説明

車両用ルーフラックおよび車両

【課題】騒音を低減する。
【解決手段】記憶部43は、制御部41により検出された翼形状回転部33の回動位置を示す位置情報、マイク21により検出された音声情報、及び振動センサ23により検出された振動情報を記憶し、制御部41は、記憶部43に記憶された位置情報と音声情報または振動情報を読み出し、翼形状回転部33を音声または振動が最も小さい位置に回動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のルーフ上に取り付けられるルーフラックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クロスバーの振動音や、振動に伴う風切り音などの騒音を抑制できるよう、クロスバーの傾斜角を調整可能な車両用ルーフラックが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この車両用ルーフラックは、平坦な上面を有し車幅方向を長軸とするクロスバーを回動することで、その傾斜角を、車両前後方向に対して調節することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−227531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この車両用ルーフラックにおいては、クロスバーを車外で調整しなくてはならないため、車両走行中に風向きが変化したときにはクロスバーを調整することができず、風切り音やクロスバーの振動音が大きくなる場合がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、車両走行中にクロスバーの駆動を可能とし、クロスバー近傍から発する騒音を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における車両用ルーフラックは、車両のルーフ上に取り付けられ、積載物を支持可能であって、車両前後方向に対する傾斜が可変である翼部と、前記翼部の傾斜を変更するよう駆動する駆動部と、前記翼部近傍の振動を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記振動に基づいて、前記振動が小さくなるように前記駆動部を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明における車両用ルーフラックによれば、クロスバー近傍で検出された振動に基づいて、振動を小さくするように制御することで、車両走行中にクロスバー近傍の振動による騒音を低減することができる。
【0009】
また、前記翼部は、車幅方向を長軸として、車両のルーフ状に取り付けられることが好適である。
【0010】
また、前記翼部を車両のルーフ上に支持する脚部を備え、前記検出部は、前記脚部に取り付けられて、前記脚部の振動を検出することが好適である。
【0011】
翼部を支持する脚部の振動に基づいて、振動を小さくするように制御することで、クロスバーの振動による騒音を低減することができる。
【0012】
また、前記検出部は、前記翼部近傍の空気の振動を検出するマイクであって、前記制御部は、前記検出部により検出された音声に基づいて、前記音声を小さくするように前記駆動部を制御することも好適である。
【0013】
クロスバー近傍で検出された音声(空気の振動)に基づいて、音声を小さくするように制御することで、風切り音を低減することができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記検出部により検出された振動が所定値以上のときに、前記駆動部を制御することが好適である。
【0015】
振動が所定値以上のときのみ駆動部を制御することによって、必要なときだけクロスバーを駆動して、騒音を抑えることができる。
【0016】
また、前記駆動部の駆動を動作及び禁止することをユーザが切り替え可能な操作部を備えることが好適である。
【0017】
駆動部の駆動をユーザが禁止することができるので、ユーザが所望するときにのみ、騒音を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クロスバー近傍から発する騒音を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、ルーフラック10の概略構造について、図1及び図2を参照して説明する。
【0020】
図1は、ルーフラック10を車両1のルーフ上に設置した状態を車両1の斜め左方向から見た斜視図である。図2は、図1のルーフラック10付近を拡大した図である。
【0021】
ルーフラック10は、脚部20、及びクロスバー30を有する。
【0022】
脚部20は、車両1のルーフ上の両側側縁部にそれぞれ取り付けられ、クロスバー本体30をルーフの所定距離上方に支持する。図1に示すように、ルーフラック10は、車両1の前方側と後方側に1つずつ設けられる。
【0023】
クロスバー30は、クロスバー本体31と翼形状回転部33を有する。
【0024】
クロスバー本体31は、車幅方向を長軸とする円柱状の部材である。クロスバー本体31は、脚部20の内側縁部に固定され、その外周によって翼形状回転部33を回動可能に支持する。
【0025】
翼形状回転部33は、車幅方向を長軸とする板状の部材である。翼形状回転部33の長軸に垂直な断面は、下辺と上辺が膨出した略扇状であり、その中央部分に、クロスバー本体31を挿入するための開口部が上辺に接して形成されている。翼形状回転部33は、開口部にクロスバー本体31を挿入することでクロスバー本体31に支持され、クロスバー本体31を軸として、車幅方向に垂直に回動することができる。
【0026】
次に、本実施形態におけるルーフラック10の構成について、図3を参照して、より詳細に説明する。図3は、ルーフラック10の構造を示しており、(a)は上面視断面図であり、(b)は側面視断面図である。
【0027】
ルーフラック10は、上述した脚部20、クロスバー30、ルーフラックECU(Electronic Control Unit)40、及び操作部50を有する。
【0028】
脚部20には、マイク21、振動センサ23、モータ25、及びギア27が収容される。
【0029】
マイク21は、脚部20周囲の音声を検出し、音声情報をルーフラックECU40に送信する。マイク21は、脚部20の上面に設置されている。音声も空気の振動であり、マイク21は、この振動を電気信号に変換して、音声情報として出力する。したがって、マイク21は、クロスバー30近傍の風切り音を検出することができる。
【0030】
振動センサ23は、脚部20の振動を検出し、振動情報をルーフラックECU40に送信する。振動センサ23は、脚部20の上面に設置されている。振動センサ23としては、例えば、圧電素子を利用して振動に応じた電気信号を振動情報として出力する圧電型加速度ピックアップ等各種のものがあり、それらを適宜採用可能である。
【0031】
モータ25は、脚部20に内蔵され、ルーフラックECU40から供給される電力により所定量回転される。モータ25としては、回転量の制御が容易なステッピングモータなどが好適である。
【0032】
ギア27は、モータ25の回転軸に接続され、車幅方向内側に突出している。ギア27は、モータ25の回転力を翼形状回転部33に伝達し、翼形状回転部33を駆動(回動)する。
【0033】
翼形状回転部33は、ギア27から伝達される回転力により、クロスバー本体31を軸として、車幅方向に対し垂直に回動する。
【0034】
ルーフラックECU40は、マイク21から送信される音声情報、及び振動センサ23から送信される振動情報に基づいて、モータ25を制御し、翼形状回転部33を回動する。ルーフラックECU40は、制御部41と記憶部43を有する。また、ルーフラックECU40は、車両1の電源から供給される電力により動作し、モータ25を制御するときには、モータ25に電力を供給して回転させる。
【0035】
記憶部43は、制御部41から送信される翼形状回転部33の回動位置を示す位置情報と、マイク21から送信される音声情報及び振動センサ23から送信される振動情報を受信し、位置情報と音声情報及び振動情報をセットで記憶する。
【0036】
制御部41は、マイク21及び振動センサ23から送信される音声信号及び振動信号が所定値以上のときに、翼形状回転部33の角度を調節する。すなわち、制御部41は、記憶部43に記憶された音声情報及び振動情報を読み出し、これらが所定値以上のときに、音声信号及び振動信号が小さくなるように、モータ25を制御して翼形状回転部33の角度を調節する。
【0037】
制御部41は、翼形状回転部33の角度調節時には、翼形状回転部33を回動可能な全ての位置に回動させる。そして、制御部41は、翼形状回転部33の回動位置を示す位置情報を検出し、記憶部43に送信する。それとともに、翼形状回転部33が回動した全ての位置における音声情報及び振動情報が、マイク21または振動センサ23から送信され、制御部41から送信された位置情報と対応するように記憶部43に記憶される。そして、制御部41は、翼形状回転部33の回動位置を、記憶部43に記憶されたもののうち、音声または振動が最小となる位置になるよう調節する。位置情報は、ギア27の回転位置を検出するセンサにより検出することが好適であるが、モータ25の回転量に基づいて検出しても構わない。
【0038】
なお、音声または振動が所定値以上であった場合に、制御部41は、翼形状回転部33を一方向に1ステップ回動し、そのときの音声または振動が減少するかを判定し、振動が増加した場合には、翼形状回転部33の位置を元に戻した後、反対方向に1ステップ回動するように制御してもよい。この場合、音声または振動が所定値以下になった時点、または減少がなくなった時点で、回転を中止すればよい。
【0039】
操作部50は、ユーザの操作によって、ルーフラックECU40の動作を行うか否かを決定する。操作部50は、インパネなど車室内に設置された押しボタンであってもよいし、ナビゲーション装置などの画面上のタッチパネル、あるいは、リモコンに設置された押しボタンなどであってもよい。操作部50がユーザの操作によりオンになると、ルーフラックECU40が動作することができる。また、制御部41が音声情報と振動情報のどちらに基づいて翼形状回転部40の角度を調整するかを、ユーザが操作部50を操作することにより選択できるものとしてもよい。
【0040】
次に、本実施形態における翼形状回転部33の角度を調整する際の動作について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0041】
まず、S1において、制御部41は、記憶部43に記憶された音声情報及び振動情報を読み出し、音声または振動の大きさが所定値以上か否かを判定する。音声または振動が所定値未満のときは、所定時間後に再びS1の処理を行う。音声または振動が所定値以上のときは、S2に進む。
【0042】
次に、S2において、制御部41は、モータ25を制御して、翼形状回転部33を回動させる。このとき制御部は、記憶部43に記憶された位置情報を読み出し、翼形状回転部40を読み出した位置情報と異なる位置になるよう回動させる。また、制御部41は、回動させた翼形状回転部33の位置情報を記憶部43に送信する。
【0043】
次に、S3において、マイク21及び振動センサ23は、音声情報及び振動情報を検出し、検出した音声情報及び振動情報をルーフラックECU40の記憶部43に送信する。
【0044】
次に、S4において、記憶部は、制御部41から送信された位置情報と、マイク21から送信された音声情報、及び振動センサ23から送信された振動情報をセットとして記憶する。
【0045】
次に、S5において、制御部41は、記憶部43に記憶された位置情報、音声情報、及び振動情報を読み出し、翼形状回転部33が回動可能な全位置の位置情報、音声情報、及び振動情報を記憶したか否か判定する。位置情報、音声情報、及び振動情報が、記憶部43に記憶されていない位置があるときは、ルーフラック10は再びS2からの動作を行う。全位置の位置情報、音声情報、及び振動情報が記憶されているときには、S6に進む。
【0046】
S6において、制御部41は、記憶部43に記憶された音声情報または振動情報を読み出し、音声または振動の大きさを比較する。
【0047】
そして、S7において、制御部41は、音声または振動が最も小さい音声情報または振動情報と対応する位置情報を抽出し、翼形状回転部33が抽出した位置情報と一致する位置となるよう、モータ25を制御して翼形状回転部33を回動させる。以上でルーフラック10の翼形状回転部33の角度を調整する際の動作を終了する。
【0048】
なお、上記実施形態では、ルーフラック10はマイク21と振動センサ23の両方を有するものとしたが、マイク21または振動センサ23のうちいずれか一方を有するものとしてもよい。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、ルーフラックECUが、クロスバー近傍で検出された振動に基づいて、振動を小さくするようにクロスバーを駆動するので、クロスバー近傍の振動による騒音を低減することができる。
【0050】
また、クロスバーを支持する脚部の振動に基づいて、振動を小さくするようにクロスバーを駆動するので、クロスバーの振動による騒音を低減することができる。
【0051】
また、ルーフラックECUが、クロスバー近傍で検出された音声(空気の振動)に基づいて音声を小さくするようにクロスバーを駆動するので、風切り音を低減することができる。
【0052】
また、検出される振動または音声が所定値以上のときのみクロスバーを駆動するので、必要なときだけクロスバーを駆動して騒音を低減することができる。
【0053】
また、ユーザの操作により駆動部の動作を禁止することができるので、ユーザが所望するときにのみ、騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ルーフラックを車両のルーフ上に設置した状態を車両斜め左方向から見た斜視図である。
【図2】図1のルーフラック付近を拡大した図である。
【図3】ルーフラックの構造を示し、(a)は上面視断面図であり、(b)は側面視断面図である。
【図4】ルーフラックの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1 車両、10 ルーフラック、20 脚部、21 マイク、23 振動センサ、30 クロスバー、31 クロスバー本体、33 翼形状回転部、40 ルーフラックECU、41 制御部、43 記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフ上に取り付けられ、積載物を支持可能であって、車両前後方向に対する傾斜が可変である翼部と、
前記翼部の傾斜を変更するよう駆動する駆動部と、
前記翼部近傍の振動を検出する検出部と、
前記検出部により検出された振動に基づいて、前記振動を小さくするように前記駆動部を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする、
車両用ルーフラック。
【請求項2】
前記翼部は、車幅方向を長軸として、車両のルーフ状に取り付けられることを特徴とする、
請求項1に記載の車両用ルーフラック。
【請求項3】
前記翼部を車両のルーフ上に支持する脚部を備え、
前記検出部は、前記脚部に取り付けられて、前記脚部の振動を検出することを特徴とする、
請求項1または2に記載の車両用ルーフラック。
【請求項4】
前記検出部は、前記翼部近傍の音声を検出するマイクであり、
前記制御部は、前記検出部により検出された音声に基づいて、前記音声を小さくするように前記駆動部を制御することを特徴とする、
請求項1または2に記載の車両用ルーフラック。
【請求項5】
前記制御部は、前記検出部により検出された振動が所定値以上のときに、前記駆動部を制御することを特徴とする、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用ルーフラック。
【請求項6】
前記駆動部の駆動を許可または禁止することを設定可能な操作部を備えることを特徴とする、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用ルーフラック。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用ルーフラックを備えた、車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−36744(P2010−36744A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202551(P2008−202551)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】