説明

車両用不織布素材

【課題】乾熱収縮率や耐熱老化性に優れ、地球温暖化抑制効果を有する車両用不織布天井材を提供する。
【解決手段】とうもろこしや砂糖きびや小麦などの植物に由来する原料からなるエチレングリコールと、石油や石炭などの化石原料からなるジメチレンテレフタレートとから作成したポリエチレンテレフタレート樹脂を短繊維とし、これをニードルパンチ法など公知の交絡方法で不織布を作成し、発泡したアクリル樹脂駅を塗布して車両用不織布天井材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両や産業用に使用する植物由来の不織布で、特に自動車に用いるニードルパンチ不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用に広く不織布が利用されており、特に自動車のトランクマットやドアトリムや天井材として多部所に活用されている。
【0003】
近年、石油資源の枯渇や二酸化炭素など温暖化ガスの増加により、資源環境問題が深刻化しており環境負荷の低減が必要となっている。資源環境問題を解決する方法として、植物に由来した材料によりカーボンニュートラルで二酸化炭素による地球温暖化を抑制する試みがされている。
【0004】
植物由来の繊維としてポリ乳酸(PLA)短繊維(特許文献1)の使用や、ポリ乳酸(PLA)短繊維とポリメチレンテレフタレート(PTT)短繊維とを組み合わせた不織布が知られている(特許文献2)。さらに、植物に由来するポリエチレンテレフタレート(PET)については(特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−09889号公報
【特許文献2】特開2007−314913号公報
【特許文献3】特開2010−280750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PLAを使用すると耐熱性に問題があり、PTTでは短繊維を不織布に加工する際カーディングなどの生産性に不完全である。他の植物由来の素材として、ケナフは臭気があり耐光性に不十分であり、竹は繊維への着色が難しく耐光性も不十分など、車両用不織布素材として優れた品質を保持するのが難しかった。
【0007】
本発明は、植物由来の繊維のもつ地球温暖化抑制効果を保持すると共に、品質の問題点を解決する優れた車両用不織布素材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために創意検討した結果、ジメチレンテレフタレートと植物に由来するエチレングリコールとを組み合わせることで作成したポリエチレンテレフタレート樹脂からなる短繊維を使用して不織布を生産することにより、車両用不織布素材として優れた品質を保持すると共に、地球温暖化抑制効果を得ることを見出した。
【0009】
請求項1.においては、本車両用不織布素材として使用する短繊維がジメチレンテレフタレートと植物由来のエチレングリコールとからなるポリエチレンテレフタレートによることを特徴としている。
【0010】
請求項2.は車両用不織布素材のなかでも天井材とし、樹脂を加工することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、植物に由来する化合物を使用してポリエチレンテレフタレートを合成し、そのポリエチレンテレフタレートからなる短繊維で不織布を作ることにより、地球温暖化抑制効果を保持する車両用不織布素材を得て、従来の化学合成品のみを原料としたポリエチレンテレフタレートと同等の品質を保持して、自動車産業の環境問題への対応の一躍を担うものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に使用する不織布原料となる、ポリエチレンテレフタレート短繊維は、植物由来のエチレングリコールと化学合成品であるジメチレンテレフタレートとから、作成される。
【0013】
使用するジメチレンテレフタレートは石油や石炭などの化石原料からなる。
【0014】
また、植物由来のエチレングリコールは、とうもろこしや砂糖きびや小麦などの植物に由来する原料からなる。
【0015】
使用する短繊維としては0.5−10dtexが好ましい。10dtexより大きくなると触感が悪くなり、0.5dtexより小さいと溶融紡糸が困難となる。
【0016】
繊維長としては、5−200mmが好ましい。
【0017】
目付量としては100−500g/mが好ましい。500g/mより大きくなると原材料コストが高くなり車両用不織布天井材としての使用が難しく、100g/mより小さいと成型により車両用不織布天井材を作成する時に透けるなどの外観不良となる。
【0018】
短繊維の交絡方法としては、ニードルパンチ法やスパンボンド法など公知の方法を使用することができるが、素材としての厚みを保持する点でニードルパンチ法が好ましい。
【0019】
積層し交絡した不織布シートは、耐摩耗性付与のために樹脂加工を行う。使用する樹脂としては、アクリル樹脂やウレタン樹脂などを車両用不織布天井材としての品質を保持させるために適宜使用することができる。この中でもアクリル樹脂が価格や耐光性の点でより好ましい。
【0020】
樹脂加工としては、含浸や塗布など公知の加工手段を適宜使用できるが、樹脂を発泡させ不織布シートに塗布する方法が、風合いと耐摩耗性に優れるため好ましい。
【実施例】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態をより明確にするために、実施例及び比較例の一部を記載して説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例1】
【0022】
植物由来のエチレングリコールを含むポリエチレンテレフタレート短繊維である、繊維径3.3dtexで繊維長が51mmである帝人ファイバー社製のプラントPET N−0872 を使用してニードルパンチ法により目付190g/mの不織布を作成した。作成した不織布に発泡したアクリル樹脂液を塗布して(乾燥重量10g/m)車両用不織布天井材とした。
【0023】
(比較例1)
植物由来のエチレングリコールを使用しないポリエチレンテレフタレート短繊維である、繊維径3.3dtexで繊維長が51mmである帝人ファイバー社製D−0866を使用して、実施例1と同様の目付及び加工により、車両用不織布天井材を作成した。
【0024】
(比較例2)
植物由来のポリ乳酸(PLA)からなる短繊維(繊維径3.3dtexで繊維長が51mm)を使用して、実施例1と同様の目付及び加工により、車両用不織布天井材を作成した。
【0025】
目付量は、JIS L 1096に準拠して測定した。厚みは、JIS L 1096に準拠して測定した。
【0026】
乾熱収縮率は、JIS L 1909に準拠し、100℃で1時間放置後の寸法変化率を測定した。数値が小さいほど熱収縮しにくいことを示し、車両用不織布素材としては、1%より小さいことが望ましい。1%より大きくなると、表皮の剥がれや膨れにより車両用不織布素材としては不十分である。
【0027】
耐熱老化性は、5cm角のサンプルを85℃で400時間放置後、その変色具合をJIS L 0804に準拠した変退色用グレースケールで級判定した。級の数値の大きい方が変退色しにくいことを示す。車両用不織布素材としては4級以上であることが好ましく、4級より低いと表皮の変色が見られ車両用不織布素材としての使用には不向きである。
【0028】
総合評価は、評価結果を基に、判定したもので、○は車両用不織布素材として優れた品質を保持することを示し、×は車両用不織布素材として使用するには品質が不十分である。
【0029】
【表1】

【0030】
表1.の結果より、実施例1は比較例1と遜色ない品質を保持し、植物由来の原料を使用しても車両用不織布素材として優れた、乾熱収縮率や耐熱老化性を示した。比較例2は、乾熱収縮率や耐熱老化性に低下がみられ、植物由来であっても実際の使用に当たって不満足なことがわかる。
【0031】
本発明の車両用不織布素材は、植物由来の原料を使用して、優れた品質を保持するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチレンテレフタレートと植物由来のエチレングリコールとからなるポリエチレンテレフタレートを使用して短繊維を作成し、該短繊維を含む不織布を用いることを特徴とする車両用不織布素材。
【請求項2】
樹脂加工を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用不織布天井材。

【公開番号】特開2012−214939(P2012−214939A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92451(P2011−92451)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000109037)ダイニック株式会社 (55)
【Fターム(参考)】