説明

車両用乗員保護装置

【課題】 エアバッグ装置及び膝保護装置からなる車両用乗員保護装置の製造費を低減する。
【解決手段】エアバッグ装置3のガス発生手段たるインフレータ32を膝保護装置4の伸張手段たるガスシリンダ41に連通管8を介して接続する。インフレータ32が発生したガスによってガスシリンダ41のロッド41bを伸張させ、車両の衝突時に乗員の膝Hが突き当たるグローブボックス2の蓋体2に当接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗員の上半身及び膝を保護するための車両用乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用乗員保護装置は、エアバッグ装置と膝保護装置とによって構成されている。エアバッグ装置は、折り畳んだ状態で収納されたエアバッグと、このエアバッグにガスを供給して膨張展開させるガス発生手段とを備えている。一方、膝保護装置は、下記特許文献1に開示されているように、車両の衝突時に前方へ移動する膝に突き当たることによって膝のそれ以上の移動を阻止する保護部材と、膨張展開して保護部材に突き当たることによって保護部材の前方への移動を阻止するエアバッグと、このエアバッグにガスを供給して膨張展開させるガス発生手段とを備えている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−105660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用乗員保護装置を構成するエアバッグ装置と膝保護装置とは、互いに独立して設けられていた。このため、従来の車両用乗員保護装置は、製造費が嵩むという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記の問題を解決するために、ガス発生手段と、このガス発生手段から供給されるガスにより乗員の上半身に向かって膨張させられるエアバッグと、乗員の膝と対向するように配置された膝保護部材と、この膝保護部材の前方に伸張可能に配置され、伸張時には上記膝保護部材に突き当たることによって上記膝保護部材の前方への移動を阻止する伸張手段とを備えた車両用乗員保護装置において、上記伸張手段としてガスによって伸張する形式の伸張手段が用いられ、上記ガス発生手段から発生されるガスによって上記伸張手段が伸張するよう、上記ガス発生手段を上記伸張手段に接続したことを特徴としている。
この場合、上記伸張手段としてガスシリンダが用いられ、上記膝保護部材として車両に設けられたグローブボックスの蓋体が用いられ、上記ガスシリンダのロッドが伸張時に上記蓋体に突き当たるように、上記ガスシリンダのロッドが上記グローブボックスの内部に臨んで配置されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、エアバッグ装置のガス発生手段が、膝保護装置の伸張手段を伸張させるためのガス発生手段として兼用されている。したがって、膝保護装置用のガス発生手段が不要になり、その分だけ車両用乗員保護装置の製造費を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係る車両用乗員保護装置が設けられた車両の前部を示す断面図である。なお、以下の説明において「前後、左右」は車両の前後、左右を意味するものとする。図1において符号1は、インストルメントパネルである。インストルメントパネル1は、車体(図示せず)に取り付けられている。インストルメントパネル1の下側には、グローブボックス2が配置されている。グローブボックス2は、車体に直接に、又はインストルメントパネル1を介して取り付けられている。インストルメントパネル1及びグローブボックス2の前方側には、エアバッグ装置3及び膝保護装置4が設けられている。エアバッグ装置3及び膝保護装置4によってこの発明に係る車両用乗員保護装置が構成されている。
【0008】
エアバッグ装置3は、キャニスタ31を有している。キャニスタ31は、インストルメントパネル1の前斜め下方に配置されており、車体の一部であるステアリングビーム5にブラケット6,7を介して固定されている。キャニスタ31の内部には、爆薬を内蔵したインフレータ(ガス発生手段)32及び折り畳まれたエアバッグ33が収容されている。インフレータ32は、車両の衝突時に窒素ガス等の多量のガスを発生してエアバッグ33に供給する。すると、エアバッグ33が膨張展開する。膨張展開したエアバッグ33は、インストルメントパネル1を所定のパターンに破断して車内に膨出する。そして、乗員の上半身に突き当たる。これによって、乗員の上半身を保護する。なお、インフレータ32は、ガスを発生するものであれば、公知の各種のものを採用することができる。
【0009】
膝保護装置4は、グローブボックス2の蓋体21を膝保護部材として利用している。すなわち、車両の衝突時に乗員の膝Hが前方へ移動すると蓋体21の上部に突き当たる。そこで、蓋体21を膝保護部材として利用したものである。なお、蓋体21は、グローブボックス2の本体部22に左右方向に延びる水平な回動軸線23を中心として回動可能に連結されている。
【0010】
本体部22の後方には、ガスシリンダ(伸張手段)41が設けられている。ガスシリンダ41は、その本体41aにガスが供給されると、ロッド41bが伸張(前進移動)するタイプのものであり、本体部41aが車体に取り付けられている。この場合、ガスシリンダ41は、その軸線と蓋体21との交差部に膝Hが突き当たるように配置されている。
【0011】
ガスシリンダ41は、エアバッグ装置3のインフレータ32に連通管8を介して接続されている。したがって、インフレータ32がガスを発生すると、そのガスがガスシリンダ41に供給され、ロッド41bが伸張する。ロッド41bは、蓋体21に突き当たるまで伸張して停止する。
【0012】
ロッド41bの先端部には、板材41cが設けられている。したがって、ロッド41bの伸張時には、ロッド41bが板材41cを介して蓋体21に突き当たる。板材41cは、ロッド41bより大きな面積を有しており、板材41cの周縁部がロッド41bから突出するように配置されている。これにより、膝Hがガスシリンダ41の軸線と蓋体21との交差部から若干離間した箇所において蓋体21に突き当たったとしても、膝Hの前方への移動を十分に阻止することができるようになっている。また、板材41cは、ロッド41bが退縮しているとき、つまりガスシリンダ41へのガスの供給が行われていないときには、グローブボックス2の内部に臨むんで、しかも本体部41aの内面に沿うように配置されている。したがって、ロッド41b及び板材41cは、グローブボックス2の内部空間をほとんど狭めることがなく、グローブボックス2の内部空間を有効に利用することができる。
【0013】
エアバッグ装置3及び膝保護装置4を有する上記車両用乗員保護装置において、インフレータ32がガスを発生すると、エアバッグ3が膨張して乗員の上半身を保護する。また、インフレータ32が発生したガスは、連通管8を介してエアシリンダ41に供給される。この結果、ロッド41bが伸張し、蓋体21に板材41cを介して突き当たる。したがって、車両の衝突によって前方へ移動した膝Hは、蓋体21に突き当たることによってそれ以上前方へ移動することが阻止される。
【0014】
このように、この発明の車両用乗員保護装置によれば、エアバッグ装置3のインフレータ32を膝保護装置4のガスシリンダ41用のガス発生手段として兼用しているので、膝保護装置4専用のガス発生手段が不要になる。したがって、その分だけ乗員保護装置に要する費用を低減することができる。
【0015】
また、一つのインフレータ32がエアバッグ33とガスシリンダ41とにガスを供給しているので、エアバッグ33の膨張とガスシリンダ41の伸張とを確実に同期させることができ、各車両毎にエアバッグ33の膨張とガスシリンダ41の伸張とに時間的なばらつきが発生するのを防止することができる。
【0016】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、伸張手段としてガスシリンダ41が用いられているが、ガスシリンダ41に代えてガスによって膨張展開するエアバッグを用いてもよい。これらか明らかなように、この発明において「伸張」とは、膝保護部材に向かって移動ないし伸びることのみならず、膝保護部材に向かって膨張することをも含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0018】
2 グローブボックス
3 エアバッグ装置
4 膝保護装置
8 連通管
21 蓋体(膝保護部材)
32 インフレータ(ガス発生手段)
33 エアバッグ
41 ガスシリンダ(伸張手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発生手段と、このガス発生手段から供給されるガスにより乗員の上半身に向かって膨張させられるエアバッグと、乗員の膝と対向するように配置された膝保護部材と、この膝保護部材の前方に伸張可能に配置され、伸張時には上記膝保護部材に突き当たることによって上記膝保護部材の前方への移動を阻止する伸張手段とを備えた車両用乗員保護装置において、
上記伸張手段としてガスによって伸張する形式の伸張手段が用いられ、
上記ガス発生手段から発生されるガスによって上記伸張手段が伸張するよう、上記ガス発生手段を上記伸張手段に接続したことを特徴とする車両用乗員保護装置。
【請求項2】
上記伸張手段としてガスシリンダが用いられ、上記膝保護部材として車両に設けられたグローブボックスの蓋体が用いられ、上記ガスシリンダのロッドが伸張時に上記蓋体に突き当たるように、上記ガスシリンダのロッドが上記グローブボックスの内部に臨んで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用乗員保護装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−168524(P2007−168524A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366242(P2005−366242)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】