説明

車両用ラゲージドア

【課題】重量及びコストアップを招くことなく、ラゲージドア単体としての剛性を確保でき、またストラットタワーからの突き上げ荷重に対する剛性を高めることができる車両用ラゲージドアを提供する。
【解決手段】ドアインナパネル19は、ドアアウタパネル18の外周部に沿うように延びる枠形状で、かつ各ヒンジ取付け座19f及びロック取付け座19gが形成された外周ビード19aと、該外周ビード19aの車幅方向左,右後部1aから連続して外周ビード19aの車両前部19dの車幅方向中央部に向かって延びる一対のクロスビード19bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に形成されたラゲージルームを開閉する車両用ラゲージドアに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のラゲージドアでは、外力に対するラゲージドア全体の剛性を高める観点から、例えば、特許文献1には、インナパネルに左,右のヒンジ取付け部とロック取付け部とを連結するV字状のビード部を形成した構造が開示されている。
【0003】
一方、車体サイズに制約がある小型車では、ラゲージルームを形成する後部車体の左,右後端部にストラットタワーを配置する場合がある。この場合、車体全体の車高も低くなることから、左,右のストラットタワーとラゲージドアとの距離が短くなり、ストラットタワーからの突き上げ荷重がラゲージドアに伝わり易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−29290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来構造は、ラゲージドア単体としての剛性アップを図ることができるものの、前述のストラットタワーからの突き上げ荷重に対しては考慮されておらず、この点での対策が必要である。このような突き上げ荷重に対する剛性を高めるには、ラゲージドア,後部車体に補強部材を新たに追加することが考えられるが、このようにすると重量及びコストが上昇するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、前記従来の実情に鑑みてなされたもので、重量及びコストアップを招くことなく、ラゲージドアの単体としての剛性を確保しつつ、ストラットタワーからの突き上げ荷重に対する剛性を高めることができる車両用ラゲージドアを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外装面を有するドアアウタパネルと、その車幅方向左,右側部に設けられたヒンジ取付け座及び車両後部の車幅方向中央部に設けられたロック取付け座を有するドアインナパネルとを備え、該ドアインナパネルの車幅方向左,右後部の下方にストラットタワーが配設された車両用ラゲージドアであって、前記ドアインナパネルは、前記ドアアウタパネルの外周部に沿うように延びる枠形状で、かつ前記各ヒンジ取付け座及びロック取付け座が形成された外周ビードと、該外周ビードの車幅方向左,右後部から連続して前記外周ビードの車両前部の車幅方向中央部に向かって延びる一対のクロスビードとを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用ラゲージドアによれば、ドアインナパネルを、ドアアウタパネルの外周部に沿う枠形状で、かつヒンジ取付け座及びロック取付け座が形成された外周ビードと、該外周ビードの車幅方向左,右後部から連続して車両前部の車幅方向中央部に向かって延びる一対のクロスビードとを有するものとした。
【0009】
このように構成したので、ラゲージドア単体としての必要剛性を確保できる。また、車幅方向左,右後部の下方に配置された、ストラットタワーからの突き上げ荷重をクロスビードから外周ビード全体で受け止めることができ、突き上げ荷重に対するラゲージドア全体の剛性を高めることができる。これにより、ラゲージドアが車体剛性部材としても機能するので、後部車体の剛性を高めるための補強部材の追加を不要にでき、又は緩和でき、重量及びコストアップを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1によるラゲージドアが配設された自動車の斜視図である。
【図2】前記自動車の後部車体の斜視図である。
【図3】前記後部車体の断面図(図4のIII-III線断面図)である。
【図4】前記ラゲージドアの平面図である。
【図5】前記ラゲージドアの断面図(図4のV-V線断面図)である。
【図6】前記ラゲージドアのドアインナパネルの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1ないし図6は、本発明の実施例1による車両用ラゲージドアを説明するための図である。なお、本実施例の説明の中で、前後,左右という場合は、シートに着座した状態で車両前進方向に見た場合の前後,左右を意味する。
【0013】
図において、1はオープンカーの後部車体2に形成されたラゲージルームRを開閉するラゲージドアを示している。このオープンカーは車高を低くした意匠であり、このためラゲージドア1は低所に位置している。また上方が開放された車室にはシート6及びサイドドア7,7が配設されている。
【0014】
前記後部車体2は、前記サイドドア7が配設された左,右のサイドパネル3,3と、該左,右のサイドパネル3の後端間に配設されたロアバックパネル4と、前記左,右のサイドパネル3の下端部間に配設されたリヤフロアパネル5とを備えており、これらに囲まれた空間により前記ラゲージルームRが形成されている。
【0015】
この左,右のサイドパネル3及びロアバックパネル4の上縁がラゲージルーム開口2aとなっており、該開口2aの周縁部にはラゲージドア1との間をシールするシール部材8が装着されている。また前記ロアバックパネル4の左,右側部にはリヤコンビネーションランプ9,9が配設されている。
【0016】
前記ロアバックパネル4は、ロアバックアウタ4aとロアバックインナ4bとを結合することにより、車幅方向に延びる閉断面を形成した構造を有する。
【0017】
前記左,右のサイドパネル3内には、これの上縁部に沿って前後方向に延びるクォータメンバ10,10が配設されている。この左,右のクォータメンバ10は、前記サイドパネル3のサイドインナパネル3aに結合されており、該サイドインナパネル3aとで前後方向に延びる閉断面を形成した構造を有する。
【0018】
前記左,右のクォータメンバ10の前端部は不図示のセンターピラーに結合され、後端部は前記ロアバックパネル4に連続した閉断面をなすよう結合されている。この左,右のクォータメンバ10及びロアバックパネル4によりラゲージルーム開口部の剛性を高めている。
【0019】
前記左,右のクォータメンバ10とロアバックパネル4とのコーナー部には、不図示の後輪に連結されたショックアブソーバ12の上端部12aを支持するストラットタワー11,11が配設されている。詳細には、ロアバックパネル4のロアバックインナ4bのクォータメンバ結合コーナー部4′,4′に左,右のストラットタワー11の上フランジ部11aが結合されている。これによりショックアブソーバ12からストラットタワー11に伝わる突き上げ荷重に対する剛性を高めている。
【0020】
前記左,右のストラットタワー11は、後輪の上方を覆うホイールハウス15の後端部に結合されている。この左,右のホイールハウス15の内側下部15aとリヤフロアパネル5の下面との間には、車両前後方向に延びるリヤサイドメンバ16,16が結合されている。
【0021】
前記ラゲージドア1は、左,右のサイドパネル3に取り付けられた不図示のヒンジ機構により上下に開閉自在に支持され、かつ前記ロアバックパネル4の車幅方向中央部に取り付けられた不図示のロック機構によりロック又はアンロック可能に支持されている。
【0022】
前記ラゲージドア1の車幅方向左,右後部1a,1aの下方には、前記ストラットタワー11が配設されており、従って前記左,右後部1a,1aの下方にショックアブソーバ12,12が位置している。
【0023】
本実施例では、前記ラゲージドア1の左,右後部1aとショックアブソーバ12との上下方向の距離tは、ラゲージドア1の車高を低くした分だけ短くなっている(図3参照)。このためショックアブソーバ12の突き上げ荷重は、ストラットタワー11からロアバックパネル4を介してラゲージドア1に伝わり易くなっている。
【0024】
前記ラゲージドア1は、塗装が施された外装面18aを有する樹脂製のドアアウタパネル18と、該ドアアウタパネル18の内側に配置された樹脂製のドアインナパネル19とを備えている。ここで、前記ラゲージドア1は、ドアアウタパネル,ドアインナパネルの両方を金属製とし、あるいはドアアウタパネル又はドアインナパネルの何れか一方を樹脂製とし、他方を金属製とする等各種の態様のものが可能である。
【0025】
前記ドアインナパネル19は、前記ドアアウタパネル18の外周部に沿うように形成された枠形状の外周ビード19aと、該外周ビード19aの前部と後部を一体的に連結する左,右一対のクロスビード19b,19b及び中央の連結ビード19hとを有する。
【0026】
前記ドアインナパネル19は、前記外周ビード19a,各クロスビード19b及び連結ビード19hの長手方向に沿って屈曲形成された一対のフランジ部19iをドアアウタパネル18の裏面に接着剤等により固着することにより、該ドアアウタパネル18に結合されている。これによりドアアウタパネル18とドアインナパネル19とで環状の閉断面部A及び複数の梁状の閉断面Bとが形成されている(図5参照)。
【0027】
前記外周ビード19aは、ドアアウタパネル18の左,右側縁部18b,18bに沿って前後方向に延びる左,右ビード部19c,19cと、該ドアアウタパネル18の前,後縁部18c,18cに沿って車幅方向に延びる前,後ビード部19d,19eとを一体に形成した構造を有する。
【0028】
前記外周ビード19aの左,右ビード部19c,19cの前部には、ヒンジ取付け座19f,19fが形成されており、後ビード部19eの車幅方向中央部には、ロック取付け座19gが形成されている。
【0029】
前記連結ビード19hは、前記前ビード部19dと後ビード部19eとを前後方向に連結しており、該連結ビード19hの後ビード部19eへの連結部分に前記ロック取付け座19gが形成されている。
【0030】
前記左,右のクロスビード19bは、前記外周ビード19aの、前記ラゲージドア1の左,右後部1aに対応する部分に接続され、ここから前ビード部19dの車幅方向中央部に向かって傾斜して延びている。換言すれば前記左,右のクロスビード19bは連結ビード19hに合流するように前記前ビード部19dに接続されている。
【0031】
本実施例によれば、ラゲージドア1のドアインナパネル19を、ドアアウタパネル18の外周部に沿うように延びる枠形状で、かつ左,右のヒンジ取付け座19f及びロック取付け座19gが形成された外周ビード19aと、該外周ビード19aの左,右後部1aに続いて前ビード19dの車幅方向中央部に向かって延びる左,右一対のクロスビード19bとを有するものとした。
【0032】
このように構成したので、ラゲージドア単体としての必要剛性を確保できる。また、ショックアブソーバ12からストラットタワー11を介してラゲージドア1に伝わる突き上げ荷重をクロスビード19bを介して外周ビード19a全体で受け止めることができ、突き上げ荷重に対するラゲージドア全体の剛性を高めることができる。
【0033】
即ち、本実施例では、左,右後部にストラットタワー11が配設されているので、図6に示すように、ドアインナパネル19の左後部1a又は右後部1aに突き上げ荷重Fが加わることとなる。そのため、ドアインナパネル19には、図6に示す左,右の仮想ラインa,aを折れ変形ラインとするように荷重Fが作用することとなる。本実施例では、各クロスビード19bが前記仮想ラインa,aを横切るように形成されているで、前記荷重Fにより前記折れ変形に対する剛性が高くなっている。また前記突き上げ荷重Fがクロスビード19bを介して外周ビード19a全体に伝達されるとともに、該クロスビード19bが外周ビード19aの前,後ビード19e,19d間で梁として突っ張ることで荷重を支えることができる。
【0034】
また車両前後方向からの荷重は、ドアインナパネル19に仮想ラインbを折れ変形ラインとするように作用することとなるが、本実施例では、前記クロスビード19b及び連結ビード19hが前記仮想ラインbを横切るように形成されているので、この場合も前記折れ変形に対する剛性が高くなっており、またクロスビード19b及び連結ビード19hが外周ビード19a間で梁部材として突っ張ることで荷重を支えることができる。
【0035】
また、ラゲージドア1が後部車体2の剛性部材として機能することとなり、後部車体2の剛性を高めるための補強部材の追加を不要にでき、重量及びコストアップを抑制できる。その結果、車高の低いオープンカーにおける軽量化,低コスト化が可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 ラゲージドア
1a 左,右後部
11 ストラットタワー
18 ドアアウタパネル
18a 外装面
19 ドアインナパネル
19a 外周ビード
19b クロスビード
19d 前ビード部(車両前部)
19f ヒンジ取付け座
19g ロック取付け座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装面を有するドアアウタパネルと、その車幅方向左,右側部に設けられたヒンジ取付け座及び車両後部の車幅方向中央部に設けられたロック取付け座を有するドアインナパネルとを備え、
該ドアインナパネルの車幅方向左,右後部の下方にストラットタワーが配設された車両用ラゲージドアであって、
前記ドアインナパネルは、前記ドアアウタパネルの外周部に沿うように延びる枠形状で、かつ前記各ヒンジ取付け座及びロック取付け座が形成された外周ビードと、
該外周ビードの車幅方向左,右後部から連続して前記外周ビードの車両前部の車幅方向中央部に向かって延びる一対のクロスビードとを有する
ことを特徴とする車両用ラゲージドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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