説明

車両用モータ駆動装置

【課題】本発明は、車両用モータ駆動装置に関し、簡易かつ低廉な構成で高周波ノイズが車体側に伝播されるのを抑制することにある。
【解決手段】車体バネ下に取り付けられ、給電により車輪を回転させる動力を発生するモータと、車体バネ上に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換してモータに給電するインバータと、モータとインバータとを電気的に接続する給電ケーブルとしてのシールド線と、を備える車両用モータ駆動装置において、シールド線のシールド層を、モータを収納するモータケースの、サスペンションアームとの接続部近傍又はハブベアリングの取付位置近傍で接地させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用モータ駆動装置に係り、特に、車体バネ下に取り付けられ、給電により車輪を回転させる動力を発生するモータと、車体バネ上に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換してモータに給電するインバータと、を電気的に接続する給電ケーブルとしてシールド線を用いた車両用モータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給電により車輪を回転させる動力を発生するモータと、直流電力を交流電力に変換して前記モータに給電するインバータと、モータとインバータとを電気的に接続する給電ケーブルとしてのシールド線と、を備える車両用モータ駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置において、シールド線のシールド層は、高周波リアクトルを介して、インバータを収納するインバータケースに接地されている。インバータケースは、車体に接続されている。高周波リアクトルは、シールド線に生じる高周波の電位変動を吸収する。このため、シールド線に生ずる高周波ノイズが車体側に伝播するのが抑制される。
【特許文献1】特開2006−80215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、高周波リアクトルは、一般的に高価であると共に、また、コアに導線を巻いた形状からなるので、搭載スペースが大きくなり、更に、リアクトル自体から放射される放射ノイズが存在するので、そのリアクトル自体を覆うシールドが必要である。この点、上記した装置では、シールド線に生ずる高周波ノイズが車体側に伝播するのを抑制するのに、コストアップや構造の肥大化・複雑化が招来してしまう。
【0004】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、簡易かつ低廉な構成で高周波ノイズが車体側に伝播されるのを抑制することが可能な車両用モータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、車体バネ下に取り付けられ、給電により車輪を回転させる動力を発生するモータと、車体バネ上に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換して前記モータに給電するインバータと、前記モータと前記インバータとを電気的に接続する給電ケーブルとしてのシールド線と、を備える車両用モータ駆動装置であって、前記シールド線のシールド層を、前記モータを収納するモータケースの、サスペンションアームとの接続部近傍又はハブベアリングの取付位置近傍で接地させた車両用モータ駆動装置により達成される。
【0006】
この態様の発明において、モータとインバータとを電気的に繋ぐ給電ケーブルとしてのシールド線のシールド層は、モータケースの、サスペンションアームとの接続部近傍又はハブベアリングの取付位置近傍で接地されている。かかる構造においては、シールド線に発生する高周波ノイズがサスペンションブッシュや車輪タイヤの電気抵抗により減衰されるため、その高周波ノイズが車体本体側に伝播するのが抑制される。この場合、高周波ノイズの車体側への伝播抑制は、シールド層のモータケースへの接地点を限定するだけで実現される。従って、本発明によれば、簡易かつ低廉な構成で高周波ノイズが車体側に伝播されるのを抑制することができる。
【0007】
尚、上記した車両用モータ駆動装置において、前記モータは、三相交流モータであり、前記シールド線は、三相それぞれに独立して設けられていると共に、該3本のシールド線のうちの2本のシールド線のシールド層をモータ側端部同士において互いに接続させ、該2本のシールド線の何れか一方のシールド層と前記3本のシールド線のうちの残り1本のシールド線のシールド層とをインバータ側端部同士において互いに接続させ、かつ、該残り1本のシールド線のシールド層をモータ側端部において前記モータケースのサスペンションアームとの接続部近傍又はハブベアリングの取付位置近傍で接地させることとしてもよい。
【0008】
この態様の発明において、3本のシールド線は、モータとインバータとの間で互いに並行しつつ、それらのシールド層は直列接続される。かかる構造においては、シールド線の外部に存在するノイズ源から3本のシールド線それぞれにノイズが重畳した場合、各シールド線においてモータとインバータとの間で同方向にノイズ電流が流れるが、そのうち2本のシールド線に流れたノイズ電流が互いに打ち消し合うことで、給電ケーブルが外部から受容するノイズが1/3に低減される。このため、3本のシールド線が単にモータとインバータとの間で互いに隣接して並ぶ構成に比べて、外部発生のノイズが車体本体側に伝播するのが抑制される。この場合、ノイズの車体側への伝播抑制は、3本のシールド線のシールド層の端部での接続を限定するだけで実現される。従って、本発明によれば、簡易かつ低廉な構成でノイズが車体側に伝播されるのを抑制することができる。
【0009】
上記の目的は、車体バネ下に取り付けられ、給電により車輪を回転させる動力を発生するモータと、車体バネ上に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換して前記モータに給電するインバータと、前記モータと前記インバータとを電気的に接続する給電ケーブルとしてのシールド線と、を備える車両用モータ駆動装置であって、前記シールド線のシールド層を、中継導体を介して、両端にブッシュが取り付けられたサスペンションアーム、スタビライザ、又はサスペンションメンバに接地させた車両用モータ駆動装置により達成される。
【0010】
この態様の発明において、モータとインバータとを電気的に繋ぐ給電ケーブルとしてのシールド線のシールド層は、中継導体を介して、両端にブッシュが取り付けられたサスペンションアーム、スタビライザ、又はサスペンションメンバに接地されている。かかる構造においては、シールド線に発生する高周波ノイズが、中継導体を介してサスペンションアーム、スタビライザ、又はサスペンションメンバに伝播するが、ブッシュの電気抵抗により減衰されるため、その高周波ノイズがモータケースや車体本体側に伝播するのが抑制される。この場合、高周波ノイズの伝播抑制は、シールド層の接地点を限定するだけで実現される。従って、本発明によれば、簡易かつ低廉な構成で高周波ノイズがモータケースや車体側に伝播されるのを抑制することができる。
【0011】
上記の目的は、車体バネ下に取り付けられ、給電により車輪を回転させる動力を発生するモータと、車体バネ上に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換して前記モータに給電するインバータと、前記モータと前記インバータとを電気的に接続する給電ケーブルとしてのシールド線と、を備える車両用モータ駆動装置であって、前記シールド線の一方端を前記モータを収納するモータケースに固定する固定具の一部として、該シールド線のシールド層に接続される所定体積抵抗率以下の導電性を有するゴム部材を備え、前記シールド線のシールド層を、前記ゴム部材を介して前記モータケースに接地させた車両用モータ駆動装置により達成される。
【0012】
この態様の発明において、モータとインバータとを電気的に繋ぐ給電ケーブルとしてのシールド線の一方端は、所定体積抵抗率以下の導電性を有するゴム部材を用いてモータケースに固定されており、そのシールド線のシールド層は、そのゴム部材を介してモータケースに接地されている。かかる構造においては、シールド線がモータとインバータとの間で柔軟に接続されるため、車体バネ上と車体バネ下とが相対変位してもそのシールド線の耐久性が確保されると共に、シールド線に発生する高周波ノイズが導電性のあるゴム部材の電気抵抗により減衰されつつモータケースに伝播するため、その高周波ノイズが車体本体側に伝播するのが抑制される。この場合、高周波ノイズの車体側への伝播抑制は、シールド層のモータケースへの接地を導電性の有るゴム部材を介するだけで実現される。従って、本発明によれば、簡易かつ低廉な構成で高周波ノイズが車体側に伝播されるのを抑制することができる。
【0013】
尚、上記した車両用モータ駆動装置において、車体バネ下と車体バネ上との接続部位に設けられるサスペンションブッシュの一部として、所定体積抵抗率以下の導電性を有するゴム部材を備えることとしてもよい。
【0014】
この態様の発明において、シールド線のシールド層は、サスペンションブッシュのゴム部材を介して車体バネ上に接続される。かかる構造においては、シールド線に発生した高周波ノイズがサスペンションブッシュを介して車体バネ上へ伝播される際にゴム部材により減衰される。この場合、高周波ノイズの車体側への伝播抑制は、サスペンションブッシュに導電性の有るゴム部材を設けることで実現される。従って、本発明によれば、簡易かつ低廉な構成で高周波ノイズが車体側に伝播されるのを抑制することができる。
【0015】
また、上記の目的は、車体バネ下に取り付けられ、給電により車輪を回転させる動力を発生するモータと、車体バネ上に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換して前記モータに給電するインバータと、前記モータと前記インバータとを電気的に接続する給電ケーブルとしての給電用シールド線と、前記モータを収納するモータケース内に配設されるセンサ類と車体バネ上に取り付けられるコントローラとを電気的に接続する信号線としての信号用シールド線と、を備える車両用モータ駆動装置であって、前記給電用シールド線のシールド層を、前記モータケースの、サスペンションアームとの接続部近傍又はハブベアリングの取付位置近傍で接地させると共に、前記信号用シールド線のシールド層を車体バネ上で接地させた車両用モータ駆動装置により達成される。
【0016】
この態様の発明において、モータとインバータとを電気的に繋ぐ給電ケーブルとしての給電用シールド線のシールド層は、モータケースの、サスペンションアームとの接続部近傍又はハブベアリングの取付位置近傍で接地されている。また、モータケース内のセンサ類と車体バネ上のコントローラとを電気的に繋ぐ信号線としての信号用シールド線のシールド層は、車体バネ上で接地されているが、モータケース側では接地されていない。かかる構造においては、給電用シールド線に発生する高周波ノイズが、サスペンションブッシュや車輪タイヤの電気抵抗により減衰されると共に、モータケースを介して信号用シールド線に伝播し難いため、その高周波ノイズが車体本体側や信号用シールド線に伝播するのが抑制される。この場合、高周波ノイズの伝播抑制は、給電用シールド線や信号用シールド線のシールド層の接地点を限定するだけで実現される。従って、本発明によれば、簡易かつ低廉な構成で給電用シールド線に発生する高周波ノイズが車体側や信号用シールド線に伝播されるのを抑制することができる。
【0017】
尚、上記した車両用モータ駆動装置において、前記給電用シールド線のインバータ側端部を車体バネ上から絶縁させると共に、前記信号用シールド線のモータケース側端部を車体バネ下から絶縁させることとするのがよい。
【0018】
また、上記した車両用モータ駆動装置において、前記センサ類を前記モータケースから電気的に独立するように覆う絶縁部材を備えることとしてもよい。
【0019】
この態様の発明において、センサ類は、絶縁部材の存在によりモータケースから電気的に独立する。このため、給電用シールド線に発生する高周波ノイズのモータケースを介した信号用シールド線への伝播が確実に防止される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易かつ低廉な構成で高周波ノイズが車体側に伝播されるのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を用いて、本発明の具体的な実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の第1実施例である車両用モータ駆動装置10を搭載する車両の要部断面図を示す。図2は、本実施例の車両用モータ駆動装置10の構成図を示す。図3は、本実施例の車両用モータ駆動装置10の備えるシールド線が接続する端子台ケースの断面図を示す。また、図4は、本実施例の車両用モータ駆動装置10の備えるサスペンションアームの構成図を示す。尚、図4(A)にはサスペンションアームの斜視図を、また、図4(B)にはサスペンションブッシュの断面図を、それぞれ示す。
【0023】
車両用モータ駆動装置10は、例えば電気自動車などに搭載されており、車載電源からの直流電力をインバータで交流電力に変換して車載モータに給電することでそのモータを駆動する装置である。図1に示す如く、車両用モータ駆動装置10は、駆動対象のモータ12を備えている。モータ12は、車両の駆動輪14ごとに設けられた駆動用モータであって、給電により駆動輪14を回転させる動力を発生する駆動用電気モータであり、かつ、駆動輪14の有するホイル16内に設けられるインホイルモータである。
【0024】
モータ12は、導電性のある金属製筐体であるモータケース18に収納されている。モータケース18は、ボールジョイント20,22を介してサスペンションアーム24,26に連結されていると共に、ハブベアリング28を介して駆動輪14のホイル16に接続されている。サスペンションアーム24,26は、その一端でボールジョイント20,22を介して駆動輪14に連結されていると共に、その他端で回動可能に車体バネ上としての車体本体30に固定されている。サスペンションアーム26は、更に、バネ32を介して車体本体30に連結されている。モータケース18すなわちモータ12及び駆動輪14は車体本体30に懸架されており、モータ12は車体バネ下に取り付けられている。
【0025】
モータ12は、U相,V相,W相からなる三相交流モータである。モータ12には、電力変換装置であるインバータ34が、給電ケーブルとしてのシールド線36を介して電気的に接続されている。インバータ34は、車載バッテリなどの車両電源から供給される直流電力を三相交流電力に変換してモータ12へ供給する。インバータ34は、導電性のある金属製筐体であるインバータケース38に収納されている。インバータケース38は、車体バネ上の車体本体30にボルト等により固定されており、車体本体30に接地されている。インバータ34は、車体バネ上である車体本体30に取り付けられている。
【0026】
シールド線36は、各相それぞれに対応して3本独立して設けられた、各相の電力をインバータ34側からモータ12側へ流通させる給電ケーブルである。シールド線36は、インバータ34側とモータ12側との間(すなわち車体バネ上と車体バネ下との間)でその相対変位に追従して撓むことが可能である。シールド線36は、芯線40と、その芯線40を被覆する筒状の絶縁部材42と、その絶縁部材42の外周側を覆うシールド層44と、を有している。シールド層44は、導電性のある金属により構成されており、例えば絶縁部材42の外周側で金属細線の編み線を編み込んで形成されている。シールド層44は、芯線40から外部へ放射される電磁波を遮断する機能を有している。
【0027】
各相のシールド線36のインバータ側端部はそれぞれ、インバータケース38にケーブル取付金具により固定されている一方、絶縁部材48によりそのインバータケース38とは絶縁されている。各相のシールド線36の芯線40のインバータ側端部はそれぞれ、インバータケース38内においてそれぞれのインバータ出力端子に接続されている。これらの各出力端子は、インバータケース38内のインバータ34に接続するケーブルと接続されている。
【0028】
また、各相のシールド線36のモータ側端部はそれぞれ、モータケース18に一体的に取り付け固定された導電性のある金属製の端子台ケース50にケーブル取付金具52により固定されている一方、絶縁部材42,56により端子台ケース50とは絶縁されている。各相のシールド線36の芯線40のモータ側端部はそれぞれ、端子台ケース50内において絶縁体58上に設けられたそれぞれのバスバー54に接続されている。これらの各バスバー54は、そのモータ側端子54aで、モータケース18内のモータ12に接続するケーブルと接続されている。また、各相のシールド線36のシールド層44は、端子台ケース50内のモータ側端部において互いに電気的に接続されている。
【0029】
各相のシールド線36のシールド層44は、インバータ側端部においてインバータケース38とは絶縁しつつかつモータ側端部において端子台ケース50とは絶縁している一方で、モータケース18の、サスペンションアーム24,26と連結される接続部の近傍で接地されていると共に、ハブベアリング28の設けられる取付位置の近傍で接地されている。
【0030】
また、駆動輪14のモータケース18と車体本体30との間には、サスペンションブッシュ60が設けられている。サスペンションブッシュ60は、サスペンションアーム24,26とモータケース18との接続部位及びサスペンションアーム24,26と車体本体30との接続部位(すなわち、車体バネ下と車体バネ上との接続部位)に取り付けられている。サスペンションブッシュ60は、例えば内外筒型のブッシュであり、車体バネ下のサスペンションアーム24,26に連結する外筒62と、車体バネ上の車体本体30に連結する内筒64と、外筒62と内筒64との間に設けられて車体バネ下と車体バネ上との緩衝材として機能するゴム部材66と、を有している。サスペンションブッシュ60は、サスペンションアーム24,26に設けられた取付穴68に圧入されている。
【0031】
ゴム部材66の少なくとも一部には、カーボンで構成された導電性を有する導電性ゴム(素材としてはシリコンゴム等)が材料として使用されている。この導電性ゴムは、所定体積抵抗率(例えば1×10−5Ωm)以下の導電性を有している。このため、ゴム部材66は、サスペンションアーム24,26と車体本体30やモータケース18とを確実に電気的に接続させる機能を有している。
【0032】
上記した車両用モータ駆動装置10の構成において、各相のシールド線36のシールド層44は、インバータ側端部において絶縁部材48によりインバータケース38とは絶縁されている。また、そのシールド層44は、モータ側端部において各相同士で接続されつつ、絶縁部材56により端子台ケース50とは絶縁されているが、モータケース18の、サスペンションアーム24,26と連結される接続部の近傍で接地されていると共に、ハブベアリング28が設けられる取付位置の近傍で接地されている。
【0033】
シールド線36のシールド層44がモータ側端部においてモータケース18のサスペンションアーム24,26と連結される接続部の近傍で接地される構成によれば、駆動用給電ケーブルであるシールド線36に強度の高い高周波ノイズが発生した場合、その高周波ノイズはシールド層44からモータケース18のサスペンションアーム24,26との接続部の近傍に流れた後、そのサスペンションアーム24,26からサスペンションブッシュ60を介して車体本体30へ流れる。すなわち、シールド線36に発生した強度の高い高周波ノイズが車体本体30にまで伝わるためには、その高周波ノイズがサスペンションブッシュ60を介して流通することが必要となる。
【0034】
サスペンションブッシュ60は、上記の如くサスペンションアーム24,26と車体本体30との接続部位に設けられて、両者の相対変位を許容する部材であるので、結果として、車両走行中、両者の接続部位間の電気抵抗は比較的高くなる。このため、上記した構成によれば、シールド線36に発生した高周波ノイズがシールド層44からモータケース18及びサスペンションアーム24,26を介して車体本体30へ流れるまでに、その高周波ノイズをサスペンションブッシュ60の電気抵抗により減衰することができるので、その高周波ノイズが車体本体30に伝播するのを抑制することができ、その車体本体30に接地される他の電装品に伝わり難くすることが可能である。
【0035】
また、シールド線36のシールド層44がモータ側端部においてモータケース18のハブベアリング28が設けられる取付位置近傍で接地される構成によれば、駆動用給電ケーブルであるシールド線36に強度の高い高周波ノイズが発生した場合、その高周波ノイズはシールド層44からモータケース18のハブベアリング取付位置近傍に流れた後、そのハブベアリング28から駆動輪14のゴム製タイヤ部分を介して路面へ流れる。このため、かかる構成によれば、シールド線36に発生した高周波ノイズを駆動輪14のゴム製タイヤ部分の電気抵抗により減衰しつつ路面へ逃がすことができるので、この点でも、その高周波ノイズが車体本体30に伝播するのを抑制することができる。
【0036】
このように、本実施例において、シールド線36に発生した高周波ノイズの車体本体30への伝播の抑制は、そのシールド線36のシールド層44を上記の如く接地させることにより実現される。具体的には、この構成は、シールド層44のモータケース18への接地点を、サスペンションアーム24,26との接続部近傍、及び、ハブベアリング28の取付位置近傍に限定したものである。このため、高周波ノイズの車体本体30への伝播を抑制するうえで、シールド層44のモータケース18への接地点を上記の如く限定するだけで十分であり、高周波リアクトルなどの高価かつ複雑な手段は不要である。従って、本実施例の車両用モータ駆動装置10によれば、簡易かつ低廉な構成で、シールド線36に発生した高周波ノイズが車体本体30側に伝播されるのを抑制することが可能となっている。
【0037】
尚、本実施例において、サスペンションブッシュ60は、上記の如く、車体バネ下と車体バネ上との緩衝材としてのゴム部材66を有しており、このゴム部材の一部には、上記の如く、所定体積抵抗率(例えば1×10−5Ωm)以下の導電性を有する導電性ゴムが材料として使用されている。このため、本実施例の車両用モータ駆動装置10によれば、サスペンションブッシュ60のゴム部材66により、サスペンションアーム24,26と車体本体30とを確実に電気的に接続させつつ、シールド線36に発生した高周波ノイズを減衰させることが可能となっている。
【0038】
更に、シールド線36のシールド層44が上記の如くモータケース18のサスペンションアーム接続部近傍及びハブベアリング取付位置近傍で接地される構成によれば、シールド線36に発生した高周波ノイズがシールド層44から車体本体30や路面へ流れる過程でモータケース18自体に伝わる経路の長さが短くなる。このため、かかる構成によれば、シールド線36に発生した高周波ノイズが、モータケース18内に存在するセンサ自体やそのセンサと外部コントローラとを繋ぐモータ信号線に与える影響を抑制することができる。従って、本実施例の車両用モータ駆動装置10によれば、シールド線36に発生した高周波ノイズの車体本体30への伝播の抑制を、モータケース18内やモータ信号線に大きな影響を与えることなく実現することが可能となっている。
【実施例2】
【0039】
図5は、本発明の第2実施例である車両用モータ駆動装置100の構成図を示す。また、図6は、本実施例の車両用モータ駆動装置100の備えるシールド線が接続する端子台ケースの断面図を示す。尚、図6(A)にはシールド線のモータ側端部が接続する端子台ケースの断面図を、また、図6(B)にはシールド線のインバータ側端部が接続する端子台ケースの断面図を、それぞれ示す。また、図5及び図6において、上記図2及び図3に示す構成と同一の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0040】
図5に示す如く、車両用モータ駆動装置100は、モータ12とインバータ34とを繋ぐ給電ケーブルとしてのシールド線102を備えている。シールド線102は、各相それぞれに対応して3本独立して設けられた、各相の電力をインバータ34側からモータ12側へ流通させる給電ケーブルである。シールド線102は、インバータ34側とモータ12側との間(すなわち車体バネ上と車体バネ下との間)でその相対変位に追従して撓むことが可能である。
【0041】
シールド線102は、芯線40と、その芯線40を被覆する筒状の絶縁部材42と、その絶縁部材42の外周側を覆うシールド層104と、を有している。シールド層104は、導電性のある金属により構成されており、例えば絶縁部材42の外周側で金属細線の編み線を編み込んで形成されている。シールド層104は、芯線40から外部へ放射される電磁波を遮断する機能を有している。
【0042】
各相のシールド線102のモータ側端部はそれぞれ、モータケース18に一体的に取り付け固定された端子台ケース50にケーブル取付金具52により固定されている一方、絶縁部材42,56により端子台ケース50とは絶縁されている。各相のシールド線102の芯線40のモータ側端部はそれぞれ、端子台ケース50内において絶縁体58上に設けられたそれぞれのバスバー54に接続されている。
【0043】
3本のシールド線102のうちの2本のシールド線(例えば、図6に示す如きU相及びV相のシールド線)102のシールド層104は、端子台ケース50内のモータ側端部において互いに電気的に接続されている。以下、この接続部を連結部106とする。尚、残り1本のシールド線(例えば、W相のシールド線)102のシールド層104は、モータ側端部において、他2本のシールド線102のシールド層104とは電気的に接続されていない。
【0044】
また、各相のシールド線102のインバータ側端部はそれぞれ、インバータケース38にケーブル取付金具108により固定されている一方、絶縁部材42,48によりインバータケース38とは絶縁されている。各相のシールド線102の芯線40のインバータ側端部はそれぞれ、インバータケース38内においてそれぞれのインバータ出力端子110に接続されている。これらの各出力端子110は、インバータケース38内のインバータ34に接続するケーブルと接続されている。
【0045】
3本のシールド線102のうちのモータ側端部が互いに電気的に接続する2本のシールド線102(例えば、図6に示す如きU相及びV相のシールド線)の何れか一方のシールド線(例えば、V相のシールド線)102のシールド層104と、残り1本のシールド線(例えば、W相のシールド線)102のシールド層104とは、インバータケース38内のインバータ側端部において互いに電気的に接続されている。以下、この接続部を連結部112とする。尚、上記した2本のシールド線102のうちの他方のシールド線(例えば、U相のシールド線)102のシールド層104は、インバータ側端部において、他2本のシールド線102のシールド層104とは電気的に接続されていない。
【0046】
各相のシールド線102のシールド層104は、インバータ側端部においてインバータケース38とは絶縁されつつかつモータ側端部において端子台ケース50とは絶縁されている一方、モータケース18の、サスペンションアーム24,26と連結される接続部の近傍で接地されていると共に、ハブベアリング28の設けられる取付位置の近傍で接地されている。
【0047】
上記した車両用モータ駆動装置100の構成において、各相のシールド線102のシールド層104は、モータ側端部において、絶縁部材56により端子台ケース50とは絶縁されつつ、何れかの二相同士で連結部106により接続されていると共に、インバータ端部において、絶縁部材48によりインバータケース38とは絶縁されつつ、残りの一相と連結部106により接続された二相のうちの何れか一方の相とで連結部112により接続されている。そして、その残りの一相のシールド線102のシールド層104は、モータ側端部においてモータケース18の、サスペンションアーム接続部の近傍で接地されていると共に、ハブベアリング取付位置近傍で接地されている。
【0048】
駆動用給電ケーブルである各相のシールド線102の外部に存在するノイズ源がノイズを発生すると、そのノイズが3本のシールド線102それぞれに重畳し、それら各シールド線102のシールド層104においてモータ12とインバータ34との間で同方向にノイズ電流が流れる。
【0049】
しかし、3本のシールド線102のシールド層104を上記の如く接続した構成においては、3本のシールド線102のシールド層104の導通する全長がモータ12とインバータ34との間を一往復半するようになる。かかる構成においては、外部ノイズ源からのノイズが3本のシールド線102それぞれに重畳した場合、3本のシールド線102のうちの2本のシールド線102(少なくとも、シールド層104がモータ側端部において他の一方のシールド線102のシールド層104と接続しかつインバータ側端部において他の他方のシールド線102のシールド層104と接続するシールド線102を含む。)に流れたノイズ電流が互いに打ち消し合うことで、3本のシールド線102全体として外部ノイズ源から受容するノイズが1/3に低減される。
【0050】
このため、本実施例の構成によれば、3本のシールド線102が単にモータ12とインバータ34との間で互いに隣接して並ぶ構成(具体的には、それらの各シールド層104の本実施例の如きインバータ側端部やモータ側端部での互い違いの接続が無い構成)に比べて、外部で発生したノイズがシールド線102を介して車体本体30に伝播するのを抑制することができ、シールド線102を介して、その車体本体30に接地される他の電装品に伝わり難くすることが可能である。
【0051】
このように、本実施例において、外部ノイズ源から発生したノイズのシールド線102を介した車体本体30への伝播の抑制は、各相のシールド線102のシールド層104を上記の如く接続・接地させることにより実現される。具体的には、この構成は、何れか2本のシールド線102のシールド層104をモータ側端部において互いに接続させ、かつ、残り1本のシールド線102のシールド層104を、インバータ側端部において他の何れか1本のシールド線102のシールド層104に接続させると共に、モータ側端部においてモータケース18のサスペンションアーム24,26との接続部近傍及びハブベアリング28の取付位置近傍で接地させるものである。このため、外部発生ノイズの車体本体30への伝播を抑制するうえで、各相のシールド線102のシールド層104の接続・接地を上記の如く限定するだけで十分であり、高周波リアクトルなどの高価かつ複雑な手段は不要である。従って、本実施例の車両用モータ駆動装置100によれば、簡易かつ低廉な構成で、外部ノイズ源から発生するノイズがシールド線102を介して車体本体30側に伝播されるのを抑制することが可能となっている。
【0052】
尚、本実施例において、外部ノイズ源から受容するノイズは上記の如く1/3に低減されるが、そのノイズは、シールド層104に流れた後、シールド層104からモータケース18のサスペンションアーム24,26との接続部の近傍に流れ、そのサスペンションアーム24,26からサスペンションブッシュ60を介して車体本体30へ流れると共に、シールド層104からモータケース18のハブベアリング取付位置近傍に流れ、そのハブベアリング28から駆動輪14のゴム製タイヤ部分を介して路面へ流れる。
【0053】
このため、本実施例の構成によれば、外部ノイズ源からのノイズがシールド層104からモータケース18及びサスペンションアーム24,26を介して車体本体30へ流れるまでに、そのノイズをサスペンションブッシュ60の電気抵抗により減衰することができる。また、外部ノイズ源からのノイズを駆動輪14のゴム製タイヤ部分の電気抵抗により減衰しつつ路面へ逃がすことができる。従って、この点でも、外部ノイズ源からのノイズが車体本体30に伝播するのを抑制することが可能となっている。
【実施例3】
【0054】
図7は、本発明の第3実施例である車両用モータ駆動装置200の構成図を示す。図8は、本実施例の車両用モータ駆動装置200の備えるシールド線が接続する中継BOXケースの断面図を示す。また、図9は、本実施例の車両用モータ駆動装置200全体の斜視図を示す。尚、図9(A)及び(B)にはそれぞれ、車両用モータ駆動装置200の一例の斜視図を示す。また、図7乃至図9において、上記図2及び図3に示す構成と同一の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0055】
図7に示す如く、車両用モータ駆動装置200は、モータ12とインバータ34とを繋ぐ給電ケーブルとしてのシールド線202を備えている。シールド線202は、各相それぞれに対応して3本独立して設けられた、各相の電力をインバータ34側からモータ12側へ流通させる給電ケーブルである。シールド線202は、インバータ34側とモータ12側との間(すなわち車体バネ上と車体バネ下との間)でその相対変位に追従して撓むことが可能である。
【0056】
シールド線202は、芯線204と、その芯線204を被覆する筒状の絶縁部材206と、その絶縁部材206の外周側を覆うシールド層208と、を有している。シールド層208は、導電性のある金属により構成されており、例えば絶縁部材206の外周側で金属細線の編み線を編み込んで形成されている。シールド層208は、芯線204から外部へ放射される電磁波を遮断する機能を有している。
【0057】
シールド線202は、その中途で、導電性のある金属導体としての中継BOXケース210により中継されている。すなわち、シールド線202は、インバータ34に接続するシールド線202INVと、モータ12に接続するシールド線202MOTと、からなる。各相のシールド線202INVのモータ側端部はそれぞれ、中継BOXケース210にケーブル取付金具212により固定されていると共に、各相のシールド線202MOTのインバータ側端部はそれぞれ、中継BOXケース210にケーブル取付金具214により固定されている。
【0058】
各相のシールド線202INVの芯線204のモータ側端部はそれぞれ、絶縁部材206により中継BOXケース210とは絶縁されつつ、中継BOXケース210内において絶縁体216上に設けられたそれぞれのバスバー218に接続されている。また、各相のシールド線202MOTの芯線204のインバータ側端部はそれぞれ、絶縁部材206により中継BOXケース210とは絶縁されつつ、中継BOXケース210内においてそれぞれのバスバー218に接続されている。各バスバー218は、そのインバータ側端子218aでシールド線202INVの芯線204に接続されていると共に、そのモータ側端子218bでシールド線202MOTの芯線204に接続されている。
【0059】
また、各相のシールド線202INVのシールド層208のモータ側端部はそれぞれ、中継BOXケース210及びケーブル取付金具212に接続されている。各相のシールド線202MOTのシールド層208のインバータ側端部はそれぞれ、中継BOXケース210及びケーブル取付金具214に接続されている。すなわち、すべての相のシールド線202のシールド層208は、中継BOXケース210に接続されている。
【0060】
各相のシールド線202INVのインバータ側端部はそれぞれ、インバータケース38にケーブル取付金具により固定されている一方、絶縁部材48によりインバータケース38とは絶縁されている。各相のシールド線202INVの芯線204のインバータ側端部はそれぞれ、インバータケース38内において、それぞれのインバータ34に接続するケーブルに接続されたインバータ出力端子に接続されている。
【0061】
また、各相のシールド線202MOTのモータ側端部はそれぞれ、モータケース18にケーブル取付金具により固定されている一方、絶縁部材220によりモータケース18とは絶縁されている。各相のシールド線202MOTの芯線204のモータ側端部はそれぞれ、モータケース18内において、それぞれのモータ12に接続するケーブルが接続されたモータ出力端子に接続されている。
【0062】
中継BOXケース210は、図9(A)及び(B)に示す如く、上方のサスペンションアーム24に取り付け固定されている。中継BOXケース210の取付固定位置は、サスペンションアーム24の、両端にサスペンションブッシュ222a,222bが取り付けられる中間位置である。サスペンションブッシュ222aは、サスペンションアーム24と車体本体30との接続部位にあるブッシュである。また、サスペンションブッシュ222bは、サスペンションアーム24とモータケース18との接続部位にあるブッシュである。尚、少なくともサスペンションブッシュ222aは、上記したサスペンションブッシュ60と同様に、一部に導電性ゴムが材料として使用されたゴム部材66を有することとすればよく、この場合は、サスペンションアーム24と車体本体30とを確実に電気的に接続させることが可能となる。
【0063】
尚、中継BOXケース210は、下方のサスペンションアーム26に取り付け固定されていてもよいが、この場合も、そのサスペンションアーム26の、両端にブッシュが形成される中間位置に取り付け固定されることとなる。
【0064】
上記した車両用モータ駆動装置200の構成において、各相のシールド線202のシールド層208は、インバータ側端部において絶縁部材48によりインバータケース38とは絶縁されていると共に、モータ側端部において絶縁部材220によりモータケース18とは絶縁されている。一方、そのシールド層208は、モータ12とインバータ34との間で中継BOXケース210に接続されており、その中継BOXケース210を介して、両端にサスペンションブッシュ222a,222bが形成されるサスペンションアーム24に接地されている。
【0065】
かかる構成においては、駆動用給電ケーブルであるシールド線202に強度の高い高周波ノイズが発生した場合、その高周波ノイズは、インバータケース38やモータケース18に直接に流れることはなく、シールド層208から中継BOXケース210を介してサスペンションアーム24に流れ、その後、そのサスペンションアーム24からサスペンションブッシュ222a,222bを介して車体本体30やモータケース18へ流れる。すなわち、シールド線202に発生した高周波ノイズが車体本体30やモータケース18に伝わるためには、その高周波ノイズがサスペンションブッシュ222a,222bを介して流通することが必要となる。
【0066】
サスペンションブッシュ222a,222bは、サスペンションアーム24と車体本体30との接続部位及びサスペンションアーム24とモータケース18との接続部位に設けられて、両者の相対変位を許容する部材であるので、結果として、車両走行中、両者の接続部位間の電気抵抗は比較的高くなる。このため、上記した構成によれば、シールド線202に発生した高周波ノイズがシールド層208から中継BOXケース210及びサスペンションアーム24を介して車体本体30やモータケース18へ流れるまでに、その高周波ノイズをサスペンションブッシュ222a,222bの電気抵抗により減衰することができるので、その高周波ノイズが車体本体30やモータケース18に伝播するのを抑制することができ、その車体本体30に接地される他の電装品やモータケース18内に存在するセンサやそのセンサと外部コントローラとを繋ぐモータ信号線に伝わり難くすることが可能である。
【0067】
このように、本実施例において、シールド線202に発生した高周波ノイズの車体本体30やモータケース18への伝播の抑制は、そのシールド線202のシールド層208を上記の如く絶縁・接地させることにより実現される。具体的には、この構成は、シールド層208をモータケース18及びインバータケース38とは絶縁させつつ、その中途で中継BOXケース210を介して、両端にサスペンションブッシュ222a,222bが設けられたサスペンションアーム24に接地させるものである。このため、高周波ノイズの車体本体30やモータケース18への伝播を抑制するうえで、シールド層208の絶縁・接地を上記の如く限定するだけで十分であり、高周波リアクトルなどの高価かつ複雑な手段は不要である。従って、本実施例の車両用モータ駆動装置200によれば、簡易かつ低廉な構成で、シールド線202に発生した高周波ノイズが車体本体30やモータケース18側に伝播されるのを抑制することが可能となっている。
【0068】
尚、上記の第3実施例においては、中継BOXケース210が特許請求の範囲に記載した「中継導体」に相当している。
【0069】
ところで、上記の第3実施例においては、シールド線202のシールド層208を、中継BOXケース210を介して、両端にサスペンションブッシュ222a,222bが設けられるサスペンションアーム24に接地させることとしたが、両端にブッシュが設けられているスタビライザやサスペンションメンバに接地させることとしてもよい。
【実施例4】
【0070】
図10は、本発明の第4実施例である車両用モータ駆動装置300の構成図を示す。また、図11は、本実施例の車両用モータ駆動装置300の備えるシールド線が接続する端子台ケースの断面図を示す。尚、図10及び図11において、上記図2及び図3に示す構成と同一の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0071】
図10に示す如く、車両用モータ駆動装置300は、モータ12とインバータ34とを繋ぐ給電ケーブルとしてのシールド線302を備えている。シールド線302は、各相それぞれに対応して3本独立して設けられた、各相の電力をインバータ34側からモータ12側へ流通させる給電ケーブルである。シールド線302は、インバータ34側とモータ12側との間(すなわち車体バネ上と車体バネ下との間)でその相対変位に追従して撓むことが可能である。
【0072】
シールド線302は、芯線40と、その芯線40を被覆する筒状の絶縁部材42と、その絶縁部材42の外周側を覆うシールド層304と、を有している。シールド層304は、導電性のある金属により構成されており、例えば絶縁部材42の外周側で金属細線の編み線を編み込んで形成されている。シールド層304は、芯線40から外部へ放射される電磁波を遮断する機能を有している。
【0073】
各相のシールド線302のインバータ側端部はそれぞれ、インバータケース38にケーブル取付金具により固定されている一方、絶縁部材48によりインバータケース38とは絶縁されている。各相のシールド線302の芯線40のインバータ側端部はそれぞれ、インバータケース38内においてそれぞれのインバータ出力端子に接続されている。
【0074】
また、各相のシールド線302のモータ側端部はそれぞれ、端子台ケース50にケーブル取付金具52により固定されている。各相のシールド線302の芯線40のモータ側端部はそれぞれ、絶縁部材42により端子台ケース50とは絶縁されつつ、端子台ケース50内においてそれぞれのバスバー54に接続されている。各相のシールド線302のシールド層304はそれぞれ、その外周を絶縁部材306により覆われていると共に、モータ側端部においてゴム部材308を介してケーブル取付金具52及び端子台ケース50に接している。ゴム部材308は、シールド線302の撓みを許容する弾性を有しつつそのシールド線302のモータ側端部を端子台ケース50(すなわちモータケース18)に固定する固定具の一部として機能する。
【0075】
ゴム部材308には、カーボンで構成された導電性を有する導電性ゴム(素材としてはシリコンゴム等)が材料として使用されている。この導電性ゴムは、所定体積抵抗率(例えば1×10−5Ωm)以下の導電性を有しており、上記したインバータ側にある絶縁部材48の体積抵抗率未満の体積抵抗率を有している。ゴム部材308は、シールド線302のシールド層304とモータケース18とを確実に電気的に接続させる機能を有している。
【0076】
上記した車両用モータ駆動装置300の構成において、各相のシールド線302のシールド層304は、インバータ側端部において絶縁部材48によりインバータケース38とは絶縁されていると共に、モータ側端部においてゴム部材308を介して端子台ケース50(すなわちモータケース18)に接地されている。
【0077】
ゴム部材308は、上記の如く弾性を有している。このため、かかる構成によれば、シールド線302の撓みを許容することができるので、車体バネ上と車体バネ下との相対変位を許容して、インバータ34とモータ12との電気的な接続の柔軟性を確保することが可能であり、シールド線302の耐久性を向上させることが可能である。また、ゴム部材308は、上記の如く体積抵抗率の比較的低い導電性を有している。このため、かかる構成によれば、シールド層304とモータケース18とを確実に電気的に接続させつつ、駆動用給電ケーブルであるシールド線302に強度の高い高周波ノイズが発生した際にモータケース18に伝わる高周波ノイズを減衰させることが可能である。
【0078】
シールド線302からモータケース18に伝わった高周波ノイズは、サスペンションブッシュ60を介して車体本体30へ流れ、また、ハブベアリング28を介して路面へ流れるので、車体本体30に至るまでに減衰されつつその一部が路面に逃がされる。従って、シールド線302に発生した高周波ノイズが車体本体30に伝播するのを抑制することが可能となっている。
【0079】
このように、本実施例において、シールド線302に発生した高周波ノイズの車体本体30への伝播の抑制は、そのシールド線302のシールド層304のモータ側端部を上記の如くゴム部材308を介してモータケース18に接続させることにより実現される。このため、高周波ノイズの車体本体30への伝播を抑制するうえで、シールド層304のモータケース18への接続を上記の如く限定するだけで十分であり、高周波リアクトルなどの高価かつ複雑な手段は不要である。従って、本実施例の車両用モータ駆動装置300によれば、簡易かつ低廉な構成で、インバータ34とモータ12との電気的な接続の柔軟性及びシールド線302の耐久性を確保しつつ、シールド線302に発生した高周波ノイズが車体本体30側に伝播されるのを抑制することが可能となっている。
【実施例5】
【0080】
図12は、本実施例の車両用モータ駆動装置400の構成図を示す。尚、図12において、上記図2に示す構成と同一の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0081】
図12に示す如く、車両用モータ駆動装置400は、モータ12とインバータ34とを繋ぐ給電ケーブルとしてのシールド線36を備えていると共に、信号ケーブルとしてのシールド線402を備えている。以下、給電ケーブルとしてのシールド線36を給電用シールド線36と、信号ケーブルとしてのシールド線402を信号用シールド線402と、それぞれ称す。
【0082】
信号用シールド線402は、モータケース18内に設けられたレゾルバ404とインバータ34とを繋ぐ信号ケーブルであり、レゾルバ404の各相それぞれに対応して3本独立して設けられており、レゾルバ404とインバータ34との間で、給電用シールド線36よりも扱う電圧の低い信号の授受を行う。信号用シールド線402は、インバータ34側とレゾルバ404側との間(すなわち車体バネ上と車体バネ下との間)でその相対変位に追従して撓むことが可能である。
【0083】
信号用シールド線402は、信号線406と、その信号線406を被覆する筒状の絶縁部材と、その絶縁部材の外周側を覆うシールド層408と、を有している。シールド層408は、導電性のある金属により構成されており、例えば絶縁部材の外周側で金属細線の編み線を編み込んで形成されている。シールド層408は、信号線406から外部へ放射される電磁波を遮断する機能を有している。
【0084】
各相の信号用シールド線402のモータ側端部はそれぞれ、モータケース18にケーブル取付金具により固定されている一方、絶縁部材410によりモータケース18とは絶縁されている。各相の信号用シールド線402の信号線406のモータ側端部はそれぞれ、モータケース18内においてレゾルバ404に接続されている。
【0085】
また、各相の信号用シールド線402のインバータ側端部はそれぞれ、インバータケース38にケーブル取付金具により固定されている。各相の信号用シールド線402の信号線406のインバータ側端部はそれぞれ、絶縁部材によりインバータケース38とは絶縁されつつ、インバータケース38内においてインバータ34に接続されている。各相の信号用シールド線402のシールド層408は、インバータケース38内のインバータ側端部において互いに電気的に接続されつつ、インバータケース38(更には、車体本体30との接続部よりもできるだけ遠い位置)に接地されている。
【0086】
上記した車両用モータ駆動装置400の構成において、各相の給電用シールド線36のシールド層44は、インバータ側端部において絶縁部材48によりインバータケース38とは絶縁されている。また、そのシールド層44は、モータ側端部において各相同士で接続されつつ、絶縁部材56により端子台ケース50とは絶縁されているが、モータケース18の、サスペンションアーム24,26と連結される接続部の近傍で接地されていると共に、ハブベアリング28が設けられる取付位置の近傍で接地されている。かかる構成によれば、給電用シールド線36に発生した高周波ノイズが車体本体30に伝播するのを抑制することができ、その車体本体30に接地される他の電装品に伝わり難くすることが可能である。
【0087】
また、上記した車両用モータ駆動装置400の構成において、信号用シールド線402のシールド層408は、モータ側端部において絶縁部材410によりモータケース18とは絶縁されている。また、そのシールド層408は、インバータ側端部において各相同士で接続されつつインバータケース38に接地されている。すなわち、モータケース18には、給電用シールド線36のシールド層44が接地されている一方で信号用シールド線402のシールド層408が絶縁されていると共に、インバータケース38には、給電用シールド線36のシールド層44が絶縁されている一方で信号用シールド線402のシールド層408が接地されている。
【0088】
かかる構成においては、扱う電圧の高い給電用シールド線36に高周波ノイズが発生した場合、その高周波ノイズがモータケース18に伝わってもそのモータケース18を介して信号用シールド線402(信号線406及びシールド層408の双方)に伝わり難く、また、その高周波ノイズがモータケース18及びサスペンションブッシュ60を介して車体本体30へ伝わってもその時点では大きく減衰しているため、同じくインバータケース38を介して信号用シールド線402には伝わり難い。従って、本実施例によれば、給電用シールド線36に発生した高周波ノイズが、信号用シールド線402の信号線406やシールド層408に与える影響を抑制することができる。
【0089】
このように、本実施例において、給電用シールド線36に発生した高周波ノイズの車体本体30への伝播の抑制かつ信号用シールド線402への伝播の抑制は、シールド線36,402のシールド層44,408の絶縁・接地を上記の如く行うことにより実現される。このため、高周波ノイズの車体本体30や信号用シールド線402への伝播を抑制するうえで、シールド線36,402のシールド層44,408のモータケース18及びインバータケース38への接地点を上記の如く限定するだけで十分であり、高周波リアクトルなどの高価かつ複雑な手段は不要である。従って、本実施例の車両用モータ駆動装置400によれば、簡易かつ低廉な構成で、給電用シールド線36に発生した高周波ノイズが車体本体30及び信号用シールド線402の双方に伝播されるのを抑制することが可能となっている。
【0090】
尚、上記の第5実施例においては、モータケース18に給電用シールド線36のシールド層44を接地しているため、モータケース18にノイズ成分が流れることがあり、そのノイズ成分が信号線406とレゾルバ404との接続点近傍やレゾルバ404自体に重畳することがある。
【0091】
そこで、図13及び図14に示す如く、モータケース18内でレゾルバ404及び信号用シールド線402を覆う絶縁部材500を設けることとしてもよい。かかる構成によれば、信号用シールド線402及びレゾルバ404をモータケース18の他部位から電気的に独立させることができると共に、信号用シールド線402のシールド層408を車体本体30と同じグランド電位にすることができる。従って、モータケース18内のレゾルバ404周辺を給電用シールド線36のシールド層44から電気的に遠くに位置させることができるので、そのレゾルバ404周辺をモータケース18自体よりも電気的ノイズの少ない状態にすることができ、給電用シールド線402に発生した高周波ノイズがレゾルバ404周辺に影響し難く、そのレゾルバ404の動作の安定性を確保することが可能となる。尚、レゾルバ404と信号用シールド線402とを一体の絶縁部材500で覆うことに限らず、レゾルバ404と信号用シールド線402とをそれぞれ別体の絶縁部材で覆うこととしてもよい。
【0092】
尚、この変形例において、主にレゾルバ404及び信号線406が特許請求の範囲に記載した「センサ類」に相当している。
【0093】
また、上記の第5実施例においては、モータケース18にセンサ類としてレゾルバ404を設け、そのレゾルバ404とインバータ34とを繋ぐ信号用シールド線402を設けることとしたが、温度センサなどを設け、その温度センサとインバータ34とを繋ぐ信号用シールド線を設けた構成に適用することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1実施例である車両用モータ駆動装置を搭載する車両の要部断面図である。
【図2】本実施例の車両用モータ駆動装置の構成図である。
【図3】本実施例の車両用モータ駆動装置の備えるシールド線が接続する端子台ケースの断面図である。
【図4】本実施例の車両用モータ駆動装置の備えるサスペンションアームの構成図である。
【図5】本発明の第2実施例である車両用モータ駆動装置の構成図である。
【図6】本実施例の車両用モータ駆動装置の備えるシールド線が接続する端子台ケースの断面図である。
【図7】本発明の第3実施例である車両用モータ駆動装置の構成図を示す。
【図8】本実施例の車両用モータ駆動装置の備えるシールド線が接続する中継BOXケースの断面図である。
【図9】本実施例の車両用モータ駆動装置全体の斜視図である。
【図10】本発明の第4実施例である車両用モータ駆動装置の構成図である。
【図11】本実施例の車両用モータ駆動装置の備えるシールド線が接続する端子台ケースの断面図である。
【図12】本発明の第5実施例である車両用モータ駆動装置の構成図である。
【図13】本発明の変形例である車両用モータ駆動装置の構成図である。
【図14】本発明の変形例である車両用モータ駆動装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0095】
10,100,200,300,400 車両用モータ駆動装置
12 モータ
14 駆動輪
16 ホイル
18 モータケース
24,26 サスペンションアーム
28 ハブベアリング
30 車体本体
34 インバータ
36,102,202,302 シールド線
40,204 芯線
44,104,208,304 シールド層
60,222a,222b サスペンションブッシュ
66 ゴム部材
210 中継BOXケース
308 ゴム部材
402 信号用シールド線
406 信号線
408 信号用シールド線のシールド層
500 絶縁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体バネ下に取り付けられ、給電により車輪を回転させる動力を発生するモータと、車体バネ上に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換して前記モータに給電するインバータと、前記モータと前記インバータとを電気的に接続する給電ケーブルとしてのシールド線と、を備える車両用モータ駆動装置であって、
前記シールド線のシールド層を、前記モータを収納するモータケースの、サスペンションアームとの接続部近傍又はハブベアリングの取付位置近傍で接地させたことを特徴とする車両用モータ駆動装置。
【請求項2】
前記モータは、三相交流モータであり、
前記シールド線は、三相それぞれに独立して設けられていると共に、
該3本のシールド線のうちの2本のシールド線のシールド層をモータ側端部同士において互いに接続させ、該2本のシールド線の何れか一方のシールド層と前記3本のシールド線のうちの残り1本のシールド線のシールド層とをインバータ側端部同士において互いに接続させ、かつ、該残り1本のシールド線のシールド層をモータ側端部において前記モータケースのサスペンションアームとの接続部近傍又はハブベアリングの取付位置近傍で接地させたことを特徴とする請求項1記載の車両用モータ駆動装置。
【請求項3】
車体バネ下に取り付けられ、給電により車輪を回転させる動力を発生するモータと、車体バネ上に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換して前記モータに給電するインバータと、前記モータと前記インバータとを電気的に接続する給電ケーブルとしてのシールド線と、を備える車両用モータ駆動装置であって、
前記シールド線のシールド層を、中継導体を介して、両端にブッシュが取り付けられたサスペンションアーム、スタビライザ、又はサスペンションメンバに接地させたことを特徴とする車両用モータ駆動装置。
【請求項4】
車体バネ下に取り付けられ、給電により車輪を回転させる動力を発生するモータと、車体バネ上に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換して前記モータに給電するインバータと、前記モータと前記インバータとを電気的に接続する給電ケーブルとしてのシールド線と、を備える車両用モータ駆動装置であって、
前記シールド線の一方端を前記モータを収納するモータケースに固定する固定具の一部として、該シールド線のシールド層に接続される所定体積抵抗率以下の導電性を有するゴム部材を備え、
前記シールド線のシールド層を、前記ゴム部材を介して前記モータケースに接地させたことを特徴とする車両用モータ駆動装置。
【請求項5】
車体バネ下と車体バネ上との接続部位に設けられるサスペンションブッシュの一部として、所定体積抵抗率以下の導電性を有するゴム部材を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項記載の車両用モータ駆動装置。
【請求項6】
車体バネ下に取り付けられ、給電により車輪を回転させる動力を発生するモータと、車体バネ上に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換して前記モータに給電するインバータと、前記モータと前記インバータとを電気的に接続する給電ケーブルとしての給電用シールド線と、前記モータを収納するモータケース内に配設されるセンサ類と車体バネ上に取り付けられるコントローラとを電気的に接続する信号線としての信号用シールド線と、を備える車両用モータ駆動装置であって、
前記給電用シールド線のシールド層を、前記モータケースの、サスペンションアームとの接続部近傍又はハブベアリングの取付位置近傍で接地させると共に、
前記信号用シールド線のシールド層を車体バネ上で接地させたことを特徴とする車両用モータ駆動装置。
【請求項7】
前記給電用シールド線のインバータ側端部を車体バネ上から絶縁させると共に、
前記信号用シールド線のモータケース側端部を車体バネ下から絶縁させることを特徴とする請求項6記載の車両用モータ駆動装置。
【請求項8】
前記センサ類を前記モータケースから電気的に独立するように覆う絶縁部材を備えることを特徴とする請求項6又は7記載の車両用モータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−87261(P2010−87261A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254977(P2008−254977)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】