説明

車両用乗員覚醒装置

【課題】目的地に到着する前に、もしくは、乗員が設定した目覚まし時刻に、乗員を快適かつ確実に目覚めさせることが可能な車両用乗員覚醒装置を提供する。
【解決手段】車両の現在位置から設定された目的地までの案内経路を検索する案内経路検索手段と、車両の乗員の生体情報を検出する生体情報検出手段と、生体情報に基づき、乗員の睡眠状態を判定する睡眠状態判定手段と、乗員を覚醒状態とする覚醒タイミングを設定する覚醒タイミング設定手段と、車両に取り付けられ、睡眠状態にある乗員を覚醒状態とする覚醒機器と、案内経路上における車両の現在位置,乗員の睡眠状態,および覚醒タイミングに基づいて、覚醒機器を動作制御する覚醒機器制御手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員を覚醒させるための車両用乗員覚醒装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の走行に伴ってGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)等により現在位置を検出し、その現在位置を表示装置上に道路地図と共に表示して、出発地から目的地までの適切な経路を設定し、表示装置や音声出力装置などによって案内する車両用ナビゲーション装置は、ユーザの効率的で安全な運転に貢献している。
【0003】
また、車両用ナビゲーション装置と連携して、目的地あるいは目的地の手前で覚醒用の光を乗員に照射することによって乗員を覚醒させる車両用覚醒照明装置の制御装置が考案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−27534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運転者以外の乗員は眠っていることもある。この場合、特許文献1の例では、目的地あるいは目的地の手前で、乗員は起こされることになるが、睡眠の状態によらず否応なく叩き起こされることになり(あるいは寝たままの状態で放置される)、折角目的地に到着しても、快適に目覚めることができず、暫くの間は半分眠った状態が続き、目的地での楽しみが半減してしまうこともある。
【0006】
また、特許文献1の例では、覚醒のための手段が照明装置しかなく、眠っている乗員が気付かないこともあり得る。
【0007】
上記問題を背景として、本発明の課題は、目的地に到着する前に、もしくは、乗員が設定した目覚まし時刻に、乗員を快適かつ確実に目覚めさせることが可能な車両用乗員覚醒装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するための車両用乗員覚醒装置は、車両の乗員の生体情報を検出する生体情報検出手段と、生体情報に基づき、乗員の睡眠状態を判定する睡眠状態判定手段と、乗員を覚醒状態とする覚醒タイミングを設定する覚醒タイミング設定手段と、車両に取り付けられ、睡眠状態にある乗員を覚醒状態とする覚醒機器と、乗員の睡眠状態および覚醒タイミングに基づいて、覚醒機器を動作制御する覚醒機器制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によって、車内で少し睡眠をとった後に、仕事など何らかの作業を行いたいときに、乗員がセットした目覚め時時刻、もしくは目覚め時刻に近い時刻までで、気持ちよく目覚めることができる睡眠状態で乗員を目覚めさせる事ができる。また、職業上あるいは社会的立場上、降車した際に眠たそうな表情を見せることができない人もいるが、車内で睡眠をとらざるを得ない場合、目的地で降車する前に余裕を持って目覚めることができ、その人のイメージを損なうことを回避できる。
【0010】
また、上記課題を解決するための車両用乗員覚醒装置は、車両の現在位置を検出する位置検出手段と、道路地図データを記憶する道路地図データ記憶手段と、道路地図データ上の地点を目的地として設定する目的地設定手段と、車両の現在位置から設定された目的地までの案内経路を検索する案内経路検索手段と、車両の乗員の生体情報を検出する生体情報検出手段と、生体情報に基づき、乗員の睡眠状態を判定する睡眠状態判定手段と、乗員を覚醒状態とする覚醒タイミングを設定する覚醒タイミング設定手段と、車両に取り付けられ、睡眠状態にある乗員を覚醒状態とする覚醒機器と、案内経路上における車両の現在位置,乗員の睡眠状態,および覚醒タイミングに基づいて、覚醒機器を動作制御する覚醒機器制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成によって、睡眠状態によらず、目的地に到着するまでに快適に目覚めることができ、目的地での楽しみを満喫できる。目的地や案内経路に関する情報は、車両用ナビゲーション装置から取得すれば、車両用乗員覚醒装置のコストを低減することができる。また、職業上あるいは社会的立場上、降車した際に眠たそうな表情を見せることができない人もいるが、車内で睡眠をとらざるを得ない場合、目的地で降車する前に余裕を持って目覚めることができ、その人のイメージを損なうことを回避できる。
【0012】
心電,脈波,脳波等の生体情報から、精神的ストレスを解析する研究が行われている(非特許文献1参照)。この研究においては、生体情報から睡眠状態や覚醒状態かどうかを判別できることが記載されている。また、脈拍間隔から自律神経(交感神経,副交感神経)のバランスを算出することで、睡眠状態(覚醒,レム睡眠,ノンレム睡眠)を判別する技術が開示されている(非特許文献2参照)。また、脈波センサは指で脈波を計測するものもあり、小型で車両に搭載可能である。これらの技術を用いれば、乗員に煩わしさを感じさせることなく、かつ睡眠の妨げとなることなく睡眠状態を判定することが可能となる。
【0013】
【非特許文献1】「精神的ストレス作業の定量解析」,名護屋大樹 他,東京電機大学大学院工学研究科 平成16年度 博士・修士論文発表会資料(http://www.d.dendai.ac.jp/GuraduateSchool/2004-Final-Presentaion/MasterTheses/03gmd16.pdf),平成20年6月19日検索
【非特許文献2】「快眠のための睡眠判定と睡眠モニタシステム」,東芝レビューVol.61 No.10(http://www.toshiba.co.jp/tech/review/2006/10/61_10pdf/a11.pdf),平成20年6月19日検索
【0014】
また、本発明の車両用乗員覚醒装置における覚醒機器制御手段は、設定した覚醒タイミングよりも予め定められた時間だけ前に覚醒機器の動作を開始し、設定した覚醒タイミングが近づくにつれて、睡眠中の乗員の睡眠状態がより浅くなるように該覚醒機器を動作制御するように構成される。
【0015】
乗員の睡眠状態が深いときに急に起こすと、目覚めた直後は頭がボンヤリした状態が暫く続き、体もなかなか動かすことができない。上記構成によって、睡眠状態が深い状態から目覚めやすい浅い状態へ徐々に移行させることで、乗員を快適に目覚めさせることができる。
【0016】
また、本発明の車両用乗員覚醒装置における覚醒タイミング設定手段は、乗員の覚醒時刻を設定する覚醒時刻設定手段を含み、現在時刻情報を取得する現在時刻情報取得手段を備え、覚醒機器制御手段は、現在時刻が、覚醒時刻から、予め定められた時間だけ前になったときに覚醒機器の動作を開始し、該覚醒時刻までの、睡眠中の乗員に対する時間あたりの覚醒効果が略一定となるように該覚醒機器を動作制御するように構成される。
【0017】
上記構成によって、乗員が覚醒時刻を設定することで、その覚醒時刻までに、睡眠状態が深い状態から目覚めやすい浅い状態へ徐々に移行して、快適に目覚めることができる。
【0018】
また、本発明の車両用乗員覚醒装置は、前記車両の現在位置から設定された前記目的地に到達するまでの時間を算出する到達予想時間算出手段と、現在時刻情報を取得する現在時刻情報取得手段と、を備え、前記覚醒タイミングは、前記到達予想時間と前記現在時刻情報とに基づいて算出される前記到達予想時刻として設定され、前記覚醒機器制御手段は、前記到達予想時刻から、予め定められた時間だけ前に前記覚醒機器の動作を開始し、前記覚醒タイミングまでの、睡眠中の前記乗員に対する時間あたりの覚醒効果が略一定となるように該覚醒機器を動作制御するように構成される。
【0019】
上記構成によって、乗員が覚醒タイミングを設定しなくても、目的地が設定されていれば、車両用ナビゲーション装置と連携することで覚醒タイミングが自動的に設定され、覚醒タイミングまでに、睡眠状態が深い状態から目覚めやすい浅い状態へ徐々に移行して、快適に目覚めることができる。
【0020】
また、本発明の車両用乗員覚醒装置における覚醒機器制御手段は、乗員の睡眠状態が比較的浅い場合は、該乗員に対する覚醒効果が比較的小さくなるように覚醒機器の動作を制御し、乗員の睡眠状態が比較的深い場合は、該乗員に対する覚醒効果が比較的大きくなるように覚醒機器の動作を制御するように構成される。
【0021】
乗員の睡眠状態によらず画一的な覚醒効果が発生するように覚醒機器を動作させると、覚醒地点に到達する前に乗員が目覚めてしまい、睡眠時間を損した気分になる。上記構成によって、乗員は覚醒地点に到達するまで睡眠をとる(楽しむ)ことが可能となり、車内での時間を有効活用することができる。
【0022】
また、本発明の車両用乗員覚醒装置における覚醒機器制御手段は、覚醒タイミングが到来したとき、乗員が覚醒するように、覚醒機器の動作の制御を行うように構成される。
【0023】
上記構成によって、覚醒タイミングが到来したとき、乗員を確実に覚醒させることができる。
【0024】
また、本発明の車両用乗員覚醒装置における覚醒機器制御手段は、乗員の睡眠状態が予め定められた状態にあるときには、覚醒機器の動作の制御を行わないように構成される。
【0025】
上記構成によって、乗員の眠りが浅いときには、覚醒タイミングが到来したときにのみ覚醒機器を動作すればよいので、バッテリの電力消費を抑制できる。また、生体情報検出手段がセンサとしてシートなどに内蔵されていれば、シート上に置かれているのが乗員か荷物かを区別することができる。例えば、乗員が着座して、別途設けられるシートベルト装着検出手段によりシートベルト非装着を検出した場合に、覚醒機器を動作させて、シートベルト非装着警報を行うこともできる。
【0026】
また、本発明の車両用乗員覚醒装置における覚醒機器は、シート位置調整装置,マッサージ器,シート空調装置,エアコン装置,酸素供給装置,オーディオ装置,サンシェード開閉制御装置,車室内照明装置のうちの1つあるいは2つ以上の組合せを用いるように構成される。
【0027】
これらの機器のうち、エアコン装置,オーディオ装置(ラジオを含む),車室内照明装置は、殆どの車両に備えられている。他の機器も装着率が上がってきている。上記構成によって、新たな機器を搭載することなく、既存の車載機器を覚醒機器として活用することで本発明の構成を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の車両用乗員覚醒装置を、図面を参照しながら説明する。図1に車両用乗員覚醒装置300のシステム構成図を示す。車両用乗員覚醒装置300は、睡眠状態演算装置200と車両用ナビゲーション装置100(図1では「ナビ」と表記)と、その他の車載機器(詳細は後述)とを含んで構成される。
【0029】
睡眠状態演算装置200は、生体信号計測装置201,カメラ202,画像処理部203,操作スイッチ205,表示部206,通信IC213,およびこれらが接続された制御部210を含んで構成される。
【0030】
生体信号計測装置201は、例えば、非特許文献2に記載された光電脈波センサが用いられ、検知した脈波データを制御部210に送る。また、心電あるいは心拍から心室の緊張波であるR波を検知し、その結果を心拍を基に自律神経系の活動レベルとその2つの部門である交感神経系と副交感神経系のバランスの測定分析を行う、例えば米国BIOCOM社製のハートリズムスキャナ(非特許文献3の商品紹介ページ参照)のような機器を用いてもよい。または、フィンランドのEMFIT社のベッドセンサなどを用いることで乗員を非拘束で生体情報を検出することができる。(http://www.europrotech.com/Euro/trade/t_emfit4.html)なお、生体信号計測装置201が本発明の生体情報検出手段に相当する。
【0031】
【非特許文献3】疲労科学研究所のホームページ,URL:http://www.fatigue.co.jp/
【0032】
また、生体信号計測装置201として脳波センサを用い、頭部皮膚の電位の変化を検出するようにしてもよい。非特許文献1にあるように、脳波の周波数によって睡眠状態にあるか否かを判定できる。4Hz以下のδ波が発生しているときは深い睡眠状態にあり、4〜8Hzのθ波が発生しているときは眠気がありボンヤリしている状態にある。これらの状態から、脳波の周波数に基づいて後述する睡眠度を算出する。
【0033】
カメラ202は、例えば周知のCCDやCMOS等の撮像素子を用い、車室内の乗員を撮影可能なように1台または複数台設置される。カメラ202で撮影された画像は、画像処理部203へ送られる。画像処理部203は、公知のパターン認識などの技術によって画像の解析を行う画像処理回路を含んで構成される。画像処理部203では、例えば、カメラ202により撮影された画像に一般的な2値化処理を施すことにより、ピクセル毎のデジタル多値画像データに変換する。そして、得られた多値画像データから、一般的な画像処理手法を用いて乗員の顔画像のような所望の画像部分を抽出する。
【0034】
カメラ202により撮影した頭部の傾き,顔の全体(または部分:例えば目や口)の画像を、睡眠状態における、例えばメモリ212に記憶されたマスター画像と比較することで、眠りの深さを判定することができる。
【0035】
操作スイッチ205は、周知のメカニカルスイッチや、表示部206の表示画面上に設けられた周知のタッチパネルとして構成され、乗員の操作により覚醒時刻等の各種の設定入力を行う。なお、操作スイッチ205が本発明の覚醒タイミング設定手段,目的地設定手段,覚醒時刻設定手段に相当する。
【0036】
表示部206は、例えば周知のLCD表示器を含んで構成され、覚醒時刻など各種の設定内容等の必要な情報を表示する。
【0037】
制御部210は、睡眠状態演算部211、および睡眠状態演算部211に接続されるメモリ212を含んで構成される。なお、制御部210が本発明の睡眠状態判定手段,覚醒機器制御手段に相当する。
【0038】
睡眠状態演算部211は、周知のCPU211a,ROM211b,RAM211cを含むマイクロコンピュータとして構成され、CPU211aがROM211bに記憶された制御プログラム211pを実行することで、睡眠状態演算装置200としての機能を実現する。
【0039】
メモリ212は、EEPROM(Electrically Erasable & Programmable Read Only Memory:電気的消去・プログラム可能・読出し専用メモリ)やフラッシュメモリ等の書き換え可能なデバイスによって構成され、睡眠状態演算装置200の動作に必要なデータを記憶する。
【0040】
通信IC213は、車両用ナビゲーション装置100のような他の車載機器とのデータ通信を行うための通信インターフェース回路を含むように構成される。また、通信IC213が本発明の現在時刻情報取得手段に相当する。
【0041】
また、睡眠状態演算装置200は、通信IC213を介して、以下の覚醒機器のうちの少なくとも1つと通信可能に接続される。
・シートECU401(シート位置制御装置):乗員が着座しているシート402の、前後位置,高さ,背もたれ部の角度等の調整を行う(例えば、特開2006−008098号公報参照)。
・マッサージECU403:シート(402)の内部に取り付けられたマッサージ器404の動作制御を行う(例えば、特開2006−198307号公報参照)。
・シート空調ECU405:シート(402)に形成された空気吹出孔に向けて冷却された空調風を吹き出すシート空調装置406の動作制御を行う(例えば、特開2007−126105号公報参照)。
・エアコンECU407:車室内の空調装置である周知のエアコン装置408の動作制御を行う。
・酸素供給ECU409:乗員に酸素を供給する酸素供給装置410の動作制御を行う(例えば、特開平10−230759号公報参照)。
・オーディオECU411:周知のオーディオ装置412の動作制御を行う。
・サンシェードECU413(サンシェード開閉制御装置):車両のリアウィンドウや後部座席ウィンドウ近傍等に取り付けられたサンシェード414の展開/収納の動作制御を行う(例えば、特開平11−062442号公報参照)。
・照明ECU415:ルームランプ等の車内照明装置416の点灯/消灯動作制御を行う(例えば、特許文献1参照)。
【0042】
図2に、車両用ナビゲーション装置(以下、ナビゲーション装置と略称)100の構成を示すブロック図を示す。ナビゲーション装置100は、位置検出器1,地図データ入力器6,操作スイッチ群7,リモートコントロール(以下リモコンと称する)センサ11,音声案内などを行う音声合成回路24,スピーカ15,メモリ9,表示器10,送受信機13,ハードディスク装置(HDD)21,LAN(Local Area Network) I/F(インターフェース)26,これらの接続された制御回路8,リモコン端末12等を備えている。
【0043】
位置検出器1は、周知の地磁気センサ2,車両の回転角速度を検出するジャイロスコープ3,車両の走行距離を検出する距離センサ4,および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS受信機5を有している。これらのセンサ等2,3,4,5は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部のセンサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサ(図示せず)や各転動輪の車輪センサ例えば車速センサ23等を用いてもよい。なお、位置検出器1が本発明の位置検出手段に相当する。
【0044】
操作スイッチ群7は、例えば表示器10と一体になったタッチパネル22もしくはメカニカルなスイッチが用いられる。その他に、マウスやカーソル等のポインティングデバイスを用いてもよい。
【0045】
また、マイク31および音声認識ユニット30を用いて種々の指示を入力することも可能である。これは、マイク31から入力された音声信号を、音声認識ユニット30において周知の隠れマルコフモデル等の音声認識技術により処理を行い、その結果に応じた操作コマンドに変換するものである。これら本発明の目的地設定手段に相当する操作スイッチ群7,リモコン端末12,タッチパネル22,およびマイク31により、種々の指示を入力することが可能である。
【0046】
送受信機13は、例えば道路に沿って設けられた送信機(図示せず)から出力される光ビーコン、または電波ビーコンによってVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム,登録商標)センタ14から道路交通情報を受信、あるいはFM多重放送を受信するための装置である。また、送受信機13を用いてインターネット等の外部ネットワークに接続可能な構成としてもよい。
【0047】
制御回路8は、周知のCPU81,ROM82,RAM83,入出力回路であるI/O84,A/D変換部86,描画部87,時計IC88,およびこれらの構成を接続するバスライン85が備えられている。CPU81は、HDD21に記憶されたナビプログラム21pおよびデータにより制御を行う。また、HDD21へのデータの読み書きの制御はCPU81によって行われる。また、CPU81からHDD21に対してデータの読み書きの制御ができなくなった場合のために、ROM82にナビゲーション装置100として必要最低限の動作を行うためのプログラムを記憶しておいてもよい。なお、制御回路8が本発明の案内経路検索手段に相当する。
【0048】
A/D変換部86は周知のA/D(アナログ/デジタル)変換回路を含み、例えば位置検出器1などから制御回路8に入力されるアナログデータをCPU81で演算可能なデジタルデータに変換するものである。
【0049】
描画部87は、HDD21等に記憶された道路地図データ21m(後述),表示用のデータや表示色のデータから表示器10に表示させるための表示画面データを生成する。
【0050】
時計IC88はリアルタイムクロックICとも呼ばれ、CPU81からの要求に応じて時計・カレンダーのデータを送出あるいは設定するものである。CPU81は時計IC88から日時情報を取得する。また、GPS受信機5で受信したGPS信号に含まれる日時情報を用いてもよい。また、CPU81に含まれるリアルタイムカウンタを基にして日時情報を生成してもよい。
【0051】
HDD21には、ナビプログラム21pの他に位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、道路の接続を表した道路データを含む地図データベースである道路地図データ21mが記憶される。道路地図データ21mは、表示用となる所定の地図画像情報を記憶するとともに、リンク情報やノード情報等を含む道路網情報を記憶する。リンク情報は、各道路を構成する所定の区間情報であって、位置座標,距離,所要時間,道幅,車線数,制限速度等から構成される。また、ノード情報は、交差点(分岐路)等を規定する情報であって、位置座標,右左折車線数,接続先道路リンク等から構成される。また、リンク間接続情報には、通行の可不可を示すデータなどが設定されている。なお、HDD21が本発明の道路地図データ記憶手段に相当する。
【0052】
ダイクストラ法では、これらのリンク情報,ノード情報,リンク間接続情報を用いて、現在地から各ノードに至るまでの経路評価値(経路計算コスト)を算出し、目的地までの全ての経路評価値の計算が終了した段階で、総評価値が最小となるリンクを接続して目的地までの経路を設定している。この場合の評価値は、道路長・道路種別・道路幅員・車線数・交差点での右左折・信号機の有無などに応じて設定されている。例えば、道路幅員が広いほど評価値が低く、車線数が多いほど評価値が低い。
【0053】
各リンクでの経路計算コストの計算は、例えば次式を用いて行われる。経路計算コスト=リンク長×道路幅員係数×道路種別係数×渋滞度。ここで、道路幅員係数とは道路幅に応じて設定される係数であり、道路種別係数とは有料道路等の道路種別に応じて設定される係数である。そして、渋滞度とは、その道路の渋滞度合に応じて設定される係数である。
【0054】
また、HDD21には経路案内の補助情報や娯楽情報、その他にユーザが独自にデータを書き込むことができ、ユーザデータ21uとして記憶される。また、ナビゲーション装置100の動作に必要なデータや各種情報はデータベース21dとしても記憶される。
【0055】
ナビプログラム21p,道路地図データ21m,ユーザデータ21u,およびデータベース21dは、地図データ入力器6を介して記憶媒体20からそのデータの追加・更新を行うことが可能である。記憶媒体20は、そのデータ量からCD−ROMやDVDを用いるのが一般的であるが、例えばメモリカード等の他の媒体を用いてもよい。また、外部ネットワークを介してデータをダウンロードする構成を用いてもよい。
【0056】
メモリ9はEEPROMやフラッシュメモリ等の書き換え可能なデバイスによって構成され、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータが記憶されている。なお、メモリ9は、ナビゲーション装置100がオフ状態になっても記憶内容が保持されるようになっている。また、メモリ9の代わりにナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータをHDD21に記憶してもよい。さらに、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータをメモリ9とHDD21に分けて記憶してもよい。
【0057】
表示器10は周知のカラー液晶表示器で構成され、ドット・マトリックスLCD(Liquid Crystal Display)およびLCD表示制御を行うための図示しないドライバ回路を含んで構成されている。ドライバ回路は、例えば、周知のアクティブマトリックス駆動方式が用いられ、制御回路8(描画部87)から送られる表示指令および表示画面データに基づいて表示を行う。また、表示器10として有機EL(ElectroLuminescence:電界発光)表示器,プラズマ表示器を用いてもよい。
【0058】
スピーカ15は周知の音声合成回路24に接続され、ナビプログラム21pの指令によってメモリ9あるいはHDD21に記憶されるデジタル音声データが音声合成回路24においてアナログ音声に変換されたものが送出される。なお、音声合成の方法には、音声波形をそのままあるいは符号化して蓄積しておき必要に応じて繋ぎ合わせる録音編集方式、文字入力情報からそれに対応する音声を合成するテキスト合成方式などがある。
【0059】
車速センサ23は周知のロータリエンコーダ等の回転検出部を含み、例えば車輪取り付け部付近に設置されて車輪の回転を検出してパルス信号として制御回路8に送るものである。制御回路8では、その車輪の回転数を車両の速度に換算して、車両の現在位置から所定の場所までの予想到達時間を算出したり、車両の走行区間毎の平均車速を算出する。
【0060】
LAN I/F26は、車内LAN27を介して、睡眠状態演算装置200や他の車載機器,センサとのデータの遣り取りを行うための通信インターフェース回路である。また、LAN I/F26を介して車速センサ23からのデータ取り込みを行ってもよい。
【0061】
このような構成を持つことにより、ナビゲーション装置100は、制御回路8のCPU81によりナビプログラム21pが起動されると、ユーザが操作スイッチ群7,タッチパネル22,リモコン端末12の操作、あるいはマイク31からの音声入力によって、表示器10上に表示されるメニュー(図示せず)から目的地経路を表示器10に表示させるための経路案内処理を選択した場合、次のような処理を実施する。
【0062】
すなわち、まず、ユーザは目的地を検索する。目的地の検索方法は、例えば、地図上の任意の地点を指定する方法,目的地の所在する地域から検索する方法,目的地の電話番号から検索する方法,五十音表から目的地の名称を入力して検索する方法,あるいはユーザがよく利用する施設としてメモリ9に記憶されているものから検索する方法などがある。目的地が設定されると、位置検出器1により車両の現在位置が求められ、例えば上述のダイクストラ法等の手法を用いて、該現在位置を出発地として目的地までの最適な案内経路を求める処理が行われる。そして、表示器10上の道路地図に案内経路を重ねて表示し、ユーザに適切な経路を案内する。また、表示器10およびスピーカ15の少なくとも一方によって、操作時のガイダンスや動作状態に応じたメッセージの報知を行う。
【0063】
図3を用いて、睡眠状態演算装置200において実行される乗員覚醒処理について説明する。なお、本処理は制御プログラム211pに含まれ、制御プログラム211pの他の処理とともに繰り返し実行される。また、本処理は、生体信号計測装置201を装着した全ての乗員(座席)について行う。また、本処理は、ナビゲーション装置100において、目的地が設定され、さらにその目的地までの経路案内を行っていること、もしくは、操作スイッチ205で、目覚め時刻(覚醒時刻)が設定されていることを前提とする。
【0064】
まず、操作スイッチ205を操作し、表示部206の画面表示にしたがって、乗員を覚醒状態とする目覚め時刻を設定する(S11)。無論、目覚め時刻は、乗員毎に異なった設定を行うことができる。また、時刻の他に「10分後」のようなタイマー設定とする構成としてもよい。この場合は、ナビゲーション装置100あるいはCPU211a等から現在時刻情報を取得して、目覚め時刻に換算しておく。
【0065】
次に、通信IC213を介して、ナビゲーション装置100から目的地までの到達予想時間に関する情報を取得する(S12)。目的地までの到達予想時間は、ナビゲーション装置100において、車両の現在位置から目的地までの距離を車速センサ23から検出された車速(あるいは走行開始時から現在までの平均車速)で割ることによって算出できる。また、VICSセンタ14等から取得した交通情報(渋滞情報)を用いれば、より精度良く到達予想時間を算出することができる。続いて、ナビゲーション装置100から現在時刻情報を取得し、目的地までの到達予想時間と現在時刻とから、目的地までの到達予想時刻を算出する。そして、到達予想時刻から例えば10分前のような予め定められた時間だけ前を目覚め時刻として算出する。
【0066】
なお、ステップS11で目覚め時刻が設定されているときには、乗員による設定を優先してもよい。つまり、ステップS12で算出された目覚め時刻は、目覚め時刻を設定しなかった乗員(座席)に対して適用される。
【0067】
また、車両用乗員覚醒装置300にナビゲーション装置100が含まれない構成のときには、ステップS12は実行されない。このときの、時刻情報の生成・取得は、CPU211aに含まれる内部カウンタ(図示せず)で行うか、ナビゲーション装置100に含まれる時計IC88と同様のものを制御部210に含む構成とする。
【0068】
次に、生体信号計測装置201から脈波に関するデータを取得し、非特許文献2のように、まず計測した脈波データから脈拍の間隔を取得し,その揺らぎを周波数解析することで,交感神経および副交感神経の活性度を反映する周波数成分(LF:0.1Hz前後およびHF:0.3Hz前後)のレベルを求める。そして、交感神経活動と副交感神経活動の変化を自律神経バランスとして求め、睡眠状態との対応付けを行う(S13)。このとき、睡眠状態は、睡眠度として表される。すなわち、覚醒状態:睡眠度0,レム睡眠:睡眠度1,ノンレム睡眠(非特許文献2に準じて4段階に区分):睡眠度2から5となり、睡眠度5が最も眠りが最も深い状態である。
【0069】
交感神経系成分(LF)と副交感神経系成分(HF)の比(LF/H値)は通常1〜1.5程度であるのに対して、疲労状態ではLF/HF値が増加することが知られている(非特許文献3参照)。LF,HFの状態と自律神経系の作用との関係は、例えば図4のように表すことができる。このとき、LF,HFの値が比較的大きく、LF/HFが予め定められた範囲内にあるとき、睡眠状態であると判定できる。
【0070】
また、非特許文献1の記載に基づいて、乗員の頭部に着けて頭部皮膚の電位の変化を検出する脳波センサを用いて、検出した脳波の状態から睡眠度を算出してもよい。
【0071】
次に、覚醒機器(シートECU401他)の動作を開始する覚醒機器動作開始時刻を算出する(S14)。算出方法は、以下のいずれかを用いる。
・例えば目覚め時刻の10分前のような、目覚め時刻から予め定められた時間だけ前の時刻を覚醒機器動作開始時刻とする。
・単位時間あたりの睡眠度の減少率(図5のd/dtに相当)が予め定められた値としたときに、その減少率で現在の睡眠度から覚醒状態となるまでに要する時間を求め、目覚め時刻からその時間分遡った時刻を覚醒機器動作開始時刻とする。つまり、睡眠度が大きい(眠りが深い)ときには、より早く覚醒機器の動作が開始され、睡眠度が小さい(眠りが浅い)ときには、目覚め時刻により近い時刻に覚醒機器の動作が開始される。このようにして、覚醒の度合いを略一定として、乗員を急激に起こさないようにすることができる。
【0072】
次に、通信IC213を介して、ナビゲーション装置100から(あるいはCPU211aから)現在時刻に関する情報を取得する(S15)。そして、覚醒機器動作開始時刻が到来したか否かを判定する。覚醒機器動作開始時刻が到来しない場合(S16:No)、ステップS12へ戻り、ステップS15までの処理を行う。このように処理を繰り返すことで、乗員の睡眠度が変化しても、その睡眠度に応じた覚醒機器動作開始時刻を算出することができる。
【0073】
一方、覚醒機器動作開始時刻が到来した場合(覚醒機器動作開始時刻を算出した時点で覚醒機器動作開始時刻を過ぎた場合も含む)(S16:Yes)、算出した睡眠度から、睡眠が浅い状態か否か、すなわち睡眠状態がレム睡眠である睡眠度1より大きいか否かを判定する。
【0074】
睡眠状態が睡眠度1より大きく眠りが深い場合(ノンレム睡眠)(S17:No)、ナビゲーション装置100から目的地までの到達予想時間に関する情報を取得して、目覚め時刻を再計算する(S22)。なお、車両用乗員覚醒装置300にナビゲーション装置100が含まれない構成のときには、ステップS22は実行されない。
【0075】
次いで、ナビゲーション装置100から(あるいはCPU211aから)現在時刻に関する情報を取得する(S23)。そして、現在時刻と目覚め時刻との差(残り時間)と睡眠度とに基づいて、上述のように、d/dtが略一定となるように、覚醒量を算出する(S24)。
【0076】
次に、覚醒機器が複数ある場合は、上記で算出した覚醒量に相当する覚醒効果を発生できる覚醒機器を選択・決定する。一つの覚醒機器によって上記で算出した覚醒量を発生できない場合には、複数の覚醒機器を組み合わせて用いる。各覚醒機器は、例えば以下のようにして、それぞれ覚醒効果を発生する。
・シートECU401:シート402の背もたれ部を立てるように角度を変化させる。
・マッサージECU403:マッサージ器404が動作中の場合には、現在の動作モードと異なるモードで動作させる。例えば、首・肩をマッサージ中の時には、背中・腰をマッサージする。あるいは、マッサージ力を乗員の設定よりも強くする。マッサージ器404が動作中でない場合には、マッサージ器404を予め定められた時間、予め定められた強さで動作させる。
・シート空調ECU405:シート空調装置406が動作中の場合には、現在の設定温度よりも例えば3℃程度低い(現在の設定温度と異なる)温度となるようにする。シート空調装置406が動作中でない場合には、予め定められた温度で動作させる。
・エアコンECU407:エアコン装置408が動作中の場合には、現在の設定温度よりも例えば3℃程度低い(現在の設定温度と異なる)温度となるようにする。エアコン装置408が動作中でない場合には、予め定められた温度で動作させる。
・酸素供給ECU409:酸素供給装置410により酸素を供給中の場合には、酸素の供給量を変化させる。酸素を供給中でない場合には、酸素供給装置410により乗員に予め定められた量の酸素を供給する。
・オーディオECU411:オーディオ装置412が動作中の場合には、音量を乗員の設定とは異なる状態に変化させる(例えば、音量を大きくする)。オーディオ装置412が動作中でない場合には、予め定められた音量で動作させる。
・サンシェードECU413:サンシェード414が展開されている場合は収納する。
・照明ECU415:ルームランプ,読書灯等の車内照明装置416が消灯中の場合は点灯させる。照明装置416が点灯中の場合は、輝度を変化させたり、点滅させる。
【0077】
そして、上記で選択した覚醒機器を動作させる(S25)。すなわち、睡眠状態演算部211から通信IC213を介し、選択した覚醒機器に対して、乗員を覚醒させるための動作を行うよう制御指令を送る。
【0078】
一方、睡眠状態が睡眠度1より小さく眠りが浅い場合(レム睡眠)(S17:Yes)、通信IC213を介して、ナビゲーション装置100から(あるいはCPU211aから)現在時刻に関する情報を取得する(S18)。そして、目覚め時刻に近いか否かを判定する。例えば、目覚め時刻から5分以内であれば、目覚め時刻に近いと判定する。目覚め時刻に近くないと判定された場合(S19:No)、ステップS17に戻り、睡眠状態を判定する。このように処理を繰り返すことで、乗員の睡眠度が変化しても、その睡眠度に応じて覚醒機器を動作させることができる。
【0079】
一方、目覚め時刻に近いと判定された場合(S19:Yes)、覚醒量を算出し、覚醒機器を決定する(S20)。この場合の覚醒量は、上述のd/dtとは異なり、乗員を完全に覚醒させることができる量とする。
【0080】
そして、上記で選択した覚醒機器を動作させ、乗員を覚醒させる(目を覚まさせる)(S21)。
【0081】
図5に、睡眠状態と覚醒機器の動作タイミングとの関係を示す。まず、Aで示される睡眠状態が深い(睡眠度5)場合について説明する。目的地到達予想時刻をT0,目覚め時刻をT1とする。睡眠状態と覚醒機器の覚醒量とに基づいて、覚醒機器動作開始時刻T3が算出される。覚醒機器動作開始時刻T3が到来すると、睡眠度が徐々に小さく(眠りが浅く)なるように覚醒機器を動作させる。このときの単位時間あたりの睡眠度の減少量(覚醒量)がd/dtとなる。睡眠度は一様に減少するわけではなく上下を繰り返して漸減していく。図3の乗員覚醒処理では、処理を実行する度に覚醒量を算出しているので、目覚め時刻T1までの残り時間と乗員の睡眠状態とにより、常に最適な覚醒量(d/dt)を算出することができる。そして、睡眠度1となる時刻T2が、目覚め時刻T1に近いと判定されたとき、乗員を覚醒(目覚め)させるように覚醒機器を動作させる。これにより、目覚め時刻T1が到来したときには、乗員は寝ぼけ眼ではなく、完全に目が覚めて活動可能な状態となっている。
【0082】
次に、Bで示される睡眠状態がやや深い(睡眠度3)場合について説明する。覚醒機器動作開始時刻T3’は、上述のT3よりも遅い(目覚め時刻T1に近い)タイミングとなる。この場合、覚醒機器が動作した後に、予想よりも睡眠度が小さくなり過ぎて、睡眠度1を下回る浅い睡眠状態となってしまったので(T4)、睡眠度1を下回った時点で覚醒機器の動作を停止させる。そして、目覚め時刻T1に近いと判定される時刻T2が到来したとき、乗員を覚醒させるように覚醒機器を動作させる。これにより、目覚め時刻T1が到来したときには、乗員は寝ぼけ眼ではなく、完全に目が覚めて活動可能な状態となっている。
【0083】
また、上述のBの状態で、覚醒機器動作開始時刻をT3として、単位時間あたりの睡眠度の減少量(覚醒量)d/dtを、上述のCの状態よりも小さい値として、睡眠状態の変化がB’(一点鎖線で表示)の状態になるようにしてもよい。この構成では、乗員の実質の睡眠時間は短くなるが、緩やかに目覚めることができ、乗員に急激に起こされたという印象を持たせないようにすることができる。
【0084】
次に、Cで示される睡眠状態が浅い(睡眠度1)場合について説明する。この場合は、目覚め時刻T1に近いと判定される時刻T2が到来するまでは、覚醒機器を動作させない。そして、目覚め時刻T1に近いと判定される時刻T2が到来したとき、乗員を覚醒させるように覚醒機器を動作させる。これにより、目覚め時刻T1が到来したときには、乗員は寝ぼけ眼ではなく、完全に目が覚めて活動可能な状態となっている。
【0085】
上述の図3の乗員覚醒処理では、目覚め時刻を設定する構成であるが、目覚め地点(覚醒地点)を設定する構成としてもよい。例えば、ステップS11では、ナビゲーション装置100から案内経路およびその周辺の地図データを取得して、表示部206に表示させ、操作スイッチ205の操作によって目覚め地点を設定する。目覚め地点はメモリ212に記憶しておく。ステップS12では、現在位置から目的地までの距離を算出する。
【0086】
ステップS14では、目覚め地点,睡眠度,車両の現在位置,予め定められる距離あたりの睡眠度の減少量(d/dl)等から覚醒機器動作開始地点を決定する。また、乗員が地図データ上で覚醒機器動作開始地点を指定可能なようにしてもよい。
【0087】
ステップS15では、現在位置情報を取得し、ステップS16では覚醒機器動作開始地点に到達したか否かを判定する。
【0088】
また、ステップS18では、現在位置情報を取得し、ステップS19では目覚め地点に到達したか否かを判定する。
【0089】
また、ステップS22では、現在位置情報を取得し、ステップS24では現在位置と目覚め地点との距離と、睡眠度とに基づいて、上述のように、d/dlが略一定となるように、覚醒量を算出し覚醒機器を決定する。
【0090】
目覚め地点を設定する方法は、車両が走行中に、案内経路沿いにある名所・旧跡等を車中から眺めたい場合にも有効である。
【0091】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】車両用乗員覚醒装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】車両用ナビゲーション装置の構成を示すブロック図。
【図3】睡眠状態演算装置における乗員覚醒処理を説明するフロー図。
【図4】交感神経および副交感神経の状態と精神状態との関係を示す図。
【図5】睡眠状態と覚醒機器の動作との関係を示す図。
【符号の説明】
【0093】
1 位置検出器(位置検出手段)
7 操作スイッチ群(目的地設定手段)
8 制御回路(案内経路検索手段)
21 ハードディスク装置(HDD,道路地図データ記憶手段)
21m 道路地図データ
22 タッチパネル(目的地設定手段)
26 LAN I/F
31 マイク(目的地設定手段)
88 時計IC
100 車両用ナビゲーション装置
200 睡眠状態演算装置
201 生体信号計測装置(生体情報検出手段)
205 操作スイッチ(覚醒タイミング設定手段,目的地設定手段,覚醒時刻設定手段)
210 制御部(睡眠状態判定手段,覚醒機器制御手段)
212 メモリ
213 通信IC(現在時刻情報取得手段)
300 車両用乗員覚醒装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員の生体情報を検出する生体情報検出手段と、
前記生体情報に基づき、前記乗員の睡眠状態を判定する睡眠状態判定手段と、
前記乗員を覚醒状態とする覚醒タイミングを設定する覚醒タイミング設定手段と、
前記車両に取り付けられ、睡眠状態にある前記乗員を覚醒状態とする覚醒機器と、
前記乗員の睡眠状態および前記覚醒タイミングに基づいて、前記覚醒機器を動作制御する覚醒機器制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用乗員覚醒装置。
【請求項2】
車両の現在位置を検出する位置検出手段と、
道路地図データを記憶する道路地図データ記憶手段と、
前記道路地図データ上の地点を目的地として設定する目的地設定手段と、
前記車両の現在位置から設定された前記目的地までの案内経路を検索する案内経路検索手段と、
前記車両の乗員の生体情報を検出する生体情報検出手段と、
前記生体情報に基づき、前記乗員の睡眠状態を判定する睡眠状態判定手段と、
前記乗員を覚醒状態とする覚醒タイミングを設定する覚醒タイミング設定手段と、
前記車両に取り付けられ、睡眠状態にある前記乗員を覚醒状態とする覚醒機器と、
前記案内経路上における前記車両の現在位置,前記乗員の睡眠状態,および前記覚醒タイミングに基づいて、前記覚醒機器を動作制御する覚醒機器制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用乗員覚醒装置。
【請求項3】
前記覚醒機器制御手段は、設定した前記覚醒タイミングよりも予め定められた時間だけ前に前記覚醒機器の動作を開始し、設定した前記覚醒タイミングが近づくにつれて、睡眠中の前記乗員の睡眠状態がより浅くなるように該覚醒機器を動作制御する請求項1または請求項2に記載の車両用乗員覚醒装置。
【請求項4】
前記覚醒タイミング設定手段は、前記乗員の覚醒時刻を設定する覚醒時刻設定手段を含み、
現在時刻情報を取得する現在時刻情報取得手段を備え、
前記覚醒機器制御手段は、前記現在時刻が、前記覚醒時刻から、予め定められた時間だけ前になったときに前記覚醒機器の動作を開始し、該覚醒時刻までの、睡眠中の前記乗員に対する時間あたりの覚醒効果が略一定となるように該覚醒機器を動作制御する請求項1に記載の車両用乗員覚醒装置。
【請求項5】
前記車両の現在位置から設定された前記目的地に到達するまでの時間を算出する到達予想時間算出手段と、
現在時刻情報を取得する現在時刻情報取得手段と、
を備え、
前記覚醒タイミングは、前記到達予想時間と前記現在時刻情報とに基づいて算出される前記到達予想時刻として設定され、
前記覚醒機器制御手段は、前記到達予想時刻から、予め定められた時間だけ前に前記覚醒機器の動作を開始し、前記覚醒タイミングまでの、睡眠中の前記乗員に対する時間あたりの覚醒効果が略一定となるように該覚醒機器を動作制御する請求項2に記載の車両用乗員覚醒装置。
【請求項6】
前記覚醒機器制御手段は、
前記乗員の睡眠状態が比較的浅い場合は、該乗員に対する覚醒効果が比較的小さくなるように前記覚醒機器の動作を制御し、
前記乗員の睡眠状態が比較的深い場合は、該乗員に対する覚醒効果が比較的大きくなるように前記覚醒機器の動作を制御する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用乗員覚醒装置。
【請求項7】
前記覚醒機器制御手段は、前記覚醒タイミングが到来したとき、前記乗員が覚醒するように、前記覚醒機器の動作の制御を行う請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両用乗員覚醒装置。
【請求項8】
前記覚醒機器制御手段は、前記乗員の睡眠状態が予め定められた状態にあるときには、前記覚醒機器の動作の制御を行わない請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の車両用乗員覚醒装置。
【請求項9】
前記覚醒機器は、シート位置調整装置,マッサージ器,シート空調装置,エアコン装置,酸素供給装置,オーディオ装置,サンシェード開閉制御装置,車室内照明装置のうちの1つあるいは2つ以上の組合せを用いる請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両用乗員覚醒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−18055(P2010−18055A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177979(P2008−177979)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】