説明

車両用交流発電機

【課題】整流器の放熱板の設置スペースを拡大せず、整流装置の冷却効率を上昇させ、高品質及び高出力を目的とする。
【解決手段】回転子の回転軸を回転自在に支持すると共に前記固定子を支持するフロントフレームとリヤフレームと、固定子巻線から出力された交流電力を整流するための整流素子を電気的に接続し、整流回路を構成する整流装置を有し、整流装置はリヤフレームの外端部に固定され、保護カバーにより覆われ、保護カバーから整流装置を通り冷却風を吸入する冷却ファンを備え、整流装置は、複数個の+極の整流素子が圧入された第1放熱板と複数個の−極の整流素子が圧入された第2放熱板を有し、前記第2放熱板に圧入された−極の整流素子は、第2放熱板より突き出されるように圧入され、前記リヤフレームと第2放熱板との間の冷却風通路の空間に整流素子のベース部の一部を配置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の交流発電機に関し、特にはその整流器の冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用交流発電機は車両内の電子機器の需要の増加およびエンジンルーム内の搭載されるスペースの縮小化により、搭載される周囲環境の温度は上昇および要求される発電量の増加に伴い、発熱量が増大し、温度上昇による寿命低下が問題となる。
【0003】
特に車両用交流発電機によって発電された交流電流を整流する整流素子は、発熱による温度の影響を大きく受け、耐熱温度を越えると急激な寿命低下となるため、整流素子の冷却性向上による温度低減が重要課題となっている。
【0004】
そこで、特許文献1では、整流装置の冷却効率向上のため、+極(正側のアーム)の整流素子と保護カバーの間、一極(負側のアーム)の整流素子はリヤフレームと第2放熱板の間に外部からの冷却風を効率よく流入及び通過させ、放熱板の冷却効率を上昇させることで整流素子の温度低減させる提案等がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−164538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年では車両側の電力需要は益々増加傾向にあり、車両用交流発電機の発電電力の大幅な増加に伴い、特許文献1の整流装置の冷却方式では、放熱板の放熱面積を確保することができず、放熱板の冷却能力も飽和状態に達し、整流素子の温度が耐熱温度を越え急激な寿命低下となる。
【0007】
本発明は、整流装置の冷却効率を上昇させ、高品質及び高出力の車両用交流発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の望ましい態様の1つは次の通りである。
固定子巻線を備えた固定子と、該固定子の内周側に隙間を介して回転可能に支持された回転子とを有し、前記回転子の回転軸を回転自在に支持すると共に前記固定子を支持するフロントフレームとリヤフレームと、前記固定子巻線から出力された交流電力を整流するための整流素子を電気的に接続し、整流回路を構成する整流装置を有し、該整流装置はリヤフレームの外端部に固定され、保護カバーにより覆われ、前記保護カバーから整流装置を通り冷却風を吸入する冷却ファンを備える車両用交流発電機であって、前記整流装置は、複数個の+極の整流素子が圧入された第1放熱板と複数個の−極の整流素子が圧入された第2放熱板を有し、前記第2放熱板に圧入された−極の整流素子は、第2放熱板より突き出されるように圧入され、リヤフレームと第2放熱板との間の冷却風通路の空間に整流素子のベース部の一部が配置され、冷却風を直接ベース部に効果的に当てることで整流素子の冷却性を向上させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、整流素子の冷却性能を向上させた整流装置を備え、低コストで高品質の車両用交流発電機を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態による車両用交流発電機の全体構成を示す断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態による保護カバーを外した状態の車両用交流発電機のリヤ側斜視図。
【図3】本発明の第1の実施形態による整流器の斜視図。
【図4】本発明の第1の実施形態による車両用交流発電機に用いる整流装置の分解斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による整流器のリヤ側正面図。
【図6】図5のA−A部を断面した図。
【図7】本発明の第2の実施形態による整流器の断面図。
【図8】本発明の第3の実施形態による整流器の断面図。
【図9】本発明の第4の実施形態による整流器の断面図。
【図10】本発明の第5の実施形態による整流器の断面図。
【図11】本発明の第6の実施形態による整流器の断面図。
【図12】本発明の第7の実施形態による整流器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各実施例について図面を用いて説明する。
【0012】
[第1実施例]
本発明の第1の実施形態による車両用交流発電機の構成について図1及び図2を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態による車両用交流発電機の全体構成を示す断面図で、図2は保護カバーを取外した状態の車両用交流発電機のリヤ側斜視図を示す。
【0014】
車両用交流発電機31は、回転子4と、固定子5とを備えている。回転子4は、シャフト2の中心部に界磁巻線11を備え、その両側に磁性材料にて成形されたフロント側爪磁極9とリヤ側爪磁極10が界磁巻線11を覆うように両側から挟むように配置される。フロント側爪磁極9とリヤ側爪磁極10とは、爪部が互いに対向し、かつ、一方の爪形磁極が他方の爪形磁極に噛み合うように配置される。
【0015】
回転子4は、固定子5の内周側に、僅かな空隙を介して対向配置されている。回転子4は、フロントベアリング3及びリヤベアリング8の内輪にシャフト2が挿通され、回転自在に支持されている。
【0016】
固定子5は、固定子鉄心6と固定子巻線7から構成される。固定子鉄心6は、環状に形成された薄板鋼板が複数枚積層され、内周側には突出した歯部(ティース)があり、各歯部の間にスロットが形成されている。各々のスロットに各相の固定子巻線7が複数のティースをまたいで夫々のスロットに挿入され、装着される。固定子5の両端は、フロントフレーム16とリヤフレーム17によって保持されている。
【0017】
シャフト2の一方の端部には、プーリ1が取り付けられている。シャフト2の他方の端部には、スリップリング12が設けられ、ブラシ13と接触し、界磁巻線11に電力を供給している。更に、回転子4のフロント側爪磁極9とリヤ側爪磁極10の両端面には、外周側に複数の羽根を有する冷却ファンであるフロントファン14とリヤファン15が設けられ、回転することによる遠心力によって、外部からの空気を導入し、内部を冷却した空気を外部に排出するように、空気を流通させるようになっている。
【0018】
フロント側の冷却風26は、フロントフレーム16の風窓からフロントファン14を通過し、固定子巻線7のコイルエンドを冷却して、フロントフレーム16の風窓から排出される。リヤ側の冷却風27は、保護カバー25の開口部から流入し、整流装置18とICレギュレータ30を冷却し、リヤフレーム17の中央部の風窓から、リヤファン15を通過し、固定子巻線7のコイルエンドを冷却して、リヤフレーム17の風窓から排出される。
【0019】
固定子巻線7は、本例では2組の3相巻線で構成されており、それぞれの巻線の口出し線は、整流装置18に接続されている。整流装置18は、ダイオード等の整流素子から構成され、全波整流回路を構成している。例えばダイオードの場合、カソード端子は整流素子接続端子19に接続されている。また、アノード側の端子は車両用交流発電機本体に電気的に接続されている。保護カバー25は整流装置18の保護とプラス側端子に直接触れないように電気的な絶縁の役割を果たしている。
【0020】
次に、発電動作について説明する。
まず、エンジンの始動に伴ってクランクシャフトからベルトを介してプーリ1に回転が伝達されるため、シャフト2を介して回転子4を回転させる。ここで、回転子4に設けられた界磁巻線11にスリップリング12を介してブラシ13から直流電流を供給すると界磁巻線11の内外周を周回する磁束が生じるため、回転子4におけるフロント側爪磁極9とリヤ側爪磁極10にN極、又は、S極が周方向に交互に形成される。この界磁巻線11による磁束は、フロント側爪磁極9のN極から固定子鉄心6をとおって固定子巻線7の周りを周回し、回転子4のリヤ側爪磁極10のS極に到達することで回転子4と固定子5を周回する磁気回路が形成される。このように回転子にて生じた磁束が固定子巻線7と鎖交するため、U相、V相、W相、X相、Y相、Z相の固定子巻線7のそれぞれに交流誘起電圧が発生し、全体としては6相分の交流誘起電圧が生じる。
【0021】
このように発電された交流電圧は、ダイオード等の整流素子で構成された整流装置18によって、全波整流されて直流電圧に変換される。整流された直流電圧は一定電圧になるようにICレギュレータ30で界磁巻線11に供給する電流を制御することで達成している。
【0022】
次に図3〜図6を用いて本実施形態による車両用交流発電機の整流装置の構成について説明する。
【0023】
図3は本発明の第1の実施形態による整流器の斜視図である。図4は本発明の第1の実施形態による車両用交流発電機に用いる整流装置の分解斜視図である。図5は本発明の第1の実施形態による整流装置のリヤ側からの正面図である。図6は図5のA−A部を断面した図である。
【0024】
図3及び図4に示すように、整流装置18は、対向配置された金属製の+極の放熱板20と金属製の−極の放熱板21と、両者の間に配置された接続端子板19とから構成される。+極の放熱板20には、6個の+極の整流素子22がそれぞれ圧入される6個の圧入穴201が設けられている。
【0025】
+極の整流素子22は、図4(b)に示すようにベース部221と、リード部222とから構成される。整流素子22の内部にはダイオードなどの半導体素子223が固定され、ダイオードのアノードはベース部221に接続され、カソードはリード部222に接続されている。ベース部221の外周側はローレット加工が施されており、+極の整流素子のリード部222側から放熱板の圧入穴201にローレット圧入され、機械的及び電気的に接続される。+極の放熱板20は、Bターミナルボルト24に接続される。Bターミナルボルト24は、車両のバッテリーに接続される。
【0026】
−極の整流素子23は、図4(c)に示すように円盤状のベース部231と、端子形状のリード部232とから構成される。整流素子23の内部にはダイオードなどの半導体素子233が固定されている。−極の整流素子23の極性は、+極の整流素子22とは逆である。ダイオードのカソードはベース部231に接続され、アノードはリード部232に接続されている。ベース部231の外周側はローレット加工が施されており、−極の整流素子のリード部232側から放熱板の圧入穴にローレット圧入され、機械的及び電気的に接続される。
【0027】
+極の放熱板20と−極の放熱板21との間には、各整流素子を結線し全波整流回路を構成する整流素子接続板(接続端子板)19を備え、端子板19は+極の放熱板20と−極の放熱板21との間に一定の電気的絶縁距離を保つ機能を兼ねている。
【0028】
整流装置18は、図2に示したようにリヤフレーム17上に搭載され、整流装置18とリヤフレ−ム17は電気的に接続され、リヤフレーム17を通じ、車両側のアースに電気的に接続されている。
【0029】
−極の整流素子23は、図6に示すようにベース部231がリヤフレーム17と−極の放熱板21との空間に部分的に飛出しており、その空間部を冷却風が通過する際に、−極整流素子23のベース部231の底面及びB−B断面図に示すように側面を通過することで、直接的に整流素子23を冷却させ、冷却効率を向上させる。
【0030】
また、図4に示すように−極整流素子のベース231側の側面には、ローレット加工が施されているため、放熱面積も大きく冷却性能はさらに向上する形態である。
【0031】
ベース部の飛出し高さgは、ローレット圧入時による整流素子の固定力からベース部の高さHに対し、1/2〜1/3の高さが望ましく。本実施例の場合では、ベース部と飛出し量は1mmから2.5mmの間が望ましい。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、−極の整流素子のベース部231を部分的に冷却風が通過する空間に配置することにより、直接的に冷却風を当て、冷却性能を向上させ、素子の発熱量に対する温度低減の促進ができる高品質の整流器を有する車両用交流発電機を提供することができる。
【0033】
[第2実施例]
次に第2実施例を図7に基づいて説明する。
図7は本発明の第2の実施形態による整流器の断面図である。
【0034】
第1実施例と整流装置18の形態は同様であるが、第2実施例は−極の整流素子のベース部231の底面をリヤフレーム17に接触させ、放熱性を向上させることを特徴とする。
【0035】
図7に示すように、ベース部231がリヤフレーム17と−極の放熱板21との空間に部分的に飛出しており、その空間部を冷却風が通過する際に、−極整流素子23のベース部231の底面及びC−C断面図に示すように側面を通過することで、直接的に整流素子を冷却させ、更には、ベース部231の底面をリヤフレーム17に接触させることでリヤフレーム17への放熱性を利用し、整流素子の冷却性を向上させる。
【0036】
ベース部231の飛出し高さgについては、ベース部231の底面をリヤフレーム17に接触させるため固定力は第1実施例に比べ向上し、ベース部231の飛出し高さgも高くすることができる。本実施例の場合、ローレット圧入時による整流素子の固定力からベース部231の高さHに対し、ベース部の飛出し高さgは1/3〜2/3の高さが望ましい。本実施例の場合では、ベース部と飛出し量は1mmから3mmの間が望ましい。
【0037】
−極の整流素子のベース部231の底面とリヤフレーム17の接触部については、リヤフレーム17及び−極整流素子の製造精度から、微小の空間が生じるため、接触部にグリース等の熱伝導性の高い材料を介在させることで、整流素子の冷却性は更に向上する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、−極の整流素子のベース部231を部分的に冷却風が通過する空間に配置し、直接的に冷却風を当てるとともに、−極の整流素子のベース部231をリヤフレーム17に直接接触させることで冷却性能を向上させ、整流素子の発熱量に対する温度低減の促進ができる高品質の整流器を有する車両用交流発電機を提供することができる。
【0039】
[第3実施例]
次に第3実施例を図8に基づいて説明する。
図8は本発明の第3の実施形態による整流器の断面図である。
【0040】
第2実施例と整流装置18の形態は同様であるが、第3実施例はリヤフレーム17に設けられた円状の凹部に、−極の整流素子のベース部231を部分的に嵌合させることにより、放熱性をさらに向上させ、整流素子の放熱性を向上させることを特徴とする。
【0041】
図8に示すように、ベース部231がリヤフレーム17と−極の放熱板21との空間に部分的に飛出しており、その空間部を冷却風が通過する際に、−極整流素子23のベース部231の底面及びD−D断面図に示すように側面を通過することで、直接的に整流素子を冷却させ、更には、リヤフレーム17に設けられた円状の凹部に、−極の整流素子のベース部231を部分的に嵌合させることで、第2実施例に比べ接触面積を拡大し、リヤフレーム17への放熱性を利用し、整流素子の冷却性を向上させる。
【0042】
ベース部231の飛出し高さgについては、−極の整流素子のベース部231にリヤフレーム17に嵌合させるため固定力は第2実施例同様に第1実施例に比べ向上し、飛出し高さgも高くすることができる。本実施例の場合、ローレット圧入時による整流素子の固定力からベース部231の高さHに対し、ベース部の飛出し高さgは1/3〜2/3の高さが望ましい。本実施例の場合では、ベース部と飛出し量は1mmから3mmの間が望ましい。
【0043】
リヤフレーム17との嵌合部の深さhは、冷却風が通る流路の高さの関係上大きくできないため、本実施例の場合、ベース部の飛出し高さgに対し、嵌合部の深さhは1/3の高さが望ましい。本実施例の場合では、嵌合部の深さhは0.2mmから1.2mmの間が望ましい。
【0044】
−極の整流素子のベース部231とリヤフレーム17の嵌合部については、ローレット圧入でもよいが、生産上の観点からスムーズに入る程度の嵌め合いが良いが、微小の空間が生じるため、嵌合部にグリース等の熱伝導性の高い材料を介在させることで、整流素子の冷却性は更に向上する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、−極の整流素子のベース部231を部分的に冷却風が通過する空間に配置し、直接的に冷却風を当てるとともに、−極の整流素子のベース部231をリヤフレーム17に部分的に嵌合させ放熱させることで冷却性能を向上させ、整流素子の発熱量に対する温度低減の促進ができる高品質の整流器を有する車両用交流発電機を提供することができる。
【0046】
[第4実施例]
次に第4実施例を図9に基づいて説明する。
図9は本発明の第4の実施形態による整流器の断面図である。
【0047】
第3実施例ではリヤフレーム17に設けられた円状の凹部に、−極の整流素子のベース部231を部分的に嵌合させることにより、放熱性をさらに向上させ、整流素子の放熱性を向上させることを特徴としたが、本実施例では、リヤフレーム17に設けられた円状の凹部を貫通穴の単純加工とすることで、冷却性の向上とともに安価に製作できる構造を特徴とする。
【0048】
図9に示すように、ベース部231がリヤフレーム17と−極の放熱板21との空間に部分的に飛出しており、その空間部を冷却風が通過する際に、−極整流素子23のベース部231の底面及びE−E断面図に示すように側面を通過することで、直接的に整流素子を冷却させ、更には、リヤフレーム17に設けられた円状の貫通穴に、−極の整流素子のベース部231を部分的に嵌合させることで、第3実施例に比べリヤフレーム17との接触面積を低下するが、リヤフレーム17の凹形状の穴から、単純な貫通穴となるため製造コストを下げるとともに−極整流素子23のベース部231の側面を部分的に嵌合させ、接触させることでリヤフレーム17の放熱性を利用し、整流素子の冷却性を向上させる。
【0049】
ベース部231の飛出し高さgについては、−極の整流素子のベース部231にリヤフレーム17に側面を嵌合させているが、第3実施例に比べベース部231の底面が抑えられておらず、整流素子の固定力が低下するため、飛出し高さgは第1実施例と同様にベース部231の高さHに対し、1/2〜1/3の高さが望ましく、本実施例の場合では、ベース部と飛出し量は1mmから2.5mmの間が望ましい。
【0050】
リヤフレーム17との嵌合部の深さhは、冷却風が通る流路の高さの関係上大きくできないため、本実施例の場合、ベース部の飛出し高さgに対し、嵌合部の深さhは1/3の高さが望ましい。本実施例の場合では、嵌合部の深さhは0.2mmから1.2mmの間が望ましい。
【0051】
−極の整流素子のベース部231とリヤフレーム17の嵌合部については、ローレット圧入が良いが貫通穴の加工精度及び組立て性を考慮するとコストの上昇が考えられるため貫通穴と−極の整流素子のベース部231との間は、スムーズに入る程度が良く、微小の空間が生じるため、嵌合部にグリース等の熱伝導性の高い材料を介在させることで、整流素子の冷却性を確保でき、安価なものとなる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、−極の整流素子のベース部231を部分的に冷却風が通過する空間に配置し、直接的に冷却風を当てるとともに、−極の整流素子のベース部231の側面をリヤフレーム17に部分的に嵌合させ放熱させることで冷却性能を向上させ、整流素子の発熱量に対する温度低減の促進ができる高品質で安価な整流器を有する車両用交流発電機を提供することができる。
【0053】
[第5実施例]
次に第5実施例を図10に基づいて説明する。
図10は本発明の第5の実施形態による整流器の断面図である。
【0054】
第3実施例ではリヤフレーム17に設けられた円状の凹部に、−極の整流素子のベース部231を部分的に嵌合させることにより、放熱性をさらに向上させ、整流素子の放熱性を向上させることを特徴としたが、本実施例では、リヤフレーム17にボスを設け、ボス上に−極の整流素子のベース部231の底面を接触させる構造を特徴とする。
【0055】
図10に示すように、ベース部231がリヤフレーム17と−極の放熱板21との空間に部分的に飛出しており、その空間部を冷却風が通過する際に、−極整流素子23のベース部231の底面及びF−F断面図に示すように側面を通過することで、直接的に整流素子を冷却させ、更には、リヤフレーム17に設けられたボスに、−極の整流素子のベース部231の底面を接触させることで、整流素子の放熱性を向上させ、G−G断面に示されるようにボスに冷却風を当てることで更に冷却性が向上する。
【0056】
また、第2実施例〜第4実施例では、ベース部231の飛出し高さgが冷却風の流路の高さと関係していたが、リヤフレーム17にボスを設けることで、冷却風の流路の高さを任意に変更でき、風量も向上できることから冷却性は飛躍的に向上する。
【0057】
リヤフレーム17のボスの形状は、円筒形が望ましいが、例えば四角形状及び台形形状でも同様の効果は得られる。
【0058】
ベース部231の飛出し高さgについては、ベース部231の底面をリヤフレーム17のボス上に接触させるため固定力は第1実施例に比べ向上し、ベース部231の飛出し高さgも高くすることができる。本実施例の場合、ローレット圧入時による整流素子の固定力からベース部231の高さHに対し、ベース部の飛出し高さgは1/3〜2/3の高さが望ましい。本実施例の場合では、ベース部と飛出し量は1mmから3mmの間が望ましい。
【0059】
リヤフレーム17のボス高さjは、高ければ高いほど風量が増加し、冷却性能は向上するが、本例の場合では保護カバー内に整流装置18を収める制約条件と10mm以下であり、最低限の風量を確保するために、ボス高さは2mm以上が望ましい。
【0060】
−極の整流素子のベース部231の底面とリヤフレーム17のボスとの接触部については、リヤフレーム17及び−極整流素子の製造精度から、微小の空間が生じるため、接触部にグリース等の熱伝導性の高い材料を介在させることで、整流素子の冷却性は更に向上する。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、−極の整流素子のベース部231を部分的に冷却風が通過する空間に配置し、直接的に冷却風を当てるとともに、リヤフレーム17にボスを設け、−極の整流素子のベース部231の底面を接触させることにより、冷却風の流路の高さ向上による風量アップ及びリヤフレーム17への放熱効果により、冷却性能を向上させ、整流素子の発熱量に対する温度低減の促進ができる高品質な整流器を有する車両用交流発電機を提供することができる。
【0062】
[第6実施例]
次に第6実施例を図11に基づいて説明する。
図11は本発明の第6の実施形態による整流器の断面図である。
【0063】
第5実施例ではリヤフレーム17にボスを設け、ボス上に−極の整流素子のベース部231の底面を接触させる構造として、本実施例はリヤフレーム17のボス上に設けられた円状の凹部に、−極の整流素子のベース部231を部分的に嵌合させることにより、放熱性をさらに向上させ、整流素子の放熱性を向上させることを特徴とする。
【0064】
図11に示すように、ベース部231がリヤフレーム17と−極の放熱板21との空間に部分的に飛出しており、その空間部を冷却風が通過する際に、−極整流素子23のベース部231の底面及びJ−J断面図に示すように側面を通過することで、直接的に整流素子を冷却させ、更には、リヤフレーム17のボス上に設けられた円状の凹部に、−極の整流素子のベース部231を部分的に嵌合させることで、第2実施例に比べ接触面積を拡大し、整流素子の放熱性を向上させ、K−K断面に示されるようにボスに冷却風を当てることで更に冷却性が向上する。
【0065】
リヤフレーム17のボスの形状は、円筒形が望ましいが、例えば四角形状及び三角形状でも同様の効果は得られる。
【0066】
ベース部231の飛出し高さgについては、ベース部231の底面をリヤフレーム17のボス上に嵌合させるため固定力は第1実施例に比べ向上し、ベース部231の飛出し高さgも高くすることができる。本実施例の場合、ローレット圧入時による整流素子の固定力からベース部231の高さHに対し、ベース部の飛出し高さgは1/3〜2/3の高さが望ましい。本実施例の場合では、ベース部と飛出し量は1mmから3mmの間が望ましい。
【0067】
リヤフレーム17のボス高さjは、高ければ高いほど風量が増加し、冷却性能は向上するが、本例の場合では保護カバー内に整流装置18を収める制約条件と10mm以下であり、最低限の風量を確保するために、ボス高さは2mm以上が望ましい。
【0068】
リヤフレーム17との嵌合部の深さhは、冷却風が通る流路の高さの関係上大きくできないため、本実施例の場合、ベース部の飛出し高さgに対し、嵌合部の深さhは1/3の高さが望ましい。本実施例の場合では、嵌合部の深さhは0.2mmから1.2mmの間が望ましい。
【0069】
−極の整流素子のベース部231とリヤフレーム17の嵌合部については、ローレット圧入でもよいが、生産上の観点からスムーズに入る程度の嵌め合いが良いが、微小の空間が生じるため、嵌合部にグリース等の熱伝導性の高い材料を介在させることで、整流素子の冷却性は更に向上する。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、−極の整流素子のベース部231を部分的に冷却風が通過する空間に配置し、直接的に冷却風を当てるとともに、リヤフレーム17のボス上に凹部を設け、−極の整流素子のベース部231を嵌合させることにより、放熱面積を拡大し、冷却風の流路の高さ向上による風量アップ及びリヤフレーム17への放熱効果により、冷却性能を向上させ、整流素子の発熱量に対する温度低減の促進ができる高品質な整流器を有する車両用交流発電機を提供することができる。
【0071】
[第7実施例]
次に第7実施例を図12に基づいて説明する。
図12は本発明の第7の実施形態による整流器の断面図である。
【0072】
第5実施例ではリヤフレーム17にボスを設け、ボス上に−極の整流素子のベース部231の底面を接触させる構造として、本実施例はリヤフレーム17のボス上に冷却風の方向に沿うようにスリットを設け、ボスの放熱性を向上させることで整流素子の冷却性を向上させることを特徴とする。
【0073】
図10に示すように、ベース部231がリヤフレーム17と−極の放熱板21との空間に部分的に飛出しており、その空間部を冷却風が通過する際に、−極整流素子23のベース部231の底面及びL−L断面図に示すように側面を通過することで、直接的に整流素子を冷却させ、更には、リヤフレーム17に設けられたボスに、−極の整流素子のベース部231の底面を接触させることで、整流素子の放熱性を向上させ、G−G断面に示されるようにボスに冷却風を当てることで更に冷却性が向上する。
【0074】
また、リヤフレーム17に設けられたボスには、冷却風の方向にあわせ、スリットが設けられており、スリットを冷却風が通過することでボスの冷却フィン効果により冷却性が更に向上する構造である。
【0075】
リヤフレーム17のボスの形状は、円筒形が望ましいが、例えば四角形状及び三角形状でも同様の効果は得られる。
【0076】
ベース部231の飛出し高さgについては、ベース部231の底面をリヤフレーム17のボス上に接触させるため固定力は第1実施例に比べ向上し、ベース部231の飛出し高さgも高くすることができる。本実施例の場合、ローレット圧入時による整流素子の固定力からベース部231の高さHに対し、ベース部の飛出し高さgは1/3〜2/3の高さが望ましい。本実施例の場合では、ベース部と飛出し量は1mmから3mmの間が望ましい。
【0077】
リヤフレーム17のボス高さjは、高ければ高いほど風量が増加し、冷却性能は向上するが、本例の場合では保護カバー内に整流装置18を収める制約条件と10mm以下であり、最低限の風量を確保するために、ボス高さは2mm以上が望ましい。
【0078】
リヤフレーム17のボスに設けられたスリットの幅bは、本例の場合は2mm〜5mmの間に設けることが望ましい。
【0079】
−極の整流素子のベース部231の底面とリヤフレーム17のボスとの接触部については、リヤフレーム17及び−極整流素子の製造精度から、微小の空間が生じるため、接触部にグリース等の熱伝導性の高い材料を介在させることで、整流素子の冷却性は更に向上する。
【0080】
また、第6実施例のボスに本例と同様のスリットを追加しても同様の冷却性能が得られる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態によれば、−極の整流素子のベース部231を部分的に冷却風が通過する空間に配置し、直接的に冷却風を当てるとともに、リヤフレーム17のボス上に凹部を設け、−極の整流素子のベース部231を嵌合させることにより、放熱面積を拡大し、冷却風の流路の高さ向上による風量アップ及びリヤフレーム17への放熱効果により、冷却性能を向上させ、整流素子の発熱量に対する温度低減の促進ができる高品質な整流器を有する車両用交流発電機を提供することができる。
【0082】
以上、上述の各実施形態では、車両用交流発電機における3相巻線を二組の固定子を有する整流装置の冷却方法について述べてきたが、その他、3相巻線または5相及び6相巻線等の整流装置についても同様に適用できる。
【符号の説明】
【0083】
1 プーリ
2 シャフト
3 フロントベアリング
4 回転子
5 固定子
6 固定子鉄心
7 固定子巻線
8 リヤベアリング
9 フロント側爪磁極
10 リヤ側爪磁極
11 界磁巻線
12 スリップリング
13 ブラシ
14 フロントファン
15 リヤファン
16 フロントフレーム
17 リヤフレーム
17a 第2放熱板とリヤフレームの空隙
18 整流装置
19 整流素子接続端子
19a 絶縁材部
19b 接続ターミナル
20 +極の放熱板
21 −極の放熱板
24 Bターミナルボルト
25 保護カバー
30 ICレギュレータ
31 車両用交流発電機
201 +極放熱板の整流素子の圧入穴
202 +極放熱板の冷却穴
203 +極放熱板の冷却穴内の放熱フィン
204 +極放熱板の冷却穴側面の放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子巻線を備えた固定子と、該固定子の内周側に隙間を介して回転可能に支持された回転子とを有し、
前記回転子の回転軸を回転自在に支持すると共に前記固定子を支持するフロントフレームとリヤフレームと、前記固定子巻線から出力された交流電力を整流するための整流素子を電気的に接続し、整流回路を構成する整流装置を有し、該整流装置はリヤフレームの外端部に固定され、保護カバーにより覆われ、前記保護カバーから整流装置を通り冷却風を吸入する冷却ファンを備える車両用交流発電機であって、
前記整流装置は、複数個の+極の整流素子が圧入された第1放熱板と、複数個の−極の整流素子が圧入された第2放熱板を有し、
前記第2放熱板に圧入された−極の整流素子は、第2放熱板より突き出されるように圧入され、リヤフレームと第2放熱板との間の冷却風通路の空間に整流素子のベース部の一部が配置された車両用交流発電機。
【請求項2】
前記整流装置は、第2放熱板より突き出た整流素子のベース部の底面がリヤフレームと接触させることを特徴とする請求項1に記載の車両用交流発電機。
【請求項3】
前記リヤフレーム上に凹部があり、第2放熱板より突き出た整流素子のベース部の一部が嵌合し接触させることを特徴とする請求項1記載の車両用交流発電機。
【請求項4】
前記リヤフレーム上に貫通穴があり、第2放熱板より突き出た整流素子のベース部の一部が嵌合し接触させることを特徴とする請求項1記載の車両用交流発電機。
【請求項5】
前記整流装置は、リヤフレーム上にボスが設けられており、第2放熱板より突き出た整流素子のベース部の底面が接触させることを特徴とする請求項1に記載の車両用交流発電機。
【請求項6】
前記リヤフレーム上のボスには中心から外周側に向かって、放射状にスリットが設けられており、第2放熱板より突き出た整流素子のベース部の底面が前記ボスの上面に接触させることを特徴とする請求項5に記載の車両用交流発電機。
【請求項7】
前記リヤフレーム上のボス上には凹部があり、第2放熱板より突き出た整流素子のベース部の一部が嵌合し接触させることを特徴とする請求項5記載の車両用交流発電機。
【請求項8】
前記リヤフレーム上のボス上には凹部があり、第2放熱板より突き出た整流素子のベース部の一部が嵌合し接触させることを特徴とする請求項7記載の車両用交流発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−110800(P2013−110800A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252185(P2011−252185)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】