説明

車両用リモートセキュリティ装置

【課題】車両がセンターとの通信可能地域を逸脱する際のセキュリティ機能の低下を抑制することが可能な車両用リモートセキュリティ装置を提供すること。
【解決手段】車両に搭載され、所定の通信可能地域内でセンター(90)との通信を行なうことが可能な通信手段(10)を備える車両用リモートセキュリティ装置(1)であって、車両が前記所定の通信可能地域を逸脱するか否かを判定し、車両が所定の通信可能地域を逸脱すると判定した場合に、所定の車両情報をセンターに送信するように通信手段を制御する制御手段を備えることを特徴とする、車両用リモートセキュリティ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターとの通信によりセキュリティ機能を発揮する車両用リモートセキュリティ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信によりセンターに接続し、盗難車両の追跡や、リアルタイム交通情報を使ったナビゲーション、天気予報、電子メール等の各種サービスを提供可能な車載装置が実用化され、「テレマティックス」等と称されている。
【0003】
こうした車載装置の一種である車両追跡装置についての発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、自車が地図データ上の分岐点を通過したときに自車位置情報をセンターに送信し、通信頻度を低くするという工夫がなされている。
【特許文献1】特開2006−23909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置を含め、上記の如き装置において盗難車両を確実に追跡するためには、車両が走行する可能性のある全地域において車両とセンターとの通信が可能であることが望ましい。ところが、テレマティックスサービスの普及程度や地理的状況、新規な通信手段が導入された過渡時である等の要因により、必ずしも全国に亘って通信が可能であるという保障はない。従って、盗難車両を確実に追跡することができず、セキュリティ機能の低下を招く場合が生じ得る。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、車両がセンターとの通信可能地域を逸脱する際のセキュリティ機能の低下を抑制することが可能な車両用リモートセキュリティ装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、車両に搭載され、所定の通信可能地域内でセンターとの通信を行なうことが可能な通信手段を備える車両用リモートセキュリティ装置であって、車両が前記所定の通信可能地域を逸脱するか否かを判定し、車両が所定の通信可能地域を逸脱すると判定した場合に、所定の車両情報をセンターに送信するように通信手段を制御する制御手段を備えることを特徴とするものである。
【0007】
この本発明の一態様によれば、車両が所定の通信可能地域を逸脱すると判定した場合に、所定の車両情報をセンターに送信するため、センターにおいて車両盗難防止のための種々の処置をとることが可能となり、その結果、セキュリティ機能の低下を抑制することができる。
【0008】
本発明の一態様において、例えば、車両の現在位置を特定する現在位置特定手段と、地図情報を記憶した地図情報記憶手段と、を備え、制御手段は、現在位置特定手段により特定された車両の現在位置及び地図情報記憶手段に記憶された地図情報を参照して、車両と所定の通信可能地域との位置関係を特定する位置関係特定部を有し、車両が所定の通信可能地域内であり、且つ、位置関係特定部により、所定の通信可能地域内の外端までの最短距離が所定距離以内であると共に、車両の進行方向に存在する道路分岐を考慮した進行可能経路の全てが所定の通信可能地域の外端を跨ぐことが特定された場合に、車両が所定の通信可能地域を逸脱すると判定する手段であるものとしてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様において、所定の通信可能地域に関する情報を記憶する通信可能地域情報記憶手段を備え、通信可能地域情報記憶手段に記憶された所定の通信可能地域に関する情報は、通信手段により定期的に前記センターから取得される情報により更新されることが望ましい。
【0010】
また、本発明の一態様において、車両の走行軌跡が記憶される走行軌跡記憶手段を備え、制御手段は、車両が所定の通信可能地域外である間、車両の走行軌跡を走行軌跡記憶手段に記憶させる手段であることが望ましい。
【0011】
また、本発明の一態様において、制御手段は、例えば、センターとの通信が途絶状態から再開されたときに、再開時の車両情報をセンターに送信するように通信手段を制御する手段である。この場合、制御手段は、センターとの通信が途絶状態から再開されたときに、再開された通信の信頼度に対する判定を行ない、通信の信頼度が低いと判定された場合には、再開時の車両情報をセキュリティ上重要性の高い情報に限定する手段であることが望ましい。
【0012】
また、本発明の一態様において、車両が盗難状態であるか否かを判断する盗難状態判断手段と、運転者に対し車両の走行経路に関する案内を行なう走行経路案内手段と、を備え、制御手段は、車両が所定の通信可能地域外であり、且つ盗難状態判断手段により車両が盗難状態であると判断された場合には、車両を通信可能地域内に誘導するように走行経路案内手段による案内を行なう手段であることが望ましい。
【0013】
また、本発明の一態様において、車両が盗難状態であるか否かを判断する盗難状態判断手段と、車車間通信を行なう車車間通信手段と、を備え、制御手段は、車両が所定の通信可能地域外であり、且つ盗難状態判断手段により車両が盗難状態であると判断された場合には、他車両に対してセンターへの盗難通報を依頼するよう車車間通信手段を制御する手段であることが望ましい。なお、請求項7に係る盗難状態判断手段と、請求項8に係る盗難状態判断手段と、は同一のものであってよい。
【0014】
また、本発明の一態様において、例えば、車両が所定の通信可能地域を逸脱する逸脱パターンを学習する逸脱パターン学習手段を備え、制御手段は、逸脱判定手段により車両が所定の通信可能地域を逸脱すると判定された場合であっても、当該逸脱に係る逸脱パターンが逸脱パターン学習手段により学習された逸脱パターンに該当するときには、通信手段を用いた所定の車両情報の送信を行なわないものとしてもよい。
【0015】
また、本発明の一態様において、例えば、センターとの通信強度を測定する通信強度測定手段を備え、制御手段は、通信強度測定手段により測定された通信強度を、定期的にセンターに送信するように通信手段を制御する手段であるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両がセンターとの通信可能地域を逸脱する際のセキュリティ機能の低下を抑制することが可能な車両用リモートセキュリティ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の一実施例に係る車両用リモートセキュリティ装置1について説明する。図1は、車両用リモートセキュリティ装置1の全体構成の一例を示す図である。車両用リモートセキュリティ装置1は、例えば、主要な構成として、通信装置10と、制御主体となるナビゲーション装置用ECU(Electronic Control Unit)20と、GPSアンテナ30と、入出力装置40と、イモビライザーECU50と、を備える。
【0019】
通信装置10は、例えば、携帯電話と同様の構造を有する専用装置、或いは市販の携帯電話が有線又は無線により車両に接続されたものが用いられ、車外に設置された情報サービス施設であるセンター90との通信を行なう。センター90は、民間サービス企業や自動車メーカー等の施設であり、リアルタイム交通情報や天気予報、電子メール等の各種サービスコンテンツを、車両用リモートセキュリティ装置1を搭載した車両に対して送信する。また、車両が盗難された疑いのあるときには、当該車両の現在位置を通信により取得して、ユーザー端末100にその走行軌跡を送信したり、警察への通報を行なったりするサービス(盗難車両の追跡)を提供している。なお、携帯端末100は、例えば、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistance)、パソコン等である。通信装置10とセンター90との通信は、例えば無線基地局70及びネットワーク80を介して行なわれる。すなわち、通信装置10と無線基地局70との間では、携帯電話網、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、衛星電話、ビーコン等を利用した無線通信が行なわれる。また、無線基地局70とセンター90を接続するネットワーク80は、例えば、公衆電話交換網(PSTN)やデジタル通信ネットワーク(ISDN)、光ファイバ等の有線ネットワークである。
【0020】
また、通信装置10は、高速道路料金所等に設置された通信端末(ネットワーク80を介してセンター90に接続されている)との間で専用狭域通信を行なうDSRC(Dedicated Short Range Communication)用送受信機や、ビーコン送受信機を含んでよい。
【0021】
通信装置10は、以上例示した如き態様でセンター90との通信を行なうのであるが、無線基地局70の設置分布や特有の地形条件等により、センター90との通信が不可能な地域が存在し得る。以下、センター90との通信が可能な地域を通信可能地域と称する。なお、通信可能地域は、上記専用狭域通信が可能な地域も含まれるため、必ずしも一まとまりではなく、飛び地が存在することも想定される。
【0022】
通信装置10は、通信が正常に行なわれているか否かを内部的に判定し、通信可否に関する通信状態信号をナビゲーション装置用ECU20に出力している。また、受信波の強度を定期的に検出してセンター90に自動送信する。こうすることにより、センター90が最新の通信可能地域を把握することができ、車両用リモートセキュリティ装置1においては、センター90から定期的に送信される情報により最新の通信可能地域に更新することができる。
【0023】
以下、車両用リモートセキュリティ装置1が備える他の構成要素について説明する。
【0024】
ナビゲーション装置用ECU20は、車載ナビゲーション装置の制御装置が共有される。その構成は、例えば、CPUを中心としてROMやRAM等がバスを介して相互に接続されたコンピューターユニットであり、その他、ハードディスクやDVD(Digital Versatile Disk)等のメモリ20AやI/Oポート、タイマー、カウンター等を備える。ナビゲーション装置用ECU20は、ROMに記憶されたプログラムをCPUがRAM上に展開(ロード)して実行することにより機能する主要な機能ブロックとして、現在位置特定部21と、経路案内部22と、位置関係特定部23と、逸脱判定制御部24と、通信制御部25と、逸脱パターン学習部26と、盗難状態判断制御部27と、を備える。
【0025】
メモリ20Aには、地図情報が予め格納されている。当該地図情報は、例えば道路の分岐点や基準点(夫々、交差点ノードや一般ノードと称される)と、各ノード間を接続するリンクと、により構成され、各ノードの座標、各リンクの曲率や道路幅員等が付随して記憶されている。また、上記通信可能地域の外端線が、座標を連ねたものとして記憶されている。
【0026】
現在位置特定部21は、GPSアンテナ30の受信信号に基づいて車両の現在位置を特定する。GPSアンテナ30は、GPS衛星から衛星の軌道と時刻のデータを含む電波信号を受信して現在位置特定部21に出力する。そして、現在位置特定部21が、受信されたデータに対して電波信号の時間差に基づく演算を行なって、車両の現在位置(緯度、経度、高度)を特定する。また、車両の現在位置は、車速センサーやジャイロセンサー等の各種センサーの出力や、ビーコン受信機及びFM多重受信機を介して受信される各種情報に基づいて補正されてよい。
【0027】
経路案内部22は、車載ナビゲーション装置本来の機能である経路案内を行なう。すなわち、現在位置特定部21が特定した車両の現在位置から、入出力装置40に対してユーザーが入力した目的地に至る推奨経路を、メモリ20Aに格納された地図情報を参照して生成し、入出力装置40を用いて表示及び/又は音声出力する。なお、入出力装置40は、例えば、タッチパネルとして構成された液晶ディスプレイ装置や、マイク及びスピーカーを含む音声入出力装置、専用スイッチ等を含む。
【0028】
位置関係特定部23は、現在位置特定部21が特定した車両の現在位置、及びメモリ20Aに格納された地図情報を参照して、車両と通信可能地域との位置関係を特定する。すなわち、(1)車両と通信可能地域の外端線との最短距離を導出し、(2)最短距離が第1の所定距離L1以下である場合には、車両の進行方向に存在する道路分岐(交差点ノード)を考慮した進行可能経路の全てが通信可能地域の外端線を跨ぐか否かを特定する。図2(A)は、車両の進行可能経路の全てが通信可能地域の外端線を跨ぐ場合の例を示す図である。また、図2(B)は、車両の進行可能経路の全てが通信可能地域の外端線を跨ぐとはいえない場合の例を示す図である。このように、位置関係特定部23では、車両に接近しつつある通信可能地域の外端線に対して、車両がこれを跨ぐこととなるか否かを適切に判定することができる。
【0029】
なお、位置関係特定部23は、車両が道路外を走行している場合には、例外的として、第1の所定距離L1に代えてより短い第2の所定距離L2を用いるものとする。これは、車両が道路外を走行している場合には進行可能経路の特定が困難であるため、車両が通信可能地域の外端線にかなり接近した場合でなければ通信可能地域を逸脱すると適切に判断できないことに基づく。
【0030】
逸脱判定制御部24は、通信装置10からの通信状態信号を参照して車両が通信可能地域内であるか否かを判定し、車両が通信可能地域内であり、且つ位置関係特定部23により、車両と通信可能地域の外端線との最短距離が所定距離L1以下であると共に車両の進行方向に存在する道路分岐(交差点ノード)を考慮した進行可能経路の全てが通信可能地域の外端線を跨ぐことが特定された場合に、車両が通信可能地域を逸脱すると判定する。そして、車両が通信可能地域を逸脱すると判定したときに、当該逸脱に先立って所定の車両情報をセンター90に送信するように通信制御部25に指示する。
【0031】
所定の車両情報は、例えば、車両IDに加え、直近の走行軌跡、車載ナビゲーション装置において目的地や経路が設定されている場合は当該目的地や経路等、車両が盗難状態になっている場合に、車両を追跡するための補助情報となり得る情報である。車両が通信可能地域を逸脱した後は、前述した盗難車両の追跡機能の一部が失われることとなるが、こうした情報をセンター90に送信することにより、車両の存在可能性が高いエリアを絞り込むことができ、車両の発見や確保の可能性を向上させることができる。従って、車両が通信可能地域を逸脱した後であっても、セキュリティ機能の低下を抑制することができる。また、当該送信は、上記位置関係特定部23や逸脱判定制御部24の処理により、通信可能地域を逸脱する直前に行なわれるため、適切な頻度で行なわれることとなる。従って、不要な通信により通信負荷や電力消費が増大することが抑制される。
【0032】
また、車両が実際に通信可能地域を逸脱した状態である場合には、以下の逸脱時制御を行なう。すなわち、当該逸脱した状態である間、走行軌跡(車両の現在位置の履歴)をメモリ20Aに記憶させる。また、センター90との通信が再開されたか否かを常時監視し、再開された際には再開時の車両情報をセンター90に送信するように通信制御部25に指示する。再開時の車両情報は、再開された通信の信頼度(例えば、無線基地局70を介してのものであるか、専用狭域通信等による一時的なものであるかにより判断される)によって内容が変更される。すなわち、専用狭域通信等による一時的な通信再開の場合、すぐにまた通信可能地域外となるから通信可能時間が十分でないことが予想されるため、車両の現在位置等、セキュリティ上重要なものに限定してセンター90に送信する。一方、無線基地局70の通信エリアに入った場合は、通信可能時間が十分なものであることが予想されるため、例えば上記所定の車両情報と同様の情報をセンター90に送信する。なお、通信の信頼度は、こうした通信可能時間により判断されるのみならず、受信波の強度や安定度等により判断されてもよい。
【0033】
このような処理により、通信再開時に備えて走行軌跡を蓄積すると共に、通信再開時には、再開された通信の信頼度に応じて適切なデータ量の情報をセンター90に送信することができる。
【0034】
図3は、以上説明した通信可能地域逸脱時の車両情報送信に係る基本的な処理の流れを示すフローチャートである。本フローは、逸脱判定制御部24を制御主体として、例えば所定時間毎に繰り返し実行される。なお、判定処理の順序やいずれの機能ブロックが制御主体となるか等については、本フローはあくまで一例であり、これに何ら限定されるものではない。
【0035】
まず、車両が通信可能地域内であるか否かを判定し(S200)、続いて車両が走行している場所が道路外であるか否かを判定する(S210)。車両が通信可能地域内である場合であって、車両が走行している場所が道路外でない場合は、道路走行時の位置関係特定を行なうように位置関係特定部23に依頼する。すなわち、位置関係特定部23では、車両と通信可能地域の外端線との最短距離が第1の所定距離L1以下であるか否か、及び車両の進行方向に存在する進行可能経路の全てが通信可能地域の外端線を跨ぐか否か、を特定する。位置関係特定部23の出力により、車両と通信可能地域の外端線との最短距離が第1の所定距離L1以下であり、且つ車両の進行方向に存在する進行可能経路の全てが通信可能地域の外端線を跨ぐと判定された場合には、車両情報をセンター90に送信して本フローの1ルーチンを終了する(S220、230、240)。また、車両と通信可能地域の外端線との最短距離が第1の所定距離L1を超える場合や、車両の進行方向に存在する進行可能経路の全部が通信可能地域の外端線を跨ぐとはいえない場合は、何も処理を行なわずに本フローの1ルーチンを終了する。
【0036】
一方、道路外を走行している場合は、車両と通信可能地域の外端線との最短距離が第2の所定距離L2以下であるか否かを判定し(S250)、最短距離が第2の所定距離L2以下である場合に車両情報をセンター90に送信する(S240)。なお、車両が通信可能地域外である場合は、前述した如く逸脱時制御を行なう(S260)。
【0037】
以上の処理により、車両が通信可能地域を逸脱する前に、車両情報がセンター90に送信されることとなる。従って、センター90において車両盗難防止のための種々の処置をとることが可能となるため、セキュリティ機能の低下を抑制することができる。また、車両が通信可能地域を逸脱するか否かの判定が適切になされるため、車両情報の送信が適切な頻度で行なわれることとなり、不要な通信により通信負荷や電力消費が増大することを抑制することができる。更に、車両が実際に通信可能地域を逸脱した際には、通信再開時に備えて走行軌跡を蓄積すると共に、通信再開時には、再開された通信の信頼度に応じて適切なデータ量の情報をセンター90に送信することができる。
【0038】
なお、以上の処理が本実施例の基本的動作であるが、ナビゲーション装置用ECU20は、更に制御をカスタマイズされたものとするために逸脱パターン学習部26を備え、また、車両が盗難された疑いのある場合の処理を行なうものとして盗難状態判断制御部27を備える。以下、夫々説明する。
【0039】
逸脱パターン学習部26は、車両が通信可能地域を逸脱した度にメモリ20Aに記憶される走行軌跡を比較し、同じ(微差はあってもよい)走行軌跡が所定個数以上記憶されている場合には、当該逸脱時の走行軌跡はユーザー特有のものであると判断し、以後、当該逸脱パターンに該当する場合には所定の車両情報送信を行なわないように、逸脱判定制御部24に干渉制御を行なう。逸脱パターンに該当するか否かの判断は、図3のフローチャートにおけるS220及びS230において共に肯定的な判定を得た後に、車両の進行方向に、上記複数回記憶された走行軌跡が存在すれば、逸脱パターンに該当するものと判断できる。
【0040】
盗難状態判断制御部27は、車両が盗難状態であるか否かを判断し、盗難状態である場合には、種々の制御を行なって車両追跡を補助する。
【0041】
車両が盗難状態であるか否かの判断は、例えば、(1)イモビラーザーECU50により認証済信号が送信されていないにも拘らず車両が走行している場合や、(2)ユーザー携帯端末100からセンター90に対して盗難通報がなされ、当該通報があった旨がセンター90通信装置10に送信された場合に、盗難状態であると判断することができる。
【0042】
なお、イモビラーザーECU50は、スマートキー等の認証キーに対する認証動作を行なってエンジン始動等を許可する。認証動作とは、例えば、スマートキーから検出されるキー側IDと、予め登録されたユーザーIDとの比較を行なって、一致した場合に運転者が正規ユーザーであると認証する動作である。そして、正常に認証がなされた場合には、ナビゲーション装置用ECU20に対して認証済信号を送信する。
【0043】
盗難状態である場合の制御は、通信可能地域内であるか否かによって大別される。通信可能地域内である場合は、車両IDや車両の現在位置、走行軌跡、(経路案内部22において設定されている場合には)目的地や経路等をセンター90に送信する。一方、通信可能地域内でない場合は、車両追跡を補助する情報をセンター90に直接送信することができない。
【0044】
そこで、(A)車車間通信を行なう車車間通信装置(図示せず)を備える場合は、当該車車間通信装置により他車両に盗難状態である旨を通報し、当該他車両が通信可能地域内となった際に、自車両の車両IDや車車間通信が行なわれた場所の座標、盗難状態である旨をセンター90に送信するように依頼する。
【0045】
また、(B)車両が通信可能地域の外端線まで第3の所定距離L3以内となり、且つ経路案内部22による経路案内が行なわれている場合には、経路案内部22に干渉して通信可能地域を通るように推奨経路を再設定させる。こうすることにより、車両を通信可能地域内に誘導することができ、センター90との通信を速やかに再開させることができる。
【0046】
以上説明した本実施例の車両用リモートセキュリティ装置1によれば、車両がセンターとの通信可能地域を逸脱する際のセキュリティ機能の低下を抑制することができる。
【0047】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、自動車製造業や自動車部品製造業等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】車両用リモートセキュリティ装置1の全体構成の一例を示す図である。
【図2】車両の進行可能経路の全てが通信可能地域の外端線を跨ぐ場合、及び車両の進行可能経路の全てが通信可能地域の外端線を跨ぐとはいえない場合の例を示す図である。
【図3】通信可能地域逸脱時の車両情報送信に係る基本的な処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 車両用リモートセキュリティ装置1
10 通信装置
20 ナビゲーション装置用ECU
20A メモリ
21 現在位置特定部
22 経路案内部
23 位置関係特定部
24 逸脱判定制御部
25 通信制御部
26 逸脱パターン学習部
27 盗難状態判断制御部
30 GPSアンテナ
40 入出力装置
50 イモビライザーECU
70 無線基地局
80 ネットワーク
90 センター
100 ユーザー端末


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、所定の通信可能地域内でセンターとの通信を行なうことが可能な通信手段を備える車両用リモートセキュリティ装置であって、
車両が前記所定の通信可能地域を逸脱するか否かを判定し、車両が前記所定の通信可能地域を逸脱すると判定した場合に、所定の車両情報を前記センターに送信するように前記通信手段を制御する制御手段を備えることを特徴とする、
車両用リモートセキュリティ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用リモートセキュリティ装置であって、
車両の現在位置を特定する現在位置特定手段と、
地図情報を記憶した地図情報記憶手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記現在位置特定手段により特定された車両の現在位置及び前記地図情報記憶手段に記憶された地図情報を参照して、車両と前記所定の通信可能地域との位置関係を特定する位置関係特定部を有し、
車両が前記所定の通信可能地域内であり、且つ、前記位置関係特定部により、前記所定の通信可能地域内の外端までの最短距離が所定距離以内であると共に、車両の進行方向に存在する道路分岐を考慮した進行可能経路の全てが前記所定の通信可能地域の外端を跨ぐことが特定された場合に、車両が前記所定の通信可能地域を逸脱すると判定する手段である、
車両用リモートセキュリティ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用リモートセキュリティ装置であって、
前記所定の通信可能地域に関する情報を記憶する通信可能地域情報記憶手段を備え、
該通信可能地域情報記憶手段に記憶された前記所定の通信可能地域に関する情報は、前記通信手段により定期的に前記センターから取得される情報により更新される、
車両用リモートセキュリティ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用リモートセキュリティ装置であって、
車両の走行軌跡が記憶される走行軌跡記憶手段を備え、
前記制御手段は、車両が前記所定の通信可能地域外である間、前記車両の走行軌跡を走行軌跡記憶手段に記憶させる手段である、
車両用リモートセキュリティ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用リモートセキュリティ装置であって、
前記制御手段は、前記センターとの通信が途絶状態から再開されたときに、再開時の車両情報を前記センターに送信するように前記通信手段を制御する手段である、
車両用リモートセキュリティ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用リモートセキュリティ装置であって、
前記制御手段は、前記センターとの通信が途絶状態から再開されたときに、再開された通信の信頼度に対する判定を行ない、該通信の信頼度が低いと判定された場合には、前記再開時の車両情報をセキュリティ上重要性の高い情報に限定する手段である、
車両用リモートセキュリティ装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用リモートセキュリティ装置であって、
車両が盗難状態であるか否かを判断する盗難状態判断手段と、
運転者に対し車両の走行経路に関する案内を行なう走行経路案内手段と、を備え、
前記制御手段は、車両が前記所定の通信可能地域外であり、且つ前記盗難状態判断手段により車両が盗難状態であると判断された場合には、車両を通信可能地域内に誘導するように前記走行経路案内手段による案内を行なう手段である、
車両用リモートセキュリティ装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の車両用リモートセキュリティ装置であって、
車両が盗難状態であるか否かを判断する盗難状態判断手段と、
車車間通信を行なう車車間通信手段と、を備え、
前記制御手段は、車両が前記所定の通信可能地域外であり、且つ前記盗難状態判断手段により車両が盗難状態であると判断された場合には、他車両に対して前記センターへの盗難通報を依頼するよう前記車車間通信手段を制御する手段である、
車両用リモートセキュリティ装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の車両用リモートセキュリティ装置であって、
車両が所定の通信可能地域を逸脱する逸脱パターンを学習する逸脱パターン学習手段を備え、
前記制御手段は、前記逸脱判定手段により車両が前記所定の通信可能地域を逸脱すると判定された場合であっても、当該逸脱に係る逸脱パターンが前記逸脱パターン学習手段により学習された逸脱パターンに該当するときには、前記通信手段を用いた所定の車両情報の送信を行なわない、
車両用リモートセキュリティ装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の車両用リモートセキュリティ装置であって、
前記センターとの通信強度を測定する通信強度測定手段を備え、
前記制御手段は、前記通信強度測定手段により測定された通信強度を、定期的に前記センターに送信するように前記通信手段を制御する手段である、
車両用リモートセキュリティ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−107995(P2008−107995A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289015(P2006−289015)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】