説明

車両用入力装置

【課題】良好な操作性を確保しつつ操作面を小型化する。
【解決手段】車両用入力装置10は、所定の操作対象に対する操作項目を指示するカーソルを表示する表示画面31と、操作面22上での操作者の手指によるスライド操作に応じた信号を出力する入力デバイスと、入力デバイスから出力された信号に応じて表示画面31でのカーソルの移動を制御する表示制御部と、を備える。入力デバイスは、車両の運転席に着座した操作者の手指が届く範囲内の複数の異なる位置に配置された複数の操作面22を備え、表示画面31は、複数の操作面22の数に応じて区分された複数の表示領域32を備え、複数の操作面22のそれぞれは、それぞれに異なる表示領域32と対応付けられ、それぞれに対応付けられた異なる表示領域32の範囲内でのみカーソルを移動可能に表示画面31上における操作範囲が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばモニタに複数のメニュー項目を表示した状態において、ステアリングホイールに配置されたタッチパッド(スライドパッド)上での運転者の指先によるスライド操作が行なわれることに応じて、複数のメニュー項目に対してカーソルを移動させることで所望のメニュー項目を選択可能とした車載機器が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記従来技術に係る車載機器においては、ステアリングホイールの中央部にタッチパッドを配置することによって、操作面の操作範囲(面積)を広く確保することはできるが、スライド操作時に運転者が片方の手をハンドルから離す必要が生じ、操作性が悪いという問題が生じる。
このような問題が生じることに対して、従来、例えばステアリングホイールのスポーク部にタッチパッドを配置した入力装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、上記従来技術に係る入力装置においては、ステアリングホイールの形状やスポーク部の周辺に他のスイッチ類が存在することなどに起因して、タッチパッドの操作面の面積を十分に確保することが困難になるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−105646号公報
【特許文献2】特開2009−298285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来技術に係る車載機器および入力装置において、例えばタッチパッド上での操作者の指先によるスライド操作に応じて画面に表示されたカーソルを移動させる場合、単一のタッチパッドに対応させて画面の表示領域の全てを操作対象範囲(つまり、カーソルの移動可能範囲)に設定すると、操作性が低下してしまうという問題が生じる。
【0007】
例えば、単一のタッチパッド上での1回のスライド操作のみで画面の表示領域の全てにカーソルを移動可能とするためには、タッチパッド上での所定の方向に複数回のスライド操作の繰り返しを必要とする場合に比べて、タッチパッド上のスライド操作量に対応する画面上のカーソル移動量を増大させる必要が生じる。
しかしながら、操作面の面積を十分に確保することが困難であると、操作面の面積を十分に確保可能な場合に比べて、スライド操作量に対するカーソル移動量がより大きくなることに起因して、より繊細なスライド操作が必要になり、操作容易性が低下してしまうという問題が生じる。
【0008】
一方、画面の表示領域の全てにカーソルを移動可能とするためにタッチパッド上での所定の方向に複数回のスライド操作の繰り返しを必要とする場合(つまり、タッチパッド上のスライド操作量に対応する画面上のカーソル移動量を増大させない場合)においては、操作面の面積を十分に確保することが困難であると、操作面の面積を十分に確保可能な場合に比べて、所望のカーソル移動を完了するまでに要するスライド操作の繰り返し回数がより増大し、スライド操作に要する時間がより長くなり、操作性が低下してしまうという問題が生じる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、良好な操作性を確保しつつ操作面を小型化することが可能な車両用入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両用入力装置は、所定の操作対象に対する操作項目を指示するカーソルを表示する表示画面(例えば、実施の形態での表示画面31)と、操作面(例えば、実施の形態での操作面22)上での操作者の手指によるスライド操作に応じた信号を出力する入力デバイス(例えば、実施の形態での入力デバイス11)と、前記入力デバイスから出力された信号に応じて前記表示画面での前記カーソルの移動を制御する表示制御手段(例えば、実施の形態での表示制御部13)と、を備える車両用入力装置であって、前記入力デバイスは、車両の運転席に着座した前記操作者の手指が届く範囲内の複数の異なる位置に配置された複数の前記操作面を備え、前記表示画面は、前記複数の前記操作面の数に応じて区分された複数の表示領域(例えば、実施の形態での表示領域32)を備え、前記複数の前記操作面のそれぞれは、それぞれに異なる前記表示領域と対応付けられ、それぞれに対応付けられた異なる前記表示領域の範囲内でのみ前記カーソルを移動可能に前記表示画面上における操作範囲(例えば、実施の形態での操作範囲33)が設定されている。
【0011】
さらに、本発明の請求項2に係る車両用入力装置では、前記表示領域と前記操作範囲とは、絶対座標により対応するように設定され、前記複数の表示領域と前記複数の操作範囲とに対して、隣接する前記表示領域同士の境界近傍において、前記隣接する前記表示領域に対応付けられた前記操作範囲同士が重複するように設定されている。
【0012】
さらに、本発明の請求項3に係る車両用入力装置では、前記表示領域と前記操作範囲とは、絶対座標により対応するように設定され、前記カーソルは、常時または前記操作面上でのスライド操作が行なわれたときに前記表示画面に表示されると共に、前記表示画面上における直前の位置にかかわらずに、前記スライド操作が行なわれた前記操作面および当該操作面上における前記スライド操作の開始位置に対応する前記表示画面上の位置を起点として前記スライド操作の方向に応じた方向に移動するように表示される。
【0013】
さらに、本発明の請求項4に係る車両用入力装置では、前記表示画面は、前記運転席の前方に配置されて前記車両の車幅方向が長手方向となる略長方形状を成すと共に、前記長手方向に直交する方向に伸びる境界により前記複数の表示領域に区分されており、前記複数の前記操作面は、中立状態における前記車両に設けられたステアリングホイール(例えば、実施の形態でのステアリングホイール15)上の左側および右側の所定箇所にそれぞれ配置され、前記表示画面の正面視において、前記複数の表示領域のうち左方の前記表示領域は前記ステアリングホイール上の左側に配置された前記操作面の前記操作範囲と対応するように設定され、前記複数の表示領域のうち右方の前記表示領域は前記ステアリングホイール上の右側に配置された前記操作面の前記操作範囲と対応するように設定されている。
【0014】
さらに、本発明の請求項5に係る車両用入力装置では、前記操作項目は、前記スライド操作により手書き入力された文字を所定の前記操作対象に認識させるための文字入力枠を有し、前記カーソルは、前記文字入力枠において実行中の手書き入力による前記文字の部位を示すポインタを成し、前記表示画面に前記文字入力枠が表示されている場合には、前記操作範囲は前記文字入力枠の範囲と対応するように設定される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る車両用入力装置によれば、複数の操作面のそれぞれに、表示画面上での異なる表示領域によるカーソルの移動可能範囲(操作範囲)を振り分けることにより、例えば1つの操作面のみを表示画面の全体と対応させる必要がなくなる。
これに伴い、たとえ操作面の面積を十分に確保することが困難な箇所に操作面を配置する場合であっても、操作面の面積を十分に確保可能な場合に比べて、操作面上のスライド操作量に対応する表示画面上のカーソル移動量を増大させる必要が生じることを防止することができ、操作精度を向上させることができる。
また、スライド操作量に対応するカーソル移動量を増大させる代わりに所望のカーソル移動のために複数回に分けて目的の方向にスライド操作を繰り返させる必要が生じることを防止することができる。
これらにより、各操作面の小型化と良好な操作容易性の確保とを両立させることができる。
【0016】
さらに、本発明の請求項2に係る車両用入力装置によれば、操作面上での手指の接触位置と表示画面上でのカーソルの位置との対応が絶対的である(つまり、原点などの基準位置の対応関係が変化しない)条件において、隣接する表示領域同士に対応付けられた操作範囲同士が重複していることから、表示領域の境界の近傍でカーソルを移動させる場合であっても、操作面の端部において手指によるスライド操作を行なう必要が生じることを防止して、良好な操作容易性を確保することができる。
【0017】
さらに、本発明の請求項3に係る車両用入力装置によれば、操作面上において手指によるスライド操作が行なわれたときに、直前の位置(例えば、直近の最後にカーソルの移動が停止した位置など)にかかわらずに、操作面上の手指の接触位置に応じた表示画面上の所定位置にカーソルが移動する。
これにより、操作者の直感的な操作を可能とし、操作性を向上させることができる。
【0018】
さらに、本発明の請求項4に係る車両用入力装置によれば、複数の操作面のそれぞれに対応付けられた異なる表示領域のレイアウトの汎用性を確保しつつ、操作者の直感的な操作を可能とし、操作性を向上させることができる。
【0019】
さらに、本発明の請求項5に係る車両用入力装置によれば、手書き入力による文字の入力に対して、操作面に対して設定された操作範囲と文字入力枠の範囲とを対応させることにより、表示画面の区分にかかわらずに文字入力のスペースを操作面上で最大限に確保することができ、文字入力の際の精度を向上させることができ、操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用入力装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両用入力装置の構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両用入力装置の表示画面において区分された複数の表示領域と、入力デバイスの複数のタッチパッドの操作面のそれぞれに対して設定された表示画面上の異なる操作範囲との対応関係の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態の実施例に係る車両用入力装置の表示画面において区分された複数の表示領域のそれぞれに対応付けられたタッチパッドの操作面の一例を示す図と、比較例での表示画面の表示領域に対応付けられた単一のタッチパッドの操作面の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態の実施例に係る車両用入力装置の表示画面において区分された複数の表示領域での表示内容と、複数の表示領域のそれぞれに対応付けられたタッチパッドの操作面上での手指による接触操作との対応例を示す図と、比較例での表示画面の表示領域での表示内容と、表示領域に対応付けられた単一のタッチパッドの操作面上での手指による接触操作との対応例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態の実施例に係る車両用入力装置の表示画面において区分された複数の表示領域での表示内容と、複数の表示領域のそれぞれに対応付けられたタッチパッドの操作面上での手指による接触操作との対応例を示す図と、比較例での表示画面の表示領域での表示内容と、表示領域に対応付けられた単一のタッチパッドの操作面上での手指による接触操作との対応例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態の実施例に係る車両用入力装置の表示画面において区分された複数の表示領域のそれぞれに対応付けられたタッチパッドの操作面の一例と、比較例での表示画面と、この表示画面に対応付けられた単一のタッチパッドの操作面の一例とを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る車両用入力装置の表示画面において区分された複数の表示領域のそれぞれに対応付けられたタッチパッドの操作面の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態の第1変形例に係る車両用入力装置の表示画面において区分された複数の表示領域での表示内容と、複数の表示領域のそれぞれに対応付けられたタッチパッドの操作面上での手指による接触操作との対応例、および複数のタッチパッドの操作面上での手指による接触操作の例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態の第2変形例に係る車両用入力装置の表示画面において区分された複数の表示領域のそれぞれに対応付けられたタッチパッドの操作面と、複数のスイッチとの配置関係の一例と、比較例での表示画面において区分された複数の表示領域のそれぞれに対応付けられたタッチパッドの操作面の配置例とを示す図である。
【図11】本発明の実施の形態の第3変形例〜第7変形例に係る車両用入力装置の複数のタッチパッドの操作面の配置例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態の第8変形例に係る車両用入力装置の複数のタッチパッドの操作面と、複数のタッチパッドの操作面のそれぞれに対応付けられた表示画面との配置関係の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用入力装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による車両用入力装置10は、例えば図1および図2に示すように、入力デバイス11と、表示器12と、表示制御部13と、を備えて構成されている。
【0022】
入力デバイス11は、例えば静電容量センサを用いるタッチセンサからなる複数のタッチパッド21(例えば、タッチパッドTa,タッチパッドTb,…)を備えている。
複数のタッチパッド21のそれぞれは、例えば車両の運転席(図示略)に着座した操作者の手指が届く範囲内で、それぞれに異なる位置(例えば、車両のステアリングホイール15に設けられて運転席に着座した操作者の手指により把持可能な把持部16上の異なる位置など)に配置された操作面22を備えている。
【0023】
複数の操作面22は、例えば車両の運転席に着座した同一の操作者が、所定の運転姿勢を保持した状態で複数の操作面22上において手指による各種の接触操作(例えば、スライド操作、タップ操作、押圧操作、ジェスチャ操作など)を実行可能となるように配置されている。
【0024】
複数のタッチパッド21のそれぞれは、操作面22上での操作者の手指による各種の接触操作に係る操作状態量(例えば、接触位置、スライド操作の操作方向および操作量、タップ操作の有無および操作回数、押圧操作の有無、ジェスチャ操作の有無など)を操作面22上に設定された所定の座標系を基準として検出し、検出結果の信号を出力する。
【0025】
表示器12は、例えば車両の運転席に着座した操作者により視認可能に配置された表示画面31を備えている。
表示画面31は、入力デバイス11の複数のタッチパッド21の操作面22の数に応じて区分された複数の表示領域32(例えば、表示領域A,表示領域B,…)を備えている。
【0026】
表示器12は、表示制御部13の制御に応じて、所定の操作対象(例えば、車両に搭載されたナビゲーション装置や空調装置や音響装置などの各種の車載機器)に対する複数の操作項目を表示画面31に表示すると共に、複数の操作項目のうちから適宜の操作項目のみを指示するカーソルを表示画面31に表示する。
【0027】
なお、表示器12は、例えば、車両のダッシュボードの上部に表示画面31が配置されたダッシュボードディスプレイや、車両のフロントウィンドウ上を表示画面31として表示を行なうヘッドアップディスプレイや、車両のインストルメントパネルに表示画面31が配置されたマルチインフォメーションディスプレイや、車両のインストルメントパネルの各種計器類付近に表示画面31が配置されたディスプレイなどである。
【0028】
表示制御部13は、入力デバイス11の複数のタッチパッド21のそれぞれから出力された検出結果の信号に応じて、表示器12の表示画面31の表示を制御する。
例えば、表示制御部13は、入力デバイス11から出力された信号に応じて、表示画面31上での複数の操作項目に対するカーソルの絶対的または相対的な移動を制御する。
【0029】
表示制御部13は、表示画面31において区分された複数の表示領域32(例えば、表示領域A,表示領域B,…)に対して、入力デバイス11の複数のタッチパッド21の複数の操作面22のそれぞれを、それぞれに異なる表示領域32と対応付けている。
そして、複数の操作面22のそれぞれに対して、それぞれに対応付けた異なる表示領域32の範囲内でのみカーソルまたは操作項目を移動可能として、複数の操作面22のそれぞれに対して表示画面31上の異なる操作範囲33(例えば、操作範囲a,操作範囲b,…)を設定している。
【0030】
例えば図1に示すように、表示画面31は、運転席(図示略)の前方に配置されて車両の車幅方向が長手方向となる略長方形状を成すと共に、中心位置から長手方向に直交する方向に伸びる境界φにより2つの表示領域32(表示領域Aおよび表示領域B)に区分されている。
そして、2つのタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22は、車両に設けられたステアリングホイール15の中立状態における把持部16上の中心から車幅方向の左側および右側にずれた所定箇所に、この中心を含み車両の車幅方向に直交する中心面に対して対称となるように配置されている。
これにより、2つのタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)は、車両の運転席に着座した同一の操作者が所定の運転姿勢を保持してステアリングホイール15を把持した状態で左右の両手の手指によって同時に接触操作可能な操作面22を備えている。
【0031】
そして、例えば図1および図3に示すように、表示画面31の正面視において、2つの表示領域32のうち左方の表示領域32(表示領域A)は、ステアリングホイール15の中立状態における把持部16上の中心から車幅方向に左側にずれて配置されたタッチパッド21(タッチパッドTa)の操作面22に対して設定された操作範囲33(操作範囲a)と対応付けられている。
また、表示画面31の正面視において、2つの表示領域32のうち右方の表示領域32(表示領域B)は、ステアリングホイール15の中立状態における把持部16上の中心から車幅方向の右側にずれて配置されたタッチパッド21(タッチパッドTb)の操作面22に対して設定された操作範囲33(操作範囲b)と対応付けられている。
【0032】
表示制御部13は、複数の表示領域32(例えば、表示領域A,表示領域B,…)のそれぞれと、複数の操作面22に対して設定された異なる操作範囲33(例えば、操作範囲a,操作範囲b,…)のそれぞれとを、絶対座標により対応させている。
【0033】
例えば、表示制御部13は、入力デバイス11の複数のタッチパッド21のそれぞれによって操作面22上での操作者の手指による各種の接触操作が検出される際に基準とされる2次元の座標系(つまり、複数の操作面22に対して設定された異なる操作範囲33のそれぞれに対して予め設定されている2次元の座標系)と、複数の操作面22に対応付けられた異なる表示領域32のそれぞれでのカーソルまたは操作項目の移動を制御する際に基準とされる2次元の座標系(つまり、各表示領域32に対して予め設定されている2次元の座標系)とに対して、所定の対応関係を記憶している。
これにより、適宜の操作面22に対して設定された操作範囲33上の位置と、この操作面22に対応付けられた表示領域32上の位置とは、それぞれの座標系の基準位置(例えば、原点など)および座標軸の対応関係が変化しない絶対座標によって固定的に対応している。
【0034】
そして、表示制御部13は、複数の表示領域32(例えば、表示領域A,表示領域B,…)と、複数の操作範囲33(例えば、操作範囲a,操作範囲b,…)とに対して、隣接する表示領域32同士の境界の近傍において、隣接する表示領域32に対応付けられた操作範囲33同士が重複するように設定している。
【0035】
例えば図3に示すように、表示制御部13は、隣接する表示領域32(表示領域Aおよび表示領域B)の境界φの近傍において、それぞれの表示領域32に対応付けられた操作範囲33(操作範囲aおよび操作範囲b)同士が重複する重複範囲34を設定している。
これにより、例えば、車両の車幅方向が長手方向となる略長方形状に形成された表示画面31において、2つの表示領域Aおよび表示領域Bのそれぞれは長手方向に各幅Wを有することに対して、2つの操作範囲aおよび操作範囲bのそれぞれは長手方向に所定値δだけ大きな各幅(W+δ)を有し、重複範囲34は長手方向に幅2δを有している。
【0036】
なお、表示制御部13は、各操作面22上での操作者の手指による各種の接触操作に応じた表示画面31上におけるカーソルまたは操作項目の移動可能範囲を、各操作面22に対応付けられた表示領域32の範囲内に規制している。
これにより、重複範囲34において隣接する表示領域32同士の境界φを越えて互いの相手側の表示領域32内に位置する操作範囲33の越境部分に対応する操作面22上の位置は、いわば不感帯となる。表示制御部13は、この操作面22上のいわば不感帯の位置に対しては、例えば、表示領域32の境界φ上の位置を対応付けて、カーソルまたは操作項目の表示を制御する。
【0037】
また、表示制御部13は、入力デバイス11の複数のタッチパッド21のそれぞれから出力される検出結果の信号に応じて、常時または操作面22上での操作者の手指による各種の接触操作(例えば、スライド操作やタップ操作やジェスチャ操作など)が行なわれたときに、カーソルを表示画面31に表示する。
【0038】
そして、表示制御部13は、例えば操作面22上での手指によるスライド操作が行なわれた場合には、表示画面31上におけるカーソルの直前の位置(例えば、直近の最後にカーソルの移動が停止した位置など)にかかわらずに、スライド操作が行なわれた操作面22および該操作面22上におけるスライド操作の開始位置に対応する表示画面31上の位置を起点として、スライド操作の方向に応じた方向にスライド操作の操作量に応じた移動量でカーソルを移動させる。
【0039】
例えば図4(A)に示す実施例では、車両の車幅方向が長手方向となる略長方形状に形成された表示画面31において、境界φによって区分された2つの表示領域32(表示領域Aおよび表示領域B)のそれぞれに異なるタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22が絶対座標により対応付けられている。
【0040】
この実施例において、表示制御部13は、一方のタッチパッド21(タッチパッドTa)の操作面22上での手指の接触位置Pに対して所定の対応関係で対応付けられた一方の表示領域32(表示領域A)上の位置にカーソルQを表示する。
また、表示制御部13は、他方のタッチパッド21(タッチパッドTb)の操作面22上での手指の接触位置Pに対して所定の対応関係で対応付けられた他方の表示領域32(表示領域B)上の位置にカーソルQを表示する。
【0041】
これに対して、例えば図4(B)に示す比較例では、図4(A)に示す実施例の表示画面31と同一形状の表示画面131において、表示画面131の全ての表示領域132に、図4(A)に示す実施例の各タッチパッド21と同一形状の単一のタッチパッド121の操作面122が相対座標により対応付けられている。
【0042】
この比較例においては、常時または操作面122上での操作者の手指による各種の接触操作(例えば、スライド操作など)が行なわれたときに、カーソルQが表示画面131上に表示される際に、表示画面131上におけるカーソルQの直前の位置(例えば、直近の最後にカーソルQの移動が停止した位置など)を起点として、操作面122上での手指の操作方向に応じた方向に操作面122上での手指の操作量に応じた移動量でカーソルQが移動する。
つまり、この比較例においては、適宜の操作面122に対して設定された操作範囲上の位置と、この操作面122に対応付けられた表示領域132上の位置とは、それぞれの座標系の基準位置(例えば、原点など)の対応関係が表示画面131上におけるカーソルQの直前の位置などに応じて変化する相対座標によって可変に対応している。
【0043】
したがって、図4(A)に示す実施例によれば、図4(B)に示す比較例に比べて、操作面22上のスライド操作量に対応する表示画面31上のカーソル移動量を増大させる必要が生じたり、あるいはスライド操作量に対応するカーソル移動量を増大させる代わりに所望のカーソル移動のために複数回に分けて目的の方向にスライド操作を繰り返させる必要が生じることを防止することができる。
さらに、操作面22上でのスライド操作が行なわれたときに、直前の位置(例えば、直近の最後にカーソルQの移動が停止した位置など)にかかわらずに、操作面22上の手指の接触位置Pに応じた表示画面31上の所定の位置にカーソルQが移動することから、操作者の直感的な操作を可能とし、操作性を向上させることができる。
【0044】
また、表示制御部13は、入力デバイス11の複数のタッチパッド21のそれぞれの操作面22上での操作者の手指によるスライド操作に応じた手書き入力による文字の入力に対して、操作面22上での手指のスライド操作によって手書き入力された文字を所定の操作対象に認識させるための文字入力枠を操作項目として表示画面31上に表示する。さらに、この文字入力枠において実行中の手書き入力による文字の部位を示すポインタをカーソルとして表示画面31に表示する。
そして、表示制御部13は、表示画面31上に文字入力枠を表示している場合には、操作面22に対して設定された表示画面31上の操作範囲33を、文字入力枠の範囲と対応させる。
【0045】
例えば図5(A)に示す実施例では、車両の車幅方向が長手方向となる略長方形状に形成された表示画面31の所定の領域において、境界φによって区分された2つの表示領域32(表示領域Aおよび表示領域B)のそれぞれに異なるタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22が絶対座標により対応付けられている。
【0046】
そして、一方の表示領域32(表示領域A)においては、複数の操作項目Rと、複数の操作項目Rのうちから適宜の1つの操作項目Rのみを指示するカーソルQとが表示されている。
一方の表示領域32においては、例えば、カーソルQの位置が固定され、この表示領域32に対応付けられた一方のタッチパッド21(タッチパッドTa)上での操作者の手指によるスライド操作に応じて、複数の操作項目Rのうち何れか1つの操作項目RにカーソルQが重畳するようにして、複数の操作項目Rの位置がカーソルQの位置に対して相対的に移動する。
【0047】
また、他方の表示領域32(表示領域B)においては、文字入力枠Sと、文字入力枠S内を移動するカーソル(例えば、ポインタ形状を有するカーソルなど)Qと、この表示領域32に対応付けられた他方のタッチパッド21(タッチパッドTb)の操作面22上での手指のスライド操作の軌跡に応じた文字入力枠S内のカーソルQの軌跡とが表示されている。
つまり、カーソルQは、他方の表示領域32に対応付けられた操作面22上での操作者の手指によるスライド操作に応じて、手書き入力による文字の部位を文字入力枠S内で示すように表示されている。
また、他方の表示領域32において、操作面22に対して設定された操作範囲33は、文字入力枠Sの範囲に対応するように設定されている。
【0048】
なお、この実施例の表示画面31には、境界φによって区分された隣接する2つの表示領域32(表示領域Aおよび表示領域B)に加えて、他方のタッチパッド21の操作面22上での操作者の手指によるスライド操作に応じた一連の手書き入力による文字の列を表示する他の表示領域32(表示領域C)が設定されている。
【0049】
この実施例において、表示制御部13は、先ず、他方のタッチパッド21(タッチパッドTb)の操作面22上での手指の接触位置に対して所定の対応関係で対応付けられた他方の表示領域32(表示領域B)上の文字入力枠S内の位置にカーソルQを表示すると共に、この操作面22上での手指のスライド操作の軌跡に応じたカーソルQの軌跡を文字入力枠S内に表示する。
【0050】
そして、表示制御部13は、手書き入力の実行時において、他方のタッチパッド21の操作面22上で操作者の手指による所定の接触操作(例えば、タップ操作など)が行なわれたときに、1つの文字の入力が完了したと判断して、この時点で文字入力枠S内に表示されているカーソルQの軌跡に対応する文字を、表示領域Cの表示内容(つまり、この時点までの一連の手書き入力による文字の列など)に追加する。
【0051】
そして、表示制御部13は、表示領域Cの表示内容に新たな文字が追加される毎に、予め記憶している複数の操作項目のうちから表示領域Cの表示内容の文字列を含む操作項目Rを抽出して、一方の表示領域32(表示領域A)上に表示する。
【0052】
そして、表示制御部13は、一方の表示領域32に対応付けられた一方のタッチパッド21(タッチパッドTa)の操作面22上での操作者の手指によるスライド操作に応じて、一方の表示領域32上で固定されたカーソルQが複数の操作項目Rのうち何れか1つの操作項目Rに重畳するようにしつつ、複数の操作項目Rの位置をカーソルQの位置に対して相対的に移動させる。
【0053】
そして、表示制御部13は、カーソルQに対する複数の操作項目Rの相対的な移動時において、一方のタッチパッド21の操作面22上で操作者の手指による所定の接触操作(例えば、タップ操作など)が行なわれたときに、この時点でカーソルQが重畳する操作項目Rの選択が決定されたと判断し、この結果の信号を所定の操作対象(例えば、車両に搭載されたナビゲーション装置や空調装置や音響装置などの各種の車載機器)に出力する。
【0054】
これに対して、例えば図5(B),(C)に示す比較例では、図5(A)に示す実施例の表示画面31の所定の領域と同一形状の表示画面131の所定の領域において、この所定の領域の全てに対応する表示領域132に、図5(A)に示す実施例の各タッチパッド21と同一形状の単一のタッチパッド121の操作面122が絶対座標により対応付けられている。
【0055】
この比較例においては、例えば図5(B)に示すようなタッチパッド121の操作面122上での操作者の手指によるスライド操作に応じた手書き入力による文字を表示領域132上の文字入力枠S内に表示する操作モード(手書き文字入力の操作モード)と、例えば図5(C)に示すような一連の手書き入力による文字列を含む複数の操作項目Rのうちから何れか1つの操作項目Rを選択し、この選択を決定する操作モード(項目選択+決定の操作モード)とが、タッチパッド121の操作面122上での操作者の手指による所定の接触操作(例えば、タップ操作など)によって切り替えられる。
【0056】
つまり、例えば図5(B)に示すような手書き文字入力の操作モードにおいては、表示領域132において、文字入力枠Sと、この表示領域132に対応付けられたタッチパッド121の操作面122上での操作者の手指によるスライド操作に応じて、手書き入力による文字の部位を示すようにして文字入力枠S内を移動するカーソルQと、操作面122上での手指のスライド操作の軌跡に応じた文字入力枠S内でのカーソルQの軌跡とが表示される。
【0057】
また、例えば図5(C)に示すような項目選択+決定の操作モードにおいては、表示領域132において、複数の操作項目Rと、複数の操作項目Rのうちから適宜の1つの操作項目Rのみを指示するカーソルQとが表示される。
そして、この表示領域132においては、例えば、カーソルQの位置が固定され、この表示領域132に対応付けられたタッチパッド121の操作面122上での操作者の手指によるスライド操作に応じて、複数の操作項目Rのうち何れか1つの操作項目RにカーソルQが重畳するようにして、複数の操作項目Rの位置がカーソルQの位置に対して相対的に移動する。
【0058】
したがって、図5(A)に示す実施例によれば、図5(B),(C)に示す比較例に比べて、操作モードの切り替えが必要になることを防止することができ、操作容易性を向上させることができる。
【0059】
また、例えば図6(A)に示す実施例では、車両の車幅方向が長手方向となる略長方形状に形成された表示画面31の所定の領域において、境界φによって区分された2つの表示領域32(表示領域Aおよび表示領域B)のそれぞれに異なるタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22が絶対座標により対応付けられている。
【0060】
そして、一方の表示領域32(表示領域A)においては、複数の操作項目Rと、複数の操作項目Rのうちから適宜の1つの操作項目Rのみを指示するカーソルQとが表示されている。
一方の表示領域32においては、この表示領域32に対応付けられた一方のタッチパッド21(タッチパッドTa)の操作面22上での操作者の手指によるジェスチャ操作(例えば、はらう操作など)に応じて、複数の操作項目Rのうち何れか1つの操作項目RにカーソルQが重畳するようにして、カーソルQの位置が複数の操作項目Rの位置に対して相対的に移動する。
【0061】
また、他方の表示領域32(表示領域B)においては、2つの操作項目Rと、2つの操作項目Rの何れかを指示するカーソルQとが表示されている。
他方の表示領域32においては、この表示領域32に対応付けられた他方のタッチパッド21(タッチパッドTb)の操作面22上での操作者の手指による所定の接触操作(例えば、操作回数が異なるタップ操作など)に応じて、2つの操作項目Rの何れかにカーソルQが重畳するようにして、カーソルQの位置が2つの操作項目Rの位置に対して相対的に移動する。
【0062】
なお、他方の表示領域32における2つの操作項目Rは、例えば、一方の表示領域32において順次切り替わる複数の操作項目Rの表示を前回の表示に戻すことを指示する操作項目R(「戻る」)と、一方の表示領域32における複数の操作項目RのうちカーソルQが重畳して選択された何れか1つの操作項目Rに対する選択の決定を指示する操作項目R(「決定」)とである。
【0063】
この実施例において、表示制御部13は、先ず、一方の表示領域32に対応付けられた一方のタッチパッド21(タッチパッドTa)の操作面22上での操作者の手指によるジェスチャ操作に応じて、この表示領域32上に表示された複数の操作項目Rのうち何れか1つの操作項目RにカーソルQが重畳するようにしつつ、カーソルQの位置を複数の操作項目Rの位置に対して相対的に移動させる。
【0064】
そして、表示制御部13は、一方の表示領域32における複数の操作項目Rのうち何れか1つの操作項目RにカーソルQが重畳することで、この操作項目Rが選択されている状態において、他方の表示領域32に対応付けられた他方のタッチパッド21(タッチパッドTb)上での操作者の手指による所定の接触操作(例えば、操作回数が1回のタップ操作など)に応じて、他方の表示領域32における2つの操作項目Rのうち選択の決定を指示する操作項目R(「決定」)にカーソルQが重畳することで、この操作項目Rが選択されると、一方の表示領域32での操作項目Rの選択が決定されたと判断し、この結果の信号を所定の操作対象(例えば、車両に搭載されたナビゲーション装置や空調装置や音響装置などの各種の車載機器)に出力する。
【0065】
また、表示制御部13は、一方の表示領域32において複数の操作項目Rが表示されている状態において、他方のタッチパッド21上での操作者の手指による所定の接触操作(例えば、操作回数が2回のタップ操作など)に応じて、他方の表示領域32における2つの操作項目Rのうち前回の表示に戻すことを指示する操作項目R(「戻す」)にカーソルQが重畳することで、この操作項目Rが選択されると、一方の表示領域32において順次切り替わる複数の操作項目Rの表示を前回の表示に戻す。
【0066】
これに対して、例えば図6(B),(C)に示す比較例では、図6(A)に示す実施例の表示画面31の所定の領域と同一形状の表示画面131の所定の領域において、この所定の領域の全てに対応する表示領域132に、図6(A)に示す実施例の各タッチパッド21と同一形状の単一のタッチパッド121の操作面122が絶対座標により対応付けられている。
【0067】
この比較例においては、例えば図6(B)に示すようなタッチパッド121の操作面122上での操作者の手指によるジェスチャ操作に応じて複数の操作項目Rのうちから何れか1つの操作項目Rを選択する操作モード(項目選択の操作モード)と、例えば図6(C)に示すようなタッチパッド121の操作面122上での操作者の手指による所定の接触操作(例えば、操作回数が異なるタップ操作など)に応じて、表示画面131において順次切り替わる複数の操作項目Rの表示を前回の表示に戻す、または、複数の操作項目RのうちカーソルQが重畳することで選択された何れか1つの操作項目Rに対する選択を決定する操作モード(決定または戻るの操作モード)とが、タッチパッド121の操作面122上での操作者の手指による所定の接触操作によって切り替えられる。
【0068】
つまり、例えば図6(B)に示すような項目選択の操作モードにおいては、複数の操作項目Rと、複数の操作項目Rのうちから適宜の1つの操作項目Rのみを指示するカーソルQとが表示される。
そして、この表示領域132においては、この表示領域132に対応付けられたタッチパッド121の操作面122上での操作者の手指によるジェスチャ操作(例えば、はらう操作など)に応じて、複数の操作項目Rのうち何れか1つの操作項目RにカーソルQが重畳するようにして、カーソルQの位置が複数の操作項目Rの位置に対して相対的に移動する。
【0069】
また、例えば図6(C)に示すような決定または戻るの操作モードにおいては、この表示領域132に対応付けられたタッチパッド121の操作面122上での操作者の手指による所定の接触操作(例えば、操作回数が異なるタップ操作など)に応じて、表示領域132における複数の操作項目Rの表示を前回の表示に戻す、または、表示領域132において複数の操作項目Rのうち何れか1つの操作項目Rに重畳しているカーソルQの表示形態を変更(例えば、境界線を破線から実線に変更など)する。
【0070】
したがって、図6(A)に示す実施例によれば、図6(B)に示す比較例に比べて、複数の異なる操作(例えば、適宜の1つの操作項目Rを選択する操作と、この選択を決定する操作となど)を、それぞれに異なる複数のタッチパッド21によって、より迅速かつ連続的に実行することができ、操作迅速性および操作効率を向上させることができる。
さらに、一方の表示領域32における複数の操作項目Rのうち何れか1つの操作項目Rの選択を決定するために、2つのタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22上での手指による所定の接触操作を必要とすることから、操作者が意図しない操作項目Rの選択が誤って決定されてしまうことを防止することができ、誤操作の発生を防止することができる。
【0071】
上述したように、本実施の形態による車両用入力装置10によれば、複数のタッチパッド21の複数の操作面22のそれぞれに対して、表示画面31上での異なる表示領域32を振り分け、各表示領域32の範囲内でのみカーソルを移動可能としたことにより、例えば1つの操作面22のみを表示画面31の全体と対応させる必要がなくなる。
【0072】
これに伴い、たとえ操作面22の面積を十分に確保することが困難な箇所に操作面22を配置する場合であっても、操作面22の面積を十分に確保可能な場合に比べて、操作面22上のスライド操作量に対応する表示画面31上のカーソル移動量を増大させる必要が生じることを防止することができ、操作精度を向上させることができる。
また、スライド操作量に対応するカーソル移動量を増大させる代わりに所望のカーソル移動のために複数回に分けて目的の方向にスライド操作を繰り返させる必要が生じることを防止することができる。
これらにより、各操作面22の小型化と良好な操作容易性の確保とを両立させることができる。
【0073】
さらに、操作面22上での手指の接触位置と表示画面31上でのカーソルの位置との対応が絶対的である(つまり、原点などの基準位置の対応関係が変化しない)条件において、隣接する表示領域32同士に対応付けられた操作範囲33同士が重複していることから、表示領域32の境界の近傍でカーソルを移動させる場合であっても、操作面22の端部において手指によるスライド操作を行なう必要が生じることを防止して、良好な操作容易性を確保することができる。
【0074】
さらに、表示領域32と、この表示領域32に対応付けられた操作面22の操作範囲33とは、絶対座標により対応することから、操作面22上において手指によるスライド操作が行なわれたときに、直前の位置(例えば、直近の最後にカーソルの移動が停止した位置など)にかかわらずに、操作面22上の手指の接触位置に応じた表示画面31上の所定位置にカーソルが移動する。
これにより、操作者の直感的な操作を可能とし、操作性を向上させることができる。
【0075】
さらに、所定形状(例えば、車両の車幅方向が長手方向となる略長方形状など)の表示画面31に対して、例えば図7(A)に示す実施例のように、表示画面31を区分して得られる複数(例えば、2つ)の表示領域32(表示領域Aおよび表示領域B)のそれぞれの形状に対応する形状を有する異なるタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22を備えることにより、例えば図7(B)に示す比較例のように、所定形状の表示画面31と同一形状の表示画面131の全領域に単一のタッチパッド121の操作面122を対応付ける場合に比べて、各タッチパッド21のサイズを小さくすることができる。
【0076】
すなわち、例えば図7(B)に示す比較例においては、車両の車幅方向が長手方向となる略長方形状に形成された表示画面131の形状に対応してタッチパッド121の操作面122が車幅方向を長手方向とする略長方形状の形状を有することに起因して、この操作面122上のステアリングホイール15の中央側の位置に手指を接触させるために、例えばステアリングホイール15の把持状態を変化させる必要が生じたり、例えば手指を無理に伸ばす必要が生じる虞がある。
このような問題が生じることに対して、例えば図7(A)に示す実施例によれば、各タッチパッド21のサイズを小さくすることが可能であり、操作者の手が小さい場合であっても、ステアリングホイール15を把持した状態での各タッチパッド21の全域に対する手指による容易な接触操作を可能とし、操作性を向上させることができる。
【0077】
さらに、表示画面31の正面視において、左右の表示領域32(表示領域Aおよび表示領域B)は、ステアリングホイール15の左側および右側のタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22に対して設定された操作範囲33(操作範囲aおよび操作範囲b)と対応するように設定されている。
これにより、複数の操作面22および複数の操作面22のそれぞれに対応付けられた異なる表示領域32のレイアウトの汎用性を確保しつつ、操作者の直感的な操作を可能とし、操作性を向上させることができる。
【0078】
しかも、ステアリングホイール15の左側および右側のタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)のレイアウトが同じ(つまり、把持部16上の中心を含み車両の車幅方向に直交する中心面に対して対称となる)ため、操作者による利き手(あるいは左右のうち好みの方の手)による操作を容易に可能とすることができる。
さらに、この場合には、例えば図8に示すように、ステアリングホイール15を一方の手で強固に把持しつつ、他方の手によってタッチパッド21の操作面22上での手指による各種の接触操作を容易に行なうことが可能となり、操作性を向上させることができる。
また、車室内におけるステアリングホイール15の位置(いわゆる右ハンドルと左ハンドル)にかかわらずに、複数のタッチパッド21のレイアウトは左右対称で同一になることから、構成に要する費用が嵩むことを防止することができる。
【0079】
さらに、手書き入力による文字の入力に対して、操作面22に対して設定された操作範囲33と、文字入力枠の範囲とを対応させることにより、表示画面31の区分にかかわらずに文字入力のスペースを操作面22上で最大限に確保することができ、文字入力の際の精度を向上させることができ、操作性を向上させることができる。
【0080】
なお、上述した実施の形態においては、例えば図9(A),(B)に示す第1変形例のように、表示画面31において境界φによって区分された複数(例えば、2つ)の表示領域32(表示領域Aおよび表示領域B)のそれぞれに対応付けられた異なるタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22に対して操作者の手指による同一の接触操作の実行を有効とし、各操作面22上での同一の接触操作に対してそれぞれに異なる操作内容を対応付けてもよい。
【0081】
例えば図9(A)に示す2つのタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22に対しては、それぞれに同一の接触操作として、操作面22上で円を描くように手指を回転させる回転のジェスチャ操作の実行が有効とされている。
そして、一方の操作面22上での回転のジェスチャ操作に対しては音響装置などの音量調整の操作内容が対応付けられ、他方の操作面22上での回転のジェスチャ操作に対しては空調装置の空調温度調整の操作内容が対応付けられている。
【0082】
また、例えば図9(B)に示す2つのタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22に対しては、それぞれに同一の接触操作として、操作面22上での2回のタップ操作の実行が有効とされている。
そして、一方の操作面22上での2回のタップ操作に対しては、この操作面22に対応付けられた表示領域32(表示領域A)での表示を前回あるいは前項の表示に戻す操作内容(「前に戻る、BACK」)が対応付けられ、他方の操作面22上での2回のタップ操作に対しては、この操作面22に対応付けられた表示領域32(表示領域B)での表示を次項の表示に進める操作内容(「ページ送り」)が対応付けられている。
【0083】
この第1変形例によれば、複数の操作面22上において有効とされる共通の接触操作によって、複数の操作面22の数に応じた複数の異なる操作を実行することができる。
これにより、例えば複数の異なる操作を実行するために複数の異なる接触操作が必要となることを防止し、操作者に複数の異なる接触操作を覚え込ませる負担が生じることを防止することができる。
さらに、共通の接触操作が実行される複数の操作面22に複数の異なる操作内容を分担させるように対応付けることにより、操作効率を向上させることができる。
【0084】
なお、上述した実施の形態においては、例えば図10(A)に示す第2変形例のように、各タッチパッド21の周辺に他の入力デバイス11(例えば、複数のスイッチ41など)を配置してもよい。
例えば図10(A)に示す第2変形例の実施例においては、表示画面31において境界φによって区分された複数(例えば、2つ)の表示領域32(表示領域Aおよび表示領域B)のそれぞれに対応付けられた異なるタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22が、ステアリングホイール15の中立状態における把持部16上の中心から車幅方向の左側および右側にずれた位置に配置されている。
さらに、把持部16上において各操作面22から車幅方向に左側および右側にずれた位置にそれぞれ複数(例えば、2つ)のスイッチ41が配置されている。
【0085】
これに対して、例えば図10(B)に示す比較例においては、表示画面31において境界φによって区分された複数(例えば、2つ)の表示領域32(表示領域Aおよび表示領域B)のそれぞれに対応付けられた異なるタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22が、ステアリングホイール15の中立状態における把持部16上の中心から車幅方向の一方側(例えば、左側)にずれた位置に配置されている。
これにより、例えば図10(B)に示す比較例においては、2つの操作面22の周辺において、ステアリングホイール15を把持した状態での手指による容易な操作性が確保されたスイッチ41を配置するための十分な大きさの領域を確保することは困難であるという問題が生じる。
【0086】
このような問題が生じることに対して、例えば図10(A)に示す第2変形例の実施例によれば、2つのタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22がステアリングホイール15の中立状態における把持部16上の左右に振り分けられて配置されている。
これにより、各操作面22の周辺において、ステアリングホイール15を把持した状態での手指による容易な操作性が確保された複数のスイッチ41を配置するための十分な大きさの領域を確保することができ、入力操作の多様性を向上させることができる。
【0087】
なお、上述した実施の形態においては、例えば図11(A)〜(E)に示す第3変形例〜第7変形例のように、表示画面31において境界φによって区分された複数(例えば、2つ)の表示領域32(表示領域Aおよび表示領域B)のそれぞれに対応付けられた異なるタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22が、ステアリングホイール15あるいはステアリングホイール15周辺の他の箇所に配置されてもよい。
【0088】
例えば図11(A)に示す第3変形例においては、2つのタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22が、ステアリングホイール15上の左右の所定位置に、ステアリングホイール15の中心を含み車両の車幅方向に直交する中心面に対して対称となるように配置されている。
【0089】
また、例えば図11(B)に示す第4変形例においては、2つのタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22が、ステアリングホイール15の中立状態における把持部16の裏面上の中心から車幅方向の左側および右側にずれた位置に、ステアリングホイール15の中心を含み車両の車幅方向に直交する中心面に対して対称となるように配置されている。
【0090】
また、例えば図11(C)に示す第5変形例においては、2つのタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22が、ステアリングホイール15の左右の空間部42に、ステアリングホイール15の中心を含み車両の車幅方向に直交する中心面に対して対称となるように配置されている。
【0091】
また、例えば図11(D)に示す第6変形例においては、2つのタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22が、ステアリングホイール15の中立状態における把持部16上の中心から車幅方向の左側および右側にずれた位置に、ステアリングホイール15の中心を含み車両の車幅方向に直交する中心面に対して対称となるように配置されていると共に、他のタッチパッド21の操作面22が把持部16上の中心に配置されている。
【0092】
また、例えば図11(E)に示す第7変形例においては、2つのタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22が、ステアリングホイール15の中立状態における把持部16上の中心から鉛直方向の上方側および下方側にずれた位置に配置されている。
この第7変形例においては、表示画面31の正面視において、2つの表示領域32のうち左方の表示領域32(表示領域A)は、ステアリングホイール15の中立状態における把持部16上の中心から鉛直方向の上方側にずれて配置されたタッチパッド21(タッチパッドTa)の操作面22に対応付けられている。
また、表示画面31の正面視において、2つの表示領域32のうち右方の表示領域32(表示領域B)は、ステアリングホイール15の中立状態における把持部16上の中心から鉛直方向の下方側にずれて配置されたタッチパッド21(タッチパッドTb)の操作面22に対応付けられている。
【0093】
なお、上述した実施の形態においては、表示画面31において区分された複数の表示領域32のそれぞれに対応付けられた異なるタッチパッド21の操作面22が、ステアリングホイール15の中立状態における把持部16上の異なる位置に配置されるとしたが、これに限定されず、例えば図12(A),(B)に示す第8変形例のように、複数(例えば、2つ)の異なる位置に配置されたタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の配置関係に応じた配置関係で、複数のタッチパッド21のそれぞれに対応付けられた異なる表示画面31(表示画面DAおよび表示画面DB)を車室内に配置してもよい。
【0094】
例えば図12(A)に示す第8変形例においては、ステアリングホイール15の中立状態における把持部16上の中心から車幅方向の左側および右側にずれた所定箇所に、この中心を含み車両の車幅方向に直交する中心面に対して対称となるように2つのタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22が配置されている。
また、例えば車両のインストルメントパネル上において車幅方向に離間した所定位置に2つの表示画面31(表示画面DAおよび表示画面DB)が配置されている。
そして、一方のタッチパッド21(タッチパッドTa)の操作面22に一方の表示画面31(表示画面DA)が対応付けられ、他方のタッチパッド21(タッチパッドTb)の操作面22に他方の表示画面31(表示画面DB)が対応付けられている。
【0095】
例えば図12(B)に示す第8変形例においては、ステアリングホイール15の中立状態における把持部16上の中心から車幅方向の一方側(例えば、左側)にずれた所定箇所において、鉛直方向で隣り合うように2つのタッチパッド21(タッチパッドTaおよびタッチパッドTb)の操作面22が配置されている。
また、例えば車両のインストルメントパネル上において鉛直方向に離間した所定位置に2つの表示画面31(表示画面DAおよび表示画面DB)が配置されている。
そして、一方のタッチパッド21(タッチパッドTa)の操作面22に一方の表示画面31(表示画面DA)が対応付けられ、他方のタッチパッド21(タッチパッドTb)の操作面22に他方の表示画面31(表示画面DB)が対応付けられている。
【0096】
この第8変形例においては、複数の異なる位置に配置されたタッチパッド21の配置関係と、複数のタッチパッド21のそれぞれに対応付けられた異なる表示画面31の配置関係とが対応付けられていることから、各タッチパッド21に対応付けられている表示画面31を操作者に容易に直感的に把握させることができる。
【符号の説明】
【0097】
10 車両用入力装置
11 入力デバイス
13 表示制御部(表示制御手段)
15 ステアリングホイール
21 タッチパッド
22 操作面
31 表示画面
32 表示領域
33 操作範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の操作対象に対する操作項目を指示するカーソルを表示する表示画面と、
操作面上での操作者の手指によるスライド操作に応じた信号を出力する入力デバイスと、
前記入力デバイスから出力された信号に応じて前記表示画面での前記カーソルの移動を制御する表示制御手段と、を備える車両用入力装置であって、
前記入力デバイスは、車両の運転席に着座した前記操作者の手指が届く範囲内の複数の異なる位置に配置された複数の前記操作面を備え、
前記表示画面は、前記複数の前記操作面の数に応じて区分された複数の表示領域を備え、
前記複数の前記操作面のそれぞれは、それぞれに異なる前記表示領域と対応付けられ、それぞれに対応付けられた異なる前記表示領域の範囲内でのみ前記カーソルを移動可能に前記表示画面上における操作範囲が設定されていることを特徴とする車両用入力装置。
【請求項2】
前記表示領域と前記操作範囲とは、絶対座標により対応するように設定され、
前記複数の表示領域と前記複数の操作範囲とに対して、隣接する前記表示領域同士の境界近傍において、前記隣接する前記表示領域に対応付けられた前記操作範囲同士が重複するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用入力装置。
【請求項3】
前記表示領域と前記操作範囲とは、絶対座標により対応するように設定され、
前記カーソルは、常時または前記操作面上でのスライド操作が行なわれたときに前記表示画面に表示されると共に、前記表示画面上における直前の位置にかかわらずに、前記スライド操作が行なわれた前記操作面および当該操作面上における前記スライド操作の開始位置に対応する前記表示画面上の位置を起点として前記スライド操作の方向に応じた方向に移動するように表示されることを特徴とする請求項1に記載の車両用入力装置。
【請求項4】
前記表示画面は、前記運転席の前方に配置されて前記車両の車幅方向が長手方向となる略長方形状を成すと共に、前記長手方向に直交する方向に伸びる境界により前記複数の表示領域に区分されており、
前記複数の前記操作面は、中立状態における前記車両に設けられたステアリングホイール上の左側および右側の所定箇所にそれぞれ配置され、
前記表示画面の正面視において、前記複数の表示領域のうち左方の前記表示領域は前記ステアリングホイール上の左側に配置された前記操作面の前記操作範囲と対応するように設定され、前記複数の表示領域のうち右方の前記表示領域は前記ステアリングホイール上の右側に配置された前記操作面の前記操作範囲と対応するように設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の車両用入力装置。
【請求項5】
前記操作項目は、前記スライド操作により手書き入力された文字を所定の前記操作対象に認識させるための文字入力枠を有し、
前記カーソルは、前記文字入力枠において実行中の手書き入力による前記文字の部位を示すポインタを成し、
前記表示画面に前記文字入力枠が表示されている場合には、前記操作範囲は前記文字入力枠の範囲と対応するように設定されることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の車両用入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−97513(P2013−97513A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238761(P2011−238761)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】