説明

車両用充電線通信装置、車両用充電制御装置、充電制御方法、充電制御プログラム

【課題】より正確な充電制御を行うこと。
【解決手段】充電制御信号を送受信するための第1の端子と、外部電源から電力供給を受けるための第2の端子と、第1又は第2の端子に入力される充電制御信号とは異なる信号成分を分離して出力する分離手段と、充電制御信号のデューティー比に対して補正を行い、補正が行われた補正後デューティー比に基づいて充電制御を行う制御手段と、を備え、制御手段は、分離手段が第1の端子と第2の端子のうち、いずれの端子に入力される信号成分を分離するのか判別し、判別結果に応じてデューティー比に対する補正程度を決定する車両用充電線通信装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電制御信号のデューティー比に基づき充電制御を行うと共に、車両側と外部との間で情報通信を行う車両用充電線通信装置、車両用充電制御装置、充電制御方法、充電制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりから、ハイブリッド自動車や電気自動車の実用化及び研究が進められている。これらの車両では、走行用の二次電池を備えており、この二次電池の充電は、ハイブリッド自動車の場合では主にエンジンの出力によって行われており、電気自動車の場合では専用の充電設備や一般家庭の電源コンセント等の外部電源に、二次電池を充電ケーブルで接続することによって行うことが提案されている。
【0003】
また、ハイブリッド自動車の場合も、外部電源にケーブル接続して二次電池を充電することにより、エネルギー効率が向上することが期待されている。エンジンによる発電効率よりも、商用電力の発電効率の方が良好だからである。
【0004】
このように、外部電源によって二次電池を充電可能な車両は、プラグイン車両等と称されている。
【0005】
特許文献1には、充電ケーブルとコントロールパイロット線によって外部電源に接続される車両について記載されている。この車両では、充電制御信号であるコントロールパイロット信号(CPLT信号)のデューティーに応じて外部電源からの供給可能電流を検知している。
【0006】
また、係る技術を応用した技術であって、車両側と外部電源側で通信を行う技術が開示されている。
【0007】
特許文献2には、電気自動車側に設けられた第1の通信システム部と、電気自動車に充電用の電力を供給する電力供給側に設けられた第2の通信システム部とが、電力供給線(充電ケーブル)を介して通信するようにした通信システムが開示されている。また、特許文献3には、コントロールパイロット信号に通信信号を重畳させて通信を行う伝送システムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−035975号公報
【特許文献2】特開2006−319511号公報
【特許文献3】特開2004−222176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記のようにCPLT信号は、デューティー比が供給可能電流等の情報を示しているが、ケーブルの電気的特性等によって信号の形状になまりを生じることがあり、車両側でデューティー比の補正を行う必要がある場合がある。係るCPLT信号のなまりの程度は、CPLT信号に通信信号が重畳しているか否かによって異なるものとなる。
【0010】
しかしながら、上記各特許文献に記載の発明では、CPLT線に通信信号が重畳しているか否かを考慮してデューティー比の補正を行っていないため、CPLT信号が示す情報量を適切に補正することができず、正確な充電制御を行うことができない場合がある。
【0011】
本発明は、一側面によれば、より正確な充電制御を行うことが可能な車両用充電線通信装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、
充電制御信号を送受信するための第1の端子と、
外部電源から電力供給を受けるための第2の端子と、
前記第1又は第2の端子に入力される、前記充電制御信号とは異なる信号成分を分離して出力する分離手段と、
前記充電制御信号のデューティー比に対して補正を行い、該補正が行われた補正後デューティー比に基づいて充電制御を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記分離手段が前記第1の端子と前記第2の端子のうち、いずれの端子に入力される前記信号成分を分離するのか判別し、該判別結果に応じて前記デューティー比に対する補正程度を決定することを特徴とする、
車両用充電線通信装置である。
【0013】
本発明の第2の態様は、
充電制御信号の伝達経路、又は外部電源からの充電線のいずれかにより信号成分が搬送されることによって、外部との通信を行う車両に搭載される車両用充電制御装置であって、
前記信号成分が、充電制御信号の伝達経路と、外部電源からの充電線のいずれによって搬送されるかを判別し、前記充電制御信号のデューティー比に対し、前記判別結果に応じて異なる補正程度で補正を行った補正後デューティー比に基づいて充電制御を行うことを特徴とする、
車両用充電制御装置である。
【0014】
本発明の第3の態様は、
充電制御信号の伝達経路、又は外部電源からの充電線のいずれかにより信号成分が搬送されることによって、外部との通信を行う車両において車載コンピュータが実行する充電制御方法であって、
前記信号成分が、充電制御信号の伝達経路と、外部電源からの充電線のいずれによって搬送されるかを判別する処理と、
前記充電制御信号のデューティー比に対し、前記判別結果に応じて異なる補正程度で補正を行った補正後デューティー比に基づいて充電制御を行う処理と、
を前記車載コンピュータが実行することを特徴とする、充電制御方法である。
【0015】
本発明の第4の態様は、
充電制御信号の伝達経路、又は外部電源からの充電線のいずれかにより信号成分が搬送されることによって、外部との通信を行う車両において車載コンピュータが実行する充電制御プログラムであって、
前記信号成分が、充電制御信号の伝達経路と、外部電源からの充電線のいずれによって搬送されるかを判別する処理と、
前記充電制御信号のデューティー比に対し、前記判別結果に応じて異なる補正程度で補正を行った補正後デューティー比に基づいて充電制御を行う処理と、
を前記車載コンピュータに実行させることを特徴とする、充電制御プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、一側面によれば、CPLT信号が示す情報量を、より正確な充電制御を行うことが可能な車両用充電線通信装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例に係る車両用充電線通信装置1のシステム構成を概念的に示す図である。
【図2】車両用充電線通信装置1と外部電源100との接続態様例である。
【図3】CPLT信号の変化の一例を示すタイミングチャートである。
【図4】CPLT信号に重畳する信号成分を分離する態様の、信号分離ユニット10の構成例である。
【図5】充電用の交流に重畳する信号成分を分離する態様の、信号分離ユニット10の構成例である。
【図6】ECU30により実行される判別処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】補正テーブル35Aの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の一実施例に係る車両用充電線通信装置について説明する。本発明の車両用充電装置は、外部電源によって車載蓄電装置を充電可能な車両に搭載される装置である。車載蓄電装置は、走行用モータに電力供給するものと、空調装置やスターターモータ等に電力供給するものが考えられるが、本発明の適用上、外部電源によって充電される車載蓄電装置はこれらのうちいずれであってもよい。以下の説明では、車載蓄電装置が走行用モータに電力供給する二次電池(バッテリ)であるものとして説明する。
【0020】
また、走行用のエネルギーとして用いられる電力を供給するバッテリを搭載した車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車が挙げられるが、以下の説明では、ハイブリッド自動車に適用されたものとする。
【0021】
[全体構成]
図1は、本発明の一実施例に係る車両用充電線通信装置1のシステム構成を概念的に示す図である。車両用充電線通信装置1は、信号分離ユニット10と、通信モジュール20と、ECU(Electronic Control Unit)30と、補正テーブル35A、35Bと、充電回路40と、バッテリ50と、を備える。車両用充電線通信装置1は、CPLT線70とAC線72を含むケーブルを介して外部電源100と接続される。
【0022】
まず、車両用充電線通信装置1と外部電源100との接続態様、バッテリ50の電力を用いたモータ制御、及びCPLT信号の制御等について説明し、その後で、信号成分の分離、及びCPLT信号のデューティー比補正について説明する。
【0023】
[接続態様]
図2は、車両用充電線通信装置1と外部電源100との接続態様例である。車両用充電線通信装置1と外部電源100は、外部電源100から延出するケーブル110の先端に設けられたコネクタ120がインレット80に接続されることによって、外部電源100から車両への電力供給、並びに外部電源側通信モジュール130と車両との通信を可能とする。外部電源100や外部電源側通信モジュール130は、例えば車外設備である充電スタンド内に収容される。
【0024】
ケーブル110は、一方の端部が外部電源100及び外部電源側通信モジュール130に接続され、他方の端部にコネクタ120が設けられている。ケーブル110は、例えば、一対の充電ケーブル111、112が樹脂等で被覆された構成となっている。
【0025】
外部電源100からの車両用充電線通信装置1への電力供給は、例えば商用電源からの電力、すなわち50[Hz]又は60[Hz]の交流電力によって行われる。外部電源100は、一般家庭のコンセントを含んでもよいし、専用の電源回路等を有する電気スタンド設備であってもよい。
【0026】
コネクタ120は、ケーブル110の各要素に対応し、充電用コンタクト121、122、グランドコンタクト123、CPLT信号用コンタクト124、ケーブル接続信号伝達用コンタクト125を有し、これらを絶縁体のケース等で収納している。
【0027】
また、コネクタ120は、コネクタ120とインレット80の接続を車両側で検知させるための接続検知機構126と、CPLT信号を生成するためのCPLT回路127と、を備える。なお、CPLT回路127はCPLT信号用コンタクト124の電位を検出するための電圧センサを内蔵し、ECU50は、CPLT信号用コンタクト24の電位を検出するための電圧センサを内蔵している。
【0028】
インレット80は、コネクタ120のコンタクトに対応し、充電用コンタクト81、82、グランドコンタクト83、CPLT信号用コンタクト84、ケーブル接続信号伝達用コンタクト85を有し、これらを絶縁体のケース等で収納している。
【0029】
コネクタ120とインレット80の接続態様に関しては、如何なるものが採用されてもよい。例えば、ナイフ・フォーク、ベローズ等の態様が知られている。
【0030】
接続検知機構126は、コネクタ120がインレット80に接続されたときに(時刻t1)、これを機械的に検知してスイッチ操作を行い、ケーブル接続信号伝達用コンタクト125をグランド線113に接続させる。
【0031】
コネクタ120がインレット80に接続されていない場合には、ケーブル接続信号伝達用コンタクト125は開放端の状態となり、ケーブル接続信号伝達用コンタクト85の電位は、車両側で生成される基準電位となる。一方、コネクタ120がインレット80に接続されている場合には、ケーブル接続信号伝達用コンタクト85の電位は、地絡によってゼロ電位となる。ECU30は、係る電位の変化に基づいて、コネクタ120とインレット80の接続を検知することができる。なお、接続検知のための構成は、これに限らず、接続検知機構126がプルダウン抵抗等により構成されるものとしてもよいし、能動的に電圧信号を出力する構成等、他の構成であってもよい。
【0032】
充電回路40は、例えばブリッジ回路やトランス、整流回路等を有し、交流電力を直流電力に変換可能な構成となっている。充電回路30は、インレット80とバッテリ50の間に取り付けられる。
【0033】
バッテリ50は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池あるいは鉛蓄電池などの二次電池である。なお、本発明が適用された車両がエンジン車両である場合、或いはハイブリッド車両や電気自動車の場合であっても、充電対象が補機専用の蓄電装置である場合は、バッテリ50は、電気二重層キャパシタ等のキャパシタに置換され得る。バッテリ50には、図示しない電流センサ、温度センサ等の監視手段が取り付けられており、その出力値はECU50に送信される。
【0034】
バッテリ50は、モータ51、52に接続され、これらのモータを駆動するための電力を供給すると共に、モータによって回生制御が行われた際に発生する電力を蓄える。
【0035】
[モータ制御]
モータ51、52は、例えば、永久磁石が埋設されたロータと、Y結線された三相コイルを有するステータとを備える三相交流電動発電機である。モータ51、52は、例えばプラネタリギヤ53を介してエンジン54及び車軸に連結される。この場合、モータ51はプラネタリギヤ53のサンギヤに、モータ52はプラネタリギヤ53のリングギヤ及び駆動軸に、エンジン54は、プラネタリギヤ53のピニオンギヤに、それぞれ接続される。
【0036】
モータ51、52、及びエンジン54の出力制御は、図示しないハイブリッドコンピュータにより実行される。ハイブリッドコンピュータは、入力されるアクセル開度やシフトポジション信号、車速等に基づいて、ドライバがアクセル操作によって出力要求したドライバ要求トルクを算出し、これに駆動軸の回転数及び所定の係数を乗じて、ドライバ要求動力を算出する。駆動軸の回転数は、例えばモータ52に取り付けられた回転センサ(レゾルバ)からの値に基づいて計算する。そして、ドライバ要求動力と、外部から入力される補機要求(電動エアコンプレッサ、その他の走行に直接関係しない電動機器が要求する電力)を加算して、出力要求を算出する。
【0037】
出力要求が、バッテリ50の供給可能電力未満である場合は、モータ52の動力のみにより走行するようにモータ51、52、及びエンジン54を制御する(モータ走行)。この場合、ドライバ要求トルクをギヤ機構のギヤ比で除した値がモータ52の要求トルクとなる。
【0038】
一方、出力要求がバッテリ50の供給可能電力以上である場合は、エンジン54、モータ51、及びモータ52を駆動して走行を行なう(エンジン/モータ走行)。この場合、まず、出力要求からバッテリ50の供給可能電力を差し引いて、エンジン要求動力を算出する。そして、エンジン54をエネルギー効率よく運転できる運転ライン上で、エンジン要求動力を実現可能な目標トルク、及び目標回転数を探索する。
【0039】
モータ51については、エンジンの目標回転数Ne*と現在のリングギヤの回転数Nrからモータ51の目標回転数Ng*を次式(1)に基づいて計算する。式中、ρはプラネタリギヤのギヤ比である。そして、モータ51が目標回転数Ng*で駆動されるように、次式(2)のフィードバック制御を行なう。式中、Tg*はモータ51の出力すべき目標トルクであり、Ngはモータ51の実際の回転数であり、K1は比例項のゲインであり、K2は積分項のゲインである。
【0040】
Ng*={(1+ρ)・Ne*/−Nr}/ρ …(1)
Tg*=前回Tg*+K1・(Ng*−Ng)+K2・∫(Ng*−Ng)dt …(2)
【0041】
モータ51の目標トルクTg*が決定されると、エンジン54とモータ51の駆動によってリングギヤに出力されるトルク(直達トルクTer)を次式(3)により算出し、ドライバ要求トルクから直達トルクTerを差し引いたトルクをギヤ機構のギヤ比で除し、モータ52の目標トルクTm*を算出する。
【0042】
Ter=−Tg*/ρ …(3)
【0043】
このように算出された目標トルクTg*、Tm*は、各モータに取り付けられたインバータに供給され、各モータの動作に反映される。目標トルクTg*、Tm*は、正負の双方の値をとることができ、符号とモータの回転方向(ある方向を正、反対方向を負とする)が一致する場合は力行(電力消費して動力を出力する)であり、符号とモータの回転方向が一致しない場合は回生(発電してバッテリ50を充電する)である。
【0044】
[CPLT信号による充電制御]
ECU30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を中心としてROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等がバスを介して相互に接続されたマイクロコンピュータであり、その他、補助記憶装置やI/Oポート、タイマー、カウンター等を備える。これらの機能については後述する。なお、ECU30に代えて、
専用のハードウェア(電子回路)を備えてもよい。ECU30は、ROMやRAM、HDD、フラッシュメモリ等の記憶装置に格納された第1の補正テーブル35A及び第2の補正テーブル35Bを参照可能となっている。これについては後述し、まずCPLT信号による充電制御について説明する。
【0045】
図3は、CPLT信号の変化の一例を示すタイミングチャートである。時刻t1においてコネクタ120がインレット80に接続されると、ECU30は、CPLT信号用コンタクト84の電位を、外部電源100側が生成する第1の電位(例えば12[V])から第2の電位(例えば9[V])に変更する。コネクタ120がインレット80に接続されたことは、前述のように、ケーブル接続信号伝達用コンタクト85の電位がゼロ電位となったことによって検知することができる。
【0046】
これによって、CPLT信号用コンタクト124の電位も第2の電位に変更される。CPLT下位と127は、CPLT信号用コンタクト124の電位を監視しており、CPLT信号用コンタクト124の電位が第1の電位から第2の電位に低下したことを検知すると、内部の発振回路を作動させてCPLT信号を一定の周波数及びデューティー比で発振させる(時刻t2)。この結果、CPLT信号は、第2の電位から第1の電位の反転電位(例えば−12[V])までの間で発振する矩形信号となる。
【0047】
ECU30は、CPLT信号が発振していることを確認すると、内部抵抗を変更すること等により、CPLT信号用コンタクト84の電位の上限を第3の電位(例えば6[V])に変更する(時刻t3)。これによって、CPLT信号用コンタクト124の電位の上限も第3の電位に変更される。
【0048】
CPLT回路127は、CPLT信号用コンタクト124の電位が第3の電位に変更されたことを検知すると、図示しないリレー回路に指示することにより、充電ケーブル111、112による電力供給を開始する(時刻t4)。この結果、図示するように、充電ケーブル111、112における充電電圧が上昇する。
【0049】
充電ケーブル111、112による電力供給は、ECU30が、CPLT信号用コンタクト84の電位の上限を第2の電位(例えば6[V])に変更するまで継続され(〜時刻t5)、その後、時刻t6においてCPLT信号の発振が停止される。
【0050】
なお、時刻t3以降、CPLT信号のデューティー比は、外部電源100からの供給可能電流(例えば充電ケーブル111、112の定格電流)を示す。ECU30は、CPLT信号のデューティー比を計測して補正を行い、補正後のデューティー比から認識される外部電源100からの供給可能電流を超えないように、充電回路40を制御する。なお、デューティー比の計測に係る具体的手法については、周知技術であるため、説明を省略する。
【0051】
[信号成分の分離]
通信モジュール20と外部電源側通信モジュール130は、CPLT線70又はAC線72のいずれかを介して、CPLT信号とは異なる信号の送受信を行う。送受信される内容について特段の制限はなく、如何なる情報が送受信されても構わないが、例えば認証・充電に対する課金等に関係した情報が送受信される。
【0052】
ここで、CPLT線70は、CPLT信号用コンタクト84とECU30を接続し、AC線72は、充電用コンタクト81、82と充電回路を接続する。従って、通信モジュール20と外部電源側通信モジュール130は、CPLT信号又は充電用の交流に信号成分を重畳させて信号の送受信を行う。
【0053】
信号分離ユニット10は、CPLT信号又は充電用の交流のいずれかに重畳する信号成分を分離する。従って、CPLT信号に重畳する信号成分を分離する態様と、充電用の交流に重畳する信号成分を分離する態様のいずれかをとり得る。
【0054】
図4は、CPLT信号に重畳する信号成分を分離する態様の、信号分離ユニット10の構成例である。この場合、信号分離ユニット10は、CPLT線70に接続され、CPLT線70によって搬送されている信号成分を分離して信号線76に出力する(或いはその逆に、信号線76から入力された信号成分をCPLT線70に出力する)信号分離回路12Aと、所定の抵抗値R1を有する抵抗14Aと、を備える。抵抗14Aは、分離態様判別線74を介してECU30に接続される。
【0055】
図5は、充電用の交流に重畳する信号成分を分離する態様の、信号分離ユニット10の構成例である。この場合、信号分離ユニット10は、AC線72に接続され、AC線72によって搬送されている信号成分を分離して信号線76に出力する(或いはその逆に、信号線76から入力された信号成分をAC線72に出力する)信号分離回路12Bと、所定の抵抗値R2を有する抵抗14Bと、を備える。抵抗14Bは、分離態様判別線74を介してECU30に接続される。抵抗値R1とR2は、異なる値を示す。
【0056】
[CPLT信号のデューティー比補正]
前述のように、CPLT信号のデューティー比は、外部電源100からの供給可能電流を示す。例えば、(1)10%≦デューティー比≦85%であれば、供給可能電流が(デューティー比)×0.6[A]であることを示し、(2)85%<デューティー比≦96%であれば、供給可能電流が(デューティー比−0.64)×2.5[A]であることを示す等、規格によって決定される。
【0057】
ECU30は、CPLT信号のデューティー比を計測し、計測したデューティー比に補正を行って、補正後のデューティー比から認識される外部電源100からの供給可能電流を超えないように、充電回路40を制御する。
【0058】
ここで、デューティー比の補正は、例えばCPLT線70、CPLT信号用コンタクト84、CPLT信号用コンタクト124等の電気的特性によって矩形信号になまりが生じることに鑑み、計測値よりも若干大きい値に補正する。
【0059】
しかしながら、信号分離ユニット10が、CPLT信号又は充電用の交流のいずれかに重畳する信号成分を分離する態様であるか(すなわち、CPLT線70によって通信成分が搬送されているか否か)によって、上記なまりの程度が異なるため、ECU30では、信号分離ユニット10の態様によって補正の程度を異ならせている。
【0060】
信号分離ユニット10の態様は、例えば判別線74に所定の電圧を印可する等の動作を行い、検出された抵抗14A又は14Bの抵抗値が、R1であるか、R2であるかによって判別する。なお、係る動作については、所望のタイミングで1回のみ行って判別結果を不揮発性メモリに格納しておき、以降はその判別結果を利用してもよいし、充電を行う度(或いは車両システムのシャットダウンの度など)に判別を行っても構わない。
【0061】
図6は、ECU30により実行される判別処理の流れを示すフローチャートである。本フローは、前述のように、適切なタイミング、周期で実行される。
【0062】
まず、ECU30は、判別線74に所定の電圧を印可する等の動作を行い(S200)、検出された電流値等を用いて抵抗値Rを測定する(S202)。
【0063】
次に、ECU30は、測定された抵抗値RがR1に略一致するか否かを判定する(S204)。ECU30は、抵抗値RがR1に略一致する場合は、補正テーブル35Aを、計測されたデューティー比に適用してデューティー比の補正を行い、補正後のデューティー比を用いて充電制御を行う(S206)。ここで、「略一致」とは、R1を中心とする所定値以内に収まることをいう。なお、前述のように本フローチャートを余り高頻度に行わない場合は、S206の処理は、「以降、補正テーブル35Aを、計測されたデューティー比に適用してデューティー比の補正を行うものと決定する」と読み替える。S210についても同様である。
【0064】
ECU30は、抵抗値RがR1に略一致しない場合は、抵抗値RがR2に略一致するか否かを判定する(S208)。ECU30は、抵抗値RがR2に略一致する場合は、補正テーブル35Bを、計測されたデューティー比に適用してデューティー比の補正を行い、補正後のデューティー比を用いて充電制御を行う(S210)。
【0065】
なお、ECU30は、抵抗値RがR1にもR2にも略一致しない場合は、表示装置やスピーカによって規格が適合していないことを出力する等、所定のエラー処理を行う(S212)。これに代えて、そもそも抵抗値RがR1に略一致しない時点で抵抗値RがR2に略一致するものとみなして、補正テーブル35Bを計測されたデューティー比に適用してデューティー比の補正をもよい(S208、S212を省略)。
【0066】
図7は、補正テーブル35Aの一例である。図示するように、補正テーブル35Aは、計測されたデューティー比と、補正後のデューティー比が対応付けられている。ここで、CPLT信号に通信成分が重畳している場合、充電用の交流に信号成分が重畳している場合に比して、CPLT信号におけるなまりの程度が大きくなると想定されるため、補正テーブル35Aは、補正テーブル35Bに比して補正量が大きくなっている。補正テーブル35A、35Bは、図7に示す態様に限らず、計測されたデューティー比と、補正量(付加デューティー値、又はデューティー補正率等)が対応付けられたものであってもよい。また、補正テーブル35A、35Bは、更に、温度等の他の要素が加味された三次元以上のデータテーブルであってもよい。また、補正量の決定は、補正テーブルを用いるのに限らず、信号分離ユニット10が、CPLT信号又は充電用の交流のいずれかに重畳する信号成分を分離する態様であるかによって異なる関数等を適用して行ってもよい。
【0067】
係る処理によって、CPLT信号に通信成分が重畳しているか否かに基づき、適切にデューティー比の補正量を決定することができる。これによって、より正確な充電制御を行うことができる。
【0068】
このような構成のECU30は、信号分離ユニット10がCPLT信号に重畳する信号成分を分離する態様である車両と、信号分離ユニット10が充電用の交流に重畳する信号成分を分離する態様の車両の双方に搭載することが可能である。従って、汎用性が高いものとなり、製造コストを抑制することができる。
【0069】
[まとめ」
以上説明した本実施例の車両用充電線通信装置1によれば、より正確な充電制御を行うことができる。
【0070】
また、本実施例のECU30によれば、汎用性を高めることにより、製造コストを抑制することができる。
【0071】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0072】
例えば、信号分離ユニット10がCPLT信号に重畳する信号成分を分離する態様であるか、充電用の交流に重畳する信号成分を分離する態様であるかを判別する手法は、信号分離ユニット10の内部抵抗を検出するものに限らず、他の手法を採用し得る。例えば、信号分離ユニット10から入力される判別用信号を検知する手法等が使用される。
【符号の説明】
【0073】
1 車両用充電線通信装置
10 信号分離ユニット
12A、12B 信号分離回路
14A、14B 抵抗
20 通信モジュール
30 ECU
35A、35B 補正テーブル
40 充電回路
50 バッテリ
51、52 モータ
53 プラネタリギヤ
54 エンジン
70 CPLT線
72 AC線
74 分離態様判別線
76 信号線
80 インレット
81、82 充電用コンタクト
83 グランドコンタクト
84 CPLT信号用コンタクト
85 ケーブル接続信号伝達用コンタクト
100 外部電源
110 ケーブル
111、112 充電ケーブル
113 グランド線
120 コネクタ
121、122 充電用コンタクト
123 グランドコンタクト
124 CPLT信号用コンタクト
125 ケーブル接続信号伝達用コンタクト
126 接続検知機構
127 CPLT回路
130 外部電源側通信モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電制御信号を送受信するための第1の端子と、
外部電源から電力供給を受けるための第2の端子と、
前記第1又は第2の端子に入力される、前記充電制御信号とは異なる信号成分を分離して出力する分離手段と、
前記充電制御信号のデューティー比に対して補正を行い、該補正が行われた補正後デューティー比に基づいて充電制御を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記分離手段が前記第1の端子と前記第2の端子のうち、いずれの端子に入力される前記信号成分を分離するのか判別し、該判別結果に応じて前記デューティー比に対する補正程度を決定することを特徴とする、
車両用充電線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用充電線通信装置であって、
前記制御手段は、前記充電制御信号のデューティー比を計測値よりも大きく補正する手段であり、前記分離手段が前記第1の端子に入力される前記信号成分を分離する場合には、前記分離手段が前記第2の端子に入力される前記信号成分を分離する場合に比して補正量を大きくすることを特徴とする、
車両用充電線通信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用充電線通信装置であって、
前記分離手段は、前記第1の端子と前記第2の端子のうち、いずれの端子に入力される前記信号成分を分離するのかを、抵抗値によって示す抵抗を有し、
前記制御手段は、前記分離手段が有する抵抗の抵抗値を測定することにより、前記分離手段が前記第1の端子と前記第2の端子のうち、いずれの端子に入力される前記信号成分を分離するのか判別する手段である、
車両用充電線通信装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用充電線通信装置であって、
前記制御手段は、計測されたデューティー比と、補正後のデューティー比又は補正量が対応付けられた第1及び第2の補正テーブルを参照可能であり、
前記分離手段が前記第1の端子に入力される前記信号成分を分離する場合に前記第1の補正テーブルを前記デューティー比に適用して補正を行い、前記分離手段が前記第2の端子に入力される前記信号成分を分離する場合に前記第2の補正テーブルを前記デューティー比に適用して補正を行う手段である、
車両用充電線通信装置。
【請求項5】
充電制御信号の伝達経路、又は外部電源からの充電線のいずれかにより信号成分が搬送されることによって、外部との通信を行う車両に搭載される車両用充電制御装置であって、
前記信号成分が、充電制御信号の伝達経路と、外部電源からの充電線のいずれによって搬送されるかを判別し、前記充電制御信号のデューティー比に対し、前記判別結果に応じて異なる補正程度で補正を行った補正後デューティー比に基づいて充電制御を行うことを特徴とする、
車両用充電制御装置。
【請求項6】
充電制御信号の伝達経路、又は外部電源からの充電線のいずれかにより信号成分が搬送されることによって、外部との通信を行う車両において車載コンピュータが実行する充電制御方法であって、
前記信号成分が、充電制御信号の伝達経路と、外部電源からの充電線のいずれによって搬送されるかを判別する処理と、
前記充電制御信号のデューティー比に対し、前記判別結果に応じて異なる補正程度で補正を行った補正後デューティー比に基づいて充電制御を行う処理と、
を前記車載コンピュータが実行することを特徴とする、充電制御方法。
【請求項7】
充電制御信号の伝達経路、又は外部電源からの充電線のいずれかにより信号成分が搬送されることによって、外部との通信を行う車両において車載コンピュータが実行する充電制御プログラムであって、
前記信号成分が、充電制御信号の伝達経路と、外部電源からの充電線のいずれによって搬送されるかを判別する処理と、
前記充電制御信号のデューティー比に対し、前記判別結果に応じて異なる補正程度で補正を行った補正後デューティー比に基づいて充電制御を行う処理と、
を前記車載コンピュータに実行させることを特徴とする、充電制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−94005(P2013−94005A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235785(P2011−235785)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【Fターム(参考)】