説明

車両用傾斜センサー装置

【課題】放射方向の全ての傾斜を検出する。
【解決手段】車両用傾斜センサー装置Aである。有底円筒状のケーシング20に蓋体22を設置するとともにこの蓋体22の内壁面に吊下げロッド30を放射方向に揺動自在に設置し、この吊下げロッド30の先端部にマグネット32を設置するとともに前記ケーシング20の外壁面に所要数の磁気検出手段を設置し、前記吊下げロッド30が前記ケーシング20の内壁面に接近した際に前記マグネット32の作用によって前記磁気検出手段が作動する。
【効果】吊下げロッドを中心とした放射方向の全ての傾斜を検出することができる。さらに、180度以上傾斜した場合(転倒した場合を含む)でも、前記吊下げロッドの先端部はケーシングの内壁面に凭れ掛かった状態になるため、傾斜状態として検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用傾斜センサー装置に関し、主として、自動二輪車、建設用車両、農業用車両に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるこの種の傾斜センサーは、ケーシング内に振り子を揺動可能の設置したものであり、移動する振り子の位置を磁気的に検出することによって車両の傾斜を検出していた。
【0003】
【特許文献1】特開2008−300196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の車両用傾斜センサー装置にあっては、前記振り子が揺動軸によって支持されていたため、この揺動軸の軸心を中心とした一方向の傾斜のみしか検出することができず、この結果、特定方向の傾斜の検出のみに適するものであり、車両等の不特定方向の傾斜の検出には適さないという不都合を有した。
【0005】
この発明の課題はこの不都合を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記不都合を解消するために、この発明に係る車両用傾斜センサー装置においては、有底円筒状のケーシングに蓋体を設置するとともにこの蓋体の内壁面に吊下げロッドを放射方向に揺動自在に設置し、この吊下げロッドの先端部にマグネットを設置するとともに前記ケーシングの外壁面に所要数の磁気検出手段を設置し、前記吊下げロッドが前記ケーシングの内壁面に接近した際に前記マグネットの作用によって前記磁気検出手段が作動するようにしたものである。
【0007】
この場合、前記ケーシング内に高粘度液を封入することもできる。
【0008】
なお、前記磁気検出手段を前記ケーシングの軸心に沿って配置することもできる。
【0009】
この場合、前記ケーシングの外壁面に放射状にリブを設置することもできる。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る車両用傾斜センサー装置は上記のように構成されているため、即ち、有底円筒状のケーシングに蓋体を設置するとともにこの蓋体の内壁面に吊下げロッドを放射方向に揺動自在に設置し、この吊下げロッドの先端部にマグネットを設置するとともに前記ケーシングの外壁面に所要数の磁気検出手段を設置し、前記吊下げロッドが前記ケーシングの内壁面に接近した際に前記マグネットの作用によって前記磁気検出手段が作動するため、前記吊下げロッドは根幹部を中心としてあらゆる方向に揺動することができ、マグネットの作用によってあらゆる方向の磁気検出手段を作動させることができる。
【0011】
よって、この車両用傾斜センサー装置を使用すれば、前記吊下げロッドを中心とした放射方向の全ての傾斜を検出することができる。さらに、180度以上傾斜した場合(転倒した場合を含む)でも、前記吊下げロッドの先端部は前記ケーシングの内壁面に凭れ掛かった状態になるため、この傾斜状態として検出することができるものである。
【0012】
この場合、前記ケーシング内に高粘度液を封入すれば、吊下げロッドの振動や揺れの加速度を減衰させることができるため、当該装置自体の誤作動を防止することができる。
【0013】
なお、前記磁気検出手段を前記ケーシングの軸心に沿って配置すれば、前記磁気検出手段が前記吊下げロッドの揺動面に含まれるため、前記吊下げロッドが前記ケーシングの内壁面に接近した際に前記マグネットの磁力を検知しやすいものである。
【0014】
この場合、前記ケーシングの外壁面に放射状にリブを設置すれば、前記磁気検出手段を前記ケーシングの軸心に沿って配置しやすいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明に係る車両用傾斜センサー装置は実施するにあたって下記の構成に最も主要な特徴を有する。
【0016】
「磁気検出手段」には、リードスッチ,MR素子、ホール素子等である磁気を検出できる全ての手段が含まれる。
【0017】
「吊下げロッド」は蓋体の内壁面に放射方向に対して揺動自在に連結する。
【0018】
「マグネット」としては永久磁石を使用する。
【0019】
「高粘度液」としては、例えばシリコンオイルを使用する。
【0020】
この「車両用傾斜センサー装置」は図1の状態で車両に設置される。
【実施例】
【0021】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明に係る車両用傾斜センサー装置の実施例の正面図、図2は同平面図、図3は同底面図、図4は図1におけるIV−IV線断面図、図5は図4におけるIV−IV線断面図である。
【0022】
図1〜図3において、Aは車両用傾斜センサー装置、10はその外ケースである。この外ケース10は有底筒体を逆にして配置したものであり、その内部にはセンサー部Sが収容されている。11は係止突部であり、前記外ケース10の頂面部に形成されている。この係止突部11は前記底部の中心に位置し、前記外ケース10の内部に突出している(図2、図4参照のこと)。
【0023】
次に、図4及び図5に基づいて前記センサー部Sを説明する。
【0024】
図において、20は内ケース(この発明の「ケーシング」に相当する)であり、有底円筒状をしている。この内ケース20内には高粘度シリコンオイル21が収容されている。22は蓋体であり、前記内ケース20の開口部にOリング23を介して内嵌め固定されている。また、24は係止凹部であり、前記蓋体23の上面に形成されている。この係止凹部24を前記係止凸部(外ケース10の)11に外嵌めすることによって前記センサー部Sは前記外ケース10に位置決めされる。
【0025】
30は吊下げロッドであり、前記蓋体22の内壁面(下面)に放射方向に対して揺動自在に連結されている。この吊下げロッド30は前記内ケース20内に吊り下げられ、放射方向に揺動する。32はマグネットであり、前記吊下げロッド30の先端部に埋設されている。このマグネット32は前記吊下げロッド30とともに前記高粘度シリコンオイル21中を揺動する。
【0026】
25は補助筒部であり、前記内ケース20の底部に連設されている。この補助筒部25は下方に延びている。また、26,26,…はスリットであり、前記補助筒部25に軸心に沿って形成されている。このスリット26,26,…は下端部が開放されている。
【0027】
27,27,…はリブであり、前記内ケース20の外壁面に放射状に突設されている。このリブ27は前記内ケース20の軸心に沿って延び、前記補助筒部25にまで到っている。28は溝であり、前記リブ25の頂面に形成され、リブ27の方向に延びている。
【0028】
41は上基板であり、前記内ケース20の上端部に前記リブ27,27,…に載置された状態で外嵌めされている。また、42は下基板であり、前記補助筒部25に前記リブ27,27,…に接触した状態で外嵌めされている。
これらの上基板41及び下基板42の外周縁は略六画形状であり、前記外ケース10に回転不可能となっている。
【0029】
43,43,…はリードスイッチであり、その両端が前記上基板41の端子と前記下基板42の端子に半田付けされている。これらのリードスイッチ43,43,…は前記リブ27,27,…の溝28,28,…に載置された状態で前記内ケース20の外壁面に固定されている。このため、前記吊下げロッド30が揺動し、前記マグネット32が前記内ケース20の内壁面に近接すると
その揺動方向のリードスイッチ43,43,…が作動する。
【0030】
12は前記外ケース10の下端縁に突設された係止片、50はこの係止片11にタイラップバンド51によって締付け固定されたハーネスである。このハーネス20は前記リードスイッチ43,43,…に接続されている。
【0031】
なお、53はシリコンボンド層であり、前記外ケース10の下端縁の内壁面に形成されている。このシリコンボンド層50は前記センサー部Sを前記外ケース10に接着固定し、その抜け落ちを防止している。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明に係る車両用傾斜センサー装置は、前記吊下げロッドを中心とした放射方向の全ての傾斜を検出することができ、さらに、180度以上傾斜した場合(転倒した場合を含む)でも、傾斜状態として検出することができるものである。よって、産業上の利用可能性は高いものである。

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1はこの発明に係る車両用傾斜センサー装置の実施例の正面図である。
【図2】図2は同平面図である。
【図3】図3は同底面図である。
【図4】図4は図1におけるIV−IV線断面図である。
【図5】図5は図4におけるV−V線断面図である。
【符号の説明】
【0034】
A … 車両用傾斜センサー装置
S … センサー部
10 … 外ケース
11 … 係止突部
12 … 係止片
20 … 内ケース(ケーシング)
21 … 高粘度シリコンオイル
22 … 蓋体
23 … Oリング
24 … 係止凹部
25 … 補助筒部
26 … スリット
27 … リブ
28 … 溝
30 … 吊下げロッド
32 … マグネット
41 … 上基板
42 … 下基板
43 … リードスイッチ
50 … ハーネス
51 … タイラップバンド
52 … シリコンボンド層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒状のケーシングに蓋体を設置するとともにこの蓋体の内壁面に吊下げロッドを放射方向に揺動自在に設置し、この吊下げロッドの先端部にマグネットを設置するとともに前記ケーシングの外壁面に所要数の磁気検出手段を設置し、前記吊下げロッドが前記ケーシングの内壁面に接近した際に前記マグネットの作用によって前記磁気検出手段が作動するようにした車両用傾斜センサー装置。
【請求項2】
前記ケーシング内に高粘度液が封入されていることを特徴とする請求項1の車両用傾斜センサー装置。
【請求項3】
前記磁気検出手段は前記ケーシングの軸心に沿って配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2の車両用傾斜センサー装置。
【請求項4】
前記ケーシングの外壁面に放射状にリブが設置されていることを特徴とする請求3の車両用傾斜センサー装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−45660(P2013−45660A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183165(P2011−183165)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(596177630)株式会社日本ロック (21)