、リム本体23に設けられ、ダストシール用Oリング25が、サイドリング24に設けられている。環状シール壁23hは、リム本体23のサイドリング装着部23fの突起23gより幅方向内側に離れた位置に、径方向内側へ突出形成されている。Oリング25は、サイドリング24の被着部24fの突起24gより幅方向内側に形成された環状収容溝に嵌め込まれている。
【0053】
カラー26は、図3のものより幅広になっている。第1ビードシート部22dは、カラー26の外周面だけで構成されており、サイドリング24にはビードシート部が設けられていない。
サイドリング24の環状鍔部24tの中間部にカラー26の幅方向外側の端縁が係止されている。環状鍔部24tのカラー係止部より先端側の部分が、フランジ24cとなっている。
【0054】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、タイヤビードストッパの形状・材質・構造等は、種々改変することができる。
サイドリングが、ホイールの幅方向の両端部に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用ホイールアッセンブリの正面断面図である。
【図2】前記車両用ホイールアッセンブリのターヤビードストッパを、ホイールのリムに装着した状態で示す側面図である。
【図3(a)】前記タイヤビードストッパの分割体の平面図である。
【図3(b)】前記タイヤビードストッパの分割体の底面図である。
【図4】前記分割体の隣り合うものどうしの連結構造を示す分解斜視図である。
【図5(a)】前記タイヤビードストッパの帯状体の帯端連結手段を展開状態で示す側面図である。
【図5(b)】前記帯状体の帯端連結手段を噛合い状態で示す側面図である。
【図6】ランフラット時の前記車両用ホイールアッセンブリの接地部分の正面断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る車両用ホイールアッセンブリの正面断面図である。
【図8】前記第2実施形態のターヤビードストッパを、ホイールのリムに装着した状態で示す側面図である。
【図9(a)】前記第2実施形態のタイヤビードストッパの変形例を示す側面図である。
【図9(b)】前記第2実施形態のタイヤビードストッパの他の変形例を示す側面図である。
【図10(a)】前記第2実施形態の車両用ホイールアッセンブリの組立て手順を、タイヤの片側のビードとタイヤビードストッパをリム本体に嵌めた状態で示す正面断面図である。
【図10(b)】前記組立て手順を、カラーをリム本体に嵌めた状態で示す正面断面図である。
【図11】第2実施形態に係る車両用ホイールアッセンブリの変形態様を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0056】
10 サイドウォール強化型ランフラットタイヤ
11 トレッド
12 サイドウォール
13A,13B ビード
20 ホイール
21 ディスク
22 リム
22d 第1ビードシート部
23 リム本体
23a ストレート部
23b 第2ビードシート部
23c 第2フランジ
23d ビードシート部
23e エアバルブ装着穴
23f サイドリング装着部
23g 第1係合突起
23k カラー装着部
24 サイドリング
24c 第1フランジ
24d ビードシート部
24f 被着部
24g 第2係合突起
24h 環状シール壁
24t 環状鍔部
25 ダストシール用Oリング
26 カラー
27 エアシール用Oリング
30 タイヤビードストッパ
30X 環状部
31 分割体
32 天板
32a 帯本体収容溝(帯収容溝の構成要素)
32b 透し溝
32b’ 透し溝形成部分(幅方向補強部)
32c 帯端連結手段収容凹部(帯収容溝の構成要素)
32c’ 凹部形成部分(幅方向補強部)
33 側壁(ビード規制部)
34 端壁(幅方向補強部)
35 縦補強リブ
36 横補強リブ(幅方向補強部)
37 第1係合部(分割体連結手段の構成要素)
37a 係合シャフト
37b ブラケット
38 第2係合部(分割体連結手段の構成要素)
40 帯部材(分割体連結手段の構成要素)
41 帯本体
42 帯端連結手段
43A 第1ハーフピース
43B 第2ハーフピース
43c 半円状凹部
44 リンク
45 軸
50 タイヤビードストッパ
51 環状部
52 凸部(幅方向補強部、ビード規制部)
52a 中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール強化型ランフラットタイヤ用のホイールのリムに装着され、前記タイヤのビードの変位を規制するストッパであって、
前記リムの外周に対応する周長の環状をなして前記リムの外周面に取り外し可能に設けられる環状部を備え、
この環状部の幅方向の両端部には、前記ビードの内面と近接対向する一対のビード規制部が設けられ、
高さが、前記ビードの高さに対応する大きさになっていることを特徴とするタイヤビードストッパ。
【請求項2】
前記環状部には、これを幅方向に補強する幅方向補強部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤビードストッパ。
【請求項3】
前記環状部が、周方向に複数の分割体に分割されるとともに、これら分割体が分割体連結手段にて連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤビードストッパ。
【請求項4】
前記分割体連結手段が、前記複数の分割体の外周に巻かれる帯部材を含むことを特徴とする請求項3に記載のタイヤビードストッパ。
【請求項5】
前記分割体の外周面に、周方向に延びて前記帯部材を嵌め込む帯収容溝が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のタイヤビードストッパ。
【請求項6】
前記環状部が、無端環状をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤビードストッパ。
【請求項7】
前記無端の環状部には、複数の凸部が、互いに周方向に離間して形成され、各凸部が、環状部の幅方向に延びて幅方向補強部として提供されるとともにその延び方向の両端部が前記ビード規制部として提供されていることを特徴とする請求項6に記載のタイヤビードストッパ。
【請求項8】
サイドウォール強化型ランフラットタイヤ用のホイールのリム構造であって、
リム本体と、
前記リム本体の少なくとも一端部に取り外し可能に装着されるサイドリングと、
前記リム本体の外周に対応する周長と前記タイヤのビードの高さに対応する高さを有して環状をなし、前記リム本体の外周に取り外し可能に装着され、前記タイヤのビードの変位を規制するタイヤビードストッパと、
を備えたことを特徴とするホイールの横装填式リム構造。
【請求項9】
前記タイヤビードストッパが、無端環状をなしており、
前記リム本体のサイドリング側の端部の外周に取り外し可能に装着されるとともに幅方向外側の端縁が前記サイドリングに係止されるカラーを、さらに備え、
前記カラーの外周面が、幅方向外側に向かって拡径するテーパ状をなして前記ビードの内端面を載せるビードシート部となっていることを特徴とする請求項8に記載のホイールの横装填式リム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図11】
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