説明

車両用ルーフパネル構造

【課題】ルーフパネルの熱膨張を許容すると共に、NV性能を満足させることができる車両用ルーフパネル構造を得る。
【解決手段】車両のルーフ部12の車両前端部と後端部に結合された樹脂製又はアルミニウム製のルーフパネル14と、前記ルーフ部12の車両前端部と後端部の間に、車幅方向に沿って延設され、前記ルーフパネル14が結合されたルーフリインフォース26と、前記ルーフリインフォース26から所定値以上の荷重が作用すると伸縮方向へ弾性変形する弱体部が設けられ、前記弱体部を介して、前記ルーフリインフォース26の長手方向の端部と前記ルーフパネル部14の車幅方向両端部14Aに車両前後方向に沿って延設されたルーフサイドレール18とがそれぞれ結合された結合部材と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフパネルの車両前端部及び後端部以外の部分に、車幅方向に沿ってルーフリインフォースが設けられた車両用ルーフパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の上部域を成すルーフ部の車幅方向の両側には、車両前後方向に沿ってルーフサイドレールがそれぞれ延設されており、ルーフ部の車両前端部及び後端部には、車幅方向に沿ってフロントヘッダ及びリアヘッダがそれぞれ延設されている。そして、これらのルーフサイドレール、フロントヘッダ及びリアヘッダにルーフパネルが接合されている。
【0003】
ここで、ルーフパネルの車両前後方向の中央部に、車幅方向に沿ってルーフリインフォースを延設し、ルーフサイドレール、フロントヘッダ及びリアヘッダに加え、当該ルーフリインフォースにもルーフパネルを接合させることで、車両走行時のルーフパネルの振動モードを2次モードとすることができる。つまり、ルーフパネルが車両前端部及び後端部でしか結合されていない場合と比較して、ルーフパネルの振動を小さくすることができ、NV性能を向上させることができる。
【0004】
一方、ルーフパネルを樹脂で成形した場合、樹脂の熱膨張率は鋼板よりも大きいため、ルーフパネルが熱膨張すると、車両上方へ向かって膨らんでしまう(凹む場合もある)。NV性能を向上させるため、ルーフリインフォースにルーフパネルを接合させると、ルーフリインフォースはルーフサイドレールに固定されているため、ルーフパネルが熱膨張すると、車両側面視で2つのコブが形成されることとなり、見栄えが悪く、意匠上の観点から好ましくない。下記特許文献1には、ルーフパネルの熱膨張を許容する技術が開示されているが、ルーフパネルの熱膨張を許容する構成にすると、NV性能を満足させることができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−83248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、ルーフパネルの熱膨張を許容すると共に、NV性能を満足させることができる車両用ルーフパネル構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明に係る車両用ルーフパネル構造は、車両のルーフ部の車両前端部と後端部に結合された樹脂製又はアルミニウム製のルーフパネルと、前記ルーフ部の車両前端部と後端部の間に、車幅方向に沿って延設され、前記ルーフパネルが結合されたルーフリインフォースと、前記ルーフリインフォースから所定値以上の荷重が作用すると伸縮方向へ弾性変形する弱体部が設けられ、前記弱体部を介して、前記ルーフリインフォースの長手方向の端部と前記ルーフパネル部の車幅方向両端部に車両前後方向に沿って延設されたルーフサイドレールとがそれぞれ結合された結合部材と、を有している。
【0008】
請求項1記載の本発明に係る車両用ルーフパネル構造では、車両のルーフ部の車両前端部と後端部の間には、車幅方向に沿ってルーフリインフォースが延設されており、ルーフ部の車両前端部、後端部、及びルーフリインフォースにルーフパネルが結合されている。これにより、車両走行時のルーフパネルの振動モードを2次モードとすることができる。つまり、ルーフパネルが車両前端部及び後端部でしか結合されていない場合と比較して、ルーフパネルの振動を小さくすることができ、NV性能を向上させることができる。
【0009】
一方、結合部材には、ルーフリインフォースから所定値以上の荷重が作用すると伸縮方向へ弾性変形する弱体部が設けられており、この弱体部を介して、該結合部材には、ルーフリインフォースとルーフサイドレールとがそれぞれ結合されている。
【0010】
高温環境下において、樹脂製又はアルミニウム製のルーフパネルの熱膨張により、例えば、ルーフパネルが車両側面視で車両上方へ向かって膨らもうとした場合、ルーフパネルに結合されたルーフリインフォースを介して結合部材には引張り荷重が作用する。この引張り荷重が所定値以上になると、結合部材の弱体部が弾性変形し引張り荷重が作用する方向へ向かって伸長することとなる。
【0011】
これにより、ルーフパネルの熱膨張に追従してルーフリインフォースを上方へ移動させることができる。つまり、ルーフパネルの熱膨張を許容することができる。このため、ルーフパネルが熱膨張した場合、当該ルーフパネルは、車両側面視で1つの緩やかな凸状の曲線を描くこととなり、意匠上の問題は生じない。なお、ルーフパネルの熱膨張により、結合部材には圧縮荷重が作用する場合もある。
【0012】
請求項2記載の本発明に係る車両用ルーフパネル構造は、請求項1に記載の車両用ルーフパネル構造において、前記弱体部に、当該弱体部を伸縮させる折曲部又はビード部が形成されている。
【0013】
請求項2記載の本発明に係る車両用ルーフパネル構造では、弱体部に折曲部又はビード部を形成することで、弱体部を弾性変形しやすくしている。
【0014】
請求項3記載の本発明に係る車両用ルーフパネル構造は、請求項1又は2に記載の車両用ルーフパネル構造において、前記ルーフリインフォースの長手方向の端部は、前記結合部材と前記ルーフサイドレールとの結合部と対向しており、前記端部における、前記結合部の水平位置よりも下部が、前記ルーフサイドレール側へ向かって突出している。
【0015】
車両の側面衝突時、ルーフサイドレールがルーフリインフォース側へ変形すると、結合部材の弱体部は、衝突後早い段階で座屈変形し、当該結合部材を介して、ルーフサイドレールがルーフリインフォース側へ案内される。これにより、ルーフサイドレールはルーフリインフォースに直接又は間接的に当接し、車両の側面衝突時の入力荷重が、ルーフサイドレールからルーフリインフォースへ伝達される。
【0016】
請求項3記載の本発明に係る車両用ルーフパネル構造では、ルーフリインフォースの長手方向の端部は、結合部材とルーフサイドレールの結合部と対向しており、当該端部において、結合部の水平位置よりも下部が、ルーフサイドレール側へ向かって突出している。このため、結合部材とルーフサイドレールの結合部がルーフリインフォースの長手方向の端部に当接すると、当該結合部が車両下方側へ案内されないようにしている。つまり、ルーフサイドレールがルーフリインフォースの下方へ潜らないようにすることができる。
【0017】
請求項4記載の本発明に係る車両用ルーフパネル構造は、請求項3に記載の車両用ルーフパネル構造において、前記ルーフリインフォースの長手方向の端部において、前記結合部と対向する位置に該結合部から離間する方向へ向かって凹む凹部が形成されている。
【0018】
請求項4記載の本発明に係る車両用ルーフパネル構造では、結合部材とルーフサイドレールの結合部と対向する位置において、当該結合部から離間する方向へ向かって凹む凹部を形成することで、車両の側面衝突時、結合部をルーフリインフォースの凹部でかみ込むことができる。これにより、当該結合部の車両上下方向の変位を規制することができ、車両の側面衝突時の入力荷重を、ルーフサイドレールからルーフリインフォースへ伝達させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用ルーフパネル構造は、ルーフパネルの熱膨張を許容すると共に、NV性能を満足させることができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項2記載の本発明に係る車両用ルーフパネル構造は、簡単な加工を施すことにより、弱体部において、容易に弾性変形させることができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項3記載の本発明に係る車両用ルーフパネル構造は、車両の側面衝突時に、ルーフサイドレールの車室内方向への侵入を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項4記載の本発明に係る車両用ルーフパネル構造は、車両の側面衝突時に、車両の変形を最小限に抑えることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る車両用ルーフパネル構造を示す縦断面である。
【図2】図1に示されるルーフリインフォース及び結合部材の拡大斜視図である。
【図3】本実施形態に係る車両用ルーフパネル構造の作用を説明する車幅方向中央部での縦断面であり、常温状態を実線で示し、車両用ルーフパネルが熱膨張した状態を仮想線で示している。
【図4】本実施形態に係る車両用ルーフパネル構造の作用を説明する図1に対応する縦断面図であり、常温状態を仮想線で示し、車両用ルーフパネルが熱膨張した状態を実線で示している。
【図5】本実施形態に係る車両用ルーフパネル構造の作用を説明する図1に対応する縦断面図である。
【図6】結合部材の変形例を示す拡大斜視図である。
【図7】(A)、(B)は、ルーフリインフォースの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1〜図5を用いて、本発明に係る車両用ルーフパネル構造の実施形態について説明する。なお、図中矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印OUTは車幅方向外側をそれぞれ示す。
【0025】
(車両用ルーフパネル構造の構成)
図3(車両の車幅方向中央部での縦断面である)の実線に示されるように、車両10のルーフ部12に設けられた樹脂製のルーフパネル14の車両前後方向の前端部及び後端部には、フロントヘッダ16及びリアヘッダ17がそれぞれ配置されており、車幅方向に沿って延設されている。また、ルーフパネル14の車幅方向の両側には、左右一対のルーフサイドレール18(図1参照)が配置されており、車両前後方向に沿って延設されている。
【0026】
図1に示されるように、ルーフサイドレール18は、車室外側に配置されるルーフサイドレールリインフォース20と、車室内側に配置されるルーフサイドレールインナ22とによって構成されている。ルーフサイドレールリインフォース20の上端部20A及び下端部20Bは、ルーフサイドレールインナ22の上端部22A及び下端部22Bと重ね合わされて閉断面を構成している。
【0027】
また、ルーフサイドレールリインフォース20の外側には、サイドアウタパネル24が配置されている。サイドアウタパネル24の上端部24Aはルーフサイドレールリインフォース20の上端部20Aに重ね合わされており、更にサイドアウタパネル24の上端部24Aにはルーフパネル14の外側の端部14Aが重ね合わされ互いに結合されている(後述する)。なお、ルーフサイドレールインナ22の上端部22A、ルーフサイドレールリインフォース20の上端部20A、サイドアウタパネル24の上端部24A及びルーフパネル14の外側の端部14Aが重ね合わされ結合された部分を以下、「結合部40」という。
【0028】
ここで、上述した左右のルーフサイドレール18の間には、車両前後方向の略中央部に、車幅方向に沿って鉄製のルーフリインフォース26が配設されている。このルーフリインフォース26は略円筒状に形成されており、マスチック28などの接着剤を介してルーフパネル14が結合される。なお、ここではルーフリインフォース26の形状を略円筒状としたが、角状、楕円状、長円状などであっても良い。
【0029】
また、図2に示されるように、ルーフリインフォース26の両端部には、一対の略台形状の切欠き部(凹部)30が径方向に対向する位置に設けられている。この切欠き部30は、周方向に対面する辺34、36が、ルーフリインフォース26の軸線に対して傾斜しており、切欠き部30の奥壁38から開口部(ルーフリインフォース26の端面26A)へ向かうにつれて互いに離間する方向へ傾いている。
【0030】
そして、図1に示されるように、切欠き部30の奥壁38はルーフリインフォース26の外径の約1/3の長さに設定され、開口部はルーフリインフォース26の外径の約1/2の長さに設定されている。この切欠き部30が車両高さ方向に沿ってルーフリインフォース26の中央部となるように、ルーフリインフォース26は配置されることとなるが、当該ルーフリインフォース26は、結合部材42を介して、ルーフサイドレール18と結合されるようになっている。
【0031】
図2に示されるように、結合部材42は、ルーフリインフォース26の外径よりも幅寸法が大きい鋼板をプレスなどによって加工して形成されており、結合部材42の長手方向の一端部には、ルーフリインフォース26の長手方向の端部が結合され、結合部材42の長手方向の他端部には、ルーフサイドレール18(図1参照)が結合される。
【0032】
ルーフリインフォース26が、結合部材42を介してルーフサイドレール18と結合された状態で、切欠き部30は、ルーフサイドレール18及びルーフパネル14等の結合部40から離間する方向へ向かって凹んだ状態となって、当該結合部40と対向する位置に配置される。また、結合部材42には、長手方向の中央部から他端側に亘って矩形孔44が形成されている。矩形孔44の幅寸法は、ルーフリインフォース26の外径よりも大きくなるように設定されており、矩形孔44が形成された領域は、肉が存在しないため弱体部となっている。
【0033】
さらに、結合部材42の一端部には、ルーフリインフォース26の周方向に沿った所定の領域で面接触可能な曲面部46が形成されており、結合部材42の幅方向に沿った曲面部46の両側には、フランジ部48が設けられている。ルーフリインフォース26の長手方向の端部が結合部材42の曲面部46に面接触された状態で、フランジ部48はルーフリインフォース26の外周面から張出した状態となっている。このフランジ部48の根元部とルーフリインフォース26の外周面とがアーク溶接等によって結合される。
【0034】
フランジ部48と連設する矩形孔44の周壁(弱体部)44Aには、傾斜部50が設けられており、傾斜部50の上端部及び下端部にそれぞれ折曲部52、54が形成されている。折曲部52では傾斜部50が上方へ向かうように折れ曲がっており、折曲部54ではフランジ部48と平行になるように結合片56が折れ曲がっている。この結合片56が、サイドアウタパネル24の上端部24Aとルーフパネル14の外側の端部14Aとの間に重ね合わされて互いに結合されることとなる。
【0035】
そして、結合部材42の長手方向に沿って所定値以上の荷重(引張り荷重又は圧縮荷重)が作用すると、矩形孔44の周壁44Aの弾性変形により折曲部52、54の成す角度が変化して、傾斜部50の傾斜角度が変わる。なお、ルーフリインフォース26とルーフパネル14との位置に合わせて傾斜部50の傾斜角度は適宜変更可能である。
【0036】
(車両用ルーフパネル構造の作用・効果)
図3の実線に示されるように、ルーフパネル14の車両前端部、後端部及び中央部には、車幅方向に沿ってフロントヘッダ16、リアヘッダ17及びルーフリインフォース26がそれぞれ延設され、マスチック28を介してルーフパネル14が、フロントヘッダ16、リアヘッダ17及びルーフリインフォース26に接合されている。
【0037】
このようにルーフパネル14の車両前端部及び後端部だけでなく中央部において、当該ルーフパネル14を接合することで、車両走行時のルーフパネル14の振動モードを2次モードとすることができる。これによると、ルーフパネル14がフロントヘッダ16及びリアヘッダ17でしか接合されていない場合(車両走行時のルーフパネル14の振動モードが1次モード)と比較して、ルーフパネル14の振動を小さくすることができ、NV性能を向上させることができる。なお、フロントヘッダ16とリアヘッダ17の間に設けられるルーフリインフォース26は複数であっても良く、これにより、NV性能をさらに向上させることができる。
【0038】
ここで、図1に示されるように、本実施形態では、ルーフリインフォース26とルーフサイドレール18は、結合部材42を介して互いに結合されている。この結合部材42には、長手方向の中央部から他端側に亘って矩形孔44が形成されており、矩形孔44の周壁44Aには、上端部及び下端部にそれぞれ折曲部52、54が形成された傾斜部50が設けられている。
【0039】
ルーフリインフォース26は鋼材で形成されているため熱膨張についてはほとんど無視することができるが、ルーフパネル14は樹脂で成形されているため、高温環境下において、熱膨張してしまう。この熱膨張により、図4の実線で示されるように、ルーフパネル14が車両上方へ向かって膨らもうとした場合、ルーフパネル14に結合されたルーフリインフォース26を介して結合部材42には引張り荷重が作用する。
【0040】
この荷重が所定値以上になると、弾性変形により折曲部52、54の成す角度が大きくなり、傾斜部50の傾斜角度が小さくなる。したがって、ルーフパネル14の熱膨張に追従して、結合部材42の長さが伸びてルーフリインフォース26を上方へ移動させることができる。
【0041】
つまり、ルーフパネル14の熱膨張を許容することができる。このため、ルーフパネル14が熱膨張した場合、図3の仮想線で示されるように、当該ルーフパネル14は車両側面視で1つの緩やかな凸状の曲線を描くこととなり、意匠上の問題は生じない。そして、熱膨張したルーフパネル14が復元すると、ルーフパネル14に結合されたルーフリインフォース26を介して結合部材42も復元する(図3の実線)。
【0042】
以上のように、この結合部材42は、所定値未満の荷重では弾性変形しないため、ルーフパネル14の微振動に対しては剛結合となり、所定値以上の荷重が作用すると、弾性変形により柔結合(ルーフパネル14の熱膨張を許容)となる。これにより、熱変形対策とルーフパネル14の振動モードのコントロールとが背反する関係にあるにも拘わらず、ルーフパネル14の熱膨張を許容すると共に、NV性能を満足させることができるという効果が得られる。
【0043】
なお、ルーフパネル14は一般的に上に凸の曲面が形成されているため、ルーフパネル14が熱膨張すると、当該ルーフパネル14は車両上方へ向かって膨む傾向がある。このため、ルーフパネル14の熱膨張によってルーフリインフォース26に作用する荷重を、引張り荷重として説明したが、ルーフパネル14の形状によっては、ルーフリインフォース26を介して結合部材42には圧縮荷重が作用する場合もある。
【0044】
ところで、ルーフリインフォース26の端部には、一対の切欠き部30が互いに対向する位置に設けられており、この切欠き部30は、ルーフサイドレール18とルーフパネル14との結合部40と対向する位置に設けられ、当該結合部40から離間する方向へ向かって凹んでいる。
【0045】
車両の側面衝突時、図5に示されるように、ルーフサイドレール18がルーフリインフォース26側へ変形すると、結合部材42は矩形孔44が設けられていない場合と比較して衝突後早期に座屈変形する。このため、結合部材42を介して、ルーフサイドレール18がルーフリインフォース26側へ案内される。これにより、ルーフサイドレール18とルーフパネル14等の結合部40がルーフリインフォース26の切欠き部30内に入り込み、当該切欠き部30によって結合部40がかみ込まれることができる。
【0046】
これによって、車両の側面衝突時の入力荷重を、ルーフサイドレール18からルーフリインフォース26へ伝達させることができ、車両の変形を最小限に抑えることができる。
また、ルーフサイドレール18とルーフパネル14等の結合部40の車両上下方向の変位を規制することができ、車両の側面衝突時に、ルーフサイドレール18の車室内方向への侵入を抑制することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、ルーフリインフォース26を円筒状に形成しているが、ルーフリインフォース26の端部の切欠き部30は、プレスにより容易に加工可能であり、生産性が良好である。また、ルーフリインフォース26に高周波焼き入れなどを行い、超ハイテン化することにより、ルーフリインフォース26の板厚を薄くすることができる。これにより、ルーフ部12の軽量化も可能となる。また、ここでは、樹脂製のルーフパネル14について説明したが、アルミニウム製のルーフパネルであって良いのは勿論のことである。さらに、車両の変形を最小限に抑えるという観点では、鋼板製のルーフパネルを用いても良い。
【0048】
<変形例>
(1)本実施形態では、図2に示されるように、結合部材42に形成された矩形孔44の周壁44Aに折曲部52、54を設けたが、結合部材42の長手方向に沿って所定値以上の荷重が作用すると、当該結合部材42が弾性変形すれば良いため、これに限るものではない。
【0049】
例えば、図6に示されるように、結合部材42の矩形孔44の周壁44Aに、上に凸状に湾曲したビード部60を設けても良い。なお、ここでは、上に凸に湾曲したビード部60について説明したが、下に凸状に湾曲したビード部であっても勿論良く、また、ビード部を屈曲させて形成しても良い。また、図示はしないが、矩形孔44の周壁44Aに孔部を形成し、当該孔部の形状を変えることで弾性変形させるようにしても良い。
【0050】
また、以上の構成では、結合部材42の矩形孔44の周壁44Aを弾性変形し易くするため、矩形孔44の周壁44Aを加工したが、そもそも結合部材42に矩形孔44を形成することで、当該矩形孔44が形成された領域は弱体部となっているため、矩形孔44の周壁44Aに加工を施さない状態で、当該矩形孔44の形状を変えることで弾性変形させても良い。この場合、矩形孔44の周壁44Aに傾斜部50やビード部60を設けなくても良くなるので、結合部材42の加工性が向上する。但し、結合部材42において、この矩形孔44は必ずしも必要ではなく、矩形孔44が形成されていない場合は、結合部材42の幅方向の全域に亘って引張り方向に伸長可能な折曲部やビード部が必要となる。
【0051】
(2)本実施形態では、図1に示されるように、ルーフリインフォース26の端部の互いに対向する位置に、略台形状の切欠き部30を設けて、ルーフサイドレール18とルーフパネル14との結合部40と対向する位置に配置されるようにしたが、少なくとも当該結合部40がルーフリインフォース26の下方へ潜らないようにすることができれば良いため、これに限るものではない。
【0052】
例えば、図7(A)に示されるように、ルーフリインフォース26の端部に、車両下部へ向かうにつれて、ルーフサイドレール18とルーフパネル14との結合部40側へ近接する傾斜部62を設けても良い。これによると、車両の側面衝突時、ルーフサイドレール18とルーフパネル14との結合部40がルーフリインフォース26の傾斜部62に当接すると、傾斜部62によって入力荷重の分力が発生し、当該傾斜部62の傾斜面62Aに沿って、結合部40を車両の斜め上方へ向かわせる力が作用する。したがって、ルーフサイドレール18とルーフパネル14との結合部40がルーフリインフォース26の下方へ潜らないようにすることができる。
【0053】
また、これ以外にも、図7(B)に示されるように、ルーフリインフォース26の端部の下部を受部64として残し、それ以外の部分を正面視で略L字状に切り落としても良い。これによると、車両の側面衝突時、ルーフサイドレール18とルーフパネル14との結合部40がルーフリインフォース26の端部に当接すると、当該結合部40はルーフリインフォース26の受部64によってルーフリインフォース26の下方への変位が規制され、ルーフリインフォース26の下方へ潜らないようにすることができる。
【0054】
なお、ルーフリインフォース26の端部の形状については、必須の要素ではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
10 車両
12 ルーフ部
14 ルーフパネル
26 ルーフリインフォース
30 切欠き部(凹部)
40 結合部
42 結合部材
44A 周壁(弱体部)
52 折曲部
54 折曲部
60 ビード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフ部の車両前端部と後端部に結合された樹脂製又はアルミニウム製のルーフパネルと、
前記ルーフ部の車両前端部と後端部の間に、車幅方向に沿って延設され、前記ルーフパネルが結合されたルーフリインフォースと、
前記ルーフリインフォースから所定値以上の荷重が作用すると伸縮方向へ弾性変形する弱体部が設けられ、前記弱体部を介して、前記ルーフリインフォースの長手方向の端部と前記ルーフ部の車幅方向両端部に車両前後方向に沿って延設されたルーフサイドレールとがそれぞれ結合された結合部材と、
を有する車両用ルーフパネル構造。
【請求項2】
前記弱体部に、当該弱体部を伸縮させる折曲部又はビード部が形成された請求項1に記載の車両用ルーフパネル構造。
【請求項3】
前記ルーフリインフォースの長手方向の端部は、前記結合部材と前記ルーフサイドレールとの結合部と対向しており、前記端部における、前記結合部の水平位置よりも下部が、前記ルーフサイドレール側へ向かって突出している請求項1又は2に記載の車両用ルーフパネル構造。
【請求項4】
前記ルーフリインフォースの長手方向の端部において、前記結合部と対向する位置に該結合部から離間する方向へ向かって凹む凹部が形成された請求項3に記載の車両用ルーフパネル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−25311(P2012−25311A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167628(P2010−167628)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】